説明

車両用空力構造

【課題】突出部の近傍における乱流の発生を抑制する。
【解決手段】車両用ホイールハウス構造10では、車輪20の車両後側からホイールハウス18への空気流Fが衝突面30に衝突して、ホイールハウス18への空気の流入が抑制されることで、ホイールハウス18内の空気流を整流できて、車両12の空気抵抗を低減できる。ここで、段差部28の傾斜面30と衝突面32との間の案内面34が、衝突面32に衝突した空気流Fを傾斜面30へ案内する。このため、衝突面32に衝突した空気流Fが段差部28から剥離することを抑制できて、案内面34の近傍における乱流の発生を抑制でき、車両12の操舵フィーリングに悪影響を与えることを抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のホイールハウス内の空気流を整流する車両用空力構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用空力構造としては、ホイールハウスの内周面に突条が車幅方向に沿って設けられたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、この車両用空力構造では、突条の先端が断面円形にされている。このため、ホイールハウスの車両後側部分内に下側から流入されて突条の下側面に車両前斜め下方から衝突した空気流が、突条の先端において突条から剥離し易い。これにより、突条の先端近傍において乱流が発生し易く、乱流が回転する車輪の挙動に作用して、車両の操舵フィーリングに悪影響を与える可能性がある。
【特許文献1】実開昭62−29980号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事実を考慮し、突出部の近傍における乱流の発生を抑制できる車両用空力構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の車両用空力構造は、車両のホイールハウスに車幅方向に沿って設けられると共に、前記ホイールハウス内における車輪の回転軸心よりも車両後側に配置され、前記車輪側へ突出される突出部と、前記突出部に設けられると共に、下側に向けられ、前記車輪の回転に伴い前記ホイールハウス内へ向かう空気流が衝突する衝突面と、前記突出部に前記衝突面の上側において設けられると共に、車両前側に向けられ、下端が前記衝突面の車両前側端に連絡された連絡面と、前記突出部に前記衝突面と前記連絡面との間において設けられ、前記衝突面に衝突した空気流を前記連絡面へ案内する案内面と、を備えている。
【0006】
請求項2に記載の車両用空力構造は、請求項1に記載の車両用空力構造において、前記衝突面と前記案内面との内角及び前記連絡面と前記案内面との内角を鈍角にした、ことを特徴としている。
【0007】
請求項3に記載の車両用空力構造は、請求項1又は請求項2に記載の車両用空力構造において、前記案内面を複数有し、前記案内面と前記案内面との内角を鈍角にした、ことを特徴としている。
【0008】
請求項4に記載の車両用空力構造は、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の車両用空力構造において、前記衝突面及び前記案内面を平面又は凹面にした、ことを特徴としている。
【0009】
請求項5に記載の車両用空力構造は、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の車両用空力構造において、前記衝突面と前記案内面との境界部及び前記連絡面と前記案内面との境界部を湾曲面にした、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の車両用空力構造では、車両のホイールハウスに突出部が車幅方向に沿って設けられており、突出部は、ホイールハウス内における車輪の回転軸心よりも車両後側に配置されると共に、車輪側へ突出されている。さらに、突出部に設けられた衝突面が、下側に向けられると共に、突出部に衝突面の上側において設けられた連絡面が、車両前側に向けられており、連絡面の下端が衝突面の車両前側端に連絡されている。
【0011】
ところで、車輪の回転に伴いホイールハウス内へ向かう空気流が衝突面に衝突する。このため、車輪の回転に伴うホイールハウス内への空気流の流入が抑制されて、ホイールハウス内の空気流を整流できる。
【0012】
ここで、突出部に衝突面と連絡面との間において案内面が設けられており、案内面は、衝突面に衝突した空気流を連絡面へ案内する。このため、空気流の突出部からの剥離を抑制することができ、突出部の近傍における乱流の発生を抑制することができる。
【0013】
請求項2に記載の車両用空力構造では、衝突面と案内面との内角及び連絡面と案内面との内角が鈍角にされている。このため、衝突面と案内面との境界部及び連絡面と案内面との境界部における空気流の突出部からの剥離を抑制することができる。
【0014】
請求項3に記載の車両用空力構造では、案内面を複数有しており、案内面と案内面との内角が鈍角にされている。このため、案内面と案内面との境界部における空気流の突出部からの剥離を抑制することができる。
【0015】
請求項4に記載の車両用空力構造では、衝突面及び案内面が平面又は凹面にされている。このため、衝突面及び案内面における空気流の突出部からの剥離を抑制することができる。
【0016】
請求項5に記載の車両用空力構造では、衝突面と案内面との境界部及び連絡面と案内面との境界部が湾曲面にされている。このため、衝突面と案内面との境界部及び連絡面と案内面との境界部における空気流の突出部からの剥離を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
[第1の実施の形態]
図1には、本発明の第1の実施の形態に係る車両用空力構造としての車両用ホイールハウス構造10が車両左方から見た断面図にて示されており、図2には、車両用ホイールハウス構造10の主要部が車両左方から見た断面図にて示されている。なお、図面では、車両前方を矢印FRで示し、上方を矢印UPで示す。
【0018】
本実施の形態に係る車両用ホイールハウス構造10は、車両12に適用されており、車両12の前部及び後部には、車幅方向両端において、板状のフェンダパネル14が設けられている。フェンダパネル14には、略半円弧状のホイールアーチ16(タイヤ包絡線)が形成されており、ホイールアーチ16内は、下向きに開口している。
【0019】
車両12の前部及び後部には、ホイールアーチ16の車幅方向内側において、略半円柱状のホイールハウス18が形成されており、ホイールハウス18の内周面は、ホイールアーチ16の外周側に配置されている。ホイールハウス18内には、車輪20(前輪、後輪)が回転可能に設けられており、特に車輪20が前輪である場合には、車輪20が、ホイールアーチ16の外周内側に配置されて、ホイールアーチ16の車幅方向外側へ転舵(車幅方向へ傾動)可能にされている。
【0020】
車輪20の車幅方向内側には、ブレーキ装置(図示省略)が設けられており、ブレーキ装置は、車輪20の回転を制動して、車両12を制動可能にされている。
【0021】
ホイールハウス18内には、ホイールアーチ16の外周側において、樹脂製で板状のフェンダライナ22が設けられており、フェンダライナ22は、車両側面視略円弧状にされてホイールアーチ16に沿って湾曲されると共に、車輪20の外周面の上側部分を被覆している。
【0022】
フェンダライナ22の車両後側部分かつ下側部分には、空力スタビライザ24が設けられている。
【0023】
空力スタビライザ24には、幅方向溝としての三角柱状のストッパ溝26が所定数(本実施の形態では2つ)設けられており、ストッパ溝26は、車幅方向に沿って配置されている。ストッパ溝26は、車輪20側に開口されており、ストッパ溝26の車幅方向両端は、フェンダライナ22の車幅方向両端位置において閉塞されている。
【0024】
所定数のストッパ溝26は、車輪20の回転中心軸線O(回転軸心)の車両後側における車輪20と高さが同一の範囲内に配置されている。具体的には、車輪20の回転中心軸線Oを中心とした最上のストッパ溝26の上端の水平面Hに対する上側へのなす角αは、50°以下にされるのが好ましく、40°以下にされるのが一層好ましく、30°程度にされている。最下のストッパ溝26の下端は、車輪20の回転中心軸線Oを通る水平面Hに比し、下側に配置されており、最下のストッパ溝26の下端は、下側に配置される程好ましい。
【0025】
空力スタビライザ24には、突出部としての断面略三角形状の段差部28(突条)が所定数(本実施の形態では2つ)設けられており、段差部28は、車輪20側に突出されている。段差部28は、ストッパ溝26の上側において、車幅方向に沿って配置されており、所定数の段差部28は、上下方向において連続して配置されている。
【0026】
段差部28の上側面は、連絡面としての平面状の傾斜面30にされており、傾斜面30は、車両前斜め上方に向けられている。段差部28の下側面は、平面状の衝突面32にされており、衝突面32は、下側に向けられている。傾斜面30の下端(車両前側端)は、衝突面32の車両前側端に連絡されており、傾斜面30の車両側面視の長さは、衝突面32の車両側面視の長さに比し、長くされている。
【0027】
段差部28には、衝突面32と傾斜面30との間において、平面状の案内面34(面取り形状)が設けられており、案内面34は、傾斜面30の下端と衝突面32の車両前側端との間を連絡している。案内面34は、車両前側(車両前斜め下方)に向けられており、段差部28の最も車輪20側へ突出された部位(案内面34の部位)は、フェンダライナ22の内周面(ストッパ溝26の開口面)と面一の位置に配置されている。傾斜面30と案内面34との内角θ1及び衝突面32と案内面34との内角θ2は、鈍角にされており、衝突面32と案内面34との境界部(稜線部)及び傾斜面30と案内面34との境界部(稜線部)は、湾曲面(断面円弧状)にされている。案内面34の車両側面視の長さは、少なくとも1mm以上である必要があり、3mm以上であるのが好ましい。
【0028】
フェンダライナ22には、車両前側かつ下側の端部から最上の段差部28までの周方向範囲において、周方向溝としての断面矩形状のガイド溝36が所定数形成されており、所定数のガイド溝36は、車幅方向において間隔をあけて配置されている。ガイド溝36は、フェンダライナ22の周方向に沿って配置されており、ガイド溝36は、車輪20側に開口している。ガイド溝36の車両後側端面は、最上の段差部28の傾斜面30にされており、ガイド溝36と最上のストッパ溝26とは、最上の段差部28によって非連通にされている。
【0029】
次に、本実施の形態の作用を説明する。
【0030】
以上の構成の車両用ホイールハウス構造10では、車両12の前進走行(特に高速前進走行)に伴って車輪20が図1の矢印Aの方向へ回転すると、車輪20の回転に引きずられるようにして、車輪20の車両後側からホイールハウス18に流入する上側(特に車両後斜め上方)への空気流Fが生じる。この空気流Fは、ストッパ溝26に流入し、ストッパ溝26の下側面(段差部28の傾斜面30)に案内されて、段差部28の衝突面32に衝突する。このため、空気流Fが塞き止められてストッパ溝26内の圧力が上昇し、この圧力上昇範囲がストッパ溝26と車輪20との間の空間まで及ぶことで、車輪20の車両後側からホイールハウス18内への空気の流入抵抗が増大して、ホイールハウス18への空気の流入が抑制される。これにより、車両12の下面下側からホイールハウス18に流入しようとする空気流が弱く、ホイールハウス18の周辺(ホイールハウス18内を含む)の空気流の乱れが抑制(整流)されることで、車両12の下面下側を車両後側へ向けて流れる空気流が乱されることが抑制されて、車両12の下面下側において空気流が車両後側へ向けてスムースに流れることができる。
【0031】
さらに、上述の如くホイールハウス18への流入空気量が減少することで、ホイールハウス18の車幅方向外側へホイールアーチ16を介して排出される空気量も減少する。特に、ホイールハウス18に空気流が流入する最上流部であるホイールハウス18の車両後側部かつ下側部にストッパ溝26が配設されているため、ホイールハウス18の車幅方向外側へ排出される空気量を効果的に減少させることができる。このため、車両12の側面に沿って車両後側へ向けて流れる空気流が乱されることが抑制されて、車両12の側面において空気流が車両後側へ向けてスムースに流れることができる。
【0032】
以上により、車両12では、ストッパ溝26及び段差部28の作用によって、空気抵抗(CD値)の低減による燃費向上、車輪20の接地荷重確保による操縦安定性の向上、風切り音の低減、スプラッシュ(車輪20による走行面からの水の撒き上げ)の低減、車輪20の車幅方向内側のブレーキ装置へ向かう空気流の確保等を図ることができる。
【0033】
また、ガイド溝36によって、ホイールハウス18内の空気流Fが、車幅方向に向かうことが抑制されて、車輪20の回転方向に沿って(並行に)流れる。このため、ホイールハウス18内での空気流の乱れ(車輪20への空気力付与)が抑制される。さらに、ホイールハウス18の車幅方向外側へのホイールアーチ16を介する空気排出が抑制されるため、車両12の側面において空気流が車両後側へ向けてスムースに流れることができる。これにより、車両12では、ガイド溝36の作用によっても、空気抵抗の低減による燃費向上、操縦安定性の向上、風切り音の低減、スプラッシュの低減、ブレーキ装置へ向かう空気流の確保等を図ることができる。
【0034】
さらに、ガイド溝36がストッパ溝26と最上の段差部28によって非連通にされている。このため、ストッパ溝26からガイド溝36に空気が流れてストッパ溝26の圧力が低下してしまうことを抑制でき、ホイールハウス18への空気流Fの流入抑制効果と、ホイールハウス18に流入した空気流Fの整流効果と、を効果的に両立することができる。
【0035】
また、ストッパ溝26、段差部28及びガイド溝36がフェンダライナ22の内周面に対し突出しないため、ストッパ溝26、段差部28及びガイド溝36と車輪20との干渉が問題となることがない。したがって、ストッパ溝26、段差部28及びガイド溝36と車輪20との干渉防止のために制約を受けることがなく、空力上の要求性能に基づいてストッパ溝26、段差部28及びガイド溝36を設計することができる。
【0036】
ここで、段差部28に、傾斜面30と衝突面32との間において、案内面34が設けられており、案内面34は、衝突した空気流Fを傾斜面30へ案内する(案内面34に衝突した空気流Fが案内面34より下側の衝突面32側へ流れることを抑制し、当該空気流Fを確実に案内面34より上側の傾斜面30へ流す)と共に、衝突面32に衝突した空気流Fを傾斜面30へ案内する。このため、衝突面32に衝突した空気流Fが衝突面32の車両前側へ流れて(安定して傾斜面30へ流れずに)段差部28から剥離することを抑制でき、案内面34の近傍において乱流(渦巻き乱流)が発生することを抑制できる。これにより、乱流が回転する車輪20の挙動に作用して車両12の操舵フィーリングに悪影響を与えることを抑制できる。
【0037】
さらに、傾斜面30と案内面34との内角θ1及び衝突面32と案内面34との内角θ2が、鈍角にされている。このため、衝突面32と案内面34との境界部及び傾斜面30と案内面34との境界部において空気流Fが段差部28から剥離することを抑制でき、案内面34の近傍において乱流が発生することを効果的に抑制できる。
【0038】
しかも、衝突面32及び案内面34が、平面にされている。このため、衝突面32及び案内面34が凸面にされた場合とは異なり、衝突面32及び案内面34において空気流Fが段差部28から剥離することを抑制でき、案内面34の近傍において乱流が発生することを一層効果的に抑制できる。
【0039】
また、衝突面32と案内面34との境界部及び傾斜面30と案内面34との境界部が、湾曲面にされている。このため、衝突面32と案内面34との境界部及び傾斜面30と案内面34との境界部において空気流Fが段差部28から剥離することを一層抑制でき、案内面34の近傍において乱流が発生することを一層効果的に抑制できる。
【0040】
[第2の実施の形態]
図3には、本発明の第2の実施の形態に係る車両用空力構造としての車両用ホイールハウス構造50の主要部が車両左方から見た断面図にて示されている。
【0041】
本実施の形態に係る車両用ホイールハウス構造50は、上記第1の実施の形態と、同様の構成であるが、以下の点で異なる。
【0042】
本実施の形態に係る車両用ホイールハウス構造50では、段差部28の衝突面32及び案内面34が、湾曲された凹面にされている。
【0043】
ここで、本実施の形態でも、上記第1の実施の形態と同様の作用及び効果を奏することができる。
【0044】
さらに、段差部28の衝突面32及び案内面34が、湾曲された凹面にされている。このため、段差部28の熱による変形やフェンダライナ22の車両12への組み付け時の段差部28の変形によって、衝突面32及び案内面34が凸面に変形することを抑制できる。このため、衝突面32及び案内面34において空気流Fが段差部28から剥離することを確実に抑制でき、案内面34の近傍において乱流が発生することを確実に抑制できる。
【0045】
なお、本実施の形態では、衝突面32及び案内面34を湾曲された凹面にした構成としたが、衝突面32及び案内面34の少なくとも1つを湾曲された凹面にした構成であればよい。
【0046】
また、上記第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、衝突面32と案内面34との境界部及び傾斜面30と案内面34との境界部を湾曲面にした構成としたが、衝突面32と案内面34との境界部及び傾斜面30と案内面34との境界部の少なくとも1つを屈曲面(尖面)にした構成としてもよい。
【0047】
[第3の実施の形態]
図4には、本発明の第3の実施の形態に係る車両用空力構造としての車両用ホイールハウス構造60の主要部が車両左方から見た断面図にて示されている。
【0048】
本実施の形態に係る車両用ホイールハウス構造60は、上記第1の実施の形態と、同様の構成であるが、以下の点で異なる。
【0049】
本実施の形態に係る車両用ホイールハウス構造60では、段差部28において、上記第1の実施の形態における案内面34に代えて、上側の案内面としての平面状の第1案内面62(面取り形状)と、下側の案内面としての平面状の第2案内面64(面取り形状)と、が設けられている。
【0050】
第1案内面62の下端と第2案内面64の上端とは連結されており、第1案内面62及び第2案内面64は、傾斜面30の下端と衝突面32の車両前側端との間を連絡している。第1案内面62及び第2案内面64は、車両前側(車両前方及び車両前斜め下方)に向けられており、段差部28の最も車輪20側へ突出された部位(第1案内面62及び第2案内面64の部位)は、フェンダライナ22の内周面(ストッパ溝26の開口面)と面一の位置に配置されている。
【0051】
傾斜面30と第1案内面62との内角θ3、衝突面32と第2案内面64との内角θ4、及び、第1案内面62と第2案内面64との内角θ5は、鈍角にされており、傾斜面30と第1案内面62との境界部(稜線部)、衝突面32と第2案内面64との境界部(稜線部)、及び、第1案内面62と第2案内面64との境界部(稜線部)は、湾曲面(断面円弧状)にされている。第1案内面62及び第2案内面64の車両側面視の長さは、それぞれ、少なくとも1mm以上である必要があり、3mm以上であるのが好ましい。
【0052】
ここで、本実施の形態でも、上記第1の実施の形態と同様の作用及び効果を奏することができる。
【0053】
特に、段差部28に、傾斜面30と衝突面32との間において、第1案内面62及び第2案内面64が設けられており、第1案内面62及び第2案内面64は、衝突した空気流Fを傾斜面30へ案内する(第1案内面62及び第2案内面64に衝突した空気流Fが第1案内面62及び第2案内面64より下側の衝突面32側へ流れることを抑制し、当該空気流Fを確実に第1案内面62及び第2案内面64より上側の傾斜面30へ流す)と共に、衝突面32に衝突した空気流Fを傾斜面30へ案内する。このため、衝突面32に衝突した空気流Fが衝突面32の車両前側へ流れて(安定して傾斜面30へ流れずに)段差部28から剥離することを良好に抑制できる。
【0054】
さらに、傾斜面30と第1案内面62との内角θ3、衝突面32と第2案内面64との内角θ4、及び、第1案内面62と第2案内面64との内角θ5が、鈍角にされている。このため、傾斜面30と第1案内面62との境界部、衝突面32と第2案内面64との境界部、及び、第1案内面62と第2案内面64との境界部において空気流Fが段差部28から剥離することを抑制できる。
【0055】
しかも、衝突面32、第1案内面62及び第2案内面64が、平面にされている。このため、衝突面32、第1案内面62及び第2案内面64が凸面にされた場合とは異なり、衝突面32、第1案内面62及び第2案内面64において空気流Fが段差部28から剥離することを抑制できる。
【0056】
また、傾斜面30と第1案内面62との境界部、衝突面32と第2案内面64との境界部、及び、第1案内面62と第2案内面64との境界部が、湾曲面にされている。このため、傾斜面30と第1案内面62との境界部、衝突面32と第2案内面64との境界部、及び、第1案内面62と第2案内面64との境界部において空気流Fが段差部28から剥離することを一層抑制できる。
【0057】
以上により、第1案内面62及び第2案内面64の近傍において乱流が発生することを一層効果的に抑制できる。
【0058】
なお、本実施の形態では、傾斜面30と第1案内面62との境界部、衝突面32と第2案内面64との境界部、及び、第1案内面62と第2案内面64との境界部を湾曲面にした構成としたが、傾斜面30と第1案内面62との境界部、衝突面32と第2案内面64との境界部、及び、第1案内面62と第2案内面64との境界部の少なくとも1つを屈曲面(尖面)にした構成としてもよい。
【0059】
さらに、本実施の形態では、衝突面32、第1案内面62及び第2案内面64を平面にした構成としたが、衝突面32、第1案内面62及び第2案内面64の少なくとも1つを湾曲された凹面にした構成としてもよい。
【0060】
[第4の実施の形態]
図5には、本発明の第4の実施の形態に係る車両用空力構造としての車両用ホイールハウス構造70の主要部が車両左方から見た断面図にて示されている。
【0061】
本実施の形態に係る車両用ホイールハウス構造70は、上記第1の実施の形態と、同様の構成であるが、以下の点で異なる。
【0062】
本実施の形態に係る車両用ホイールハウス構造70では、段差部28において、上記第1の実施の形態における案内面34に代えて、上側の案内面としての平面状の第3案内面72(面取り形状)と、上下方向中間の案内面としての平面状の第4案内面74(面取り形状)と、下側の案内面としての平面状の第5案内面76(面取り形状)と、が設けられている。第3案内面72は、第3の実施の形態における第1案内面62と同様のものであり、第4案内面74及び第5案内面76は、第3の実施の形態における第2案内面64の位置に配置されている。
【0063】
第3案内面72の下端と第4案内面74の上端とは連結されると共に、第4案内面74の下端と第5案内面76の上端とは連結されており、第3案内面72、第4案内面74及び第5案内面76は、傾斜面30の下端と衝突面32の車両前側端との間を連絡している。第3案内面72、第4案内面74及び第5案内面76は、車両前側(車両前方及び車両前斜め下方)に向けられており、段差部28の最も車輪20側へ突出された部位(第3案内面72、第4案内面74及び第5案内面76の部位)は、フェンダライナ22の内周面(ストッパ溝26の開口面)と面一の位置に配置されている。
【0064】
傾斜面30と第3案内面72との内角θ6、衝突面32と第5案内面76との内角θ7、第3案内面72と第4案内面74との内角θ8、及び、第4案内面74と第5案内面76との内角θ9は、鈍角にされており、傾斜面30と第3案内面72との境界部(稜線部)、衝突面32と第5案内面76との境界部(稜線部)、第3案内面72と第4案内面74との境界部(稜線部)、及び、第4案内面74と第5案内面76との境界部(稜線部)は、湾曲面(断面円弧状)にされている。第3案内面72、第4案内面74及び第5案内面76の車両側面視の長さは、それぞれ、少なくとも1mm以上である必要があり、3mm以上であるのが好ましい。
【0065】
ここで、本実施の形態でも、上記第1の実施の形態と同様の作用及び効果を奏することができる。
【0066】
特に、段差部28に、傾斜面30と衝突面32との間において、第3案内面72、第4案内面74及び第5案内面76が設けられており、第3案内面72、第4案内面74及び第5案内面76は、衝突した空気流Fを傾斜面30へ案内する(第3案内面72、第4案内面74及び第5案内面76に衝突した空気流Fが第3案内面72、第4案内面74及び第5案内面76より下側の衝突面32側へ流れることを抑制し、当該空気流Fを確実に第3案内面72、第4案内面74及び第5案内面76より上側の傾斜面30へ流す)と共に、衝突面32に衝突した空気流Fを傾斜面30へ案内する。このため、衝突面32に衝突した空気流Fが衝突面32の車両前側へ流れて(安定して傾斜面30へ流れずに)段差部28から剥離することを良好に抑制できる。
【0067】
さらに、傾斜面30と第3案内面72との内角θ6、衝突面32と第5案内面76との内角θ7、第3案内面72と第4案内面74との内角θ8、及び、第4案内面74と第5案内面76との内角θ9が、鈍角にされている。このため、傾斜面30と第3案内面72との境界部、衝突面32と第5案内面76との境界部、第3案内面72と第4案内面74との境界部、及び、第4案内面74と第5案内面76との境界部において空気流Fが段差部28から剥離することを抑制できる。
【0068】
しかも、衝突面32、第3案内面72、第4案内面74及び第5案内面76が、平面にされている。このため、衝突面32、第3案内面72、第4案内面74及び第5案内面76が凸面にされた場合とは異なり、衝突面32、第3案内面72、第4案内面74及び第5案内面76において空気流Fが段差部28から剥離することを抑制できる。
【0069】
また、傾斜面30と第3案内面72との境界部、衝突面32と第5案内面76との境界部、第3案内面72と第4案内面74との境界部、及び、第4案内面74と第5案内面76との境界部が、湾曲面にされている。このため、傾斜面30と第3案内面72との境界部、衝突面32と第5案内面76との境界部、第3案内面72と第4案内面74との境界部、及び、第4案内面74と第5案内面76との境界部において空気流Fが段差部28から剥離することを一層抑制できる。
【0070】
以上により、第3案内面72、第4案内面74及び第5案内面76の近傍において乱流が発生することを一層効果的に抑制できる。
【0071】
なお、本実施の形態では、傾斜面30と第3案内面72との境界部、衝突面32と第5案内面76との境界部、第3案内面72と第4案内面74との境界部、及び、第4案内面74と第5案内面76との境界部を湾曲面にした構成としたが、傾斜面30と第3案内面72との境界部、衝突面32と第5案内面76との境界部、第3案内面72と第4案内面74との境界部、及び、第4案内面74と第5案内面76との境界部の少なくとも1つを屈曲面(尖面)にした構成としてもよい。
【0072】
さらに、本実施の形態では、衝突面32、第3案内面72、第4案内面74及び第5案内面76を平面にした構成としたが、衝突面32、第3案内面72、第4案内面74及び第5案内面76の少なくとも1つを湾曲された凹面にした構成としてもよい。
【0073】
また、上記第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、段差部28に1つの案内面(案内面34)を設けた構成とし、上記第3の実施の形態では、段差部28に2つの案内面(第1案内面62及び第2案内面64)を設けた構成とし、上記第4の実施の形態では、段差部28に3つの案内面(第3案内面72、第4案内面74及び第5案内面76)を設けた構成としたが、段差部28に4つ以上の案内面を設けた構成としてもよい。
【0074】
さらに、上記第1の実施の形態〜第4の実施の形態では、ストッパ溝26及び段差部28を2つ設けた構成としたが、ストッパ溝26及び段差部28を1つ又は3つ以上設けた構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る車両用ホイールハウス構造を示す車両左方から見た断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る車両用ホイールハウス構造の主要部を示す車両左方から見た断面図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係る車両用ホイールハウス構造の主要部を示す車両左方から見た断面図である。
【図4】本発明の第3の実施の形態に係る車両用ホイールハウス構造の主要部を示す車両左方から見た断面図である。
【図5】本発明の第4の実施の形態に係る車両用ホイールハウス構造の主要部を示す車両左方から見た断面図である。
【符号の説明】
【0076】
10 車両用ホイールハウス構造(車両用空力構造)
12 車両
18 ホイールハウス
20 車輪
28 段差部(突出部)
30 傾斜面(連絡面)
32 衝突面
34 案内面
50 車両用ホイールハウス構造(車両用空力構造)
60 車両用ホイールハウス構造(車両用空力構造)
62 第1案内面(案内面)
64 第2案内面(案内面)
70 車両用ホイールハウス構造(車両用空力構造)
72 第3案内面(案内面)
74 第4案内面(案内面)
76 第5案内面(案内面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のホイールハウスに車幅方向に沿って設けられると共に、前記ホイールハウス内における車輪の回転軸心よりも車両後側に配置され、前記車輪側へ突出される突出部と、
前記突出部に設けられると共に、下側に向けられ、前記車輪の回転に伴い前記ホイールハウス内へ向かう空気流が衝突する衝突面と、
前記突出部に前記衝突面の上側において設けられると共に、車両前側に向けられ、下端が前記衝突面の車両前側端に連絡された連絡面と、
前記突出部に前記衝突面と前記連絡面との間において設けられ、前記衝突面に衝突した空気流を前記連絡面へ案内する案内面と、
を備えた車両用空力構造。
【請求項2】
前記衝突面と前記案内面との内角及び前記連絡面と前記案内面との内角を鈍角にした、ことを特徴とする請求項1記載の車両用空力構造。
【請求項3】
前記案内面を複数有し、前記案内面と前記案内面との内角を鈍角にした、ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両用空力構造。
【請求項4】
前記衝突面及び前記案内面を平面又は凹面にした、ことを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項記載の車両用空力構造。
【請求項5】
前記衝突面と前記案内面との境界部及び前記連絡面と前記案内面との境界部を湾曲面にした、ことを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか1項記載の車両用空力構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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