説明

車両用空気調和システム

【課題】システムの単純化、低コスト化を図り、しかも、空調負荷の低減による省エネルギー化を図りつつ快適なゾーン空調を行うことができる車両用空気調和システムを提供する。
【解決手段】送風機によって送風路内に吸い込んだ空気を熱交換部によって所望の空調風に変換して車室2内に吹き出す空気調和装置11と、乗員の着座周辺で複数の高さ位置に配置された上方吸込口30A及び下方吸込口31Aと、上方吸込口30Aや下方吸込口31Aより吸い込んだ空調風を空気調和装置11に戻すダクト40と、空調風を吸い込む上方吸込口30A及び下方吸込口31Aを選択できる吸込口選択ドア42Aとを備えた

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内の一部、例えば乗員の周囲を空調領域とするゾーン空調(パーソナル空調)を行うことができる車両用空気調和システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より車両用空気調和システムとして、車室内の全体ではなく乗員の周囲のみを空調するゾーン空調を行うシステムが提案されている。
【0003】
かかるシステムの第1従来例としては、特許文献1に開示されたものがある。この車両用空気調和システム100は、図15に示すように、シート101のシートクッション101aの上面側に開口された吸込口102と、シート101のヘッドレスト101cの上方に開口された吹出口103と、吸込口102と吹出口103間を連通する送風路104とを備えている。送風路104内には、送風機105とエバポレータ106とヒータ107が配置されている。
【0004】
この第1従来例によれば、車室内の空気をシートクッション101aの吸込口102より吸い込む。吸い込まれた空気は、エバポレータ106とヒータ107によって所望温度の空調風とされる。この空調風は、ヘッドレスト101cの上方の吹出口103から吹き出される。この吹き出された空調風は、乗員の周囲を通って再びシートクッション101aの吸込口102より吸い込まれる。
【0005】
このような空調風の循環によって、乗員の周囲には空調風の強い流れが形成され、ゾーン空調が実現される。ゾーン空調により即冷房性・即暖性が向上する。
【0006】
第2従来例としては、特許文献2に開示されたものがある。この車両用空気調和システム110は、図16に示すように、インストルメントパネル内に配置された空気調和装置(図示せず)と、シート空調装置111とを備えている。シート空調装置111は、シート112のシートバック112bの上部に開口された第1吸込口113と、シートバック112bの下部に開口された第1吹出口114と、第1吸込口113と第1吹出口114間を連通する第1送風路115と、シートクッション112aの下面に開口された第2吸込口120と、シートクッション112aの上面に開口された第2吹出口121と、第2吸込口120と第2吹出口121間を連通する第2送風路122とを備えている。
【0007】
第1送風路115と第2送風路122には、送風機116,123と熱交換器117,124とがそれぞれ配置されている。第2吸込口120の下方には、空気調和装置より導かれたダクト130の先端が開口されている。
【0008】
この第2従来例によれば、空気調和装置内で所望温度に空調された空調風は、車室内の前部より吹き出される。この吹き出された空調風は、乗員の周辺を通ってシートバック112bの第1吸込口113より吸い込まれる。これにより空調風が回収されると共に、第1吸込口113より後方の車室空間に流れる空調風が抑制される。第1吸込口113より吸い込まれた空調風は、熱交換器117を通過してシートバック112bの第1吹出口114より車室内に吹き出される。又、空気調和装置内で所望温度に空調された空調風は、ダクト130よりシートクッション112aの下方に吹き出される。この吹き出された空調風は、シートクッション112aの第2吸込口120より吸い込まれる。吸い込まれた空調風は、熱交換器124を通過してシートクッション112aの第2吹出口121より車室内に吹き出される。第1吹出口114及び第2吹出口121より吹き出された空調風は、乗員の周辺より車室内に放出され、空調されていない空気と混合されて空気調和装置内に戻される。
【0009】
このような空調風の循環によって、乗員の周囲には空調風の強い流れが形成され、ゾーン空調が実現される。ゾーン空調により即冷房性・即暖性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第3301109号(特開平5ー286346号公報)
【特許文献2】特開2007−126047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、前記第1従来例の車両用空気調和システム100では、ゾーン空調専用のエバポレータ106とヒータ107を配置する必要があるため、システムが複雑化、高コスト化するという問題がある。
【0012】
前記第2従来例の車両用空気調和システム110では、全体空調を行う空気調和装置(図示せず)の熱交換器を利用して空調風を作製しているが、シート112の第1吹出口114や第2吹出口121より吹き出された空調風は、空気調和装置の内気吸込力のみによって車室内を流れて空気調和装置に戻される。そのため、車室内を通過する過程で大きく熱ロスした空調風が空気調和装置に戻されるため、空気調和装置の空調負荷が大きく省エネの効果が得にくいという問題がある。又、シート112の第1吹出口114や第2吹出口121から吹き出された空調風は、空気調和装置の内気導入口よりも近いシート112の第1吸込口113や第2吸込口120より吸い込まれ易い。すると、シート112の第1吹出口114や第2吹出口121から吹き出された空調風が空気調和装置に戻らないため、所望温度でない送風の循環流が形成されることになる。従って、快適なゾーン空調を実現するためには、シート空調装置111に熱交換器117,124が必要不可欠な構成部品となり、前記第1従来例と同様に、システムが複雑化、高コスト化する。
【0013】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、システムの単純化、低コスト化を図り、しかも、空調負荷の低減による省エネルギー化を図りつつ快適なゾーン空調を行うことができる車両用空気調和システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、送風機によって送風路内に吸い込んだ空気を熱交換部によって所望の空調風に変換して車室内に吹き出す空気調和装置と、乗員の着座周辺で複数の高さ位置に配置された吸込口と、前記吸込口より吸い込んだ空調風を前記空気調和装置に戻すダクトと、空調風を吸い込む前記吸込口を選択できる吸込口選択手段とを備えたことを特徴とする。
【0015】
複数の高さ位置の前記吸込口は、前記シートに着座した乗員の上半身位置に開口する上方吸込口と、乗員の下半身位置に開口する下方吸込口であるものを含む。
【0016】
複数の高さ位置の前記吸込口は、前記シートに着座した乗員の上半身位置に開口する上方吸込口と、乗員の下半身位置に開口する下方吸込口と、乗員の上半身と下半身の間の位置に開口する中間吸込口であるものを含む。
【0017】
前記吸込口選択手段を制御する制御部を有し、前記制御部は、前記空気調和装置の吹き出しモードに応じて空調風を吸い込む前記吸込口を制御することが好ましい。
【0018】
前記制御部は、前記空気調和装置が足元吹き出しモードのときには、空調風を前記下方吸込口で吸い込むよう制御することが好ましい。
【0019】
前記制御部は、前記空気調和装置がベント吹き出しモードのときには、空調風を前記上方吸込口で吸い込むよう制御することが好ましい。
【0020】
前記制御部は、前記空気調和装置がバイレベル吹き出しモード、デフ・フット吹き出しモードのときには、空調風を前記上方吹出口と前記下方吸込口の両方で吸い込むよう制御することが好ましい。
【0021】
前記制御部は、複数の高さ位置の前記吸込口に対して空調風の吸い込み割合を可変できることが好ましい。
【0022】
前記吸込口が配置されたシート位置より前方と後方で車室空間を仕切る可動仕切手段を備えたことが好ましい。
【0023】
前記可動仕切手段は、シート下部の車室空間を仕切るシート下部仕切部材であるものを含む。
【0024】
前記可動仕切手段は、シート側部の車室空間を仕切るシート側部仕切部材であるものを含む。
【0025】
前記ダクトは、前記送風路の前記送風機より上流位置に接続されたものを含む。
【0026】
前記ダクトは、前記送風路の前記送風機と前記熱交換部の間の位置に接続され、前記吸込口より前記ダクト内に空気を吸い込むダクト用送風機を備えたものを含む。
【0027】
前記ダクトは、複数の前記吸込口に接続され、前記空気調和装置の内気導入口の近くに開口部を有するものを含む。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、空気調和装置より車室内に吹き出された空調風は、乗員の着座周辺に位置する吸込口より吸い込まれる。これにより空調風が回収されると共に、吸込口より後方に流れる空調風が抑制される。吸込口より吸い込まれた空調風は、ダクトを通って空気調和装置に戻される。このような空調風の循環によって、乗員の周囲には空調風の快適な流れが形成され、ゾーン空調が形成される。
【0029】
ゾーン空調モードでは、空気調和装置の熱交換部を利用して所望温度の空調風を作製するため、ゾーン空調専用の熱交換部を必ず設置する必要がなくシステムの単純化、低コスト化が可能である。吸込口で吸い込まれた空調風は、空気調和装置に戻される全経路においてダクト内を流れ、極力熱ロスなく空気調和装置に戻されるため、空気調和装置の空調負荷が低減する。又、吸込口より吸い込まれた空調風は、一切車室内に吹き出されないため、第2従来例のように、所望温度でない送風の循環流が乗員の周辺に形成されることもない。
【0030】
その上、乗員は空調風の種類(温風、冷風)等によって空調風を受けたい部位が異なり、空調風の吸込口の高さ位置を可変することによって乗員が受けたい部位周辺を流れる空調風の流れを形成できるため、空調風を有効に利用でき、空気調和装置の空調負荷が低減する。
【0031】
以上より、システムの単純化、低コスト化を図り、しかも、空調負荷の低減による省エネルギー化を図りつつ快適なゾーン空調を行うことができる車両用空気調和システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1実施形態を示し、車両用空気調和システムのゾーン空調で、冷房時における状態を示す概略側面図である。
【図2】本発明の第1実施形態を示し、車両用空気調和システムのゾーン空調で、冷房時における状態を示す概略平面図である。
【図3】本発明の第1実施形態を示し、車両用空気調和システムのゾーン空調で、冷房時における状態を示す概略正面図である。
【図4】本発明の第1実施形態を示し、車両用空気調和システムの概略構成図である。
【図5】本発明の第1実施形態を示し、各吹き出しモードでの吸込口切替ドアと吸込選択ドアの状態を示す図である。
【図6】本発明の第1実施形態を示し、車両用空気調和システムのゾーン空調で、暖房時における状態を示す概略平面図である。
【図7】本発明の第2実施形態を示し、車両用空気調和システムの概略側面図である。
【図8】本発明の第2実施形態を示し、車両用空気調和システムの概略構成図である。
【図9】本発明の第3実施形態を示し、車両用空気調和システムの概略構成図である。
【図10】本発明の第4実施形態を示し、車両用空気調和システムの概略側面図である。
【図11】本発明の第5実施形態を示し、車両用空気調和システムの概略側面図である。
【図12】本発明の第5実施形態を示し、車両用空気調和システムの概略平面図である。
【図13】本発明の第5実施形態を示し、車両用空気調和システムの概略正面図である。
【図14】本発明の第5実施形態を示し、車両用空気調和システムの概略構成図である。
【図15】第1従来例を示し、車両用空気調和システムの概略断面図である。
【図16】第2従来例を示し、車両用空気調和システムの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0034】
(第1実施形態)
図1〜図6は本発明の第1実施形態を示す。図1及び図2において、車両1は、車室2内の最前部にインストルメントパネル3を有する。車室2内には、2つの前席(運転席、助手席)のシート4と1つの長い後席のシート5が設けられている。前席の各シート4は、シートクッション4aとシートバック4bとヘッドレスト4cを有している。後席のシート5は、シートクッション5aとシートバック5bと2つのヘッドレスト5cを有している。
【0035】
図1〜図4に示すように、車両用空気調和システム10Aは、空気調和装置11と、前席の2人の乗員の着座周辺に配置された上方及び下方吸込口30A,30B,31A,31Bと、この上方及び下方吸込口30A,30B,31A,31Bと空気調和装置11の送風路13との間を連通するダクト40と、車室2内を仕切る可動仕切手段60とを備えている。
【0036】
空気調和装置11は、インストルメントパネル3の内側に配置された空調ユニット12を有する。図4に示すように、空調ユニット12内には、送風路13が形成されている。送風路13の最上流には、車室2外の空気である外気を導入する外気導入口14と、車室2内の空気である内気を導入する内気導入口15が設けられている。外気導入口14と内気導入口15は、2枚のインテークドア16a,16bによって開閉される。
【0037】
送風路13内には、送風機17と共に熱交換部であるエバポレータ18及びヒータコア19がこの順に配置されている。エバポレータ18は送風の冷却源であり、ヒータコア19は送風の加熱源である。エバポレータ18とヒータコア19の間には、ミックスドア20が設けられている。
【0038】
送風機17は、ファンの回転によって送風路13に内気や外気を吸い込む。エバポレータ18は、送風路13を通る全ての送風が通るように配置され、送風を冷却する。ヒータコア19は、送風路13のほぼ半分領域に配置され、送風を加熱する。ミックスドア20は、ヒータコア19を流れる送風とヒータコア19をバイパスする送風との割合を調整する。この風量割合によって所望温度の空調風を作製する。
【0039】
ヒータコア19の下流には、デフロスタ吹出口21とベント吹出口22a,22bとフット吹出口23a,23bが設けられている。デフロスタ吹出口21は、空調風をフロントガラスに向かって吹き出す。ベント吹出口22a,22bは、運転席側のベント吹出口22aと助手席側のベント吹出口22bを有する。ベント吹出口22a,22bは、空調風を各乗員の上半身に向かって吹き出す。フット吹出口23a,23bは、運転席側のフット吹出口23aと助手席側のフット吹出口23bを有する。フット吹出口23a,23bは、空調風を各乗員の下半身に向かって吹き出す。デフロスタ吹出口21はデフドア24によって開閉される。ベント吹出口22a,22bはベントドア25によって開閉される。フット吹出口23a,23bはフットドア26によって開閉される。
【0040】
上方吸込口30A,30Bは、シート4に着座した乗員の上半身の高さ位置に開口する。上方吸込口30A,30Bは、運転席と助手席の各シートバック4bの上部位置で、且つ、ヘッドレスト4cを挟んで左右位置に一対ずつ設けられている。上方吸込口30A,30Bは、計4箇所であり、運転手と助手席の乗員の上半身の直ぐ後位置に開口している。
【0041】
下方吸込口31A,31Bは、乗員の下半身の高さ位置に開口する。下方吸込口31A,31Bは、運転席と助手席の各シートクッション4aの下部位置で、且つ、各1箇所に設けられている。下方吸込口31A,31Bは、計2箇所であり、運転手と助手席の乗員の下半身(足元)の直ぐ後位置に開口している。下方吸込口31A,31Bは、下記するように分岐ダクト40A,40Bの開口によって形成されている。
【0042】
ダクト40は、その各一端が各上方吸込口30A,30Bにそれぞれ接続された2本の分岐ダクト40A,40Bと、この2つの分岐ダクト40A,40Bが合流する合流ダクト40Cとから構成されている。2本の分岐ダクト40A,40Bは、運転席と助手席のシートクッション4aの下方床下を通っている。各分岐ダクト40A,40Bには、各シートクッション4aの下方位置に下方吸込口31A,31Bが形成されている。合流ダクト40Cの他端は、空調ユニット12の送風機17より上流の送風路13の位置に接続されている。合流ダクト40Cの開口位置には、吸込選択手段である吸込選択ドア41が配置されている。吸込選択ドア41は、ダクト40内を空調ユニット12の送風路13に開閉する。吸込選択ドア41は、制御部50によって制御される。
【0043】
各分岐ダクト40A,40Bの下方吸込口31A,31Bの位置には、吸込口選択手段である吸込口選択ドア42A,42Bがそれぞれ配置されている。吸込口選択ドア42A,42Bは、下方吸込口31A,31Bを全閉する閉位置(図1及び図4の実線位置)と、下方吸込口31A,31Bを全開する開位置(図1及び図4の仮想線位置)と、これらの中間位置とに切り替えられる。吸込口選択ドア42A,42Bの閉位置では、上方吸込口30A,30Bより空調風を吸い込む。吸込口選択ドア42A,42Bの開位置では、下方吸込口31A,31Bより空調風を吸い込む。吸込口選択ドア42A,42Bの中間位置では、上方吸込口30A,30Bと下方吸込口31A,31Bの双方より空調風を吸い込む。吸込口選択ドア42A,42Bは、制御部50によって制御される。
【0044】
また、ダクト40内には、温度センサS1が配置されている。温度センサS1は、上方及び下方吸込口30A,30B,31A,31Bより吸い込まれる空調風の空気温度を検出する。温度センサS1の検出データは、制御部50に出力される。
【0045】
可動仕切手段60は、上方及び下方吸込口30A,30B,31A,31Bが配置されたシート後部位置で車室空間を前方と後方に仕切る。可動仕切手段60は、運転席と助手席のシート4の下部の車室空間を仕切るシート下部仕切部材61と、運転席と助手席のシート4側部の車室空間を仕切るシート側部仕切部材62とを有する。シート下部仕切部材61とシート側部仕切部材62は、車室空間を仕切る仕切位置(図1〜図3の位置)と、車室空間を仕切らないで開放する開放位置との間で移動できる。シート下部仕切部材61とシート側部仕切部材62の移動は、制御部50によって制御される。
【0046】
操作パネル(図示せず)は、種々の空調状態を指令できる。操作パネルでは、車室2内の全体を空調する全体空調と、車室2内の前席空間を優先空調するゾーン空調を選択できるようになっている。
【0047】
制御部50は、操作パネル(図示せず)からの指令等によって空気調和装置11を制御すると共に、吸込選択ドア41及び吸込口選択ドア42A,42Bの切り替えを制御する。例えば、制御部50は、全体空調が選択されると、吸込選択ドア41を閉位置にし、インストルメントパネル3近くの温度センサ(図示せず)によって空調風の吹き出し温度等を制御する。制御部50は、図5に示すように、車室2内の前席空間を優先空調するゾーン空調(デフロスタ吹き出しモード時を除く)が選択されると、吸込選択ドア41を開位置にし、ダクト40内の温度センサS1によって空調風の吹き出し温度等を制御する。制御部50は、図5に示すように、ゾーン空調時には空調風の吹き出しモードに応じて吸込口選択ドア42A,42Bを切り替え制御する。具体的な切り替え内容については、下記の動作で説明する。
【0048】
上記構成において、空気調和装置11が駆動されると、送風機17によって外気導入口14や内気導入口15より空気が送風路13内に吸い込まれる。吸い込まれた空気は、エバポレータ18とヒータコア19によって所望温度の空調風とされ、その空調風が少なくとも一つの吹出口21,22a,22b,23a,23bより車室2内に吹き出される。
【0049】
全体空調モードでは、吸込選択ドア41が閉位置に位置され、シート下部仕切部材61及びシート側部祖切り部材62が開放位置に位置される。これにより、シート4の上方及び下方吸込口30A,30B,31A,31Bは、空調風を吸い込まず、又、車室2が前方と後方で仕切られない。従って、空気調和装置11より車室2内に吹き出された空調風は、車室2内のほぼ全域に行き渡るような流れとなり、車室2内の全体が空調される。
【0050】
前席のゾーン空調モード(デフロスタ吹き出しモード時を除く)では、吸込選択ドア41が開位置に位置され、シート下部仕切部材61及びシート側部祖切り部材62が仕切位置に位置される。これにより、図1及び図2に示すように、空調風の吹き出しがベント吹き出しモードでは、ベント吹出口22a,22bより空調風が車室2内に吹き出される。又、図6に示すように、空調風の吹き出しがフット吹き出しモードでは、フット吹出口23a、23bより空調風が車室2内に吹き出される。
【0051】
車室2内に吹き出された空調風は、前席の上方吸込口30A,30Bや下方吸込口31A,31Bより送風機17の吸引力によって吸い込まれる。空調風は、シート下部仕切部材61及びシート側部祖切り部材62によって後席側に流れるのを極力阻止されるため、効率的に上方吸込口30A,30Bや下方吸込口31A,31Bに吸い込まれる。
【0052】
上方吸込口30A,30Bや下方吸込口31A,31Bより吸い込まれた空調風は、ダクト40を通って空調ユニット12に戻される。空調風は前席の乗員の周辺を集中的に通って上方吸込口30A,30Bや下方吸込口31A,31Bより回収され、且つ、上方吸込口30A,30B及び下方吸込口31A,31Bより後方の車室空間への流れが抑制される。これにより、車室2内の前席にゾーン空調領域が形成される。
【0053】
また、前席のゾーン空調モード(デフロスタ吹き出しモード時を除く)では、空調風の吹き出しモードに応じて吸込口選択ドア42A,42Bの位置が可変される。つまり、図1及び図2に示すように、冷房時に多用されるベント吹き出しモードでは、吸込口選択ドア42A,42Bが閉位置に位置される。これにより、空気調和装置11より乗員の上半身高さに吹き出された空調風は、主に乗員の上半身高さを通って上方吸込口30A,30Bより吸い込まれるため、乗員の上半身の周囲を通るような空調風の流れが形成される。図6に示すように、暖房時に多用されるフット吹き出しモードでは、吸込口選択ドア42A,42Bが開位置に位置される。これにより、空気調和装置11より乗員の下半身高さに吹き出された空調風は、主に乗員の下半身高さ(車室の下方)を通って下方吸込口31A,31Bより吸い込まれるため、乗員の下半身(足元)の周囲を通るような空調風の流れが形成される。
【0054】
暖房や冷房でもない中間時(例えば除湿運転)に多用されるバイレベル吹き出しモードやデフ・フット吹き出しモードでは、吸込口選択ドア42A,42Bが中間位置に位置される。これにより、空気調和装置11より乗員の上半身及び下半身高さに吹き出された空調風は、主に乗員の上半身及び下半身高さを通って上方吸込口30A,30B及び下方吸込口31A,31Bより吸い込まれるため、乗員の上半身及び下半身の周囲を通るような空調風の流れが形成される。
【0055】
このようにゾーン空調モードでは、空調ユニット12のエバポレータ18やヒータコア19を利用して所望温度の空調風を作製するため、ゾーン空調専用の熱交換部を必ず設置する必要がなく、システムの単純化、低コスト化が可能である。上方吸込口30A,30Bや下方吸込口31A,31Bで吸い込まれた空調風は、空気調和装置11に戻される全経路においてダクト40内を流れ、極力熱ロスなく空気調和装置11に戻されるため、空気調和装置11の空調負荷が低減する。又、上方吸込口30A,30Bや下方吸込口31A,31Bより吸い込まれた空調風は、一切車室2内に吹き出されないため、第2従来例のように、所望温度でない送風の循環流が乗員の周辺に形成されることもない。
【0056】
その上、乗員は空調風の種類(温風、冷風)等によって空調風を受けたい部位が異なり、空調風の吸い込み高さを可変することによって乗員が受けたい部位周辺を流れる空調風の流れを形成できるため、空調風を有効に利用でき、空気調和装置11の空調負荷が低減する。
【0057】
以上より、車両用空気調和システム10Aは、その構成の単純化、低コスト化を図ることができ、しかも、空調負荷の低減による省エネルギー化を図りつつ快適なゾーン空調を行うことができる。又、ゾーン空調により即冷房性・即暖性の向上を図ることができる。
【0058】
可動仕切手段60を有するので、ゾーン空調モードでは、可動仕切手段60を仕切位置に位置することにより、上方及び下方吸込口30A,30B,31A,31Bに吸い込まれずにシート4の周辺より後方に流れようとする空調風を可動仕切手段60で阻止することができる。従って、目的とするゾーン以外に空調風が流れ込むのを有効に抑制でき、空気調和装置11の空調負荷が更に低減に低減され、省エネルギー化になる。
【0059】
予め空気調和装置11が搭載されている車両1においては、上方及び下方吸込口30A,30B,31A,31B、ダクト40等を設置するだけで本発明を適用可能である。従って、本発明は、簡単に後付け設置が可能である。
【0060】
ダクト40内を空調ユニット12の送風路13に開閉する吸込選択ドア41を備えたので、吸込選択ドア41の位置切り替えによって全体空調とゾーン空調の両方を実現できる。しかも、吸込選択ドア41の位置切り替えを制御すれば良いため、全体空調とゾーン空調の切り替え制御が容易である。
【0061】
制御部50は、吸込口選択ドア42A,42Bの開度も調整できるよう構成すれば、高さの異なる上方吸込口30A、30Bと下方吸込口31A,31Bに対して空調風の吸い込み割合を可変でき、更にきめ細かい空調風の流れを形成できる。
【0062】
上方吸込口30A、30B及び下方吸込口31A,31Bとこれの切り替えができる吸込口選択ドア42A,42Bは、運転席側と助手席側にそれぞれ設けられているので、吸込口選択ドア42A,42Bを別個独立に制御することによって前席全体のゾーン空調の他に、運転席のゾーン空調と助手席のゾーン空調を選択的に行うことができる。
【0063】
ダクト40の他端は、空調ユニット12の送風機17より上流の送風路13の位置に接続されている。従って、空調ユニット12の送風機17の吸込力を利用して空調風を上方及び下方吸込口30A,30B,31A,31Bより吸い込むことができるため、吸い込み専用の送風機を別途設ける必要がない。これにより、システムの更なる単純化、低コスト化になる。
【0064】
上方吸込口30A,30Bは、シート4に設けられている。シート4は、乗員が着座する既存の部品であるため、上方吸込口30A,30Bを配置するのに最も適した部品であり、設置し易い。
【0065】
上方吸込口30A,30Bは、シートバック4bの上部に設けられている。空調風(暖風、冷風)の気流は、遮蔽物のない車室2の上部に集まり易いため、効率良く空調風を吸い込むことができ、回収率が高まる。
【0066】
上方及び下方吸込口30A,30B,31A,31Bより吸い込まれる空気温度を検出する温度センサS1を備えている。従って、ゾーン空調モードでは、乗員の周辺を実際に通過した空調風の温度で空気調和装置11の吹き出し温度等を制御することにより、的確な空調温度の制御が可能である。
【0067】
(第2実施形態)
図7及び図8は本発明の第2実施形態を示す。図7及び図8に示すように、第2実施形態の車両用空気調和システム10Bは、前記第1実施形態のものと比較するに、ダクト40の他端の接続位置が相違する。つまり、ダクト40の他端は、空気調和装置11の送風機17とエバポレータ18の間の送風路13の位置に接続されている。そして、ダクト40には、上方及び下方吸込口30A,30B,31A,31Bより空気を吸い込むダクト用送風機45が設けられている。ダクト用送風機45は、制御部50によって制御される。
【0068】
他の構成は、前記第1実施形態と同様であるため、重複説明を回避するため、説明を省略する。又、図面の第1実施形態と同一構成箇所には、同一符号を付して明確化を図る。
【0069】
上記構成において、空気調和装置11が駆動されると、送風機17によって外気導入口14や内気導入口15より空気が送風路13内に吸い込まれる。吸い込まれた空気は、エバポレータ18とヒータコア19によって所望温度の空調風とされ、その空調風が少なくとも一つの吹出口21,22a,22b,23a,23bより車室2内に吹き出される。
【0070】
全体空調モードでは、吸込選択ドア41が閉位置に位置され、シート下部仕切部材61及びシート側部祖切り部材62が開放位置に位置される。これにより、シート4の上方及び下方吸込口30A,30B,31A,31Bは、空調風を吸い込まず、又、車室2がシート下部仕切部材61とシート側部仕切部材62で仕切られない。従って、空気調和装置11より車室2内に吹き出された空調風は、車室2内のほぼ全域に行き渡るような流れとなり、車室2内の全体が空調される。
【0071】
前席のゾーン空調モード(デフロスタ吹き出しモード時を除く)では、吸込選択ドア41が開位置に位置され、ダクト用送風機45が駆動される。又、シート下部仕切部材61及びシート側部祖切り部材62が仕切位置に位置される。
【0072】
車室2内に吹き出された空調風は、前席の上方吸込口30A,30Bや下方吸込口31A,31Bよりダクト用送風機45の吸引力によって吸い込まれる。空調風は、シート下部仕切部材61及びシート側部祖切り部材62によって後席側に流れるのを極力阻止されるため、効率的に上方吸込口30A,30Bや下方吸込口31A,31Bに吸い込まれる。
【0073】
上方吸込口30A,30Bや下方吸込口31A,31Bより吸い込まれた空調風は、ダクト40を通って空調ユニット12に戻される。空調風は前席の乗員の周辺を集中的に通って上方吸込口30A,30Bや下方吸込口31A,31Bより回収され、且つ、上方吸込口30A,30B及び下方吸込口31A,31Bより後方の車室空間への流れが抑制される。これにより、車室2内の前席にゾーン空調領域が形成される。
【0074】
また、前席のゾーン空調モード(デフロスタ吹き出しモード時を除く)では、空調風の吹き出しモードに応じて吸込口選択ドア42A,42Bの位置が可変される。つまり、冷房時に多用されるベント吹き出しモードでは、吸込口選択ドア42A,42Bが閉位置に位置される。これにより、空気調和装置11より乗員の上半身高さに吹き出された空調風は、主に乗員の上半身高さを通って上方吸込口30A,30Bより吸い込まれるため、乗員の上半身の周囲を通るような空調風の流れが形成される。暖房時に多用されるフット吹き出しモードでは、吸込口選択ドア42A,42Bが開位置に位置される。これにより、空気調和装置11より乗員の下半身高さに吹き出された空調風は、主に乗員の下半身高さ(車室の下方)を通って下方吸込口31A,31Bより吸い込まれるため、乗員の下半身(足元)の周囲を通るような空調風の流れが形成される。
【0075】
暖房や冷房でもない中間時(例えば除湿運転)に多用されるバイレベル吹き出しモードやデフ・フット吹き出しモードでは、吸込口選択ドア42A,42Bが中間位置に位置される。これにより、空気調和装置11より乗員の上半身及び下半身高さに吹き出された空調風は、主に乗員の上半身及び下半身高さを通って上方吸込口30A,30B及び下方吸込口31A,31Bより吸い込まれるため、乗員の上半身及び下半身の周囲を通るような空調風の流れが形成される。
【0076】
その上、乗員は空調風の種類(温風、冷風)等によって空調風を受けたい部位が異なり、空調風の吸い込み高さを可変することによって乗員が受けたい部位周辺を流れる空調風の流れを形成できるため、空調風を有効に利用でき、空気調和装置11の空調負荷が低減する。
【0077】
以上より、車両用空気調和システム10Bは、前記第1実施形態で説明したのと同様の理由によって、その構成の単純化、低コスト化を図ることができ、しかも、空調負荷の低減による省エネルギー化を図りつつ快適なゾーン空調を行うことができ、且つ、且つ、ゾーン空調の領域を簡単に可変できる。
【0078】
ダクト40内を空調ユニット12の送風路13に開閉する吸込選択ドア41と、ダクト用送風機45とを備えたので、吸込選択ドア41の位置とダクト用送風機45の駆動を制御することによって全体空調とゾーン空調を選択的に行うことができる。
【0079】
この第2実施形態では、ダクト用送風機45を備えるので、空気調和装置11の吹出し送風量と別個独立に上方吸込口30A,30Bや下方吸込口31A,31Bの吸込量を調整することができる。
【0080】
(第3実施形態)
図9は本発明の第3実施形態を示す。図9に示すように、第3実施形態の車両用空気調和システム10Cは、前記第1実施形態のものと比較するに、次の点で相違する。つまり、ダクト40は、2つの分岐ダクト40A,40Bと合流ダクト40Cより構成されているが、合流ダクト40Cは、運転席と助手席の間のセンターコンソール位置を通っている。そして、合流ダクト40Cのセンターコンソール位置に下方吸込口31Cが形成されている。下方吸込口31Cを開閉等する吹出口選択ドア(図示せず)が配置されている。
【0081】
他の構成は、前記第1実施形態と同一であるため、重複説明を回避するべく説明を省略する。図9の第1実施形態と同一構成箇所には、同一符号を付して明確化を図る。
【0082】
この第3実施形態でも、前記第1実施形態と同一の作用・効果を有する。
【0083】
(第4実施形態)
図10は本発明の第4実施形態を示す。図10に示すように、第4実施形態の車両用空気調和システム10Dは、前記第1実施形態のものと比較するに、次の点で相違する。つまり、吸込口としては、上運転席及び助手席のシート4に着座した乗員の上半身位置に開口する上方吸込口30A,(図示せず)と、乗員の下半身位置に開口する下方吸込口31A,(図示せず)の他に、乗員の上半身と下半身の間の位置に開口する中間吸込口32A,(図示せず)を有する。つまり、吸込口は、3つの高さ位置に設定されている。又、各中間吸込口32A,(図示せず)をそれぞれ開閉する吹出口選択ドア43A,(図示せず)が配置されている。
【0084】
下方吸込口31A,(図示せず)と中間吸込口32A,(図示せず)の吸込口選択ドアドア42A,(図示せず),43A,(図示せず)の位置によって、上方吸込口30A,(図示せず)と下方吸込口31A,(図示せず)と中間吸込口32A,(図示せず)の全部、又は、その任意の一部を選択的に開閉することができる。
【0085】
他の構成は、前記第1実施形態と同一であるため、重複説明を回避するべく説明を省略する。図9の第1実施形態と同一構成箇所には、同一符号を付して明確化を図る。
【0086】
この第4実施形態でも、前記第1実施形態と同一の作用・効果を有する。その上、空調風を中間吸込口32A、(図示せず)からも吸い込みできるため、乗員が受けたい部位周辺を流れる空調風の流れのバリエーションを増やすことが形成できるため、空調風をより有効に利用できる。
【0087】
(第5実施形態)
図11〜図14は本発明の第5実施形態を示す。図11〜図14に示すように、第5実施形態の車両用空気調和システム10Eは、前記第1実施形態のものと比較するに、次の点で相違する。つまり、空調ユニット12の送風路13には、内気導入口15の近くに補助内気導入口27が設けられている。補助内気導入口27は、補助吸込ドア28によって開閉される。補助吸込ドア28は、制御部50によって制御される。
【0088】
又、合流ダクト40Cの他端は、空調ユニット12に接続されていない。合流ダクト40Cの他端の開口部40aは、空調ユニット12の内気導入口15と補助内気導入口27の近くで、且つ、内気導入口15と補助内気導入口27に向かって開口している。従って、第1実施形態のような吸込選択ドアがなく、その代わりに、上方及び下方吸込口30A,30B,31A,31Bより空気をダクト40に吸い込むダクト用送風機45が設けられている。ダクト用送風機45は、制御部50によって制御される。
【0089】
他の構成は、前記第1実施形態と同様であるため、重複説明を回避するため、説明を省略する。又、図面の第1実施形態と同一構成箇所には、同一符号を付して明確化を図る。
【0090】
上記構成において、空気調和装置11が駆動されると、送風機17によって外気導入口14や内気導入口15より空気が送風路13内に吸い込まれる。空調風は、シート下部仕切部材61及びシート側部祖切り部材62によって後席側に流れるのを極力阻止されるため、効率的に上方吸込口30A,30Bや下方吸込口31A,31Bに吸い込まれる。
【0091】
上方吸込口30A,30Bや下方吸込口31A,31Bより吸い込まれた空気は、エバポレータ18とヒータコア19によって所望温度の空調風とされ、その空調風が少なくとも一つの吹出口21,22a,22b,23a,23bより車室2内に吹き出される。
【0092】
全体空調モードでは、吸込選択ドア41が閉位置に位置され、シート下部仕切部材61及びシート側部祖切り部材62が開放位置に位置される。これにより、シート4の上方及び下方吸込口30A,30B,31A,31Bは、空調風を吸い込まず、又、車室空間が前方と後方で仕切られない。従って、空気調和装置11より車室2内に吹き出された空調風は、車室2内のほぼ全域に行き渡るような流れとなり、車室2内の全体が空調される。
【0093】
前席のゾーン空調モード(デフロスタ吹き出しモード時を除く)では、吸込選択ドア41が開位置に位置され、ダクト用送風機45が駆動される。又、シート下部仕切部材61及びシート側部祖切り部材62が仕切位置に位置される。
【0094】
車室2内に吹き出された空調風は、前席の上方吸込口30A,30Bや下方吸込口31A,31Bよりダクト用送風機45の吸引力によって吸い込まれる。吸い込まれた空調風は、ダクト40を通って空調ユニット12に戻される。空調風は前席の乗員の周辺を集中的に通って上方吸込口30A,30Bや下方吸込口31A,31Bより回収され、且つ、上方吸込口30A,30B及び下方吸込口31A,31Bより後方の車室空間への流れが抑制される。これにより、車室2内の前席にゾーン空調領域が形成される。
【0095】
また、前席のゾーン空調モード(デフロスタ吹き出しモード時を除く)では、空調風の吹き出しモードに応じて吸込口選択ドア42A,42Bの位置が可変される。つまり、冷房時に多用されるベント吹き出しモードでは、吸込口選択ドア42A,42Bが閉位置に位置される。これにより、空気調和装置11より乗員の上半身高さに吹き出された空調風は、主に乗員の上半身高さを通って上方吸込口30A,30Bより吸い込まれるため、乗員の上半身の周囲を通るような空調風の流れが形成される。暖房時に多用されるフット吹き出しモードでは、吸込口選択ドア42A,42Bが開位置に位置される。これにより、空気調和装置11より乗員の下半身(足元)高さに吹き出された空調風は、下半身高さ(車室内の下方)を主に通って下方吸込口31A,31Bより吸い込まれるため、乗員の下半身(足元)の周囲を通るような空調風の流れが形成される。
【0096】
暖房や冷房でもない中間時(例えば除湿運転)に多用されるバイレベル吹き出しモードやデフ・フット吹き出しモードでは、吸込口選択ドア42A,42Bが中間位置に位置される。これにより、空気調和装置11より乗員の上半身及び下半身高さに吹き出された空調風は、主に乗員の上半身及び下半身高さを通って上方吸込口30A,30B及び下方吸込口31A,31Bより吸い込まれるため、乗員の上半身及び下半身の周囲を通るような空調風の流れが形成される。
【0097】
各ゾーン空調モードでは、空気調和装置11のエバポレータ18やヒータコア19を利用して所望温度の空調風を作製するため、ゾーン空調専用の熱交換部を必ず設置する必要がなく、システムの単純化、低コスト化が可能である。上方及び下方吸込口30A,30B,31A,31Bで吸い込まれた空調風は、空気調和装置11に戻される大部分の経路においてダクト40内を流れ、極力熱ロスなく空気調和装置11に戻されるため、空気調和装置11の空調負荷が低減する。
【0098】
又、上方及び下方吸込口30A,30B,31A,31Bより吸い込まれた空調風は、空調ユニット12の近くで車室2内に吹き出されるため、第2従来例のように、所望温度でない送風の循環流が乗員の周辺に形成されることもない。
【0099】
その上、乗員は空調風の種類(温風、冷風)等によって空調風を受けたい部位が異なり、空調風の吸い込み高さを可変することによって乗員が受けたい部位周辺を流れる空調風の流れを形成できるため、空調風を有効に利用でき、空気調和装置11の空調負荷が低減する。
【0100】
以上より、車両用空気調和システム10Eは、その構成の単純化、低コスト化を図ることができ、しかも、空調負荷の低減による省エネルギー化を図りつつ快適なゾーン空調を行うことができる。又、ゾーン空調により即冷房性・即暖性の向上を図ることができる。
【0101】
可動仕切手段60を有するので、ゾーン空調モードでは、可動仕切手段60を仕切位置に位置することにより、上方及び下方吸込口30A,30B,31A,31Bに吸い込まれずにシート4の周辺より後方に流れようとする空調風を可動仕切手段60で阻止することができる。従って、目的とするゾーン以外に空調風が流れ込むのを有効に抑制でき、空気調和装置11の空調負荷が更に低減に低減され、省エネルギー化になる。
【0102】
予め空気調和装置11が搭載されている車両1においては、上方及び下方吸込口30A,30B,31A,31B、ダクト40、ダクト用送風機45等を設置するだけで本発明を適用可能である。従って、本発明は、簡単に後付け設置が可能である。
【0103】
ダクト用送風機45の駆動を制御することによって全体空調とゾーン空調を選択的に行うことができ、切り替え制御が容易である。
【0104】
ダクト40の開口部40aは、空調ユニット12の内気導入口15の近くで、且つ、内気導入口15に向かって開口されている。従って、ダクト40より吹き出された空調風は、空調ユニット12の送風機17の吸込力と、ダクト40のダクト用送風機45の吹出力の相乗作用によって、確実に、且つ、迅速に空調ユニット12内に戻される。
【0105】
空調ユニット12は、補助内気導入口27と、補助内気導入口27を開閉する補助吸込ドア28とを有する。従って、ダクト40より吹き出される空調風を補助内気導入口27より空調ユニット12内に戻すことができるため、外気導入時にもゾーン空調を行うことができる。
【0106】
この実施形態では、空調ユニット12の送風路13に補助内気導入口27を設けると共に補助内気導入口27を開閉する補助吸込ドア28を設けたが、補助内気導入口27及び補助吸込ドア28を設けずに、ゾーン空調モードで、且つ、外気導入モードが選択された場合には、外気導入口14と共に内気導入口15をも開口する制御を行うようにしても良い。このように構成すれば、補助内気導入口27及び補助吸込ドア28を設ける必要がなく、構成の単純化になる。
【0107】
ダクト用送風機45の吸込力を制御することにより、空気調和装置11の吹出し送風量と別個独立に吸込口30A,30Bの吸込量を調整することができる。
【0108】
(変形例)
前記各実施形態では、前席の乗員に対してゾーン空調でき、且つ、前席の乗員それぞれにゾーン空調の領域を設定できるよう構成したが、後席の乗員をも含む領域についてゾーン空調したり、且つ、運転席側の後席の乗員、助手席側の後席の乗員をも含む領域についてゾーン空調したりできるよう構成しても良い。つまり、前記第1〜第5実施形態の構成に加えて、後席の各乗員の着座周辺に開口された複数の吸込口と、この複数の吸込口からの空調風を空気調和装置に戻すダクトとを備えると共に、後席のダクト用の吸込口選択ドアを備える。これにより、前席のみならず後席の乗員をも対象としてゾーン空調の領域を設定できるよう構成できる。この変形例は、ワンボックスカーなどの車室区間が大きい車両に特に有効である。
【0109】
前記各実施形態では、上方吸込口30A〜30Dは、シート4,5に設けたが、乗員の着座位置の周辺であればどこでも良い。
【0110】
前記各実施形態では、吸込口は、乗員の上半身の高さ位置と、乗員の下半身の高さ位置の2つの高さ位置に配置したり、これに乗員の上半身と下半身の間の高さ位置を加えた3つの高さ位置に配置したが、4つ以上の高さ位置に配置しても良い。
【0111】
ゾーン空調の領域設定は、マニュアル操作によって行うようにしても良いし、乗員検出手段(例えば着座センサ)によって行うようにしても良い。
【0112】
可動仕切手段60は、全体空調とゾーン空調のいずれが選択されたかによって自動で可動するよう構成したが、マニュアル操作によって行うようにしても良い。
【0113】
可動仕切手段60は、エアバックのようにブロワーで膨らませて仕切るものであっても良く、又、スライドドアであっても良い。
【符号の説明】
【0114】
2 車室
4,5 シート
10A〜10E 車両用空気調和システム
11 空気調和装置
13 送風機
15 内気導入口
18 エバポレータ(熱交換部)
19 ヒータコア(熱交換部)
30A,30B 上方吸込口(吸込口)
31A,31B,31C 下方吸込口(吸込口)
32A 中間吸込口(吸込口)
40 ダクト
40a 開口部
42A,42B,43A 吸込口選択ドア(吸込口選択手段)
45 ダクト用送風機
50 制御部
60 可動仕切手段
61 シート下部仕切部材
62 シート側部仕切部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風機(17)によって送風路(13)内に吸い込んだ空気を熱交換部(18)、(19)によって所望の空調風に変換して車室(2)内に吹き出す空気調和装置(11)と、
乗員の着座周辺で複数の高さ位置に配置された吸込口(30A),(30B),(31A),(31B),(31C),(32A)と、
前記吸込口(30A),(30B),(31A),(31B),(31C),(32A)より吸い込んだ空調風を前記空気調和装置(11)に戻すダクト(40)と、
空調風を吸い込む前記吸込口(30A),(30B),(31A),(31B),(31C),(32A)を選択できる吸込口選択手段(42A),(42B),(43A)とを備えたことを特徴とする車両用空気調和システム(10A)〜(10E)。
【請求項2】
請求項1記載の車両用空気調和システム(10A)〜(10E)であって、
複数の高さ位置の前記吸込口(30A),(30B),(31A),(31B),(31C),(32A)は、前記シート(4)に着座した乗員の上半身位置に開口する上方吸込口(30A),(30B)と、乗員の下半身位置に開口する下方吸込口(31A),(31B),(31C)であることを特徴とする車両用空気調和システム(10A)〜(10C),(10E)。
【請求項3】
請求項1記載の車両用空気調和システム(10A)〜(10E)であって、
複数の高さ位置の前記吸込口(30A),(30B),(31A),(31B),(31C),(32A)は、前記シート(4)に着座した乗員の上半身位置に開口する上方吸込口(30A),(30B)と、乗員の下半身位置に開口する下方吸込口(31A),(31B),(31C)と、乗員の上半身と下半身の間の位置に開口する中間吸込口(32A)であることを特徴とする車両用空気調和システム(10D)。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の車両用空気調和システム(10A)〜(10E)であって、
前記吸込口選択手段(42A),(42B),(43A)を制御する制御部(50)を有し、
前記制御部(50)は、前記空気調和装置(11)の吹き出しモードに応じて空調風を吸い込む前記吸込口(30A),(30B),(31A),(31B),(31C),(32A)を制御することを特徴とする車両用空気調和システム(10A)〜(10E)。
【請求項5】
請求項4に記載の車両用空気調和システム(10A)〜(10E)であって、
前記制御部(50)は、前記空気調和装置(11)が足元吹き出しモードのときには、空調風を前記下方吸込口(31A),(31B)で吸い込むよう制御することを特徴とする車両用空気調和システム(10A)〜(10E)。
【請求項6】
請求項4に記載の車両用空気調和システム(10A)〜(10E)であって、
前記制御部(50)は、前記空気調和装置(11)がベント吹き出しモードのときには、空調風を前記上方吸込口(30A),(30B)で吸い込むよう制御することを特徴とする車両用空気調和システム(10A)〜(10E)。
【請求項7】
請求項4に記載の車両用空気調和システム(10A)〜(10E)であって、
前記制御部(50)は、前記空気調和装置(11)がバイレベル吹き出しモード、デフ・フット吹き出しモードのときには、空調風を前記上方吹出口(30A),(30B)と前記下方吸込口(31A),(31B)の両方で吸い込むよう制御することを特徴とする車両用空気調和システム(10A)〜(10E)。
【請求項8】
請求項4に記載の車両用空気調和システム(10A)〜(10E)であって、
前記制御部(50)は、複数の高さ位置の前記吸込口(30A),(30B),(31A),(31B),(31C),(32A)に対して空調風の吸い込み割合を可変できることを特徴とする車両用空気調和システム(10A)〜(10E)。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のいずれかに記載の車両用空気調和システム(10A)〜(10E)であって、
前記吸込口(30A),(30B),(31A),(31B),(31C),(32A)が配置されたシート(4)位置より前方と後方で車室空間を仕切る可動仕切手段(60)を備えたことを特徴とする車両用空気調和システム(10A)〜(10E)。
【請求項10】
請求項9記載の車両用空気調和システム(10A)〜(10E)であって、
前記可動仕切手段(60)は、シート(4)下部の車室空間を仕切るシート下部仕切部材(61)であることを特徴とする車両用空気調和システム(10A)〜(10E)。
【請求項11】
請求項9記載の車両用空気調和システム(10A)〜(10E)であって、
前記可動仕切手段(60)は、シート(4)側部の車室空間を仕切るシート側部仕切部材(62)であることを特徴とする車両用空気調和システム(10A)〜(10E)。
【請求項12】
請求項1〜請求項11のいずれかに記載の車両用空気調和システム(10A),(10C),(10D)であって、
前記ダクト(40)は、前記送風路(13)の前記送風機(17)より上流位置に接続されたことを特徴とする車両用空気調和システム(10A),(10C),(10D)。
【請求項13】
請求項1〜請求項11のいずれかに記載の車両用空気調和システム(10B)であって、
前記ダクト(40)は、前記送風路(13)の前記送風機(17)と前記熱交換部(18),(19)の間の位置に接続され、
前記吸込口(30A),(30B),(31A),(31B),(31C),(32A)より前記ダクト(40)内に空気を吸い込むダクト用送風機(45)を備えたことを特徴とする車両用空気調和システム(10B)。
【請求項14】
請求項1〜請求項11のいずれかに記載の車両用空気調和システム(10E)であって、
前記ダクト(40)は、複数の前記吸込口(30A)、(30B),(31A),(31B),(31C),(32A)に接続され、前記空気調和装置(11)の内気導入口(15)の近くに開口部(40a)を有することを特徴とする車両用空気調和システム(10E)。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate