説明

車両用白線認識装置

【課題】分岐路や路外のノイズ等が存在する場合にも自車走行路に対応する白線を精度良く認識することができる車両用白線認識装置を提供する。
【解決手段】ステレオ画像認識装置4は、左右の各白線検出領域Al,Ar内で検出した白線候補点Pcの各点群に基づいて左右の仮白線近似線xtl,Xtrをそれぞれ演算してこれらの平行性を判定する。平行性が低いと判定したとき、予め設定した評価方法に基づいて左右何れか一方の仮白線近似線Xtを正しい仮白線近似線として判定するとともに、他方を誤認識した仮白線近似線として判定し、正しいと判定した仮白線近似線Xtを誤認識側にオフセットさせた仮白線近似線Xgに基づいて候補点抽出領域αe1を設定する。そして、設定した候補点抽出領域αe1外の白線候補点Pcを削除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載カメラで撮像した画像に基づいて白線を認識する車両用白線認識装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の安全性の向上を図るため、積極的にドライバの運転操作を支援する運転支援装置が開発されている。この運転支援装置では、一般に、車線逸脱防止機能等を実現するため、自車前方の撮像画像等に基づいて白線の認識が行われ、この白線に基づいて自車走行レーンの推定が行われる。
【0003】
ところで、実際の道路上の白線には、単一の車線区画線で構成される白線の他に、車線区画線の内側に破線等からなる視線誘導線(補助線)が併設された二重白線等の各種バリエーションが存在する。
【0004】
そこで、この種の白線認識では、車線区画線のみならず補助線等の存在を十分に考慮する必要がある。このような白線認識についての技術として、例えば、特許文献1には、撮像画像上に設定された検索領域に対し、水平方向に延在する複数の検索ライン毎に、車幅方向内側から外側に向けて輝度変化を調べ、輝度が暗から明へと所定以上変化する最初のエッジ点を検出し、検出した点群に対してハフ変換等を用いたノイズ除去を行うことにより、白線開始点の検出精度を向上する技術が開示されている。
【0005】
このような技術によれば、ハフ変換等を行うことにより、基本的には実線を優先的に用いた白線認識が行われるため、精度良く白線を認識することが可能となる。すなわち、例えば、白線が車線区画線のみからなる単線である場合には、当該車線区画線に基づいて白線が認識される。また、例えば、白線が二重白線等である場合において、外側に位置する車線区画線が実線であっても、内側に位置する補助線が実線或いは実線に準ずる線(例えば、線分の間隔が比較的短い破線等)である場合には、主として内側に位置する補助線等に基づいて白線が認識される。一方、例えば、白線が二重白線等である場合において、外側に位置する車線区画線が実線であって、内側に位置する補助線が線分の間隔が比較的長い破線等である場合には、主として外側に位置する車線区画線に基づいて白線が認識される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−264955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の特許文献1に開示された技術のように、道路上の実線或いは実線に準ずる線を優先的に用いて白線認識を行う技術においても、例外的に、自車走行路を規定する白線を精度良く認識することが困難な場合がある。
【0008】
例えば、高速道路のインターチェンジ出口等の分岐路においては、分岐路を規定する車線区画線が実線で描かれる一方、自車走行路(本線)を規定する車線区画線が破線で描かれる場合が多く、このような場合、分岐路側の車線区画線を自車走行路の車線区画線として誤認識する虞がある。また、例えば、消えかかった白線よりも外側の路肩等に、残雪等が連続的に存在する場合、残雪等を車線区画線として誤認識する虞がある。
【0009】
これに対処し、自車の車両状態量(例えば、自車両の操舵状態等)に基づいて自車走行路に適合する白線を選定することも考えられるが、このように自車の車両状態量に基づいて認識した白線は、車線逸脱防止機能等に対してはそもそもの意味をなさない。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、分岐路や路外のノイズ等が存在する場合にも自車走行路に対応する白線を精度良く認識することができる車両用白線認識装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、自車走行路を撮像した画像上の左右の各白線検出領域内で水平方向に延在する検索ライン毎に車幅方向内側から外側に向けて輝度変化を調べ、輝度が暗から明に所定以上変化するエッジ点をそれぞれ白線候補点として検出する候補点検出手段と、前記各白線検出領域内で検出した前記白線候補点の各点群に基づいて左右の仮白線近似線をそれぞれ演算する仮近似線演算手段と、前記左右の仮白線近似線の平行性を判定する平行性判定手段と、前記平行性判定手段で平行性が低いと判定されたとき、予め設定した評価方法に基づいて、左右何れか一方の前記仮白線近似線を正しい仮白線近似線として判定し、他方を誤認識した仮白線近似線として判定する仮近似線評価手段と、前記仮近似線評価手段で正しいと判定された前記仮白線近似線をオフセットさせて誤認識側の候補点抽出領域を設定し、前記候補点抽出領域外の前記白線候補点を削除する候補点選定手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の車両用白線認識装置によれば、分岐路や路外のノイズ等が存在する場合にも自車走行路に対応する白線を精度良く認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】車両用運転支援装置の概略構成図
【図2】白線認識ルーチンを示すフローチャート
【図3】車外環境の撮像画像の一例を模式的に示す説明図
【図4】図3の画像から検出される白線候補点を示す説明図
【図5】検索ライン上における輝度の変化の一例を示す説明図
【図6】実空間に投影した白線候補点の一例を示す説明図
【図7】仮白線近似線の一例を示す説明図
【図8】道幅検出方法の一例を示す説明図
【図9】道幅検出方法の他の例を示す説明図
【図10】白線候補点抽出領域の一例を示す説明図
【図11】各白線候補点の点群に対するハフ直線の一例を示す説明図
【図12】ハフ変換の演算方法を示す説明図
【図13】ハフ空間を示す説明図
【図14】最終的に認識される白線近似線の一例を示す説明図
【図15】認識した白線に基づいて設定される白線検出領域を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の形態を説明する。図面は本発明の一実施形態に係わり、図1は車両用運転支援装置の概略構成図、図2は白線認識ルーチンを示すフローチャート、図3は車外環境の撮像画像の一例を模式的に示す説明図、図4は図3の画像から検出される白線候補点を示す説明図、図5は検索ライン上における輝度の変化の一例を示す説明図、図6は実空間に投影した白線候補点の一例を示す説明図、図7は仮白線近似線の一例を示す説明図、図8は道幅検出方法の一例を示す説明図、図9は道幅検出方法の他の例を示す説明図、図10は白線候補点抽出領域の一例を示す説明図、図11は各白線候補点の点群に対するハフ直線の一例を示す説明図、図12はハフ変換の演算方法を示す説明図、図13はハフ空間を示す説明図、図14は最終的に認識される白線近似線の一例を示す説明図、図15は認識した白線に基づいて設定される白線検出領域を示す説明図である。
【0015】
図1において、符号1は自動車等の車両(自車両)であり、この車両1には運転支援装置2が搭載されている。この運転支援装置2は、例えば、ステレオカメラ3、ステレオ画像認識装置4、制御ユニット5等を有して要部が構成されている。
【0016】
また、自車両1には、自車速Vを検出する車速センサ11、ヨーレートγを検出するヨーレートセンサ12、運転支援制御の各機能のON−OFF切換等を行うメインスイッチ13、ステアリングホイールに連結するステアリング軸に対設されて舵角θstを検出する舵角センサ14、ドライバによるアクセルペダル踏込量(アクセル開度)θaccを検出するアクセル開度センサ15等が設けられている。
【0017】
ステレオカメラ3は、ステレオ光学系として、例えば電荷結合素子(CCD)等の固体撮像素子を用いた1組のCCDカメラで構成されている。これら左右のCCDカメラは、それぞれ車室内の天井前方に一定の間隔を持って取り付けられ、車外の対象を異なる視点からステレオ撮像し、画像データをステレオ画像認識装置4に出力する。なお、以下の説明において、ステレオ撮像された画像のうち一方の画像(例えば、右側の画像)を基準画像と称し、他方の画像(例えば、左側の画像)を比較画像と称する。
【0018】
ステレオ画像認識装置4は、先ず、基準画像を例えば4×4画素の小領域に分割し、それぞれの小領域の輝度或いは色のパターンを比較画像と比較して対応する領域を見つけ出し、基準画像全体に渡る距離分布を求める。さらに、ステレオ画像認識装置4は、基準画像上の各画素について隣接する画素との輝度差を調べ、これらの輝度差が閾値を超えているものをエッジ点として抽出するとともに、抽出した画素(エッジ点)に距離情報を付与することで、距離画像(距離情報を備えたエッジ点の分布画像)を生成する。そして、ステレオ画像認識装置4は、生成した距離画像に対して周知のグルーピング処理を行い、予め記憶しておいた3次元的な枠(ウインドウ)と比較することで、自車前方の白線、側壁、立体物等を認識する。
【0019】
ここで、本実施形態において認識対象となる白線とは、例えば、単一の車線区画線や車線区画線の内側に視線誘導線等が併設された多重線(二重白線等)のように、道路上に延在して自車走行レーンを区画する線を総称するものであり、各線の形態としては、実線、破線等を問わず、更に、黄色線等をも含む。
【0020】
ところで、実際の道路上に敷設された白線には上述のように各種バリエーションが存在する他、白線の形態は走行路の分岐や合流等に伴って変化する。加えて、道路上には路面補修跡や、水溜まり、雪等の各種ノイズが存在する。従って、画一的な処理によって、全ての場面で精度良く白線を認識することは困難である。そこで、ステレオ画像認識装置4は、上述の距離画像に基づく白線認識のみに頼ることなく、各種方式を用いた白線認識を補完的に行い、これらの認識結果を複合的に判断して最終的な白線を認識する。
【0021】
このような白線認識の一つとして、ステレオ画像認識装置4は、自車前方を撮像した一方の画像(例えば、図3に示す基準画像)上の水平方向の輝度変化に基づいて白線認識を行う。
【0022】
具体的に説明すると、例えば、図4に示すように、ステレオ画像認識装置4は、画像上に左右の白線検出領域Al,Arを設定し、各白線検出領域Al,Ar内で水平方向に延在する複数の検索ラインLに対し、検索ラインL毎に車幅方向内側から外側に向けて輝度変顔を調べる。そして、ステレオ画像認識装置4は、各白線検出領域Al,Ar内の各検索ラインL上において、輝度が暗から明へと所定以上変化するエッジ点を白線候補点として検出する。ここで、各白線検出領域Al,Ar内の各検索ラインL上で検出された白線候補点Pcのうち、最初に検出された白線候補点Pc(すなわち、最も車幅方向内側の白線候補点Pc)が第1の候補点Pc1に分類され、以降、第2の候補点Pc2、第3の候補点Pc3…に分類される。
【0023】
また、ステレオ画像認識装置4は、各白線検出領域Al,Ar内で検出した白線候補点Pcの左右の各点群に基づいて仮の白線近似線(仮白線近似線)Xtl,Xtrをそれぞれ演算する。この場合、ステレオ画像認識装置4は、各白線検出領域Al,Arにおいて、検出した全ての白線候補点Pcに基づいて仮白線近似線Xtl,Xtrを演算することも可能であるが、演算処理の簡素化や過剰なノイズの混入防止等を図るため、各点群から抽出した第1の候補点Pc1のみに基づいて仮白線近似線Xtl,Xtrを演算することが好ましい。なお、この仮白線候補点Xtl,Xtrの演算は、前フレームで検出した白線候補点Pcの各点群に対して行うものであっても良い。
【0024】
また、ステレオ画像認識装置4は、演算した左右の仮白線近似線Xtl,Xtrの平行性を判定する。そして、ステレオ画像認識装置4は、仮白線近似線Xtl,Xtrの平行性が低いと判定したとき、予め設定した評価方法に基づいて、左右何れか一方の仮白線近似線Xtを正しい仮白線近似線として判定し、他方を誤認識した仮白線近似線Xtとして判定する。さらに、ステレオ画像認識装置4は、正しいと判定された仮白線近似線を誤認識側にオフセットさせ、当該オフセットさせた仮白線近似線Xgに基づいて誤認識側に候補点抽出領域αe1を設定し、当該候補点抽出領域αe1外の白線候補点Pcをノイズとして削除する。
【0025】
そして、このように仮白線近似線Xtl,Xtrの平行性が低いと判定して誤認識側の点群から白線候補点Pcのノイズが削除された場合、ステレオ画像認識装置4は、正しいと判定した側については白線検出領域Aで検出した白線候補点Pcの点群をそのまま用いるとともに、誤認識側についてはノイズを除去した後の白線候補点Pcの各点群を用いて、最終的な白線近似線Xl,Xrを演算する。一方、左右の仮白線近似線Xtl,Xtrの平行性が高いと判定した場合、ステレオ画像認識装置4は、各白線検出領域Al,Arで検出した白線候補点Pcの各点群をそのまま用いて最終的な白線近似線Xl,Xrを演算する。
【0026】
このように、本実施形態において、ステレオ画像認識装置4は、候補点検出手段、仮近似線演算手段、平行性判定手段、仮近似線評価手段、及び、候補点選定手段としての各機能を実現する。
【0027】
なお、ステレオ画像認識装置4は、その他の種々の方法によって白線認識を行うことが可能となっている。そして、ステレオ画像認識装置4は、例えば、各白線認識において認識した白線の近似線と当該認識に用いられたエッジ点等の白線候補点との関係(例えば、近似線に対する白線候補点の分散等)に基づき、認識した各近似線の中から最も適切な近似線を選択し、当該近似線を最終的な白線の近似線として制御ユニット5に出力する。
【0028】
制御ユニット5には、ステレオ画像認識装置4で認識された自車両1前方の走行環境情報が入力される。さらに、制御ユニット5には、自車両1の走行情報として、車速センサ11からの車速V、ヨーレートセンサ12からのヨーレートγ等が入力されると共に、ドライバによる操作入力情報として、メインスイッチ13からの操作信号、舵角センサ14からの舵角θst、アクセル開度センサ15からのアクセル開度θacc等が入力される。
【0029】
そして、例えば、ドライバによるメインスイッチ13の操作を通じて、運転支援制御の機能の1つであるACC(Adaptive Cruise Control)機能の実行が指示されると、制御ユニット5は、ステレオ画像認識装置4で認識した先行車方向を読み込み、自車走行路上に追従対象の先行車が走行しているか否かを識別する。
【0030】
その結果、追従対象の先行車が検出されていない場合は、スロットル弁16の開閉制御(エンジンの出力制御)を通じて、ドライバが設定したセット車速に自車両1の車速Vを維持させる定速走行制御を実行する。
【0031】
一方、追従対象車両である先行車が検出され、且つ、当該先行車の車速がセット車速以下の場合は、先行車との車間距離を目標車間距離に収束させた状態で追従する追従走行制御が実行される。この追従走行制御時において、制御ユニット5は、基本的にはスロットル弁16の開閉制御(エンジンの出力制御)を通じて、先行車との車間距離を目標車間距離に収束させる。さらに、先行車の急な減速等によりスロットル弁16の制御のみでは十分な減速度が得られないと判断した場合、制御ユニット5は、アクティブブースタ17からの出力液圧の制御(ブレーキの自動介入制御)を併用し、車間距離を目標車間距離に収束させる。
【0032】
また、ドライバによるメインスイッチ13の操作を通じて、運転支援制御の機能の1つである車線逸脱防止機能の実行が指示されると、制御ユニット5は、例えば、自車走行レーンを規定する左右の白線(ステレオ画像認識装置4で認識した白線の近似線)に基づいて警報判定用ラインを設定するとともに、自車両1の車速Vとヨーレートγとに基づいて自車進行経路を推定する。そして、制御ユニット5は、例えば、自車前方の設定距離(例えば、10〜16[m])内において、自車進行経路が左右何れかの警報判定用ラインを横切っていると判定した場合、自車両1が現在の自車走行車線を逸脱する可能性が高いと判定し、車線逸脱警報を行う。
【0033】
次に、ステレオ画像認識装置4において実行される、基準画像上の輝度変化に基づく白線認識について、図2に示す白線認識ルーチンのフローチャートに従って説明する。なお、本ルーチンによる処理は、左右の白線検出領域Al,Arそれぞれに対して同様の処理が個別に行われるものであるが、説明を簡略化するため、以下の説明において特に必要な場合を除き、例えば白線検出領域Al,Arを総称して白線検出領域Aと標記する等、左右の属性を示す添字”l”及び”r”を適宜省略して説明する。
【0034】
このルーチンがスタートすると、ステレオ画像認識装置4は、先ず、ステップS101において、例えば、前フレームの画像に対するステップS108の処理で設定された白線検出領域A内の各検索ラインL毎に、白線候補点Pcの検出を行う。具体的には、例えば、図5に示すように、ステレオ画像認識装置4は、車幅方向内側から外側に向けて、各検索ラインL上でのエッジ検出を行い、車幅方向外側の画素が内側の輝度に対して相対的に高く、且つ、その変化量を示す輝度の微分値がプラス側の設定閾値以上となる点(エッジ点Pe(+))を検出するとともに、車幅方向外側の画素の輝度が内側の画素の輝度に対して相対的に低く、且つ、その変化量を示す輝度の微分値がマイナス側の設定閾値以下となる点(エッジ点Pe(−))を検出する。そして、ステレオ画像認識装置4は、白線検出領域A内の各検索ラインL上において、エッジ点Pe(−)と対をなすエッジ点Pe(+)を、車幅方向内側から順に、白線候補点Pcとして検出する。ここで、上述のように、白線検出領域A内の各検索ラインL上において、最初に検出された白線候補点Pcが第1の候補点Pc1に分類され、以降、順に、第1の候補点Pc2、第3の候補点Pc3、…、に分類される。なお、図4,6等においては、説明を簡略化するため検索ラインL及び各白線候補点Pc等が所定に間引かれて表示されている。
【0035】
続くステップS102において、ステレオ画像認識装置4は、例えば、左右の白線候補点Pcの各点群から第1の候補点Pc1をそれぞれ抽出し、抽出した各第1の候補点Pc1に基づいて、以下の(1)、(2)式に示す二次の最小自乗法を用いた仮白線近似線Xtl,Xtrを演算する(図7参照)。
Xtl=at1・Z+bt1・Z+ct1 … (1)
Xtr=at2・Z+bt2・Z+ct2 … (2)
ここで、(1)、(2)式においてat1,at2、bt1,bt2、及び、ct1,ct2は最小自乗法によって求められるパラメータを示す。
【0036】
ステップS102からステップS103に進むと、ステレオ画像認識装置4は、演算した左右の仮白線近似線Xtl,Xtrの平行性を判定する。具体的には、例えば、図8に示すように、自車遠方と近傍と設定距離Da,Dbにおける左右の仮白線近似線Xtl,Xtrの幅Wa,Wbを求め、以下の(3)式を用いて判定値Epを演算する。
Ep=(Wa−Wb+Da−Db)/(Da−Db) … (3)
そして、ステレオ画像認識装置4は、演算した判定値Epが予め設定された閾値Epth以上であるとき、左右の仮白線近似線Xtl,Xtrの平行性が低い(すなわち、仮白線近似線Xtl,Xtrが遠方で広がっている)と判定する。
【0037】
ここで、例えば、左右の各第1の候補点Pc1に対する仮白線近似線Xtl,Xtrの近似誤差(例えば、近似誤差平均、近似平均の差等)が設定値以上である場合、例えば、図9に示すように、自車遠方と近傍の設定領域A1,A2において、各第1の候補点Pc1を一次の最小自乗法を用いた直線でそれぞれ近似し、各近似直線に基づいて幅Wa,Wbを求めることも可能である。
【0038】
続くステップ104において、ステレオ画像認識装置4は、ステップS103で判定した仮白線近似線Xtl,Xtrの平行性を参照し、平行性が低いと判定した場合にはステップS105に進み、平行性が高いと判定した場合にはステップS107に進む。
【0039】
ステップS104からステップS105に進むと、ステレオ画像認識装置4は、左右の仮白線近似線Xtl,Xtrのうち、誤認識した側の仮白線近似線Xt(すなわち、平行性を損なう主要因となった側の仮白線近似線Xt)の判定を行う。具体的に説明すると、ステレオ画像認識装置4は、左右の各第1の候補点Pc1に対する仮白線近似線Xtl,Xtrの近似誤差を調べ、近似誤差の小さい何れか一方の仮白線近似線Xtを正しい仮白線近似線として判定し、近似誤差の大きい他方の仮白線近似線Xtを誤認識した仮白線近似線として判定する。但し、左右の各近似誤差が何れも予め設定した閾値未満である場合、ステレオ画像認識装置4は、ステップS101で第2の候補点Pc2を多く検出している側を、自車線を規定する白線以外のノイズをより多く検出している可能性が高い側とみなし、誤認識側と判定する。
【0040】
そして、ステップS105からステップS106に進むと、ステレオ画像認識装置4は、正しいと判定した側の仮白線近似線Xtに基づいて、誤認識側の白線候補点Pcを選定する。具体的に説明すると、ステレオ画像認識装置4は、正しいと判定した側の仮白線近似線Xtを、自車走行路の道幅Wb分だけ誤認識側にオフセットさせ、当該オフセットさせた仮白線近似線Xgを基準とする両側所定幅α1内の領域を候補点抽出領域αe1として設定する。例えば、図10に示すように、右側の仮白線近似線Xtrが正しいと判定されている場合、ステレオ画像認識装置4は、以下の(4)式を用いて仮白線近似線Xtrをオフセットさせた仮白線近似線Xgを演算する。
Xg=a2・Z+b2・Z+c2−Wb … (4)
そして、ステレオ画像認識装置4は、例えば、以下の(5)、(6)式を用いて候補点抽出領域αe1を基底する各境界線Xs,Xeを演算する。
Xs=Xg+α1 … (5)
Xe=Xg−α1 … (6)
ここで、(4)式に用いられる道幅Wbとしては、例えば、前フレームで過去に検出された道幅W_old等を好適に用いることが可能である。なお、左側の仮白線近似線Xtlが正しいと判定されている場合、上述の(4)〜(6)式において、Wb及びα1の加減算が逆転する。
【0041】
さらに、ステレオ画像認識装置4は、誤認識側について、候補点抽出領域αe1外の白線候補点Pcをノイズとして削除した後、ステップS107に進む。
【0042】
ステップS104、或いは、ステップS106からステップS107に進むと、ステレオ画像認識装置4は、残存している左右の白線候補点Pcの各点群に基づいて最終的な白線近似線Xl,Xrを演算する。具体的に説明すると、ステレオ画像認識装置4は、先ず、白線候補点Pcの各点群に基づいて白線の近似直線をそれぞれ演算する。すなわち、ステレオ画像認識装置4は、例えば、図12に示すように、点群を構成する各白線候補点Pcそれぞれに対し、点Pc(x,z)を通る直線hの傾きθを0°から180°まで所定の角度Δθ毎変化させ、以下の(7)式に基づいて、各θにおける原点Oから直線hまでの距離(垂線の長さ)ρを求める。
ρ=x・cosθ+z・sinθ … (7)
そして、ステレオ画像認識装置4は、各点Pcについて求めたθとρの関係を、例えば、図13に示すハフ平面(θ,ρ)上の該当箇所に度数として投票(投影)する。さらに、ステレオ画像認識装置4は、ハフ平面(θ,ρ)上の度数が最も大きくなるθとρの組合せを抽出し、当該θとρを用いて(7)式で規定される近似直線(ハフ直線)Hを点群の近似式として設定する(図11参照)。
【0043】
さらに、ステレオ画像認識装置4は、近似直線Hを基準とする帯状の領域を候補点分類領域αe2として設定する。すなわち、ステレオ画像認識装置4は、近似直線Hを車幅方向内側及び外側にα2だけ平行移動して形成された領域を候補点分類領域αe2として設定する(図11参照)。ここで、α2としては、例えば、前フレームで検出した白線の幅の半分の長さを画面上の画素数に変換して用いることが望ましい。
【0044】
そして、ステレオ画像認識装置4は、設定した候補点分類領域αe2外に存在する白線候補点Pcをノイズとして削除した後、残存している左右の白線候補点Pcの各点群に基づいて、以下の(8)、(9)式に示す二次の最小自乗法を用いた白線近似線Xl,Xrを演算する(図14参照)。
Xl=a1・Z+b1・Z+c1 … (8)
Xr=a2・Z+b2・Z+c2 … (9)
ここで、(8)、(9)式においてa1,a2、b1,b2、及び、c1,c2は最小自乗法によって求められるパラメータを示す。
【0045】
ステップS107からステップS108に進むと、ステレオ画像認識装置4は、ステップS107で演算した白線の近似線に基づき、次フレームで使用する白線検出領域Aを設定した後、ルーチンを抜ける。すなわち、ステップS108において、ステレオ画像認識装置4は、例えば、図15に示すように、ステップS107で演算した左右の白線近似線Xl,Xrに対し、(10)〜(13)式に示すように、それぞれ実空間上で、lin_ws[m]だけ車幅方向にオフセットした線Xsl,Xsrと、lin_wr[m]だけ車幅方向外側にオフセットした線Xel,Xerを設定する。
【0046】
すなわち、ステレオ画像認識装置4は、左側の白線近似線X1に対し、
Xsl=al・Zl+bl・Zl+cl+lin_Wsl … (10)
を設定すると共に、右側の白線近似線Xrに対し、
Xsr=ar・Zr+br・Zr+cr−lin_Wsr … (11)
を設定する。
また、ステレオ画像認識装置4は、左側の白線近似線Xlに対し、
Xel=al・Zl+bl・Zl+cl−lin_Wel … (12)
を設定すると共に、右側の白線近似線Xrに対し、
Xer=ar・Zr+br・Zr+cr+lin_Wer … (13)
を設定する。そして、ステレオ画像認識装置4は、実空間上において(10)式と(12)式とで囲まれた領域を画像上の座標系へ座標変換することで、左側の白線検出領域Alとして設定し、(11)式と(13)式とで囲まれた領域を同様に画像上の座標系へ座標変換することで、右側の白線検出領域Arとして設定する。
【0047】
このような実施形態によれば、左右の各白線検出領域Al,Ar内で検出した白線候補点Pcの各点群に基づいて左右の仮白線近似線xtl,Xtrをそれぞれ演算してこれらの平行性を判定し、平行性が低いと判定したとき、予め設定した評価方法に基づいて左右何れか一方の仮白線近似線Xtを正しい仮白線近似線として判定するとともに、他方を誤認識した仮白線近似線として判定し、正しいと判定した仮白線近似線Xtを誤認識側にオフセットさせた仮白線近似線Xgに基づいて候補点抽出領域αe1を設定し、設定した候補点抽出領域αe1外の白線候補点Pcを削除することにより、分岐路や路外のノイズ等が存在する場合にも自車走行路に対応する白線を精度良く認識することができる。
【0048】
すなわち、自車走行路を規定する左右の白線は基本的には略平行に敷設されており、しかも、自車走行路の左右方向に同時に分岐路等が存在することは非常に希であることに着目し、左右の仮白線近似線Xtl,Xtrの平行性が低い場合には、何れか一方の仮白線近似線が正しく、他方が誤認識であると判定することにより、分岐路に沿う白線等を自車走行路の白線として誤認識することを防止できる。その上で、正しいと判定した仮白線近似線Xtを誤認識側にオフセットさせ、オフセットさせた仮白線近似線Xgに基づいて設定した候補点抽出領域αe1外の白線候補点Pcをノイズとして削除することにより、実際の自車走行路に沿う白線候補点Pcを好適に抽出することができる。
【0049】
この場合において、左右の白線候補点Pcの各点群に対し、二次の最小自乗法を用いて仮白線近似線Xtl,Xtrを演算し、自車遠方と近傍の設定距離における左右の仮白線近似線Xtl,Xtr間の幅の変化に基づいて平行性を判定することにより、簡単な演算で平行性の判定を行うことができる。
【0050】
また、二次の最小自乗法を用いた仮白線近似線Xtl,Xtrの近似誤差が大きい場合には、自車前方の設定領域A1,A2毎に白線候補点Pcの各点群を一次の最小自乗法を用いて近似して平行性の判定を行うことにより、白線候補点Pcが各点群中で分散している場合にも判定精度を維持することができる。
【0051】
なお、上述の実施形態はステレオ画像処理を例にとり説明したが、本願発明は、これに限定されるものではなく、例えば、単眼のカメラによる白線認識においても適用が可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 … 車両(自車両)
2 … 運転支援装置
3 … ステレオカメラ
4 … ステレオ画像認識装置(候補点検出手段、仮近似線演算手段、平行性判定手段、仮近似線評価手段、候補点選定手段)
5 … 制御ユニット
11 … 車速センサ
12 … ヨーレートセンサ
13 … メインスイッチ
14 … 舵角センサ
15 … アクセル開度センサ
16 … スロットル弁
17 … アクティブブースタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車走行路を撮像した画像上の左右の各白線検出領域内で水平方向に延在する検索ライン毎に車幅方向内側から外側に向けて輝度変化を調べ、輝度が暗から明に所定以上変化するエッジ点をそれぞれ白線候補点として検出する候補点検出手段と、
前記各白線検出領域内で検出した前記白線候補点の各点群に基づいて左右の仮白線近似線をそれぞれ演算する仮近似線演算手段と、
前記左右の仮白線近似線の平行性を判定する平行性判定手段と、
前記平行性判定手段で平行性が低いと判定されたとき、予め設定した評価方法に基づいて、左右何れか一方の前記仮白線近似線を正しい仮白線近似線として判定し、他方を誤認識した仮白線近似線として判定する仮近似線評価手段と、
前記仮近似線評価手段で正しいと判定された前記仮白線近似線を誤認識側にオフセットさせて候補点抽出領域を設定し、前記候補点抽出領域外の前記白線候補点を削除する候補点選定手段と、を備えたことを特徴とする車両用白線認識装置。
【請求項2】
前記仮近似線演算手段は、現フレーム或いは前フレームで検出した前記白線候補点の各点群に対し、二次の最小自乗法を用いて左右の前記仮白線近似線を演算し、
前記平行性判定手段は、自車遠方と近傍の設定距離における左右の前記仮白線近似線間の幅の変化に基づいて平行性を判定することを特徴とする請求項1記載の車両用白線認識装置。
【請求項3】
前記仮近似線演算手段は、二次の最小自乗法を用いた前記仮白線近似線の近似誤差が大きい場合は、自車前方の設定領域毎に前記白線候補点の各点群を一次の最小自乗法を用いて近似することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用白線認識装置。
【請求項4】
前記仮近似線演算手段は、前記各白線検出領域内の前記各検索ライン毎に第1の候補点として最も車幅方向内側に検出される前記白線候補点を用いて、前記仮白線近似線を演算し、
前記仮近似線評価手段は、前記第1の候補点に対する近似誤差が大きい側の前記仮白線近似線を、誤認識した仮白線近似線として判定することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の車両用白線認識装置。
【請求項5】
前記仮近似線評価手段は、前記第1の候補点以外の前記白線候補点が多く検出されている側の前記仮白線近似線を、誤認識した仮白線近似線として判定することを特徴とする請求項4記載の車両用白線認識装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−22574(P2012−22574A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160985(P2010−160985)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】