説明

車両用空気調和装置

【課題】熱媒体加熱ヒータの使用を可能な限り低減することによって、車両の走行可能距離が短くなることを防止することのできる車両用空気調和装置を提供する。
【解決手段】水冷媒熱交換器22において加熱された水回路30を流通する水の温度を推定するとともに、水回路30を流通する水の推定温度である推定水温度TWhpに基づいて暖房運転時または除湿暖房運転時に不足する熱量を算出し、算出された不足熱量TG_Qhtrに基づいて水加熱ヒータ32を制御している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電気自動車に適用可能な車両用空気調和装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の車両用空気調和装置では、車両の動力源としてのエンジンによって駆動する圧縮機と、車室外に設けられた放熱器と、車室内に設けられた吸熱器と、を備え、圧縮機が吐出した冷媒を放熱器において放熱させるとともに、吸熱器において吸熱させ、吸熱器において冷媒と熱交換した空気を車室内に供給することで冷房運転を行っている。また、従来の車両用空気調和装置では、車室内にヒータコアを備え、エンジンの冷却に用いた冷却水の排熱をヒータコアにおいて放熱させ、ヒータコアにおいて冷却水と熱交換した空気を車室内に向かって吹出すことで暖房運転を行っている。さらに、従来の車両用空気調和装置では、車室内に供給する空気を吸熱器において要求される絶対湿度まで冷却して除湿し、吸熱器において冷却して除湿された空気をヒータコアにおいて所望の温度まで加熱した後に車室内に向かって吹出す除湿暖房運転を行っている。
【0003】
前記車両用空気調和装置では、暖房運転及び除湿暖房運転において空気を加熱する熱源としてエンジンからの排熱を利用している。車両の動力源が電動モータである電気自動車は、エンジンのように空気を加熱可能な熱が排出されないため、前記車両用空気調和装置を適用することができない。
【0004】
そこで、電気自動車に適用することができる車両用空気調和装置として、電動の圧縮機と、冷媒を放熱させて熱媒体を加熱する熱媒体加熱用放熱器と、冷媒を吸熱させて車室内側に吹出す空気を冷却する空気冷却用吸熱器と、車室外側に設けられ、車室外の空気と熱交換することによって冷媒を放熱または吸熱させる室外熱交換器と、熱媒体加熱用放熱器において加熱された熱媒体が流通する熱媒体回路と、熱媒体回路を流通する熱媒体を放熱させて車室内側に吹出す空気を加熱する空気加熱用放熱器と、熱媒体回路を流通する熱媒体を電力によって加熱する熱媒体加熱ヒータと、を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この車両用空気調和装置では、圧縮機が吐出した冷媒を熱媒体加熱用放熱器において放熱させ、熱媒体加熱用放熱器において放熱した冷媒を室外熱交換器において吸熱させることによって暖房運転を行う。また、この車両用空気調和装置では、圧縮機が吐出した冷媒を熱媒体加熱用放熱器において放熱させ、熱媒体加熱用放熱器において放熱した冷媒を空気冷却用吸熱器及び室外熱交換器において吸熱させることによって除湿暖房運転を行う。この車両用空気調和装置では、熱媒体加熱ヒータによって熱媒体回路を循環する熱媒体を加熱することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−197937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記電気自動車に適用可能な車両用空気調和装置は、車室外の温度が低温の場合に、室外熱交換器において十分な吸熱量を確保することができないため、熱媒体加熱ヒータを用いて熱量を確保している。しかし、熱媒体加熱ヒータは消費電力量が大きいため、熱媒体加熱ヒータによる加熱が継続する場合には、車両の走行用の電力の多くが熱媒体加熱ヒータによって消費され、車両の走行可能距離が短くなるおそれがある。
【0007】
本発明の目的とするところは、熱媒体加熱ヒータの使用を可能な限り低減することによって、車両の走行可能距離が短くなることを防止することのできる車両用空気調和装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記目的を達成するために、冷媒を圧縮して吐出する圧縮機と、冷媒を放熱させて熱媒体を加熱する熱媒体加熱用放熱器と、冷媒を吸熱させて車室内側に吹出す空気を冷却する空気冷却用吸熱器と、車室外側に設けられ、車室外の空気と熱交換することによって冷媒を放熱または吸熱させる室外熱交換器と、熱媒体加熱用放熱器において加熱された熱媒体が流通する熱媒体回路と、熱媒体回路を流通する熱媒体を放熱させて車室内側に吹出す空気を加熱する空気加熱用放熱器と、熱媒体回路を流通する熱媒体を電力によって加熱可能な熱媒体加熱ヒータと、を備え、圧縮機が吐出した冷媒を熱媒体加熱用放熱器において放熱させ、熱媒体加熱用放熱器において放熱した冷媒を室外熱交換器において吸熱させることにより暖房運転を行い、圧縮機から吐出した冷媒を熱媒体加熱用放熱器において放熱させ、熱媒体加熱用放熱器において放熱した冷媒を空気冷却用吸熱器及び室外熱交換器において吸熱させることにより除湿暖房運転を行い、熱媒体加熱ヒータによって熱媒体回路を流通する熱媒体を加熱可能な車両用空気調和装置において、熱媒体加熱用放熱器において加熱された熱媒体回路を流通する熱媒体の温度を推定する熱媒体温度推定手段と、熱媒体温度推定手段の推定結果に基づいて、暖房運転時または除湿暖房運転時に不足する熱量を算出する不足熱量算出手段と、不足熱量算出手段によって算出された不足熱量に基づいて熱媒体加熱ヒータを制御する熱媒体加熱ヒータ制御手段と、を備えている。
【0009】
これにより、熱媒体加熱ヒータが不足熱量算出手段によって算出された不足熱量に応じて運転されることから、熱媒体加熱用放熱器において不足する放熱量のみが熱媒体加熱ヒータの運転によって補われる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、熱媒体加熱用放熱器において不足する放熱量のみを熱媒体加熱ヒータを運転することによって補うことから、熱媒体加熱ヒータを必要最低限の運転とすることができ、車両の走行用の電力の使用量を低減して車両の走行可能距離が短くなることを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態を示す車両用空気調和装置の概略構成図である。
【図2】制御系を示すブロック図である。
【図3】冷房運転及び除湿冷房運転を示す車両用空気調和装置の概略構成図である。
【図4】暖房運転を示す車両用空気調和装置の概略構成図である。
【図5】第1除湿暖房運転を示す車両用空気調和装置の概略構成図である。
【図6】第2除湿暖房運転を示す車両用空気調和装置の概略構成図である。
【図7】除霜運転を示す車両用空気調和装置の概略構成図である。
【図8】水温制御処理を示すフローチャートである。
【図9】加熱量制御処理を示すフローチャートである。
【図10】水加熱ヒータ制御処理を示すフローチャートである。
【図11】運転切換え制御処理を示すフローチャートである。
【図12】除霜運転制御処理を示すフローチャートである。
【図13】加熱量補償制御処理を示すフローチャートである。
【図14】本発明の第2実施形態の加熱量制御処理を示すフローチャートである。
【図15】本発明の第3実施形態の加熱量制御処理を示すフローチャートである。
【図16】本発明の第4実施形態の加熱量制御処理を示すフローチャートである。
【図17】本発明の第5実施形態の水加熱ヒータ制御処理を示すフローチャートである。
【図18】本発明の第6実施形態の水加熱ヒータ制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1乃至図12は、本発明の第1実施形態を示すものである。
【0013】
本発明の車両用空気調和装置は、図1に示すように、車室内に設けられた空調ユニット10と、車室内および車室外に亘って構成された冷媒回路20及び熱媒体回路としての水回路30と、を備えている。
【0014】
空調ユニット10は、車室内に供給する空気を流通させるための空気流通路11を有している。空気流通路11の一端側には、車室外の空気を空気流通路11に流入させるための外気吸入口11aと、車室内の空気を空気流通路11に流入させるための内気吸入口11bと、が設けられている。また、空気流通路11の他端側には、空気流通路11を流通する空気を車室内の搭乗者の足元に向かって吹き出させるフット吹出口11cと、空気流通路11を流通する空気を車室内の搭乗者の上半身に向かって吹き出させるベント吹出口11dと、空気流通路11を流通する空気を車両のフロントガラスの車室内側の面に向かって吹き出させるデフ吹出口11eと、が設けられている。
【0015】
空気流通路11の一端側には、空気を空気流通路11の一端側から他端側に向かって流通させるためのシロッコファン等の室内送風機12が設けられている。この室内送風機12は電動モータ12aによって駆動される。
【0016】
空気流通路11の一端側には、外気吸入口11a及び内気吸入口11bの一方を開放して他方を閉鎖することが可能な吸入口切換えダンパ13が設けられている。この吸入口切換えダンパ13は電動モータ13aによって駆動される。吸入口切換えダンパ13によって内気吸入口11bが閉鎖されて外気吸入口11aが開放されると、外気吸入口11aから空気が空気流通路11に流入する外気供給モードとなる。また、吸入口切換えダンパ13によって外気吸入口11aが閉鎖されて内気吸入口11bが開放されると、内気吸入口11bから空気が空気流通路11に流入する内気循環モードとなる。さらに、吸入口切換えダンパ13が外気吸入口11aと内気吸入口11bとの間に位置し、外気吸入口11aと内気吸入口11bがそれぞれ開放されると、吸入口切換えダンパ13による外気吸入口11a及び内気吸入口11bのそれぞれの開口率に応じた割合で、外気吸入口11aと内気吸入口11bとから空気が空気流通路11に流入する内外気吸入モードとなる。
【0017】
空気流通路11の他端側のフット吹出口11c、ベント吹出口11d及びデフ吹出口11eのそれぞれには、各吹出口11c,11d,11eを開閉するための吹出口切換えダンパ13b,13c,13dが設けられている。この吹出口切換えダンパ13b,13c,13dは、図示しないリンク機構によって連動するように構成され、電動モータ13eによってそれぞれ開閉される。ここで、吹出口切換えダンパ13b,13c,13dによってフット吹出口11cが開放されてベント吹出口11dが閉鎖され、デフ吹出口11eが僅かに開放されると、空気流通路11を流通する空気の大部分がフット吹出口11cから吹き出されると共に残りの空気がデフ吹出口11eから吹き出されるフットモードとなる。また、吹出口切換えダンパ13b,13c,13dによってフット吹出口11c及びデフ吹出口11eが閉鎖されてベント吹出口11dが開放されると、空気流通路11を流通する空気の全てがベント吹出口11dから吹き出されるベントモードとなる。さらに、吹出口切換えダンパ13b,13c,13dによってフット吹出口11c及びベント吹出口11dが開放されてデフ吹出口11eが閉鎖されると、空気流通路11を流通する空気がフット吹出口11c及びベント吹出口11dから吹き出されるバイレベルモードとなる。また、吹出口切換えダンパ13b,13c,13dによってフット吹出口11c及びベント吹出口11dが閉鎖されてデフ吹出口11eが開放されると、空気流通路11を流通する空気がデフ吹出口11eから吹き出されるデフモードとなる。また、吹出口切換えダンパ13b,13c,13dによってベント吹出口11dが閉鎖されてフット吹出口11c及びデフ吹出口11eが開放されると、空気流通路11を流通する空気がフット吹出口11c及びデフ吹出口11eから吹き出されるデフフットモードとなる。尚、バイレベルモードにおいては、フット吹出口11cから吹き出される空気の温度がベント吹出口11dから吹き出される空気の温度よりも高温となる温度差が生じるような、空気流通路11、フット吹出口11c、ベント吹出口11d、後述する吸熱器及び放熱器の互いの位置関係や構造となっている。
【0018】
室内送風機12の空気流通方向下流側の空気流通路11には、空気流通路11を流通する空気を冷却及び除湿するための吸熱器14が設けられている。また、吸熱器14の空気流通方向下流側の空気流通路11には、空気流通路11を流通する空気を加熱するための放熱器15が設けられている。吸熱器14は、冷媒回路20を流通する冷媒と空気流通路11を流通する空気とを熱交換させるためのフィンとチューブとからなる熱交換器である。また、放熱器15は、水回路30を流通する水と空気流通路11を流通する空気とを熱交換させるためのフィンとチューブとからなる熱交換器である。
【0019】
吸熱器14と放熱器15との間の空気流通路11には、空気流通路11を流通する空気の放熱器15において加熱される割合を調整するためのエアミックスダンパ16が設けられている。エアミックスダンパ16は電動モータ16aによって駆動される。エアミックスダンパ16は、空気流通路11の放熱器15の上流側に位置することによって、放熱器15において熱交換する空気の割合が減少し、空気流通路11の放熱器15以外の部分側に移動させることによって、放熱器15において熱交換する空気の割合が増加する。エアミックスダンパ16は、空気流通路11の放熱器15の上流側を閉鎖して放熱器15以外の部分を開放した状態で開度が0%となり、空気流通路11の放熱器15の上流側を開放し、放熱器15以外の部分を閉鎖した状態で開度が100%となる。
【0020】
冷媒回路20は、前記吸熱器14、冷媒を圧縮するための圧縮機21、冷媒と水回路30を流通する水とを熱交換させるための水冷媒熱交換器22、冷媒と車室外の空気とを熱交換するための室外熱交換器23、放熱器15から流出する冷媒と吸熱器14から流出する冷媒とを熱交換させるための内部熱交換器24、冷媒の流路を切換えるための電動の三方弁25、第1〜第4電磁弁26a〜26d、第1〜第2逆止弁27a〜27b、流通する冷媒を減圧するための第1及び第2膨張弁28a,28bを有し、これらは銅管やアルミニウム管によって接続されている。圧縮機21及び室外熱交換器23は、車室外に配置されている。また、圧縮機21は電動モータ21aによって駆動される。室外熱交換器23には、車両の停止時に車室外の空気と冷媒とを熱交換させるための室外送風機29が設けられている。室外送風機29は、電動モータ29aによって駆動される。
【0021】
具体的には、圧縮機21の冷媒吐出側に水冷媒熱交換器22の冷媒流入側が接続されることによって、冷媒流通路20aが設けられている。また、水冷媒熱交換器22の冷媒流出側には、室外熱交換器23の冷媒流入側が接続されることによって、冷媒流通路20bが設けられている。冷媒流通路20bには、三方弁25が設けられ、三方弁25の一方の冷媒流出側と他方の冷媒流出側が互いに並列に室外熱交換器23の冷媒流入側に接続され、それぞれ冷媒流通路20c,20dが設けられている。冷媒流通路20dには、冷媒流通方向の上流側から順に、第1膨張弁28a、第1逆止弁27aが設けられている。室外熱交換器23の冷媒流出側には、圧縮機21の冷媒吸入側と、冷媒流通路20dの三方弁25と第1膨張弁28aとの間と、が互いに並列に接続されることによって、それぞれ冷媒流通路20e,20fが設けられている。冷媒流通路20eには、第1電磁弁26aが設けられている。また、冷媒流通路20fには、冷媒流通方向の上流側から順に、第2電磁弁26b、第2逆止弁27bが設けられている。また、冷媒流通路20dの三方弁25と第1膨張弁28aとの間には、内部熱交換器24の高圧冷媒流入側が接続され、冷媒流通路20gが設けられている。冷媒流通路20gには、第3電磁弁26cが設けられている。内部熱交換器24の高圧冷媒流出側には、吸熱器14の冷媒流入側が接続されることによって、冷媒流通路20hが設けられている。冷媒流通路20hには、第2膨張弁28bが設けられている。吸熱器14の冷媒流出側には、内部熱交換器24の低圧冷媒流入側が接続されることによって、冷媒流通路20iが設けられている。内部熱交換器24の低圧冷媒流出側には、冷媒流通路20eの第1電磁弁26aと圧縮機21の冷媒吸入側との間が接続されることによって、冷媒流通路20jが設けられている。冷媒流通路20aには、室外熱交換器23の冷媒流入側が接続されることによって、冷媒流通路20kが設けられている。冷媒流通路20kには、第4電磁弁26dが設けられている。
【0022】
水回路30は、前記放熱器15、水冷媒熱交換器22、熱媒体としての水を圧送するためのポンプ31、電力によって水を加熱するための電熱ヒータ等からなる熱媒体加熱ヒータとしての水加熱ヒータ32を有し、これらは銅管やアルミニウム管によって接続されている。具体的には、ポンプ31の水吐出側に水冷媒熱交換器22の水流入側が接続されることによって、水流通路30aが設けられている。また、水冷媒熱交換器22の水流出側には、水加熱ヒータ32の水流入側が接続されることによって、水流通路30bが設けられている。水加熱ヒータ32の水流出側には、放熱器15の水流入側が接続されることによって、水流通路30cが設けられている。放熱器15の水流出側には、ポンプ31の水吸入側が接続されることによって、水流通路30dが設けられている。ポンプ31は電動モータ31aによって駆動される。
【0023】
また、車両用空気調和装置は、車室内の温度及び湿度を設定された温度及び設定された湿度とする制御を行うためのコントローラ40を備えている。
【0024】
コントローラ40は、CPU、ROM,RAMを有している。コントローラ40は、入力側に接続された装置からの入力信号を受信すると、CPUが、入力信号に基づいてROMに記憶されたプログラムを読み出すとともに、入力信号によって検出された状態をRAMに記憶したり、出力側に接続された装置に出力信号を送信したりする。
【0025】
コントローラ40の出力側には、図2に示すように、室内送風機12駆動用の電動モータ12a、吸入口切換えダンパ13駆動用の電動モータ13a、吹出口切換えダンパ13b,13c,13d駆動用の電動モータ13e、エアミックスダンパ16駆動用の電動モータ16a、圧縮機21駆動用の電動モータ21a、三方弁25、第1〜第4電磁弁26a〜26d、室外送風機29駆動用の電動モータ29a、ポンプ31駆動用の電動モータ31a、水加熱ヒータ32が接続されている。
【0026】
コントローラ40の入力側には、図2に示すように、車室外の温度Tamを検出するための外気温度センサ41、車室内の温度Trを検出するための内気温度センサ42、空気流通路11に流入する空気の温度Tiを検出するための吸気温度センサ43、吸熱器14において冷却された後の空気の温度Teを検出するための冷却空気温度センサ44、放熱器15において加熱された後の空気の温度Tcを検出するための加熱空気温度センサ45、車室内の湿度Rhを検出するための内気湿度センサ46、室外熱交換器23において熱交換した後の冷媒の温度Thexを検出するための冷媒温度センサ47、日射量Tsを検出するための例えばフォトセンサ式の日射センサ48、車両の速度Vを検出するための速度センサ49、設定温度Tsetや運転の切換えに関するモードを設定するための操作部50、冷媒回路20の高圧側の圧力Pdを検出するための圧力センサ51、車室外の湿度Rhamを検出するための外気湿度センサ52が接続されている。
【0027】
以上のように構成された車両用空気調和装置では、冷房運転、除湿冷房運転、暖房運転、第1除湿暖房運転、第2除湿暖房運転、除霜運転が行われる。以下、それぞれの運転について説明する。
【0028】
冷房運転において、冷媒回路20では、三方弁25の流路を冷媒流通路20c側に設定し、第2及び第3電磁弁26b,26cを開放するとともに、第1及び第4電磁弁26a,26dを閉鎖し、圧縮機21を運転する。また、水回路30では、ポンプ31の運転を停止の状態とする。
【0029】
これにより、圧縮機21から吐出された冷媒は、図3に示すように、冷媒流通路20a、水冷媒熱交換器22、冷媒流通路20b,20c、室外熱交換器23、冷媒流通路20f,20d,20g、内部熱交換器24の高圧側、冷媒流通路20h、吸熱器14、冷媒流通路20i、内部熱交換器24の低圧側、冷媒流通路20j,20eの順に流通して圧縮機21に吸入される。冷媒回路20を流通する冷媒は、室外熱交換器23において放熱し、吸熱器14において吸熱する。冷房運転においては、ポンプ31の運転を停止しているため、水冷媒熱交換器22において冷媒は放熱しない。
【0030】
このとき、冷房運転中の空調ユニット10において、室内送風機12を運転することによって流通する空気流通路11の空気は、吸熱器14において冷媒と熱交換して冷却され、車室内の温度を設定温度Tsetとするために吹出口11c,11d,11eから吹き出すべき空気の温度である目標吹出温度TAOの空気となって車室内に吹き出される。
【0031】
除湿冷房運転において、冷媒回路20では、冷房運転の場合と同様に、三方弁25の流路を冷媒流通路20c側に設定し、第2及び第3電磁弁26b,26cを開放するとともに、第1及び第4電磁弁26a,26dを閉鎖し、圧縮機21を運転する。また、水回路30では、ポンプ31を運転する。
【0032】
これにより、圧縮機21から吐出された冷媒は、図3に示すように、冷房運転の場合と同様に流通する。冷媒回路20を流通する冷媒は、水冷媒熱交換器22及び室外熱交換器23において放熱し、吸熱器14において吸熱する。
【0033】
また、ポンプ31から吐出された水は、図3の鎖線で示すように、水冷媒熱交換器22、水加熱ヒータ32、放熱器15の順に流通してポンプ31に吸入される。水回路30を流通する水は、水冷媒熱交換器22において吸熱し、放熱器15において放熱する。
【0034】
このとき、除湿冷房運転中の空調ユニット10において、室内送風機12を運転することによって空気流通路11を流通する空気は、吸熱器14において吸熱する冷媒と熱交換して冷却されることによって除湿される。吸熱器14において除湿された空気は、放熱器15おいて放熱する水と熱交換して加熱され、目標吹出温度TAOの空気となって車室内に吹き出される。
【0035】
暖房運転において、冷媒回路20では、三方弁25の流路を冷媒流通路20d側に設定し、第1電磁弁26aを開放するとともに、第2〜第4電磁弁26b〜26dを閉鎖し、圧縮機21を運転する。また、水回路30では、ポンプ31を運転する。
【0036】
これにより、圧縮機21から吐出された冷媒は、図4に示すように、冷媒流通路20a、水冷媒熱交換器22、冷媒流通路20b,20d、室外熱交換器23、冷媒流通路22eの順に流通して圧縮機21に吸入される。冷媒回路20を流通する冷媒は、水冷媒熱交換器22において放熱し、室外熱交換器23において吸熱する。
【0037】
また、ポンプ31から吐出された水は、図4に示すように、水冷媒熱交換器22、水加熱ヒータ32、放熱器15の順に流通してポンプ31に吸入される。水回路30を流通する水は、水冷媒熱交換器22において吸熱し、放熱器15において放熱する。
【0038】
このとき、空調ユニット10において、室内送風機12を運転することによって流通する空気流通路11の空気は、吸熱器14において冷媒と熱交換することなく、水冷媒熱交換器22において水と熱交換して加熱され、目標吹出温度TAOの空気となって車室内に吹き出される。
【0039】
第1除湿暖房運転において、冷媒回路20では、三方弁25の流路を冷媒流通路20d側に設定し、第1及び第3電磁弁26a,26cを開放するとともに、第2及び第4電磁弁26b,26dを閉鎖し、圧縮機21を運転する。また、水回路30では、ポンプ31を運転する。
【0040】
これにより、圧縮機21から吐出された冷媒は、図5に示すように、冷媒流通路20a、水冷媒熱交換器22、冷媒流通路20b,20dを順に流通する。冷媒流通路20dを流通する冷媒の一部は、室外熱交換器23、冷媒流通路20eの順に流通して圧縮機21に吸入される。また、冷媒流通路20dを流通するその他の冷媒は、冷媒流通路20g、内部熱交換器24の高圧側、冷媒流通路20h、吸熱器14、冷媒流通路20i、内部熱交換器24の低圧側、冷媒流通路20j,20eの順に流通して圧縮機21に吸入される。冷媒回路20を流通する冷媒は、放熱器15において放熱し、吸熱器14及び室外熱交換器23において吸熱する。
【0041】
また、ポンプ31から吐出された水は、図5に示すように、水冷媒熱交換器22、水加熱ヒータ32、放熱器15の順に流通してポンプ31に吸入される。水回路30を流通する水は、水冷媒熱交換器22において吸熱し、放熱器15において放熱する。
【0042】
このとき、空調ユニット10において、室内送風機12を運転することによって流通する空気流通路11の空気は、吸熱器14において冷媒と熱交換して冷却されることにより除湿される。吸熱器14において除湿された空気は、一部の空気が放熱器15において水と熱交換することによって加熱され、目標吹出温度TAOの空気となって車室内に吹き出される。
【0043】
第2除湿暖房運転において、冷媒回路20では、三方弁25の流路を冷媒流通路20d側に設定し、第3電磁弁26cを開放するとともに、第1、第2及び第4電磁弁26a,26b,26dを閉鎖し、圧縮機21を運転する。また、水回路30では、ポンプ31を運転する。
【0044】
これにより、圧縮機21から吐出された冷媒は、図6に示すように、冷媒流通路20a、水冷媒熱交換器22、冷媒流通路20b,20d,20g、内部熱交換器24の高圧側、冷媒流通路20h、吸熱器14、冷媒流通路20i、内部熱交換器24の低圧側、冷媒流通路20j,20eの順に流通して圧縮機21に吸入される。冷媒回路20を流通する冷媒は、放熱器15において放熱し、吸熱器14において吸熱する。
【0045】
また、ポンプ31から吐出された水は、図6に示すように、水冷媒熱交換器22、水加熱ヒータ32、放熱器15の順に流通してポンプ31に吸入される。水回路30を流通する水は、水冷媒熱交換器22において吸熱し、放熱器15において放熱する。
【0046】
このとき、空調ユニット10において、室内送風機12を運転することによって流通する空気流通路11の空気は、前記第1除湿暖房運転と同様に、吸熱器14において冷媒と熱交換して冷却されることにより除湿される。吸熱器14において除湿された空気は、一部の空気が放熱器15において水と熱交換することによって加熱され、目標吹出温度TAOとなって車室内に吹き出される。
【0047】
除霜運転において、冷媒回路20では、三方弁25の流路を冷媒流通路20d側に設定し、第1及び第4電磁弁26a,26dを開放するとともに、第2及び第3電磁弁26b,26cを閉鎖し、圧縮機21を運転する。また、水回路30では、ポンプ31を運転する。
【0048】
これにより、圧縮機21から吐出された冷媒の一部は、図7に示すように、冷媒流通路20a、水冷媒熱交換器22、冷媒流通路20b,20dを順に流通して室外熱交換器23に流入する。また、圧縮機21から吐出されたその他の冷媒は、冷媒流通路20a,20kを流通して室外熱交換器23に流入する。室外熱交換器23から流出した冷媒は、冷媒流通路20eを流通して圧縮機21に吸入される。冷媒回路20を流通する冷媒は、放熱器15において放熱するとともに、室外熱交換器23において放熱と同時に吸熱する。
【0049】
また、ポンプ31から吐出された水は、図7に示すように、水冷媒熱交換器22、水加熱ヒータ32、放熱器15の順に流通してポンプ31に吸入される。水回路30を流通する水は、水冷媒熱交換器22において吸熱し、放熱器15において放熱する。
【0050】
このとき、空調ユニット10において、室内送風機12を運転することによって流通する空気流通路11の空気は、吸熱器14において冷媒と熱交換することなく、放熱器15において放熱する水と熱交換することによって加熱され、車室内に吹き出される。
【0051】
コントローラ40は、操作部50のオートエアコンスイッチがオンの状態に設定されている場合に、冷房運転、除湿冷房運転、暖房運転、第1除湿暖房運転、第2除湿暖房運転、除霜運転を車室内外の温度等の環境条件に基づいて切換える運転切換え制御処理を行う。
【0052】
また、コントローラ40は、運転切換え制御処理によって切り換えられる各運転において、目標吹出温度TAOに応じてフットモード、ベントモード、バイレベルモードの切り替えを行う。具体的には、目標吹出温度TAOが例えば40℃以上など、高温となる場合にフットモードに設定する。また、コントローラ40は、目標吹出温度TAOが例えば25℃未満など、低温となる場合にベントモードに設定する。さらに、コントローラ40は、目標吹出温度TAOが、フットモードが設定される目標吹出温度TAOとベントモードが設定される目標吹出温度TAOとの間の温度の場合にバイレベルモードに設定する。
【0053】
また、コントローラ40は、吹出口切換えダンパ13b,13c,13dによって吹出口11c,11d,11eのモードを切換えるとともに、吹出口11c,11d,11eから吹出される空気の温度を目標吹出温度TAOとするために、エアミックスダンパ16の開度を制御する。
【0054】
また、コントローラ40は、暖房運転時または除湿暖房運転時において、水回路30を流通する水の温度が車室内に吹出す空気を目標吹出温度TAOとするために必要な加熱量を得ることが可能な温度となるように、水温制御処理を行う。このときのコントローラ40の動作を図8のフローチャートを用いて説明する。
【0055】
(ステップS1)
ステップS1においてCPUは、目標吹出温度TAOを算出し、ステップS2に処理を移す。
目標吹出温度TAOは、車室外の温度Tam、車室内の温度Tr、日射量Ts等の環境条件を、外気温度センサ41、内気温度センサ42、日射センサ44等によって検出し、検出された環境条件と設定温度Tsetに基づいて算出される。
【0056】
(ステップS2)
ステップS2においてCPUは、吹出口11c,11d,11eから吹出される空気の温度を目標吹出温度TAOとする加熱量を得るために必要な放熱器15に流入させる水の温度である目標水温度TG_TWを算出し、ステップS3に処理を移す。
目標水温度TG_TWは、ステップS1において算出された目標吹出温度TAOと、吸熱器14において冷却された後の空気の温度Te(暖房運転の場合には、空気流通路11に流入する空気の温度Ti)と、空気と水との温度効率Φwと、に基づいて算出される(TG_TW=(TAO−Te)/Φw+Te)。
【0057】
(ステップS3)
ステップS3においてCPUは、水冷媒熱交換器22において放熱した後の冷媒の温度Tcoを算出し、ステップS4に処理を移す。
温度Tcoは、冷媒回路20の高圧側の圧力Pdと、水冷媒熱交換器22における水と冷媒との温度効率Φkと、に基づいて算出される(Tco=FuncTco(Pd,Φk)、FuncTco:温度Tcoを算出するための関数)。
【0058】
(ステップS4)
ステップS4においてCPUは、水冷媒熱交換器22において加熱された後の水回路30の水の推定温度である推定水温度TWhpを算出し、ステップS5に処理を移す。
推定水温度TWhpは、水冷媒熱交換器22において放熱した後の冷媒の温度Tcoと、水回路30を流通する水の流量Gwを考慮した温度効率と、に基づいて算出される(TWhp=GSw(Tco×Φ(Gw))、GSw:水回路を流通する水の温度の応答遅れを考慮して推定水温度Whpを算出する関数)。
【0059】
(ステップS5)
ステップS5においてCPUは、圧縮機21の吸入側の推定圧力Psを算出し、ステップS6に処理を移す。
圧縮機21の吸入側の推定圧力Psは、車室外の温度Tamと、圧縮機21の回転数Ncと、冷媒回路20の高圧側の圧力Pdと、に基づいて算出される(Ps=FuncPs(Tam,Nc,Pd)、FuncPs:推定圧力Psを算出するための関数)。
【0060】
(ステップS6)
ステップS6においてCPUは、ステップS4において得られた推定水温度TWhp及びステップS5において得られた推定圧力Psに基づいて水回路30を流通する水の加熱量を制御する加熱量制御処理を行い、水温制御処理を終了する。この加熱量制御処理については、図9を用いて後述する。
【0061】
図9を用いて、加熱量制御処理を説明する。
【0062】
(ステップS11)
ステップS11においてCPUは、圧縮機21の吸入側の推定圧力Psが所定圧力P1以上か否かを判定する。推定圧力Psが所定圧力P1以上と判定した場合にはステップS15に処理を移し、推定圧力Psが所定圧力P1より低いと判定した場合にはステップS12に処理を移す。
ここで、所定圧力P1は、圧縮機21の破損を防止するため、例えば、標準気圧である1013.25hPaに設定する。
【0063】
(ステップS12)
ステップS11において推定圧力Psが所定圧力P1より低い場合に、ステップS12においてCPUは、推定圧力Psが少なくとも所定圧力P1以上となるように圧縮機21の回転数Ncを制御し、ステップS13に処理を移す。
【0064】
(ステップS13)
ステップS13においてCPUは、圧縮機21の回転数Ncが所定回転数N1以下か否かを判定する。回転数Ncが所定回転数N1以下と判定した場合にはステップS14に処理を移し、回転数Ncが所定回転数N1より高いと判定した場合にはステップS15に処理を移す。
【0065】
(ステップS14)
ステップS13において回転数Ncが所定回転数N1以下と判定した場合に、ステップS14においてCPUは、圧縮機21の駆動を停止し、ステップS15に処理を移す。
【0066】
(ステップS15)
ステップS11において推定圧力Psが所定圧力P1以上と判定した場合、ステップS13において回転数Ncが所定回転数N1より高いと判定した場合、または、ステップS14において圧縮機21の駆動を停止した場合に、ステップS15においてCPUは、水加熱ヒータ32の運転を制御する水加熱ヒータ制御処理を行い、加熱量制御処理を終了する。この水加熱ヒータ制御処理については、図10を用いて説明する。
【0067】
図10を用いて水加熱ヒータ制御処理を説明する。
【0068】
(ステップS21)
ステップS21においてCPUは、目標水温度TG_TWから推定水温度TWhpを減じた数値(TG_TW−TWhp)が所定値T1以上か否かを判定する。数値(TG_TW−TWhp)が所定値T1以上の場合にはステップS22に処理を移し、数値(TG_TW−TWhp)が所定値T1より小さい場合にはステップS25に処理を移す。
【0069】
(ステップS22)
ステップS21において数値TG_TW−TWhpが所定値T1以上の場合に、ステップS22においてCPUは、水加熱ヒータ32が水回路30の水に加えるべき熱量である目標発生熱量TG_Qhtrを算出し、ステップS23に処理を移す。
目標発生熱量TG_Qhtrは、目標水温度TG_TW、推定水温度TWhp、水の比熱Cpw、水の密度ρw、水加熱ヒータ32を流通する水の流量Gwに基づいて算出される比例制御(P制御)の出力値である(TG_Qhtr=P_GAIN×(TG_TW−TWhp)×Cpw×ρw×Gw、P_GAIN:比例ゲインとしての定数)。水の流量Gは、ポンプ31の駆動電流値から推定可能である。
【0070】
(ステップS23)
ステップS23においてCPUは、水加熱ヒータ32において目標発生熱量TG_Qhtrに相当する電力である目標電力TG_Whtrを算出し、ステップS24に処理を移す。
目標電力TG_Whtrは、ステップS22において算出された目標発生熱量TG_Qhtrと、水加熱ヒータ32の発熱効率EFF_htrに基づいて算出される(TG_Whtr=TG_Qhtr×(1/EFF_htr))。
【0071】
(ステップS24)
ステップS24においてCPUは、ステップS23において算出された目標電力TG_Whtrの電力で水加熱ヒータ32を運転し、水加熱ヒータ制御処理を終了する。
【0072】
(ステップS25)
ステップS21において数値(TG_TW−TWhp)が所定値T1より小さい場合に、ステップS25においてCPUは、水加熱ヒータ32の運転を停止して水加熱ヒータ制御処理を終了する。
【0073】
また、第1除湿暖房運転及び第2除湿暖房運転時において、コントローラ40は、除湿能力が不足する場合に除湿冷房運転に切り替えるための運転切換え制御処理を行う。図11を用いて運転切換え制御処理を説明する。
【0074】
(ステップS31)
ステップS31においてCPUは、第1除湿暖房運転または第2除湿暖房運転中であるか否かを判定する。第1除湿暖房運転または第2除湿暖房運転中であると判定された場合にはステップS32に処理を移し、第1除湿暖房運転または第2除湿暖房運転中でないと判定された場合にはステップS36に処理を移す。
【0075】
(ステップS32)
ステップS31において第1除湿暖房運転または第2除湿暖房運転中であると判定した場合に、ステップS32においてCPUは、車室内の温度Tr及び車室内の湿度Rhに基づいて必要な除湿量を算出し、ステップS33に処理を移す。
【0076】
(ステップS33)
ステップS33においてCPUは、第1除湿暖房運転または第2除湿暖房運転における除湿能力を算出し、ステップS34に処理を移す。
【0077】
(ステップS34)
ステップS34においてCPUは、ステップS33において算出された除湿能力が、ステップS32において必要な除湿量以上か否かを判定する。除湿能力が必要な除湿量以上と判定した場合にはステップS36に処理を移し、除湿能力が必要な除湿量以上でないと判定した場合にはステップS35に処理を移す。
【0078】
(ステップS35)
ステップS34において除湿能力が必要な除湿量以上でないと判定した場合に、ステップS35においてCPUは、第1除湿暖房運転または第2除湿暖房運転の運転状態を、除湿冷房運転に切り替え、ステップS36に処理を移す。
【0079】
(ステップS36)
ステップS31において第1除湿暖房運転または第2除湿暖房運転中でないと判定された場合、または、ステップS35において運転状態を除湿冷房運転に切り替えた場合に、ステップS36においてCPUは、前述した図9に示す加熱量制御処理を行い、運転切換え制御処理を終了する。
【0080】
また、コントローラ40は、室外熱交換器23に着霜が生じているか否かを判定し、着霜が生じている場合に除霜運転を行う除霜運転制御処理を行う。図12を用いて除霜運転制御処理を説明する。
【0081】
(ステップS41)
ステップS41においてCPUは、外気温度センサ41によって検出された外気温度Tamおよび外気湿度センサ52によって検出された外気湿度Rhamに基づいて外気露点温度Tdewを算出する。
【0082】
(ステップS42)
ステップS42においてCPUは、外気露点温度Tdewよりも冷媒温度センサ47によって検出された室外熱交換器23から流出する冷媒の温度Thexが低いか否かを判定する。外気露点温度Tdewよりも冷媒の温度Thexが低いと判定した場合にはステップS43に処理を移し、外気露点温度Tdewよりも冷媒の温度Thexが低いと判定しなかった場合には着霜運転制御処理を終了する。
【0083】
(ステップS43)
ステップS42において外気露点温度Tdewが冷媒の温度Thexよりも低いと判定した場合に、ステップS43においてCPUは、前述の除霜運転を所定時間実行して除霜運転制御処理を終了する。
【0084】
次に、除霜運転時において、放熱器15からの放熱量が不足する場合に、コントローラ40は、不足する放熱量を補うための放熱量補償制御処理を行う。図13を用いて放熱量補償制御処理を説明する。
【0085】
(ステップS51)
ステップS51においてCPUは、運転状態が除霜運転であるか否かを判定する。運転状態が除霜運転であると判定された場合にはステップS52に処理を移し、除霜運転でないと判定された場合にはステップS58に処理を移す。
【0086】
(ステップS52)
ステップS51において運転状態が除霜運転の場合に、ステップS52においてCPUは、運転状態が除霜運転に切り換わってからの経過時間が所定時間以内か否かを判定する。除霜運転に切り換わってからの経過時間が所定時間以内の場合にはステップS53に処理を移し、除霜運転に切り換わってからの経過時間が所定時間よりも経過している場合にはステップS55に処理を移す。
【0087】
(ステップS53)
ステップS52において除霜運転に切り換わってからの経過時間が所定時間以内の場合に、ステップS53においてCPUは、除霜運転に切り換わる直前の水冷媒熱交換器22の放熱量Qhp_htrを、RAMに記憶させ、ステップS54に処理を移す(RAMに記憶された放熱量をQhp_htr_memとする)。
【0088】
(ステップS54)
ステップS54においてCPUは、除霜運転に切り換わる直前の水加熱ヒータ32の目標発生熱量TG_Qhtrを、RAMに記憶させ、ステップS55に処理を移す(RAMに記憶された放熱量をTG_Qhtr_memとする)。
【0089】
(ステップS55)
ステップS52において除霜運転に切り換わってからの時間が所定時間よりも経過している場合、または、S54において水加熱ヒータ32の目標発生熱量TG_QhtrをRAMに記憶させた場合に、ステップS55においてCPUは、水冷媒熱交換器22の低下した放熱量Qhp_decを算出し、ステップS56に処理を移す。
低下した放熱量Qhp_decは、ステップS43において記憶された除霜運転に切り換わる直前の水冷媒熱交換器22の放熱量Qhp_htr_memから現在の水冷媒熱交換器22の放熱量Qhp_htrを減じることによって算出される(Qhp_dec=Qhp_htr_mem−Qhp_htr)。
【0090】
(ステップS56)
ステップS56においてCPUは、水加熱ヒータ32の目標電力TG_Whtrを算出し、ステップS57に処理を移す。
目標電力TG_Whtrは、ステップS43においてRAMに記憶された放熱量Qhp_htr_memと、ステップS45において算出された低下した放熱量Qhp_decと水加熱ヒータの発熱効率EFF_htrに基づいて算出される(TG_Whtr=(TG_Qhtr_mem−Qhp_dec)×(1/EFF_htr))。
【0091】
(ステップS57)
ステップS57においてCPUは、ステップS56において算出された目標電力TG_Whtrの電力で水加熱ヒータ32を運転し、放熱量補償制御処理を終了する。
【0092】
(ステップS58)
ステップS51において運転状態が除霜運転でないと判定された場合、ステップS58においてCPUは、前述した図9に示す加熱量制御処理を行い、放熱量補償制御処理を終了する。
【0093】
このように、本実施形態の車両用空気調和装置によれば、水冷媒熱交換器22において加熱された水回路30を流通する水の温度を推定するとともに、水回路30を流通する水の推定水温度TWhpに基づいて暖房運転時または除湿暖房運転時に不足する熱量を算出し、算出された不足熱量TG_Qhtrに基づいて水加熱ヒータ32を制御している。これにより、水冷媒熱交換器22において不足する放熱量のみを水加熱ヒータ32を運転することによって補うことから、水加熱ヒータ32を必要最低限の運転とすることができ、車両の走行用の電力の使用量を低減して車両の走行可能距離が短くなることを防止することが可能となる。
【0094】
また、圧縮機21の吸入側の推定圧力Psが少なくとも所定圧力P1以上となるように圧縮機21の運転を制御するようにしている。これにより、圧縮機21の吸入側の圧力が所定圧力P1より低下することを防止することによって、圧縮機21の故障の発生を防止することが可能となる。
【0095】
また、圧縮機21の回転数Ncが所定回転数N1以下の場合に、圧縮機21の運転を停止するようにしている。これにより、圧縮機21の回転数Ncが低下することによる低効率な運転を防止することが可能となる。
【0096】
また、水回路30を流通する水の目標温度TG_TWを算出し、水加熱ヒータ32の運転が停止している状態において、算出された目標温度TG_TWと水回路30を流通する水の推定温度である推定水温度TWhpとの温度差が、所定値T1以上のときに水加熱ヒータ32の運転を開始し、水加熱ヒータ32が運転している状態において、算出された目標温度TG_TWと水回路30を流通する水の推定温度である推定水温度TWhpとの温度差が、所定値T1より小さいときに水加熱ヒータ32の運転を停止するようにしている。これにより、水回路30を流通する水が所定の熱量を有している場合に水加熱ヒータ32の運転が停止されることから、不要な水加熱ヒータ32の運転を防止することが可能となる。
【0097】
また、車室内の温度及び湿度に基づいて除湿すべき除湿量である必要除湿量を算出するとともに、除湿暖房運転時において可能な除湿量である可能除湿量を算出し、算出された可能除湿量が必要除湿量よりも小さい場合に除湿暖房運転から除湿冷房運転に切換えるとともに、除湿暖房運転から除湿冷房運転に切換えることによって不足する水冷媒熱交換器からの放熱量を水加熱ヒータ32によって補うようにしている。これにより、必要な除湿量が除湿暖房運転時の除湿能力を超える場合においても、必要な除湿量を確保することができるとともに、車室内の温度Trを設定温度Tsetに保持することができるので、車室内の環境を良好な状態に保持することが可能となる。
【0098】
また、除霜運転時に、水加熱ヒータ32を運転することによって水回路30を流通する水を加熱して車室内の暖房を継続するようにしている。これにより、除霜運転時においても、車室内の温度Trを設定温度Tsetに保持することができるので、車室内の環境を良好な状態に保持することが可能となる。
【0099】
外気露点温度Tdewよりも冷媒温度センサ47によって検出された室外熱交換器23から流出する冷媒の温度Thexが低くなると、除霜運転を実行する。これにより、室外熱交換器23に着霜が生じる状態において確実に除霜運転を実行することができるので、室外熱交換器23への着霜を未然に防ぐことが可能となる。
【0100】
図14は、本発明の第2実施形態を示すものである。なお、前記実施形態と同様の構成部分については同一の符号を付して示す。
【0101】
本実施形態の車両用空気調和装置は、前記第1実施形態と同様の構成において、コントローラ40が、図14のフローチャートに示す加熱量制御処理を行っている。
【0102】
(ステップS61)
ステップS61においてCPUは、圧縮機21の吸入側の推定圧力Psが所定圧力P1以上か否かを判定する。推定圧力Psが所定圧力P1以上と判定した場合にはステップS63に処理を移し、推定圧力Psが所定圧力P1より低いと判定した場合にはステップS62に処理を移す。
ここで、所定圧力P1は、前記実施形態と同様に、圧縮機21の破損を防止するため、例えば、標準気圧である1013.25hPaに設定する。
【0103】
(ステップS62)
ステップS61において推定圧力Psが所定圧力P1より低いと判定した場合に、ステップS62においてCPUは、推定圧力Psが所定圧力P2(P2<P1)より低くならない範囲内で圧縮機21の回転数Ncを制御し、ステップS63に処理を移す。
【0104】
(ステップS63)
ステップS61において推定圧力Psが所定圧力P1以上の場合、または、ステップS62において圧縮機21の回転数Ncを制御した場合に、ステップS63においてCPUは、前記第1実施形態の加熱量制御処理と同様に、水加熱ヒータ制御処理を行い、加熱量制御処理を終了する。
【0105】
このように、本実施形態の車両用空気調和装置によれば、圧縮機21の吸入側の推定圧力Psが少なくとも所定圧力P1以上となるように圧縮機21の運転を制御するようにしている。これにより、前記第1実施形態と同様に、圧縮機21の吸入側の推定圧力Psが所定圧力P1より低下することを防止することによって、圧縮機21の故障の発生を防止することが可能となる。
【0106】
図15は、本発明の第3実施形態を示すものである。なお、前記実施形態と同様の構成部分については同一の符号を付して示す。
【0107】
本実施形態の車両用空気調和装置は、前記第1実施形態と同様の構成において、コントローラ40が、図15のフローチャートに示す加熱量制御処理を行っている。
【0108】
(ステップS71)
ステップS71においてCPUは、車室外の温度Tamに基づいて圧縮機21の吸入側の推定圧力Psが所定圧力P2となるように圧縮機21の回転数LIM_Ncを算出し、ステップS72に処理を移す。
【0109】
(ステップS72)
ステップS72においてCPUは、圧縮機21の回転数LIM_Ncが所定回転数N2よりも高回転か否かを判定する。回転数LIM_Ncが所定回転数N2よりも高回転の場合にはステップS73に処理を移し、回転数LIM_Ncが所定回転数N2以下の場合にはステップS74に処理を移す。
【0110】
(ステップS73)
ステップS72において回転数LIM_Ncが所定回転数N2よりも高回転の場合に、ステップS73においてCPUは、回転数LIM_Ncとなるように圧縮機21を制御し、ステップS75に処理を移す。
【0111】
(ステップS74)
ステップS72において回転数LIM_Ncが所定回転数N2以下の場合に、ステップS74においてCPUは、圧縮機21の運転を停止し、ステップS75に処理を移す。
【0112】
(ステップS75)
ステップS73において圧縮機21の回転数を制御した場合、または、ステップS74において圧縮機21の運転を停止した場合に、ステップS75においてCPUは、前記第1実施形態の加熱量制御処理と同様に、水加熱ヒータ制御処理を行い、加熱量制御処理を終了する。
【0113】
このように、本実施形態の車両用空気調和装置によれば、圧縮機21の吸入側の推定圧力Psが所定圧力P2となるように圧縮機21の回転数LMN_Ncを算出し、算出された回転数LMN_Ncとなるように圧縮機21の運転を制御するようにしている。これにより、圧縮機21の吸入側の圧力が低下することによる圧縮機21の故障の発生を防止することが可能となる。
【0114】
また、算出された回転数LIM_Ncが所定回転数N2以下の場合に、圧縮機21の運転を停止するようにしている。これにより、圧縮機21の回転数Ncが低下することによる低効率な運転を防止することが可能となる。
【0115】
図16は、本発明の第4実施形態を示すものである。なお、前記実施形態と同様の構成部分については同一の符号を付して示す。
【0116】
本実施形態の車両用空気調和装置は、第1実施形態と同様の構成において、コントローラ40が、図16のフローチャートに示す加熱量制御処理を行っている。
【0117】
(ステップS81)
ステップS81においてCPUは、車室外の温度Tamに基づいて圧縮機21の吸入側の推定圧力Psが所定圧力P3となるように圧縮機21の回転数LIM_Ncを算出し、ステップS82に処理を移す。
【0118】
(ステップS82)
ステップS82においてCPUは、回転数LIM_Ncとなるように圧縮機21を制御し、ステップS83に処理を移す。
【0119】
(ステップS83)
ステップS83においてCPUは、前記第1実施形態の加熱量制御処理と同様に、水加熱ヒータ制御処理を行い、加熱量制御処理を終了する。
【0120】
このように、本実施形態の車両用空気調和装置によれば、圧縮機21の吸入側の推定圧力Psが所定圧力P2となるように圧縮機21の回転数LMN_Ncを算出し、算出された回転数LMN_Ncとなるように圧縮機21の運転を制御するようにしている。これにより、第1実施形態と同様に、圧縮機21の吸入側の圧力が低下することによる圧縮機21の故障の発生を防止することが可能となる。
【0121】
図17は、本発明の第5実施形態を示すものである。なお、前記実施形態と同様の構成部分については同一の符号を付して示す。
【0122】
本実施形態の車両用空気調和装置は、第1実施形態と同様の構成において、コントローラ40が、図17のフローチャートに示す水加熱ヒータ制御処理を行っている。
【0123】
(ステップS91)
ステップS91においてCPUは、水加熱ヒータ32が水回路30の水に加えるべき熱量である目標発生熱量TG_Qhtrを算出し、ステップS92に処理を移す。
目標発生熱量TG_Qhtrは、目標水温度TG_TW、推定水温度TWhp、水の比熱Cpw、水の密度ρw、水加熱ヒータ32を流通する水の流量Gwに基づいて算出される比例積分制御(PI制御)の出力値である(TG_Qhtr=(P_GAIN×(TG_TW−TWhp)+I_GAIN×(TG_TW−TWhp)+I_Qhtrz)×Cpw×ρw×Gw、P_GAIN:比例ゲインとしての定数、I_GAIN:積分ゲインとしての定数、I_Qhtrz:I_Qhtrの前回値、I_Qhtr=I_GAIN×(TG_TW−TWhp)+I_Qhtrz)。
【0124】
(ステップS92)
ステップS92においてCPUは、水加熱ヒータ32において目標負荷熱量TG_Qhtrに相当する電力である目標電力TG_Whtrを算出し、ステップS93に処理を移す。
目標電力TG_Whtrは、ステップS91において算出された目標発生熱量TG_Qhtrと、水加熱ヒータ32の発熱効率EFF_htrに基づいて算出される(TG_Whtr=TG_Qhtr×(1/EFF_htr))。
【0125】
(ステップS93)
ステップS93においてCPUは、ステップS92において算出された目標電力TG_Whtrの電力で水加熱ヒータ32を運転し、水加熱ヒータ制御処理を終了する。
【0126】
このように、本実施形態の車両用空気調和装置によれば、前記第1実施形態と同様に、水加熱ヒータ32の目標発生熱量TG_Qhtrを算出することが可能となる。
【0127】
図18は、本発明の第6実施形態を示すものである。なお、前記実施形態と同様の構成部分については同一の符号を付して示す。
【0128】
本実施形態の車両用空気調和装置は、第1実施形態と同様の構成において、コントローラ40が、図18のフローチャートに示す水加熱ヒータ制御処理を行っている。
【0129】
(ステップS101)
ステップS101においてCPUは、目標水温度TG_TWから推定水温度TWhpを減じた数値(TG_TW−TWhp)が所定値T2よりも小さいか否かを判定する。数値(TG_TW−TWhp)が所定値T2よりも小さい場合にはステップS102に処理を移し、数値(TG_TW−TWhp)が所定値T2以上の場合にはステップS103に処理を移す。
(ステップS102)
ステップS101において数値(TG_TW−TWhp)が所定値T2よりも小さい場合に、ステップS102においてCPUは、水加熱ヒータ32が水回路30の水に加えるべき熱量である目標発生熱量TG_Qhtrを算出し、ステップS103に処理を移す。
目標負荷熱量TG_Qhtrは、目標水温度TG_TW、推定水温度TWhp、水の比熱Cpw、水の密度ρw、水加熱ヒータ32を流通する水の流量Gwに基づいて算出される比例積分制御(PI制御)の出力値である(TG_Qhtr=(P_GAIN×(TG_TW−TWhp)+I_GAIN×(TG_TW−TWhp)+I_Qhtrz)×Cpw×ρw×Gw、P_GAIN:比例ゲインとしての定数、I_GAIN:積分ゲインとしての定数、I_Qhtrz:I_Qhtrの前回値、I_Qhtr=I_GAIN×(TG_TW−TWhp)+I_Qhtrz)。
【0130】
(ステップS103)
ステップS101において数値(TG_TW−TWhp)が所定値T2以上の場合に、ステップS103においてCPUは、目標発生熱量TG_Qhtrを最大加熱量Q_maxに設定する。
【0131】
(ステップS104)
ステップS102おいて目標発生熱量TG_Qhtrが算出された場合、または、ステップS103において目標発生熱量TG_Qhtrが決定された場合に、ステップS94においてCPUは、水加熱ヒータ32において目標負荷熱量TG_Qhtrに相当する電力である目標電力TG_Whtrを算出し、ステップS105に処理を移す。
目標電力TG_Whtrは、ステップS81において算出された目標負荷熱量TG_Qhtrと、水加熱ヒータ32の発熱効率EFF_htrに基づいて算出される(TG_Whtr=TG_Qhtr×(1/EFF_htr))。
【0132】
(ステップS105)
ステップS105においてCPUは、ステップS104において算出された目標電力TG_Whtrの電力で水加熱ヒータ32を運転し、水加熱ヒータ制御処理を終了する。
【0133】
このように、本実施形態の車両用空気調和装置によれば、目標水温度TG_TWから推定水温度TWhpを減じた数値(TG_TW−TWhp)が所定値T2以上の場合に、目標発生熱量TG_Qhtrを最大加熱量Q_maxに設定して、水加熱ヒータ32を運転するようにしている。これにより、暖房運転または除湿暖房運転を開始した直後等に、水加熱ヒータ32を最大出力で運転することができるので、車室内を速やかに快適な温度まで加熱することが可能となる。
【0134】
尚、前記実施形態では、冷媒回路20の放出する熱を、水冷媒熱交換器22を介して水回路30を流通する水に吸熱させるようにしたものを示したが、冷媒と熱交換する熱媒体としては水に限られず、エチレングリコール等が含まれる不凍液等、熱伝達が可能な流体が熱媒体として使用可能である。
【0135】
また、前記実施形態では、圧縮機21を電動モータ21aによって駆動するようにしたものを示したが、これに限られるものではなく、例えば、エンジンの動力によって駆動する圧縮機においても適用可能である。
【0136】
また、前記車両用空気調和装置は、電気自動車やハイブリッド車に限られず、不足する暖房または除湿暖房時の加熱量を電力によって補う車両用空気調和装置であれば適用可能である。
【0137】
また、冷媒回路20において、冷媒流通路20c,20dを切換えるために三方弁25を用いたものを示したが、三方弁25の代わりに2台の電磁弁の開閉によって冷媒流通路20c,20dを切換えるようにしてもよい。
【0138】
また、前記実施形態では、水冷媒熱交換器22において加熱された後の水回路30の水の温度として、水冷媒熱交換器22において放熱した後の冷媒の温度Tcoと、水回路30を流通する水の流量Gwを考慮した温度効率と、に基づいて算出される推定の水温度である推定水温度TWhpを用いたが、水冷媒熱交換器22において加熱された後の水回路30の水の温度を実際に検出し、その検出結果を用いるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0139】
10…空調ユニット、14…吸熱器、15…放熱器、20…冷媒回路、20a〜20j…冷媒流通路、21…圧縮機、22…水冷媒熱交換器、23…室外熱交換器、25…三方弁、26a〜26d…第1〜第4電磁弁、27a〜27b…第1〜第2逆止弁、28a〜28b…第1〜第2膨張弁、40…コントローラ、41…外気温度センサ、42…内気温度センサ、43…吸気温度センサ、44…冷却空気温度センサ、45…加熱空気温度センサ、46…内気湿度センサ、47…冷媒温度センサ、48…日射センサ、49…速度センサ、50…操作部、51…圧力センサ、52…外気湿度センサ。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮して吐出する圧縮機と、
冷媒を放熱させて熱媒体を加熱する熱媒体加熱用放熱器と、
冷媒を吸熱させて車室内側に吹出す空気を冷却する空気冷却用吸熱器と、
車室外側に設けられ、車室外の空気と熱交換することによって冷媒を放熱または吸熱させる室外熱交換器と、
熱媒体加熱用放熱器において加熱された熱媒体が流通する熱媒体回路と、
熱媒体回路を流通する熱媒体を放熱させて車室内側に吹出す空気を加熱する空気加熱用放熱器と、
熱媒体回路を流通する熱媒体を電力によって加熱可能な熱媒体加熱ヒータと、を備え、
圧縮機が吐出した冷媒を熱媒体加熱用放熱器において放熱させ、熱媒体加熱用放熱器において放熱した冷媒を室外熱交換器において吸熱させることにより暖房運転を行い、
圧縮機から吐出した冷媒を熱媒体加熱用放熱器において放熱させ、熱媒体加熱用放熱器において放熱した冷媒を空気冷却用吸熱器及び室外熱交換器において吸熱させることにより除湿暖房運転を行い、
熱媒体加熱ヒータによって熱媒体回路を流通する熱媒体を加熱可能な車両用空気調和装置において、
熱媒体加熱用放熱器において加熱された熱媒体回路を流通する熱媒体の温度を推定する熱媒体温度推定手段と、
熱媒体温度推定手段の推定結果に基づいて、暖房運転時または除湿暖房運転時に不足する熱量を算出する不足熱量算出手段と、
不足熱量算出手段によって算出された不足熱量に基づいて熱媒体加熱ヒータを制御する熱媒体加熱ヒータ制御手段と、を備えた
ことを特徴とする車両用空気調和装置。
【請求項2】
車室外の温度を検出する室外温度センサと、
圧縮機の冷媒吐出側の圧力を検出する高圧側圧力センサと、
室外温度センサの検出温度、高圧側圧力センサ及び圧縮機の回転数に基づいて圧縮機の冷媒吸入側の圧力の推定値を算出する吸入圧力推定手段と、
吸入圧力推定手段によって算出された推定圧力が少なくとも所定圧力以上となるように圧縮機の運転を制御する圧縮機運転制御手段を備えた
ことを特徴とすする請求項1記載の車両用空気調和装置。
【請求項3】
圧縮機の回転数が所定値以下となる場合に圧縮機の運転を停止する圧縮機停止手段を備えた
ことを特徴とする請求項2記載の車両用空気調和装置。
【請求項4】
車室外の温度を検出する室外温度センサと、
圧縮機の冷媒吐出側の圧力を検出する高圧側圧力センサと、
室外温度センサの検出温度、高圧側圧力センサ及び圧縮機の回転数に基づいて圧縮機の冷媒吸入側の圧力の推定値を算出する吸入圧力推定手段と、
吸入圧力推定手段によって算出された推定圧力が所定圧力となる圧縮機の回転数を算出する回転数算出手段と、
回転数算出手段によって算出された回転数となるように圧縮機の運転を制御する圧縮機運転制御手段と、を備えた
ことを特徴とする請求項1記載の車両用空気調和装置。
【請求項5】
回転数算出手段によって算出された回転数が所定の回転数以下の場合に圧縮機の運転を停止する圧縮機停止手段を備えた
ことを特徴とする請求項4記載の車両用空気調和装置。
【請求項6】
熱媒体回路を流通する熱媒体の目標温度を算出する目標熱媒体温度算出手段と、
熱媒体加熱ヒータの運転が停止している状態において、熱媒体回路を流通する熱媒体の温度が、目標熱媒体温度算出手段によって算出された目標温度から所定温度減じた温度以下となったときに熱媒体加熱ヒータの運転を開始し、熱媒体加熱ヒータが運転している状態において、熱媒体回路を流通する熱媒体の温度が、目標熱媒体温度算出手段によって算出された目標温度から所定温度減じた温度よりも高い温度となったときに熱媒体加熱ヒータの運転を停止する熱媒体加熱ヒータ制御手段と、を備えた
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の車両用空気調和装置。
【請求項7】
熱媒体加熱ヒータ制御手段は、熱媒体回路を流通する熱媒体の温度と、目標熱媒体温度算出手段によって算出された目標熱媒体温度と、の温度差が所定の温度差よりも大きい場合に、熱媒体加熱ヒータを最大加熱量で運転する
ことを特徴とする請求項6記載の車両用空気調和装置。
【請求項8】
車室内の温度及び湿度に基づいて必要な除湿量を算出する必要除湿量算出手段と、
除湿暖房運転時における可能な除湿量を算出する除湿能力算出手段と、
除湿暖房運転時に、除湿能力算出手段により算出された除湿能力が必要除湿量算出手段により算出された必要除湿量よりも小さい場合に、圧縮機から吐出した冷媒を熱媒体加熱用放熱器及び室外熱交換器において放熱させ、熱媒体加熱用放熱器及び室外熱交換器において放熱した冷媒を空気冷却用吸熱器において吸熱させる除湿冷房運転に切換える運転切換え手段と、
運転切換え手段によって除湿暖房運転から除湿冷房運転に切換えることによって不足する空気加熱量放熱器からの放熱量を熱媒体加熱ヒータによって補う加熱量補償手段と、を備えた
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載の車両用空気調和装置。
【請求項9】
圧縮機から吐出した冷媒の一部を熱媒体加熱用放熱器において放熱させ、熱媒体熱交換器において放熱した冷媒を室外熱交換器において吸熱させるとともに、圧縮機から吐出したその他の冷媒を室外熱交換器において放熱させる除霜運転時に、熱媒体加熱ヒータを運転することによって熱媒体回路を流通する熱媒体を加熱して暖房を行う除霜暖房手段を備えた
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項記載の車両用空気調和装置。
【請求項10】
車室外の空気の露点温度を算出する室外露点温度算出手段と、
室外熱交換器における冷媒の蒸発温度を検出する蒸発温度センサと、
室外露点温度算出手段によって算出された露点温度よりも蒸発温度センサの検出温度が低い場合に除霜暖房運転を行う除霜暖房運転制御手段と、を備えた
ことを特徴とする請求項9記載の車両用空気調和装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−176658(P2012−176658A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40131(P2011−40131)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000001845)サンデン株式会社 (1,791)
【Fターム(参考)】