説明

車両用空調装置

【課題】居眠り運転の予防ができる車両用空調装置を実現する。
【解決手段】車両の現在位置及び進行方向を検出するとともに、予め記憶された道路情報に基づき、車両の走行案内を行うナビゲーション装置80を備えた車両に設けられ、車室内を空調する空調ユニット1)とこの空調ユニット1を制御するエアコンECU10を備える車両用空調装置において、ナビゲーション装置80は、居眠り運転を起こし易い危険地点が収録された危険道路情報84b、84cが予め記憶され、かつ危険道路情報84b、84cに基づいて求められた危険地点に車両が到達する前に、危険地点信号83aをエアコンECU10に発信するように構成されており、エアコンECU10は、ナビゲーション装置80から危険地点信号83aを受信したときに、現状の空調制御内容を変化させる居眠り防止空調制御S17を行う。これにより、居眠り運転の予防ができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行案内を行うナビゲーション装置を備えた車両に設けられ、車室内を空調する空調ユニットを備える車両用空調装置に関するものであり、特に、居眠り運転を防止するための空調制御に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、居眠り防止機能を有するナビゲーション装置として、例えば、特許文献1及び特許文献2に示すものが知られている。すなわち、特許文献1の居眠り防止機能では、居眠り防止モードが選択されているときに、利用者とナビゲーション装置とが会話するように構成されている。
【0003】
具体的には、ナビゲーション装置に設けられた出力手段により、利用者に向けて、「ねむいか」等の質問音が出力される。そして、その質問に対し、利用者の回答音が入力手段に入力されない場合に、警告音もしくは振動による警告手段により警告を行わせるように構成している。
【0004】
また、特許文献2の居眠り防止機能では、ハンドル角を測定するセンサを有し、そのセンサの出力信号に基づいてハンドル角を算出して出力するハンドル角検出器が設けられている。そして、ハンドル角検出器より出力されたハンドル角と現在位置に関する道路情報とから安全エリアから逸脱しているかを総合的に判定している。そして、安全エリアから逸脱した回数が所定回数を超えると、危険な蛇行運転がなされていると判断して、右左折の案内音声を発しながら安全に停車できる場所に案内させている。
【特許文献1】特開2005−267137号公報
【特許文献2】特開2005−24507号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、いずれの上記居眠り防止機能でも、運転中の動作から居眠り状態を検知して、利用者に警告を発するものである。つまり、利用者の覚醒レベルが低下した状態で居眠りが検知されるものであるため、既に危険な状態になっている可能性が高いという問題がある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、居眠り運転の予防ができる車両用空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、以下の技術的手段を採用する。すなわち、請求項1に記載の発明では、車両の現在位置及び進行方向を検出するとともに、予め記憶された道路情報に基づき、車両の走行案内を行うナビゲーション装置(80)を備えた車両に設けられ、車室内を空調する空調ユニット(1)とこの空調ユニット(1)を制御する空調制御手段(10)を備える車両用空調装置において、
ナビゲーション装置(80)には、居眠り運転を起こし易い危険地点が収録された危険道路情報(84b、84c)が予め記憶され、かつナビゲーション装置(80)は、危険道路情報(84b、84c)に基づいて求められた危険地点に車両が到達する前に、危険地点信号(83a)を空調制御手段(10)に発信するように構成されており、空調制御手段(10)は、ナビゲーション装置(80)から危険地点信号(83a)を受信したときに、現状の空調制御内容を変化させる居眠り防止空調制御(S17)を行うことを特徴としている。この発明によれば、居眠り運転を起こし易い危険道路を通過する前に居眠り運転の予防ができる。
【0008】
請求項2に記載の発明では、危険道路情報(84b、84c)は、過去の居眠り運転による事故現場道路情報(84b)または居眠り運転を起こし易い単調な道路として公的に設定された単調道路情報(84c)の少なくとも一方の情報であることを特徴としている。この発明によれば、事故現場道路情報(84b)及び単調道路情報(84c)からなる危険道路情報(84b、84c)は、例えば警察庁等の官庁や公益法人から入手することができる。
【0009】
請求項3に記載の発明では、乗員が設定する設定情報および各センサで検出される検出情報に基づいて、目標吹出空気温度(TAO)を演算する目標吹出温度演算手段(S13)が設けられ、居眠り防止空調制御(S17)は、目標吹出温度演算手段(S13)により求められた目標吹出空気温度(TAO)よりもマイナス側に所定温度低下させた目標吹出空気温度(TAO)に基づいて空調ユニット(1)を制御することを特徴としている。この発明によれば、居眠り運転を起こし易い危険道路を事前に認識することができる。これにより、危険道路を通過する前に居眠り運転の予防ができる。
【0010】
請求項4に記載の発明では、目標吹出温度演算手段(S13)により求められた目標吹出空気温度(TAO)に基づいて、求められた吹出モードを判定する吹出モード判定手段(S175)が設けられ、居眠り防止空調制御(S17)は、吹出モード判定手段(S175)により判定された吹出モードから他の吹出モードに切り替える制御を行うことを特徴としている。この発明によれば、居眠り運転を起こし易い危険道路を事前に認識することができる。これにより、危険道路を通過する前に居眠り運転の予防ができる。
【0011】
請求項5に記載の発明では、居眠り防止空調制御(S17)は、吹出モード判定手段(S175)により判定された吹出モードから他の吹出モードに切り替えたときに、送風量を所定量増加する制御を行うことを特徴としている。この発明によれば、吹出モード及び送風量が急激に変化するため、危険道路を通過する前に覚醒状態を維持することができる。
【0012】
請求項6に記載の発明では、居眠り防止空調制御(S17)は、吹出モード判定手段(S175)により判定された吹出モードがフット・デフロスタモードのときに、そのフット・デフロスタモードを継続させるとともに、送風量を所定量増加する制御を行うことを特徴としている。この発明によれば、吹出空気温度が低下したときは、窓ガラスに曇りが発生するため、送風量を増加することで曇り止めができる。
【0013】
請求項7に記載の発明では、空調制御手段(10)は、吹出モードがデフロスタモードのときに、現状の空調制御内容を継続させ、居眠り防止空調制御(S17)を実行しないことを特徴としている。この発明によれば、デフロスタモードのときは、曇り止めを行っている場合がある。そこで、デフロスタモードのときは、居眠り防止空調制御であっても、デフロスタモードを継続させることで安全運転が継続できる。
【0014】
請求項8に記載の発明では、空調制御手段(10)は、運転席側と助手席側とで独立して空調風を吹出制御する左右独立温度制御方式であって、居眠り防止空調制御(S17)は、運転席側の空調制御内容を変化させることを特徴としている。この発明によれば、助手席側では通常の吹出制御が継続されるため、助手席側乗員の快適性が維持される。
【0015】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態における車両用空調装置を、図1ないし図6に基づいて説明する。図1は、第1実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す構成図である。図2は、操作パネルの構成を示す正面図である。図3は、第1実施形態におけるナビゲーション装置の概略構成を示すブロック図である。
【0017】
図4は、エアコンECUの制御処理を示すフローチャートである。図5は、図4に示すS17の制御処理の詳細を示すフローチャートである。図6は、ナビゲーション装置に設けられた危険地点信号の制御処理を示すフローチャートである。
【0018】
本発明は、運転席側空調ゾーンと助手席側空調ゾーンとの温度調節及び吹出モードを互いに独立に制御する左右独立温度制御方式の車両用空調装置に適用している。そして、本実施形態の車両用空調装置は、車両の走行案内を行うナビゲーション装置80を備えた車両に設けられている。
【0019】
本実施形態のナビゲーション装置80は、図3に示すように、車両の現在位置を検出する位置検出器81、利用者からの各種指示を入力するための操作スイッチ群82、ナビゲーション装置80とは別の装置から情報を入力したり別の装置に情報を出力したりすることが可能な外部情報入出力部83、地図データ84aや各種の情報を記録した外部記憶媒体から地図データ等を入力する地図データ入力器84、各種のガイド音声等を出力するための音声出力部85、地図や各種情報の表示を行うための表示部86及び上述した位置検出器81、操作スイッチ群82、外部情報入出力部83、地図データ入力器84からの入力に応じて各種処理を実行し、外部情報入出力部83、音声出力部85、表示部86を制御する制御回路87を備えている。
【0020】
位置検出器81は、GPS用の人工衛星からの送信電波を、GPSアンテナを介して受信し、車両の位置、方位、速度等を検出するGPS受信機81aと、車両に加えられる回転運動の大きさを検出するジャイロスコープ81bと、車両の前後方向の加速度等から走行した距離を検出するための距離センサ81cと、地磁気から進行方位を検出するための地磁気センサ81dとを備えている。
【0021】
操作スイッチ群82は、表示部86と一体で構成され表示画面上に設置されるタッチパネル及び表示部86の周囲に設けられたメカニカルなキースイッチ等から構成されている。外部情報入出力部83は、他の装置等と通信を行う機能を担う。具体的には、後述するエアコンECU10と通信を行っている。
【0022】
地図データ入力器84は、図示しない記憶媒体に記憶された各種データを入力するための装置である。この記憶媒体には、地図データ84a(道路の形状データ、道路の幅員データ、道路の規制データ、地形データ、マークデータ、交差点データ、施設データ等)、音声データ等が記憶されている。また、本実施形態の記憶媒体には、居眠り運転を起こし易い危険地点が収録された危険道路情報84b、84cが予め記憶されている。
【0023】
危険道路情報84b、84cは、例えば、居眠り運転による過去の事故現場道路情報84bや居眠り運転を起こし易い単調な道路として公的に設定された単調道路情報84c等である。これらの危険道路情報84b、84cは、警察庁等の官庁またはこれらに関する公益法人から入手が可能である。そして、実際の記録媒体としては、そのデータ量からCD−ROMやDVDを用いるのが一般的である。
【0024】
音声出力部85は、地図データ入力器84より入力した施設のガイドや各種案内の音声や、外部情報入出力部83を介して受信した交通情報の読み上げ音声を出力することができる。
【0025】
表示部86は、カラー表示装置であり、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレ、CRTなどがあるが、いずれを用いても良い。表示部36の表示画面には、位置検出器81にて検出した車両の現在位置と地図データ入力器84より入力された地図データ84aとから特定した現在地を示すマーク、目的地までの誘導経路、名称、目印、各種施設のマーク等の付加データとを重ねて表示することができる。また、各種施設のガイド等も表示できる。
【0026】
制御回路87は、CPU、ROM、RAM、I/O及びこれらの構成を接続するバスラインなどから成るマイクロコンピュータを中心に構成されており、ROM及びRAMに記憶された制御プログラムに基づいて各種処理を実行する。
【0027】
例えば、位置検出器81からの各検出信号に基づき座標及び進行方向の組として車両の現在位置を算出し、地図データ入力器84を介して読み込んだ現在位置付近の地図等を表示部86に表示する表示処理や、地図データ入力器84に格納された地点データと、操作スイッチ群82等の操作に従って設定された目的地とに基づいて現在位置から目的地までの最適な経路を算出し、その算出した経路を案内する経路案内処理等を行っている。
【0028】
そして、本実施形態の制御回路87には、目的地に至る経路案内処理において、居眠り運転を起こし易い危険地点に車両が到達する前に、危険地点信号83aを発信する判定処理を行う制御プログラム(図6参照)を備えている(詳しくは後述する)。
【0029】
本実施形態の空調ユニット1の通風系は、図1に示すように、大別して、送風機ユニット2aと、空調ダクト2bとの2つの部分に分かれている。送風機ユニット2aは、車室内の計器盤(インストルメントパネル)下方部のうち、中央部から助手席側へオフセットして配置されており、これに対し、空調ダクト2bは、車室内の計器盤下方部のうち、車両左右方向の略中央部に配置されている。
【0030】
送風機ユニット2aには、内外気切替ドア3及びブロワ4が設けられている。内外気切替ドア3は、サーボモータ等のアクチュエータ(駆動手段)5により駆動されて、内気導入口6と外気導入口7の開度(所謂吸込モード)を変更する内外気切替手段である。アクチュエータ(駆動手段)5は、空調制御手段である空調制御装置(以下、エアコンECUと称する)10により制御される。
【0031】
ブロワ4は、ブロワモータ駆動回路8により駆動されるブロワモータ9により回転駆動されて、空調ダクト2b内において車室内に向かう空気流を発生させる送風機である。つまり、送風機ユニット2aより吸い込んだ空気を空調ダクト2b内の空気通路に圧送する送風機である。ブロワモータ駆動回路8は、エアコンECU10により制御される。
【0032】
空調ダクト2bの空気流れ上流側には、空調ダクト2b内を流れる空気を冷却する蒸発器41が設けられている。この蒸発器41は、図示しない圧縮機、凝縮器、受液器、減圧手段とともに冷媒配管に結合された周知の冷凍サイクルを構成する冷却用熱交換器である。
【0033】
上記圧縮機は、車両のエンジンの出力軸にベルト駆動され、図示しない電磁クラッチを介して連結されている。この電磁クラッチは、エアコンECU10により制御される。電磁クラッチがONされて圧縮機が駆動することにより、蒸発器41が空調ダクト2b内を通過する空気を冷却、除湿することで車室内に吹き出される空調風が冷却される。
【0034】
蒸発器41の空気流れ下流側は、仕切り板14により第1及び第2空気通路11、12に区画されている。この第1及び第2空気通路11、12の空気流れ上流側には、第1、第2空気通路11、12を通過する空気、即ち蒸発器41により冷却された空気を加熱するヒータコア42が配設されている。ヒータコア42は、自動車エンジンの冷却水を熱源とする加熱用熱交換器であり、蒸発器41にて冷却された冷風を再加熱する。
【0035】
そして、ヒータコア42の空気流れ上流側には、ヒータコア42を迂回(バイパス)して冷風が流れる冷風通路と、このヒータコア42を通過して温風が流れる温風通路との混合割合を調整する平板状の第1及び第2エアミックスドア15、16が回動自在に配置されている。
【0036】
第1及び第2エアミックスドア15、16のそれぞれは、サーボモータ等の第1及び第2アクチュエータ17、18により駆動されている。第1及び第2アクチュエータ17、18は、エアコンECU10により制御される。第1及び第2エアミックスドア15、16は、運転席側空調ゾーンと助手席側空調ゾーンとに吹き出す空調風の温度調節を、互いに独立して行うための吹出空気温度調節手段である。
【0037】
次に、第1空気通路11の空気流れ下流端には、車両の運転席側の前面窓ガラスに向けて空調風を吹き出すための運転席側デフロスタ吹出開口部20、運転席側乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すための運転席側センタフェイス吹出開口部21、運転席側乗員の上半身または運転席側側面窓ガラスに向けて空調風を吹き出すための運転席側サイドフェイス吹出開口部22及び運転席側乗員の足元に向けて空調風を吹き出すための運転席側フット吹出開口部23が形成されている。
【0038】
また、第2空気通路12の空気流れ下流端には、車両の助手席側の前面窓ガラスに向けて空調風を吹き出すための助手席側デフロスタ吹出開口部30、助手席側乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すための助手席側センタフェイス吹出開口部31、助手席側乗員の上半身または助手席側側面窓ガラスに向けて空調風を吹き出すための助手席側サイドフェイス吹出開口部32及び助手席側乗員の足元に向けて空調風を吹き出すための助手席側フット吹出開口部33が形成されている。
【0039】
これら吹出開口部20〜23、30〜33の空気流れ上流側には、運転席側と助手席側との吹出モードの設定を、互いに独立して制御するための運転席側及び助手席側切替ドア24〜26、34〜36が設けられている。運転席側及び助手席側切替ドア24〜26、34〜36のそれぞれは、サーボモータ等のアクチュエータ28、29、38、39により駆動されている。
【0040】
また、アクチュエータ28、29、38、39は、エアコンECU10により制御される。運転席側及び助手席側切替ドア24〜26、34〜36は、運転席側と助手席側の吹出モードを、互いに独立して切替える吹出モード切替ドアである。因みに、吹出モードとしては、フェイス(FACE)モード、バイレベル(B/L)モード、フット(FOOT)モード、フット・デフロスタ(F/D)モード及びデフロスタ(DEF)モードがある。
【0041】
フェイスモードでは、運転席側及び助手席側切替ドア25、35により、運転席側及び助手席側センタフェイス吹出開口部21、31と運転席側及び助手席側サイドフェイス吹出開口部22、32とが開口される。バイレベルモードでは、運転席側及び助手席側切替ドア25、26、35、36により、運転席側及び助手席側センタフェイス吹出開口部21、31と運転席側及び助手席側サイドフェイス吹出開口部22、32と運転席側及び助手席側フット吹出開口部23、33とが開口される。
【0042】
フットモードでは、運転席側及び助手席側切替ドア26、36により、運転席側及び助手席側フット吹出開口部23、33が開口される。フット・デフロスタモードでは、運転席側及び助手席側切替ドア24、26、34、36により、運転席側及び助手席側フット吹出開口部23、33と運転席側及び助手席側デフロスタ吹出開口部21、31とが開口される。
【0043】
次に、エアコンECU10は、その内部に、演算処理や制御処理を行うための中央演算装置(CPU)、メモリ(ROMまたはEEOROM、RAM)及びI/Oポート(入力/出力回路)などの機能を含んで構成される周知のマイクロコンピュータが設けられている。そして、各種センサからの検出信号がI/OポートまたはA/D変換回路によってA/D変換された後に、マイクロコンピュータに入力されるように構成されている。
【0044】
エアコンECU10には、車室内温度(内気温度)を検出する内気温センサ71、車室外温度(外気温度)を検出する外気温センサ72及び車室内に照射される日射強度を検出する日射センサ73、蒸発器41を通過した直後の空気温度(以下、エバ後温度と称す)を検出するエバ後温度センサ74、ヒータコア42に流入する冷却水の温度を検出する水温センサ75、車室内の相対湿度を検出する湿度センサ76及び車両の速度を検出する車速センサ77等が接続されている。
【0045】
各種センサのうち、内気温センサ71、外気温センサ72、エバ後温度センサ74及び水温センサ75は、例えばサーミスタなどの感温素子が使用されている。また、日射センサ73は、運転席側空調ゾーン内に照射される日射強度Ts(Dr)を検知する運転席側日射強度検知手段(例えば、フォトダイオード)及び助手席側空調ゾーン内に照射される日射強度Ts(Pa)を検知する助手席側日射強度検知手段(例えば、フォトダイオード)を有している。
【0046】
そして、エアコンECU10には、車室内前面に設けられた操作パネル51上のスイッチ類からの操作信号が入力される。操作パネル51は、図2に示すように、液晶表示ディスプレイ52、内外気切替スイッチ53、フロントデフロスタスイッチ54、リアデフロスタ(デフォッガ)スイッチ55、DUAL(デュアル)スイッチ56、吹出モード(MODE)切替スイッチ57、ブロワ風量切替スイッチ58、A/C(エアコン)スイッチ59、AUTO(オート)スイッチ60、OFFスイッチ61、運転席側(DRIVER)温度設定スイッチ62、助手席側(PASSENGER)温度設定スイッチ63及び居眠り防止スイッチ64等が設置されている。
【0047】
上記のスイッチ類のうち、DUAL(デュアル)スイッチ56は、運転席側空調ゾーン内の温度調節と助手席側空調ゾーン内の温度調節とを互いに独立して行う左右独立温度コントロールを指令する左右独立制御指令手段である。また、吹出モード(MODE)切替スイッチ57は、乗員のマニュアル操作に応じて吹出モード(MODE)を、FACEモード、B/Lモード、FOOTモード、F/DモードおよびDEFモードのうちのいずれかの吹出モードに切替えるための吹出モード設定スイッチである。
【0048】
また、内外気切替スイッチ53は、外気導入を指定する外気モードと、内気循環を指定する内気モードのどちらかを乗員の手動(マニュアル)により設定するためのスイッチである。ブロワ風量切替スイッチ58は、ブロワ4の風量レベルを段階的に切替えるスイッチである。本実施形態では、風量レベルが数段階に可変できるように構成されている。
【0049】
液晶表示ディスプレイ52には、運転席側、助手席側空調ゾーンの設定温度を視覚表示する設定温度表示部、吹出モードを視覚表示する吹出モード表示部及び風量レベルを視覚表示する風量表示部が設けられている。なお、液晶表示ディスプレイ52に外気温表示部、内外気モード表示部、時刻表示部を設けても良い。また、操作パネル51上の各種スイッチは、液晶表示ディスプレイ52上に設けられていても良い。
【0050】
A/C(エアコン)スイッチ59は、冷凍サイクルの圧縮機を駆動または停止を指令するスイッチであり、圧縮機を停止してエンジンの回転動力を減らすことでエンジンの燃費効率を高めるために設けられている。
【0051】
A/C(エアコン)スイッチ59は、一度押されると圧縮機をONし、視覚表示器(LED)59aが点灯し、次に押されると圧縮機をOFFし、視覚表示器59aが消灯し、再度押されるとONする。また、視覚表示器59aは、ブロワ風量切替スイッチ58をOFF位置に設定するか、あるいは0FFスイッチ61を押しても消灯するようになっている。つまり、消灯のときには、冷凍サイクルの圧縮機が停止されているときである。
【0052】
運転席側(DRIVER)温度設定スイッチ62は、運転席側空調ゾーン内の温度を所望の温度に設定するための運転席側温度設定手段であり、アップスイッチ62aとダウンスイッチ62bよりなる。また、同じように助手席側(PASSENGER)温度設定スイッチ63は、助手席側空調ゾーン内の温度を所望の温度に設定するための助手席側温度設定手段であり、アップスイッチ63aとダウンスイッチ63bよりなる。
【0053】
AUTO(オート)スイッチ60は、空調装置を構成する各空調機器を自動制御する指令を出すスイッチであり、OFFスイッチ61は、空調装置の停止指令を出力するスイッチである。居眠り防止スイッチ64は、居眠り防止モードを指令するためのスイッチである。居眠り防止スイッチ64がONしたときに、居眠り防止モードによる空調制御が行われる。居眠り防止スイッチ64がOFFしたときは、通常の空調制御が行われる。
【0054】
なお、エアコンECU10は、前述したように、ナビゲーション装置80から発信される危険地点信号83aを受信するように構成されている。また、エアコンECU10は、エンジンの始動および停止を司るイグニッションスイッチが投入(IG・ON)されたときに、車両に搭載された車載電源であるバッテリから直流電源が供給されると演算処理や制御処理を開始するように構成されている。
【0055】
次に、本実施形態の作動をAUTO(オート)スイッチ60がオンされたとき、即ちオート制御時におけるエアコンECU10の制御処理に基づいて、図4乃至図6のフローチャートを用いて説明する。まず、イグニッションスイッチがオンされて、エアコンECU10に電源が供給されると、図4に示す予めR0Mに記憶されている制御プログラム(メインルーチン)の実行が開始する。そして、ステップS10にて、エアコンECU10内部のCPUに内蔵されたデータ処理用メモリ(RAM)の記憶内容などの初期化を行う。
【0056】
そして、次のステップS11及びS12にて、各種データをデータ処理用メモリ(RAM)に読み込む。即ち、操作パネル51上の各種操作スイッチからの操作信号及び各種センサからの検出信号を入力する。
【0057】
特に、内気温センサ71が検出した内気温度Tr、外気温センサ72が検出した外気温度Tam、日射センサ73が検出した日射強度Ts(Dr)、Ts(Pa)、エバ後温センサ74が検出したエバ後温度Te、水温センサ75が検出した水温Twなどの環境条件を入力する。そして、運転席側温度設定スイッチ62及び助手席側温度設定スイッチ63によって設定された運転席側設定温度Tset(Dr)及び助手席側設定温度Tset(Pa)の操作スイッチの状態を入力する。
【0058】
そして、目標吹出温度演算手段であるステップS13にて、ROMに予め記憶された下記数式1、2に、上記ステップS11及びS12にて読み込んだTset(Dr)、Tset(Pa)、Tr、Tam及びTs(Dr)、Ts(Pa)を代入することによって、運転席側に吹き出す空調風の目標吹出温度TAO(Dr)と、助手席側に吹き出す空調風の目標吹出温度TAO(Pa)を算出する。
【0059】
[数式1]
TAO(Dr)=Kset×Tset(Dr)−Kr×Tr−Kam×Tam−Ks×Ts(Dr)+Kd(Dr)×(Cd(Dr)+Ka(Dr)(10−Tam))×(Tset(Dr)−Tset(Pa))+C
[数式2]
TAO(Pa)=Kset×Tset(Pa)−Kr×Tr−Kam×Tam−Ks×Ts(Pa)+Kd(Pa)×(Cd(Pa)+Ka(Pa)(10−Tam))×(Tset(Pa)−Tset(Dr))+C
ここで、Kset、Kr、Kam、Ks、Kd(Dr)及びKd(Pa)は、それぞれ温度設定ゲイン、車室内温度ゲイン、外気温ゲイン、日射強度ゲイン運転席側及び助手席側空調ゾーンの温度差補正ゲインを表わす。
【0060】
なお、Ka(Dr)、Ka(Pa)は、それぞれ外気温Tamが運転席側空調ゾーンおよび助手席側空調ゾーンの各空調温度に及ぼす影響度合いを補正するゲインを表わし、Cd(Dr)、Cd(Pa)は、上記影響度合いに応じた定数Cは、補正定数を表わす。ここで、Ka(Dr)、Ka(Pa)、Cd(Dr)、Cd(Pa)といった値は、車両の大きさ、空調ユニット1の吹出方向など様々なパラメータで変化する。
【0061】
そして、次のステップS14では、上記ステップS13で求めた運転席側及び助手席側の目標吹出温度TAO(Dr)及びTAO(Pa)に基づいて、ブロワ風量(ブロワモータ9に印加するブロワ制御電圧VA(Dr)、VA(Dr))を演算する。
【0062】
具体的には、上記のブロワ制御電圧VAは、運転席側及び助手席側の目標吹出温度TAO(Dr)及びTAO(Pa)にそれぞれ適合したブロワ制御電圧VA(Dr)及びVA(Dr)を、予めROMに記憶された送風特性に基づいて求めるとともに、それらブロワ制御電圧VA(Dr)及びVA(Dr)を平均化処理(VA=(VA(Dr)+VA(Pa))/2)することで求められる。これにより、ブロワ制御電圧VAを仮決定する。
【0063】
次のステップS15では、上記ステップS13で求めた運転席側及び助手席側の目標吹出温度TAO(Dr)及びTAO(Pa)と、予めROMに記憶された内外気モード特性に基づいて、内外気の導入割合を仮決定する。この内外気モード特性によれば、冷房運転時(つまり、TAOの値が低いとき)に内気モードが選択されるようになっている。
【0064】
次のステップS16では、上記ステップS13で求めた運転席側及び助手席側の目標吹出温度TAO(Dr)及びTAO(Pa)と、予めROMに記憶された吹出モード特性に基づいて、運転席側の空調ゾーンおよび助手席側の空調ゾーンの各吹出モードを仮決定する。
【0065】
具体的には、上記目標吹出温度TAO(Dr)及びTAO(Pa)が低い温度から高い温度にかけて、FACEモード、B/Lモード及びFOOTモードとなるように設定されている。また、操作パネル51に設けられた吹出モード切替スイッチ59を操作することにより、FACEモード、B/Lモード、FOOTモードまたはF/Dモードのうちのいずれかの吹出モードに固定される。
【0066】
上記FACEモードは、空調風を運転席側、助手席側の空調ゾーンの乗員の上半身に向けて吹き出す吹出モードである。また、B/Lモードとは、空調風を運転席側、助手席側の空調ゾーンの乗員の上半身と足元とに向けて吹き出す吹出モードである。そして、FOOTモードとは、空調風を運転席側、助手席側の空調ゾーンの乗員の足元に向けて吹き出す吹出モードである。
【0067】
更に、F/Dモードとは、空調風を乗員の足元と車両のフロントウインドの内面に向けて吹き出す吹出モードである。なお、操作パネル51に設けられたフロントデフロスタスイッチ54を操作すると、空調風を車両のフロントウインドの内面に向けて吹き出すDEFモードが設定される。
【0068】
そして、次のステップS17にて、居眠り防止モードにおける空調制御内容を決定する。具体的には、図5に示すフローチャートに基づいて居眠り防止空調制御を決定している。以下、図5に示すように、ステップS171では、上記ステップS13で仮決定された運転席側の吹出モードがデフロスタモードであるか否かを判定する。
【0069】
ここで、運転席側の吹出モードがデフロスタモードであれば、居眠り防止制御内容を検討することなく次のステップS18に移行する。つまり、デフロスタモードが仮決定されたときは、居眠り防止モードに移行しないようにしている。これにより、居眠り防止モードであっても、デフロスタモードを継続させることにより安全運転が継続できる。
【0070】
ステップS171で、運転席側の吹出モードがデフロスタモードでなければ、次のステップS172に移行する。次のステップS172では、居眠り防止モードが選択されているか否かを判定する。ここで、居眠り防止スイッチ64がOFFしていれば、居眠り防止モードが選択されていないと判定し、次のステップS18に移行する。ここで、居眠り防止スイッチ64がONしていれば、居眠り防止モードが選択されていると判定し、次のステップS173に移行する。つまり、居眠り防止モードが選択されていると、居眠り防止空調制御を行うことができる。
【0071】
そして、次のステップS173では、危険地点信号83aの有無を判定する。ここで、危険地点信号83aがあった場合には、居眠り防止モードを行う制御処理、即ちステップS174に移行する。ここで、危険地点信号83aがなしであれば、居眠り防止モードを行わない制御処理、即ちステップS18に移行する。
【0072】
ここで、危険地点信号83aは、前述したように、ナビゲーション装置80からエアコンECU10に向けて発信される信号であって、図6に示すフローチャートに基づいて危険地点信号83aの発停を行っている。以下、図6のフローチャートについて説明する。図6に示すように、ステップS81では、目的地に至る経路案内処理がセットされているか否かを判定する。
【0073】
ここで、経路案内処理がセットされていれば、危険地点信号83aの発停を行う制御処理を実行する。ステップS82では、道路情報を読み込む。具体的には、目的地に至る経路において、過去の事故現場道路情報84b及び単調道路情報84cに収録された事故現場地点及び単調道路地点を読み込む。そして、次のステップS83にて、車両の現在位置を読み込む。そして、車両の現在位置が事故現場地点及び単調道路地点に対して、何km手前地点であるかを算出する。
【0074】
次のステップS84では、車両が高速道路上を進行しているか否かを判定する。ここで、車両が高速道路上を進行していれば、ステップS85に移行する。ここで、高速道路上でなく、一般道路であれば、ステップS87に移行する。そして、ステップS85では、過去の事故現場道路情報84bから求められた事故現場地点と、例えば10km手前地点との間を車両が走行中か否かを判定する。このときに、単調道路情報84cから求められた単調道路地点と、例えば10km手前地点との間を車両が走行中か否かを判定しても良い。
【0075】
ここで、事故現場地点または単調道路地点の到達10km手前地点に車両が達していれば、ステップS86にて、危険地点信号83aを出力する。ここで、事故現場地点または単調道路地点の到達10km手前地点に車両が達していなければ、ステップS82に戻る。
【0076】
ステップS87では、過去の事故現場道路情報84bから求められた事故現場地点と、例えば3km手前地点との間を車両が走行中か否かを判定する。このときに、単調道路情報84cから求められた単調道路地点と、例えば3km手前地点との間を車両が走行中か否かを判定しても良い。
【0077】
ここで、事故現場地点または単調道路地点の到達3km手前地点に車両が達していれば、ステップS86にて、危険地点信号83aを出力する。ここで、事故現場地点または単調道路地点の到達3km手前地点に車両が達していなければ、ステップS88に移行する。ステップS88では、地図上、例えば2km以上信号機なしの手前地点の道路を走行中か否かを判定する。ここでは、2km以上信号機なしの道路を単調道路として判定している。
【0078】
ここで、2km以上信号機なしの手前地点に車両が達していれば、ステップS86にて、危険地点信号83aを出力する。ここで、2km以上信号機なしの手前地点に車両が達していなければ、ステップS89に移行する。次のステップS89では、例えば3km走行時の巡航速度変化が、例えば20km/H未満か否かを判定する。
【0079】
ここで、3km走行時の巡航速度変化が20km/H未満であれば、単調道路として判定してステップS86にて、危険地点信号83aを出力する。ここで、3km走行時の巡航速度変化が20km/H以上であれば、ステップS82に戻る。従って、ステップS85、S87及びS88のような判定手段の制御処理によれば、危険地点に到達する前に、危険地点信号83aを出力することができる。
【0080】
そして、ステップS86にて、危険地点信号83aを出力した後では、ステップS90において、車両が危険地点を通過したか否かを判定している。ここで、車両が危険地点を通過した場合には、ステップS91にて、危険地点信号83aの出力を解除する。つまり、危険地点信号83aの発信を停止する。
【0081】
これにより、ナビゲーション装置80からエアコンECU10に向けて危険地点信号83aの発停を行うことができるとともに、エアコンECU10は、ナビゲーション装置80からの危険地点信号83aの発停を受信することができる。
【0082】
次に、図5のフローチャートに戻って説明する。ステップS173では、図6のフローチャートで説明したように、危険地点信号83aの有無を判定することができる。危険地点信号83aの出力をエアコンECU10が受信したときに、危険地点信号83aのありを判断し、危険地点信号83aの出力解除を受信したときに、危険地点信号83aのなしを判断している。
【0083】
これにより、危険地点信号83aのありのときは、居眠り防止モードを行う制御処理に移行させ、危険地点信号83aのなしを受信したときに、居眠り防止モードを行わない制御処理に移行させることができる。
【0084】
次に、ステップS174では、上記ステップS13(図4参照)で求めた運転席側の目標吹出温度TAO(Dr)を補正している。具体的には、ステップS13で求めた目標吹出温度TAO(Dr)を、例えば5℃低下するように算出する。なお、助手席側の目標吹出温度TAO(Pa)は、補正を行わない。
【0085】
そして、次のステップS175では、上記ステップS16で仮決定された運転席側の吹出モードを確認したか否かを判定する。なお、この制御処理は、請求項で称する吹出モード判定手段である。そして、ステップS176及びS177にて、運転席側の吹出モード及びその吹出モードに応じた風量を変更する。
【0086】
具体的には、ステップS175の吹出モード判定手段で確認した吹出モードが、FACEモードであれば、B/Lモードに変更するとともに、ステップS14で仮決定された運転席側のブロワ制御電圧VA(Dr)の風量レベルを1段階増加させる。また、確認した吹出モードがB/Lモードであれば、FACEモードに変更するとともに、仮決定された運転席側のブロワ制御電圧VA(Dr)の風量レベルを2段階増加させる。
【0087】
また、確認した吹出モードがFOOTモードであれば、B/Lモードに変更するとともに、仮決定された運転席側のブロワ制御電圧VA(Dr)の風量レベルを3段階増加させる。そして、確認した吹出モードがF/Dモードであれば、F/Dモードを継続させるとともに、仮決定された運転席側のブロワ制御電圧VA(Dr)の風量レベルを4段階増加させる。
【0088】
そして、ステップS178にて、居眠り防止モードにおける制御内容、即ち目標吹出温度TAO(Dr)、変更された吹出モード及び変更されたブロワ制御電圧VA(Dr)を決定する。そして、ステップS14で仮決定されたブロワ制御電圧VAを変更する。
【0089】
具体的には、平均化処理(VA=(VA(Dr)+VA(Pa))/2)の数式に、変更された運転席側のブロワ制御電圧VA(Dr)の風量レベルを代入してブロワ制御電圧VAを求める。これにより、ブロワ制御電圧VAを決定する。なお、以上のような制御処理を行うステップS17を請求項では、居眠り防止空調制御と称している。ここで、居眠り防止空調制御内容が決定した後に、ステップS18に移行する。
【0090】
次のステップS18では、第1、第2エアミックスドア15、16の目標開度SW(Dr)、SW(Pa)、吹出モード及びブロワ制御電圧VAの制御値を決定する制御処理である。まず、目標開度SW(Dr)、SW(Pa)は、予めROMに記憶された下記数式3、4に、上記ステップS12にて読み込んだTw、Te及び目標吹出温度TAO(Dr)、TAO(Pa)を代入することによって、第1エアミックスドア15の目標開度SW(Dr)、および第2エアミックスドア16の目標開度SW(Pa)を算出する。
【0091】
[数式3]
SW(Dr)={(TAO(Dr)−Te)/(Tw−Te)}×100(%)
[数式4]
SW(Pa)={(TAO(Pa)−Te)/(Tw−Te)}×100(%)
なお、この演算式は、例えば内気温度Trや外気温度Tamが低いときには、目標吹出温度TAOが高くなることで目標開度SWも大きくなっている。ただし、この開度SWは最大が100%であって、蒸発器41を通過した空気を100%ヒータコア42に通過させてヒータコア42からの空気加熱量を最大限受熱させるものである。
【0092】
ここで、居眠り防止モードの時には、[数式3]のTAO(Dr)を、上記ステップS178で決定されたマイナス側に所定温度(例えば5℃)低下させた数値を代入する。これにより、第1エアミックスドア15の運転席側の目標開度SW(Dr)の制御値が決定する。従って、居眠り防止モードの時には、運転席側の空調ゾーンにおいて、通常の空調制御よりも、所定温度(例えば5℃)低下させた吹出空気温度の空調風が吹き出されることになる。
【0093】
なお、居眠り防止モードを行わないときは、上記ステップS13で求められた(TAO(Dr)の数値を[数式3]に代入すれば良い。これにより、運転席側の空調ゾーンにおいて、通常の空調制御が継続されることになる。
【0094】
また、上記ステップS13で算出されたTAO(Pa)の数値を[数式4]に代入する。これにより、第2エアミックスドア16の助手席側の目標開度SW(Pa)の制御値が決定する。従って、居眠り防止モードの時であっても、助手席側の空調ゾーンにおいて、通常の空調制御による吹出空気温度の空調風が吹き出されることになる。
【0095】
次に、吹出モードの制御値は、居眠り防止モードの時には、上記ステップS178で決定した運転席側の吹出モードとなる制御値として決定する。また、居眠り防止モードを行わないときは、上記ステップS16で仮決定した運転席側の吹出モードとなる制御値を決定する。また、助手席側においては、居眠り防止モードに係わらず、上記ステップS16で仮決定した助手席側の吹出モードとなる制御値を決定する。
【0096】
更に、ブロワ制御電圧VAの制御値は、居眠り防止モードの時には、上記ステップS178で決定したブロワ制御電圧VAを制御値として決定する。また、居眠り防止モードを行わないときは、上記ステップS14で仮決定したブロワ制御電圧VAを制御値として決定する。
【0097】
そして、次のステップS19にて、上記ステップS18で決定した第1エアミックスドア15の目標開度SW(Dr)及び第2エアミックスドア16の目標開度SW(Pa)となる制御量に基づいてサーボモータ17、18に制御信号を出力する。
【0098】
また、上記ステップS18で決定した吹出モードに基づいてサーボモータ28、29、38、39に制御信号を出力するとともに、上記ステップS18で決定したブロワ制御電圧VAの制御量を、ブロワモータ駆動回路8に制御信号を出力する。これにより、上記ステップS18で決定した制御値による空調制御が行われる。
【0099】
ステップS19の処理後、ステップS11、S12に戻って再び各種入力信号を読み込み、それにより、ステップS13以下の制御処理を演算して運転席側空調ゾーンと助手席側空調ゾーンとが互いに独立した温度制御および空調制御が繰り返される。そして、居眠り防止モードの時には、エアコンECU10により運転席側空調ゾーンにおいて、通常の空調制御内容を変化させる居眠り防止空調制御が行われている。
【0100】
以上の構成による車両用空調装置によれば、居眠り運転を起こし易い危険地点が収録された危険道路情報84b、84cが入力されたナビゲーション装置80とエアコンECU10とを組み合わせることにより、居眠り運転を起こし易い危険地点に到達する前(例えば、危険地点に到達する数km手前において)に、エアコンECU10において、居眠り防止モードを設定することができる。また、特別な居眠りセンサや覚醒装置を設けなくても、低コストの居眠り防止モードを設定することができる。
【0101】
更に、居眠り防止モードの時には、上記ステップS17による居眠り防止空調制御を行うことができる。しかも、目標吹出温度演算手S13により求められた目標吹出空気温度TAOよりもマイナス側に所定温度低下させた目標吹出空気温度TAOに基づいて空調ユニット1を制御することにより、運転席側空調ゾーンのみの空調制御内容を変化させることができる。
【0102】
このように、運転席側空調ゾーンのみの空調内容を変化させる居眠り防止空調制御が行われることにより、危険地点に到達する前に、運転者のみを覚醒させることができる。つまり、危険道路を通過する前に居眠り運転の予防ができる。なお、助手席側では、通常の空調制御が継続されるため、助手席側乗員の快適性が維持される。
【0103】
また、ナビゲーション装置80に入力される過去の居眠り運転による事故現場道路情報84bまたは居眠り運転を起こし易い単調な道路として公的に設定された単調道路情報84c等の危険道路情報84b、84cは、警察庁等の官庁や公益法人から入手することができる。
【0104】
また、居眠り防止モードの時に、上記S175の吹出モード判定手段によって判定された吹出モードから他の吹出モードに切替える制御を行うことことにより、居眠り運転を起こし易い危険道路を事前に認識することができる。これにより、危険道路を通過する前に居眠り運転の予防ができる。
【0105】
更に、上記S175の吹出モード判定手段により判定された吹出モードから他の吹出モードに切替えたときに、送風量を所定量増加する制御を行うことにより、吹出モード及び送風量が急激に変化するため、危険道路を通過する前に覚醒状態を維持することができる。
【0106】
なお、吹出モード判定手段により判定された吹出モードがフット・デフロスタモードのときに、そのフット・デフロスタモードを継続させるとともに、送風量を所定量増加する制御を行うことにより、吹出空気温度が低下したときは、窓ガラスに曇りが発生するため、送風量を増加することで曇り止めができる。
【0107】
(第2実施形態)
以上の第1実施形態では、ナビゲーション装置80を、目的地に至る経路において、危険地点に到達する数km手前にて、危険信号83aをエアコンECU10に発信するように構成したが、危険地点到達の数分手前地点に達したときに、危険信号83aをエアコンECU10に発信するように構成しても良い。
【0108】
図7は、本実施形態におけるナビゲーション装置に設けられた危険地点信号の制御処理を示すフローチャートである。具体的には、危険信号83aを出力する判定手段を、図7に示すように、ステップS85a及びステップS87aにて、過去の事故現場道路情報84bから求められた事故現場地点または単調道路情報84cから求められた単調道路地点と、例えば数分(10分)手前地点との間を車両が走行中か否かを判定する。
【0109】
これによれば、車両が危険地点に到達する所定時間手前地点において、危険信号83aを出力することができる。従って、危険地点に到達する手前地点で、エアコンECU10において、居眠り防止モードを設定することができる。これにより、危険地点に到達する前に、運転者を覚醒させることができる。従って、危険道路を通過する前に居眠り運転の予防ができる。
【0110】
(他の実施形態)
以上の実施形態では、本発明を、運転席側空調ゾーンと助手席側空調ゾーンとで独立して空調風を吹出制御する左右独立温度制御方式の空調ユニット1を備える車両用空調装置に適用させたが、これに限らず、左右独立温度制御方式を用いない、通常の車両用空調装置に適用させても良い。但し、この場合には、居眠り防止モードのときに、車室内全体の空調内容が変化するため、危険道路を通過する前に運転手を含め乗員全員の覚醒ができる。
【0111】
また、以上の実施形態では、居眠り防止空調制御を、目標吹出温度演算手S13により求められた目標吹出空気温度TAOよりもマイナス側に所定温度低下させた目標吹出空気温度TAOに基づいて空調制御するとともに、吹出モードを他の吹出モードに変更して送風量を増加するように制御させたが、これに限らず、少なくとも所定温度低下させた目標吹出空気温度TAOに基づく空調制御を行うことでも良い。なお、以上の実施形態では、所定温度を、例えばマイナス側に5℃低下させたが、この数値に限らず、外気温度もしくは車種により適宜異なる所定温度に設定しても良い。
【0112】
また、以上の実施形態では、吹出モードがフット・デフロスタモードのときに、そのフット・デフロスタモードを継続させるとともに、送風量を所定量増加する制御を行うように構成したが、例えば、冬季においては、居眠り防止モードに変更する前の総空気飽和量が同等となる送風量に増加させると良い。
【0113】
また、以上の実施形態では、居眠り防止モードを指令するための居眠り防止スイッチ64を設けたが、居眠り防止スイッチ64を設けることなく、図4に示す空調制御の基本ルーチンに自動的に居眠り空調制御を行うように設定しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】第1実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す構成図である。
【図2】第1実施形態における操作パネルの構成を示す正面図である。
【図3】第1実施形態におけるナビゲーション装置の概略構成を示すブロック図である。
【図4】第1実施形態におけるエアコンECUの制御処理を示すフローチャートである。
【図5】図4に示すS17の制御処理の詳細を示すフローチャートである。
【図6】第1実施形態におけるナビゲーション装置に設けられた危険地点信号の制御処理を示すフローチャートである。
【図7】第2実施形態におけるナビゲーション装置に設けられた危険地点信号の制御処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0115】
1…空調ユニット
10…空調制御装置、エアコンECU(空調制御手段)
80…ナビゲーション装置
83a…危険地点信号
84b…危険道路情報、事故現場道路情報
84c…危険道路情報、単調道路情報
S13…目標吹出温度演算手段
S17…居眠り防止空調制御
S175…吹出モード判定手段
TAO…目標吹出温度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の現在位置及び進行方向を検出するとともに、予め記憶された道路情報に基づき、車両の走行案内を行うナビゲーション装置(80)を備えた車両に設けられ、車室内を空調する空調ユニット(1)と前記空調ユニット(1)を制御する空調制御手段(10)を備える車両用空調装置において、
前記ナビゲーション装置(80)には、居眠り運転を起こし易い危険地点が収録された危険道路情報(84b、84c)が予め記憶され、
かつ前記ナビゲーション装置(80)は、前記危険道路情報(84b、84c)に基づいて求められた危険地点に車両が到達する前に、危険地点信号(83a)を前記空調制御手段(10)に発信するように構成されており、
前記空調制御手段(10)は、前記ナビゲーション装置(80)から前記危険地点信号(83a)を受信したときに、現状の空調制御内容を変化させる居眠り防止空調制御(S17)を行うことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記危険道路情報(84b、84c)は、過去の居眠り運転による事故現場道路情報(84b)または居眠り運転を起こし易い単調な道路として公的に設定された単調道路情報(84c)の少なくとも一方の情報であることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
乗員が設定する設定情報および各センサで検出される検出情報に基づいて、目標吹出空気温度(TAO)を演算する目標吹出温度演算手段(S13)が設けられ、
前記居眠り防止空調制御(S17)は、前記目標吹出温度演算手段(S13)により求められた目標吹出空気温度(TAO)よりもマイナス側に所定温度低下させた目標吹出空気温度(TAO)に基づいて前記空調ユニット(1)を制御することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記目標吹出温度演算手段(S13)により求められた目標吹出空気温度(TAO)に基づいて求められた吹出モードを判定する吹出モード判定手段(S175)が設けられ、
前記居眠り防止空調制御(S17)は、前記吹出モード判定手段(S175)により判定された吹出モードから他の吹出モードに切り替える制御を行うことを特徴とする請求項3に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記居眠り防止空調制御(S17)は、前記吹出モード判定手段(S175)により判定された吹出モードから他の吹出モードに切り替えたときに、送風量を所定量増加する制御を行うことを特徴とする請求項4に記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記居眠り防止空調制御(S17)は、前記吹出モード判定手段(S175)により判定された吹出モードがフット・デフロスタモードのときに、前記フット・デフロスタモードを継続させるとともに、送風量を所定量増加する制御を行うことを特徴とする請求項4に記載の車両用空調装置。
【請求項7】
前記空調制御手段(10)は、吹出モードがデフロスタモードのときに、現状の空調制御内容を継続させ、前記居眠り防止空調制御(S17)を実行しないことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用空調装置。
【請求項8】
前記空調制御手段(10)は、運転席側と助手席側とで独立して空調風を吹出制御する左右独立温度制御方式であって、
前記居眠り防止空調制御(S17)は、運転席側の空調制御内容を変化させることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−176238(P2009−176238A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−16583(P2008−16583)
【出願日】平成20年1月28日(2008.1.28)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】