説明

車両用空調装置に用いられるリンク構造

【課題】簡素な構成でリンク部材のがたつきを防止して円滑に動作させると共に、車両用空調装置の軽量化及び製造コストの低減に寄与する。
【解決手段】車両用空調装置10を構成する駆動機構14は、駆動ギア24と、該駆動ギア24に噛合される回転プレート26とを有し、前記駆動ギア24がケーシング12の第1取付部20に装着されると共に、前記回転プレート26が前記ケーシング12の第2取付部22に装着される。そして、駆動ギア24を傾動させる力が付与された際、軸部38から離間した位置に設けられたリブ50が前記ケーシング12に当接することでがたつきが防止され、一方、回転プレート26を傾動させる力が付与された際、円筒状のガイド部64が前記ケーシング12に当接することでがたつきが防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載され、熱交換器によって温度調整のなされた空気を車室内へと送風して車室内の温度調整を行う車両用空調装置に用いられ、前記温度調整を行うための複数のドアを作動させるためのリンク構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両に搭載される車両用空調装置において、送風機によって内外気をケーシング内へと取り込み、冷却手段であるエバポレータにより冷却された冷風と、加熱手段であるヒータコアにより加熱された温風とを、エアミックスダンパの開度を調整することによって該ケーシング内において所望の混合比率で混合し、この混合された混合風を、車室内に設けられた各吹出口に設けられた吹出ドアを開閉させることによって選択的に送風して前記車室内の温度及び湿度を調整している。
【0003】
また、ケーシングの側面には、円盤状で複数のカム溝を有した駆動レバーが回転自在に設けられ、前記カム溝にピンを介して係合されたアームの端部がそれぞれ上述したエアミックスダンパ及び吹出ドアの支軸に連結されることで、前記駆動レバーが、図示しない駆動手段の駆動作用下に回転することで、アームを介してエアミックスダンパ及び吹出ドアが所定角度だけ回動し、冷風と温風との混合比率や前記吹出口の開閉状態が切り換えられる。
【0004】
さらに、上述した駆動レバーは、ケーシングに設けられた軸に対して回転自在に支持されるが、前記駆動レバーの傾きを防止する目的で、前記ケーシングには、前記駆動レバー側に向かって立設し、その下面を保持可能な押え突起が形成されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平6−4541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、駆動プレートの傾斜(がたつき)を防止するための押え突起は、ケーシング側に設けられているため、複数の吹出口等を有するケーシングの形状がさらに複雑化してしまい、それに伴って、前記ケーシングを成型するための金型が非常に複雑となり、製造コストが高騰してしまうこととなる。
【0007】
本発明は、前記の課題を考慮してなされたものであり、簡素な構成でリンク部材のがたつきを防止して円滑に動作させると共に、車両用空調装置の軽量化及び製造コストの低減に寄与することが可能な車両用空調装置に用いられるリンク構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために、本発明は、空気通路を内部に有するケースと、該ケース内部に設けられ前記空気通路の連通を切り換えるダンパと、前記ケースに対して回動自在に設けられ、且つ、前記ダンパに接続され該ダンパを駆動するリンク部材とを有する車両用空調装置において、
前記ケースの外壁面には、前記リンク部材が装着されるケース側取付部を備え、前記リンク部材には、前記ケース側取付部に装着されるリンク側取付部と、前記リンク側取付部から前記外壁面の延在方向に沿って離間し、且つ、前記ケース側に向かって延設して前記ケースの外壁面に当接可能ながたつき防止部とを有することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、車両用空調装置を構成するケースの外壁面に、ダンパを駆動するリンク部材が装着されるケース側取付部を備え、前記リンク部材に、前記ケース側取付部に装着されるリンク側取付部と、前記リンク側取付部から前記外壁面の延在方向に沿って離間し、且つ、前記ケース側に向かって延設して前記ケースの外壁面に当接可能ながたつき防止部とを形成している。そして、リンク部材に駆動力が入力されダンパを駆動させる際、該駆動力に起因してリンク部材が所定位置から傾斜した場合に、がたつき防止部が前記ケースの外壁面に当接することで前記リンク部材のさらなる傾斜(がたつき)が防止される。
【0010】
従って、リンク部材にがたつき防止部を設けることで、該リンク部材のがたつきを確実に防止して円滑に動作させることができると共に、ケース側の形状を複雑化させる必要がないため、該ケースを成形する際の金型を複雑化させることなく、しかも、前記がたつき防止部を前記ケース側に設ける場合と比較し、使用される材料の使用量を削減することができるため、車両用空調装置の軽量化及び製造コストの削減を図ることが可能となる。
【0011】
また、リンク側取付部は、ケース側に向かって突出した軸部を有し、ケース側取付部は、ケースから離間する方向に向かって突出した円筒状の第1の円筒部を有し、前記リンク部材を前記ケースに対して装着する際に、前記軸部を前記第1の円筒部の内部に挿入するとよい。
【0012】
さらに、がたつき防止部は、軸部と同心で、且つ、第1の円筒部より大径で円筒状に形成された第2の円筒部を有し、リンク部材をケースに対して装着する際に、前記第1の円筒部を前記第2の円筒部の内部に挿入するとよい。
【0013】
さらにまた、がたつき防止部は、軸部に対して半径外方向に設けられ、先端に向かって徐々に先細状に形成された突部を有し、前記リンク部材を前記ケースに対して装着した際、前記突部を前記ケースの外壁面に対峙させるとよい。
【0014】
またさらに、ケース側取付部は、ケースの外壁面に対して突出して形成されると共に、がたつき防止部を、軸部よりも軸方向に沿って長く形成するとよい。
【0015】
また、軸部の先端には、爪部を有し、前記軸部を前記第1の円筒部に挿入した際、前記爪部を前記第1の円筒部の内部に形成された取付孔に係合させるとよい。
【0016】
さらに、がたつき防止部は、リンク側取付部を中心として円筒状に形成された円筒部を有し、ケース側取付部は、ケースから離間する方向に向かって突出した軸部を有し、前記リンク部材を前記ケースに装着する際に、前記軸部を前記円筒部に挿入するとよい。
【0017】
さらにまた、リンク側取付部は、円筒部の内部に開口した取付孔を有すると共に、軸部の先端に爪部を有し、前記軸部を前記円筒部へ挿入する際、前記取付孔と前記爪部を係合させるとよい。
【0018】
またさらに、がたつき防止部は、リンク部材に設けられ駆動力の入力される入力部に近接して配置するとよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0020】
すなわち、車両用空調装置を構成するケースの外壁面にケース側取付部を設け、リンク側取付部を有するリンク部材を装着すると共に、該リンク部材に、ケース側に向かって延設して前記外壁面に当接可能ながたつき防止部を設けることにより、前記リンク部材に駆動力が入力されダンパを駆動させる際に、該リンク部材が傾動しそうな場合でも、がたつき防止部が前記ケースの外壁面に当接することで前記リンク部材のさらなる傾斜(がたつき)が防止される。その結果、がたつき防止部を設けることで、リンク部材のがたつきを確実に防止して円滑に動作させることができると共に、ケース側の形状を複雑化させる必要がないため、該ケースを成形する際の金型を複雑化させることなく、しかも、前記がたつき防止部を前記ケース側に設ける場合と比較し、使用される材料の使用量を削減することができるため、車両用空調装置の軽量化及び製造コストの削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態に係るリンク構造の適用された車両用空調装置の外観側面図である。
【図2】図2Aは、図1に示す駆動機構を構成する駆動ギアの外観斜視図であり、図2Bは、図1のIIB−IIB線に沿った断面図である。
【図3】図3Aは、図1に示す駆動機構を構成する回転プレートの外観斜視図であり、図3Bは、図1のIIIB−IIIB線に沿った断面図である。
【図4】変形例に係る回転プレートがケーシングに装着された状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係る車両用空調装置に用いられるリンク構造について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0023】
図1において、参照符号10は、本発明の実施の形態に係るリンク構造が適用された車両用空調装置を示す。
【0024】
この車両用空調装置10は、図1に示されるように、空気の各通路を構成するケーシング(ケース)12と、該ケーシング12の内部に設けられ、前記各通路内を流通する空気の流れを切り換える複数のダンパ(図示せず)と、前記ダンパを回動させるための駆動機構(リンク構造)14とを含む。
【0025】
ケーシング12は、2つに分割可能に形成され、その一方の側部に開口した開口部16には、該ケーシング12内に空気を導入する送風機が接続されるダクト(図示せず)が装着される。
【0026】
一方、ケーシング12の内部には、図示しないエバポレータ及びヒータコアが互いに所定間隔して設けられ、前記エバポレータによって通路内を流通する空気が冷却され、一方、ヒータコアによって通路内を流通する空気が加熱される。そして、冷却された冷風と加熱された温風とがダンパの回動作用下に所定割合で混合され、例えば、ケーシング12の上方に開口した送風口18を通じて車室内へと供給される。
【0027】
また、ケーシング12の外壁面12aには、円筒状に突出した第1及び第2取付部20、22が設けられ、該第1及び第2取付部20、22には、後述する駆動機構14を構成する駆動ギア24及び回転プレート26が回転自在に設けられる。なお、第1及び第2取付部20、22は、ケーシング12の外壁面12aに対して直立し、且つ、互いに略平行となるように所定間隔離間して設けられる。なお、第1及び第2取付部20、22は、ケーシング12側に設けられたケース側取付部として機能する。
【0028】
第1取付部20は、ケーシング12の外壁面12aに立設した第1円筒部28と、該第1円筒部28の内部に形成される第1係合孔(取付孔)30とを含み、前記第1係合孔30は前記第1円筒部28に対して縮径して同軸上に形成され、前記ケーシング12の内部に貫通している。
【0029】
第2取付部22は、ケーシング12の外壁面12aに立設した第2円筒部32と、該第2円筒部32の内部に形成される第2係合孔(取付孔)34とを含み、前記第2係合孔34は前記第2円筒部32に対して縮径して同軸上に形成され、前記ケーシング12の内部に貫通している。
【0030】
駆動機構14は、例えば、ケーシング12の外壁面12aに回転自在に装着される駆動ギア(リンク部材)24と、該駆動ギア24に噛合される回転プレート(リンク部材)26と、前記回転プレート26のリンク溝36に軸支されダンパを回動させる複数のリンクアーム(図示せず)とを含む。
【0031】
駆動ギア24は、図1及び図2に示されるように、例えば、乗員が車室内において操作レバーを操作することによって回動自在に設けられ、ケーシング12の第1取付部20に装着され軸支される軸部38と、該軸部38に対して半径外方向に拡径した円弧状の第1ギア部40と、前記軸部38を中心として前記第1ギア部40とは反対側に形成されたアーム部42とを含む。
【0032】
軸部38は、略一定径で軸方向(矢印A、B方向)に沿って所定長さを有した円柱状に形成され、その端部には、ケーシング12の第1係合孔30に係合される第1係合部44が設けられる。この第1係合部44は、軸部38の端面から軸方向(矢印A方向)に突出し、該軸部38の軸線を中心として周方向に沿って互いに等間隔離間した複数(例えば、3個)の爪部48からなる。この爪部48は、軸部38の軸線側となる半径内方向に傾動するように変形自在に設けられ、その先端部には半径外方向に向かって突出している。
【0033】
そして、駆動ギア24が第1取付部20に装着される際、爪部48が第1係合孔30に挿入されることで、前記第1係合孔30の内周面に摺接して半径内方向へと傾動し、その状態でさらに押し込まれることによって前記爪部48がケーシング12の内部に到達して弾発力によって半径外方向へと拡径した後、ケーシング12の内壁面に係合される。
【0034】
これにより、駆動ギア24が、第1係合孔30を介して第1取付部20に回転自在に保持される。また、第1取付部20の第1円筒部28は、軸部38の下部側(矢印A方向)を覆うように設けられ、その先端部が駆動ギア24の軸部38の端面に当接している。
【0035】
第1ギア部40は、軸部38の外周面から半径外方向に突出した部位の外周面に刻設された複数の歯を有し、駆動ギア24がケーシング12の第1取付部20に装着された際、後述する回転プレート26の第2ギア部66に噛合される。
【0036】
アーム部42は、軸部38の外周面に対して半径外方向に一直線上に突出し、前記アーム部42の先端に形成され前記軸部38の軸方向(矢印A方向)に沿って突出したリブ(突部)50と、該リブ50とは反対方向(矢印B方向)に突出した入力ピン(入力部)52とを備える。
【0037】
リブ50は、軸部38に対して直交するように形成され、駆動ギア24をケーシング12に装着した際、その先端部が前記ケーシング12の外壁面12aに対して所定間隔離間するように配置される。すなわち、リブ50とケーシング12の外壁面12aとの間には所定間隔のクリアランスCL1が設けられている。また、リブ50は、先端部に向かって徐々に先細状となるように形成され、且つ、
軸部38側が凹み、駆動ギア24が回動する方向に延在するように円弧状に形成されている。これにより、先端部が前記ケーシング12の外壁面12aに当接することで、駆動ギア24の傾動を防止するがたつき防止部として機能すると共に、リブ50と外壁面12aとの接地面積を小さくすることができるため、前記外壁面12aに当接したまま回動しても摺動抵抗を小さくすることができる。
【0038】
入力ピン52は、例えば、軸状に形成されリブ50と略一直線上に配置されると共に、図示しない車室内に設けられ乗員の操作可能な操作レバーに接続されたワイヤ54が引っ掛けられる。そして、乗員が操作レバーを操作することでワイヤ54が引張され、それに伴って、ワイヤ54を介して入力ピン52に付与された駆動力によって駆動ギア24が軸部38を中心として所定角度だけ回動する。
【0039】
なお、上述したリブ50及び入力ピン52は、軸部38の軸線と略平行に形成される。
【0040】
回転プレート26は、図1及び図3に示されるように、円盤状に形成されたベース部56と、該ベース部56の中央に形成されベース部56に対して縮径した大径部58と、前記大径部58の端部に形成され前記ベース部56に対して縮径した小径部(軸部)60と、前記小径部60の端部に形成されケーシング12の第2係合孔34に係合される第2係合部62と、前記小径部60の外周側に形成された円筒状のガイド部64とを含む。
【0041】
ベース部56には、ケーシング12側となる端面に複数のリンク溝36が形成され、該リンク溝36にはリンクアームの一部が挿入される。これにより、回転プレート26の回動作用下にリンク溝36に係合されたリンクアームがそれぞれ傾動し、それに伴って、前記リンクアームに接続されたダンパがそれぞれ所定角度だけ回動する。
【0042】
大径部58は、略一定径で軸方向(矢印A、B方向)に沿って延在した円柱状に形成され、その外周面には、その周面に沿って複数の歯が刻設された第2ギア部66が設けられ、回転プレート26がケーシング12の第2取付部22に装着された際、駆動ギア24の第2ギア部66に噛合される。これにより、駆動ギア24が回転することで第1ギア部40と噛合された第2ギア部66を介して回転プレート26が所定角度だけ回動することとなる。
【0043】
小径部60は、大径部58に対して小径で、軸方向(矢印A、B方向)に沿って略一定径で延在した円柱状(軸状)に形成される。この小径部60は、ケーシング12における第2取付部22の第2円筒部32に挿入され、第2係合部62が第2係合孔34に挿入される。なお、この小径部60は、中空状の円筒体としてもよい。
【0044】
第2係合部62は、小径部60の端面から軸方向(矢印A方向)に突出し、該小径部60の軸線を中心として周方向に沿って互いに等間隔離間した複数(例えば、3個)の爪部70からなる。この爪部70は、軸部38の軸線側となる半径内方向に傾動するように変形自在に設けられ、その先端部には半径外方向に向かって突出している。
【0045】
そして、回転プレート26がケーシング12の第2取付部22に装着される際、爪部70が第2係合孔34に挿入されることで、前記第2係合孔34の内周面に摺接して半径内方向へと傾動し、その状態でさらに押し込まれることによって前記爪部70がケーシング12の内部に到達して弾発力によって半径外方向へと拡径した後、ケーシング12の内壁面に係合される。
【0046】
これにより、回転プレート26が、第2係合孔34を介して第2取付部22に回転自在に保持される。また、第2取付部22の第2円筒部32は、小径部60の外周面を覆うように設けられ、その先端部が大径部58の端面に当接している。
【0047】
ガイド部64は、大径部58の端面から軸方向(矢印A方向)に突出し、且つ、小径部60の外周面に対して半径外方向に所定間隔離間して形成される。そして、回転プレート26がケーシング12の第2取付部22に装着される際、ガイド部64が前記第2取付部22における第2円筒部32の外周側を覆うように配置されると共に、前記ガイド部64の先端部が、ケーシング12の外壁面12aに対して所定間隔離間している。すなわち、図3Bに示されるように、ガイド部64の軸方向(矢印A、B方向)に沿った長さL1は、小径部60及び第2係合部62を合わせた軸方向(矢印A、B方向)の長さL2より長く形成され(L1>L2)、前記ガイド部64の先端部は、第2係合部62の端部よりもケーシング12側に配置されるため、前記ガイド部64とケーシング12の外壁面12aとの間には所定間隔のクリアランスCL2が設けられる。
【0048】
このガイド部64は、その先端部が前記ケーシング12の外壁面12aに当接することで、回転プレート26の傾動を防止するがたつき防止部として機能する。
【0049】
また、小径部60及び第2係合部62とガイド部64との間に形成される間隙には、第2取付部22の第2円筒部32が挿入されている(図3B参照)。
【0050】
本発明の実施の形態に係るリンク構造が適用された車両用空調装置10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその動作並びに作用効果について説明する。
【0051】
先ず、乗員が車室内に配置された操作レバーを操作することで、該操作レバーに接続されたワイヤ54を介して駆動ギア24がケーシング12に支持された軸部38を中心として所定角度だけ回動する。次に、この駆動ギア24の回動動作に伴って、第1ギア部40に噛合された第2ギア部66を介して回転プレート26が第2取付部22に支持された軸部38を中心として所定角度だけ回動する。
【0052】
その結果、回転プレート26のリンク溝36に係合された複数のリンクアームがそれぞれ傾動し、該リンクアームの端部に支持されたダンパをケーシング12の内部において所定角度だけ回動させる。これにより、例えば、回動したダンパによってケーシング12内の通路における空気の流通状態が制御され、該通路から車室内へと供給される空気の送風量、送風温度が制御される。
【0053】
この際、駆動ギア24は、ワイヤ54の引張作用下に軸部38の軸線が第1取付部20の軸線に対して所定角度だけ傾くことが想定されるが、その場合でも、前記駆動ギア24の傾斜に起因してリブ50の先端部がケーシング12の外壁面12aに当接することでさらなる傾斜が防止される。その結果、駆動ギア24が、その軸部38がケーシング12の外壁面12aに対して平行な取付状態から過度に傾斜してしまうことが防止され、前記駆動ギア24の傾きに起因した動作不良を確実に阻止することが可能となる。その結果、駆動ギア24をケーシング12に対して確実且つ円滑に回動動作させることができる。
【0054】
また、同様に、回転プレート26は、その大径部58及び小径部60の軸線が第2取付部22の軸線に対して傾斜した場合でも、前記回転プレート26の傾斜に起因してガイド部64の先端部がケーシング12の外壁面12aに当接することでさらなる傾斜が防止されると同時に、第2円筒部32の先端が、大径部58の端面に当接することでさらなる傾斜が防止される。その結果、回転プレート26は、そのベース部56がケーシング12の外壁面12aに対して平行な取付状態から過度に傾斜してしまうことが防止され、前記回転プレート26の傾きに起因した動作不良を確実に阻止することが可能となる。その結果、回転プレート26をケーシング12に対して確実且つ円滑に回動動作させることができる。
【0055】
すなわち、駆動ギア24及び回転プレート26がケーシング12に対して傾斜し過ぎてがたつきの生じることが回避され、該駆動ギア24に入力された駆動力を回転プレート26に対して確実且つ円滑に伝達することができる。
【0056】
なお、駆動ギア24及び回転プレート26の傾斜角度は、該駆動ギア24及び回転プレート26の回動動作、駆動ギア24からの駆動力の伝達、回転プレート26への駆動力の伝達に影響を及ぼさない範囲で予め設定され、前記駆動ギア24は前記傾斜角度以上に傾斜してしまうことがないように、リブ50の先端とケーシング12の外壁面12aとの間のクリアランスCL1が設定される。一方、回転プレート26は、前記傾斜角度以上に傾斜してしまうことがないように、ガイド部64の先端とケーシング12の外壁面12aとの間のクリアランスCL2が設定される。
【0057】
すなわち、このクリアランスCL1、CL2をそれぞれ大きく設定すれば、リブ50がケーシング12の外壁面12aに当接するまでに傾斜する駆動ギア24の傾斜角度(がたつき)、ガイド部64がケーシング12の外壁面12aに当接するまでに傾斜する回転プレート26の傾斜角度(がたつき)が共に大きくなり、反対に、前記クリアランスCL1、CL2をそれぞれ小さく設定すれば、前記リブ50がケーシング12の外壁面12aに当接するまでに傾斜する駆動ギア24の傾斜角度(がたつき)、前記ガイド部64がケーシング12の外壁面12aに当接するまでに傾斜する回転プレート26の傾斜角度(がたつき)がそれぞれ小さくなる。換言すれば、リブ50やガイド部64の軸方向(矢印A、B方向)に沿った長さを適宜設定することにより、駆動ギア24及び回転プレート26のがたつき(傾斜角度)を所望量に制御することが可能となる。
【0058】
以上のように、本実施の形態では、駆動ギア24にリブ50を設けると共に、回転プレート26に円筒状のガイド部64を設けることで、ケーシング12を成形する際の金型を複雑化させることなく、前記駆動ギア24及び回転プレート26のがたつき(傾動)を確実に防止することができる。
【0059】
また、上述したような駆動ギア24及び回転プレート26のがたつきを防止するための機構をケーシング12側に設ける場合と比較し、使用される材料(樹脂製材料)の使用量を削減することができるため、車両用空調装置10の軽量化及び製造コストの削減を図ることができる。
【0060】
さらに、ケーシング12の第1取付部20に駆動ギア24を装着する際、該第1取付部20の第1円筒部28が軸部38を挿入する際のガイドとして機能するため、ケーシング12に対する駆動ギア24の組付性を向上できると共に、前記駆動ギア24のがたつきを前記第1円筒部28によってより効果的に防止することができる。
【0061】
さらにまた、回転プレート26では、がたつき防止手段として機能するガイド部64が円筒状に設けられているため、その内部にケーシング12の第2取付部22を構成する第2円筒部32を挿入することで、前記ケーシング12に対する回転プレート26のがたつきをより効果的に防止することができる。
【0062】
またさらに、駆動ギア24に設けられた第1係合部44、回転プレート26に設けられた第2係合部62を、それぞれ第1及び第2取付部20、22における第1及び第2係合孔30、34に係合させることで、ワンタッチで簡便且つ確実に前記駆動ギア24及び回転プレート26をケーシング12へと回転自在に組み付けることができる。すなわち、爪部48、70を有した第1及び第2係合部44、62を利用して組み付けることで、駆動ギア24及び回転プレート26の組付性を向上させることが可能となる。
【0063】
また、駆動ギア24では、ベース部56において入力ピン52とリブ50を略一直線上となるように配置しているため、前記入力ピン52に対して駆動力が入力され該入力ピン52近傍を傾斜させる力が付与された場合でも、効果的に駆動ギア24の傾動(がたつき)を防止することができる。
【0064】
なお、上述した実施の形態においては、駆動ギア24のリブ50を、ケーシング12の外壁面12aから離間させクリアランスCL1を設けると共に、回転プレート26のガイド部64を、前記ケーシング12の外壁面12aから離間させクリアランスCL2を設ける構成としているが、前記リブ50及びガイド部64を前記ケーシング12の外壁面12aに当接させるように構成してもよい。
【0065】
このような構成とすることにより、駆動ギア24及び回転プレート26が常にリブ50及びガイド部64によって傾くことが完全に阻止されているため、前記駆動ギア24及び回転プレート26のがたつきを完全に防止することが可能となる。
【0066】
さらに、上述した実施の形態においては、回転プレート26側に第2係合部62を設け、該第2係合部62をケーシング12の第2係合孔34に挿入することで、前記回転プレート26を前記ケーシング12に対して回転自在に支持可能な構成としているが、これに限定されるものではなく、例えば、図4に示される駆動機構100のように、ケーシング102における第2取付部(軸部)104を円柱状に形成し、前記ケーシング102の外壁面102aに対して所定高さで突出させると共に、前記第2取付部104の端部に第3係合部106を設け、一方、回転プレート108の中心部に、円筒状の第3円筒部110を形成すると共に、該第3円筒部110の内部に、前記第3係合部106の係合される第3係合孔(取付孔)112を設けて前記回転プレート108を前記第2取付部104に対して回転自在に装着するようにしてもよい。
【0067】
このような構成とすることにより、ケーシング102に対して回転プレート108を装着する際、第3円筒部110の内部に第2取付部104を挿入することで、前記第2取付部104と回転プレート108とを同軸上に配置して組み付けることが可能となる。すなわち、第3円筒部110が、第2取付部104を組み付ける際のガイドとして機能するため、ケーシング102と回転プレート108とを簡便且つ確実に組み付けることができ、組付性の向上を図ることができる。
【0068】
また、回転プレート108に設けられた第3係合部106を第3係合孔112に挿入し係合させることで、簡便且つ確実に組み付けることが可能となる。なお、この場合、第3円筒部110が、回転プレート108のがたつき(傾動)を防止する機能を有している。
【0069】
なお、本発明に係る車両用空調装置に用いられるリンク構造は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0070】
10…車両用空調装置 12、102…ケーシング
14、100…駆動機構 20…第1取付部
22、104…第2取付部 24…駆動ギア
26、108…回転プレート 28…第1円筒部
30…第1係合孔 32…第2円筒部
34…第2係合孔 38…軸部
40…第1ギア部 42…アーム部
44…第1係合部 48、70…爪部
50…リブ 52…入力ピン
54…ワイヤ 56…ベース部
58…大径部 60…小径部
62…第2係合部 64…ガイド部
66…第2ギア部 106…第3係合部
110…第3円筒部 112…第3係合孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気通路を内部に有するケースと、該ケース内部に設けられ前記空気通路の連通を切り換えるダンパと、前記ケースに対して回動自在に設けられ、且つ、前記ダンパに接続され該ダンパを駆動するリンク部材とを有する車両用空調装置において、
前記ケースの外壁面には、前記リンク部材が装着されるケース側取付部を備え、前記リンク部材には、前記ケース側取付部に装着されるリンク側取付部と、前記リンク側取付部から前記外壁面の延在方向に沿って離間し、且つ、前記ケース側に向かって延設して前記ケースの外壁面に当接可能ながたつき防止部とを有することを特徴とする車両用空調装置に用いられるリンク構造。
【請求項2】
請求項1記載のリンク構造において、
前記リンク側取付部は、前記ケース側に向かって突出した軸部を有し、前記ケース側取付部は、前記ケースから離間する方向に向かって突出した円筒状の第1の円筒部を有し、前記リンク部材を前記ケースに対して装着する際に、前記軸部が前記第1の円筒部の内部に挿入されることを特徴とする車両用空調装置に用いられるリンク構造。
【請求項3】
請求項2記載のリンク構造において、
前記がたつき防止部は、前記軸部と同心で、且つ、前記第1の円筒部より大径で円筒状に形成された第2の円筒部を有し、前記リンク部材を前記ケースに対して装着する際に、前記円筒部が前記第2の円筒部の内部に挿入されることを特徴とする車両用空調装置に用いられるリンク構造。
【請求項4】
請求項2記載のリンク構造において、
前記がたつき防止部は、前記軸部に対して半径外方向に設けられ、先端に向かって徐々に先細状に形成された突部を有し、前記リンク部材を前記ケースに対して装着した際、前記突部が前記ケースの外壁面に対峙することを特徴とする車両用空調装置に用いられるリンク構造。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか1項に記載のリンク構造において、
前記ケース側取付部は、前記ケースの外壁面に対して突出して形成されると共に、前記がたつき防止部が、前記軸部よりも軸方向に沿って長く形成されることを特徴とする車両用空調装置に用いられるリンク構造。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれか1項に記載のリンク構造において、
前記軸部の先端には、爪部を有し、前記軸部を前記第1の円筒部に挿入した際、前記爪部が前記第1の円筒部の内部に形成された取付孔に係合することを特徴とする車両用空調装置に用いられるリンク構造。
【請求項7】
請求項1記載のリンク構造において、
前記がたつき防止部は、前記リンク側取付部を中心として円筒状に形成された円筒部を有し、前記ケース側取付部は、前記ケースから離間する方向に向かって突出した軸部を有し、前記リンク部材を前記ケースに装着する際に、前記軸部を前記円筒部に挿入することを特徴とする車両用空調装置に用いられるリンク構造。
【請求項8】
請求項7記載のリンク構造において、
前記リンク側取付部は、前記円筒部の内部に開口した取付孔を有すると共に、前記軸部の先端に爪部を有し、前記軸部を前記円筒部へ挿入する際、前記取付孔と前記爪部が係合することを特徴とする車両用空調装置に用いられるリンク構造。
【請求項9】
請求項1、2及び4のいずれか1項に記載のリンク構造において、
前記がたつき防止部は、前記リンク部材に設けられ駆動力の入力される入力部に近接して配置されることを特徴とする車両用空調装置に用いられるリンク構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−71484(P2013−71484A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210035(P2011−210035)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000141901)株式会社ケーヒン (1,140)
【Fターム(参考)】