説明

車両用空気調和装置

【目的】 リアクーラ10から吹き出される冷風の温度を自動的に変更する。
【構成】 後席室温設定値TSRと後席室温検出値TiRとの偏差εに応じて吹出温度設定値TS を変更し、変更された吹出温度設定値Tmsと吹出温度センサ8の検出値Tm が一致するように電磁弁6を開閉制御する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は前席用フロントクーラと後席用リアクーラとを備えた車両用空気調和装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来装置の1例が図5に示されている。10は後席用リアクーラで、車両30の後部に設置され、ケーシング1、ブロア2、エバポレータ3、膨張弁4、電磁弁6等からなる。20は前席用フロントクーラで、車両30の前部に設置され、ケーシング21、ブロア22、エバポレータ23、膨張弁24、ヒータ25、エアミックスダンパ26等からなる。
【0003】図示しない走行用エンジンによってコンプレッサ31が駆動されると、このコンプレッサ31から吐出されたガス冷媒はコンデンサ32に入り、ここで外気に放熱することによって凝縮液化する。この液冷媒はレシーバ33を経て2つに分岐し、その一方はリアクーラ10の電磁弁6、膨張弁4を経てエバポレータ3に入り、ここでブロア2によって吸入された車室34内後席側の空気を冷却することによって蒸発気化する。分岐した他方の液冷媒はフロントクーラ20の膨張弁24を経てエバポレータ23に入り、ここでブロア22によって送られる外気又は車室34内前席側の空気を冷却することによって蒸発気化する。このガス冷媒はリアクーラ10のエバポレータ3で蒸発したガス冷媒と合流してコンプレッサ31に吸入される。
【0004】リアクーラ1のエバポレータ3によって冷却された空気は後席に向かって吹き出され、フロントクーラ20のエバポレータ23によって冷却された空気は前席に向かって吹き出される。
【0005】リアクーラ10から吹き出される空気の温度Tm は吹出温度センサ8によって検知されてコントローラ9に入力され、ここで吹出温度設定手段35によって設定された設定値Ts と比較される。コントローラ9は、図6に示すように、吹出温度Tm が上限値、即ち、Ts +Bに到達したとき電磁弁6にこれを開とする旨の指令を出力し、吹出温度Tm が下限値、即ち、Ts −Bに到達したとき電磁弁6にこれを閉とする旨の指令を出力する。なお、図5において、36は車室34前部の室温を検知するセンサである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記従来の装置においては、設定値Ts が後席側の室温の如何に拘らず一定であるため、■外気温の変化等により冷房負荷が変化した場合には後席側の室温が設定値Ts より上昇又は低下してしまう。■さもなければ、吹出温度設定手段35を手動で操作して設定値Ts を頻繁に変更しなければならないので操作が煩雑であるのみならず後席側の室温を精度良く設定値Ts に維持することができないという問題があった。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は上記課題を解決するために発明されたものであって、その要旨とするところは、前席用フロントクーラと後席用リアクーラとを備えた車両用空気調和装置において、少なくとも後席側の室温を独立して設定することができる後席室温設定手段と、後席側の室温を検出する後席室温センサと、上記リアクーラの吹出温度を設定する吹出温度設定手段と、上記リアクーラの吹出温度を検出する吹出温度センサと、上記リアクーラのエバポレータへの冷媒供給を制御する電磁弁と、上記後席室温設定手段で設定された設定値と上記後席室温センサの検出値との偏差を算出する演算手段と、この偏差に応じて上記吹出温度設定手段の設定値を変更する吹出温度設値定変更手段と、変更された吹出温度設定値と吹出温度センサの検出値とが一致するよう上記電磁弁を開閉制御する制御手段を設けたことを特徴とする車両用空気調和装置にある。
【0008】
【作用】本発明においては、上記構成を具えているため、後席室温設定手段で設定された設定値と後席室温センサの検出値との偏差に応じて吹出温度設定手段の設定値を変更し、変更された吹出温度設定値と吹出温度センサの検出値とが一致するよう電磁弁を開閉制御する。
【0009】
【実施例】本発明の1実施例が図1ないし図4に示されている。図2に示すように、後席側の室温の設定値を補正する補正値設定手段5と後席側の室温を検出する後席室温センサ7が設置され、これらの出力はコントローラ9に入力されるようになっている。
【0010】図1にはコントローラ9の制御ブロック図が示されている。吹出温度設定手段35に設定された設定値Ts 及び補正値設定手段5に設定された補正値TSRC は加算器11に入力され、ここでこれらを加算することによって後席室温設定値TSR(=Ts +TSRC )が算出される。この後席室温設定値TSRは演算手段12に入力され、ここで後席室温センサ7によって検出された後席側の室温TiRと比較されてこれらの間の偏差ε(=TSR−TiR)が算出される。この偏差εは係数器13で比例定数Kp を乗ぜられ、その出力Tmpは減算器15で定数器14から入力される定数値TC と減算されることによって補正値Tmc(=Tmp−TC )となる。この補正値Tmcは加算器16に入力され、ここで吹出温度設定値TS と加算されることによって吹出温度の一次設定値T'ms(=TS +Tmc)が得られる。
【0011】この一次設定値T'msはリミッタ要素17に入力され、ここでこの一次設定値T'msは所定値以下のときその出力TmsがAに制限される。この変更された吹出温度設定値Tmsは減算器18に入力され、ここで吹出温度センサ8の検出値Tm と減算されることにより偏差ΔTms(=Tms−Tm )が得られる。この偏差ΔTmsはデファレンシャル要素19に入力され、ここで偏差ΔTmsが所定値B以上のときOFF 、所定値−B以下のときON信号を出力し、このON信号は電磁弁6に入力されて電磁弁6を開とする。
【0012】図3には制御フローチャートが示されている。制御がスタートすると、ステップ1で吹出温度設定値Ts 、補正値TSRC 、後席室温TiR及び吹出温度Tm が読み込まれる。次いで、ステップ2で後席室温設定値TSRが算出され、ステップ3で変更された吹出温度設定値Tmsが算出される。次いで、ステップ4で吹出温度Tm が変更された吹出温度設定値Tmsより高いか否かが判定され、高いときはステップ5で電磁弁6が開とされ、低いときはステップ6で電磁弁6が閉とされる。
【0013】図4には後席室温TiRと吹出温度設定値Tmsとの関係が示され、変更された吹出温度設定値Tmsは後席室温TiRが低下して所定値Cに到達する迄は一定値Aで不変であるが、所定値Cを過ぎて低下すると次第に上昇し、これに伴って、電磁弁6が開となる温度Tms+B及び電磁弁6が閉となる温度Tms−Bも上昇する。なお、一定値Aはエバポレータ3の凍結を防止するために設けてある。
【0014】上記実施例においては、吹出温度設定手段35で設定された設定値TS と補正値設定手段5で設定された補正値TSRC を加算することにより後席室温設定値TSRを得ているが、前席で後席室温設定値を独立して設定し又は後席で後席室温設定値を独立して設定することもできる。
【0015】
【発明の効果】本発明においては、後席室温設定手段で設定された設定値と後席室温センサの検出値との偏差に応じて吹出温度の設定値を変更し、変更された吹出温度設定値と吹出温度センサの検出値とが一致するように電磁弁を開閉制御するため、後席の室温の変化に応じて自動的にリアクーラの吹出温度を制御できる。かくして、後席の室温をその設定値に維持できるので、後席の乗員の快適性を向上しうるとともに後席の室温が自動的に調節されるので、空気調和装置の操作が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の1実施例を示す制御ブロック図である。
【図2】上記実施例の系統図である。
【図3】上記実施例の制御フローチャートである。
【図4】上記実施例における後席室温と吹出温度設定値との関係を示す線図である。
【図5】従来の車両用空気調和装置の系統図である。
【図6】上記従来装置の吹出温度と電磁弁の開閉との関係を示す線図である。
【符号の説明】
20 前席用フロントクーラ
10 後席用リアクーラ
3 エバポレータ
6 電磁弁
5、11 後席室温設定手段
7 後席室温センサ
35 吹出温度設定手段
8、吹出温度センサ
12 偏差演算手段
16 吹出温度設定値変更手段
19 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】 前席用フロントクーラと後席用リアクーラとを備えた車両用空気調和装置において、少なくとも後席側の室温を独立して設定することができる後席室温設定手段と、後席側の室温を検出する後席室温センサと、上記リアクーラの吹出温度を設定する吹出温度設定手段と、上記リアクーラの吹出温度を検出する吹出温度センサと、上記リアクーラのエバポレータへの冷媒供給を制御する電磁弁と、上記後席室温設定手段で設定された設定値と上記後席室温センサの検出値との偏差を算出する演算手段と、この偏差に応じて上記吹出温度設定手段の設定値を変更する吹出温度設定値変更手段と、変更された吹出温度設定値と吹出温度センサの検出値とが一致するよう上記電磁弁を開閉制御する制御手段を設けたことを特徴とする車両用空気調和装置。

【図4】
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【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図3】
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【公開番号】特開平5−338435
【公開日】平成5年(1993)12月21日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−176007
【出願日】平成4年(1992)6月11日
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)