説明

車両用空調装置のクーリングユニット

【課題】圧縮機停止した際の冷房能力の低下を効果的に抑制しうる車両用空調装置のクーリングユニットを提供する。
【解決手段】クーリングユニット6は、エバポレータ4と、エバポレータ4の下方に配置され、かつエバポレータ4で発生した凝縮水を利用して冷熱を蓄える蓄冷器5とを備えている。エバポレータ4は、冷媒流通管23および隣り合う冷媒流通管23どうしの間に形成された通風間隙25に配置されたフィン27からなり、かつフィン27が全通風間隙25のうち少なくとも一部の通風間隙25に配置されている熱交換コア部13を有する。蓄冷器5が、上方に開口した箱状体31と、箱状体31内に配置されかつエバポレータ4から落下した凝縮水を受ける凝縮水容器32とを備えている。箱状体31の通風方向上流側部分および同下流側部分に通気口39を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、停車時に圧縮機の駆動源であるエンジンを一時的に停止させる車両の空調装置に用いられるクーリングユニットに関する。
【0002】
この明細書および特許請求の範囲において、図2および図3の上下を上下というものとする。
【0003】
また、この明細書および特許請求の範囲において、「コンデンサ」という用語には、通常のコンデンサの他に凝縮部および過冷却部を有するサブクールコンデンサを意味するものとする。
【背景技術】
【0004】
近年、環境保護や自動車の燃費向上などを目的として、信号待ちなどの停車時にエンジンを自動的に停止させる自動車が提案されている。
【0005】
しかしながら、通常の車両用空調装置においては、エンジンを停止させると、エンジンを駆動源とする圧縮機が停止するので、エバポレータに冷媒が供給されなくなり、冷房能力が急激に低下するという問題がある。
【0006】
そこで、このような問題を解決するために、エバポレータに蓄冷機能を付与し、エンジンが停止して圧縮機が停止した際に、エバポレータに蓄えられた冷熱を放冷して車室内を冷却することが考えられている。
【0007】
この種の蓄冷機能付きエバポレータとして、上下方向に間隔をおいて配置された1対のタンクと、両タンク間に設けられた熱交換コア部とを備えており、熱交換コア部が、幅方向を通風方向に向けるとともに長さ方向を上下方向に向けた状態で両タンクの長さ方向に間隔をおいて配置され、かつ上下両端部がそれぞれ両タンクに通じさせられた複数の扁平状冷媒流通管と、幅方向を通風方向に向けるとともに長さ方向を上下方向に向けた状態で両タンクの長さ方向に間隔をおいて配置され、かつ内部に蓄冷材が封入された蓄冷材容器とを有し、蓄冷材容器内の蓄冷材が、冷媒流通管内を流れる冷媒の有する冷熱により冷却されるようになされている蓄冷機能付きエバポレータが提案されている(特許文献1参照)。
【0008】
特許文献1記載の蓄冷機能付きエバポレータを備えた車両用空調装置によれば、圧縮機が作動している通常の冷房時には、冷媒流通管内を流れる冷媒の有する冷熱が、蓄冷材容器内の蓄冷材に伝わって蓄冷材に蓄えられ、圧縮機が停止した際には、蓄冷材容器内の蓄冷材に蓄えられた冷熱が、蓄冷材容器が熱的に接触させられた冷媒流通管を経て熱交換コア部を通過する空気に放冷されるようになっている。
【0009】
ところで、最近では、特許文献1記載の蓄冷機能付きエバポレータを備えた車両用空調装置において、圧縮機停止した際の冷房能力の低下をさらに効果的に低減させることが要求されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第4043776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この発明の目的は、上記要求に応じ、圧縮機停止した際の冷房能力の低下を効果的に抑制しうる車両用空調装置のクーリングユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記目的を達成するために以下の態様からなる。
【0013】
1)長さ方向を上下方向に向けるとともに互いに間隔をおいて配置された複数の冷媒流通管、および隣り合う冷媒流通管どうしの間に形成された通風間隙に配置されたフィンからなり、かつフィンが全通風間隙のうち少なくとも一部の通風間隙に配置されている熱交換コア部を有するエバポレータと、エバポレータの下方に配置され、かつエバポレータで発生した凝縮水を利用して冷熱を蓄える蓄冷器とを備えている車両用空調装置のクーリングユニット。
【0014】
2)蓄冷器が、上方に開口した箱状体と、箱状体内に配置されかつエバポレータから落下した凝縮水を受ける凝縮水容器とを備えており、箱状体の通風方向上流側部分および同下流側部分に通気口が設けられている上記1)記載の車両用空調装置のクーリングユニット。
【0015】
3)蓄冷器が、上下方向に並んで配置された複数の凝縮水容器を備えており、各凝縮水容器の底壁に複数の排水穴が形成され、上下に隣り合う凝縮水容器の排水穴が上方から見てずれている上記2)記載の車両用空調装置のクーリングユニット。
【0016】
4)凝縮水容器の底壁に、通風方向と直角をなす方向にのびる横断面略V字状の複数の凝縮水貯留部が通風方向に並んで形成されており、凝縮水貯留部の底部に、複数の排水穴が凝縮水貯留部の長さ方向に間隔をおいて形成されている上記3)記載の車両用空調装置のクーリングユニット。
【0017】
5)蓄冷器が、上方に開口した箱状体と、箱状体内に配置されかつ蓄冷材が封入されるとともに、内部の蓄冷材にエバポレータから落下した凝縮水の有する冷熱が伝えられる水冷式蓄冷材容器とを備えており、箱状体の通風方向上流側部分および同下流側部分に通気口が設けられている上記1)記載の車両用空調装置のクーリングユニット。
【0018】
6)蓄冷器が、長手方向を通風方向と直角をなす方向に向けるとともに幅方向を通風方向に向けた状態で上下方向に並んで配置された複数の扁平状水冷式蓄冷材容器を備えており、各水冷式蓄冷材容器に、凝縮水を上方から下方に通過させる複数の凝縮水通過部が形成され、上下に隣り合う水冷式蓄冷材容器の凝縮水通過部が上方から見てずれている上記5)記載の車両用空調装置のクーリングユニット。
【0019】
7)上下方向に隣り合う水冷式蓄冷材容器間に通風間隙が形成され、通風間隙にフィンが配置されている上記6)記載の車両用空調装置のクーリングユニット。
【0020】
8)エバポレータの熱交換コア部の全通風間隙のうち一部の複数の通風間隙にフィンが配置され、残りの通風間隙に、蓄冷材が封入されかつ内部の蓄冷材に冷媒流通管内を流れる冷媒の有する冷熱が伝えられる蓄冷材容器が配置されている上記1)〜7)のうちのいずれかに記載の車両用空調装置のクーリングユニット。
【0021】
9)圧縮機と、コンデンサと、減圧器と、上記1)〜8)のうちのいずれかに記載のクーリングユニットと、クーリングユニットが配置される空気通路を有するユニットケースとを備えており、かつ停車時に圧縮機の駆動源であるエンジンを一時的に停止させる車両用空調装置。
【0022】
10)ユニットケースの空気通路が、クーリングユニットに空気を送り、かつクーリングユニットを通過した空気を車両の車室に送るようになされており、空気通路におけるクーリングユニットよりも通風方向上流側に、クーリングユニットのエバポレータの熱交換コア部に空気を送る幹部と、幹部から分岐してクーリングユニットの蓄冷器に空気を送る枝部とが設けられ、ユニットケースに、圧縮機が作動している際に幹部に空気を流し、圧縮機の停止時に、幹部および枝部のうち少なくとも枝部に空気を流す切り替え装置が設けられている上記9)記載の車両用空調装置。
【発明の効果】
【0023】
上記1)〜8)のクーリングユニットによれば、長さ方向を上下方向に向けるとともに互いに間隔をおいて配置された複数の冷媒流通管、および隣り合う冷媒流通管どうしの間に形成された通風間隙に配置されたフィンからなり、かつフィンが全通風間隙のうち少なくとも一部の通風間隙に配置されている熱交換コア部を有するエバポレータと、エバポレータの下方に配置され、かつエバポレータで発生した凝縮水を利用して冷熱を蓄える蓄冷器とを備えているので、圧縮機の作動時にはエバポレータの熱交換コア部に空気を流すことにより、エバポレータの冷媒流通管の表面およびフィンの表面に発生した凝縮水を利用して蓄冷器に冷熱が蓄えられる。したがって、圧縮機の停止時には、蓄冷器に空気を流すことにより、圧縮機の作動時に蓄冷器に蓄えられた冷熱を、車両の車室内の冷却に用いることができることになり、圧縮機停止した際の冷房能力の低下をさらに効果的に抑制することが可能になる。
【0024】
上記2)〜4)のクーリングユニットによれば、圧縮機の作動時に、エバポレータの冷媒流通管の表面およびフィンの表面に発生した低温の凝縮水が、エバポレータから落下して蓄冷器の凝縮水容器に貯められ、圧縮機の停止時には、凝縮水容器に貯められた凝縮水の有する冷熱が車両の車室内の冷却に用いられる。
【0025】
上記3)のクーリングユニットによれば、エバポレータから落下した凝縮水が、下端の凝縮水容器から排水されるまでの時間が比較的長くなり、蓄冷器に比較的多くの冷熱を蓄えることができる。
【0026】
上記4)のクーリングユニットによれば、風上側の通気口を通って箱状体内に入った空気が、凝縮水容器の排水穴を通過することになり、圧縮機の停止時に蓄冷器に空気を流すと、箱状体内に入った空気は隣り合う凝縮水容器間を流れ、凝縮水容器内の凝縮水の有する冷熱が、効率良く空気に伝えられる。
【0027】
上記5)〜7)のクーリングユニットによれば、圧縮機の作動時に、エバポレータの冷媒流通管の表面およびフィンの表面に発生した凝縮水を利用して蓄冷器の水冷式蓄冷材容器内の蓄冷材に冷熱が蓄えられ、圧縮機の停止時には水冷式蓄冷材容器内の蓄冷材の有する冷熱が、車両の車室内の冷却に用いられる。
【0028】
上記6)のクーリングユニットによれば、エバポレータから落下した凝縮水が、下端の水冷式蓄冷材容器の下方に落下するまでの時間が比較的長くなり、水冷式蓄冷材容器内の蓄冷材に比較的多くの冷熱を蓄えることができる。
【0029】
上記7)のクーリングユニットによれば、圧縮機の停止時には、水冷式蓄冷材容器内の蓄冷材の有する冷熱は、フィンを介して風上側の通気口を通って箱状体内に入りかつ隣り合う水冷式蓄冷材容器間の通風間隙を流れる空気に伝えられる。したがって、水冷式蓄冷材容器内の蓄冷材の有する冷熱が、効率良く空気に伝えられる。
【0030】
上記8)のクーリングユニットによれば、圧縮機の作動時には、エバポレータの熱交換コア部の蓄冷材容器内の蓄冷材が、冷媒流通管内を流れる冷媒により冷却されるので、圧縮機の停止時には、蓄冷材容器内の蓄冷材の有する冷熱も車両の車室内の冷却に用いられる。したがって、圧縮機停止した際の冷房能力の低下をさらに効果的に低減させることが可能になる。
【0031】
上記9)の車両用空調装置によれば、上記1)〜8)のクーリングユニットで述べたの同様な効果が得られる。
【0032】
上記10)の車両用空調装置によれば、圧縮機の作動時にはエバポレータの熱交換コア部に空気を流し、圧縮機の停止時には蓄冷器に空気を流すことを比較的簡単に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】この発明のクーリングユニットを用いた車両用空調装置の構成を示す図である。
【図2】図1の車両用空調装置のクーリングユニットの全体構成を示す一部切り欠き斜視図である。
【図3】図2のA−A線拡大断面図である。
【図4】クーリングユニットの他の実施形態を示す図3相当の図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0035】
以下の説明において、通風方向下流側(図2〜図4に矢印Xで示す方向)を前、これと反対側を後というものとする。また、前方から後方を見た際の左右、すなわち図1の左右を左右というものとする。
【0036】
また、以下の説明において、「アルミニウム」という用語には、純アルミニウムの他にアルミニウム合金を含むものとする。
【0037】
さらに、全図面を通じて同一部分および同一物には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0038】
図1は停車時に圧縮機の駆動源であるエンジンを一時的に停止させる車両に用いられる車両用空調装置を示し、図2は図1の車両用空調装置に用いられるクーリングユニットの全体構成を示し、図3は図2のクーリングユニットの要部を示す。
【0039】
図1において、停車時に圧縮機の駆動源であるエンジンを一時的に停止させる車両に用いられる車両用空調装置は、エンジンを駆動源とする圧縮機(1)と、圧縮機(1)で圧縮された冷媒を冷却するコンデンサ(2)(冷媒冷却器)と、コンデンサ(2)で冷却された冷媒を減圧する減圧器としての膨張弁(3)と、減圧された冷媒を蒸発させるエバポレータ(4)、およびエバポレータ(4)の下方に配置され、かつエバポレータ(4)で発生した凝縮水を利用して冷熱を蓄える蓄冷器(5)を有するクーリングユニット(6)と、クーリングユニット(6)が配置されたユニットケース(7)とを備えている。なお、図示は省略したが、車両用空調装置は、気液混相冷媒を貯留して液相と気相とに分離する受液部を有している。
【0040】
クーリングユニット(6)のエバポレータ(4)は、上下方向に間隔をおいて配置された左右方向にのびるアルミニウム製第1ヘッダタンク(11)およびアルミニウム製第2ヘッダタンク(12)と、両ヘッダタンク(11)(12)間に設けられた熱交換コア部(13)とを備えている。
【0041】
図2および図3に示すように、第1ヘッダタンク(11)は、前側(通風方向下流側)に位置する冷媒入口ヘッダ部(14)と、後側(通風方向上流側)に位置しかつ冷媒入口ヘッダ部(14)に一体化された冷媒出口ヘッダ部(15)とを備えている。冷媒入口ヘッダ部(14)の右端部に冷媒入口(16)が設けられ、冷媒出口ヘッダ部(15)の右端部に冷媒出口(17)が設けられている。第2ヘッダタンク(12)は、前側に位置する第1中間ヘッダ部(18)と、後側に位置しかつ第1中間ヘッダ部(18)に一体化された第2中間ヘッダ部(19)とを備えている。第2ヘッダタンク(12)の第1中間ヘッダ部(18)内と第2中間ヘッダ部(19)内とは、両中間ヘッダ部(18)(19)の右端部に跨って接合され、かつ内部が通路となった連通部材(21)を介して通じさせられている。また、第2ヘッダタンク(12)の第1中間ヘッダ部(18)と第2中間ヘッダ部(19)との間には、複数の排水用貫通穴(22)が左右方向に間隔をおいて形成されている。
【0042】
熱交換コア部(13)には、幅方向が通風方向(前後方向)を向くとともに長さ方向が上下方向を向いた複数のアルミニウム押出形材製扁平状冷媒流通管(23)が、左右方向に間隔をおいて並列状に配置されている。すなわち、前後方向に間隔をおいて配置された複数、ここでは2つの冷媒流通管(23)からなる複数の組(24)が左右方向に間隔をおいて配置されており、前後の冷媒流通管(23)よりなる組(24)の隣り合うものどうしの間に通風間隙(25)が形成されている。前側の冷媒流通管(23)の上端部は冷媒入口ヘッダ部(14)に接続されるとともに、同下端部は第1中間ヘッダ部(18)に接続されている。また、後側の冷媒流通管(23)の上端部は冷媒出口ヘッダ部(15)に接続されるとともに、同下端部は第2中間ヘッダ部(19)に接続されている。
【0043】
熱交換コア部(13)における全通風間隙(25)のうち一部の複数の通風間隙(25)でかつ隣接していない通風間隙(25)において、蓄冷材が封入されたアルミニウム製蓄冷材容器(26)が、前後両冷媒流通管(23)に跨るように配置されており、これによりエバポレータ(4)は蓄冷機能を有している。また、残りの通風間隙(25)に、両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートからなるコルゲート状のアウターフィン(27)が、前後両冷媒流通管(23)に跨るように配置されて通風間隙(25)を形成する左右両側の組(24)を構成する前後両冷媒流通管(23)にろう付されている。すなわち、蓄冷材容器(26)が配置された通風間隙(25)の両側の通風間隙(25)にそれぞれアウターフィン(27)が配置されている。また、左右両端の冷媒流通管(23)の組(24)の外側にも両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートからなるコルゲート状アウターフィン(27)が配置されて前後両冷媒流通管(23)にろう付され、さらに左右両端のアウターフィン(27)の外側にアルミニウム製サイドプレート(28)が配置されてアウターフィン(27)にろう付されている。アウターフィン(27)の前側縁部には、前側冷媒流通管(23)の前側縁よりも前方に張り出した外方張り出し部(27a)が設けられている。蓄冷材容器(26)が配置されていない隣接する通風間隙(25)に配置されたアウターフィン(27)の外方張り出し部(27a)間にはアルミニウム製スペーサ(29)が配置されて外方張り出し部(27a)にろう付されている。
【0044】
蓄冷材容器(26)は幅方向が前後方向を向くとともに長さ方向が上下方向を向いた扁平状であり、前側冷媒流通管(23)の前側縁よりも後方に位置し、かつ各組(24)の前後2つの冷媒流通管(23)にろう付された容器本体部(26a)と、容器本体部(26a)の前側縁部(風下側縁部)に連なるとともに前側冷媒流通管(23)の前側縁よりも前方(通風方向外側)に張り出すように設けられた外方張り出し部(26b)とを備えている。蓄冷材容器(26)の容器本体部(26a)の左右方向の寸法は全体に等しくなっている。蓄冷材容器(26)の外方張り出し部(26b)は、上下方向の寸法が容器本体部(26a)の上下方向の寸法と等しく、かつ左右方向の寸法が容器本体部(26a)の左右方向の寸法よりも大きくなっており、容器本体部(26a)に対して左右方向外方に膨出している。外方張り出し部(26b)の左右方向の寸法は、冷媒流通管(23)の左右方向の寸法である管高さの2倍に、蓄冷材容器(26)の容器本体部(26a)の左右方向の寸法を加えた高さと等しくなっている。そして、蓄冷材容器(26)の外方張り出し部(26b)の左右両側面に、蓄冷材容器(26)が配置された通風間隙(25)の両隣の通風間隙(25)に配置されたアウターフィン(27)の外方張り出し部(27a)がろう付されている。
【0045】
蓄冷材容器(26)内へ充填される蓄冷材としては、凝固点が5〜10℃程度に調整されたパラフィン系潜熱蓄冷材が用いられる。具体的には、ペンタデカン、テトラデカンなどが用いられる。また、蓄冷材容器(26)の内容積に対する封入された蓄冷材の体積の比率である蓄冷材充填率は70〜80%である。当該充填率は、常温におけるものである。
【0046】
蓄冷器(5)は、上方に開口した箱状体(31)と、箱状体(31)内に上下方向に並んで配置されかつエバポレータ(4)で発生した凝縮水を受ける複数の凝縮水容器(32)とを備えており、エバポレータ(4)の第2ヘッダタンク(12)の上部を除いた部分が箱状体(31)内に嵌め入れられている。箱状体(31)は、前後両壁(31a)および左右両壁(31b)を有しており、後壁(31a)(通風方向上流側部分)および前壁(31a)(通風方向下流側部分)に、それぞれ複数の通気口(39)が左右方向に間隔をおいて形成されている。図示は省略したが、箱状体(31)の底壁には排水口が設けられている。
【0047】
蓄冷器(5)の凝縮水容器(32)の底壁に、通風方向と直角をなす方向にのびる横断面略V字状の複数の凝縮水貯留部(33)が通風方向に並んで形成されており、凝縮水貯留部(33)の底部に、複数の排水穴(34)が凝縮水貯留部(33)の長さ方向に間隔をおいて形成されている。上下に隣り合う凝縮水容器(32)の排水穴(34)は、上方から見てずれている。
【0048】
クーリングユニット(6)が配置されている車両用空調装置のユニットケース(7)は、クーリングユニット(6)に空気を送り、かつクーリングユニット(6)を通過した空気を車両の車室に送る空気通路(35)を有している。空気通路(35)におけるクーリングユニット(6)よりも通風方向上流側には、クーリングユニット(6)のエバポレータ(4)の熱交換コア部(13)に空気を送る幹部(36)と、幹部(36)から分岐してクーリングユニット(6)の蓄冷器(5)に空気を送る枝部(37)とが設けられている。ユニットケース(7)には、圧縮機(1)が作動している際に幹部(36)に空気を流し、圧縮機の停止時に、幹部(36)および枝部(37)のうち少なくとも枝部(37)、ここでは幹部(36)および枝部(37)の両方に空気を流す切り替え装置(38)が設けられている。
【0049】
上述した車両用空調装置において、圧縮機(1)が作動している場合には、切り替え装置(38)によって、ユニットケース(7)の空気通路(35)の幹部(36)のみに空気が流される。圧縮機(1)で圧縮されてコンデンサ(2)および膨張弁(3)を通過した低圧の気液混相の2相冷媒は、冷媒入口(16)を通ってエバポレータ(4)の冷媒入口ヘッダ部(14)内に入り、前側の冷媒流通管(23)を通って第1中間ヘッダ部(18)内に流入する。第1中間ヘッダ部(18)内に入った冷媒は、連通部材(21)を通って第2中間ヘッダ部(19)内に入った後、後側の冷媒流通管(23)を通って出口ヘッダ部(15)内に流入し、冷媒出口(17)から流出する。そして、冷媒が冷媒流通管(23)内を流れる間に、通風間隙(25)を通過する空気と熱交換をし、冷媒は気相となって流出し、空気は冷却される。冷却された空気は空気通路(35)を通って車両の車室内に送られる。このとき、冷媒流通管(23)内を流れる冷媒の有する冷熱によって蓄冷材容器(26)内の蓄冷材が冷却されて蓄冷材に冷熱が蓄えられる。
【0050】
また、圧縮機の作動時には、エバポレータ(4)の冷媒流通管(23)およびアウターフィン(27)の表面に発生した凝縮水が第2ヘッダタンク(12)上に流下し、第1中間ヘッダ部(18)と第2中間ヘッダ部(19)との間の排水用貫通穴(22)を通って、蓄冷器(5)の上端の凝縮水容器(32)内に落下する。上端の凝縮水容器(32)内に落下した凝縮水は、一旦凝縮水貯留部(33)内に貯められた後、排水穴(34)を通って順次下方の凝縮水容器(32)に落下し、下端の凝縮水容器(32)から箱状体(31)の底壁上に落下して、箱状体(31)の排水口から排水される。
【0051】
圧縮機(1)が停止した場合には、切り替え装置(38)によって、ユニットケース(7)の空気通路(35)の幹部(36)および枝部(37)の両方に空気が流される。空気通路(35)の幹部(36)に流された空気は、エバポレータ(4)のアウターフィン(27)が配置されている通風間隙(25)を通り、車両の車室内に送られる。このとき、蓄冷材容器(26)の容器本体部(26a)および外方張り出し部(26b)内の蓄冷材の有する冷熱が、蓄冷材容器(26)の左右両側壁に伝えられ、冷媒流通管(23)を通過し、当該冷媒流通管(23)にろう付されているアウターフィン(27)を介して蓄冷材容器(26)が配置されている通風間隙(25)の両隣の通風間隙(25)を通過する空気に伝えられ、当該空気が冷却される。
【0052】
一方、空気通路(35)の枝部(37)に流された空気は、蓄冷器(5)の箱状体(31)における通風方向上流側の通気口(39)を通って箱状体(31)内に入り、上下両端の凝縮水容器(32)の上下方向外側および隣り合う凝縮水容器(32)間を通り、通風方向下流側の通気口(39)を通って車両の車室内に送られる。このとき、凝縮水が、上端の凝縮水容器(32)から下端の凝縮水容器(32)を通過して箱状体(31)の底壁上に落下するまでの間に、凝縮水の有する冷熱が箱状体(31)を通過する空気に伝えられ、当該空気が冷却される。
【0053】
したがって、車両の車室内には冷却した空気が送られるので、圧縮機が停止して冷媒流通管を冷媒が流れなくなったとしても、冷房能力の急激な低下が防止される。
【0054】
上記実施形態において、エバポレータ(4)の熱交換コア部(13)の一部分の通風間隙(25)に蓄冷材容器(25)が配置されているが、これに限定されるものではなく、すべての通風間隙(25)にアウターフィン(27)が配置されていてもよい。
【0055】
図4は蓄冷器の変形例を示す。
【0056】
図4に示す蓄冷器(40)の場合、箱状体(31)内に、蓄冷材が封入されるとともに、内部の蓄冷材に凝縮水の有する冷熱が伝えられる複数の水冷式蓄冷材容器(41)が、上下方向に間隔をおいて配置されている。水冷式蓄冷材容器(41)は、長手方向を通風方向と直角をなす方向に向けるとともに幅方向を通風方向に向けた扁平状である。各水冷式蓄冷材容器(41)に、凝縮水を上方から下方に通過させる複数の凝縮水通過部(42)が、蓄冷材が外部に漏れないように形成され、上下に隣り合う水冷式蓄冷材容器(41)の凝縮水通過部(42)が上方または下方から見てずれている。また、上下方向に隣り合う水冷式蓄冷材容器(41)間に通風間隙(43)が形成され、通風間隙(43)に、空気を通風方向(図4の右方から左方)に流すフィン(44)が配置されている。
【0057】
水冷式蓄冷材容器(41内へ充填される蓄冷材としては、凝固点が5〜10℃程度に調整されたパラフィン系潜熱蓄冷材が用いられる。具体的には、ペンタデカン、テトラデカンなどが用いられる。
【0058】
図4に示す蓄冷器(40)を用いたクーリングユニット(6)を備えた車両用空調装置において、圧縮機(1)が作動している場合には、切り替え装置(38)によって、ユニットケース(7)の空気通路(35)の幹部(36)のみに空気が流される。圧縮機(1)で圧縮されてコンデンサ(2)および膨張弁(3)を通過した低圧の気液混相の2相冷媒は、冷媒入口(16)を通ってエバポレータ(4)の冷媒入口ヘッダ部(14)内に入り、前側の冷媒流通管(23)を通って第1中間ヘッダ部(18)内に流入する。第1中間ヘッダ部(18)内に入った冷媒は、連通部材(21)を通って第2中間ヘッダ部(19)内に入った後、後側の冷媒流通管(23)を通って出口ヘッダ部(15)内に流入し、冷媒出口(17)から流出する。そして、冷媒が冷媒流通管(23)内を流れる間に、通風間隙(25)を通過する空気と熱交換をし、冷媒は気相となって流出し、空気は冷却される。冷却された空気は空気通路(35)を通って車両の車室内に送られる。このとき、冷媒流通管(23)内を流れる冷媒の有する冷熱によって蓄冷材容器(26)内の蓄冷材が冷却されて蓄冷材に冷熱が蓄えられる。
【0059】
また、圧縮機の作動時には、冷媒流通管(23)およびアウターフィン(27)の表面に発生した凝縮水が第2ヘッダタンク(12)上に流下し、第1中間ヘッダ部(18)と第2中間ヘッダ部(19)との間の排水穴を通って、蓄冷器(40)の上端の水冷式蓄冷材容器(41)上に落下する。上端の水冷式蓄冷材容器(41)上に落下した凝縮水は、排水穴(42)を通って順次下方の水冷式蓄冷材容器(41)上に落下し、下端の水冷式蓄冷材容器(41)から箱状体(31)の底壁上に落下して、箱状体(31)の排水口から排水される。
【0060】
圧縮機(1)が停止した場合には、切り替え装置(38)によって、ユニットケース(7)の空気通路(35)の幹部(36)および枝部(37)の両方に空気が流される。空気通路(35)の幹部(36)に流された空気は、エバポレータ(4)のアウターフィン(27)が配置されている通風間隙(25)を通り、車両の車室内に送られる。このとき、蓄冷材容器(26)の容器本体部(26a)および外方張り出し部(26b)内の蓄冷材の有する冷熱が、蓄冷材容器(26)の左右両側壁に伝えられ、冷媒流通管(23)を通過し、当該冷媒流通管(23)にろう付されているアウターフィン(27)を介して蓄冷材容器(26)が配置されている通風間隙(25)の両隣の通風間隙(25)を通過する空気に伝えられ、当該空気が冷却される。
【0061】
一方、空気通路(35)の枝部(37)に流された空気は、蓄冷器(40)の箱状体(31)における通風方向上流側の通気口を通って箱状体(31)内に入り、上下両端の水冷式蓄冷材容器(41)の上下方向外側および隣り合う水冷式蓄冷材容器(41)間の通風間隙(43)を通り、通風方向下流側の通気口を通って車両の車室内に送られる。このとき、水冷式蓄冷材容器(41)内の蓄冷材の有する冷熱が、水冷式蓄冷材容器(41)の上下両壁に伝えられ、上下両壁から上下両端の水冷式蓄冷材容器(41)の上下方向外側を流れる空気に伝えられるとともに、フィン(44)を介して通風間隙(43)を流れる空気に伝えられ、当該空気が冷却される。
【0062】
したがって、車両の車室内には冷却した空気が送られるので、圧縮機が停止して冷媒流通管を冷媒が流れなくなったとしても、冷房能力の急激な低下が防止される。
【産業上の利用可能性】
【0063】
この発明によるクーリングユニットは、停車時に圧縮機の駆動源であるエンジンを一時的に停止させる車両の車両用空調装置を構成する冷凍サイクルに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0064】
(1):圧縮機
(2):コンデンサ
(3):膨張弁(減圧器)
(4):エバポレータ
(5):蓄冷器
(6):クーリングユニット
(7):ユニットケース
(13):熱交換コア部
(23):冷媒流通管
(26):蓄冷材容器
(27):アウターフィン
(31):箱状体
(32):凝縮水容器
(33):凝縮水貯留部
(34):排水穴
(35):空気通路
(36):幹部
(37):枝部
(38):切り替え装置
(39):通気口
(40):蓄冷器
(41):水冷式蓄冷材容器
(42):凝縮水通過部
(43):通風間隙
(44):フィン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長さ方向を上下方向に向けるとともに互いに間隔をおいて配置された複数の冷媒流通管、および隣り合う冷媒流通管どうしの間に形成された通風間隙に配置されたフィンからなり、かつフィンが全通風間隙のうち少なくとも一部の通風間隙に配置されている熱交換コア部を有するエバポレータと、エバポレータの下方に配置され、かつエバポレータで発生した凝縮水を利用して冷熱を蓄える蓄冷器とを備えている車両用空調装置のクーリングユニット。
【請求項2】
蓄冷器が、上方に開口した箱状体と、箱状体内に配置されかつエバポレータから落下した凝縮水を受ける凝縮水容器とを備えており、箱状体の通風方向上流側部分および同下流側部分に通気口が設けられている請求項1記載の車両用空調装置のクーリングユニット。
【請求項3】
蓄冷器が、上下方向に並んで配置された複数の凝縮水容器を備えており、各凝縮水容器の底壁に複数の排水穴が形成され、上下に隣り合う凝縮水容器の排水穴が上方から見てずれている請求項2記載の車両用空調装置のクーリングユニット。
【請求項4】
凝縮水容器の底壁に、通風方向と直角をなす方向にのびる横断面略V字状の複数の凝縮水貯留部が通風方向に並んで形成されており、凝縮水貯留部の底部に、複数の排水穴が凝縮水貯留部の長さ方向に間隔をおいて形成されている請求項3記載の車両用空調装置のクーリングユニット。
【請求項5】
蓄冷器が、上方に開口した箱状体と、箱状体内に配置されかつ蓄冷材が封入されるとともに、内部の蓄冷材にエバポレータから落下した凝縮水の有する冷熱が伝えられる水冷式蓄冷材容器とを備えており、箱状体の通風方向上流側部分および同下流側部分に通気口が設けられている請求項1記載の車両用空調装置のクーリングユニット。
【請求項6】
蓄冷器が、長手方向を通風方向と直角をなす方向に向けるとともに幅方向を通風方向に向けた状態で上下方向に並んで配置された複数の扁平状水冷式蓄冷材容器を備えており、各水冷式蓄冷材容器に、凝縮水を上方から下方に通過させる複数の凝縮水通過部が形成され、上下に隣り合う水冷式蓄冷材容器の凝縮水通過部が上方から見てずれている請求項5記載の車両用空調装置のクーリングユニット。
【請求項7】
上下方向に隣り合う水冷式蓄冷材容器間に通風間隙が形成され、通風間隙にフィンが配置されている請求項6記載の車両用空調装置のクーリングユニット。
【請求項8】
エバポレータの熱交換コア部の全通風間隙のうち一部の複数の通風間隙にフィンが配置され、残りの通風間隙に、蓄冷材が封入されかつ内部の蓄冷材に冷媒流通管内を流れる冷媒の有する冷熱が伝えられる蓄冷材容器が配置されている請求項1〜7のうちのいずれかに記載の車両用空調装置のクーリングユニット。
【請求項9】
圧縮機と、コンデンサと、減圧器と、請求項1〜8のうちのいずれかに記載のクーリングユニットと、クーリングユニットが配置される空気通路を有するユニットケースとを備えており、かつ停車時に圧縮機の駆動源であるエンジンを一時的に停止させる車両用空調装置。
【請求項10】
ユニットケースの空気通路が、クーリングユニットに空気を送り、かつクーリングユニットを通過した空気を車両の車室に送るようになされており、空気通路におけるクーリングユニットよりも通風方向上流側に、クーリングユニットのエバポレータの熱交換コア部に空気を送る幹部と、幹部から分岐してクーリングユニットの蓄冷器に空気を送る枝部とが設けられ、ユニットケースに、圧縮機が作動している際に幹部に空気を流し、圧縮機の停止時に、幹部および枝部のうち少なくとも枝部に空気を流す切り替え装置が設けられている請求項9記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−18299(P2013−18299A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150718(P2011−150718)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(512025676)株式会社ケーヒン・サーマル・テクノロジー (25)
【Fターム(参考)】