説明

車両用空力構造

【課題】車輪廻りの空気流を効果的に整流することができる車両用空力構造を得る。
【解決手段】車両用空力構造10では、ホイールハウス15を構成するフェンダライナ20における前輪12の回転軸線RCよりも車体前後方向の前側に、前輪12の回転方向の下流側を向く空気流対向壁24を一般面20Aに対し段差状を成す溝壁とすると共に、空気流対向壁24における前輪12から遠い方の前端部24Aから延設された空気流案内壁26を他の溝壁とする幅方向溝22が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪廻りの空気流を整流するための車両用空力構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のホイールハウス内における車輪に対する前側にバッフルを固定して構成された空力スタビライザが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特表2003−528772号公報
【特許文献2】実開平1−145585号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記の如き従来の技術では、ホイールハウスからバッフルが突出しているので、車輪との干渉を避ける等の種々の制約があり、十分な整流効果を得るように構成することが困難であった。
【0004】
本発明は、上記事実を考慮して、車輪廻りの空気流を効果的に整流することができる車両用空力構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明に係る車両用空力構造は、ホイールハウス内における車輪の回転軸心よりも車体前後方向の前側に、前記車輪の回転方向の下流側を向く空気流対向壁を形成する段差部を設けた。
【0006】
請求項1記載の車両用空力構造が適用された車両では、走行に伴って空気流が車輪の前面に当たりホイールハウス内を後方(車輪回転方向の上流側)に向かう空気流が生じる。一方、車両の走行(車輪の回転)に伴ってホイールハウス内には、車輪の回転に引きずられて前方(車輪回転方向の下流側)に向かう空気流が生じる。
【0007】
ここで、本車両用空力構造では、ホイールハウス内で車輪回転方向の下流側を向く空気流対向壁が車輪の回転中心に対する前側に設けられているため、ホイールハウス内を後方に向かう空気流は、該空気流対向壁によって(例えば衝突することによって)、さらに後方へ向かってホイールハウス内を流れることが抑制される。これにより、ホイールハウス内を後方に向かう空気流と前方に向かう空気流との干渉が抑制され、これらの流れはスムースに車輪の側方に排出される。すなわち、車輪廻りの空気流が整流される。
【0008】
そして、本車両用空力構造では、ホイールハウス内の段差部に空気流対向壁が設けられているため、空気流対向壁を、車輪側に突出させることなく、ホイールハウス内を後方に向かう空気流を抑制するように車輪回転方向の下流側に向けて設置することができる。したがって、本車両用空力構造では、空気流対向壁を、車輪との干渉等の制約を受けることなく所要の性能を発揮するように設置することができる。
【0009】
このように、請求項1記載の車両用空力構造では、車輪廻りの空気流を効果的に整流することができる。
【0010】
請求項2記載の発明に係る車両用空力構造は、少なくとも車体前後方向の前側及び車体上下方向の上側から車輪を覆う車輪被覆部材における前記車輪の回転軸心よりも車体前後方向の前側部分に、前記車輪被覆部材と前記車輪との間で該車輪の回転方向の下流側を向く空気流対向壁を形成する段差部を設けた。
【0011】
請求項2記載の車両用空力構造では、走行に伴って空気流が車輪の前面に当たり、車輪被覆部材と車輪との間を後方(車輪回転方向の上流側)に向かう空気流が生じる。一方、車両の走行(車輪の回転)に伴って車輪被覆部材と車輪との間には、車輪の回転に引きずられて前方(車輪回転方向の下流側)に向かう空気流が生じる。
【0012】
ここで、本車両用空力装置では、車輪被覆部材と車輪との間で車輪回転方向の下流側を向く空気流対向壁が、該車輪被覆部材における車輪の回転中心よりも前側に設けられているため、車輪被覆部材と車輪との間内を後方に向かう空気流は、該空気流対向壁によって(例えば衝突することによって)、さらに後方へ向かって車輪被覆部材と車輪との間を流れることが抑制される。これにより、車輪被覆部材と車輪との間内を後方に向かう空気流と前方に向かう空気流との干渉が抑制され、これらの流れはスムースに車輪の側方に排出される。すなわち、車輪廻りの空気流が整流される。
【0013】
そして、本車両用空力構造では、車輪被覆部材と車輪との間で車輪回転方向の下流側を向くように、該車輪被覆部材の段差部として空気流対向壁が設けられているため、空気流対向壁を、車輪側に突出させることなく、ホイールハウス内を後方に向かう空気流を抑制するように車輪回転方向の下流側に向けて設置することができる。したがって、本車両用空力構造では、空気流対向壁を、車輪との干渉等の制約を受けることなく所要の性能を発揮するように設置することができる。
【0014】
このように、請求項2記載の車両用空力構造では、車輪廻りの空気流を効果的に整流することができる。
【0015】
請求項3記載の発明に係る車両用空力構造は、請求項1又は請求項2記載の車両用空力構造において、前記段差部の空気流対向壁における前記車輪から遠い側の端部から前記車輪の回転方向の下流側に延設された空気流案内壁をさらに有する。
【0016】
請求項3記載の車両用空力構造では、ホイールハウス内又は車輪被覆部材と車輪との間を後方に向かう空気流が、空気流案内壁に沿って流れて空気流対向壁に導かれる。この空気流が空気流案内壁に塞き止められることで、該空気流対向壁の近傍では圧力が高まるので、車輪側に突出しない空気流対向壁によってホイールハウス内又は車輪被覆部材と車輪との間を後方に向かう空気流を効果的に抑制することができる。
【0017】
請求項4記載の発明に係る車両用空力構造は、請求項3記載の車両用空力構造において、前記空気流対向壁と前記空気流案内壁とは、互いの側とは反対側の端部が前記車輪の回転方向の異なる開口縁とされると共に、車幅方向に延在する幅方向溝を構成している。
【0018】
請求項4記載の車両用空力構造では、段差部すなわち空気流対向壁と、空気流案内へ器とで車幅方向に延在する幅方向溝が形成されているため、車幅(車輪幅)方向の各部で、ホイールハウス内又は車輪被覆部材と車輪との間を後方に向かう空気流を抑制して、全体として整流効果を高めることができる。なお、幅方向溝は、例えば車輪の全幅に亘り該車輪に対向(開口)するように車幅方向に延在されることが好ましく、ホイールハウス又は車輪被覆部材の全幅に亘り設定することができる。
【0019】
請求項5記載の発明に係る車両用空力構造は、内側に車輪が配設されたホイールハウスの内面側における前記車輪の回転軸よりも車体前後方向の前側で車幅方向に沿って設けられ、前記車輪に向けて開口された幅方向溝を備え、前記幅方向溝は、前記車輪の回転方向下流側を向く空気流対向壁と、該空気流対向壁における前記車輪から通り側の端部から車体上下方向の下流側に延設された空気流案内壁とを溝壁として構成されている。
【0020】
請求項5記載の車両用空力構造では、走行に伴って空気流が車輪の前面に当たりホイールハウス内を後方(車輪回転方向の上流側)に向かう空気流が生じる。一方、車両の走行(車輪の回転)に伴ってホイールハウス内には、車輪の回転に引きずられて前方(車輪回転方向の下流側)に向かう空気流が生じる。
【0021】
ここで、本車両用空力構造では、ホイールハウス内で車輪側を向く空気流対向壁が車輪の回転中心に対する前側で車幅方向に延在されているため、ホイールハウス内を後方に向かう空気流は、該空気流対向壁によって(例えば衝突することによって)、さらに後方へ向かって流れることが抑制される。これにより、ホイールハウス内を後方に向かう空気流と前方に向かう空気流との干渉が抑制され、これらの流れはスムースに車輪の側方に排出される。すなわち、車輪廻りの空気流が整流される。
【0022】
そして、本車両用空力構造では、ホイールハウス内の幅方向溝の溝壁として空気流対向壁が設けられているため、空気流対向壁を、車輪側に突出させることなく、ホイールハウス内を後方に向かう空気流を抑制するように車輪回転方向の下流側に向けて設置することができる。したがって、本車両用空力構造では、空気流対向壁を、車輪との干渉等の制約を受けることなく所要の性能を発揮するように設置することができる。
【0023】
このように、請求項5記載の車両用空力構造では、車輪廻りの空気流を効果的に整流することができる。
【0024】
請求項6記載の発明に係る車両用空力構造は、請求項4又は請求項5記載の車両用空力構造において、前記幅方向溝は、前記車輪に対する車体前後方向の前側における該車輪に対し車体上下方向にオーバラップする範囲内に設けられている。
【0025】
請求項6記載の車両用空力構造では、幅方向溝が車輪に対し車体上下方向にオーバラップする範囲内に設けられているため、換言すれば、ホイールハウス内又は車輪被覆部材と車輪との間における車輪回転方向の下流側部分に幅方向溝が設定されているため、該ホイールハウス内又は車輪被覆部材と車輪との間を後方に向かう空気流をより上流側で抑制することができ、ホイールハウス内又は車輪被覆部材と車輪との間を後方に向かう空気流と前方に向かう空気流とを一層スムースに車輪の側方に排出させることができる。
【0026】
請求項7記載の発明に係る車両用空力構造は、請求項4乃至請求項6の何れか1項記載の車両用空力構造において、前記空気流案内壁は、前記空気流対向壁とは反対側の端部が該空空気流対向壁側の端部よりも前記車輪に近接されている。
【0027】
請求項7記載の車両用空力構造では、幅方向溝におけるホイールハウス内又は車輪被覆部材と車輪との間を後方に向かう空気流の上流端側で空気流路が絞られているため、ホイールハウス内又は車輪被覆部材と車輪との間への空気流の流入量を抑えることができる。このため、本車両用空力構造では、ホイールハウス内又は車輪被覆部材と車輪との間を後方に向かう空気流の抑制効果が高い。
【0028】
請求項8記載の発明に係る車両用空力構造は、請求項7記載の車両用空力構造において、前記幅方向溝は、空気流案内壁における前記空気流対向壁とは反対側の端部が、前記ホイールハウス又は前記車輪被覆部材における前記車輪の前側に位置する下端部に一致されている。
【0029】
請求項8記載の車両用空力構造では、ホイールハウス又は車輪被覆部材と車輪との間における上流側開口端(後方に向かう空気流の流入部分)で空気流路が絞られているため、ホイールハウス内又は車輪被覆部材と車輪との間への空気流の流入をより上流側で効果的に抑えることができる。すなわち、ホイールハウス内又は車輪被覆部材と車輪との間への空気流の流入量が一層抑えられ、ホイールハウス内又は車輪被覆部材と車輪との間を後方に向かう空気流の抑制効果が一層高くなる。
【0030】
請求項9記載の発明に係る車両用空力構造は、請求項1乃至請求項8の何れか1項記載の車両用空力構造において、前記空気流対向壁には、前記ホイールハウス内又は前記車輪被覆部材と前記車輪との間に空気を吹き出すための吹出口が設けられている。
【0031】
請求項9記載の車両用空力構造では、空気流対向壁から吹き出した空気によって、ホイールハウス内又は車輪被覆部材と車輪との間を後方に向かう空気流は、さらに後方に向かって流れることが抑制される。これにより、ホイールハウス内又は車輪被覆部材と車輪との間を後方に向かう空気流が空気流対向壁に衝突することに頼ることなく、又は該衝突よる空気流の抑制の補助として、ホイールハウス内又は車輪被覆部材と車輪との間を後方に向かう空気流を抑制することができる。
【発明の効果】
【0032】
以上説明したように本発明に係る車両用空力構造は、車輪廻りの空気流を効果的に整流することができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明の第1の実施形態に係る車両用空力構造10について、図1乃至図3基づいて説明する。なお、各図に適宜記す矢印FR、矢印UPは、それぞれ車両用空力構造10が適用された自動車Sの前方向(進行方向)、上方向を示しており、以下単に上下前後及び車幅方向の内外を示す場合は上記各矢印方向に対応している。
【0034】
図2には、車両用空力構造10が適用された車両としての自動車Sが模式的な側面図にて示されている。この図に示される如く、自動車Sは、それぞれ車輪としての前輪12、後輪14を備えている。前輪12、後輪14はそれぞれ対応するホイールハウス15内に配設されている。前輪12が配設されたホイールハウス15は、フロントフェンダ16に側面視で下向きに開口する略半円弧状に形成されたホイールアーチ16Aによって、前輪12の転舵可能に側方に開口している。また、この実施形態では、後輪14が配設されたホイールハウス15は、リヤフェンダ18に側面視で下向きに開口する略半円弧状に形成されたホイールアーチ18Aによって、後輪14を露出させるように開口している。
【0035】
そして、この実施形態では、自動車Sは、左右の前輪12、後輪14のそれぞれ(が配設されたホイールハウス15)に車両用空力構造10が適用されている。これら左右の前輪12、後輪14に適用された車両用空力構造10の構造が基本的に共通するので、以下、1つの車両用空力構造10について説明することとする。
【0036】
図1には、前輪12が配設されたホイールハウス15が側断面図にて示されている。この図に示される如く、ホイールハウス15内には、車輪被覆部材としてのフェンダライナ20が配設されている。フェンダライナ20は、側面視でホイールアーチ16Aに対応しかつ該ホイールアーチ16Aよりも若干大径の略円弧状形成されると共に、平面視で前輪12を覆い隠す(図示省略)略矩形状に形成されている。
【0037】
この形状により、フェンダライナ20は、後述する幅方向溝22を除く部分の内面である一般面20Aは、前輪12の外周からの距離が略一定とされて、前輪12を前方、後方、及び上方から覆っている。フェンダライナ20の下端は、ホイールハウス15の下向き開口端すなわち車体の下端部と略一致されており、この実施形態では、前輪12の回転軸線RCを通る水平面に沿った仮想線Lhよりも下側に位置している。狭義には、このフェンダライナ20の内側(内周側)の空間が本発明におけるホイールハウスに相当する。
【0038】
そして、車両用空力構造10は、ホイールハウス15内、より具体的にはフェンダライナ20に設けられた幅方向溝22を備えている。幅方向溝22は、図1に示される如く、フェンダライナ20における前輪12の回転軸線RCよりも前方の部分、具体的には、前輪12の回転軸線RCを通り鉛直方向に沿った仮想線Lvとフェンダライナ20の前下端20Bとの間の周方向に沿った領域A内に設置されている。したがって、幅方向溝22は、前輪12の回転軸線RCに対し、該前輪12の回転方向(矢印R参照)の下流側に設置されている。
【0039】
この実施形態では、幅方向溝22は、その開口部22Aの上側開口縁22Bが前輪12の上端12A(を通る水平面)よりも下側に位置すると共に、その開口部22Aの下側開口縁22Cが前輪12の下端12B(を通る水平面)よりも上側に位置する構成とされている。すなわち、幅方向溝22は、上下方向の全長に亘って前輪12に対し上下方向にオーバラップしている。
【0040】
図1に示される如く、幅方向溝22は、開口部22Aを前輪12側に向けており、該開口部22Aが、側面視でフェンダライナ20の一般面20A(の延長線)と略面一となる(連続する円弧を形成する)構成とされている。すなわち、幅方向溝22は、フェンダライナ20に、一般面20Aに対し径方向内向きに凹となるように形成された凹部として把握することができる。そして、この幅方向溝22は、前輪12の回転方向の下流側を向く空気流対向壁24と、該空気流対向壁24における前輪12から遠い方の前端部24Aから前輪12の回転方向下流側に向けて延設された空気流案内壁26とを溝壁として構成されている。
【0041】
この実施形態では、空気流対向壁24は、側面視で略前後方向に延在して前輪12の回転方向の下流側である下側を向いており、その前端部24Aとは反対側の後端部24Bが開口部22Aの上側開口縁22Bに一致されている。これにより、空気流対向壁24は、図1に示すホイールハウス15の前部内を略上向きに流れる空気流Ffに向かうように延在しており、幅方向溝22に流入した空気流Ffが衝突するようになっている。
【0042】
一方、空気流案内壁26は、空気流対向壁24の前端部24Aに連続する上端部26Aとは反対側の下端部26Bが開口部22Aの下側開口縁22Cに一致されている。さらに、この実施形態では、空気流案内壁26の下端部26Bすなわち幅方向溝22の下側開口縁22Cは、フェンダライナ20の前下端20Bに略一致されている。この実施形態においては、フェンダライナ20の一般面20Aと空気流案内壁26とを段差状に連続する空気流対向壁24が、本発明における段差部に相当する。
【0043】
また、開口部22Aの開口面がフェンダライナ20の一般面20Aと面一状であるため、空気流案内壁26は、その上端部26Aが下端部26Bよりも前輪12(回転軸線RC)から離間している。この実施形態では、空気流案内壁26は、下端部26Bから上端部26Aにかけて、徐々に前輪12からの距離が大きくなるように、フェンダライナ20の一般面20Aに対し傾斜した傾斜壁として把握することができる。
【0044】
以上説明した幅方向溝22は、フェンダライナ20に車幅方向の全幅に亘り形成されている。したがって、幅方向溝22は、車幅方向の両端が前輪12の幅方向端部に対し車幅方向外側に位置しており、前輪12の全幅に亘り該前輪12(の前向き面)対向するように配置されている。また、図示は省略するが、幅方向溝22の車幅方向両端は、側壁部にて閉止されている。この側壁部は、フェンダライナ20に一体的に形成しても良く、ホイールハウス15の車幅方向外端を規定するフロントフェンダ16、ホイールハウス15の車幅方向内端を規定するホイールハウスインナ等で側壁部を構成しても良い。また、幅方向溝22を図示しない隔壁にて車幅方向に区画しても良い。
【0045】
以上により、車両用空力構造10では、幅方向溝22によって空気流Ffの一部が塞き止められて該幅方向溝22内の圧力が上昇し、これに伴い幅方向溝22の開口部22Aと前輪12との間の圧力が上昇する構成とされている。この圧力上昇によって車両用空力構造10では、空気流Ffのホイールハウス15内への流入、空気流対向壁24を越えて上後方に向かう空気流の発生を抑制するようになっている。
【0046】
以上、前輪12に適用される車両用空力構造10について説明したが、図1に括弧付の符号を付して示すように、後輪14に適用される車両用空力構造10についても、上記した構成と同様に構成されている。
【0047】
次に、上記実施形態の作用を説明する。
【0048】
前輪12用、後輪14用の車両用空力構造10は、基本的に同様の作用効果を奏するので、以下、これら適用される車輪を区別せずに車両用空力構造10の作用を説明することとする。
【0049】
上記構成の車両用空力構造10が適用された自動車Sでは、その走行に伴って、図3(A)に示される如く、走行風が前輪12の前面に当たり、ホイールハウス15内、より具体的には前輪12とフェンダライナ20との間に前輪12の前側から流入する空気流Ffが生成される。一方、前輪12が矢印R方向に回転するのに伴って、該前輪12の回転に引きずられるようにして、前輪12の後方からホイールハウス15に前輪12の後側から略上向きに流入する空気流Frが生じる。
【0050】
ここで、車両用空力構造10では、前輪12の回転軸線RCよりも前側に幅方向溝22が配置されているため、空気流Ffの一部は、空気流案内壁26に案内されて幅方向溝22に流入し、空気流対向壁24に衝突する。このため、ホイールハウス15内における前輪12の上側を経由して該前輪12の後方へ向かう空気流Ffの一部が塞き止められて幅方向溝22内の圧力が上昇し、この圧力上昇範囲が幅方向溝22と前輪12との間の空間まで及ぶ。
【0051】
これにより、車両用空力構造10では、図3(A)に矢印Bにて示される如く、上記した圧力上昇部分を通過できない空気流Ffが前輪12の側方を流れるようにホイールハウス15から排出される。一方、ホイールハウス15内における前輪12の上側を経由して該前輪12の前方へ向かう空気流Frは、空気流対向壁24に空気流Ffが衝突することで生じた圧力上昇部分に至ると、図3(A)に矢印Cにて示される如く、前輪12の側方を流れるようにホイールハウス15から排出される。このように、空気流対向壁24に空気流Ffが衝突することで生じた圧力上昇部分によって空気流Ff、Frは、共に勢いが弱められて干渉するので、スムースに前輪12の側方から排出される。
【0052】
例えば、図3(B)に示される比較例に係る構成では、幅方向溝22を備えないため、ホイールハウス15内で巻き上げられた空気流Ffと前輪12の回転に引きずられた空気流Frとが強い勢いで衝突するため、矢印Dにて示される如き干渉流れが生じる。この干渉流れは、車体側方の空気流を乱すことにより空気抵抗の改善を阻害する原因となり、また前輪12側方の空気流を乱すことにより操縦安定性の改善を阻害する原因となる。
【0053】
これに対して車両用空力構造10では、上記の如く幅方向溝22によって、ホイールハウス15内における空気流対向壁24と前輪12との間に圧力上昇部を生成するため、空気流Ffの巻き上げが抑制されることで該空気流Ffと空気流Frとの衝突(干渉)が著しく緩和され、ホイールハウス15に流入した空気は、図3(A)に矢印B、矢印Cにて示す如く車体側方にスムースに排出される。これにより、車体側方から後方に向かう空気流が整流され(乱れが抑制され)、空気抵抗の低減が図られる。また、前輪12の側方での干渉流れの発生が抑制されるので、前輪12に作用する空気力変動も抑制され、操縦安定性の向上が図られる。そして、これらの効果が左右の前輪12、後輪14のそれぞれについて得られるので、自動車S全体として、空気抵抗、操縦安定性の改善効果が大きい。
【0054】
特に、車両用空力構造10では、空気流対向壁24の前端部24Aから空気流Ffの流入側に向かう空気流案内壁26が延設されているため、該空気流案内壁26によって空気流Ffが空気流対向壁24に向けて案内される。これにより、空気流対向壁24と前輪12との間に圧力を効果的上昇させることができる。しかも、幅方向溝22は、車幅方向に延在しているため、前輪12の幅方向の広い範囲で空気流対向壁24と前輪12との間に圧力を効果的上昇させることができる。この実施形態では、前輪12の全幅に亘り幅方向溝22が対向しているので、空気流対向壁24と前輪12との間に圧力を一層効果的上昇させることができる。
【0055】
また、車両用空力構造10では、フェンダライナ20における仮想線Lvとフェンダライナ20の前下端20Bとの間の領域A内における、前輪12と上下方向にオーバラップする範囲に幅方向溝22を設けたため、換言すれば、ホイールハウス15における空気流Ffの流入部の近傍(上流側)に幅方向溝22を配置したため、空気流Ffが空気流Frとで干渉流れを生成する前に空気流対向壁24と前輪12との間に圧力上昇部を発生させることができる。このため、干渉流れ(完全には排除されない)の影響をより効果的に排除することができる。
【0056】
さらに、車両用空力構造10では、空気流案内壁26の下端部26Bが上端部26Aよりも前輪12に近接して位置しているため、換言すれば、下端部26Bが、ホイールハウス15における前輪12前方の下向き開口部を幅方向溝22の設置部分に対し前後方向に絞っているため、空気流Ffのホイールハウス15内への流入量が減少される。しかも、空気流案内壁26の下端部26B(幅方向溝22の下側開口縁22C)がフェンダライナ20の前下端20Bに略一致しているため、すなわち空気流Ffのホイールハウス15への流入口が絞られているため、空気流Ffのホイールハウス15内への流入量が一層減少される。これらにより、矢印Bにて示す空気流Ffの前輪12の側方からの排出量が減少されて、車体、前輪12の側方での空気流の乱れが一層効果的に抑制される。
【0057】
そして、本車両用空力構造10では、空気流Ffに対向する空気流対向壁24がホイールハウス15内(フェンダライナ20と前輪12との間)の段差部として設けられているため、空気流対向壁24は、前輪12側に突出されることなく、空気流Ffを抑制するように車輪回転方向の下流側に向けて設置されている。したがって、本車両用空力構造10では、空気流対向壁24を、例えば自動車Sの操舵時やバウンス時の前輪12との干渉等の制約を受けることなく所要の性能を発揮するように設置することができる。すなわち、所要の空力性能発揮するための空気流対向壁24(幅方向溝22)の寸法、形状、配置に対する自由度が高い。
【0058】
また、例えばホイールハウス15内に突出する空力部材を設けた構成では、該空力部材に、着雪や着氷が生じることが懸念され、このような着雪や着氷は、発達すると前輪12の転舵を阻害する原因となるが、車両用空力構造10では、ホイールハウス15を広げる方向の段差部として空気流対向壁24が形成されているため、着氷や着雪の恐れが極めて少ない。
【0059】
次に本発明の他の実施形態を説明する。なお、上記第1の実施形態又は前出の構成と基本的に同一の部品・部分については上記第1の実施形態又は前出の構成と同一の符号を付してその説明(図示)を省略する。
【0060】
(第2の実施形態)
図4には、本発明の第2の実施形態に係る車両用空力構造30の要部が図1に対応する側断面図にて示されている。この図に示される如く、車両用空力構造30は、フェンダライナ20の一般面20Aと略面一である空気流案内壁26の下端部26Bにて下端が閉止された幅方向溝22に代えて、下端が開放された幅方向溝32を備える点で、第1の実施形態に係る車両用空力構造10とは異なる。
【0061】
具体的には、幅方向溝32は、空気流対向壁24と、該空気流対向壁24の前端部24Aから垂下された空気流案内壁34とを溝壁として有して構成されている。この空気流案内壁34は、空気流対向壁24の前端部24Aに連続する上端部34Aとは反対側の下端部34Bが、フェンダライナ20の一般面20Aよりも前輪12から離間した位置で、フェンダライナ20の前下端20B(第1の実施形態とは前後方向の位置が異なる)まで至っている。
【0062】
幅方向溝32は、前輪12側を向く開口部32Aの上側開口縁32Bが空気流対向壁24の後端部24Bに一致しており、下向きに開口した幅方向溝32には、幅方向溝22の下側開口縁22Cの相当する部分が存在しない(フェンダライナ20一般面20Aとは径方向にオフセットした空気流案内壁34の下端部34Bとして把握することもできる)。フェンダライナ20の全幅に亘り形成されており、幅方向溝22と同様に図示しない側壁にて車幅方向両端が閉止されている。車両用空力構造30における他の構成は、車両用空力構造10の対応する構成と同じである。なお、この実施形態においては、フェンダライナ20の一般面20Aと空気流案内壁34とを段差状に連続する空気流対向壁24が、本発明における段差部に相当する。
【0063】
以上説明した車両用空力構造30では、フェンダライナ20における領域Aの範囲内で特に前輪12の前方に位置する部分に幅方向溝32を設けたため、自動車Sの走行に伴って幅方向溝32によって案内された空気流Ffの一部は空気流対向壁24に塞き止められる。これにより、空気流対向壁24と前輪12との間に圧力上昇部が生じるので、幅方向溝32の下端(空気流Ffの流れ方向上流端)が絞られている構成による作用効果を除いて、基本的に第1の実施形態と同様の作用によって同様の効果を得ることができる。
【0064】
(第3の実施形態)
図5には、第3の実施形態に係る車両用空力構造40の要部が図1に対応する側面図にて示されている。この図に示される如く、車両用空力構造40は、フェンダライナ20における前輪12の回転方向の下流端側に配置された幅方向溝22に代えて、より上流側に配置された幅方向溝42を備える点で、第1の実施形態に係る車両用空力構造10とは異なる。
【0065】
具体的には、幅方向溝42は、その開口部42Aの上側開口縁42Bが前輪12の上端12Aよりも上方に位置すると共に、開口部42Aの上側開口縁42Bが前輪12の上端12Aよりも下方である仮想線Lhよりも上側に位置するように、領域A内に設置されている。より具体的には、幅方向溝42は、前輪12の回転方向の下流側を向く空気流対向壁44と、該空気流対向壁44における前輪12から遠い方の前上端部44Aから前輪12の回転方向下流側に向けて延設された空気流案内壁46とを溝壁として構成されている。
【0066】
この実施形態では、空気流対向壁44は、全体として前輪12の上端12Aよりも上方に位置して仮想線Lv、Lhに対し傾斜して前下方を向いており、その前上端部44Aとは反対側の後下端部44Bが開口部42Aの上側開口縁42Bに一致されている。これにより、空気流対向壁44は、図4に示すホイールハウス15の前部内を略上向きに流れる空気流Ffに向かうように延在しており、幅方向溝42に流入した空気流Ffが衝突するようになっている。
【0067】
一方、空気流案内壁46は、空気流対向壁44の前上端部44Aに連続する上端部46Aとは反対側の下端部46Bが開口部42Aの下側開口縁42Cに一致されている。この実施形態においては、フェンダライナ20の一般面20Aと空気流案内壁46とを段差状に連続する空気流対向壁44が、本発明における段差部に相当する。
【0068】
また、開口部42Aの開口面がフェンダライナ20の一般面20Aと面一状であるため、空気流案内壁46は、その上端部46Aが下端部46Bよりも前輪12(回転軸線RC)から離間している。この実施形態では、空気流案内壁46は、下端部46Bから上端部46Aにかけて、徐々に前輪12からの距離が大きくなるように、フェンダライナ20の一般面20Aに対し傾斜した傾斜壁として把握することができる。
【0069】
以上説明した幅方向溝42は、フェンダライナ20の全幅に亘り形成されており、幅方向溝22と同様に図示しない側壁にて車幅方向両端が閉止されている。車両用空力構造40における他の構成は、車両用空力構造10の対応する構成と同じである。
【0070】
したがって、第3の実施形態に係る40によっても、幅方向溝22(下側開口縁22C)がホイールハウス15における空気流Ffの流入口に臨むように後けられた構成による効果を除いて、第1の実施形態に係る車両用空力構造10と同様の作用によって同様の効果を得ることができる。また、車両用空力構造40では、例えば他の機能部品や構造物の配置等の制約により、フェンダライナ20の前下端20B側に幅方向溝22を形成することができない場合でも、空気流Ffの一部を塞き止めることで、該空気流Ffと空気流Frとの干渉を抑制する整流効果を得ることができる。
【0071】
(第4の実施形態)
図6には、本発明の第4の実施形態に係る車両用空力構造50の要部が図1に対応する側断面図にて示されている。この図に示される如く、車両用空力構造50は、幅方向溝32と幅方向溝42とが共に設けられている点で、第1乃至第3の実施形態に係る車両用空力構造10、30、40とは異なる。
【0072】
具体的には、車両用空力構造50では、幅方向溝32の開口部32Aの上側開口縁32B(空気流対向壁24の後端部24B)と、幅方向溝42の開口部42Aの下側開口縁42Cとが一致するように、幅方向溝32と幅方向溝42とがフェンダライナ20の周方向に連設されている。車両用空力構造50における他の構成は、車両用空力構造10、30、40の対応する構成と同じである。なお、この実施形態においては、空気流対向壁24、空気流対向壁44が、それぞれ本発明における段差部に相当する。
【0073】
以上説明した車両用空力構造50では、幅方向溝32の下端(空気流Ffの流れ方向上流端)が絞られている構成による作用効果を除いて、基本的に第1の実施形態と同様の作用によって同様の効果を得ることができる。この車両用空力構造50は、例えば他の機能部品や構造物の配置等の制約により空気流対向壁24の前後方向の長さが十分に得られない場合に、空気流対向壁24による空気流Ffの塞き止め効果を補うように幅方向溝42を設け、所要の空力性能を得ることができる。
【0074】
なお、第4の実施形態では、幅方向溝32と幅方向溝42とを共に設けられ胃を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、幅方向溝22と幅方向溝42とを連接した構成としても良く、これらをフェンダライナ20(ホイールハウス15)の周方向に離間して配置しても良い。
【0075】
また、第4の実施形態では、2つの幅方向溝32、42が設けられた例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば3つ以上の幅方向溝32等を設けた構成としても良い。
【0076】
(第5の実施形態)
図7には、本発明の第5の実施形態に係る車両用空力構造60の要部が斜視図にて示されている。この図6及び図8に示される如く、車両用空力構造60では、幅方向溝22を構成する空気流対向壁24に吹出口62が設けられている点で、第1の実施形態に係る車両用空力構造10とは異なる。なお、図8の矢印Wは、車幅方向を示している。
【0077】
吹出口62は、フェンダライナ20を厚み方向に貫通して形成されてホイールハウス15内に開口している。また、この吹出口62は、車体におけるホイールハウス15を構成するホイールハウスインナパネルを貫通した部分を介して、例えばエンジンルームやブレーキ冷却風の導入用ダクト等の車体内部に連通されている。したがって、車両用空力構造60では、自動車Sの走行に伴って、車体内部からホイールハウス15内に、空気が導入される構成とされている。
【0078】
この実施形態では、吹出口62は、車幅方向に長手とされ、フェンダライナ20の略全幅に亘る長さ有している。これにより、吹出口62は、前輪12の幅方向の全範囲を含む広さでホイールハウス15内に車体内部からの空気を導入する構成とされている。
【0079】
この吹出口62は、図7及び図8に示される如く、単一の開口部として形成されても良く、図9(A)乃至図9(C)に示される如く複数(図示例では2つ)の開口部(群)として構成されても良い。また、吹出口62は、図9(A)に示される如く単なるスリット(窓部)とされても良く、図9(B)に示される如く後向きに開く切り起こし状のスリットとされても良く、図9(C)に示される如く前向きに開く切り起こし状のスリットとされても良い。これらは、フェンダライナ20(ホイールハウスインナパネルに幅方向溝22、吹出口62を設ける構成では、該ホイールハウスインナパネル)の材料や成形構造等に応じて適宜選択することができる。
【0080】
車両用空力構造60における他の構成は、車両用空力構造10の対応する構成と同じである。この第5の実施形態に係る車両用空力構造60の作用について、車両用空力構造10の作用と異なる部分を説明する。
【0081】
上記構成の車両用空力構造60が適用された自動車Sでは、その走行に伴って、吹出口62からホイールハウス15内、より具体的には前輪12とフェンダライナ20との間に車体内部から流入する空気流Fbが生成される。この空気流Fbによって、吹出口62が形成された空気流対向壁24と前輪12との間に圧力上昇部が生成され、この圧力生成部によって、走行風のホイールハウス15内への巻き上げ流である空気流Ffが押し下げられる如き作用が生じる。
【0082】
これにより、車両用空力構造60では、図示は省略するが図3(A)の場合と同様に、空気流Ffが前輪12の側方を流れるようにホイールハウス15から排出されると共に、空気流Frが前輪12の側方を流れるようにホイールハウス15から排出される。このように、空気流対向壁24から空気流Fbを吹き出すことで生じた圧力上昇部分によって空気流Ff、Frは、共に勢いが弱められて干渉するので、スムースに前輪12の側方から排出される。
【0083】
また、車両用空力構造60では、空気流Ffが空気流対向壁24に衝突することによる該空気流対向壁24と前輪12との間の圧力上昇作用も生じる。このため、車両用空力構造60では、吹出口62からの空気流Fbによる圧力上昇効果と、空気流対向壁24での塞き止めによる圧力上昇効果により、空気流Ffと空気流Frとの干渉が抑制され、これらの空気流が前輪12の側方からスムースに排出される。
【0084】
したがって、車両用空力構造60によっても、作用(メカニズム)が若干異なるものの、第1の実施形態に係る車両用空力構造10と同様の効果を得ることができる。換言すれば、車両用空力構造60では、空気流対向壁24での塞き止めによる圧力上昇効果が、吹出口62からの空気流Fbによる圧力上昇効果によって補助されたものと把握することができ、例えば他の機能部品や構造物の配置等の制約により空気流対向壁24の前後方向の長さが十分に得られない場合等に、吹出口62を設けて所要の空力性能を得ることができる。
【0085】
すなわち、自動車S毎の制約に応じて、車両用空力構造10、30、40、50、60を適宜選択して適用すれば良い。したがって、前輪12と後輪14とで、異なる車両用空力構造10、30、40、50、60を採用しても良い。
【0086】
なお、上記実施形態では、幅方向溝22・32・42がフェンダライナ20に形成された例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、車体におけるホイールハウス15を構成するホイールハウスインナパネル等に幅方向溝22・32・42を形成しても良く、また例えば、マッドガードを備えた構成においては、該マッドガードに幅方向溝22・32・42を形成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る車両用空力構造の要部を拡大して示す側断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る車両用空力構造が適用された自動車を模式的に示す側断面図である。
【図3】(A)は、本発明の第1の実施形態に係る車両用空力構造による整流状態を概念的に示す側断面図、(B)は、比較例での空気乱れ状態を概念的に示す側断面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る車両用空力構造を示す側断面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る車両用空力構造を示す側断面図である。
【図6】本発明の第4の実施形態に係る車両用空力構造を示す側断面図である。
【図7】本発明の第5の実施形態に係る車両用空力構造を示す側断面図である。
【図8】本発明の第5の実施形態に係る車両用空力構造の要部を示す斜視図である。
【図9】(A)〜(C)のそれぞれは、本発明の第5の実施形態に係る車両用空力構造を構成する吹出口のそれぞれ異なる変形例を示す側断面図である。
【符号の説明】
【0088】
10 車両用空力構造
12 前輪(車輪)
14 後輪(車輪)
15 ホイールハウス
20 フェンダライナ(車輪被覆部材)
22 幅方向溝
24 空気流対向壁
26 空気流案内壁
30・40・50・60 車両用空力構造
32・42 幅方向溝
34・46 空気流案内壁
44 空気流対向壁
62 吹出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホイールハウス内における車輪の回転軸心よりも車体前後方向の前側に、前記車輪の回転方向の下流側を向く空気流対向壁を形成する段差部を設けた車両用空力構造。
【請求項2】
少なくとも車体前後方向の前側及び車体上下方向の上側から車輪を覆う車輪被覆部材における前記車輪の回転軸心よりも車体前後方向の前側部分に、前記車輪被覆部材と前記車輪との間で該車輪の回転方向の下流側を向く空気流対向壁を形成する段差部を設けた車両用空力構造。
【請求項3】
前記段差部の空気流対向壁における前記車輪から遠い側の端部から前記車輪の回転方向の下流側に延設された空気流案内壁をさらに有する請求項1又は請求項2記載の車両用空力構造。
【請求項4】
前記空気流対向壁と前記空気流案内壁とは、互いの側とは反対側の端部が前記車輪の回転方向の異なる開口縁とされると共に、車幅方向に延在する幅方向溝を構成している請求項3記載の車両用空力構造。
【請求項5】
内側に車輪が配設されたホイールハウスの内面側における前記車輪の回転軸よりも車体前後方向の前側で車幅方向に沿って設けられ、前記車輪に向けて開口された幅方向溝を備え、
前記幅方向溝は、前記車輪の回転方向下流側を向く空気流対向壁と、該空気流対向壁における前記車輪から通り側の端部から車体上下方向の下流側に延設された空気流案内壁とを溝壁として構成されている車両用空力構造。
【請求項6】
前記幅方向溝は、前記車輪に対する車体前後方向の前側における該車輪に対し車体上下方向にオーバラップする範囲内に設けられている請求項4又は請求項5記載の車両用空力構造。
【請求項7】
前記空気流案内壁は、前記空気流対向壁とは反対側の端部が該空気流対向壁側の端部よりも前記車輪に近接されている請求項4乃至請求項6の何れか1項記載の車両用空力構造。
【請求項8】
前記幅方向溝は、空気流案内壁における前記空気流対向壁とは反対側の端部が、前記ホイールハウス又は前記車輪被覆部材における前記車輪の前側に位置する下端部に一致されている請求項7記載の車両用空力構造。
【請求項9】
前記空気流対向壁には、前記ホイールハウス内又は前記車輪被覆部材と前記車輪との間に空気を吹き出すための吹出口が設けられている請求項1乃至請求項8の何れか1項記載の車両用空力構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−207711(P2008−207711A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−47276(P2007−47276)
【出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】