説明

車両用空調装置のクーリングユニット

【課題】圧縮機停止した際の冷房能力の低下を効果的に抑制しうるとともに、蓄冷材容器に発生した凝縮水を効率良く排水しうる車両用空調装置のクーリングユニットを提供する。
【解決手段】クーリングユニットは、蓄冷機能付きエバポレータ2と、蓄冷機能付きエバポレータ2の下方に配置された排水ケース3とを備えている。蓄冷機能付きエバポレータ2の蓄冷材容器18およびアウターフィン19が、それぞれ冷媒流通管15よりも風下側に張り出すように設けられた外方張り出し部24,27を有する。排水ケース3が、蓄冷機能付きエバポレータ2で発生した凝縮水を、蓄冷材容器18の外方張り出し部24の下端およびアウターフィン19の外方張り出し部27の下端のうちの少なくともいずれか一方から排出する凝縮水排水部32を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、停車時に圧縮機の駆動源であるエンジンを一時的に停止させる車両の空調装置に用いられるクーリングユニットに関する。
【0002】
この明細書および特許請求の範囲において、図1および図3の上下を上下というものとする。
【0003】
また、この明細書および特許請求の範囲において、「コンデンサ」という用語には、通常のコンデンサの他に凝縮部および過冷却部を有するサブクールコンデンサも意味するものとする。
【背景技術】
【0004】
近年、環境保護や自動車の燃費向上などを目的として、信号待ちなどの停車時にエンジンを自動的に停止させる自動車が提案されている。
【0005】
しかしながら、通常の車両用空調装置においては、エンジンを停止させると、エンジンを駆動源とする圧縮機が停止するので、エバポレータに冷媒が供給されなくなり、冷房能力が急激に低下するという問題がある。
【0006】
そこで、このような問題を解決するために、エバポレータに蓄冷機能を付与し、エンジンが停止して圧縮機が停止した際に、エバポレータに蓄えられた冷熱を放冷して車室内を冷却することが考えられている。
【0007】
この種の蓄冷機能付きエバポレータとして、上下方向に間隔をおいて配置された1対のヘッダタンクと、両ヘッダタンク間に設けられた熱交換コア部とを備えており、熱交換コア部が、幅方向を通風方向に向けるとともに長さ方向を上下方向に向けた状態で両ヘッダタンクの長さ方向に間隔をおいて配置され、かつ上下両端部がそれぞれ両ヘッダタンクに通じさせられた複数の扁平状冷媒流通管と、幅方向を通風方向に向けるとともに長さ方向を上下方向に向けた状態で隣り合う冷媒流通管どうしの間に形成された複数の通風間隙の少なくとも一部に配置され、かつ内部に蓄冷材が封入された蓄冷材容器とを有し、蓄冷材容器内の蓄冷材が、冷媒流通管内を流れる冷媒の有する冷熱により冷却されるようになされている蓄冷機能付きエバポレータが提案されている(特許文献1参照)。
【0008】
特許文献1記載の蓄冷機能付きエバポレータは、通常のエバポレータの場合と同様に、下側のヘッダタンクが、発生した凝縮水を受ける排水ケース内に嵌め入れられて車両用空調装置のクーリングユニットとして用いられる(たとえば特許文献2参照)。
【0009】
特許文献1記載の蓄冷機能付きエバポレータを備えた車両用空調装置によれば、圧縮機が作動している通常の冷房時には、冷媒流通管内を流れる冷媒の有する冷熱が、蓄冷材容器内の蓄冷材に伝わって蓄冷材に蓄えられ、圧縮機が停止した際には、蓄冷材容器内の蓄冷材に蓄えられた冷熱が、蓄冷材容器が熱的に接触させられた冷媒流通管を経て熱交換コア部を通過する空気に放冷されるようになっている。
【0010】
ところで、最近では、特許文献1記載の蓄冷機能付きエバポレータを備えた車両用空調装置において、圧縮機が停止した際の冷房能力の低下をさらに効果的に低減させることが要求されるようになっている。
【0011】
このような要求に応え、圧縮機が停止した際の冷房能力の低下をさらに効果的に低減しうる蓄冷機能付きエバポレータとして、本出願人は、先に、特許文献1記載の蓄冷機能付きエバポレータにおいて、蓄冷材容器が、冷媒流通管に接合された容器本体部と、容器本体部の風下側縁部に連なるとともに冷媒流通管よりも風下側に張り出すように設けられた外方張り出し部とを備えている蓄冷機能付きエバポレータを提案した(特許文献3参照)。
【0012】
しかしながら、特許文献3記載の蓄冷機能付きエバポレータを車両用空調装置のクーリングユニットとして用いるために、下側のヘッダタンクを凝縮水を受ける排水ケース内に嵌め入れたとしても、蓄冷材容器の外方張り出し部に発生した凝縮水を、効率良く排水することができないおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第4043776号公報
【特許文献2】特許第3287100号公報
【特許文献3】特開2010−203748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
この発明の目的は、圧縮機停止した際の冷房能力の低下を効果的に抑制しうるとともに、蓄冷材容器に発生した凝縮水を効率良く排水しうる車両用空調装置のクーリングユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上記目的を達成するために以下の態様からなる。
【0016】
1)長さ方向を上下方向に向けるとともに互いに間隔をおいて配置された複数の冷媒流通管、隣り合う冷媒流通管どうしの間に形成された複数の通風間隙の少なくとも一部に配置され、かつ内部に蓄冷材が封入された蓄冷材容器、および蓄冷材容器が配置されていない通風間隙に配置されたアウターフィンを有する蓄冷機能付きエバポレータと、蓄冷機能付きエバポレータの下方に配置された排水ケースとを備えたクーリングユニットにおいて、
蓄冷機能付きエバポレータの蓄冷材容器およびアウターフィンが、それぞれ冷媒流通管よりも風下側に張り出すように設けられた外方張り出し部を有し、排水ケースが、蓄冷機能付きエバポレータで発生した凝縮水を、蓄冷材容器の外方張り出し部の下端およびアウターフィンの外方張り出し部の下端のうちの少なくともいずれか一方から排出する凝縮水排水部を備えている車両用空調装置のクーリングユニット。
【0017】
2)凝縮水排水部が、蓄冷材容器の外方張り出し部の下端およびアウターフィンの外方張り出し部の下端のうちの少なくともいずれか一方に接触し、または近接し、かつ蓄冷材容器の外方張り出し部の下端およびアウターフィンの外方張り出し部の下端のうちの少なくともいずれか一方から凝縮水を誘引する誘引部を有している上記1)記載の車両用空調装置のクーリングユニット。
【0018】
3)凝縮水排水部の誘引部の先端に弾性体が設けられ、弾性体が蓄冷材容器の外方張り出し部の下端およびアウターフィンの外方張り出し部の下端のうちの少なくともいずれか一方に接触している上記2)記載の車両用空調装置のクーリングユニット。
【0019】
4)凝縮水排水部の誘引部の先端と、蓄冷材容器の外方張り出し部の下端およびアウターフィンの外方張り出し部の下端との間に隙間が設けられ、当該隙間の上下方向の間隔が3mm以下である上記2)記載の車両用空調装置のクーリングユニット。
【0020】
5)凝縮水排水部が、排水ケースの風下側を向いた外面に設けられた風下側突出部と、風下側突出部に設けられた上方突出部とを有しており、風下側突出部に貫通状の排水穴が形成され、上方突出部が誘引部となっている上記2)〜4)のうちのいずれかに記載の車両用空調装置のクーリングユニット。
【0021】
6)蓄冷機能付きエバポレータが、上下方向に間隔をおいて設けられかつ冷媒流通管の上下両端が接続された上下のヘッダタンクを備え、排水ケースが、風下側および風上側の側壁と両側壁の下端部どうしを連結する底壁とを有するとともに、下ヘッダタンクが嵌め入れられるケース本体を備えており、ケース本体が下ヘッダタンクから落下した凝縮水を排水するようになされ、ケース本体の風下側壁の外面に凝縮水排水部が設けられている上記5)記載の車両用空調装置のクーリングユニット。
【0022】
7)圧縮機と、コンデンサと、減圧器と、上記1)〜6)のうちのいずれかに記載のクーリングユニットとを備えており、かつ停車時に圧縮機の駆動源であるエンジンを一時的に停止させる車両用空調装置。
【発明の効果】
【0023】
上記1)〜6)のクーリングユニットによれば、蓄冷機能付きエバポレータの蓄冷材容器およびアウターフィンが、それぞれ冷媒流通管よりも風下側に張り出すように設けられた外方張り出し部を有しているので、1つの蓄冷材容器内に封入しうる蓄冷材の量を、特許文献1記載の蓄冷機能付きエバポレータの蓄冷材容器に比べて、外方張り出し部の分だけ多くすることができる。したがって、熱交換コア部の寸法を変えることなく蓄冷材容器に封入される蓄冷材の量を多くした場合にも、蓄冷材容器の数を増やしたり、蓄冷材容器全体の容器高さを全体に高くしたりする必要はなく、上記特許文献1記載の蓄冷機能付きエバポレータに比べて通風間隙の空気の通過面積の減少を抑制することが可能になって、通気抵抗の上昇を抑制することができる。しかも、排水ケースが、蓄冷機能付きエバポレータで発生した凝縮水を、蓄冷材容器の外方張り出し部の下端およびアウターフィンの外方張り出し部の下端のうちの少なくともいずれか一方から排出する凝縮水排水部を備えているので、蓄冷材容器およびアウターフィンの外方張り出し部で発生した凝縮水を効率良く排水することが可能になる。
【0024】
上記2)〜6)のクーリングユニットによれば、凝縮水排水部が、蓄冷材容器の外方張り出し部の下端およびアウターフィンの外方張り出し部の下端のうちの少なくともいずれか一方に接触し、または近接し、かつ蓄冷材容器の外方張り出し部の下端およびアウターフィンの外方張り出し部の下端のうちの少なくともいずれか一方から凝縮水を誘引する誘引部を有しているので、蓄冷材容器およびアウターフィンの外方張り出し部で発生した凝縮水は、下方に流れて蓄冷材容器の外方張り出し部の下端およびアウターフィンの外方張り出し部の下端に至った後、キャピラリ効果により誘引部に導かれ、凝縮水排水部から排水される。したがって、蓄冷材容器およびアウターフィンの外方張り出し部で発生した凝縮水を効率良く排水することが可能になる。
【0025】
上記7)の車両用空調装置によれば、上記1)〜6)のクーリングユニットで述べたの同様な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1の車両用空調装置のクーリングユニットの全体構成を示す一部切り欠き斜視図である。
【図2】図1のA−A線拡大断面図である。
【図3】図1のB−B線拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0028】
以下の説明において、通風方向下流側(図1〜図3に矢印Xで示す方向)を前、これと反対側を後というものとする。また、前方から後方を見た際の左右、すなわち図1の左右を左右というものとする。
【0029】
また、以下の説明において、「アルミニウム」という用語には、純アルミニウムの他にアルミニウム合金を含むものとする。
【0030】
図1は停車時に圧縮機の駆動源であるエンジンを一時的に停止させる車両の空調装置に用いられるクーリングユニットの全体構成を示し、図2および図3は図1のクーリングユニットの要部を示す。
【0031】
図1において、停車時に圧縮機の駆動源であるエンジンを一時的に停止させる車両の車両用空調装置に用いられるクーリングユニット(1)は、蓄冷機能付きエバポレータ(2)と、蓄冷機能付きエバポレータ(2)の下方に配置され、かつエバポレータ(2)で発生した凝縮水を排水する排水ケース(3)とを備えている。
【0032】
蓄冷機能付きエバポレータ(2)は、上下方向に間隔をおいて配置された左右方向にのびるアルミニウム製第1ヘッダタンク(4)およびアルミニウム製第2ヘッダタンク(5)と、両ヘッダタンク(3)(4)間に設けられた熱交換コア部(6)とを備えている。
【0033】
第1ヘッダタンク(4)は、前側(通風方向下流側)に位置する風下側上ヘッダ部(7)と、後側(通風方向上流側)に位置しかつ風下側上ヘッダ部(7)に一体化された風上側上ヘッダ部(8)とを備えている。風下側上ヘッダ部(7)の右端部に冷媒入口(9)が設けられ、風上側上ヘッダ部(8)の右端部に冷媒出口(11)が設けられている。第2ヘッダタンク(5)は、前側に位置する風下側下ヘッダ部(12)と、後側に位置しかつ風下側下ヘッダ部(12)に一体化された風上側下ヘッダ部(13)とを備えている。第2ヘッダタンク(5)の風下側下ヘッダ部(12)内と風上側下ヘッダ部(13)内とは、両中間ヘッダ部(12)(13)の右端部に跨って接合され、かつ内部が通路となった連通部材(14)を介して通じさせられている。第2ヘッダタンク(5)の前後両側面に上下方向に伸びる排水溝(図示略)が形成されるとともに、両下ヘッダ部(12)(13)間に排水穴(5a)が貫通状に形成されている(図3参照)。また、図示は省略したが、第2ヘッダタンク(5)には、第2ヘッダタンク(5)上に落下した凝縮水を排水溝および排水穴(5a)に案内する案内部が設けられている。
【0034】
図1および図2に示すように、熱交換コア部(6)には、長手方向が上下方向を向くとともに幅方向が通風方向(前後方向)を向いた複数のアルミニウム押出形材製扁平状冷媒流通管(15)が、左右方向に間隔をおいて並列状に配置されている。ここでは、前後方向に間隔をおいて配置された2つの冷媒流通管(15)からなる複数の組(16)が左右方向に間隔をおいて配置されており、前後の冷媒流通管(15)よりなる組(16)の隣り合うものどうしの間に通風間隙(17)が形成されている。前側の冷媒流通管(15)の上端部は風下側上ヘッダ部(7)に接続されるとともに、同下端部は風下側下ヘッダ部(12)に接続されている。また、後側の冷媒流通管(15)の上端部は風上側上ヘッダ部(8)に接続されるとともに、同下端部は風上側下ヘッダ部(13)に接続されている。
【0035】
熱交換コア部(6)における全通風間隙(17)のうち一部の複数の通風間隙(17)でかつ隣接していない通風間隙(17)において、蓄冷材(図示略)が封入されたアルミニウム製蓄冷材容器(18)が、前後両冷媒流通管(15)に跨るように配置されている。また、残りの通風間隙(17)、すなわち蓄冷材容器(18)が配置されていない通風間隙(17)に、両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートからなり、かつ前後方向にのびる波頂部、前後方向にのびる波底部、および波頂部と波底部とを連結する連結部よりなるコルゲート状のアウターフィン(19)が、前後両冷媒流通管(15)に跨るように配置されて通風間隙(17)を形成する左右両側の組(16)を構成する前後両冷媒流通管(15)にろう付されている。すなわち、蓄冷材容器(18)が配置された通風間隙(17)の両側の通風間隙(17)にそれぞれアウターフィン(19)が配置されている。また、左右両端の冷媒流通管(15)の組(16)の外側にも両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートからなるアウターフィン(19)が配置されて前後両冷媒流通管(15)にろう付され、さらに左右両端のアウターフィン(19)の外側にアルミニウム製サイドプレート(21)が配置されてアウターフィン(19)にろう付されている。左右両端のアウターフィン(19)とサイドプレート(21)との間も通風間隙となっている。
【0036】
蓄冷材容器(18)は幅方向を前後方向に向けた扁平状であって、2枚の略縦長方形状アルミニウム板(22)の周縁部どうしをろう付することにより形成されている。蓄冷材容器(18)は、前側冷媒流通管(15)の前側縁よりも後方に位置し、かつ各組(16)の前後2つの冷媒流通管(15)にろう付された容器本体部(23)と、容器本体部(23)の前側縁部(風下側縁部)に連なるとともに前側冷媒流通管(15)の前側縁よりも前方(通風方向外側)に張り出すように設けられた外方張り出し部(24)とを備えている。蓄冷材容器(18)の容器本体部(23)の左右方向の寸法は全体に等しくなっている。蓄冷材容器(18)の外方張り出し部(24)は、上下方向の寸法が容器本体部(23)の上下方向の寸法と等しく、かつ左右方向の寸法が容器本体部(23)の左右方向の寸法よりも大きくなっており、容器本体部(23)に対して左右方向外方に膨出している。外方張り出し部(24)の左右方向の寸法は、冷媒流通管(15)の左右方向の寸法である管高さの2倍に、蓄冷材容器(18)の容器本体部(23)の左右方向の寸法を加えた高さと等しくなっている。
【0037】
蓄冷材容器(18)内には、容器本体部(23)の後端部から外方張り出し部(24)の前端部に至るアルミニウム製インナーフィン(25)が、上下方向のほぼ全体にわたって配置されている。インナーフィン(25)は、前後方向にのびる波頂部、前後方向にのびる波底部、および波頂部と波底部とを連結する連結部よりなるコルゲート状である。インナーフィン(25)のフィン高さは全体に等しく、蓄冷材容器(18)の容器本体部(23)の左右両側壁内面にろう付されている。
【0038】
蓄冷材容器(18)内へ充填される蓄冷材としては、凝固点が5〜10℃程度に調整されたパラフィン系潜熱蓄冷材が用いられる。具体的には、ペンタデカン、テトラデカンなどが用いられる。蓄冷材は、蓄冷材容器(18)の上端近傍まで存在するように蓄冷材容器(18)内に封入されている。なお、蓄冷材容器(18)の強度は、通常の使用環境温度範囲、たとえば−40〜90℃の範囲内においては、液相状態の蓄冷材が密度変化するとともに、蓄冷材容器(18)内に残存している空気が熱膨張することにより内圧が上昇したとしても、破損しないような強度に設計されている。
【0039】
アウターフィン(19)は、前後方向にのびる波頂部、前後方向にのびる波底部、および波頂部と波底部とを連結する連結部よりなるコルゲート状である。アウターフィン(19)は、前側冷媒流通管(15)の前側縁よりも後方に位置し、かつ各組(16)の前後の冷媒流通管(15)にろう付されたフィン本体部(26)と、フィン本体部(26)の前側縁に連なるとともに後側冷媒流通管(15)の前側縁よりも前方に張り出すように設けられた外方張り出し部(27)とを備えている。アウターフィン(19)の下端は、蓄冷材容器(18)の下端と同一高さ位置または近傍の高さ位置にある。そして、蓄冷材容器(18)が配置された通風間隙(17)の両隣の通風間隙(17)に配置されたアウターフィン(19)の外方張り出し部(27)が、蓄冷材容器(18)の外方張り出し部(24)の左右両側面にろう付されている。また、隣接するアウターフィン(19)の外方張り出し部(27)間にはアルミニウム製スペーサ(28)が配置されており、外方張り出し部(27)にろう付されている。
【0040】
図3に示すように、排水ケース(3)は、前後両側壁(31a)および前後両側壁(31a)の下端どうしを連結する底壁(31b)を有するとともに、蓄冷機能付きエバポレータ(1)の第2ヘッダタンク(5)を嵌め入れる上方に開口したケース本体(31)と、冷機能付きエバポレータ(1)で発生した凝縮水を蓄冷材容器(16)の外方張り出し部(24)の下縁およびアウターフィン(19)の外方張り出し部(27)の下端のうちの少なくともいずれか一方から排出する凝縮水排水部(32)とからなる。
【0041】
排水ケース(3)のケース本体(31)の底壁(31b)には複数の排水穴(33)が貫通状に形成されており、ケース本体(31)は、蓄冷機能付きエバポレータ(1)の冷媒流通管(15)およびアウターフィン(19)のフィン本体部(26)から第2ヘッダタンク(5)上に流下した後、図示しない排水溝および排水穴(5a)を通って下方に落下した凝縮水を排出する。凝縮水排水部(32)は、ケース本体(31)の前側壁(31a)外面の高さ方向の中間部に前方突出状に設けられかつ先端がアウターフィン(19)の外方張り出し部(27)の前端の下方に至る横向き突出部(34)と、横向き突出部(34)の前端に立ち上がり状に設けられた第1上方突出部(35)と、第1上方突出部(35)の若干後方において横向き突出部(34)から立ち上がり状に設けられた第2上方突出部(36)とよりなる。前方突出部(34)における両上方突出部(35)(36)間および第2上方突出部(36)とケース本体(31)の前側壁(31a)との間には、それぞれ複数の排水穴(38)(39)が貫通状に形成されている。両上方突出壁(35)(36)の上端にはそれぞれゴム状弾性体(37)が設けられており、第1上方突出部(35)の弾性体(37)がアウターフィン(19)の外方張り出し部(27)の下端に接触し、第2上方突出部(36)の弾性体(37)が蓄冷材容器(18)の外方張り出し部(24)の下端およびアウターフィン(19)の外方張り出し部(27)の下端に接触している。第1上方突出部(35)がアウターフィン(19)の外方張り出し部(27)の下端から凝縮水を誘引する誘引部となり、第2上方突出部(36)が蓄冷材容器(18)の外方張り出し部(24)の下端およびアウターフィン(19)の外方張り出し部(27)の下端から凝縮水を誘引する誘引部となっている。したがって、凝縮水排水部(32)は、蓄冷材容器(18)の外方張り出し部(24)の下端およびアウターフィン(19)の外方張り出し部(27)の下端のうちの少なくともいずれか一方から凝縮水を誘引する誘引部となる上方突出部(35)(36)を備えている。両上方突出部(35)(36)の数は、特に限定されるものではない。
【0042】
なお、両上方突出部(35)(36)の弾性体(37)は蓄冷材容器(18)の外方張り出し部(24)の下端およびアウターフィン(19)の外方張り出し部(27)の下端に近接し、弾性体(37)は蓄冷材容器(18)の外方張り出し部(24)の下端およびアウターフィン(19)の外方張り出し部(27)の下端との間には隙間が存在していてもよい。この場合、前記隙間の間隔は3mm以下であることが好ましい。また、弾性体(37)は必ずしも必要とせず、第1上方突出部(35)がアウターフィン(19)の外方張り出し部(27)の下端に接触し、または近接し、第2上方突出部(36)が蓄冷材容器(18)の外方張り出し部(24)の下端およびアウターフィン(19)の外方張り出し部(27)の下端に接触し、または近接していてもよい。
【0043】
停車時に圧縮機の駆動源であるエンジンを一時的に停止させる車両に搭載される車両用空調装置は、圧縮機、圧縮機から吐出された冷媒を冷却するコンデンサ(冷媒冷却器)、コンデンサを通過した冷媒を減圧する膨張弁(減圧器)、およびクーリングユニット(1)からなり、クーリングユニット(1)の蓄冷機能付きエバポレータ(2)が膨張弁を通過した冷媒を蒸発させるようになっている。
【0044】
上述した車両用空調装置において、圧縮機が作動している場合には、圧縮機で圧縮されてコンデンサおよび膨張弁を通過した低圧の気液混相の2相冷媒が、冷媒入口(9)を通って蓄冷機能付きエバポレータ(2)の風下側上ヘッダ部(7)内に入り、全冷媒流通管(15)を通って風上側上ヘッダ部(8)の冷媒出口(11)から流出する。そして、冷媒が冷媒流通管(15)内を流れる間に、通風間隙(15)を通過する空気と熱交換をし、冷媒は気相となって流出する。
【0045】
このとき、冷媒流通管(15)内を流れる冷媒の有する冷熱によって蓄冷材容器(18)の容器本体部(23)内の蓄冷材が冷却され、さらに容器本体部(23)内の冷却された蓄冷材の有する冷熱がインナーフィン(25)を介して蓄冷材容器(18)の外方張り出し部(24)内の蓄冷材に伝えられるとともに、通風間隙(17)を通って冷媒により冷やされた空気の有する冷熱が外方張り出し部(24)内の蓄冷材に伝えられ、その結果蓄冷材容器(18)内全体の蓄冷材に冷熱が蓄えられる。
【0046】
また、圧縮機の作動時には、蓄冷機能付きエバポレータ(2)の冷媒流通管(17)、蓄冷材容器(18)およびアウターフィン(19)の表面に凝縮水が発生する。冷媒流通管(17)、およびアウターフィン(19)のフィン本体部(26)の表面に発生した凝縮水は、第2ヘッダタンク(12)上に流下した後、図示しない案内部に案内されるとともに、図示しない排水溝および排水穴(5a)を通って下方に落下してケース本体(31)の底壁(31b)上に落下し、さらに排水穴(33)から排水される。蓄冷材容器(18)の外方張り出し部(24)およびアウターフィン(19)の外方張り出し部(27)に発生した凝縮水は、両外方張り出し部(24)(27)の下端に至り、キャピラリ効果により弾性体(37)を経て凝縮水排出部(32)の両上方突出部(35)(36)に誘引され、両上方突出部(35)(36)を伝わって前方突出部(34)上に流下し、排水穴(38)(39)から下方に排水される。
【0047】
圧縮機が停止した場合には、蓄冷材容器(18)の容器本体部(23)および外方張り出し部(24)内の蓄冷材の有する冷熱が、インナーフィン(25)を介して容器本体部(23)および外方張り出し部(24)の左右両側壁に伝えられる。容器本体部(23)の左右両側壁に伝えられた冷熱は、冷媒流通管(15)を通過し、当該冷媒流通管(15)にろう付されているアウターフィン(19)のフィン本体部(26)を介して蓄冷材容器(18)が配置されている通風間隙(17)の両隣の通風間隙(17)を通過する空気に伝えられる。外方張り出し部(24)の左右両側壁に伝えられた冷熱は、外方張り出し部(24)の左右両側面にろう付されたアウターフィン(19)の外方張り出し部(27)を介して通風間隙(17)を通過する空気に伝えられる。したがって、蓄冷機能付きエバポレータ(2)を通過した風の温度が上昇したとしても、当該風は冷却されるので、冷房能力の急激な低下が防止される。
【産業上の利用可能性】
【0048】
この発明によるクーリングユニットは、停車時に圧縮機の駆動源であるエンジンを一時的に停止させる車両の車両用空調装置を構成する冷凍サイクルに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0049】
(1):クーリングユニット
(2):蓄冷機能付きエバポレータ
(3):排水ケース
(4)(5):ヘッダタンク
(15):冷媒流通管
(18):蓄冷材容器
(19):アウターフィン
(24):蓄冷材容器の外方張り出し部
(27):アウターフィンの外方張り出し部
(31):ケース本体
(31a):前後両側壁
(31b):底壁
(32):凝縮水排水部
(34):前方突出部
(35)(36):上方突出部
(37):弾性体
(38)(39):排水穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長さ方向を上下方向に向けるとともに互いに間隔をおいて配置された複数の冷媒流通管、隣り合う冷媒流通管どうしの間に形成された複数の通風間隙の少なくとも一部に配置され、かつ内部に蓄冷材が封入された蓄冷材容器、および蓄冷材容器が配置されていない通風間隙に配置されたアウターフィンを有する蓄冷機能付きエバポレータと、蓄冷機能付きエバポレータの下方に配置された排水ケースとを備えたクーリングユニットにおいて、
蓄冷機能付きエバポレータの蓄冷材容器およびアウターフィンが、それぞれ冷媒流通管よりも風下側に張り出すように設けられた外方張り出し部を有し、排水ケースが、蓄冷機能付きエバポレータで発生した凝縮水を、蓄冷材容器の外方張り出し部の下端およびアウターフィンの外方張り出し部の下端のうちの少なくともいずれか一方から排出する凝縮水排水部を備えている車両用空調装置のクーリングユニット。
【請求項2】
凝縮水排水部が、蓄冷材容器の外方張り出し部の下端およびアウターフィンの外方張り出し部の下端のうちの少なくともいずれか一方に接触し、または近接し、かつ蓄冷材容器の外方張り出し部の下端およびアウターフィンの外方張り出し部の下端のうちの少なくともいずれか一方から凝縮水を誘引する誘引部を有している請求項1記載の車両用空調装置のクーリングユニット。
【請求項3】
凝縮水排水部の誘引部の先端に弾性体が設けられ、弾性体が蓄冷材容器の外方張り出し部の下端およびアウターフィンの外方張り出し部の下端のうちの少なくともいずれか一方に接触している請求項2記載の車両用空調装置のクーリングユニット。
【請求項4】
凝縮水排水部の誘引部の先端と、蓄冷材容器の外方張り出し部の下端およびアウターフィンの外方張り出し部の下端との間に隙間が設けられ、当該隙間の上下方向の間隔が3mm以下である請求項2記載の車両用空調装置のクーリングユニット。
【請求項5】
凝縮水排水部が、排水ケースの風下側を向いた外面に設けられた風下側突出部と、風下側突出部に設けられた上方突出部とを有しており、風下側突出部に貫通状の排水穴が形成され、上方突出部が誘引部となっている請求項2〜4のうちのいずれかに記載の車両用空調装置のクーリングユニット。
【請求項6】
蓄冷機能付きエバポレータが、上下方向に間隔をおいて設けられかつ冷媒流通管の上下両端が接続された上下のヘッダタンクを備え、排水ケースが、風下側および風上側の側壁と両側壁の下端部どうしを連結する底壁とを有するとともに、下ヘッダタンクが嵌め入れられるケース本体を備えており、ケース本体が下ヘッダタンクから落下した凝縮水を排水するようになされ、ケース本体の風下側壁の外面に凝縮水排水部が設けられている請求項5記載の車両用空調装置のクーリングユニット。
【請求項7】
圧縮機と、コンデンサと、減圧器と、請求項1〜6のうちのいずれかに記載のクーリングユニットとを備えており、かつ停車時に圧縮機の駆動源であるエンジンを一時的に停止させる車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−61136(P2013−61136A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201328(P2011−201328)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(512025676)株式会社ケーヒン・サーマル・テクノロジー (25)
【Fターム(参考)】