説明

車両用発光装置

【課題】特別の防水対策を必要とせず、マーク部を発光させる車両用発光装置を提供することを目的とする。
【解決手段】磁界透過性の材料からなる車両外板よりも車室外側に設けられるマーク本体部であって、光源と、前記光源に電流を流して発光させる受電コイルと、前記光源の光を外部に放出する発光領域と、を有するマーク本体部と、
電源に接続される給電コイルを有する給電部であって、前記車両外板よりも車室内側であって、且つ前記給電コイルの磁界内に前記受電コイルが存在する位置に設けられる給電部と、
を備える車両用発光装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用発光装置に関する。詳しくは、車両のトランクリッドやボンネットに設置されるエンブレムなどのマーク部を発光させる装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の外観の意匠性や高級感の向上を目的として様々な工夫がなされている。その一つに車両のトランクリッドやボンネットに設置されるエンブレムなどのマーク部を発光させたり照明することが行われている。特許文献1にはLEDランプと導光板レンズとを備えるマーク部において、導光板レンズによりLEDランプの光を面状光に変換して、マーク部を発光させる構成が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開平9−93019号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の装置では、通常、車両外板に車室内側へ連通する孔を設け、当該孔を利用して配線される。このように車両外板に孔を設ければ、当該孔を介して雨等が侵入するおそれがあるため、特別な防水対策を講じる必要がある。防水対策として、例えば、マーク部の大きさを車両外板の孔よりも大きくし、かかるマークの背後に車両外板の孔を設けて、マーク部の縁部全体を車両外板に対してシーリングすることが行われている。このような孔の設定によれば、マーク部が孔に対して遮蔽材として機能し、孔が外部から視認されることも防止される。しかし、このような防水対策を施すことは手間となっていた。また、このような設定では、マーク部は孔よりも大きい形状としなければならないため、マーク部はデザイン上の制約を受け、そのデザインの自由度が低下する。
そこで、本発明は以上の課題に鑑みて、特別の防水対策を必要とせず、マーク部を発光させる車両用発光装置を提供することを目的の一つとする。さらに、自由度の高いデザインを可能とするマーク部を発光させる車両用発光装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は以上の目的の少なくとも一つを達成するために、以下に示す発光装置を提供する。即ち、
磁界透過性の材料からなる車両外板よりも車室外側に設けられるマーク本体部であって、光源と、前記光源に電流を流して発光させる受電コイルと、前記光源の光を外部に放出する発光領域と、を有するマーク本体部と、
電源に接続される給電コイルを有する給電部であって、前記車両外板よりも車室内側であって、且つ前記給電コイルの磁界内に前記受電コイルが存在する位置に設けられる給電部と、
を備える車両用発光装置とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の発光装置では、まず、給電コイルが電力の供給を受けて磁界を発生する。車両外板は磁界を透過する材料で形成されているため、発生した磁界は車両外板を車室内側へ透過し、受電コイルに作用する。これによって、受電コイルに誘導電流が発生する。そしてこの誘導電流が光源に供給され、光源が発光する。その結果、光源の光は発光領域より外部へ放出される。これによって、マーク部が発光して視認されることとなる。
このように、電磁誘導作用を使用することにより、車両外板に配線用の孔を設けることなく、車両外板に設けられたマーク部を発光させることができる。従って、本発明の発光装置によれば、特別の防水対策を施すことなく十分な防水性を確保できる。また、本発明の発光装置では車両外板に配線用の孔を設ける必要がなくなるため、マーク部に遮蔽剤としての効果を持たせる必要が無くなり、マーク部が従来のようなデザイン上の制約を受けない。これにより、マーク本体部のデザインは高い自由度を有するため、意匠性の向上に寄与する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の発光装置における構成要素について詳細に説明する。本発明の発光装置はマーク本体部と給電部を備える。マーク本体部は光源、受電コイル及び発光領域を備える。
(マーク本体部)
マーク本体部は、車両外板よりも車両外側に設けられる。マーク本体部の形状は文字、幾何学図形など、例えば、車両の車種や製造会社を示すロゴマークの形状とすることができる。マーク本体部の材料は、特に限定されない。成形の容易さや耐候性などを考慮して、ABS樹脂をマーク本体部の材料として採用することができる。また、マーク本体部の一部又は全部を透過性材料によって形成してもよい。たとえば、メタクリル樹脂(PMMA)やポリカーボネート樹脂(PC)などを採用することができる。マーク本体部が設置される車両外板は、少なくともマーク本体部が設置される領域において、磁界を透過する材料で形成される。このような材料としては、ABS樹脂、メタクリル樹脂(PMMA)、ポリカーボネート樹脂(PC)などの合成樹脂等が挙げられる。マーク本体部は例えば、両面テープなどによって車両外板よりも車室外側の所定の位置に固定される。
【0008】
(光源) 光源の種類は特に限定されないが、LEDランプ又はEL素子であることが好ましい。LEDランプは、駆動電力が小さく、小型で、振動、衝撃に強いなどの利点を有するからである。LEDランプのタイプは特に限定されず、砲弾型、SMD型(表面実装型)等、種々のものを採用できる。LEDランプの発光色も特に限定されず、白色、青色、赤色、緑色など所望の発光色のLEDランプを使用できる。複数のLEDランプを光源として使用してもよい。光源としてEL(electro luminescence)素子を使用してもよい。EL素子は面状光源である。EL素子もLEDランプと同様に駆動電力が小さく、応答性に優れる。また薄型に構成することができ、マーク部のデザイン性の向上に寄与する。
【0009】
(受電コイル)
受電コイルは電気的に光源に接続される。受電コイルは後述する給電コイルから電磁誘導作用を受けて誘導電流を生じる。受電コイルに生じた誘導電流が光源へ流れることにより光源が発光する。受電コイルの巻数と給電コイルの巻数は必要とされる電圧により決定することができる。受電コイルの巻数は給電コイルの巻数もより多いことが好ましい。このようにすれば、昇圧回路が形成されることとなり、受電コイルに生じる電圧を上昇させることができるからである。これにより、光源へ供給される電力の安定化に図られる。
【0010】
(給電部)
給電部は給電コイルを有する。給電部は車両外板よりも車室内側に設けられ、且つ受電コイルが給電コイルの磁界内に存在するように給電部は配置される。このとき、給電コイルから受電コイルに対して電磁誘導作用が生じるように、給電コイルの磁界の方向と受電コイルの磁界の方向が合致するように配置される。給電部は給電コイルへ供給される電力を制御する制御回路を備えていても良い。たとえば、かかる制御回路を介して車両内部の電源から電力を供給することとしてもよい。
【0011】
(発光領域)
発光領域は光源の光を外部に放出する。本発明の一実施態様における発光装置では、光源は外部から視認されるように配置される。この場合、発光領域は光源の光放出部と一致する。他の実施態様では光源の光放出部側を光拡散透過性の意匠カバーで覆い、光源の光をかかる意匠カバーを拡散透過させて外部へ放出させる。この場合、意匠カバーの光放出部が発光領域となる。本発明の発光装置は導光体を更に備えていてもよい。例えば、光源の光を導光体へ入射して導光させた後、外部へ放出させる。この場合、導光体の光放出部が発光領域となる。
以下に本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0012】
本発明の一の実施例である発光装置1の構成を模式的に図1に示す。発光装置1はマーク本体部10と給電部20とで構成される。マーク本体部10は発光領域11、光源12、昇圧回路13及び受電回路14で構成される。給電部20は給電コイル21と制御回路22とで構成される。なお、制御回路22は車室内の電源23に接続されている。
発光装置1が取り付けられた自動車100の後部斜視図を図2に示す。発光装置1は自動車のボディー後部のトランクリッドに取り付けられる。図2に示すように発光装置1は自動車100のトランクリッドの外板の中央部(符号101、以下「取り付け部101」という)の車室外側に取り付けられる。取り付け部101はABS樹脂製である。マーク本体部10の分解斜視図を図3に示し、図2のI−I線縦断面図を図4に示す。図3に示すように、マーク本体部10は意匠カバー15の裏面側に基板カバー16、基板17及び導光体18をこの順で配置されるように備える。尚、符号19は白色両面テープである。
マーク本体部10の平面視形状は大小二つのだ円の一部が融合した形状である。意匠カバー15はABS樹脂製でありその観察面(表面)にはメッキが施されている。基板17の平面視形状はマーク本体部10の平面視形状の下半分と相似で若干小さい。基板17には、4つの突出部の上端部付近の意匠カバー15と反対側の面に4つの光源12が実装されている。光源12はSMDタイプ(表面実装型)の白色発光LEDランプである。基板17の下部の中央には受電コイル14が実装されている。また、基板17上には昇圧回路(図示せず)が設けられている。導光板18の平面視形状はマーク本体部10の平面視形状と略同一である(図3参照)。導光板18は上面に凹部18a、凹部18b及び凹部18cを備える。凹部18aは、基板17が導光板18の上面に嵌め込まれる形で配置されるように基板17に沿って形成される。凹部18bは、導光板18の上面の光源12に対向する位置に形成される。凹部18cは、導光板18の上面の受電コイル14に対向する位置に形成される。このように導光板18の上面にはニ段階の凹部が形成されている。凹部18aに基板17を嵌め込んだとき、光源12は凹部18b内に入り、受電コイル14は凹部18b内に入る。このように光源12及び受電コイル14は導光板18に包み込まれる(内包される)こととなる。一方、導光板18の側面18dにはシボ加工が施されている。
また、基板カバー16の形状は、導光板18の平面視形状の下半分に略同一の形状である(図3参照)。基板カバー16は導光板18に嵌め込まれた基板17を覆うように配置される。一方、白色両面テープ19は導光板18の平面視形状と略同一の形状を有する。白色テープ19は導光板18の裏面の略全面に接着されると同時に、自動車の取り付け部101へも接着する。それにより、導光板18が取り付け部101へ固定される。意匠カバー15、基板カバー16、基板17及び導光体18の各部材間は両面テープ(図示せず)により固定される。
【0013】
給電部20は取り付け部101の車室内側に設けられる。詳細には、図4に示すように、取り付け部101を挟んで、受電コイル14の近傍となるように、取り付け部101の車室内側面に取り付けられる。給電部20は基板23を備える。基板23上の、取り付け部101を挟んで受電コイル14に対向する位置には給電コイル21a、21bが実装されている。なお、基板23上には制御回路(図示せず)が設けられている。ここで受電コイル14が給電コイル23の磁界を受けて誘導電流を生じるように、受電コイル14と給電コイル21a、21bとの距離は小さく、かつその磁界の方向が合致するように両者は配置されている。図5に発光装置1の回路図を示す。図5に示すように、発光装置1は受電側回路10aと給電側回路20aの二つの回路を備える。受電側回路10aは受電コイル14、コンデンサ13a、ダイオード13b、4個のLEDランプ(光源12)により構成される。受電コイル14とコンデンサ13aとは並列に接続され、並列共振回路が形成される。さらにコンデンサ13aには光源に対して順方向であるダイオード13bが接続される。給電側回路20aは、直流電源23、給電コイル21a、21b、コンデンサ22aを備え、交流回路(制御回路)22が形成される。なお、給電コイル21a及び給電コイル21bの巻数は略同一である。受電コイル14の巻数はこれらの巻数よりも多い。
【0014】
次に発光装置1の使用態様について説明する。まず、車室内側の電源23から交流回路22へ電流が流れる(図5を参照)。給電側回路20aでは交流回路22により直流電源23の電圧は交流電圧に変換され、給電コイル21a、21bへ流れる。これにより、給電コイル21a、21bに磁界が発生する。この磁界は取り付け部101を透過して車室外側に存在する受電コイル14に到達し、電磁誘導作用により受電コイル14に誘導電流が生じる。ここで、各コイル(14、21a、21b)の巻数を上記の通りに設定したことから、昇圧回路が形成されることとなる。これにより受電コイル14に生じる電圧は昇圧される。その後、誘導電流はダイオード13bにより整流化され4個のLEDランプ(光源12)へ供給されて、光源12が発光する。光源12から放出された光は凹部18bの表面を介して導光体18に入射する。なお、受電コイル14とコンデンサ13aとが並列に接続されて並列共振回路が形成されている。この並列共振回路により、昇圧効果が高まる。
導光体18の正面図を図6に示し、入射光が導光する態様を模式的に示す。図6に示すように、導光体18に入射した光は導光体18内を導光する。導光体18の側面18dにはシボ加工が施されているため、側面18dに達した入射光は、側面18dにより拡散反射され、その一部の光は外部に放出される。これにより、マーク本体部10の意匠カバー15の周囲が照明され、マーク本体部10が浮き上がったように間接的に照明されることとなる。
このように、電磁誘導作用を利用することにより、車両外板に配線用の孔を設けることなく、車室内側の電源23の電力を駆動力として取り付け部101の車室外側に取り付けられたマーク本体部10を照明することができる。これにより、取り付け部101に特別の防水対策を施すことなく、高い防水効果を得ることができる。その結果、防水対策を施すための手間が省かれることとなる。さらに、発光装置1では取り付け部101に配線用の孔を設けない構成であるため、マーク本体部10はデザイン上の制約を受けない。これにより、マーク本体部10のデザインは高い自由度を有するため、高い意匠性を実現する。
【0015】
本実施例では発光装置1は自動車100のトランクリッド上に設置したが、自動車のサイドモール、ボンネットなどに設けられるマーク部の発光装置として使用することができる。また、自動車の外部天井に設置される表示灯や散光式警告灯(パトライト(登録商標)など)として使用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明の発光装置は、車両外板に設けられる様々な発光部の光源としてその利用が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は本発明の一の実施例である発光装置1の構成を示す図である。
【図2】図2は発光装置1が取り付けられた自動車100の後部斜視図である。
【図3】図3はマーク本体部10の分解斜視図である。
【図4】図4は図2のI−I線縦断面図である
【図5】図5は発光装置1の回路図である。
【図6】図6は導光体18の正面図に入射光が導光する態様を模式的に示した図である。
【符号の説明】
【0018】
1 発光装置
10 マーク本体部
11 発光領域
12 光源
14 受電コイル
15 意匠カバー
16 基板カバー
17 基板
18 導光体
20 給電部
21 21a 21b 給電コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁界透過性の材料からなる車両外板よりも車室外側に設けられるマーク本体部であって、光源と、前記光源に電流を流して発光させる受電コイルと、前記光源の光を外部に放出する発光領域と、を有するマーク本体部と、
電源に接続される給電コイルを有する給電部であって、前記車両外板よりも車室内側であって、且つ前記給電コイルの磁界内に前記受電コイルが存在する位置に設けられる給電部と、
を備える車両用発光装置。
【請求項2】
前記光源はLEDランプまたはEL素子であることを特徴とする、請求項1に記載の車両用発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−68785(P2008−68785A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−250432(P2006−250432)
【出願日】平成18年9月15日(2006.9.15)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】