説明

車両用空調装置

【課題】車両用空調装置の熱交換器の点検、清掃を容易に行えるようにする。
【解決手段】キャビン10内に形成される車室内空間15に配置され、空気が流れる空気通路を形成するケース21と、ケース21内に収納され、空気と熱交換する熱交換器24とを備え、ケース21がキャビン10の周壁部12に隣接配置され、ケース21のうち周壁部12と隣接する部位には、ケース側カバー41によって開閉されるケース側開口部40が形成され、ケース側開口部40は、周壁部12に開口してキャビン側カバー43によって開閉されるキャビン側開口部42に重合配置され、熱交換器24の熱交換コア部24aをケース側開口部40に対向配置した。これにより、熱交換器24をケース21内に収納したままでキャビン10外部から点検、清掃できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置に関するもので、油圧ショベル等の建設機械に用いて好適である。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用空調装置では、冷却用熱交換器(蒸発器)が車室内空調ユニットのケース内に収納されている。このようなケース内に配置された冷却用熱交換器に対して点検、清掃(メンテナンス)を行う場合には、狭い車室内空間において冷却用熱交換器を空調ユニットのケースから取り出した後に冷却用熱交換器を点検、清掃する必要がある。このため、冷却用熱交換器の点検、清掃に多大な時間を費やしていた。
【0003】
そこで、冷却用熱交換器の点検、清掃を短時間で行うことができる車両用空調装置が特許文献1にて提案されている。この従来技術では、例えばトラックのように、空調ユニットを車両前面外板の直ぐ後方に配置する車両において、空調ユニットのケースの前面および車両前面外板の両方に冷却用熱交換器取り出し用の開口部を重合配置している。両開口部はそれぞれ、カバーによって開閉可能になっている。
【0004】
これにより、冷却用熱交換器を点検、清掃するにあたって、まずカバーを操作して両開口部を開放した後に、両開口部を通じて冷却用熱交換器を空調ユニットのケースから車両前方(車両外部)に取り出すことができる。
【0005】
つまり、この従来技術では、冷却用熱交換器を車両外部に直接取り出すことができるので、狭い車室内空間で冷却用熱交換器の取り出し作業を行う必要がない。このため、冷却用熱交換器の点検、清掃に費やす時間を短縮化できる。
【特許文献1】実開平5−56516号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術では、冷却用熱交換器を空調ユニットのケースから取り出すので、冷却用熱交換器から冷媒配管を取り外す手間がかかるという問題がある。また、冷媒配管を取り外す前に車両用空調装置の冷媒回路から冷媒を抜く手間がかかるという問題がある。
【0007】
特に、油圧ショベル等の建設機械では、砂塵等、粉塵の厳しい環境で使用されるため、冷却用熱交換器の熱交換コア部の微細なフィン空隙部に粉塵が付着して、熱交換コア部の目詰まりが発生しやすい。このため、冷却用熱交換器の点検、清掃の頻度が高くなり、上記問題が顕著になってしまう。
【0008】
また、上記問題は、冷却用熱交換器のみならず、加熱用熱交換器においても同様に発生する。
【0009】
本発明は、上記点に鑑み、車両用空調装置の熱交換器の点検、清掃を容易に行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、キャビン(10)内に形成される車室内空間(15)に配置され、空気が流れる空気通路を形成するケース(21)と、
ケース(21)内に収納され、空気と熱交換する熱交換器(24)とを備え、
ケース(21)がキャビン(10)の周壁部(12)に隣接配置され、
ケース(21)のうち周壁部(12)と隣接する部位には、ケース側カバー(41)によって開閉されるケース側開口部(40)が形成され、
ケース側開口部(40)は、周壁部(12)に開口してキャビン側カバー(43)によって開閉されるキャビン側開口部(42)に重合配置され、
熱交換器(24)の熱交換コア部(24a)がケース側開口部(40)に対向配置されていることを特徴とする。
【0011】
これによると、ケース側開口部(40)およびキャビン側開口部(42)を開放することによって、熱交換器(24)の熱交換コア部(24a)をキャビン(10)外部に露出させることができる。
【0012】
換言すれば、熱交換器(24)の熱交換コア部(24a)をケース(21)内に収納した状態のままでキャビン(10)外部から点検、清掃することができる。
【0013】
このため、熱交換器(24)を点検、清掃するにあたって熱交換器(24)をケース(21)から取り出す必要がない。また、狭いキャビン(10)内で熱交換器(24)を点検、清掃する必要がない。この結果、熱交換器(24)の点検、清掃を容易に行うことができる。
【0014】
なお、熱交換器(24)の点検、清掃時以外は、ケース側カバー(41)、キャビン側カバー(43)によってケース側開口部(40)、キャビン側開口部(42)を閉塞できるので、ケース側開口部(40)によってケース(21)の本来の機能(空気通路を形成する機能)が損なわれることはなく、キャビン側開口部(42)によってキャビン(10)の本来の機能(車室内空間(15)を形成する機能)が損なわれることはない。
【0015】
本発明は、具体的には、熱交換コア部(24a)のうち空気流れ上流側部位がケース側開口部(40)に対向しているので、より粉塵が付着しやすい熱交換コア部(24a)の空気流れ上流側部位の点検、清掃を容易に行うことができる。
【0016】
また、本発明は、具体的には、周壁部は、キャビン(10)の後面壁部(12)であり、
ケース(21)がキャビン(10)内の後方側に配置され、
熱交換器(24)がケース(21)内の後方側に収納されている。
【0017】
これにより、熱交換器(24)をキャビン(10)後方側から点検、清掃することができる。
【0018】
また、本発明は、具体的には、ケース側カバー(41)の面積は、キャビン側開口部(42)の面積よりも小さくなっており、
ケース側カバー(41)は、ケース(21)に着脱自在に固定されており、
ケース側カバー(41)の着脱によって、ケース側開口部(40)が開閉されるようになっている。
【0019】
これによると、ケース側カバー(41)の着脱によってケース側開口部(40)が開閉されるので、ケース側開口部(40)の開閉構造を簡素化できる。
【0020】
また、ケース側カバー(41)の面積がキャビン側開口部(42)の面積よりも小さくなっているので、取り外したケース側カバー(41)をケース側開口部(40)からキャビン(10)外部に取り出すことができる。このため、取り外したケース側カバー(41)が熱交換器(24)の点検、清掃作業の支障になることがない。
【0021】
また、本発明は、具体的には、ケース側カバー(41)の面積は、キャビン側開口部(42)の面積よりも小さくなっており、
ケース側カバー(41)は、ケース(21)に対して、ケース側開口部(40)の開口方向と直交する方向に揺動可能に支持されており、
ケース側カバー(41)の揺動によって、ケース側開口部(40)が開閉されるようになっており、
さらに、ケース側開口部(40)を開放する方向にケース側カバー(41)を揺動したときには、ケース側カバー(41)がキャビン側開口部(42)を通じてキャビン(10)の外部に突き出すようにしてもよい。
【0022】
これにより、ケース側カバー(41)によってケース側開口部(40)を容易に開閉できる。
【0023】
また、本発明は、具体的には、ケース側カバー(41)は、ケース(21)に対して、ケース側開口部(40)の開口方向と直交する方向に平行移動可能に支持されており、
ケース側カバー(41)の平行移動によって、ケース側開口部(40)が開閉されるようになっており、
さらに、ケース側カバー(41)が車室内空間(15)において平行移動するようにしてもよい。
【0024】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
(第1実施形態)
図1〜図3は本発明の第1実施形態を示すもので、本発明による車両用空調装置を建設機械、具体的には、油圧ショベルに適用したものである。図1は本実施形態による油圧ショベルのキャビン(運転室)の模式的な断面図であり、図2は図1における空調ユニット部の二面図であり、図3は図2におけるA−A断面図である。図1〜図3の前後、上下、左右の各矢印はキャビンの前後、上下、左右の各方向を示す。
【0026】
油圧ショベルのキャビン10は、前面壁部11と後面壁部12と天井壁部13と床面壁部14と左右の側面壁部(図示せず)とで構成される周壁部を有し、この周壁部により囲まれた車室内空間15を形成する。前面壁部11の上部は前面ガラス16によって構成され、後面壁部12の上部は後面ガラス17によって構成されている。左右の側面壁部の少なくとも一方には乗員乗降用ドア(図示せず)が配置されている。
【0027】
床面壁部14の略中央には、油圧ショベルの乗員が着座するシート18が配置されている。このシート18の後方かつ下方部位、すなわち、車室内空間15の最後部かつ最下部には空調ユニット20が搭載されている。なお、図1では、図示の都合上、空調ユニット20の形状を簡略化して図示している。
【0028】
次に、空調ユニット20の具体的構成を説明すると、空調ユニット20は箱形状をなすケース21を有し、このケース21の内部に空気が流れる空気通路を形成する。
【0029】
ケース21はポリプロピレンのようなある程度の弾性を有する強度的にも優れた樹脂材料で成形されており、成形の都合上、複数個の分割ケースに分割して成形されている。そして、ねじ、金属ばねクリップ等の締結手段を用いて複数個の分割ケースを一体に締結することによりケース21が構成される。
【0030】
本例では、ケース21の側面壁部に送風機部22を一体に配置している。この送風機部22はモータ22aにより回転駆動される遠心式の送風ファン22bと、この送風ファン22bを収容しているスクロールケーシング22cとを有する。
【0031】
送風ファン22bの回転軸(図示せず)は上下方向を向いて配置されているので、送風機部22の空気入口部22dは、スクロールケーシング22cの上面部に配置される。送風機部22の空気出口部22eは、スクロールケーシング22cの後方側(図2(a)の下方側)にてケース21側(図2(a)の右方側)を向いて開口している。
【0032】
送風機部22の上面部には、内気と外気とを切替導入する内外気切替箱23が配置されている。この内外気切替箱23の後面壁部には外気導入口23aが形成され、この外気導入口23aを図示しない外気ドア(板状ドア)により開閉するようになっている。また、内外気切替箱23の前面壁部には内気導入口23bが形成され、この内気導入口23bを図示しない内気ドア(板状ドア)により開閉するようになっている。
【0033】
本例では、外気ドアおよび内気ドアを回転駆動する駆動機構として、サーボモータからなる電気的アクチュエータ(図示せず)を使用している。また、外気ドアおよび内気ドアの駆動機構として、空調操作パネル(図示せず)に設けられた内外気切替操作部材(例えば、手動操作レバー)の手動操作力をケーブル、リンク機構等を介して各ドアの回転軸に伝達する手動操作機構を使用してもよい。
【0034】
外気導入モードでは、外気ドアが外気導入口23aの全開位置に操作され、内気ドアが内気導入口23bの全閉位置に操作される。これにより、外気が図示しない外気口と外気ダクトとを介して外気導入口23aから内外気切替箱23内に取り入れられる。
【0035】
一方、内気導入モードでは、外気ドアが外気導入口の全閉位置に操作され、内気ドアが内気導入口23bの全開位置に操作される。これにより、内気が内気導入口23bから内外気切替箱23内に取り入れられる。
【0036】
さらに、内外気導入モードでは、外気ドアおよび内気ドアの両者が外気導入口23aおよび内気導入口23bの全開位置に操作される。これにより、外気と内気とが同時に外気導入口23aおよび内気導入口23bから内外気切替箱23内に取り入れられる。
【0037】
ケース21の内部における後方側(図3の右方側)には、ケース21の全幅にわたって略矩形形状の冷却用熱交換器24が略鉛直に配置されている。これにより、冷却用熱交換器24とケース21の後面壁部21aとの間には、送風機部22の空気出口部22eからケース21に向けて送風される空気(内気/外気)が流入する流入空間25が形成される。
【0038】
これにより、送風機部22の空気出口部22eからケース21内に流入した空気(内気/外気)の全量が、矢印aのように流入空間25側から冷却用熱交換器24を通過する。
【0039】
冷却用熱交換器24は冷凍サイクルの蒸発器であって、周知のごとく冷媒が通過する複数本のチューブとこのチューブの外表面に接合されたフィンとからなる熱交換コア部24aを有している。この熱交換コア部24aの空隙部を空気が通過し、この通過空気から冷凍サイクルの低温の低圧冷媒が吸熱して蒸発することにより空気を冷却する。
【0040】
本例における冷却用熱交換器24は、複数本のチューブに対する冷媒の分配または集合を行うタンク部24bをその上下端部に有している。
【0041】
なお、冷凍サイクルの冷媒を循環する圧縮機(図示せず)は電磁クラッチを介して油圧ショベルのエンジン(図示せず)により駆動される。
【0042】
ケース21の内部において、冷却用熱交換器24の空気流れ下流側(車両前方側)かつ下方側に略矩形形状の暖房用熱交換器26が配置されている。暖房用熱交換器26はケース21の全幅にわたって配置される。
【0043】
暖房用熱交換器26は油圧ショベルのエンジンの冷却水(温水)を熱源として空気を加熱する温水式熱交換器であって、周知のごとく温水が通過する複数本のチューブとこのチューブの外表面に接合されたフィンとからなる熱交換コア部26aを有している。この熱交換コア部26aの空隙部をヒータ通路36の空気が通過して加熱される。
【0044】
本例における暖房用熱交換器26は、複数本のチューブに対する温水の分配または集合を行うタンク部26bをその上下端部に有する、いわゆる全パスタイプのものであり、下側タンク部が温水入口タンク部を構成している。
【0045】
暖房用熱交換器26の上方には板状のエアミックスドア27が配置され、エアミックスドア27の回転軸27aが暖房用熱交換器26の上方端部付近に配置される。
【0046】
エアミックスドア27の回転軸27aは図3の紙面垂直方向(車両幅方向)に延びるように配置され、回転軸27aの両端部はケース21の左右両側の側壁面の軸受孔(図示せず)により回転可能に保持される。回転軸27aの一端部はケース21の外部に突出して、図示しない駆動機構に連結されている。
【0047】
ケース21内において、冷却用熱交換器24の空気流れ下流側であって暖房用熱交換器26の上方側に、暖房用熱交換器26をバイパスして冷風を矢印bのように流す冷風バイパス通路28が形成されている。一方、ケース21内において、暖房用熱交換器26の空気流れ下流側(車両前方側)には、暖房用熱交換器26で加熱された温風が矢印cのように流れる温風通路29が形成されている。
【0048】
ケース21の下面21bのうち暖房用熱交換器26の車両前方側部位には、上方側へ突き出す温風ガイド壁31がケース21と一体に形成されている。この温風ガイド壁31は温風通路29の車両前方側を区画するものであって、温風通路29の温風流れを矢印cのように冷風バイパス通路28側へガイドする。
【0049】
これにより、温風通路29の上方側であって、温風ガイド壁31の先端部周辺に、温風と冷風を良好に混合できる空気混合部32を形成している。
【0050】
図1において、エアミックスドア27の実線位置は暖房用熱交換器26の通風路を全閉して、冷風バイパス通路28を全開する最大冷房位置であり、二点鎖線位置は冷風バイパス通路28を全閉して、暖房用熱交換器26の通風路を全開する最大暖房位置である。
【0051】
エアミックスドア27は周知のごとく暖房用熱交換器26を通過する温風(矢印c)と暖房用熱交換器26をバイパスして冷風バイパス通路28を通過する冷風(矢印b)との風量割合を調整して車室内への吹出空気温度を調整する温度調整手段である。そして、空気混合部32において上記温風(矢印c)と上記冷風(矢印b)が混合されて所望温度の空気が得られる。
【0052】
ケース21内において冷風バイパス通路28の上方側に、空気混合部32と連通するフェイス・デフ通路33が形成されている。このフェイス・デフ通路33は、車両前方から車両後方へ延びるように形成されている。フェイス・デフ通路33のうち車両前方側の側面壁部にフロントフェイス・デフ開口部34が開口している。また、フェイス・デフ通路33のうち車両後方側の上面部にリヤフェイス開口部35が開口している。
【0053】
フロントフェイス・デフ開口部34には車両前方側に向かって延びるフロントフェイス・デフダクト(図示せず)が接続され、このフロントフェイス・デフダクトの下流側端部のフロントフェイス吹出口およびデフ吹出口から乗員の顔部および前面ガラス16に向けて空気を吹出すようになっている。
【0054】
なお、フロントフェイス吹出口およびデフ吹出口にはそれぞれ図示しないシャット機構が設けられ、このシャット機構によりフロントフェイス吹出口およびデフ吹出口をそれぞれ開閉できるようにしてある。このシャット機構は乗員の手動操作により開閉操作される。
【0055】
リヤフェイス開口部35には上方に向かって延びるリヤフェイスダクト(図示せず)が接続され、このリヤフェイスダクトの下流側端部のリヤフェイス吹出口から乗員の顔部に向けて空気を吹出すようになっている。
【0056】
ケース21内において温風通路29の車両前方側に、空気混合部32と連通するフット通路36が形成されている。このフット通路36は、上方から下方へ垂下するように形成されている。
【0057】
フット通路36の下方側の前面壁部にフット開口部37が開口している。フット開口部37には車両前方側に向かって延びるフットダクト(図示せず)が接続され、このフットダクトの下流側端部のフット吹出口から乗員の足元部に空気を吹出すようになっている。
【0058】
空気混合部32の車両前方側には、フェイス・デフ通路33とフット通路36を切替開閉する板状の吹出モード切換ドア38が配置されている。吹出モード切換ドア38の回転軸38aは図3の紙面垂直方向(車両幅方向)に延びるように配置され、回転軸38aの両端部はケース21の左右両側の側壁面の軸受孔(図示せず)により回転可能に保持される。回転軸38aの一端部はケース21の外部に突出して、図示しない駆動機構に連結されている。
【0059】
図1において、吹出モード切換ドア38の実線位置はフット通路36を全閉し、フェイス・デフ通路33を全開するフェイス・デフモード時の位置を示す。これに対し、吹出モード切換ドア38の二点鎖線位置は、フェイス・デフ通路33を全閉し、フット通路36を全開するフットモード位置を示す。
【0060】
また、リヤフェイス開口部35開閉する板状のリヤフェイスドア39は、フロントフェイス吹出口およびデフ吹出口からの吹出風量と、リヤフェイス吹出口からの吹出風量の風量割合を調整するものである。
【0061】
リヤフェイスドア39の回転軸39aは図3の紙面垂直方向(車両幅方向)に延びるように配置され、回転軸39aの両端部はケース21の左右両側の側壁面の軸受孔(図示せず)により回転可能に保持される。回転軸39aの一端部はケース21の外部に突出して、図示しない駆動機構に連結されている。
【0062】
図1において、リヤフェイスドア39の実線位置はリヤフェイス開口部35を全開する位置を示す。これに対し、リヤフェイスドア39の二点鎖線位置は、リヤフェイス開口部35を全閉する位置を示す。
【0063】
なお、本例では、エアミックスドア27、吹出モード切換ドア38およびリヤフェイスドア39を回転駆動する駆動機構として、サーボモータからなる電気的アクチュエータ(図示せず)を使用している。また、これら各ドア27、38、39の駆動機構として、空調操作パネル(図示せず)に設けられた操作部材(例えば、手動操作レバー)の手動操作力をケーブル、リンク機構等を介して各回転軸27a、38a、39aに伝達する手動操作機構を使用してもよい。
【0064】
図示を省略しているが、空調操作パネルは、車室内空間15の前方側部位に配置された計器盤に設けられ、冷凍サイクルの圧縮機作動スイッチ、風量スイッチの他、温度設定スイッチ、吹出モード切替スイッチ、前後風量調整スイッチ、内外気モード切替スイッチ等を有している。
【0065】
空調操作パネルの圧縮機作動スイッチを投入すると、冷凍サイクルの圧縮機の電磁クラッチに通電され、電磁クラッチが接続状態となるので、圧縮機がエンジンにより駆動される。これにより、冷却用熱交換器24では冷凍サイクルの低温の低圧冷媒が空気から吸熱して蒸発することにより空気を冷却する。
【0066】
そして、温度設定スイッチで設定される設定温度に応じてエアミックスドア27が操作され、空調風の温度の調整が行われる。
【0067】
また、吹出モード切替スイッチの設定に応じて吹出モード切換ドア38が操作され、吹出モードの切り換えが行われ、前後風量調整スイッチの設定に応じてリヤフェイスドア39が操作され、フロントフェイス吹出口とリヤフェイス吹出口の風量割合の調整が行われる。また、内外気モード切替スイッチの設定に応じて外気ドアと内気ドアが操作され、内外気モードが切り換えが行われる。
【0068】
ところで、ケース21の後面壁部21aには、車両後方側に向かって開口するケース側開口部40が形成されている。このケース側開口部40は、冷却用熱交換器24の熱交換コア部24aを点検、清掃するために設けられるものであり、本例では、矩形状に形成されている。
【0069】
本例では、冷却用熱交換器24を略鉛直に配置しているので、冷却用熱交換器24の熱交換コア部24aがケース側開口部40に対向する。より具体的には、冷却用熱交換器24の熱交換コア部24aの空気流れ上流側部位がケース側開口部40に対向している。
【0070】
ケース側開口部40は、ケース側カバー41によって開閉可能になっている。このケース側カバー41は、ケース21と同様に、ポリプロピレンのようなある程度の弾性を有する強度的にも優れた樹脂材料で成形されている。
【0071】
ケース側カバー41は、ケース側開口部40に対してケース21の外方側(車両後方側)に配置されており、ねじやクリップ等の図示しない締結手段によって、ケース21に着脱可能になっている。このケース側カバー41の着脱によってケース側開口部40が開閉される。
【0072】
ケース側カバー41の面積は、キャビン10の後面壁部12に開口するキャビン側開口部42の開口面積よりも小さくなっている。このキャビン側開口部42は、車両後方側に向かって開口するとともに、ケース側開口部40と重合している。本例では、後面壁部12の車両外板(本例では、鋼板)を矩形状に切り欠くことによってキャビン側開口部42を形成している。
【0073】
キャビン側開口部42は、キャビン側カバー43によって開閉可能になっている。本例では、このキャビン側カバー43を車両外板と同様に鋼板で成形しているが、樹脂材料等によって成形してもよい。
【0074】
キャビン側カバー43は、キャビン側開口部42に対してキャビン10外方側(後方側)に配置されており、ねじやクリップ等の図示しない締結手段によって、キャビン10の後面壁部12に着脱可能になっている。このキャビン側カバー43の着脱によってキャビン側開口部42が開閉される。
【0075】
次に、上記構成において、冷却用熱交換器24の熱交換コア部24aを点検、清掃する手順について説明する。まず、キャビン10の後面壁部12からキャビン側カバー43をキャビン10後方側に取り外してキャビン側開口部42を開放する。
【0076】
ここで、キャビン側カバー43をキャビン側開口部42に対してキャビン10外方側(後方側)に配置しているから、キャビン側カバー43の取り外し作業をキャビン10外方側(後方側)から行うことができる。
【0077】
次に、キャビン側開口部42を通じて、ケース側カバー41をケース21からケース外方側(車両後方側)に取り外してケース側開口部40を開放する。
【0078】
ここで、ケース側開口部40をキャビン側開口部42と重合させるとともに、ケース側カバー41をケース側開口部40に対してケース21の外方側(車両後方側)に配置しているから、キャビン側カバー43の取り外し作業をキャビン10外方側(後方側)からキャビン側開口部42を通じて行うことができる。
【0079】
さらに、ケース側カバー41の面積をキャビン側開口部42の開口面積よりも小さくしているから、取り外したケース側カバー41をキャビン側開口部42からキャビン10外部に取り出すことができる。
【0080】
このようにケース側開口部40およびキャビン側開口部42を開放することによって、冷却用熱交換器24の熱交換コア部24aがキャビン10外部に露出するので、キャビン10外部(キャビン10の後方側)からキャビン側開口部42およびケース側開口部40を通じて冷却用熱交換器24の熱交換コア部24aを点検、清掃することができる。
【0081】
そして、冷却用熱交換器24の熱交換コア部24aの点検、清掃の終了後、ケース側カバー41およびキャビン側カバー43を、上記した取り外し手順と逆の手順で取り付ける。
【0082】
油圧ショベルのような建設機械においては、砂塵等、粉塵の厳しい環境で使用されるため、冷却用熱交換器24の熱交換コア部24aの微細なフィン空隙部に粉塵が付着して、コア部の目詰まりが発生しやすいが、本実施形態によると、冷却用熱交換器24をケース21内に収納したままで、キャビン10外部(キャビン10の後方側)から点検、清掃することができる。
【0083】
このため、上記特許文献1のように冷却用熱交換器24を点検、清掃するにあたって冷却用熱交換器24を空調ユニット20のケース21から取り出す必要がないとともに、狭いキャビン10内で冷却用熱交換器24を点検、清掃する必要がない。この結果、冷却用熱交換器24の点検、清掃を簡単かつ短時間に行うことができる。
【0084】
さらに、本実施形態では、熱交換コア部24aの空気流れ上流側部位をケース側開口部40側およびキャビン側開口部42側に向けているので、より粉塵が付着しやすい熱交換コア部24aの空気流れ上流側部位を容易に点検、清掃することができる。
【0085】
また、本実施形態によると、図3の矢印aに示すように、冷却用熱交換器24を通過する空気は車両後方から車両前方に向かって流れる。一方、図3の矢印dに示すように、フット開口部37を流れる空気も車両後方から車両前方に向かって流れる。
【0086】
すなわち、フット開口部37における空気の流れ方向が、冷却用熱交換器24を通過する空気の流れ方向と一致する。このため、フット開口部37を流れる空気の風量の確保が容易であり、ひいては、フット吹出口から吹き出す空気の風量の確保が容易である。
【0087】
また、本実施形態によると、図2(a)からわかるように、送風機部22の空気出口部22eを空調ユニット20の最後部に配置できるので、送風機部22の空気出口部22eを乗員から遠ざけることができる。このため、乗員の耳に届く送風騒音を低減することができる。
【0088】
また、本実施形態によると、略矩形形状の冷却用熱交換器24をケース21の内部に略鉛直に配置しているので、空調ユニット20の車両前後方向の体格を小型化できる。この結果、車室内空間15において、乗員が利用可能なスペースを拡大することができる。
【0089】
なお、参考例として、空調ユニット20を、本実施形態に対して前後対称に構成して、ケース側開口部40をシート18側(車両前方側)に向けて開口させてもよい。また、他の参考例として、ケース側開口部40をケース21の上面部、より具体的には、ケース21の上面部のうち流入空間25の上方に位置する部位に形成してもよい。
【0090】
これらの参考例においては、キャビン10外方側(後方側)から点検、清掃することができず、キャビン10内で冷却用熱交換器24を点検、清掃する必要があるが、キャビン側開口部42およびキャビン側カバー43を廃止することができる。
【0091】
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、ケース側カバー41をケース21に着脱することによってケース側開口部40を開閉し、キャビン側カバー43をキャビン10の後面壁部12に着脱することによってキャビン側開口部42を開閉するようになっているが、本第2実施形態では、図4に示すように、両カバー41、43を両開口部40、42の開口方向(本例では車両前後方向)と直交する方向に揺動させることによって両開口部40、42を開閉するようになっている。
【0092】
より具体的には、ケース側カバー41の上縁部を図示しないヒンジ機構を介してケース21に固定し、キャビン側カバー43の上縁部を図示しないヒンジ機構を介してキャビン10の後面壁部12に固定する。これにより、両カバー41、43が上下方向に揺動可能に保持されるので、両カバー41、43によって両開口部40、42を容易に開閉することができる。
【0093】
また、ケース側開口部40を開放する方向にケース側カバー41を揺動したときには、ケース側カバー41がキャビン側開口部42を通じてキャビン10の外部に突き出すようになっている。これにより、ケース側開口部40を全面的に開放できる。
【0094】
なお、本例では、両カバー41、43の上縁部にヒンジ機構を配置しているが、両カバー41、43の下縁部にヒンジ機構を配置してもよい。また、両カバー41、43の左右縁部にヒンジ機構を配置して、両カバー41、43を左右方向に揺動可能に保持してもよい。
【0095】
(第3実施形態)
上記第2実施形態では、両カバー41、43を揺動させることによって両開口部40、42を開閉するようになっているが、本第3実施形態では、図5に示すように、両カバー41、43を両開口部40、42の開口方向(本例では車両前後方向)と直交する方向に平行移動(スライド)させることによって両開口部40、42を開閉するようになっている。
【0096】
より具体的には、ケース側カバー41の左右縁部を図示しないスライド機構を介してケース21に固定し、キャビン側カバー43の左右縁部を図示しないスライド機構を介してキャビン10の後面壁部12に固定する。
【0097】
これにより、両カバー41、43が上下方向にスライド可能に保持される。ここで、キャビン10の後面壁部12の下部が鉛直方向に延びているので、ケース側カバー41が車室内空間15において、後面壁部12と干渉することなく平行移動することができる。
【0098】
このように、両カバー41、43が上下方向にスライドすることによって両開口部40、42を開閉することができる。
【0099】
なお、本例では、両カバー41、43が上下方向にスライド可能に保持されているが、左右方向にスライド可能に保持してもよい。
【0100】
(他の実施形態)
なお、上記各実施形態では、空調ユニット20を車室内空間15の最後部かつ最下部に搭載しているが、空調ユニット20の搭載位置はこれに限定されるものではない。例えば、空調ユニット20を車室内空間15の中央部かつ最下部、すなわち、シート18の下方に搭載してもよい。
【0101】
この場合には、空調ユニット20を上記各実施形態に対して水平に90度回転させた向きに搭載して冷却用熱交換器24の熱交換コア部24aがキャビン10の側面壁部側を向くようにし、キャビン側開口部42およびキャビン側カバー43をキャビン10の側面壁部に配置すればよい。
【0102】
また、上記各実施形態では、空気と熱交換する熱交換器として冷却用熱交換器24および暖房用熱交換器26を有しているが、冷却用熱交換器24を廃止して暖房用熱交換器26のみを有するようにしてもよい。
【0103】
この場合には、暖房用熱交換器26の熱交換コア部24aをケース側開口部40に対向配置すればよい。これにより、暖房用熱交換器26の点検、清掃を簡単かつ短時間に行うことができる。
【0104】
また、上記各実施形態では、冷却用熱交換器24の熱交換コア部24aの空気流れ上流側部位をケース側開口部40に対向させているが、熱交換コア部24aの空気流れ下流側部位をケース側開口部40に対向させてもよい。
【0105】
また、上記各実施形態では、本発明による車両用空調装置を油圧ショベル等の建設機械に適用した例を示しているが、本発明の適用対象は油圧ショベル等の建設機械に限定されるものではなく、他の種々の車両にも適用が可能である。例えば、農機用トラクタ等に適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明の第1実施形態による油圧ショベルのキャビンの模式的な断面図である。
【図2】図1における空調ユニット部の二面図である。
【図3】図2におけるA−A断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態による油圧ショベルのキャビンの模式的な要部断面図である。
【図5】本発明の第3実施形態による油圧ショベルのキャビンの模式的な要部断面図である。
【符号の説明】
【0107】
10…キャビン、12…後面壁部(周壁部)、15…車室内空間、21…ケース、
24…冷却用熱交換器(熱交換器)、24a…熱交換コア部、40…ケース側開口部、
41…ケース側カバー、42…キャビン側開口部、41…キャビン側カバー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビン(10)内に形成される車室内空間(15)に配置され、空気が流れる空気通路を形成するケース(21)と、
前記ケース(21)内に収納され、空気と熱交換する熱交換器(24)とを備え、
前記ケース(21)が前記キャビン(10)の周壁部(12)に隣接配置され、
前記ケース(21)のうち前記周壁部(12)と隣接する部位には、ケース側カバー(41)によって開閉されるケース側開口部(40)が形成され、
前記ケース側開口部(40)は、前記周壁部(12)に開口してキャビン側カバー(43)によって開閉されるキャビン側開口部(42)に重合配置され、
前記熱交換器(24)の熱交換コア部(24a)が前記ケース側開口部(40)に対向配置されていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記熱交換コア部(24a)のうち空気流れ上流側部位が前記ケース側開口部(40)に対向していることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記周壁部は、前記キャビン(10)の後面壁部(12)であり、
前記ケース(21)が前記キャビン(10)内の後方側に配置され、
前記熱交換器(24)が前記ケース(21)内の後方側に収納されていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記ケース側カバー(41)の面積は、前記キャビン側開口部(42)の面積よりも小さくなっており、
前記ケース側カバー(41)は、前記ケース(21)に着脱自在に固定されており、
前記ケース側カバー(41)の着脱によって、前記ケース側開口部(40)が開閉されるようになっていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記ケース側カバー(41)の面積は、前記キャビン側開口部(42)の面積よりも小さくなっており、
前記ケース側カバー(41)は、前記ケース(21)に対して、前記ケース側開口部(40)の開口方向と直交する方向に揺動可能に支持されており、
前記ケース側カバー(41)の揺動によって、前記ケース側開口部(40)が開閉されるようになっており、
さらに、前記ケース側開口部(40)を開放する方向に前記ケース側カバー(41)を揺動したときには、前記ケース側カバー(41)が前記キャビン側開口部(42)を通じて前記キャビン(10)の外部に突き出すようになっていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記ケース側カバー(41)は、前記ケース(21)に対して、前記ケース側開口部(40)の開口方向と直交する方向に平行移動可能に支持されており、
前記ケース側カバー(41)の平行移動によって、前記ケース側開口部(40)が開閉されるようになっており、
さらに、前記ケース側カバー(41)は前記車室内空間(15)において平行移動するようになっていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−120251(P2008−120251A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−306482(P2006−306482)
【出願日】平成18年11月13日(2006.11.13)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】