説明

車両用空調装置

【課題】冷媒の漏洩を精度よく判定する。
【解決手段】コントローラ10が、冷媒内に含まれるオイルによる冷媒圧力の変化量を考慮した冷媒の圧力、温度、及び封入量の相関関係を参照して、圧力センサ8及び温度センサ9が検出した冷媒の圧力P及び温度Tから冷凍サイクル1内の冷媒封入量を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸ガス等の超臨界冷媒を用いる冷凍サイクルを備える車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、冷凍サイクルの始動時、圧力センサの検出値が冷凍サイクルの停止時のバランス圧から推定される所定の圧力値以下であると判定された場合、冷媒が漏洩していると判断し、圧縮機の稼働を停止する冷凍サイクルを備える車両用空調装置が知られている(特許文献1参照)。この車両用空調装置によれば、圧縮機の空運転,冷媒洩れの助長等の不具合,及びこれらを原因とする不具合の発生を防止することができる。
【特許文献1】特開2000−320936号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一般に、上述の冷凍サイクルには圧縮機内の摺動部品の摺動性を確保するためにオイルが封入されている。このオイルは、圧縮機内に常時溜まっていることが好ましいが、冷媒に同伴されて圧縮機外に流出して冷凍サイクルを循環する。オイルが冷凍サイクルを循環すると、冷媒の圧力特性はオイルが含まれない場合の圧力特性から変化する。従って、冷媒の漏洩を精度よく判定するためには冷媒の圧力特性に対するオイルの影響を考慮する必要がある。しかしながら、従来の車両用空調装置は、冷媒の圧力特性に対するオイルの影響を一切考慮していないために、冷媒の漏洩を精度よく判定することができない。
【0004】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、冷媒の漏洩を精度よく判定可能な車両用空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る車両用空調装置は、吸入した冷媒を圧縮して吐出する圧縮機(2)と、圧縮機(2)の下流側に配置され圧縮機(2)が吐出した冷媒を冷却する放熱器(3)と、放熱器(3)の下流側に配置され放熱器(3)にて冷却された冷媒を減圧する減圧器(4)と、減圧器(4)の下流側に配置され減圧器(4)にて減圧された冷媒を蒸発させる蒸発器(5)と、減圧器(4)の下流側で且つ圧縮機(2)の上流側に配置され冷媒を貯留し気体冷媒を圧縮機(2)へ帰還させる気液分離器(6)とを有し、冷媒を冷却する放熱器(3)内の圧力が冷媒の臨界圧力を超える冷凍サイクル(1)を備える車両用空調装置であって、冷凍サイクル(1)の停止時の冷媒の圧力(P)を検出する圧力センサ(8)と、冷凍サイクル(1)の停止時の冷媒の温度(T)を検出する温度センサ(9)と、冷媒内に含まれるオイルによる冷媒圧力の変化量を考慮した冷媒の圧力、温度、及び封入量の相関関係を参照して、圧力センサ(8)及び温度センサ(9)が検出した冷媒の圧力(P)及び温度(T)から冷凍サイクル(1)内の冷媒封入量を算出し、算出結果に基づいて冷媒洩れ量を判定するコントローラ(10)とを備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る車両用空調装置によれば、冷媒内に含まれるオイルによる冷媒圧力の変化量を考慮した冷媒の圧力、温度、及び封入量の相関関係を参照して、圧力センサ(8)及び温度センサ(9)が検出した冷媒の圧力(P)及び温度(T)から冷凍サイクル(1)内の冷媒封入量を算出するので、冷媒の漏洩を精度よく判定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態となる車両用空調装置の構成について説明する。
【0008】
〔車両用空調装置の構成〕
本発明の実施形態となる車両用空調装置は図1に示す冷凍サイクル1を備える。この冷凍サイクル1は、吸入した冷媒を圧縮して吐出する圧縮機2と、圧縮機2の下流側に配置され圧縮機2からの冷媒を冷却する放熱器3と、放熱器3の下流側に配置され放熱器3からの冷媒を減圧する減圧器4と、減圧器4の下流側に配置され減圧器4にて減圧された冷媒を蒸発させる蒸発器5と、減圧器4の下流側、且つ、圧縮機2の上流側に配置され冷媒を貯留し気体冷媒を圧縮機2へ帰還させる気液分離器6と、圧縮機2の下流側、且つ、減圧器4よりも上流側の高圧の冷媒7aと減圧器4より下流側、且つ、圧縮機2よりも上流側の低圧の冷媒7bとの熱交換を行う内部熱交換器7と、冷凍サイクル1内の冷媒の圧力P及び温度Tを検出する圧力センサ8及び温度センサ9と、各種制御処理を実行するコントローラ10と、車室内に設けられた表示装置11とを備える。この冷凍サイクル1では、冷媒には超臨界冷媒としての炭酸ガス(例えば二酸化炭素)が用いられ、放熱器3の圧力が冷媒の臨界圧力を超えるようになっている。
【0009】
〔冷媒漏洩判定処理〕
本発明の実施形態となる車両用空調装置では、コントローラ10が以下に示す冷媒漏洩判定処理を実行することにより冷媒の漏洩を精度よく判定する。以下、図2に示すフローチャートを参照して冷媒漏洩判定処理を実行する際のコントローラ10の動作について説明する。
【0010】
図2に示すフローチャートは、冷凍サイクル1が始動される際に開始となり、冷媒漏洩判定処理はステップS1の処理に進む。
【0011】
ステップS1の処理では、コントローラ10が、圧力センサ8を介して冷凍サイクル1が停止している際の冷媒の圧力Pを検出する。これにより、ステップS1の処理は完了し、冷媒漏洩判定処理はステップS2の処理に進む。
【0012】
ステップS2の処理では、コントローラ10が、温度センサ9を介して冷凍サイクル1が停止している際の冷媒の温度Tを検出する。これにより、ステップS2の処理は完了し、冷媒漏洩判定処理はステップS3の処理に進む。
【0013】
ステップS3の処理では、コントローラ10が、冷媒内に含まれるオイルによる冷媒圧力Pの変化量を考慮した冷媒の圧力P,温度T,及び封入量の相関関係を参照して、検出された冷媒の圧力Pと温度Tから冷凍サイクル1に封入されている冷媒量(冷媒封入量)を算出する。一般に、冷媒の圧力Pと冷媒封入量は、図3に示すように比例関係にあり、また冷媒の温度T及びオイルの有無に応じてその特性が変化する(以下の数式1参照)。
【数1】

【0014】
従って、冷媒内に含まれるオイルによる冷媒圧力Pの変化量を考慮した冷媒の圧力P,温度T,及び封入量の相関関係を示す上記の数式1のような数式をコントローラ10に予め記憶させておき、検出された冷媒の圧力Pと温度Tを数式に代入することにより冷媒封入量を算出できる。なお、本実施形態では、数式を利用して冷媒封入量を算出したが、上述の相関関係をマップデータとして記憶しておき、マップデータを参照して冷媒封入量を算出してもよい。これにより、ステップS3の処理は完了し、冷媒漏洩判定処理はステップS4の処理に進む。
【0015】
ステップS4の処理では、コントローラ10が、ステップS3の処理により算出された冷媒封入量が適切な量であるか否かを判別する。そして判別の結果、冷媒封入量が適切な量でない場合、コントローラ10は、冷媒が漏洩している可能性があると判断し、ステップS5の処理として表示装置11を介して冷媒が漏洩している可能性がある旨の警告情報を出力した後、一連の冷媒漏洩判定処理を終了する。一方、冷媒封入量が適切な量である場合には、コントローラ10は冷媒漏洩判定処理をステップS6の処理に進める。
【0016】
ステップS6の処理では、コントローラ10が、ステップS3の処理により算出された冷媒封入量が表示装置11に前回表示した冷媒封入量より多いか否かを判別する。そして判別の結果、ステップS3の処理により算出された冷媒封入量が前回表示した冷媒封入量より多くない場合、コントローラ10は冷媒漏洩判定処理をステップS8の処理に進める。一方、ステップS3の処理により算出された冷媒封入量が前回表示した冷媒封入量より多い場合には、コントローラ10は冷媒漏洩判定処理をステップS7の処理に進める。
【0017】
ステップS7の処理では、コントローラ10が、前回表示した冷媒封入量を表示装置11に表示する。このような処理によれば、冷媒量が増えたように表示されることにより違和感や不信感を感じることを防止できる。これにより、ステップS7の処理は完了し、一連の冷媒漏洩判定処理は終了する。
【0018】
ステップS8の処理では、コントローラ10が、図4に示すように、ステップS3の処理により算出された冷媒封入量の情報12を表示装置11に表示する。このように冷媒封入量を表示装置11に表示することにより冷媒を封入すべきタイミングを事前に認識することができる。これにより、ステップS8の処理は完了し、一連の冷媒漏洩判定処理は終了する。
【0019】
以上の説明から明らかなように、本発明の実施形態となる車両用空調装置では、コントローラ10が、冷媒内に含まれるオイルによる冷媒圧力の変化量を考慮した冷媒の圧力、温度、及び封入量の相関関係を参照して、圧力センサ8及び温度センサ9が検出した冷媒の圧力P及び温度Tから冷凍サイクル1内の冷媒封入量を算出するので、冷媒の漏洩を精度よく判定することができる。
【0020】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、この実施の形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはない。例えば、上記実施形態は冷媒温度が臨界温度以上でないと精度がよい判定をすることができないが、内気循環により冷媒を臨界温度以上の温度に積極的に上げることにより精度よい判定をすることができる。すなわち、この実施の形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態となる冷凍サイクルの構成を示す模式図である。
【図2】本発明の実施形態となる冷媒漏洩判定処理の流れを示すフローチャート図である。
【図3】冷媒内のオイルの有無に伴う冷媒の圧力,温度,及び封入量の相関関係の変化を示す図である。
【図4】表示装置に表示した冷媒封入量の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0022】
1:冷凍サイクル
2:圧縮機
3:放熱器
4:減圧器
5:蒸発器
6:気液分離器
7:内部熱交換器
7a:高圧冷媒
7b:低圧冷媒
8:圧力センサ
9:温度センサ
10:コントローラ
11:表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入した冷媒を圧縮して吐出する圧縮機(2)と、前記圧縮機(2)の下流側に配置され前記圧縮機(2)が吐出した冷媒を冷却する放熱器(3)と、前記放熱器(3)の下流側に配置され前記放熱器(3)にて冷却された冷媒を減圧する減圧器(4)と、前記減圧器(4)の下流側に配置され前記減圧器(4)にて減圧された冷媒を蒸発させる蒸発器(5)と、前記減圧器(4)の下流側で且つ前記圧縮機(2)の上流側に配置され冷媒を貯留し気体冷媒を前記圧縮機(2)へ帰還させる気液分離器(6)とを有し、冷媒を冷却する前記放熱器(3)内の圧力が冷媒の臨界圧力を超える冷凍サイクル(1)を備える車両用空調装置であって、
冷凍サイクル(1)の停止時の冷媒の圧力(P)を検出する圧力センサ(8)と、冷凍サイクル(1)の停止時の冷媒の温度(T)を検出する温度センサ(9)と、冷媒内に含まれるオイルによる冷媒圧力の変化量を考慮した冷媒の圧力、温度、及び封入量の相関関係を参照して、圧力センサ(8)及び温度センサ(9)が検出した冷媒の圧力(P)及び温度(T)から冷凍サイクル(1)内の冷媒封入量を算出し、算出結果に基づいて冷媒洩れ量を判定するコントローラ(10)とを備えることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用空調装置において、前記コントローラ(10)は算出した冷媒封入量を車室内の表示装置(11)に表示することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両用空調装置において、前記コントローラ(10)は冷凍サイクル(1)が安定状態にある時に冷媒封入量を算出することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の車両用空調装置において、前記コントローラ(10)は算出された冷媒封入量が前回表示装置(11)に表示した冷媒封入量よりも多い場合、前回表示装置(11)に表示した冷媒封入量を表示することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のうち、いずれか1項に記載の車両用空調装置において、前記コントローラ(10)は、算出された冷媒封入量が所定範囲内にない場合、警告情報を出力することを特徴とする車両用空調装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−162438(P2008−162438A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−354898(P2006−354898)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】