説明

車両用空調装置

【課題】 冷房用熱交換器43をエンジンルーム側から上方へ脱着するタイプの車両用空調装置において、冷房用熱交換器43の脱着作業性の向上と、冷房用熱交換器43の耐食性向上とを両立させる。
【解決手段】 冷房用熱交換器43の下側タンク部43eの下方に下側カバー56を配置し、この下側カバー56に、下側タンク部43eの空気流れ上流側部分を被覆する前面壁部56aと、下側タンク部43eに弾性力により係止される係止爪片56e、56fとを設ける。これによると、冷房用熱交換器43の脱着時に、下側カバー56を下側タンク部43eに取り付けたまま脱落させることなく、冷房用熱交換器43と下側カバー56を一体に取り出すことができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、冷房用熱交換器(蒸発器)をエンジンルーム側から上方へ取り出して、冷房用熱交換器の脱着を行うようにした車両用空調装置に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、車両用空調装置では、送風機ユニットおよび空調ユニットをいずれも車室内に設置している。しかし、一部の車両においては、車室内における空調装置の設置スペースを低減するため、送風機ユニットを車室前方のエンジンルーム内に配置している。
【0003】この場合、前席乗員の足元スペース確保のために、車室内とエンジンルーム内とを仕切るダッシュボードは、上部から下部へ向かって次第に車両前方側へ傾斜した配置になっている。そのため、空調ユニットの前方側の上部、具体的には、冷房用熱交換器の上側部分がエンジンルーム内に位置する配置レイアウトとなることが多い。このような配置によると、車両搭載後、冷房用熱交換器を交換する際には、冷房用熱交換器をエンジンルーム側から上方へ取り出すことになる。
【0004】ところで、冷房用熱交換器は凝縮水の排水性確保のために、冷媒通路をなすチューブを上下方向に配置しており、これに伴って、複数のチューブへの冷媒の分配、集合を行うタンク部を冷媒通路の上下両側あるいは冷媒通路の下側に配置することになる。本出願人の先願(特願平9−42635号)において記載しているように、送風空気中の種々な塵埃等の異物が冷房用熱交換器の下側タンク部の上流側に堆積、付着すると、下側タンク部を構成する金属材(アルミニウム)の腐食を促進するという問題が生じる。
【0005】この問題解決のために上記の先願では、冷房用熱交換器の下側タンク部の上流側に、下側タンク部を被覆する被覆壁を配置し、これにより、被覆壁の前面側に塵埃等の異物を堆積させて、異物が下側タンク部に直接付着することを防止するようにしている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、冷房用熱交換器を上述のごとくエンジンルーム側から上方へ取り出すようにしたものでは、冷房用熱交換器をエンジンルーム側へ傾けて上方へ取り出す必要があるので、上記先願のごとく被覆壁を空調ユニットのケースに一体に設けるものでは、下側タンク部上流側に位置する被覆壁が妨げとなって、冷房用熱交換器をエンジンルーム側へ傾けて上方へ取り出すことが困難となる。その結果、下側タンク部を被覆する被覆壁をケースに設けることができず、冷房用熱交換器の耐食性の低下を引き起こす。
【0007】なお、特開平7ー172152号公報には、冷房用熱交換器の下側タンク部の下方に凝縮水の排水性の促進を図るための排水ケースを配置するものが提案されているが、この従来技術では車両搭載後における冷房用熱交換器の点検交換等のための脱着作業性については何ら言及していない。この従来技術では、上記の排水ケースを下側タンク部と空調ユニットのケースとの間に単に挟み込んでいるだけであるので、この従来技術において、もし、冷房用熱交換器を上方へ取り出すようにすると、冷房用熱交換器の脱着時に排水ケースが冷房用熱交換器から分離、脱落してしまい、脱着作業性を著しく悪化させる。
【0008】本発明は上記点に鑑みてなされたもので、冷房用熱交換器をエンジンルーム側から上方へ脱着するタイプの車両用空調装置において、冷房用熱交換器の脱着作業性の向上と、冷房用熱交換器の耐食性向上とを両立させることを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、請求項1〜5記載の発明では、冷房用熱交換器(43)の下側タンク部(43e)の下方に下側カバー(56)を配置し、この下側カバー(56)に、下側タンク部(43e)の空気流れ上流側部分を被覆する前面壁部(56a)と、下側タンク部(43e)に弾性力により係止される係止爪片(56e、56f)とを設けたことを特徴としている。
【0010】これによると、車室(12)側に位置する冷房用熱交換器(43)をエンジンルーム(11)側から上方へ脱着する際に、下側カバー(56)を下側タンク部(43e)に弾性的に取り付けたまま、下側カバー(56)の脱落を生じることなく、冷房用熱交換器(43)と下側カバー(56)を一体に取り出すことができる。そのため、冷房用熱交換器(43)の脱着作業性を向上できる。
【0011】しかも、係止爪片(56e、56f)の弾性変形により、下側カバー(56)を下側タンク部(43e)から簡単に分離できるので、冷房用熱交換器(43)の交換時に下側カバー(56)を再利用することができる。さらには、下側カバー(56)に設けた前面壁部(56a)により下側タンク部(43e)の空気流れ上流側部分を被覆しているから、下側タンク部(43e)等の金属表面に空気中の塵埃等の異物が直接付着するのを防止して、異物の直接付着による蒸発器(43)の耐食性低下を防止できる。
【0012】また、本発明は具体的には、請求項2記載のごとく、空調ユニット(40)のうち、冷房用熱交換器(43)の上側部位をエンジンルーム(11)内に位置させ、冷房用熱交換器(43)をエンジンルーム(11)側へ傾けて上方側へ取り出すようにした車両用空調装置において好適に実施できる。また、請求項3に記載のごとく、下側カバー(56)に、下側タンク部(43e)の下方に位置し、排水穴(56d)を有する底面壁部(56b)と、下側タンク部(43e)の空気流れ下流側部分を被覆する後面壁部(56c)を設け、下側カバー(56)を前面壁部(56a)と底面壁部(56b)と後面壁部(56c)とにより断面コの字状に形成し、そして、請求項4に記載のごとく、係止爪片(56e、56f)を、前面壁部(56a)および後面壁部(56c)の両方から下側タンク部(43e)に向かって突出するように形成し、この前後の両方の係止爪片(56e、56f)により下側タンク部(43e)を弾性的に挟持するようにすれば、下側タンク部(43e)の外形に沿った断面コの字状の下側カバー(56)を下側タンク部(43e)に安定的に保持できる。
【0013】また、請求項5に記載のごとく、空調ユニット(40)に備えられ、冷房用熱交換器(43)を収容するケース(41)のうち、前面壁部(56a)よりも空気流れ上流側部位に所定間隔を開けて、上下方向の壁面(41e)を形成し、この壁面(41e)と前記前面壁部(56a)との間に塵埃堆積用の空間(58)を形成すれば、冷房用熱交換器(43)に衝突して落下する塵埃等の異物を溜めるためのスペースを前面壁部(56a)の上流側に充分確保できる。
【0014】なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。図1ないし図4は本発明の一実施形態を示すもので、図1は空調装置通風系の全体構成を示す概要側面図である。空調装置が搭載される車両は、図1R>1に示すように、ダッシュパネル10により車両前方側のエンジンルーム11と、車両後方側の車室12とに仕切られている。そして、空調装置通風系は大別して、送風機ユニット20と空調ユニット40の2つの部分に分かれており、送風機ユニット20は、ダッシュパネル10の直ぐ前方のエンジンルーム11内に設置される。
【0016】一方、空調ユニット40はダッシュパネル10の直ぐ後方の車室12内に設置されるものであって、送風機ユニット20と空調ユニット40はダッシュパネル10の開口部10aを通して一体に接続されるようになっている。空調ユニット40はより具体的には、車室12内の前部に設置される計器盤(図示せず)内において車両左右方向(図1の紙面垂直方向)の略中央位置に設置される。但し、空調ユニット40のうち、車両前方側の上部はエンジンルーム11内に設置されるようになっている。
【0017】ここで、送風機ユニット20もエンジンルーム11内で車両左右方向の略中央位置に設置されているので、本実施形態の空調装置通風系は送風機ユニット20から空調ユニット40に至る全体が車両左右方向の略中央部位に位置しているので、完全センター置きユニットを構成している。また、送風機ユニット20のケース21および空調ユニット40のケース41はともに複数の樹脂製の分割ケースを金属板バネ、ネジ等の適宜の締結手段により一体に結合して構成され、これらケース21、41の内部に空調空気が流れる空気通路を形成している。そして、ケース21、41には、ダッシュパネル10の開口部10aの周縁部に沿ってフランジ部28、42が備えられている。
【0018】このフランジ部28、42はダッシュパネル10の開口部10aの周縁部にシール材(図示せず)を介して気密に取り付けられるもので、下側のフランジ部42は空調ユニット40のケース41に一体成形され、上側のフランジ部28は送風機ユニット20のケース21の一部を形成する内気吸入ケース29に一体成形されている。
【0019】送風機ユニット20のケース21内には、回転軸(図示せず)が車両左右方向に向くように配置された遠心式送風ファン22が収容されている。このケース21の上部で、車両後方側の部位に内気ケース23が備えられており、この内気ケース23は内気吸入ケース29を通して車室12内に連通し、車室内空気(内気)を吸入する。この内気ケース23の内部には内気通路を開閉する板状の内気ドア24が回動可能に配置されている。
【0020】また、ケース22の上部で、車両前方側の部位には、車室外空気(外気)を吸入するための外気ケース25が備えられており、この外気ケース25の内部には外気通路を開閉する板状の外気ドア26が回動可能に配置されている。ここで、この両ドア24、26は図示しないリンク機構により連結され、連動操作される。
【0021】そして、内気ケース23からの内気または外気ケース25からの外気は送風ファン22に吸入され、送風ファン22はその吸入空気を矢印Bのように車両後方側の空調ユニット40へ向かって送風する。次に、空調ユニット40部について説明すると、空調ユニット40のケース41内において、最も車両前方側(換言すると、空気流れ上流側)の部位に蒸発器(冷房用熱交換器)43が配置され、この蒸発器43の下流側にヒータコア(暖房用熱交換器)44が配置されている。蒸発器43は周知のごとく冷凍サイクルの冷媒の蒸発潜熱を空調空気から吸熱して、空調空気を冷却するものである。
【0022】ヒータコア44は、蒸発器43を通過した冷風を再加熱するものであって、その内部に高温の温水(エンジン冷却水)が流れ、この温水を熱源として空気を加熱するものである。なお、本例における空調ユニット40は、ヒータコア44への温水流量を調整して吹出空気温度を制御する構成となっている。ヒータコア44で温度調整された空気を吹き出す吹出開口部として、空調ユニットケース41の上面部にデフロスタ開口部45が開口している。このデフロスタ開口部45は車両窓ガラス内面に向けて風を吹き出すもので、デフロスタドア46により開閉される。
【0023】また、空調ユニットケース41の最も車両後方側(乗員寄り)の上部にはセンターフェイス開口部47が開口し、空調ユニットケース41の左右の側面の上部には、左右のサイドフェイス開口部48が開口している。このセンターフェイス開口部47およびサイドフェイス開口部48は前席乗員の頭部側に向けて風を吹き出す。サイドフェイス開口部48は冬季暖房時に車両側面窓ガラスに温風を吹き出して側面窓ガラスの曇り止めのためにも使用される。
【0024】また、空調ユニットケース41の左右の側面の下部にはフット開口部49が開口している。このフット開口部49は前席乗員の足元部に温風を吹き出す。また、空調ユニットケース41の車両後方側の下部に後席用フット開口部50が開口しており、この後席用フット開口部50は後席用フットドア51により開閉される。なお、センターフェイス開口部47を開閉するフェイスドアおよびフット開口部49を開閉するフットドアは図示されていない。
【0025】図1に示すように、空調ユニット40のうち、車両前方側の上部、すなわち、蒸発器43の上方側の部位は、フランジ部28、42より車両前方側のエンジンルーム11内に位置している。蒸発器43の入口側、出口側の冷媒配管と、エンジンルーム11内に配置される冷凍サイクル冷媒配管との接続を行う配管コネクタ52はエンジンルーム11内に配置されている。
【0026】次に、図2は上記蒸発器43の具体的構造を例示するものであり、図2の蒸発器43は一般に積層型と称されるタイプのもであって、偏平チューブ43aはアルミニュウム製の金属薄板を2枚最中合わせ状に接合して構成されており、その偏平面は空気流れと平行になっている。そして、この偏平チューブ43aとコルゲートフィン43bとを交互に図2の左右方向に所定数積層した後に、その積層した組付状態を適宜の治具にて保持して炉中にて一体ろう付けしたものである。偏平チューブ43aとコルゲートフィン43bとにより空調空気との間で熱交換を行う熱交換コア部43cが構成される。
【0027】一方、偏平チューブ43aを構成する金属薄板の上下両端部には上側タンク部43dおよび下側タンク部43eが構成されている。この上側タンク部43dおよび下側タンク部43eは上記金属薄板の上下両端部に一体成形した椀状の突出部により構成されるものであって、複数の偏平チューブ43aへの冷媒の分配、および複数の偏平チューブ43aからの冷媒の集合を行う。なお、図2の例では、上側タンク部43dおよび下側タンク部43eはそれぞれ空気流れの上流側と下流側に分割されたタンク部を形成している。
【0028】上記の上側タンク部43dおよび下側タンク部43eにはそれぞれ隣接するタンク部相互を連通する連通穴(図示せず)が設けられており、この連通穴により上側タンク部43dおよび下側タンク部43eの通路が図2の左右方向に連通している。前記した配管コネクタ52は、蒸発器43の冷媒入口配管43fおよび冷媒出口配管43gをそれぞれ冷凍サイクルの高圧液配管53および低圧ガス配管54と接続するためのものである。低圧ガス配管54は冷凍サイクルの図示しないアキュームレータを介して圧縮機吸入側に接続され、また、高圧液配管53は冷凍サイクルの図示しない凝縮器出口側に接続される。また、高圧液配管53において、配管コネクタ52の近傍位置には高圧液冷媒の減圧手段をなす固定絞り(オリスィス)55が内蔵され、この固定絞り55で減圧された低圧の気液2相冷媒が蒸発器43に流入する。
【0029】上記の蒸発器43は図1、図2に示すように熱交換コア部43cが略上下方向に向くようにして空調ユニットケース41内に収容され、空調空気は熱交換コア部43cを水平方向に流れるようになっている。従って、熱交換コア部43cの偏平チューブ43aはその長手方向が略上下方向に向くように配置されている。図3R>3は本発明の要部を示すもので、蒸発器43の下側部分の組付構造を拡大図示している。蒸発器43において、偏平チューブ43aは空気流れの前後方向に2つの風上側冷媒通路43hと風下側冷媒通路43iを並列に形成しており、これに伴って、偏平チューブ43aと一体の下側タンク部43eも空気流れの前後方向に2つに分割して形成されている。
【0030】この下側タンク部43e、43eの下方に下側カバー56が配置されている。図4は下側カバー56単体の形状を示すもので、下側カバー56はある程度の弾性を有する樹脂(例えばABS樹脂)にて概略コの字状の断面形状に成形されている。この下側カバー56は後述の構成により樹脂の弾性力(弾性変形)を利用して下側タンク部43e、43eの部分に脱着可能に取り付けられる。
【0031】この下側カバー56のコの字状の断面形状は、前面壁部56aと底面壁部56bと後面壁部56cの3つの部分で形成されている。前面壁部56aは、下側タンク部43eの空気流れ上流側部分を車両左右方向(図2の左右方向)の全長にわたって被覆するように形成されている。また、底面壁部56bは下側タンク部43eの下方に位置する部分であり、蒸発器43で発生する凝縮水を排出するための排水穴56dを多数有している。この排水穴56dは図4に示すように三角状のもので、底面壁部56bのうち、空気流れ下流側の部位に開口している。
【0032】蒸発器43および下側カバー56は空気下流側が下方となるように若干量だけ傾斜配置されているので、底面壁部56b上の凝縮水は空気下流側に移動して排水穴56dから空調ユニットケース41底面の傾斜案内面41a上に落下する。そして、この傾斜案内面41aの最低部に設けられた排水パイプ41b(図1)から凝縮水は外部へ排出される。
【0033】次に、後面壁部56cは下側タンク部43eの空気流れ下流側部分を車両左右方向(図2の左右方向)の全長にわたって被覆するように形成されている。そして、前面壁部56aおよび後面壁部56cの内壁面から下側タンク部43eに向かって突出する係止爪片56e、56fがそれぞれ複数づつ形成されている。この係止爪片56e、56fは本例では図4(a)に示すように4個づつ互いに対向するように設けられている。
【0034】また、この係止爪片56e、56fの高さ(上下方向寸法)は下側タンク部43eの上下方向の中間部位より上方へ突出するように設定してある。そして、係止爪片56e、56fの上端部に下側タンク部43e側へさらに突出する突部56g、56hが設けてある。この突部56g、56h間の間隔は、2つの下側タンク部43e、43eの車両前後方向の最大寸法L(図3R>3)より所定量小さく設定してあり、このような寸法設定により、前後の2つの係止爪片56e、56fにより下側タンク部43e、43eを弾性的に挟持するようにしてある。
【0035】また、底面壁部56bには下方へ突出する位置決め用リブ56iが2箇所(図4(a)参照)設けられており、一方、空調ユニットケース41底面の傾斜案内面41aには上方へ突出する位置決め用リブ41cが設けられている。このケース側のリブ56iに蒸発器43側のリブ56iを当接することにより、蒸発器43の車両前方側への位置決めを行うことができる。
【0036】さらに、空調ユニットケース41の左右両側の側壁の内側には、下側カバー56の後面壁部56cに対応する位置決め用リブ41dが設けられているので、後面壁部56cがこの位置決め用リブ41dに当接することにより、蒸発器43の車両後方側への位置決めを行うことができる。以上により、蒸発器43の下方側を下側カバー56を介して空調ユニットケース41に対して位置決めし固定することができる。蒸発器43の上方側は、エンジンルーム11内に位置する内気吸入ケース29により位置決めされ、固定される。
【0037】なお、位置決め用リブ41cは傾斜案内面41aの車両左右方向の全長にわたって延びるように形成されているので、この位置決め用リブ41cの上端に下側カバー56の底面壁部56bが当接することにより、下側カバー56の下方部の空間57を車両前後方向に対して遮断することができる。従って、下側カバー56の下方部の空間57を送風空気が通過することを阻止できる。
【0038】空調ユニットケース41の底面部において、下側カバー56の前面壁部56aよりも空気流れ上流側部位に所定間隔を開けて、上下方向の壁面41eを形成し、この壁面41eと前面壁部56aとの間に空間58を形成している。この空間58および空間57は下側カバー56の前面壁部56aより空気流れ上流側に落下する送風空気中の塵埃等の異物を堆積させるためのスペースを形成する。
【0039】上記構成おいて本実施形態の作用を説明すると、送風機ユニット20の送風ファン22を作動させると、内気または外気が送風ファン22により送風されて、蒸発器43の熱交換コア部43cの偏平チューブ43aおよびコルゲートフィン43bの間を通過する。このとき、空気は偏平チューブ43a内を流通する冷媒により吸熱され、冷風となる。そして、冷風はヒータコア44により温度調整された後に、所定の吹出開口部45、47、48、49、50から車室内へ吹き出す。
【0040】一方、蒸発器43に送風される空気には、種々な塵埃(例えば、綿埃、昆虫類、枯れ葉等)を含む異物が混在しており、これらの異物は蒸発器43の偏平チューブ43aおよびコルゲートフィン43bの間を通過するときに、偏平チューブ43aやコルゲートフィン43bに衝突し、下方へ落下し、堆積しようとする。この際、蒸発器43の下側タンク部43eの前面側に空間58を形成するとともに、この下側タンク部43eの前面側を下側カバー56の前面壁部56aにより被覆しているので、上記異物が蒸発器43の下側タンク部43eに付着しようとするのを前面壁部56aにより阻止できる。
【0041】このため、異物は前面壁部56aに沿って空間58および空間57内部に落下し、堆積していく。以上の結果、蒸発器43の下側タンク部43eを構成するアルミニュウム材に異物が直接付着して、アルミニュウム材の腐食を促進するという不具合を確実に防止できる。また、下側タンク部43eにはそのろう付け面を形成する鍔状凸部43j(図2参照)が形成されており、この鍔状凸部43jによる凹凸形状の隙間を通して空気漏れが発生しやすいが、本実施形態によると、下側タンク部43eの前面、後面を下側カバー56の前面壁部56a、後面壁部56cにより被覆しているので、上記鍔状凸部22cによる隙間がたとえ発生しても、この隙間からの空気漏れを確実に防止できる。
【0042】この隙間を通る空気はほとんど冷却されないので、冷却能力低下の原因となるが、本実施形態ではこのような不具合を確実に防止できる。なお、下側カバー56の前面壁部56a、後面壁部56cは下側タンク部43eの部分を被覆するだけで、チューブ43aとフィン43bとからなる熱交換コア部43cは被覆しないので、蒸発器43の性能低下を招くことはない。
【0043】次に、本実施形態における蒸発器43部分の組付方法および脱着方法について説明すると、蒸発器43の下側タンク部43eに対して、下側カバー56の係止爪片56e、56fの突部56g、56hの間隔を弾性的に押し広げながら、係止爪片56e、56fを下側タンク部43eの外面形状に図3のごとく嵌合係止させる。すなわち、図3の状態では、突部56g、56hが下側タンク部43eの外面形状の最大寸法Lの部分より上側の部位に位置して、突部56g、56hがタンク外面形状により係止されて下方へ抜けることがない。従って、蒸発器43と下側カバー56とを確実に一体化でき、蒸発器43の脱着時に下側カバー56が脱落する恐れはない。
【0044】次に、蒸発器43の交換、点検修理等のために、蒸発器43を空調ユニット40から脱着する際の作業について説明すると、まず、エンジンルーム11内の送風機ユニット20の上側に位置する内気ケース23、外気ケース25、内気吸入ケース29等を取り外す。これにより、空調ユニット40において、車両前方側の上部がエンジンルーム11内に開放され、蒸発器43の上部がエンジンルーム11内に開放される。
【0045】次に、蒸発器43を若干量上方へ移動させて、下側カバー56の下方のリブ56iを空調ユニットケース41のリブ41cより上方へ移動させ、この両リブ56i、41cの当接状態を解除する。これにより、蒸発器43を前方のエンジンルーム11側へ傾けることができる。そこで、次に、蒸発器43を前方側へ傾けながら上方へ取り出すことより、エンジンルーム11を通して蒸発器43を上方側へ取り出すことができる。
【0046】このとき、下側カバー56は脱落することなく蒸発器43と一体に取り出されるので、蒸発器43の取り出し作業を簡単に行うことができる。蒸発器43を交換するときは、下側カバー56の係止爪片56e、56fの突部56g、56hの間隔を弾性的に押し広げながら、係止爪片56e、56fを下側タンク部43eの外面形状から引き下げることにより、下側カバー56を下側タンク部43eから簡単に分離できる。従って、交換後の蒸発器43に対して下側カバー56を再利用することがてきる。
【0047】また、蒸発器43の装着時においても、下側カバー56を一体に組付けたまま蒸発器43を空調ユニットケース41内に挿入できるので、作業性がよい。
(他の実施形態)なお、上記した実施形態では、蒸発器43として図2に示す上下両方にタンク部43d、43eを有するものについて説明したが、タンク部を蒸発器43の下側のみに配置し、上側にはタンク部を配置しないタイプのものでも本発明は同様に実施できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態による車両用空調装置の全体構成の概要側面図である。
【図2】図1の蒸発器の具体的構造を例示する斜視図である。
【図3】図1の要部の拡大断面図である。
【図4】(a)は図2に示す蒸発器の下側カバーの平面図、(b)は同下側カバーの左側面図、(c)は(a)のA−A矢視断面図である。
【符号の説明】
11…エンジンルーム、12…車室、20…送風機ユニット、40…空調ユニット、43…蒸発器(冷房用熱交換器)、43a…チューブ、43e…下側タンク部、56…下側カバー、56a…前面壁部、56b…底面壁部、56c…後面壁部、56d…排水穴、56e、56f…係止爪片。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 冷房用熱交換器(43)を備える空調ユニット(40)を車室(12)内に配置し、前記空調ユニット(40)に空気を送風する送風機ユニット(20)をエンジンルーム(11)内に配置し、前記空調ユニット(40)から前記冷房用熱交換器(43)を前記エンジンルーム(11)を通して上方側へ取り出して、前記冷房用熱交換器(43)の脱着を行うようにした車両用空調装置において、前記冷房用熱交換器(43)は、上下方向に配置された複数のチューブ(43a)と、この複数のチューブ(43a)の下側に配置され、この複数のチューブ(43a)への冷媒の分配、集合を行う下側タンク部(43e)とを有し、前記下側タンク部(43e)の下方に下側カバー(56)を配置し、この下側カバー(56)に、前記下側タンク部(43e)の空気流れ上流側部分を被覆する前面壁部(56a)と、前記下側タンク部(43e)に弾性力により係止される係止爪片(56e、56f)とを設けたことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】 前記空調ユニット(40)のうち、前記冷房用熱交換器(43)の上側部位は前記エンジンルーム(11)内に位置させ、前記冷房用熱交換器(43)を前記エンジンルーム(11)側へ傾けて上方側へ取り出すようにしたことを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】 前記下側カバー(56)に、前記下側タンク部(43e)の下方に位置し、排水穴(56d)を有する底面壁部(56b)と、前記下側タンク部(43e)の空気流れ下流側部分を被覆する後面壁部(56c)が設けられており、前記下側カバー(56)を前記前面壁部(56a)と前記底面壁部(56b)と前記後面壁部(56c)とにより断面コの字状に形成したことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】 前記係止爪片(56e、56f)は、前記前面壁部(56a)および前記後面壁部(56c)の両方から前記下側タンク部(43e)に向かって突出するように形成され、この前後の両方の係止爪片(56e、56f)により前記下側タンク部(43e)を弾性的に挟持するようにしたことを特徴とする請求項3に記載の車両用空調装置。
【請求項5】 前記空調ユニット(40)に備えられ、前記冷房用熱交換器(43)を収容するケース(41)のうち、前記前面壁部(56a)よりも空気流れ上流側部位に所定間隔を開けて、上下方向の壁面(41e)を形成し、この壁面(41e)と前記前面壁部(56a)との間に塵埃堆積用の空間(58)を形成したことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2000−94944(P2000−94944A)
【公開日】平成12年4月4日(2000.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−269966
【出願日】平成10年9月24日(1998.9.24)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)