説明

車両用空調機器の駆動制御装置

【課題】空調機器の駆動音によって空調装置の動作が制限されることを抑制し、乗員が所望する空調性能の確保をする。
【解決手段】イグニッション信号検出手段と、空調機器駆動判定手段と、疑似音検出手段と、騒音検出手段とを備え、空調機器の必要回転数決定手段と、疑似音よりも空調機器の駆動音が小さくなる第一許容回転数を求める第一許容回転数決定手段と、疑似音以外の騒音よりも空調機器の駆動音が小さくなる第二許容回転数を求める第二許容回転数算出手段と、空調機器の駆動回転数決定手段とを備え、第一許容回転数と第二許容回転数の大小を比較して大きい側の許容回転数を求め、必要駆動回転数が求めた許容回転数よりも大きい場合は求めた許容回転数で空調機器を駆動させ、必要駆動回転数が求めた許容回転数よりも小さい場合は必要駆動回転数で空調機器を駆動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は車両用空調機器の駆動制御装置に係り、特に、空調装置が備える電動コンプレッサなどの空調機器の騒音補正および空調生能の向上を図った車両用空調機器の駆動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動モータを動力源とする電気自動車や電動モータと内燃機関型エンジンを動力源とするハイブリッド車などの車両では、電動モータで走行することができるため、内燃機関型エンジンのみを動力源とする車両よりも静寂性能が向上している。このように静寂性能が向上した反面では、空調装置の構成部品である空調機器(例えば、空調装置の冷媒ガスを循環させるための電動コンプレッサや車室内に送風を行う送風用ブロアファン等)の駆動音が目立つようになった。
このため、電気自動車やハイブリッド車などの車両では、静寂性能を保持するため、空調性能を犠牲にしなければならない場合もあった。例えば、低車速時には、電動コンプレッサの回転数を抑制するなどで、空調性能を犠牲することがあった。
【0003】
従来の車両用空調機器の駆動制御装置には、車速が所定車速以下では空調機器の回転数を制限することで空調機器が発生する騒音を抑制するもの(特開平7−223428号公報)や、車速が所定車速以上のときに送風モードの切り換えを行うことで切り換え時に発生する風切り音などの異音による違和感を乗員に与えることを抑制するものがある。(特開2007−267494号公報)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−223428号公報
【特許文献2】特開2007−267494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記特許文献1、2では、静寂性能を保持するために、空調機器の回転数を制限したり、送風モードの切り換えを遅らせていることから、空調装置による空調性能が犠牲になり、快適性が損なわれやすい問題があった。
【0006】
この発明は、空調機器の駆動音によって空調装置の動作が制限されることを抑制し、乗員が所望する空調性能の確保に貢献できる車両用空調機器の駆動制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、車両の空調装置に設けられる車両用空調機器の駆動制御装置において、イグニッション信号を検出するイグニッション信号検出手段と、前記空調機器の駆動条件の成立を検出する空調機器駆動判定手段と、車両が発生する疑似音を検出する疑似音検出手段と、疑似音以外の騒音を検出する騒音検出手段とを備え、前記空調機器の必要駆動回転数を求める必要回転数決定手段と、前記疑似音検出手段により検出される疑似音よりも前記空調機器の駆動音が小さくなる第一許容回転数を求める第一許容回転数決定手段と、前記騒音検出手段により検出される疑似音以外の騒音よりも前記空調機器の駆動音が小さくなる第二許容回転数を求める第二許容回転数算出手段と、前記空調機器の駆動回転数を決定する駆動回転数決定手段とを備え、前記第一許容回転数と前記第二許容回転数の大小を比較して大きい側の許容回転数を求め、求めた許容回転数を前記必要駆動回転数と比較し、前記必要駆動回転数が前記求めた許容回転数よりも大きい場合は前記求めた許容回転数で前記空調機器を駆動させ、前記必要駆動回転数が前記求めた許容回転数よりも小さい場合は前記必要駆動回転数で前記空調機器を駆動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明の車両用空調機器の駆動制御装置は、騒音が小さく空調性能を犠牲にしなければならない場合でも、車両が発生する疑似音の大きさに応じて空調機器の許容回転数を大きくでき、空調性能を向上できる。このため、空調性能を犠牲にすることを抑制しつつ、車室内の快適性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】車両用空調機器の駆動制御装置による制御のフローチャートである。(実施例)
【図2】疑似音レベルによる第二許容回転数のマップを示す図である。(実施例)
【図3】車両用空調機器の駆動制御装置のブロック図である。(実施例)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下図面に基づいて、この発明の実施例を説明する。
【実施例】
【0011】
図1〜図3は、この発明の実施例を示すものである。図3において、1は車両である。車両1は、電動モータを動力源とする電気自動車や電動モータと内燃機関型エンジンを動力源とするハイブリッド車などの車両であり、電動モータで走行することができる。この車両1は、疑似音発生手段2を備えている。疑似音発生手段2は、第三者への当該車両1の接近を知らせるための手段(車両接近通報)であり、車両1が電動モータで走行の際に、車両1の速度等に応じて特定の音を発するものである。
車両1は、空調装置3を搭載している。空調装置3は、空調機器4を備えている。空調機器4には、空調装置3の冷媒ガスを循環させるための電動コンプレッサ4Aや、車室内に空調空気の送風を行う送風用ブロアファン4Bなどがある。空調機器4は、駆動制御装置5により駆動を制御される。
駆動制御装置5には、車両1を起動するイグニッション信号を検出するイグニッション信号検出手段6と、前記空調機器4の駆動条件の成立を検出する空調機器駆動判定手段と7、車両1に搭載した前記疑似音発生手段2が発生する疑似音を検出する疑似音検出手段8と、前記疑似音発生手段2が発生する疑似音以外の騒音(車輪音や外部騒音など)を検出する騒音検出手段9とを備えている。
また、駆動制御装置5は、空調性能に必要な前記空調機器4の必要駆動回転数Xを求める必要回転数決定手段10と、前記疑似音検出手段8により検出される疑似音よりも前記空調機器4の駆動音が小さくなる第一許容回転数βを求める第一許容回転数決定手段11と、前記騒音検出手段9により検出される疑似音以外の騒音よりも前記空調機器4の駆動音が小さくなる第二許容回転数αを求める第二許容回転数算出手段12と、必要駆動回転数Xと第一許容回転数βと第二許容回転数αとから前記空調機器4を駆動するための最終的な駆動回転数を決定する駆動回転数決定手段13とを備え、決定された駆動回転数で前記空調機器4を駆動する空調機器駆動手段14を備えている。
駆動制御装置5は、前記第一許容回転数βと前記第二許容回転数αの大小を比較して大きい側の許容回転数を求め、求めた許容回転数を前記必要駆動回転数Xと比較する。駆動制御装置5は、前記必要駆動回転数Xが前記求めた許容回転数よりも大きい場合は、前記求めた許容回転数で前記空調機器4を駆動させる。一方、駆動制御装置5は、前記必要駆動回転数Xが前記求めた許容回転数よりも小さい場合は、前記必要駆動回転数Xで前記空調機器4を駆動させる。
【0012】
次に、空調機器4の駆動制御装置5の作用を、図1、図2に基づいて説明する。
駆動制御装置5は、図1に示すように、制御がスタートすると(S01)、イグニッション信号が車両起動状態を示すON(IG:ON)であるかを判断する(S02)。
この判断(S02)がNOの場合は、この判断(S02)を繰り返す。この判断(S02)がYESの場合は、空調機器4を駆動するための駆動条件が成立するかを判断する(S03)。
この判断(S03)がNOの場合は、前記判断(S02)に戻る。この判断(S03)がYESの場合は、車室内気温や車室外気温等を基に空調性能に必要な空調機器4(例えば、電動コンプレッサ4A)の必要駆動回転数X(rpm)を算出し(S4)、検出される疑似音以外の騒音よりも空調機器4の駆動音が小さくなる第二許容回転数α(rpm)を算出し(S05)、検出される疑似音よりも空調機器4の駆動音が小さくなる第一許容回転数β(rpm)を算出する(S06)。
前記第二許容回転数αは、空調機器4の発生する駆動音が疑似音以外の騒音よりも大きくなることがない、空調機器4の最大回転数である。前記第一許容回転数βは、空調機器4の発生する駆動音が疑似音よりも大きくなることがない、空調機器5の最大回転数である。第一許容回転数βは、図2に示すように、疑似音レベルの小→大の変化に応じて、β1<β2<……<βn、となるように設定する。
【0013】
前記第一許容回転数β(rpm)の算出(S06)に続いて、第二許容回転数αが第一許容回転数βよりも大きいかを判断する(S07)。この判断(S07)がYESの場合は、必要駆動回転数Xが第二許容回転数αよりも大きいかを判断する(S08)。
この判断(S08)がYESの場合は、第二許容回転数αを空調機器4の駆動回転数に決定し、決定した第二許容回転数αで空調機器4を駆動し(S09)、制御をエンドにする(S10)。この判断(S08)がNOの場合は、必要駆動回転数Xを空調機器4の駆動回転数に決定し、決定した必要駆動回転数Xで空調機器4を駆動し(S11)、制御をエンドにする(S10)。
一方、前記判断(S07)がNOの場合は、必要駆動回転数Xが第一許容回転数βよりも大きいかを判断する(S12)。
この判断(S12)がYESの場合は、第一許容回転数βを空調機器4の駆動回転数に決定し、決定した第一許容回転数βで空調機器4を駆動し(S13)、制御をエンドにする(S10)。この判断(S12)がNOの場合は、必要駆動回転数Xを空調機器4の駆動回転数に決定し、決定した必要駆動回転数Xで空調機器4を駆動し(S14)、制御をエンドにする(S10)。
これより、駆動制御装置5は、疑似音以外の騒音レベルが低く空調生能を犠牲にしなければならない場合でも、疑似音レベルが高い場合は空調機器4の最大回転数の許容量を上げるため、空調機器4による騒音の不快感を伴わずに空調性能向上を可能とする。
【0014】
このように、空調機器4の駆動制御装置5は、疑似音よりも空調機器4(電動コンプレッサ4Aまたは送風用ブロアファン4B)の駆動音が小さくなる第一許容回転数βと、疑似音以外の騒音よりも空調機器4の駆動音が小さくなる第二許容回転数αとを比較して大きい側の許容回転数を求め、求めた許容回転数を空調性能に必要な空調機器4の必要駆動回転数Xと比較する。駆動制御装置5は、必要駆動回転数Xが求めた許容回転数よりも大きい場合は、求めた許容回転数で空調機器4を駆動させ、必要駆動回転数Xが求めた許容回転数よりも小さい場合は、必要駆動回転数Xで空調機器4を駆動させる。
これにより、駆動制御装置5は、騒音が小さく空調性能を犠牲にしなければならない場合でも、車両1が発生する疑似音の大きさに応じて空調機器4の許容回転数を大きくでき、空調性能を向上できる。このため、駆動制御装置5は、空調性能を犠牲にすることを抑制しつつ、車室内の快適性を確保することができる。
【産業上の利用可能性】
【0015】
この発明は、空調機器の駆動音によって空調装置の動作が制限されることを抑制し、乗員が所望する空調性能の確保に貢献できるものであり、四輪車や自動二輪車に限らず、電動モータ、あるいは電動モータと内燃機関型エンジンを動力源として走行する産業機器に適用することができる。
【符号の説明】
【0016】
1 車両
2 疑似音発生手段
3 空調装置
4 空調機器
5 駆動制御装置
6 イグニッション信号検出手段
7 空調機器駆動判定手段
8 疑似音検出手段
9 騒音検出手段
10 必要回転数決定手段
11 第一許容回転数決定手段
12 第二許容回転数算出手段
13 駆動回転数決定手段
14 空調機器駆動手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の空調装置に設けられる車両用空調機器の駆動制御装置において、イグニッション信号を検出するイグニッション信号検出手段と、前記空調機器の駆動条件の成立を検出する空調機器駆動判定手段と、車両が発生する疑似音を検出する疑似音検出手段と、疑似音以外の騒音を検出する騒音検出手段とを備え、前記空調機器の必要駆動回転数を求める必要回転数決定手段と、前記疑似音検出手段により検出される疑似音よりも前記空調機器の駆動音が小さくなる第一許容回転数を求める第一許容回転数決定手段と、前記騒音検出手段により検出される疑似音以外の騒音よりも前記空調機器の駆動音が小さくなる第二許容回転数を求める第二許容回転数算出手段と、前記空調機器の駆動回転数を決定する駆動回転数決定手段とを備え、前記第一許容回転数と前記第二許容回転数の大小を比較して大きい側の許容回転数を求め、求めた許容回転数を前記必要駆動回転数と比較し、前記必要駆動回転数が前記求めた許容回転数よりも大きい場合は前記求めた許容回転数で前記空調機器を駆動させ、前記必要駆動回転数が前記求めた許容回転数よりも小さい場合は前記必要駆動回転数で前記空調機器を駆動させることを特徴とする車両用空調機器の駆動制御装置。
【請求項2】
前記空調機器は電動コンプレッサまたは送風用ブロアファンであることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調機器の駆動制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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