説明

車両用空調装置の運転制御方法

【課題】除湿暖房運転時において、外気温が高くなる中熱負荷時においても除湿能力を確保することが可能な車両用空調装置の運転制御方法を提供する。
【解決手段】除湿暖房運転モードにおいて、熱負荷が所定値を超えていない場合には、圧縮機6から吐出した冷媒を、第1の熱交換器2、第1の冷媒制御部9、車室外熱交換器4、第4の冷媒制御部22、及び圧縮機6の順で冷媒を循環させると共に、第1の熱交換器2、第3の冷媒制御部16、第2の熱交換器3、及び圧縮機6の順で冷媒を循環させる。熱負荷が所定値を超えていると判定された場合に、圧縮機6から吐出した冷媒を、第1の熱交換器2、第1の冷媒制御部9、車室外熱交換器4、第2の冷媒制御部13、第2の熱交換器3、及び圧縮機6の順で冷媒を循環させると共に、第1の熱交換器2、第3の冷媒制御部16、第2の熱交換器3、及び圧縮機6の順で冷媒を循環させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、除湿暖房の機能を有する車両用空調装置を運転する制御方法に関し、特に、除湿暖房運転時における除湿能力を熱負荷の変動に拘わらず確保することが可能な運転制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、除湿暖房機能を有する車両用空調装置として、下記する特許文献1(特開平6−341732号)に示される構成が公知となっている。
これは、図8に示されるように、空調ユニット1内にダンパ5で通風量が調整される第1の熱交換器2と、この第1の熱交換器2より上流側に配置された第2の熱交換器3とを備え、圧縮機6と、第1の熱交換器2と、第1の膨張装置7と、空調ユニット外に配置された車室外熱交換器4と、開閉弁V2と、第2の膨張装置41と、第2の熱交換器3と、アキュムレータ10とをこの順で配管接続して閉ループを形成し、第1の膨張装置7の流入側と流出側との間、第1の熱交換器2の流出側と第2の膨張装置41の流入側との間、及び車室外熱交換器4の流出側と圧縮機6の吸入側(アキュムレータ10の流入側)との間にそれぞれ開閉弁V1、V3,V4にて開閉される通路を設け、各開閉弁V1〜V4の開閉とダンパ5の開度を制御することで、運転モードを冷房運転モード、暖房運転モード、及び除湿暖房運転モードに切り換えることができるようにしたものである。
【0003】
具体的には、冷房運転モードにおいては、V1を開、V2を開、V3を閉、V4を閉とし、第1の熱交換器2の通風量を無くして第2の熱交換器を通過した空気の全てを第1の熱交換器2をバイパスさせるようダンパ5をフルクール位置に設定し、圧縮機6で圧縮された冷媒を第1の熱交換器2を通過させた後に車室外熱交換器4で放熱させ、第2の膨張装置41により減圧して第2の熱交換器3で吸熱させ、しかる後にアキュムレータ10を介して圧縮機6に戻すようにしている。
【0004】
また、暖房運転モードにおいては、V1を閉、V2を閉、V3を閉、V4を開とし、第2の熱交換器3を通過した空気の全てを第1の熱交換器2に通過させるようダンパ5をフルホット位置に設定し、圧縮機6で圧縮された冷媒を第1の熱交換器2で放熱させ、その後、第1の膨張装置7で減圧して車室外熱交換器4で吸熱させ、しかる後にアキュムレータ10を介して圧縮機6に戻すようにしている。
【0005】
さらに、除湿暖房運転モードにおいては、V1を閉、V2を閉、V3を開、V4を開とし、ダンパの位置をフルホット位置又は中間位置とし、図9に示されるように、圧縮機6で圧縮された冷媒を第1の熱交換器2で放熱させ、その後、冷媒の一部を第2の膨張装置41で減圧して第2の熱交換器3で吸熱させ、また、残りの冷媒を第1の膨張装置7で減圧して車室外熱交換器4で吸熱させ、しかる後にアキュムレータ10を介して圧縮機6へ戻すようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−341732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の技術においては、除湿暖房運転モードでの除湿能力が外気の温度に応じて変動し、外気温が15〜25℃となる中熱負荷時においては、外気温が低い低熱負荷時(5〜15℃)に比べて除湿能力が低下するという不具合が懸念される。
【0008】
即ち、外気温が低い低熱負荷時においては、第1の熱交換器2でのみ放熱され、また、第1の熱交換器2で放熱された冷媒は、その全てが第2の膨張装置41で減圧されて第2の熱交換器3で吸熱されるわけではないため、第1の熱交換器2による放熱量を確保しつつ第2の熱交換器3の凍結を防止できる利点はあるが、外気温が比較的高くなる中熱負荷時においては、車室外熱交換器4での吸熱量が多くなるため、この車室外熱交換器の流出側と直結している圧縮機6の吸入側(アキュムレータ10の流入側)において冷媒圧力が上昇し、その結果、第2の熱交換器3での蒸発圧力が上昇してここでの吸熱量が減少し、第2の熱交換器3において十分な除湿能力を確保できなくなる不都合が懸念される。
【0009】
本発明は、係る事情に鑑みてなされたものであり、除湿暖房運転時において、外気温が高くなる中熱負荷時においても除湿能力を確保することが可能な車両用空調装置の運転制御方法を提供することを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る車両用空調装置の運転制御方法は、圧縮機と、空調ユニット内に配置されてダンパにより通風量が調整される第1の熱交換器と、前記空調ユニット内に配置されて前記第1の熱交換器よりも前記空調ユニット内の空気流れ方向上流側に配置された第2の熱交換器と、外気と熱交換が可能な車室外熱交換器と、冷媒流路を絞ることが可能な第1の冷媒制御部と、冷媒流路を絞ること及び閉じることが可能な第2の冷媒制御部と、冷媒流路を絞ること及び閉じることが可能な第3の冷媒制御部と、冷媒流路を閉じることが可能な第4の冷媒制御部と、を有し、前記圧縮機、前記第1の熱交換器、前記第1の冷媒制御部、前記車室外熱交換器、前記第2の冷媒制御部、及び前記第2の熱交換器を少なくともこの順でループ状に接続し、前記第1の熱交換器と前記第1の冷媒制御部との間の冷媒流路と前記第2の冷媒制御部と前記第2の熱交換器との間の冷媒流路とを、前記第3の冷媒制御部を備えた第1のバイパス流路にて接続し、前記車室外熱交換器と前記第2の冷媒制御部との間の冷媒流路と前記第2の熱交換器と前記圧縮機との間の冷媒流路とを、前記第4の冷媒制御部を備えた第2のバイパス流路にて接続した車両用空調装置の運転制御方法であって、除湿暖房運転モードにおいて、熱負荷が所定値を超えていないと判定された場合に、前記第1の制御部で冷媒流路を絞り、前記第2の冷媒制御部で冷媒流路を閉じ、前記第3の冷媒制御部で冷媒流路を絞り、前記第4の冷媒制御部で冷媒流路を閉じないで、前記圧縮機から吐出した冷媒を、前記第1の熱交換器、前記第1の冷媒制御部、前記車室外熱交換器、前記第4の冷媒制御部、及び前記圧縮機の順で冷媒を循環させると共に、前記第1の熱交換器、前記第3の冷媒制御部、前記第2の熱交換器、及び前記圧縮機の順で冷媒を循環させ、前記熱負荷が所定値を超えていると判定された場合に、前記第1の冷媒制御部で冷媒流路を絞り、前記第2の冷媒制御部で冷媒流路を絞り、前記第3の冷媒制御部で冷媒流路を絞り、前記第4の冷媒制御部で冷媒流路を閉じて、前記圧縮機から吐出した冷媒を、前記第1の熱交換器、前記第1の冷媒制御部、前記車室外熱交換器、前記第2の冷媒制御部、前記第2の熱交換器、及び前記圧縮機の順で冷媒を循環させると共に、前記第1の熱交換器、前記第3の冷媒制御部、前記第2の熱交換器、及び前記圧縮機の順で冷媒を循環させることを特徴としている。
【0011】
このような構成においては、車室外熱交換器を吸熱器として使用するための冷媒流路を絞ることが可能な第1の冷媒制御部と、車室外熱交換器を放熱器として使用しつつ第2の熱交換器を吸熱器として使用するための冷媒流路を絞ることが可能な第2の冷媒制御部と、除湿暖房運転時に利用する冷媒流路を絞ることが可能な第3の冷媒制御部とを設けると共に、第2、第4の冷媒制御部ではそれぞれ冷媒流路を閉じることが可能であるので、車室外熱交換器を通過した冷媒の流れ方を切り換えることで、第2の熱交換器の蒸発圧力の上昇を適切に抑えて外気温が比較的高くなる中熱負荷時においても除湿能力を確保することが可能となる。
【0012】
即ち、外気温が比較的低い低熱負荷時には、圧縮機および第1の熱交換器に対して、車室外熱交換器を経由する吸熱経路と第2の熱交換器を経由する吸熱経路とを並列的に形成することで、第2の熱交換器で空気を除湿し、第1の熱交換器で空気を加熱する従来と同様の機能を持たせることが可能となり、また、外気温が比較的高くなる中熱負荷時には、車室外熱交換器から流出した冷媒を圧縮機の吸入側に直接戻したのでは圧縮機の吸入側の圧力が上昇し、延いては第2の熱交換器の蒸発圧力が上昇するので、車室外熱交換器を通過した冷媒を第2の冷媒制御部で再び断熱膨張し、この断熱膨張された冷媒を第3の冷媒制御部で断熱膨張された冷媒と共に第2の熱交換器で吸熱させるようにすることで、第2の熱交換器の蒸発圧力が車室外熱交換器の出口側圧力に影響されることがなくなり、外気温が比較的高くなる中熱負荷時においても、除湿能力を確保することが可能となる。
【0013】
さらに、このような構成とすることで、外気温が比較的高い中熱負荷状態から比較的低い低熱負荷状態へと変化し、熱負荷が所定値を超えている条件から超えていない条件へと変化すると、熱負荷が所定値を超えていないと判定されるから、前述したような熱負荷が所定値を超えていると判定された場合の冷媒の循環状態から、熱負荷が所定値を超えていないと判定された場合の冷媒の循環状態へと変更することができる。
【0014】
即ち、外気の熱負荷が低くなっても熱負荷が所定値を超えていると判定された場合の冷媒の循環状態を継続してしまうと、暖房性能の発揮がより求められる環境であるにも関わらず、せっかく車室外熱交換器4で吸熱した冷媒が第2の冷媒制御部で断熱膨張され、第2の熱交換器で再び吸熱するにせよ送風される空気の熱負荷が低いので多くの吸熱量は得られず、温度や圧力が比較的低い状態で冷媒が圧縮機6に戻されることになるから、圧縮機6から吐出される冷媒の温度上昇につながらず、暖房能力を十分確保できないおそれがあったが、このような構成とすることで、外気温が低負荷時には車室外熱交換器で吸熱した冷媒を断熱膨張せずに圧縮機6に戻すことができるので、外気温が比較的高い中熱負荷時から比較的低い低熱負荷時へと変化しても、暖房能力を確保することが可能となる。
【0015】
ここで、第1の冷媒制御部、第2の冷媒制御部、及び第3の冷媒制御部のそれぞれの絞り部分の断面積をA,B,Cとすると、各段面積は、除湿暖房運転モードにおいて、熱負荷が所定値を超えていないと判定された場合にはA≦Cの関係となるように、熱負荷が所定値を超えていると判定された場合にはA≦C<Bの関係となるように、制御もしくは設定されていることが望ましい。
【0016】
これは、第1の冷媒制御部での冷媒流路の絞りは、暖房能力を確保する観点から絞り具合が決定されるため、即ち第1の熱交換器の冷媒温度を高くするため、第1の冷媒制御部では冷媒流路の断面積を相対的に小さめに絞って第1の熱交換器の冷媒圧力を高く維持することが好ましく、
また第2の冷媒制御部での冷媒流路の絞りは、冷房能力を確保する観点から絞り具合が決定されるため、即ち第2の熱交換器での吸熱量を得るため、第2の冷媒制御部では冷媒流路の断面積を相対的に大きめに絞って適切な冷媒循環量を確保することが好ましく、
第3の冷媒制御部は、除湿暖房能力を確保する観点から絞り具合が決定されるため、即ち第1の熱交換器の暖房能力を確保する要請がある一方、第2の熱交換器の冷房能力も得るために一定の冷媒流量を確保する要請もあることから、第1の冷媒制御部の冷媒流路の断面積と同等以上であり、且つ、第2の冷媒制御部の冷媒流路の断面積よりも小さくしておくことが望ましいためである。
そして、熱負荷が所定値を超えていないと判定された場合には、第2の冷媒制御部には冷媒が流れないので、第1の冷媒制御部で制御もしくは設定される冷媒流路の断面積と、第3の冷媒制御部で制御もしくは設定される冷媒流路の断面積との大小関係を規定し、熱負荷が所定値を超えていると判定された場合には、第2の冷媒制御部にも冷媒が流れるので、第2の冷媒制御部で制御もしくは設定される冷媒流路の断面積についても、大小関係を規定することが望ましい。
【0017】
ここで、前記第1の冷媒制御部は第1の膨張装置と第1の開閉弁とを並列的に接続してなり、前記第2の冷媒制御部は第2の膨張装置と第2の開閉弁とを直列的に接続してなり、前記第3の冷媒制御部は第3の膨張装置と第3の開閉弁とを直列的に接続してなり、前記第4の冷媒制御部は第4の開閉弁よりなるよう構成してもよい。膨張機能を持つ膨張装置と開閉機能を持つ開閉弁とに構成を分けることで、車両用空調装置を安価な部品で構成することができる。
【0018】
そして、上述した第1の膨張装置、第2の膨張装置、第3の膨張装置は、固定オリフィスで構成してもよいが、第3の膨張装置は、外気条件に対して設定条件を可変できるように可変式膨張弁で構成するようにしてもよい。第1、第2、第3すべての膨張装置を固定オリフィスで構成した場合、膨張弁の開度を制御する膨張弁に比べて構成が簡素であり、コストをより低減することができる。また、第3の膨張装置を可変式膨張弁で構成した場合、外気の熱負荷条件に応じて第1のパイパス流路の冷媒流量を変更でき、除湿暖房能力の制御性を向上できる。
【0019】
また、上述の構成において、第2の開閉弁と第4の開閉弁は、一方が閉であるとき他方が開となるので、1つの三方弁で置き換えるようにしてもよい。このような構成によれば、部品点数を削減できる。
【0020】
また、第1の冷媒制御部を、冷媒流路を絞ること及び絞らないことが可能な可変式膨張弁とし、第2の冷媒制御部および/または第3の冷媒制御部を、冷媒流路を絞ること及び閉じることが可能な可変式膨張弁としてもよい。冷媒制御部の部品点数を削減するとともに、冷媒流路の絞りを制御することで、よりきめ細かく空調制御を行うことができる。
【0021】
さらに、上述の構成においては、空調ユニット内に配された第1の熱交換器に冷媒を循環させる構成であるが、空調ユニット内に配置されてダンパにより通風量が調整されると共に液体状熱媒体が内部を循環する第3の熱交換器と、前記液体状熱媒体を圧送するポンプと、前記液体状熱媒体と前記圧縮機から吐出した冷媒とを熱交換させる第4の熱交換器とを配管接続して構成された温水サイクルを設け、前記第1の熱交換器を前記温水サイクルで置き換えるようにしてもよい。このような構成によれば、既存の温水ヒータユニットを利用して、上述した構成を実現することが可能となり、内燃機関を備えた車両に搭載され、温水サイクルにより暖房を行う従来の空調ユニットを利用することが可能となる。
【0022】
さらに、上述の構成においては、前記圧縮機の吸入側の冷媒と前記第1の熱交換器の流出側の冷媒とを熱交換させる内部熱交換器を設けるようにしてもよい。第1の熱交換器の放熱量を増大させることができる。
【発明の効果】
【0023】
以上述べたように、本発明によれば、車室外熱交換器を吸熱器として用いて暖房運転を行う場合に冷媒流路を絞ることが可能な第1の冷媒制御部と、車室外熱交換器を放熱器として用いると共に第2の熱交換器を吸熱器として用いて冷房運転を行う場合に冷媒流路を絞ることが可能な第2の冷媒制御部と、除湿暖房運転を行う場合に冷媒流路を絞ることが可能な第3の冷媒制御部とを設けると共に、車室外熱交換器を通過した冷媒の流れ方を切り換えることで、第2の熱交換器の除湿能力を調整可能としたので、除湿暖房運転時において、外気温が低熱負荷時から中熱負荷時へと変動しても除湿能力を確保することが可能な車両用空調装置を得ることが可能となる。
即ち、外気負荷が高くなってきた場合には、車室外熱交換器で吸熱した後の冷媒を第2の冷媒制御部でさらに減圧して第2の熱交換器に流入させるようにすることで、車室外熱交換器の蒸発圧力が第2の熱交換器に伝搬しないようにすることが可能となり、これにより第2の熱交換器の蒸発圧力の上昇を抑え、除湿能力を確保することが可能となる。
さらには、車室外熱交換器を通過した冷媒の流れ方を切り換えることで、除湿暖房運転時において、外気温が中熱負荷時から低熱負荷時へと変動しても暖房能力を確保することが可能な車両用空調装置を得ることが可能となる。
即ち、外気負荷が低くなってきた場合には、車室外熱交換器で吸熱した後の冷媒を第2の冷媒制御部で断熱膨張することなく圧縮機に戻すようにすることで、車室外熱交換器で吸熱したエネルギーを圧縮機を介して第1の熱交換器に供給でき、暖房能力を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、本発明に係る車両用空調装置を表し、図1(a)はその全体構成図であり、図1(b)は、運転モードと開閉弁及びダンパの状態を示す表である。
【図2】図2は、本発明に係る車両用空調装置の冷房運転モード時における冷媒の流れを説明する図である。
【図3】図3は、本発明に係る車両用空調装置の暖房運転モード時における冷媒の流れを説明する図である。
【図4】図4は、本発明に係る車両用空調装置の除湿暖房運転モード時における冷媒の流れを説明する図であり、(a)は外気負荷が低い低熱負荷時(外気温:5〜15℃)での除湿暖房運転モードを示し、(b)は外気負荷が比較的高い中熱負荷時(外気温:15〜25℃)での除湿暖房運転モードを示す。
【図5】図5は、本発明に係る車両用空調装置の変形例(第2の開閉弁と第4の開閉弁とを1つの三方弁で置き換えた例)を示す図であり、図5(a)はその全体構成図であり、図5(b)は、運転モードと各弁及びダンパの状態を示す表である。
【図6】図6は、図1(a)で示す車両用空調装置の第1の熱交換器を、温水を流通させる第3の熱交換器と温水と冷媒とを熱交換する第4の熱交換器を含む温水サイクルで置き換えた例を示す図である。
【図7】図7は、図1(a)で示す車両用空調装置の圧縮機流入側の冷媒と第1の熱交換器の流出側との冷媒とを熱交換する内部熱交換器を付加した構成例を示す図である。
【図8】図8は、従来の車両用空調装置を表し、図8(a)はその全体構成図であり、図8(b)は、運転モードと開閉弁及びダンパの状態を示す表である。
【図9】図9は、従来の車両用空調装置において、除湿暖房運転モード時の冷媒の流れを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る車両用空調装置の実施例を図面により説明する。
図1において、この発明に係る車両用空調装置が示され、車両用空調装置は、例えば自動車に搭載されるもので、空調ユニット1内に配置された第1及び第2の熱交換器2,3と、空調ユニット1外に配置され、外気と熱交換可能な車室外熱交換器4とを備えている。
【0026】
空調ユニット1の最上流側には図示しない内外気切換装置が設けられ、内気入口と外気入口とがインテークドアによって選択的に開口されるようになっている。この空調ユニット1に選択的に導入される内気または外気は、送風機20の回転により吸引され、第1及び第2の熱交換器2,3に送られ、ここで熱交換されて所望の吹き出し口から車室内に供給されるようになっている。
【0027】
第1の熱交換器2は、第2の熱交換器3よりも空調ユニット内の空気流れ方向下流側に配置されており、この第1の熱交換器2の空気流れ方向上流側には、ダンパ5が設けられている。ダンパ5は、第1の熱交換器2の通過風量が最大となる位置(フルホット位置:開度100%)から最小となる位置(フルクール位置:開度0%)まで可変できるようになっており、開度を調整することにより、第1の熱交換器2を通過する空気とバイパスする空気との割合を調整できるようになっている。
【0028】
第1の熱交換器2の流入側2aは、圧縮機6の吐出側Aに接続され、第1の熱交換器2の流出側2bは、第1の膨張装置(O−1)7と第1の開閉弁(V−1)8が並列的に接続されて構成される第1の冷媒制御部9の流入側9aに接続されている。また、第2の熱交換器3の流出側3bは、アキュムレータ10を介して圧縮機6の吸入側Bに接続されている。
【0029】
前記第1の冷媒制御部9の流出側9bは、車室外熱交換器4の流入側4aに接続され、この車室外熱交換器4の流出側4bは、第2の開閉弁(V−2)11と第2の膨張装置(O−2)12とが直列的に接続されて構成された第2の冷媒制御部13を介して第2の熱交換器3の流入側3aに接続されている。したがって、圧縮機6、第1の熱交換器2、第1の冷媒制御部9、車室外熱交換器4、第2の冷媒制御部13、第2の熱交換器3、アキュムレータ10、圧縮機6の順でループ状に接続された冷媒循環サイクルが形成されている。 なお、第2の開閉弁(V−2)11と膨張装置(O−2)12とは直列的に接続されていればよく、どちらを冷媒流れ方向の上流側に配置するか(下流側に配置するか)は制限されない。
【0030】
また、第1の熱交換器2の流出側2bと第1の冷媒制御部9の流入側9aとの間の冷媒流路と、第2の冷媒制御部13の流出側13bと第2の熱交換器3の流入側3aとの間の冷媒流路とが、第3の開閉弁(V−3)14と第3の膨張装置(O−3)15とからなる第3の冷媒制御部16を有する第1のパイパス流路21によって接続され、車室外熱交換器4の流出側4bと第2の冷媒制御部13の流入側13aとの間の冷媒流路と第2の熱交換器3の流出側3bと圧縮機6の吸入側Bとの間(アキュムレータ10の流入側10aとの間)の冷媒流路とが、第4の開閉弁(V−4)17にて開閉される第2のパイパス流路22によって接続されている。ここでも、第3の開閉弁(V−3)14と第3の膨張装置(O−3)15とは直列的に接続されていればよく、どちらを冷媒流れ方向の上流側に配置するか(下流側に配置するか)は制限されない。なお、開閉弁(V−4)17は、第4の冷媒制御部として配置される。
【0031】
尚、上述の構成例において、第1乃至第3の膨張装置7,12,15は、固定オリフィスによって構成されており、第1の膨張装置7の絞り部分の通路断面は、暖房能力を高める観点からできるだけ絞り気味に設定され、第2の膨張装置12の絞り部分の通路断面は、冷房能力を確保する観点、即ち、冷媒を減圧しつつも冷媒供給量を多くする観点から相対的に大きく設定され、第3の膨張装置15の絞り部分の通路断面は、除湿能力を確保すると共に暖房能力もある程度確保する必要から、第1膨張装置7の通路断面と同等かそれよりも大きく設定され、且つ、第2の膨張装置12の通路断面よりも小さく設定されることが好ましい。即ち、第1の膨張装置7、第2の膨張装置12、及び第3の膨張装置15のそれぞれの絞り部分の通路断面積をA,B,Cとすると、A≦C<Bの関係に設定されている。
【0032】
ここで、仮にC<Aの関係であると、第3の膨張装置15が設けられる第1のパイパス流路21を通過する冷媒の割合が小さくなりすぎて、冷媒循環量の大部分が車室外熱交換器4を通過することになるから、図4(a)のように低熱負荷時に除湿暖房運転を行っても、第2の熱交換器を流通する冷媒が少ないので、除湿能力が不足するおそれがある。また、仮にB<Cの関係にあると、第3の膨張装置15が設けられる第1のパイパス流路21を通過する冷媒の割合が大きくなりすぎて、冷媒循環量の大部分が車室外熱交換器4を経由しないことになるから、図4(a)のように低熱負荷時の除湿暖房運転を行っても、車室外熱交換器での吸熱量が少ないので、第1の熱交換器での放熱量が不足するおそれがあるうえ、図4(a)(b)いずれのような除湿暖房運転を行っても、第2の熱交換器を流通する冷媒量が多いので凍結する不具合につながるおそれもある。なお、仮にB=Cの関係にあっても、B<Cの関係にある場合と同様な態様となる。即ち、B=Cの場合には第2の膨張装置と第3の膨張装置の通路抵抗はほぼ同等であるものの、除湿暖房モードの場合で見ると、図4から判るように第2の膨張装置の上流には車室外熱交換器と第1の膨張装置が存在し、それぞれ通路抵抗となるために、結局第1のパイパス流路の通路抵抗が相対的に低いこととなって通過する冷媒の割合が多くなる。
【0033】
上記開閉弁8,11,14,17の開閉、及びダンパ5の開度は、コントロールユニット23からの制御信号で制御されるようになっている。このコントロールユニット23は、A/D変換器やマルチプレクサ等を含む入力回路、ROM、RAM、CPU等を含む演算処理回路、駆動回路等を含む出力回路を備えたそれ自体公知のもので、外気温を検出する外気温度センサ24からの外気温信号や運転モードを設定する各種信号が入力され、これらの信号を予め定められた所定のプログラムに沿って処理するようになっている。
【0034】
特に、除湿暖房運転モードに設定された場合においては、外気温度により除湿暖房の態様が切り替えられるようになっており、外気温度が5〜15℃の範囲であれば(外気負荷が低い低熱負荷時であれば)、後述する低熱負荷用の除湿暖房運転モードに設定され、外気温度が15〜25℃の範囲であれば(外気負荷が比較的高い中熱負荷時であれば)、後述する中熱負荷用の除湿暖房運転モードに設定される。
【0035】
次に、コントロールユニット23による制御動作のうち、開閉弁8,11,14,17とダンパ5の具体的制御動作例を運転モード毎に説明する。
【0036】
先ず、運転モードが冷房運転モードに設定される場合には、コントロールユニット23は、図2にも示されるように、第1及び第2の開閉弁8,11を開、第1及び第4の開閉弁14,17を閉とし、またダンパ5をフルクール位置(開度0%の位置)に設定する。すると、圧縮機6の吐出側Aから吐出された圧縮冷媒は、第1の熱交換器2を通過する空気が無いことからここで放熱することなく通過し、第1の開閉弁8を介して車室外熱交換器4に入り、ここで放熱(凝縮液化)された後に第2の開閉弁11を介して第2の膨張装置12に至り、この第2の膨張装置12で減圧されて第2の熱交換器3に入り、ここで吸熱(蒸発気化)された後にアキュムレータ10を介して圧縮機6に戻される。このため、空調ユニット1の上流から送られてきた空気は、第2の熱交換器3で冷却され、第1の熱交換器2をバイパスしてそのまま冷風として車室内に供給される。
【0037】
運転モードが暖房運転モードに設定される場合には、図3にも示されるように、コントロールユニット23は、第1及び第2の開閉弁8,11を閉、第3の開閉弁14を閉、第4の開閉弁17を開とし、またダンパ5をフルホット位置(開度100%の位置)に設定する。すると、圧縮機6の吐出側Aから吐出された圧縮冷媒は、第1の熱交換器2で放熱(凝縮液化)し、第1の膨張装置7で減圧されて車室外熱交換器4に至り、ここで吸熱(蒸発気化)された後に第4の開閉弁17を通って、アキュムレータ10を介して圧縮機6に戻される。このため、空調ユニット1の上流から送られてきた空気は、第2の熱交換器3を通過するものの熱交換されず、第1の熱交換器2に全て導かれて加熱され、温風として車室内に供給される。
【0038】
運転モードが除湿暖房運転モードに設定される場合において、外気温が5〜15℃である場合には、図4(a)に示されるように、低熱負荷用の除湿暖房運転モードに設定され、コントロールユニット23は、第1及び第2の開閉弁8,11を閉、第1及び第4の開閉弁14,17を開とし、またダンパ5の開度をフルホット位置か任意の中間位置に設定する。このため、圧縮機6の吐出側Aから吐出された圧縮冷媒は、第1の熱交換器2で放熱(凝縮液化)され、第1の膨張装置7で減圧されて車室外熱交換器4に至り、ここで吸熱(蒸発気化)された後に第4の開閉弁17を通って、アキュムレータ10を介して圧縮機6に戻される。それと同時に、第1の熱交換器2を通過した冷媒は、第3の膨張装置15で減圧されて第2の熱交換器3に至り、ここで吸熱(蒸発気化)された後にアキュムレータ10を介して圧縮機6に戻される。このため、空調ユニット1の上流から送られてきた空気は、第2の熱交換器3によって除湿され、第1の熱交換器2を通過する際に加熱されて、乾燥した温風として車室内に供給される。
【0039】
また、運転モードが除湿暖房運転モードに設定される場合において、外気温が15〜25℃である場合には、図4(b)に示されるように、中熱負荷用の除湿暖房運転モードに設定され、コントロールユニット23は、第1の開閉弁8を閉、第2の開閉弁11を開、第3の開閉弁14を開、第4の開閉弁17を閉とし、またダンパ5の開度をフルホット位置か任意の中間位置に設定する。すると、圧縮機6の吐出側Aから吐出された圧縮冷媒は、第1の熱交換器2で放熱(凝縮液化)され、第1の膨張装置7で減圧されて車室外熱交換器4に至り、ここで吸熱(蒸発気化)された後に第2の開閉弁11を通って第2の膨張装置12で減圧され、第2の熱交換器3に供給される。そして、この第2の熱交換器3で吸熱した後にアキュムレータ10を介して圧縮機6に戻される。それと同時に、第1の熱交換器2を通過した冷媒は、第3の膨張装置15で減圧されて第2の熱交換器3に入り、ここで吸熱(蒸発気化)された後にアキュムレータ10を介して圧縮機6に戻される。このため、空調ユニット1の上流から送られてきた空気は、第2の熱交換器3によって除湿され、第1の熱交換器2を通過する際に加熱されて、乾燥した温風として車室内に供給される。
【0040】
しかも、中熱負荷時においては、車室外熱交換器4を通過した冷媒の蒸発圧力が高くなっているが、この車室外熱交換器4を通過した冷媒は、アキュムレータ10に直接導かれることがないため、第2の熱交換器3の蒸発圧力が車室外熱交換器4の蒸発圧力の伝搬によって高められることはなく、また、第2の膨張装置12を介して減圧された後に第3の膨張装置15を介して断熱膨張された冷媒と共に第2の熱交換器3に導かれるので、第2の熱交換器3での吸熱能力も高めることが可能となり、十分な除湿能力を確保することが可能となる。
【0041】
尚、上述したサイクル構成に対して、第2の開閉弁(V−2)11と第4の開閉弁(V−4)17とは、選択的に開状態が形成されることから、図5に示されるように、これらをまとめて、1つの三方弁25によって構成するようにしてもよい。
【0042】
また、上述の構成においては、第1乃至第3の膨張装置7,12,15を固定オリフィスによって構成した例について述べたが、第1の膨張装置7と第2の膨張装置12は暖房能力および冷房能力を決定する観点からほぼ一義的に絞り部分の通路断面が決定されるものの、除湿暖房運転においては、除湿能力と暖房能力との割合を微調整するために第3の膨張装置15を可変式膨張弁で置き換えてもよい。
【0043】
このような構成とすれば、暖房能力を確保したい低熱負荷時の除湿暖房運転時において、可変式膨張弁の絞りを絞り気味に設定することで、第1の熱交換器2の放熱量を高めて暖房能力を高めることが可能となり、また、除湿能力を確保したい中熱負荷時の除湿暖房運転時において、可変式膨張弁の絞りを開き気味に設定することで、第1のパイパス流路を通過する冷媒、即ち車室外熱交換器を通過せずに車室外の空気から吸熱していない冷媒の循環量を増やし、第2の熱交換器3の除湿能力を高めることが可能となる。
また、このような可変式膨張弁の導入により、低熱負荷時や中熱負荷時のそれぞれの除湿暖房運転において、除湿能力と暖房能力との比率を微調整することが可能となる。即ち、低熱負荷時において、外気温が一層低い極低熱負荷時においては、可変式膨張弁の絞りを絞り気味に設定して暖房能力を一層高め、それ以外の低熱負荷時には、可変式膨張弁の絞りを相対的に開き気味に設定して暖房能力を相対的に低くするようにし、また、中熱負荷時においても、熱負荷が比較的に低い中低熱負荷時には、可変式膨張弁の絞りを幾分絞り気味とし、熱負荷が中低熱負荷時と比べて幾分高い中高熱負荷時には、可変式膨張弁の絞りを幾分開き気味とする制御を行うことが可能となる。
【0044】
尚、上述の構成においては、第1の熱交換器2に圧縮機6から吐出された冷媒を供給するサイクル構成を採用しているので、従来より用いられていた温水式の熱交換器をそのまま用いることはできないが、既設の温水式の熱交換器を用いる場合には、図6に示される構成を採用してもよい。
【0045】
即ち、作動流体として水やクーラントといった周知の液体状熱媒体が用いられ、液体状熱媒体と空気とを熱交換する第3の熱交換器26と、液体状熱媒体を圧送するポンプ27と、液体状熱媒体を加熱する水ヒータ28と、液体状熱媒体と前記圧縮機6から吐出した冷媒とを熱交換させる第4の熱交換器29とを順次配管接続して構成された温水サイクル30を設け、空調ユニット1内に、前記第1の熱交換器2に代えて第3の熱交換器26を配置し、この第3の熱交換器26をダンパ5で通風量が調整される構成とし、圧縮機6の吐出側と前記第1のパイパス流路21が接続する部位との間に第4の熱交換器29を介在させ、この第4の熱交換器29によって圧縮機6から吐出した冷媒と温水サイクル30の液体状熱媒体とを熱交換し、その液体状熱媒体を第3の熱交換器26によって空調ユニット1の上流から送られてくる空気と熱交換するようにしてもよい。
【0046】
このような構成によれば、熱負荷によって切り替えられる除湿暖房運転モードを備えた上述した車両用空調装置を既設の温水式熱交換器を用いて構築することが可能となる。
【0047】
さらに、上述した構成において、第1の熱交換器2の放熱能力を高めるために、図7に示されるように、圧縮機6の吸入側(例えば、アキュムレータ10の流出側10a)の冷媒と第1の熱交換器2の吐出側の冷媒とを熱交換させる内部熱交換器(IHX)31を更に設けるようにしてもよい。
即ち、圧縮機6に流入する冷媒を内部熱交換器31の低圧側通路31aを通過させ(低圧側通路31aの流入側をアキュムレータの流出側10aに接続し、低圧側通路31aの流出側を圧縮機6の吸入側Bに接続し)、第1の熱交換器2から流出した冷媒を内部熱交換器31の高圧側通路31bを通過させる(高圧側通路31bを第1の熱交換器2の流出側であって第1のパイパス流路21が接続する部位よりも冷媒流れ方向上流の部分に介在させる)構成としてもよい。
また、内部熱交換器31で熱交換させるか否かを選択できるようにするために、高圧側通路31bまたは低圧側通路31aをバイパスする第3のパイパス流路32を設け(この例では、高圧側通路31bをバイパスする通路を設け)、この第3のパイパス流路32を三方弁33により、高圧側通路31bと切換え可能としてもよい。
このような構成とすれば、内部熱交換器31により第1の熱交換器2の放熱量を増大させることが可能となり、また、三方弁33を切換え制御することにより、第1の熱交換器2の放熱能力を調整することや、圧縮機6に流入する冷媒の圧力が高くなりすぎて圧縮機の駆動動力が過多になるのを防止すること、圧縮機6で圧縮される冷媒の圧力が高くなりすぎて圧縮機6が故障するのを防止することが可能となる。
【0048】
以上、発明を実施するための形態を説明してきたが、本発明の目的を逸脱しない範囲で適宜変更できることはもちろんである。例えば、除湿暖房運転モードに設定された場合に外気温度を指標として低熱負荷時なのか中熱負荷時なのかを判定することを述べたが、これに変えて、第2の熱交換器に直接、または下流に冷却温度検出手段を設けるとともに所定冷却温度を設定し、この冷却温度検知手段で検知された温度が所定冷却温度を越えているか否かにより判定してもよい。また、第1の熱交換器に直接、または下流に加熱温度検知手段を設けるとともに所定加熱温度を設定し、この加熱温度検知手段で検知された温度が所定加熱温度を超えているか否かにより判定してもよい。さらには、外気の負荷が低熱負荷時から中熱負荷時に上昇する過程では冷却温度検知手段と所定冷却温度とから冷媒の流れ方を切換えるか判定し、中熱負荷時から低熱負荷時へ下降する過程では加熱温度検知手段と所定加熱温度とから冷媒の流れ方を切り換えるか判定してもよい。このようにすれば、除湿暖房運転モードにおいて外気負荷がどのように変動しても、除湿能力および暖房能力の不足を確実に防止することができる。
【0049】
また、第1の冷媒制御部、第2の冷媒制御部、第3の冷媒制御部はそれぞれ膨張装置と開閉弁とを備えているところ、いずれか、あるいはすべての冷媒制御部を、可変式膨張弁に集約してもよい。可変式膨張弁であっても、第1の冷媒制御部では冷媒を断熱膨張するのかしないかの選択を、第2及び第3の冷媒制御部では冷媒を断熱膨張するのか冷媒の流れを止めるかの選択をすることができる。そして、部品点数を削減できるので、当該車両用空調装置の生産性や、車両配置時の自由度を向上することができる。さらに可変式膨張弁とすることで、よりきめ細かな空調制御を行うことができる。
例えば冷房運転モードにあっては、第2の冷媒制御部にて絞り具合を制御することで、第2の熱交換器3の流出側3bの冷媒が一定の過熱度(スーパーヒート)を持つように冷媒の流量を調整し、第2の熱交換器3の温度を一定化させて、冷風の温度を安定化することができる。暖房運転モードにあっては、第1の冷媒制御部にて絞り具合を制御することで、第1の熱交換器の冷媒圧力の調整を通じて温風の温度を適宜変化させ、これをダンパ5による第1の熱交換器2を通過する空気とバイパスする空気との割合の調整に加えることで、暖房量の制御性を向上することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 空調ユニット
2 第1の熱交換器
3 第2の熱交換器
4 車室外熱交換器
5 ダンパ
6 圧縮機
7 第1の膨張装置
8 第1の開閉弁
9 第1の冷媒制御部
10 アキュムレータ
11 第2の開閉弁
12 第2の膨張装置
13 第2の冷媒制御部
14 第3の開閉弁
15 第3の膨張装置
16 第3の冷媒制御部
17 第4の開閉弁(第4の冷媒制御部)
21 第1のパイパス流路
22 第2のパイパス流路
25 三方弁
26 第3の熱交換器
27 ポンプ
29 第4の熱交換器
30 温水サイクル
31 内部熱交換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機と、空調ユニット内に配置されてダンパにより通風量が調整される第1の熱交換器と、前記空調ユニット内に配置されて前記第1の熱交換器よりも前記空調ユニット内の空気流れ方向上流側に配置された第2の熱交換器と、外気と熱交換が可能な車室外熱交換器と、冷媒流路を絞ることが可能な第1の冷媒制御部と、冷媒流路を絞ること及び閉じることが可能な第2の冷媒制御部と、冷媒流路を絞ること及び閉じることが可能な第3の冷媒制御部と、冷媒流路を閉じることが可能な第4の冷媒制御部と、を有し、
前記圧縮機、前記第1の熱交換器、前記第1の冷媒制御部、前記車室外熱交換器、前記第2の冷媒制御部、及び前記第2の熱交換器を少なくともこの順でループ状に接続し、
前記第1の熱交換器と前記第1の冷媒制御部との間の冷媒流路と前記第2の冷媒制御部と前記第2の熱交換器との間の冷媒流路とを、前記第3の冷媒制御部を備えた第1のバイパス流路にて接続し、
前記車室外熱交換器と前記第2の冷媒制御部との間の冷媒流路と前記第2の熱交換器と前記圧縮機との間の冷媒流路とを、前記第4の冷媒制御部を備えた第2のバイパス流路にて接続した車両用空調装置の運転制御方法であって、
除湿暖房運転モードにおいて、熱負荷が所定値を超えていないと判定された場合に、前記第1の冷媒制御部で冷媒流路を絞り、前記第2の冷媒制御部で冷媒流路を閉じ、前記第3の冷媒制御部で冷媒流路を絞り、前記第4の冷媒制御部で冷媒流路を閉じないで、前記圧縮機から吐出した冷媒を、前記第1の熱交換器、前記第1の冷媒制御部、前記車室外熱交換器、前記第4の冷媒制御部、及び前記圧縮機の順で冷媒を循環させると共に、前記第1の熱交換器、前記第3の冷媒制御部、前記第2の熱交換器、及び前記圧縮機の順で冷媒を循環させ、
前記熱負荷が所定の値を超えていると判定された場合に、前記第1の冷媒制御部で冷媒流路を絞り、前記第2の冷媒制御部で冷媒流路を絞り、前記第3の冷媒制御部で冷媒流路を絞り、前記第4の冷媒制御部で冷媒流路を閉じて、前記圧縮機から吐出した冷媒を、前記第1の熱交換器、前記第1の冷媒制御部、前記車室外熱交換器、前記第2の冷媒制御部、前記第2の熱交換器、及び前記圧縮機の順で冷媒を循環させると共に、前記第1の熱交換器、前記第3の冷媒制御部、前記第2の熱交換器、及び前記圧縮機の順で冷媒を循環させる
ことを特徴とする車両用空調装置の運転制御方法。
【請求項2】
前記第1の冷媒制御部、前記第2の冷媒制御部、及び前記第3の冷媒制御部のそれぞれの絞り部分の断面積をA,B,Cとすると、各断面積は、除湿暖房運転モードにおいて、
熱負荷が所定値を超えていないと判定された場合には、
A≦C
の関係となるように、
熱負荷が所定値を超えていると判定された場合には、
A≦C<B
の関係となるように、制御もしくは設定されていることを特徴とする請求項1記載の車両用空調装置の運転制御方法。
【請求項3】
前記第1の冷媒制御部は第1の膨張装置と第1の開閉弁とを並列的に接続してなり、前記第2の冷媒制御部は第2の膨張装置と第2の開閉弁とを直列的に接続してなり、前記第3の冷媒制御部は第3の膨張装置と第3の開閉弁とを直列的に接続してなり、前記第4の冷媒制御部は第4の開閉弁よりなることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用空調装置の運転制御方法。
【請求項4】
前記第1の膨張装置、前記第2の膨張装置、及び前記第3の膨張装置は、固定オリフィスであることを特徴とする請求項3記載の車両用空調装置の運転制御方法。
【請求項5】
前記第3の膨張装置は、可変式膨張弁であることを特徴とする請求項3記載の車両用空調装置の運転制御方法。
【請求項6】
前記第2の開閉弁と前記第4の開閉弁とを1つの三方弁で置き換えたことを特徴とする請求項3乃至5のいずれかに記載の車両用空調装置の運転制御方法。
【請求項7】
前記第1の冷媒制御部は、冷媒流路を絞ること及び絞らないことが可能な可変式膨張弁によりなることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用空調装置の運転制御方法。
【請求項8】
前記第2の冷媒制御部および/または前記第3の冷媒制御部は、冷媒流路を絞ること及び閉じることが可能な可変式膨張弁によりなることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用空調装置の運転制御方法。
【請求項9】
前記空調ユニット内に配置されてダンパにより通風量が調整されると共に液体状熱媒体が内部を循環する第3の熱交換器と、前記液体状熱媒体を圧送するポンプと、前記液体状熱媒体と前記圧縮機から吐出した冷媒とを熱交換させる第4の熱交換器とを配管接続して構成された温水サイクルを備え、
前記第1の熱交換器を前記温水サイクルに置き換えたことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の車両用空調装置の運転制御方法。
【請求項10】
前記圧縮機の吸入側の冷媒と前記第1の熱交換器の流出側の冷媒とを熱交換させる内部熱交換器を更に設けたことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の車両用空調装置の運転制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−56670(P2013−56670A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−281422(P2012−281422)
【出願日】平成24年12月25日(2012.12.25)
【分割の表示】特願2012−556729(P2012−556729)の分割
【原出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(500309126)株式会社ヴァレオジャパン (282)
【Fターム(参考)】