説明

車両用空調制御装置

【課題】 車両側の主空調装置に設けられた複数の送風機の発生音レベルをよりきめ細かく考慮することにより、シート空調側での騒音マスク効果をより高めつつシート空調の送風出力レベルを適正化できる車両用空調制御装置を提供する。
【解決手段】 リアシートから遠いフロント送風機302の送風出力をモーフィング用入力変数Uとして、その現在値Uを挟むモデル値U、Uに対応する1対のモデル制御パターンp,pをROMから読み出し、それらモデル値U、Uの差分距離の、現在値Uによる分割比を反映した重みにて、二次元線図パターンをなすそれら1対のモデル制御パターンp,pの形状を図形的にモーフィング処理することにより合成制御パターンpを作成する。そして、リアシートに近いリア送風機402の送風出力Qを特定し、合成制御パターン上にて該Qの現在に対応するシート空調装置の送風機動作出力値(デューティ比)ηを決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用空調制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開2006−27518号公報
【0003】
自動車の車室内空間は、一般住居等に比較すると空間容積が小さく、また、窓を閉めきると密閉空間となり、例えば、ガラス越しに漏入する熱線により駐車中の車内温度は夏季には異常に上昇する。しかし、一般の自動車用空調装置は集中型であり、車室内の空間全体の空気温度を下げるべく設計されているので、どうしても温度調節に時間がかかる問題がある。そこで、特許文献1には、シート内に局所空調装置を組み込み、ヘッドレストや手すり等に設けた吹き出し口から冷風を吹き出すことで、車室内を分散空調する方式が提案されている。
【0004】
ところで、シート空調装置は、車両の主空調装置と連動させることが可能である。これにより、乗員の体感温度を短時間に適正値に調整でき、快適性の向上を図ることができる。特に、エンジン始動時など、車室内の寒暑に係る乗員の不快感が非常に大きい場合は、吹出口が乗員に近く即効性の大きいシート空調装置の送風量を増加させることが有効である。しかしながら、送風機が主空調装置よりも乗員の近傍に配設されるシート空調装置の場合、送風機の騒音が問題になりやすい欠点がある。特許文献1には、車両に搭載される空調補機など、シート空調装置以外の周囲装置の発生音レベルをそれら装置の駆動出力レベルから推定し、その発生音レベルを下回るようにシート空調装置の送風機を動作制御する発明が開示されている。上記のようにシート空調装置を動作させれば、シートに着座する乗員の至近距離に送風機が設置されているにもかかわらず、周囲装置から不可避的に発生する駆動音によりシート空調装置側の騒音がマスクされ、不快感を和らげることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術には次のような欠点がある。
(1)シート空調側の騒音をマスクするための周囲音源として、車両側の主空調装置に設けられた送風機の騒音レベルが考慮されているが、車室内の異なる位置に2以上の送風機が設けられる場合(例えば、フロント側とリア側)の、個々の送風機の発生音レベルや方向が考慮されておらず、騒音マスキングを前提としたシート空調の駆動状態が最適化されているとはいいがたい。
(2)主空調装置側の送風機が複数箇所に設けられる場合、シート空調装置での騒音マスキングにどの(主空調装置側)送風機が有効であるかは、着目しているシートまでの距離に応じて異なるはずである。しかし、車両内の複数のシートにシート空調装置が搭載される場合に、騒音マスキングにメインに採用する(主空調装置側)送風機の種別を、シート毎に使い分ける工夫がなされていない。
【0006】
本発明の課題は、車両側の主空調装置に設けられた複数の送風機の発生音レベルをよりきめ細かく考慮することにより、シート空調側での騒音マスク効果をより高めつつシート空調の送風出力レベルを適正化でき、ひいては、シート空調装置における静寂性と空調効果との両立効果を大幅に向上できる車両用空調制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び作用・効果】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の車両用空調制御装置は、
車室内空間を包括的に空調するために各々シート以外の車室内構造物に空調風の吹出口を有するとともに吹出風量を独立に制御可能な複数の主送風機を備えた主空調装置と、シートに着座する乗員に対する個別空調を行なうために該シートに空調風の吹出口を有するとともにシート毎に吹出風量を制御可能なシート送風機を備えたシート空調装置とを備え、主空調装置の各主送風機のうち、シート空調装置が設けられるシートに吹出口が最も近く配置されているものを第一種主送風機とし、残余の主送風機を第二種主送風機として、
第一種主送風機の吹出風量値である第一種主吹出風量値を取得する第一種主吹出風量値取得手段と、
第二種主送風機の吹出風量値である第二種主吹出風量値を取得する第二種主吹出風量値取得手段と、
第一種主吹出風量値を、シート送風機の吹出風量出力値であるシート風量出力値を決定するためのシート風量決定用入力変数とし、第二種主吹出風量値をモーフィング用入力変数として、モーフィング用入力変数の離散的な種々のモデル値毎に用意され、それぞれモーフィング用入力変数を各モデル値に固定したときの、シート風量決定用入力変数とシート風量出力値との関係を示す二次元線図パターンからなるモデル制御パターンを複数記憶するモデル制御パターン記憶手段と、
第二種主吹出風量値すなわちモーフィング用入力変数の現在値を特定するとともに、該モーフィング用入力変数の現在値に隣接する複数個のモデル値を、被モーフィングモデル値としてモデル制御パターン記憶手段内にて検索する被モーフィングモデル値検索手段と、
検索された被モーフィングモデル値にそれぞれ対応する複数のモデル制御パターンをモデル制御パターン記憶手段から読み出し、複数の被モーフィングモデル値と現在値との偏差に応じて、二次元線図パターンをなすそれらモデル制御パターンの形状を図形的にモーフィング処理することにより合成制御パターンを作成する制御パターンモーフィング手段と、
シート風量決定用入力変数の現在値を特定し、合成制御パターン上にて該シート風量決定用入力変数の現在値に対応するシート風量出力値を決定するシート風量出力値決定手段と、
決定されたシート風量出力値にてシート送風機を動作させるシート送風機制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
上記本発明の車両用空調制御装置の構成では、車室内空間を包括的に空調するための主空調装置と、シート毎に個別に設けられた局所空調装置、すなわちシート空調装置とを備える。そして、主空調装置の各主送風機のうち、シート空調装置が設けられるシートに吹出口が最も近く配置されているものを第一種主送風機とし、残余の主送風機を第二種主送風機と称する。
【0009】
乗員が聞き取る主空調装置の吹出音は、乗員が着座しているシートに一番近い音源からのもの、つまり第一種主送風機からのものがレベル的にも高くなりやすく、この第一種主送風機の吹出音レベルに合わせてシート吹出風量を調整すれば、第一種主送風機の吹出音によるマスク効果によりシート空調装置側の吹出音を確かに目立たなくすることができる。
【0010】
他方、主空調装置は車室内の包括空調(ひいては温調)を目的とするものなので、適正空調状態が乗員毎に異なる場合は、各乗員が主空調装置による快適感の不足を個別に補うためにシート空調を利用することになる。例えば、助手席乗員が冷え性で強冷房が苦手である一方、運転者は暑がりで強冷房を好む場合、主空調装置の温度設定は乗員間の力関係で決定されるケースが多い。この場合、特に、強冷房が苦手の助手席乗員の要望を優先せざるを得ない状況では、主空調装置は高目の温度設定がなされる。この場合、運転者はシート空調の設定温度を下げることで、冷房不足を補うことができる。
【0011】
しかし、シート吹出風量が主空調装置の吹出風量に応じて制限される場合、主空調装置の吹出風量が低く設定されていると、上記のような状況下では運転席の乗員はシート空調の設定温度を下げてもシート吹出風量が期待するほどには上がらず、空調不足の状態をなかなか解消できない。
【0012】
一方、近年では、独立風量設定の可能な複数系統の送風機が主空調装置に採用されることも増えてきており、例えば、フロントシート(運転席+助手席)とリアシートとに送風機の独立した2系統の空調装置を設け、車室内の区分空調を行なう方式が普及しつつある。このように、主空調装置に複数系統の送風機が設けられる場合、シートに最も近い第一種主送風機だけでなく、それ以外の主空調装置の送風機である第二種主送風機もシート空調装置の吹出音マスキングに活用することができる。すなわち、第一種主送風機の吹出風量が低く設定されている場合でも、第二種主送風機側の吹出風量(第二種主吹出風量)の設定値が高くシート空調装置の吹出音を有効にマスキングできる場合には、シート空調装置の吹出風量をより高く設定することが可能となる。しかしながら、この場合は、シート風量出力を、第一種主吹出風量値と第二種主吹出風量値との双方を入力パラメータとして制御する必要があり、所期の効果を損ねることなく、その制御を如何に効率よく単純化して行なうかが重要な解決課題となる。
【0013】
本発明は、該課題の解決を目的とし、第二種主送風機の吹出風量値である第二種主吹出風量値と、第一種主送風機の吹出風量値である第一種主吹出風量値とを取得するとともに、第一種主吹出風量値を、シート送風機の吹出風量出力値であるシート風量出力値を決定するためのシート風量決定用入力変数とし、第二種主吹出風量値をモーフィング用入力変数とする。シート空調装置に最も近い主空調装置の送風機の吹出風量値、すなわち第一種主吹出風量値とシート風量出力値との関係は、モデル制御パターンとして直接記述される。他方、モーフィング用入力変数は、そのモデル制御パターンをマッピングするためのものである。以下、第一種主吹出風量値(シート風量決定用入力変数)とシート風量出力値とが張る空間を制御パターン空間と称する。
【0014】
そして、モーフィング用入力変数、すなわち第二種主吹出風量値の種々の値を示すモデル値を離散的に定め、それらモデル値毎に固有の(つまり、モデル値毎に、第一種主吹出風量値とシート風量出力値との間の好ましい制御特性を反映した)モデル制御パターンを用意し、モデル制御パターン記憶手段に記憶しておく。そして、第二種主吹出風量値(モーフィング用入力変数)の現在値に隣接する複数個のモデル値を被モーフィングモデル値として検索し、検索された各モデル値に固有に用意されたモデル制御パターンを、モーフィング対象となるモデル制御パターンとして決定する。個々のモデル制御パターンは、第二種主吹出風量値をモデル値に固定したとき、第一種主吹出風量値(シート風量決定用入力変数)の値に応じてシート風量出力値をどのように変化させるかを記述する制御関数であるが、これを第一種主吹出風量値(シート風量決定用入力変数)とシート風量出力値とが張る制御パターン平面上で眺めてみた場合、モデル値毎に固有の形状を有した図形として捉えることができる。
【0015】
本発明者は、制御パターン(制御関数)を図形に概念変換して捉え、従来は画像処理分野に特化された技術であるモーフィングを敢えて車両用空調制御装置の分野に導入することにより、現在値について本来的には用意されていない制御パターンを簡単に取得できることを見出し、本発明を完成させるに至ったものである。すなわち、複数の被モーフィングモデル値に対応して用意された二次元線図パターンからなるモデル制御パターンを、それぞれ制御パターン平面上での図形とみなすことにより、検索された被モーフィングモデル値と現在値との偏差に応じて、画像合成処理の場合と全く同様にしてモーフィングできる。従来は、モーフィングにより合成された画像を視覚的に出力することだけが目的であったが、本発明においては、モーフィングにより合成されるのが制御パターンであり、モーフィングの結果物である合成制御パターンを、第一種主吹出風量値(シート風量決定用入力変数)が与えられたときにシート風量出力値の値を決定するための制御関数として、車両用空調制御装置に二次使用する点に最大の特徴がある。
【0016】
そして、モーフィングにより得られた現在値に対応する合成制御パターンは、純画像合成処理的な手法により得られたものであるにも拘わらず、制御技術的にも全く矛盾しないばかりか、第二種主吹出風量値(モーフィング用入力変数)の種々のモデル値毎に、第一種主吹出風量値(シート風量決定用入力変数)とシート風量出力値との間の適正な制御特性を反映したものとして個々のモデル制御パターンが用意されている限り、合成制御パターンも現在値における所望の制御特性を的確に反映したものとして取得できる。この場合、開発工数の主体を占めるのは第二種主吹出風量値の種々のモデル値につき、第一種主吹出風量値とシート風量出力値との関係を示すモデル制御パターンを、例えば実験的な手法により取得する処理を機械的に繰り返すことだけである。その取得したモデル制御パターンは機器の制御主体のメモリに搭載するだけで直ちに実使用に供することができる。
【0017】
すなわち、本発明によれば、モーフィングによる簡単で開発工数の少ない画像合成的なアルゴリズムにより、車両側の主空調装置に設けられた複数の送風機の発生音レベルをきめ細かく考慮した形で、シート空調側での騒音マスク効果をより高めつつシート空調の送風出力レベルを適正化でき、ひいては、シート空調装置における相対静寂性と空調効果との両立効果を大幅に向上できる車両用空調制御装置を実現することができる。
【0018】
上記のごとく、複数の主送風機として、フロントシート側に送風するフロント送風機と、リアシート側に送風するリア送風機とを設けることができる。シート空調装置がリアシートに設けられる場合、これに最も近い主送風機はリア送風機であり、これを第一種主送風機として定めることができ、フロント送風機は第二種主送風機として定めることができる。すなわち、車室内の区分空調のため、フロントシート(運転席+助手席)とリアシートとで送風機が独立した主送風機を採用する場合、フロント送風機の送風出力が大きければ、リアシートに設けられたシート空調の送風音は、フロント送風機の送風音によるマスキング効果も少なからず期待できるので、リア送風機の送風出力が低く留められている場合であっても、体感騒音レベルを増長することなくリアシートのシート空調に係る送風出力設定の上限値を引き上げることができ、ひいては、該リアシートに着座する乗員の空調設定に対する満足度を高めることができる。
【0019】
同様に、シート空調装置がフロントシートに設けられる場合は、フロント送風機を第一種主送風機として、リア送風機を第二種主送風機としてそれぞれ定めることができる。これにより、フロント送風機の送風出力が低く留められている場合であっても、体感騒音レベルを増長することなくフロントシートのシート空調に係る送風出力設定の上限値を引き上げることができ、ひいては、該リアシートに着座する乗員の空調設定に対する満足度を高めることができる。
【0020】
なお、シート空調装置がリアシートとフロントシートとの双方に設けられる場合は、リアシート側のシート空調装置の制御モジュールはリア送風機を第一種主送風機、フロント送風機を第二種主送風機とする形で、また、フロントシート側のシート空調装置の制御モジュールはフロント送風機を第一種主送風機、リア送風機を第二種主送風機とする形で、それぞれ、前述のモーフィング処理により合成制御パターンを作成し、その合成制御パターンに基づいてリア送風機及びフロント送風機の送風出力制御を、各々独立して行なうように構成すればよい。
【0021】
モデル制御パターン記憶手段は、第一種主送風機の吹出風量値をシート風量決定用入力変数とし、第二種主送風機の吹出風量値をモーフィング用入力変数として、モーフィング用入力変数の離散的な種々のモデル値毎に用意され、それぞれモーフィング用入力変数を各モデル値に固定したときのシート風量決定用入力変数と空調装置のシート風量出力値との関係を示す二次元線図パターンからなるモデル制御パターンを複数記憶するものとして構成できる。被モーフィングモデル値検索手段は、モーフィング用入力変数の現在値を特定するとともに、該モーフィング用入力変数の現在値を挟んでこれに隣接する1対のモデル値を、第一及び第二の被モーフィングモデル値としてモデル制御パターン記憶手段内にて検索するものとして構成できる。そして、制御パターンモーフィング手段は、検索された第一及び第二の被モーフィングモデル値に対応する1対のモデル制御パターンをモデル制御パターン記憶手段から読み出し、それら第一及び第二の被モーフィングモデル値の差分距離の現在値による分割比を反映した重みにて、二次元線図パターンをなすそれら1対のモデル制御パターンの形状を図形的にモーフィング処理することにより合成制御パターンを作成するものとして構成できる。シート空調装置の吹出風量制御を、第二種主吹出風量値の影響を的確に反映させた形で、直接的には第一種主吹出風量値のみを制御入力変数とする単純な合成制御パターンに従い、簡単かつきめ細かく実施することが可能となる。
【0022】
モデル制御パターンをなす二次元線図パターンは、複数のモデル制御パターン間で一対一に対応付けられた、パターン起点からパターン終点に向けて配列する一定個数のハンドリング点により形状規定されるものとして用意できる。この場合、制御パターンモーフィング手段は、各被モーフィングモデル値に係る二次元線図パターンの各ハンドリング点の対応するもの同士をモーフィングすることにより合成ハンドリング点を生成し、それら合成ハンドリング点により合成制御パターンをなす二次元線図パターンを規定するよう構成できる。二次元線図パターンをハンドリング点の集合に還元することで、モーフィングの演算対象も限られた個数のハンドリング点とすることができ、モーフィング演算負荷を大幅に減ずることができる。そして、合成制御パターンも、モーフィングの結果として得られる合成ハンドリング点により簡単に得ることができる。
【0023】
ハンドリング点により規定される二次元線図パターンの種別は、例えばベジェ曲線やBスプライン曲線などの曲線パターンとすることもできるが、ハンドリング点を順次直線連結して得られる折線状パターンとすることが、演算の簡略化により寄与できる。また、制御パターンを表わす二次元線図パターンにおいて、シート風量決定用入力変数に対するシート風量出力値の変化勾配を、その屈曲点にて不連続に遷移させる制御を行ないたい場合、屈曲点を表わすハンドリング点が、モーフィング合成後においても、合成制御パターン中の対応する屈曲点を表わすハンドリング点として保存されるので、屈曲点位置の異なる複数の二次元線図パターンを幾何学的にブレンドしているにも拘わらず、屈曲点位置が不鮮明となることを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を添付の図面を用いて説明する。 図1Aは本発明の適用対象となる車両用シート空調装置の一例を示す全体概要図である。該シート空調装置100は、自動車のシート20に組み込まれている。シート空調装置100の組み込み対象は、図1Bに示すように、フロントシート20Fとリアシート20Rとの双方であるが、シート空調装置の構成自体は全く同じであるので、以下、リアシート20R側で代表させて説明する。図1Aに示すように、該シート20Rは、乗員の臀部を乗せる座部101と、背中を当てる背もたれ部102と、背もたれ部102の頂部に取り付けられたヘッドレスト2とを有する。そして、座部101及び背もたれ部102の各表皮103には噴出口104が形成されている。
【0025】
座部101及び背もたれ部102の各内部には空気ダクト105が形成されている。この空気ダクト105は車室内に一端が開口し、他端が上記噴出口104に開口している。そして、各空気ダクト105の途中にペルチェモジュール3が介装されている。ペルチェモジュール3は、一方の面が吸熱面、他方の面が放熱面となるように、厚さ方向に直流通電駆動される周知のペルチェ素子と、順方向通電時に冷却側、逆方向通電時に発熱側となる面に密着配置される金属製のヒートブロックと、同じく空調熱交換側となる面に密着配置される金属製のヒートシンクとを有し、ヒートシンクの裏面に熱交換を促進するためのフィンが一体化された周知の構成を有するものである(例えば特開2005−280710号公報参照)。
【0026】
空気ダクト105の途中におけるペルチェモジュール3の上流側には、該ペルチェモジュール3の放熱フィンには車室内の空気を圧送するシート送風機4が設けられている。シート送風機4は放熱フィンに周囲の空気を吹き付けることにより温度調整された空気を生成し、この温度調整された空気が空気ダクト105を介して吹出口104から吹き出される。このように、空気ダクト105、ペルチェモジュール3及びシート送風機4を有した空調装置10Aが背もたれ部102に、また、同様の構成の空調装置10Aが座部101に、それぞれ個別に組み込まれた構造となっている。
【0027】
次に、図3は、上記シート空調装置100を組み込んだ本発明の車両用空調制御装置に係る電気的構成の一例を示すブロック図である。該車両用空調制御装置1は、リアシート空調装置の制御主体をなすリアシート空調ECU100Rと、フロントシート空調装置の制御主体をなすフロントシート空調ECU100Fと、主空調装置の制御主体をなすリアエアコンECU400及びフロントエアコンECU300とが、各々通信インターフェース131R,131F,301,401を介してシリアル通信バス500により接続された構造を有する。
【0028】
主空調装置は、車室内空間を包括的に空調するために各々シート以外の車室内構造物に空調風の吹出口を有するとともに、吹出風量を独立に制御可能な複数の主送風機を備えるものである。具体的には、主送風機としてフロント送風機302を備え、車室内のインパネ部等に形成されたフロント吹出口303から空調風をフロントシート20Fに向けて吹き出すフロントエアコンと、主送風機としてリア送風機402を備え、例えばセンターコンソール後方に開口するリア吹出口303から空調風をリアシート20Rに向けて吹き出すリアエアコンとを有する。リアシート空調ECU100Rから見てリア送風機402は第一種主送風機を構成し、フロント送風機302は第二種主送風機を構成する。また、フロントシート空調ECU100Fから見てフロント送風機302は第一種主送風機を構成し、リア送風機402は第二種主送風機を構成する。
【0029】
エアコン自体の電気的構成及び動作は周知のものであり、エンジンを動力として駆動される冷凍サイクル上のエバポレータに取り込んだ空気を接触させて冷却するとともに、その冷却風の一部を分岐させてヒータ加熱して温風を作り、エアミックスダンパーを介して前記冷却風と混合することにより所定温度の空調風に調整して、フロント送風機302ないしリア送風機402により、各吹出口303,304から車室内に吹き出すようにする。リアエアコンECU400及びフロントエアコンECU300は、車室内温度とエアコン設定温度との差に応じて、エアミックスダンパー開度により吹出温度を、また、主送風機のモータの駆動デューティ比により吹出風量を制御する。
【0030】
次に、リアシート空調装置とフロントシート空調装置とはいずれも同一の電気的構成を有する(以下、リアシート空調ECU100Rにて代表させて説明を行なう。リアシート空調ECU(以下、単にECUともいう)100Rはマイクロプロセッサとして構成され、内気温センサ115がそれぞれアンプ125を介して、手元操作スイッチ(温調設定スイッチ)112と手元電源スイッチ113が温調入力インターフェース122を介して、それぞれECU100Rに接続されている。
【0031】
ECU100Rには、各々ペルチェモジュール3、シート送風機4及びそれらの駆動制御を司る駆動ユニット121の組からなる空調装置10A(背もたれ側)及び10B(座部側)が接続されている。駆動ユニット121は、ペルチェモジュール3を冷房使用時と暖房使用時とで互いに異なる極性にて通電駆動するものである。
【0032】
ECU100Rは、該手元電源スイッチ113がオフ状態のとき空調装置10A,10Bの動作を停止する。図1に示すように、手元操作スイッチ112はプッシュ機能付のロータリースイッチであり、1回押圧すると引っ込んで手元電源スイッチ113をオフ状態とする。一方、さらに押圧すると飛び出して電源スイッチ113をオン状態とし、設定温度変更のための回転操作が可能となる。このとき、手元操作スイッチ112は、中立位置NTLに関して第一方向に回転させると暖房モードでの温度設定となり、中立位置NTLから離れるほど設定温度は高くなるとともに、当該第一方向の限界位置まで回転させると最高暖房温度の設定状態となる。また、中立位置NTLに関して第二方向に回転させると冷房モードでの温度設定となり、中立位置NTLから離れるほど設定温度が低くなるとともに、当該第二方向の限界位置まで回転させると最低冷房温度の設定状態となる。電源スイッチ113のオン/オフ状態、及び温度設定状態(さらには、冷暖房モード)は温調入力インターフェース122を介してECU100Rに入力される。
【0033】
図3は、駆動ユニット121の回路構成例を示すものである。駆動電源は、ペルチェ素子への過電圧印加防止を考慮して絶縁型に構成されている。具体的には、車載バッテリー電圧+Bを入力電圧として受電する入力側DC電源150を有し、そのDC出力電圧が、昇圧用発振回路153により駆動される昇圧スイッチング用トランジスタ152(本実施形態ではパワーFETにて構成され、昇圧スイッチング周波数は10〜30kHz:例えば、15kHz)によりスイッチングされつつ、昇圧用のトランス151の1次側に入力される。該トランス151の2次側昇圧出力電圧は8〜15V(例えば12V)である。なお、昇圧用発振回路153は、トランス151の一次側インダクタンスの一部を流用した自励式発振回路として構成されている。
【0034】
トランス151の2次側昇圧出力電圧は、ダイオード154Dにより半波整流され、さらにコンデンサ154Cにより平滑化された後、PWMスイッチング用トランジスタ155に入力される。PWMスイッチング用トランジスタ155はパワーFETにて構成され、ECU100Rが決定するデューティ比(例えば50〜100%)にてPWMスイッチングされる。PWMスイッチング用トランジスタ155は、ゲート駆動用トランジスタ156を介してフォトカプラ165によりスイッチングされる。
【0035】
ペルチェ素子は導通断面積の大きい金属導体として構成されているので、PWMスイッチング電圧波形をペルチェ素子へ直接入力すると、波形エッジでの電流遮断時に渦電流が発生し、目的の極性と逆方向の電圧が供給されて冷却効率を低下させるジュール熱が多量に発生するので好ましくない。そこで、本実施形態では、コイル158とコンデンサ159とを有した駆動平滑化回路201により、上記PWMスイッチング電圧波形をディーティ比に応じた直流駆動電圧(出力電圧範囲は、例えば6〜12V:出力電流範囲は、例えば3〜6A)として平滑化し、極性切替スイッチ160を介してペルチェモジュール3に供給するようにしている。つまり、ペルチェ素子の出力(空調出力)は前段側ではデューティ比制御となっているものの、上記の平滑化により最終的には出力電流がレベル制御される形となっている。なお、PWMスイッチング周波数は例えば1〜5kHzであり、昇圧スイッチング周波数よりも小さく設定される。
【0036】
極性切替スイッチ160は、本実施形態ではリレースイッチとして構成され、リレー駆動トランジスタ162を介してフォトカプラ163により動作制御される(ここでは、リレー駆動トランジスタ162がOFFのとき、端子160Aが電源入力/端子160Bが接地となり(順方向極性)、同じくオンのときは端子160Aが接地/端子160Bが電源入力となるよう(逆方向極性)、スイッチ160が切り替わる)。
【0037】
また、シート送風機4へのモータ駆動出力は、トランス151の2次側にてペルチェ駆動用のPWMスイッチング用トランジスタ155の前段より、電圧安定化用のレギュレータIC164を介して取り出される。そして、レギュレータIC164の出力側には、送風制御用のPWMスイッチング用トランジスタ166に入力される。PWMスイッチング用トランジスタ166もフォトカプラにて構成され、ECU100Rが決定するデューティ比にてPWMスイッチングされ、該デューティ比に応じた回転数にてファンモータ4を駆動する。
【0038】
なお、本実施形態では車載バッテリー電圧+Bの変動を補償するために昇圧回路を組み込んでいるが、ペルチェ素子の動作が保障できる場合、例えば、ペルチェ素子への駆動出力電圧範囲が車載バッテリー電圧+Bの変動範囲よりも常時小さいことが保障できる場合には、この昇圧回路を省略することも可能である。この場合、ペルチェ素子への出力段に電圧モニタリング部を追加し、PWMスイッチングのデューティ比制御にこれをフィードバックして電圧を安定化するレギュレータ部を追加すればよい。また、ペルチェ素子への駆動出力電圧が車載バッテリー電圧+Bの変動範囲を若干上回る場合にあっても、該レギュレータ部を周知の昇圧型ステップアップ回路として構成すれば、昇圧回路は同様に省略できる。
【0039】
前述のごとく、電源スイッチ113のオン/オフ状態、及び温度設定状態(さらには、冷暖房モード)は温調入力インターフェース122を介してECU100Rに入力される。電源スイッチ113がオフ状態のとき、ECU100Rは、入力側DC電源150へのバッテリー受電系路上に設けられた電源スイッチ150sをオフにし、ペルチェモジュール3とシート送風機4とを双方ともに停止させる。一方、電源スイッチ113がオン状態のときは、通常モードでは電源スイッチ150sをオンにする。そして、手元操作スイッチ112が冷房側に回転していればリレー駆動トランジスタ162をオフとし、通電極性を順方向とする。また、暖房側に回転していればリレー駆動トランジスタ162をオンとし、通電極性を逆方向とする。
【0040】
リアシート空調ECU100Rは、リアエアコンECU400からリア送風機402の風量設定値を第一種主吹出風量値として取得し、また、フロント送風機402の風量設定値を第二種主吹出風量値として取得する。そして、取得した第一種主吹出風量値及び第二種主吹出風量値に応じて、風量制御用のPWMスイッチング用トランジスタ166を対応するデューティ比ηにてスイッチング駆動し、シート送風機4の出力調整を行なう。
【0041】
リアシート空調装置にてシート送風機4の送風出力は、第一種主送風機であるリア送風機402の吹出風量値(第一種主吹出風量値)が相対的に高くなるほど、該リア送風機402の吹出音による、シート送風機4の騒音に対するマスキング効果が高まるので、シート送風機4の送風出力はより大きく設定できる。また、リアシートから遠い側に位置する第二種主送風機であるフロント送風機302の吹出風量値(第二種主吹出風量値)が大きくなれば、フロント送風機302の吹出音の、シート送風機4の騒音に対するマスキング効果が高まるので、リア送風機402の吹出風量値(第一種主吹出風量値)が低くとも、シート送風機4の送風出力をより大きく設定できる。
【0042】
以下、さらに詳しく説明する。ECU100Rは、CPU、ROM及びRAMを有した周知のマイコンハードウェアを主体に構成される。ROMには、本発明特有の方式に従いシート空調装置100の動作制御を司るための制御プログラムと、モデル制御パターン群とが記憶されている。本実施形態では、モデル制御パターンは第一種主吹出風量値Qをシート風量決定用入力変数とし、通信取得されるリア送風機402の吹出風量値(第一種主吹出風量値)Qをモーフィング用入力変数として、第二種主吹出風量値U(モーフィング用入力変数)の離散的な種々のモデル値毎に用意されている。そして、各モデル制御パターンは、第二種主吹出風量値Uを対応するモデル値に固定したときの、第一種主吹出風量値Q(シート風量決定用入力変数)とリアシート空調装置のシート風量出力値(風量制御用のPWMスイッチング用トランジスタ166のスイッチングデューティ比)ηとの関係を示す、Q−η平面上に描画可能な二次元線図パターンからなる。すなわち、上記ROMは、モデル制御パターンを複数記憶するモデル制御パターン記憶手段として機能している。
【0043】
制御プログラムはRAMをワークエリアとしてCPUにより実行され、以下の各機能を実現する。
・被モーフィングモデル値検索手段:温調入力インターフェース122から第二種主吹出風量値U(モーフィング用入力変数)の現在値Uを取得してこれを特定するとともに、該第二種主吹出風量値の現在値Uを挟んでこれに隣接する1対のモデル値U,Uを、第一及び第二の被モーフィングモデル値としてROM(モデル制御パターン記憶手段)内にて検索する。
・制御パターンモーフィング手段:図5ないし図6に示すように、検索された第一及び第二の被モーフィングモデル値U、Uに対応する1対のモデル制御パターンp,pをROMから読み出し、それら第一及び第二の被モーフィングモデル値U、Uの差分距離の現在値(U)による分割比を反映した重みにて、二次元線図パターンをなすそれら1対のモデル制御パターンp,pの形状を図形的にモーフィング処理することにより合成制御パターンpを作成する。
・シート風量出力値決定手段:第一種主吹出風量値Q(シート風量決定用入力変数)の現在値Qを特定し、合成制御パターン上にて該第一種主吹出風量値Qの現在値Qに対応するシート風量出力値(デューティ比)ηを決定する(図4)。
また、駆動ユニット121は、決定されたシート風量出力値(電流出力値(デューティ比η))にてシート送風機4を動作させるシート送風機制御手段として機能する。
【0044】
図4は、モデル制御パターンの一例を示すもので、基本的には、第一種主吹出風量値Qが高くなるほどシート風量出力値(デューティ比η)が大きくなるように定められている。具体的には、該モデル制御パターンpは、第一種主吹出風量値Qに対してシート風量出力値ηが単調に(図4においてはリニアに)増加する追従制御区間Jに対し、第一種主吹出風量値Qによらずシート風量出力値ηが最大出力値ηmaxとして定められる最大側定常制御区間JHが高風量側に接続形成され、同じく、第一種主吹出風量値Qによらずシート風量出力値ηが最小出力値ηminとして定められる最小側定常制御区間JLが低風量側にそれぞれ接続形成されたシグモイドパターンとして形成されている。
【0045】
図5に示すように、主吹出風量値Q(モーフィング用入力変数)の種々の値を示す概念的な数直線(部分入力数直線)上に、複数の第二種主吹出風量値のモデル値U,‥,U,U,‥,Uが離散的に定められている。そして、それらモデル値毎に固有のモデル制御パターン(p,‥,p,p,‥,p等)が、上記部分入力数直線上にマッピングする形で用意されている。Q−η平面上における最小側定常制御区間JLから追従制御区間JMへの移行点は、図5に示すように、第二種主吹出風量値Uの値が低いほど低風量側に位置するものとなるように、各モデル制御パターンが定められている。
【0046】
各モデル制御パターンをなす二次元線図パターンは、各モデル制御パターン間で一対一に対応付けられた、パターン起点からパターン終点に向けて配列する一定個数のハンドリング点hpにより形状規定されるものとして用意されている。ハンドリング点hpはパターンモーフィングの際の対応点を形成する。この実施形態では、各モデル制御パターンは、ハンドリング点hpを順次直線連結して得られる折線状パターンとされている。個々のハンドリング点は、最大側定常制御区間J、追従制御区間J及び最小側定常制御区間Jがそれぞれ特定可能となるように定められており、最小側定常制御区間Jと追従制御区間J及び追従制御区間Jと最大側定常制御区間Jの各境界には、折線屈曲点を与えるハンドリング点hpが配置されている。
【0047】
現在の第二種主吹出風量値Uが与えられたとき、その第二種主吹出風量値Uに対応する合成制御パターンをモーフィングにより生成する処理の流れは以下のごとくとなる。すなわち、第二種主吹出風量値Uが与えられたとき、該Uを挟んでこれに隣接する1対の被モーフィングモデル値U,Uを見出す。次に、その見出されたU,Uに対応する2つのモデル制御パターンp,pを読み出す。これら2つのモデル制御パターンp,pをQ−η平面上に重ね合わせて考え、両パターンで互いに対応するハンドリング点hp,hpの各Q−η平面での座標を、それぞれhpA:(Q,η)及びhpB:(Q,η)とする。合成制御パターンpのハンドリング点(以下、合成後ハンドリング点という)hpは、Q−η平面上での線分hp−hpを、第一及び第二の被モーフィングモデル値U,Uの差分距離を現在の第二種主吹出風量値Uにて分割したときの比にて線形内挿した点として計算される。この計算は、いわゆる梃子の規則に従うものであり、ハンドリング点hp:(Q,η)の各座標値は、
=(BX/AB)×Q+(AX/AB)×Q
η=(BX/AB)×η+(AX/AB)×η
にて算出される。
【0048】
このようにして全ての対応ハンドリング点同士につき同様の線形内挿処理を行ない、合成後ハンドリング点を求めれば、それら合成後ハンドリング点を折線状につなぐことで合成制御パターンpが得られる。得られた該合成制御パターンは、図2のRAM内に格納される。
【0049】
図6は、制御プログラムによるECU100Rの処理の流れを示すフローチャートである。S1では手元電源スイッチ113がオンになっているかどうかを判定し、なっていなければS10に進んでペルチェモジュール10A,10B(及びシート送風機4)の動作を停止する。他方、手元電源スイッチ113がオンになっていればS2に進み、第二種主吹出風量値Uを読み取る。S3では、この第二種主吹出風量値Uが前回から変更されているか否か(初回時は「変更されている」場合に含まれる)を判定する。変更されている場合はS4に進み、Uに隣接する被モーフィングモデル値U,Uを見出し、対応するモデル制御パターンp,pをROMから読み出して、既に説明した方法によりモーフィング処理を行ない、合成制御パターンを得るとともに、古い合成制御パターンを更新する形でRAMに格納する。一方、S3で第二種主吹出風量値Uが前回から変更されていなければ、RAMの古い合成制御パターンがそのまま使えるので、S4〜S6のモーフィング処理をスキップする。
【0050】
そして、S7では第一種主吹出風量値の現在値Qをリードし、S8にて、図4に示すように、Qに対応するデューティ比ηにてシート送風機4を作動させる。こうしてリアシート空調装置の吹出風量制御を、第二種主吹出風量値(フロント送風機の吹出風量)の影響を的確に反映させた形で、直接的には第一種主吹出風量値(リア送風機の吹出風量)のみを制御入力変数とする単純な合成制御パターンに従い、簡単かつきめ細かく実施することが可能となる。
【0051】
なお、以上の実施形態では、リアシート空調ECU100Rでの制御例を示したが、フロントシート空調ECU100Fでのシート送風機4の制御も、第一種主送風機がフロント送風機302となり、第二種主送風機がリア送風機402となる点を除いて、全く同様に実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1A】本発明の適用対象となるシート空調装置の一例を示す側面断面図。
【図1B】シート空調装置と主送風機との位置関係を示す模式図。
【図2】本発明の車両用空調制御装置の電気的構成の一例を示す全体ブロック図。
【図3】ペルチェモジュールの駆動ユニットの電気的構成の一例を示す回路図。
【図4】モデル制御パターンの一例を示す図。
【図5】モデル制御パターンのモーフィング概念を説明する図。
【図6】シート風量出力制御処理の流れを示すフローチャート。
【符号の説明】
【0053】
1 シート
3 ペルチェモジュール
4 シート送風機
100R リアシート空調ECU(第一種主吹出風量値取得手段、第二種主吹出風量値取得手段、モデル制御パターン記憶手段(ROM)、被モーフィングモデル値検索手段、制御パターンモーフィング手段、シート風量出力値決定手段、シート送風機制御手段)
100F フロントシート空調ECU(第一種主吹出風量値取得手段、第二種主吹出風量値取得手段、モデル制御パターン記憶手段(ROM)、被モーフィングモデル値検索手段、制御パターンモーフィング手段、シート風量出力値決定手段、シート送風機制御手段)
302 フロント送風機(主送風機)
402 リア送風機(主送風機)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内空間を包括的に空調するために各々シート以外の車室内構造物に空調風の吹出口を有するとともに吹出風量を独立に制御可能な複数の主送風機を備えた主空調装置と、前記シートに着座する乗員に対する個別空調を行なうために該シートに空調風の吹出口を有するとともにシート毎に吹出風量を制御可能なシート送風機を備えたシート空調装置とを備え、前記主空調装置の各前記主送風機のうち、前記シート空調装置が設けられる前記シートに前記吹出口が最も近く配置されているものを第一種主送風機とし、残余の主送風機を第二種主送風機として、
前記第一種主送風機の吹出風量値である第一種主吹出風量値を取得する第一種主吹出風量値取得手段と、
前記第二種主送風機の吹出風量値である第二種主吹出風量値を取得する第二種主吹出風量値取得手段と、
前記第一種主吹出風量値を、前記シート送風機の吹出風量出力値であるシート風量出力値を決定するためのシート風量決定用入力変数とし、前記第二種主吹出風量値をモーフィング用入力変数として、前記モーフィング用入力変数の離散的な種々のモデル値毎に用意され、それぞれ前記モーフィング用入力変数を各前記モデル値に固定したときの、前記シート風量決定用入力変数と前記シート風量出力値との関係を示す二次元線図パターンからなるモデル制御パターンを複数記憶するモデル制御パターン記憶手段と、
前記第二種主吹出風量値すなわち前記モーフィング用入力変数の現在値を特定するとともに、該モーフィング用入力変数の前記現在値に隣接する複数個の前記モデル値を、被モーフィングモデル値として前記モデル制御パターン記憶手段内にて検索する被モーフィングモデル値検索手段と、
検索された前記被モーフィングモデル値にそれぞれ対応する複数の前記モデル制御パターンを前記モデル制御パターン記憶手段から読み出し、前記複数の被モーフィングモデル値と前記現在値との偏差に応じて、二次元線図パターンをなすそれらモデル制御パターンの形状を図形的にモーフィング処理することにより合成制御パターンを作成する制御パターンモーフィング手段と、
前記シート風量決定用入力変数の現在値を特定し、前記合成制御パターン上にて該シート風量決定用入力変数の現在値に対応する前記シート風量出力値を決定するシート風量出力値決定手段と、
決定されたシート風量出力値にて前記シート送風機を動作させるシート送風機制御手段と、
を備えたことを特徴とする車両用空調制御装置。
【請求項2】
前記複数の前記主送風機として、フロントシート側に送風するフロント送風機と、リアシート側に送風するリア送風機とが設けられ、
前記シート空調装置が前記リアシートに設けられるとともに、前記リア送風機が前記第一種主送風機として、前記フロント送風機が前記第二種主送風機としてそれぞれ定められている請求項1記載の車両用空調制御装置。
【請求項3】
前記複数の前記主送風機として、フロントシート側に送風するフロント送風機と、リアシート側に送風するリア送風機とが設けられ、
前記シート空調装置が前記フロントシートに設けられるとともに、前記フロント送風機が前記第一種主送風機として、前記リア送風機が前記第二種主送風機としてそれぞれ定められている請求項1記載の車両用空調制御装置。
【請求項4】
前記モデル制御パターン記憶手段は、前記第一種主送風機の吹出風量値を前記シート風量決定用入力変数とし、前記第二種主送風機の吹出風量値をモーフィング用入力変数として、前記モーフィング用入力変数の離散的な種々のモデル値毎に用意され、それぞれ前記モーフィング用入力変数を各前記モデル値に固定したときの前記シート風量決定用入力変数と前記空調装置のシート風量出力値との関係を示す二次元線図パターンからなるモデル制御パターンを複数記憶するものであり、
前記被モーフィングモデル値検索手段は、前記モーフィング用入力変数の現在値を特定するとともに、該モーフィング用入力変数の前記現在値を挟んでこれに隣接する1対の前記モデル値を、第一及び第二の被モーフィングモデル値として前記モデル制御パターン記憶手段内にて検索するものであり、
前記制御パターンモーフィング手段は、検索された第一及び第二の被モーフィングモデル値に対応する1対の前記モデル制御パターンを前記モデル制御パターン記憶手段から読み出し、それら第一及び第二の被モーフィングモデル値の差分距離の前記現在値による分割比を反映した重みにて、二次元線図パターンをなすそれら1対のモデル制御パターンの形状を図形的にモーフィング処理することにより合成制御パターンを作成するものである請求項2又は請求項3に記載の車両用空調制御装置。
【請求項5】
前記モデル制御パターンをなす前記二次元線図パターンは、複数のモデル制御パターン間で一対一に対応付けられた、パターン起点からパターン終点に向けて配列する一定個数のハンドリング点により形状規定されるものであり、
前記制御パターンモーフィング手段は、各前記被モーフィングモデル値に係る前記二次元線図パターンの各ハンドリング点の対応するもの同士をモーフィングすることにより合成ハンドリング点を生成し、それら合成ハンドリング点により前記合成制御パターンをなす二次元線図パターンを規定する請求項1ないし請求項4のいずれか1項に車両用空調制御装置。
【請求項6】
前記二次元線図パターンは、前記ハンドリング点を順次直線連結して得られる折線状パターンである請求項5記載の車両用空調制御装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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