説明

車両用空調装置

【課題】コストダウンならびに快適性の向上を図ることのできる車両用空調装置を提供すること。
【解決手段】車室RMに連通された吸入口11から同じく車室RMに連通された吹出口12へ至る送風通路13を備えたユニットケース10と、送風通路13において、吸入口11から吹出口12へ向かう送風を形成するブロワファン20と、送風通路13に配置され、送風を冷却する冷却器30と、冷却器30を迂回するとともに、冷却器30を通過した冷風と合流可能に形成されたバイパス通路13bと、バイパス通路13bの流路断面積を変更可能なバイパスドア40と、を備え、車室空気を冷却して車室RMに吹き出させる車室冷房専用の車両用空調装置とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置に関し、特に、車両の後席用クーラのように、空気と熱交換を行うものとして、冷却器のみが設置された車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱交換を行う構成として冷却器のみを備えた車両用空調装置として、例えば、特許文献1に記載された後席用クーラが知られている。
この従来技術は、後席室温設定手段で設定された設定値と後席室温センサの検出値との偏差に応じて吹出温度設定手段の設定値を変更し、この変更された吹出温度設定値と吹出温度センサの検出値が一致するよう、リアクーラの冷却器への冷媒供給を制御する電磁弁の開閉制御を行うようにしたものである。
【特許文献1】特開平5−338435号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述のように電磁弁を開閉制御する技術にあっては、冷却器の温度が上下するため、上記特許文献1にも記載されているように、吹出温度設置値が例えばTである場合、吹出温度がT±Bの範囲内に収まるように電磁弁の開閉制御を行うことになり、冷却器の温度が上下し、したがって、吹出温度が上下する。
このため、乗員に不快感を与えるおそれがあった。
しかも、高価な電磁弁を使用するため、装置のコストアップを招く。
【0004】
本発明は、上述のような従来の問題に着目して成されたもので、電磁弁を用いることなしに吹出温度の調節を可能としてコストダウンならびに快適性の向上を図ることのできる車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するために請求項1に記載の発明は、車室に連通された吸入口から同じく車室に車室に連通された吹出口へ至る送風通路を備えたケースと、前記送風通路において、前記吸入口から吹出口へ向かう送風を形成する送風機と、前記送風通路に配置され、前記送風を冷却する冷却器と、を備え、前記車室空気を冷却して前記車室内に吹き出させる車室冷房専用の車両用空調装置であって、前記冷却器を迂回するとともに、前記冷却器を通過した冷風と合流可能に形成されたバイパス通路と、このバイパス通路の流路断面積を変更可能なバイパスドアと、を備えていることを特徴とする車両用空調装置とした。
【0006】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用空調装置において、前記冷却器が、送風の流入面および流出面を送風方向に対して斜めに傾斜して設置されていることを特徴とする車両用空調装置とした。
【0007】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の車両用空調装置において、前記バイパス通路が、前記冷却器の前記流入面と流出面の側方に形成されていることを特徴とする車両用空調装置とした。
【0008】
また、請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の車両用空調装置において、前記バイパス通路が、前記冷却器の前記流入面と流出面とのいずれかと対向する方向に形成されていることを特徴とする車両用空調装置とした。
【0009】
また、請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の車両用空調装置において、前記冷却器の送風下流直後に、冷却器を通過した送風温度を検出する冷却器温度センサが設けられ、前記バイパスドアは、前記冷却器温度センサへの送風を妨げないよう配置されていることを特徴とする車両用空調装置とした。
【0010】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両用空調装置において、前記バイパスドアの開度を変更する駆動を実行可能なドア駆動機構と、このドア駆動機構の駆動を制御する制御装置と、この制御装置が、入力側に少なくとも、乗員による車室空気温度を設定する設定装置と、前記吹出口からの吹出空気温度を検出する吹出温度センサと、を備え、前記制御装置は、前記設定装置により設定された車室温度と、前記吹出温度センサが検出する吹出空気温度と、に基づいて、前記バイパスドアの開度を制御することを特徴とする車両用空調装置とした。
【発明の効果】
【0011】
本発明のドア装置では、バイパスドアの開度に応じ、冷却器を通過した冷風と、冷却器を迂回してバイパス通路を通る車室温度の送風と、を合流させて、冷却器を通過した冷風温度よりも高い温度であって、車室温度よりも低い温度の送風を、吹出口から車室内へ吹き出させることができる。
この場合、吹出温度に応じ、適宜バイパスドアの開度を変更することにより、吹出温度を一定に保つことが可能である。
したがって、電磁弁を開閉して冷却器の温度を変化させるのと比較して、吹出温度の安定化を図ることができ、乗員の快適性を向上させることができる。
しかも、吹出温度に基づいてバイパスドアの開度を調節するだけでよく、高価な電磁弁を使用しないため、電磁弁を使用するのと比較して、コストダウンを図ることができる。
【0012】
さらに、請求項2に記載の発明では、冷却器を送風方向に対して斜めに傾けて設置したため、冷却器を、流入面および流出面を送風方向に対して直交して設置したものと比較して、流入面および流出面に直交する方向の寸法を小さく抑えることができ、車載性を高めることができる。
【0013】
請求項3に記載の発明では、バイパス通路を、冷却器の傾斜方向の側方に隣接して形成したため、同じ流路断面積であれば、送風方向に直交する方向の寸法を小さく抑えることが可能となり、車載性をさらに向上させることができる。
一方、請求項4に記載の発明では、バイパス通路を、冷却器の流入面と流出面とのいずれかが対向する側に隣接して形成したため、請求項3に記載のものと比較して、同じ流路断面積であれば、ケースの前記側方の寸法を小さく抑えることが可能となり、前記側方に狭い設置スペースへの設置が容易となる。
【0014】
請求項5に記載の発明では、バイパスドアを冷却器温度センサへの送風を妨げないよう配置したため、冷却器温度センサへの送風が妨げられた場合と比較して、冷却器温度センサの検出精度を確保することができる。
【0015】
請求項6に記載の発明では、制御装置が、温度設定装置により設定された車室温度と、吹出温度センサが検出する吹出空気温度と、に基づいて、バイパスドアの開度を制御するようにしたため、手動でバイパスドアの開度を変更するのと比較して、容易に吹出空気温度の一定化を図ることができ、快適性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
この実施の形態の車両用空調装置は、車室に連通された吸入口(11)から同じく車室に連通された吹出口(12)へ至る送風通路(13)を備えたケース(10)と、前記送風通路(13)において、前記吸入口(11)から吹出口(12)へ向かう送風を形成する送風機(20)と、前記送風通路(13)に配置され、前記送風を冷却する冷却器(30)と、を備え、前記車室空気を冷却して前記車室内に吹き出させる車室冷房専用の車両用空調装置であって、前記冷却器(30)を迂回するとともに、前記冷却器を通過した冷風と合流可能に形成されたバイパス通路(13b)と、このバイパス通路(13b)の流路断面積を変更可能なバイパスドア(40)と、を備えていることを特徴とする車両用空調装置である。
【実施例1】
【0017】
以下に、図1〜図6に基づいて、この発明の最良の実施の形態の実施例1の車両用空調装置Aについて説明する。
図1は車両用空調装置Aを示す断面図であって、この車両用空調装置Aは、車両の床下に車幅方向(図において矢印Wが車幅方向を示す)に沿って設けられている。すなわち、車両用空調装置Aは、図において二点鎖線で示す車体のフロアパネル1とその車両上方に配置された二点鎖線で示す床材2との間に、車両上下方向(矢印UPが車両上方を、矢印DNが車両下方を示している)に幅を有して形成された床下空間3に、矢印Wで示す車幅方向に沿って設置されている。また、この車両は、例えば、ワンボックスカーやミニバンなどと称される車両のような前後3列シートを有した車両であって、この車両用空調装置Aは、図示を省略した2列目シートや3列目シートの下方床下に設置されている。
【0018】
この実施例1の車両用空調装置Aは、ユニットケース10を備えている。
このユニットケース10は、樹脂により箱状に形成されており、車幅方向の図において左側の端部に開口された吸入口11と、車幅方向の図において右側の端部に開口された吹出口12と、吸入口11から吹出口12に向けて車幅方向に延びる送風通路13と、を備えている。
【0019】
吸入口11は、図示を省略した吸入ダクトを介して、車室RMに連通され、吹出口12も、図示を省略した吹出ダクトを介して車室に連通されている。なお、吸入ダクトおよび吹出ダクトは、例えば、1列目シートと2列目シートとの間に立設された左右のセンタピラーや、2列目シートと3列目シートとの間に立設された左右のリアピラーの内部にそれぞれ配索させて、車体の図示を省略した天井部分に開口させることができる。
【0020】
送風通路13は、上下を上壁14と下壁15とに挟まれて形成されている。
下壁15は、吸入口11に近い側から、ファン支持底壁部15aと上流側縦壁部15bと合流部底壁部15cと下流側縦壁部15dと吹出底壁部15eとを備えている。合流部底壁部15cは、ファン支持底壁部15aおよび吹出底壁部15eよりも低い位置に配置されており、これらの略水平方向の各底壁部15a,15c,15eが、車両上下宝庫に起立した上流側縦壁部15bと下流側縦壁部15dとを介して一体に連続した形状に形成されている。
【0021】
ファン支持底壁部15aは、送風通路13の上流に配置され、後述するブロワファン20を支持する。
合流部底壁部15cは、後述する冷却器30を収容するとともに、後述する冷風(WD(m))と車室温度の送風(WD(b))とが合流するスペースを確保する部分に配置されている。また、合流部底壁部15cは、図において右下がりに僅かに傾斜され、その最下端位置にドレン15fが設けられている。なお、ドレン15fの外周には、シールパッキン15gが設けられている。
下流側縦壁部15dは、合流部底壁部15cの送風方向の下流から、上流側縦壁部15bよりも高い位置まで立ち上げられている。
吹出底壁部15eは、吹出口12に向けて僅かに車両上方に傾斜されている。
【0022】
ユニットケース10の送風通路13には、ブロワファン20と冷却器30とが設置されている。
ブロワファン20は、前述のようにファン支持底壁部15aに設置され、送風通路13において吸入口11から吹出口12に向かう矢印WDで示す送風を形成するもので、モータ21により駆動される。
【0023】
冷却器30は、周知の冷媒を循環する冷凍サイクルの構成要素の一つであって、ユニットケース10の送風通路13を遮断して上流側縦壁部15bと上壁14との間に設置されている。
【0024】
この冷却器30は、図示を省略した走行用エンジンによって駆動されるコンプレッサから冷媒が供給され、流入面31から流出面32へと通過する送風を冷却するフィン(図示省略)を備えている。
なお、冷媒は、図示を省略した車両前部に設けられた主空調装置から分岐されて供給される。この図示を省略した主空調装置は、冷却器と加熱器とが並設され、車室の温度調節として冷房と暖房とを行うことができるが、この実施例1の車両用空調装置Aは、この主空調装置の補助として、車両の後部の冷房のみを行うものである。
【0025】
また、冷却器30は、送風(WD)が流入する流入面31を車両上方へ向けるとともに、冷却された冷風が流出する流出面32を車両下方へ向け、かつ、矢印WDで示す送風の方向の下流側ほど車両上方に配置されるように、斜めに傾斜して設置されている。また、冷却器30と合流部底壁部15cとの間には、合流チャンバ18が形成されている。
【0026】
そして、冷却器30は、図1において、送風通路13の車両上下方向の全断面積を遮って設置されているが、冷却器30の水平方向であって、車両前後方向の両側には、バイパス通路13b,13b(図2参照)が設けられている。
【0027】
すなわち、ユニットケース10の送風通路13は、図1に示すように、上壁14と下壁15とに上下を挟まれて形成されている。一方、車両前後方向では、図2に示すように、冷却器30を通過する主通路13aの車両前後方向(矢印FRが車両前方を、矢印RRが車両後方を示す)に、冷却器30を迂回するバイパス通路13b,13bが形成されている。なお、矢印WD(m)が主通路13aを通過する送風を示し、矢印WD(b)がバイパス通路13bを通過する送風を示している。
バイパス通路13bにあっては、冷却器30の車両前後方向の両側位置で、上壁14が送風下流側ほど車両下方に配置されるように傾斜された傾斜壁14aが形成され、かつ、傾斜壁14aの車両下方に対向してバイパス口16が開口されている。また、傾斜壁14aの送風下流側は吹出底壁部15eに連続するバイパス上壁14bが形成され、バイパス通路13bの送風が、吹出口12へ真っ直ぐ進むことができないように形成されている。したがって、バイパス通路13bは、冷却器30を迂回した送風が、冷却器30の下方の合流チャンバ18に進んで、冷却器30を通過した主通路13aの送風と合流するよう形成されている。
【0028】
さらに、バイパス通路13bにおいて、傾斜壁14aとバイパス口16との間に、バイパスドア40が設けられている。このバイパスドア40は、バイパス口16の送風方向下流側端部に設けられた回動軸41を中心として、図1において二点鎖線で示すようにバイパス口16を閉じた全閉位置と、図1において実線で示すように傾斜壁14aに沿うように配置された全開位置との間で回動可能に支持されている。したがって、このバイパスドア40により、バイパス通路13bの流路断面積、すなわち、送風量を調節することができる。
また、このバイパスドア40の開度は、ドア駆動装置50が回動軸41を回動させることで変更される。なお、このドア駆動装置50は、図示は省略するが、駆動源となるモータと、このモータの回転を減速しながら回動軸に伝達するギア機構と、を備えている。
【0029】
また、冷却器30の下流直後には、冷却器温度センサ61が設けられている。この冷却器温度センサ61の信号は、図3に示す制御装置60に入力される。なお、図示のように制御装置60には、冷却器温度センサ61に加え、図外の空調装置において車室後部温度を設定する温度設定装置62と、車室RMへの吹出温度を検出する吹出温度センサ63と、に接続されている。
【0030】
そして、制御装置60は、温度設定装置62で設定された車室温度と、吹出温度センサ63が検出する吹出温度と、に基づいて、ドア駆動装置50の駆動を制御し、車両用空調装置Aからの送風の吹出温度を調節する。また、制御装置60は、冷却器温度センサ61の検出温度に基づいて、冷却器30が凍結するのを防止するよう冷媒の流れを制御する。
【0031】
次に、実施例1の作用について説明する。
ブロワファン20を駆動させると、ユニットケース10の送風通路13には、吸入口11から吸入され吹出口12から吹き出される送風(WD)が形成される。
【0032】
ここで、バイパスドア40が図1の二点鎖線で示す全閉状態では、送風の全量が主通路13a、すなわち、冷却器30を通過して、全風量の冷却が行われる。
この状態が、いわゆるフルクール状態であり、送風(WD)は最も冷却される。
一方、バイパスドア40を開くと、送風(WD)の一部(WD(b))が、冷却器30を迂回した後、合流チャンバ18において、冷却器30を通過した冷風(WD(m))と混合される。このように、送風(WD)の一部が冷却器30を迂回する場合、吹出温度は、送風の全量が冷却器30を通過するフルクールの場合よりも高くなる。
【0033】
図4は、吹出温度(℃)とバイパスドアのドア開度と車室内温度CR(℃)との関係を示している。この図4に示すように、バイパスドア40のドア開度に応じ、吹出温度は、ドア全閉時の温度CL(℃)と、ドア全開時の温度CH(℃)と、の間で、ドア開度に応じて変化する。
【0034】
したがって、例えば、設定温度の変化に応じて吹出温度を、図5に示すように、第1設定温度T1(℃)から、それよりも高温であってドア全開時の温度CH以下の第2設定温度T2(℃)に変化させるような場合、吹出温度が第2設定温度T2(℃)となるまでドア開度を広げる。
【0035】
これにより、バイパス通路13bを通過する車室温度の送風量が増加し、図5に示すように、第2設定温度T2(℃)に短期間に調節することができる。すなわち、吹出温度は、冷却器30を通過した冷風と、バイパス通路13bを通過した車室温度の送風と、の混合割合により決定されるため、吹出温度の調節に要する時間は、バイパスドア40のドア開度を変化させるのに要する時間だけで済む。
【0036】
また、冷風温度や車室温度が変化した場合、この変化に応じて、バイパスドア40の開度を随時変更して、バイパス通路13bを通過する送風量を随時調節することにより、吹出温度を一定に維持することができる。
【0037】
図6は、従来技術で説明したように、冷却器30への冷媒の供給・供給停止を切り換える電磁弁を用いた場合の吹出温度の変化を示しており、電磁弁の開閉により冷却器30の温度が上下するため、吹出温度の平均値は、一定に保たれても、吹出温度自体は上下を繰り返すことになる。
【0038】
以上のように、本実施例1の車両用空調装置Aでは、吹出温度が図6に示すように上下することを防止し、図5に示すように、一定に維持することが可能であり、乗員の快適性を向上させることができる。
また、この乗員の快適性向上を得るのにあたり、高価な電磁弁を使用しない構成としたため、電磁弁を使用する従来技術と比較して、コストダウンを図ることができる。
【0039】
さらに、実施例1では、バイパス通路13b,13bを冷却器30と車両前後方向の両側に形成したため、上下寸法の限られた床下空間3にコンパクトに設置できながら、バイパス通路13b,13bの流路断面積を確保して、吹出温度調節幅、すなわち、図4のドア全閉時の温度CL(℃)とドア全開時の温度CH(℃)との温度幅を確保することができる。
【0040】
また、実施例1では、冷却器30を通過して形成された冷風(WD(m))とバイパス通路13bを通過した車室温度の送風(WD(b))とが合流する合流チャンバ18の下流に、下流側縦壁部15dが形成されて、送風通路13の上下方向寸法が絞られているため、冷風(WD(m))と送風(WD(b))との混合性が良好であり、吹出温度ムラの発生を防止し、乗員の快適性を向上できる。
【0041】
加えて、実施例1では、バイパス通路13bの下流にバイパス上壁14bを形成し、バイパス通路13bを通った送風が、冷風と合流することなく吹出口12へ進むのを防止でき、これによっても、吹出温度ムラの発生を防止して、乗員の快適性を向上できる。
【0042】
しかも、実施例1では、制御装置60が、温度設定装置62により設定された車室温度と、吹出温度センサ63が検出する吹出空気温度と、に基づいて、バイパスドア40のドア開度を制御するようにしたため、手動でバイパスドア40の開度を変更するのと比較して、容易に吹出空気温度の一定化を図ることができ、乗員の快適性に優れる。
【0043】
また、実施例1では、冷却器30の送風上流にバイパスドア40が存在しないため、冷却器30の直後に配置した冷却器温度センサ61への送風が、バイパスドア40などにより妨げられることがなく、冷却器温度センサ61への送風が妨げられた場合と比較して、冷却器温度センサ61の検出精度を確保することができる。
(他の実施例)
以下に、本発明の実施の形態の他の実施例について説明する。なお、以下の実施例は、実施例1の変形例であるため、実施例1との相違点のみを説明し、実施例1と同様の構成を図示する場合には実施例1と同じ符号を付けて説明を省略する。また、実施例1と同様の作用効果についても説明を省略する。
【実施例2】
【0044】
図7に基づいて、この発明の実施の形態の実施例2の車両用空調装置Bについて説明する。
【0045】
この実施例2の車両用空調装置Bは、バイパス通路213bならびにこのバイパス通路213bの送風量を調節するバイパスドア240を、冷却器30を通る主通路213aの車両上方に配置した例である。
【0046】
すなわち、図7に示すように、冷却器30の流入面31と上壁14との間に、冷却器30を迂回するバイパス通路213bが形成されており、また、冷却器30の下流であって、下流側縦壁部15dの上方に合流チャンバ218が配置されている。なお、この実施例2では、冷却器30は、ユニットケース210の全幅に亘って配置されており、車両前後方向両側には、実施例1で示した冷却器30を迂回するバイパス通路13bは形成されていない。
【0047】
また、上壁14において、冷却器30の送風方向(車幅方向)で中間部よりも送風下流(図中右側)に、バイパスドア240の基端部の回動軸241が支持されており、バイパスドア240は、図において二点鎖線で示すように先端を冷却器30の上端に当接された位置と、上壁14に当接あるいは近接された位置と、の間で回動可能に支持されている。
【0048】
バイパスドア240は、先端部に、下向きの折曲部242を備えている。この折曲部242は、図において二点鎖線で示す全閉状態には、冷却器30の上端面に密着する角度に形成されおり、図において実線で示す開状態では、バイパス通路213bの送風を合流チャンバ218に導く。
他の構成については、実施例1と同様であるので説明を省略する。
【0049】
以上のように構成された実施例2の車両用空調装置Bでは、実施例1と同様に、冷却器30を通過した冷風(WD(m))と、冷却器30を迂回してバイパス通路213bを通過した車室温度の送風(WD(b))と、を合流チャンバ218で合流させて吹出温度を、ドア全閉時の温度CL(℃)と、ドア全開時の温度CH(℃)と、の間で、ドア開度に応じて調節することができる。
【0050】
したがって、実施例1と同様に、吹出温度を一定に調節することができ、乗員の快適性を向上させることができ、かつ、この乗員の快適性向上を得るのにあたり、高価な電磁弁を使用しない構成としたため、電磁弁を使用する従来技術と比較して、コストダウンを図ることができる。
【0051】
また、実施例2の場合、主通路213aの車両前後に、実施例1で示したバイパス通路13bを有していないため、車両前後方向の寸法が限られた部位に設置するのに好適である。
【0052】
さらに、バイパスドア240の先端部に折曲部242を形成したため、全閉時の送風遮断性能の向上を図ることができるとともに、バイパスドア240の開状態では、バイパス通路213bの車室温度の送風を合流チャンバ218の方向に導いて、主通路213aの冷風との混合を円滑に行い、吹出温度の均一化を図ることができる。
【0053】
加えて、バイパスドア240の回動軸241を上壁14に支持させ、バイパスドア240は、全開から全閉の範囲でどのドア開度でも、冷却器30の流入面31に当接しない配置とした。このため、バイパスドア240が、冷却器温度センサ61への冷風の流れを妨げることがなく、冷却器温度センサ61への送風が妨げられた場合と比較して、冷却器温度センサ61の検出精度を確保することができる。
【実施例3】
【0054】
図8に基づいて、この発明の実施の形態の実施例3の車両用空調装置Cについて説明する。
【0055】
この実施例3は、実施例2の変形例であり、バイパス通路313bが冷却器30の上方に配置されている点は実施例2と同様であるが、ユニットケース310および冷却器30の車幅方向の寸法が、実施例2よりも短く形成されてバイパス通路313bの車両上下方向寸法が実施例2のものよりも大きく確保され、かつ、バイパスドア340の取付態様が実施例2と異なっている。
【0056】
すなわち、実施例3では、バイパスドア340の基端部の回動軸341が、冷却器30の上端部に支持されている。そして、バイパスドア340は、図8において、二点鎖線で示すように先端部が上壁14に当接した全閉位置と、同図において実線で示すように先端部が上壁14および冷却器30から離れて配置された全開位置と、の間で回動可能に支持されている。このように、バイパスドア340の全開位置で、バイパスドア340が冷却器30の流入面31から車両上方に離れて配置されることで、この全開位置において冷却器温度センサ61への送風を妨げない配置となっている。
【0057】
さらに、上壁14には、バイパス通路313bの送風を合流チャンバ318の方向である車両下方へ導く断面略V字形状のガイド用凸部314aが、車両下方に突出して形成されている。
【0058】
以上のように構成された実施例3の車両用空調装置Cでは、実施例1,2と同様に、冷却器30を通過した冷風と、バイパス通路313bを通過した車室温度の送風と、を混合させて吹出温度を調節するようにしているため、図4に示すような吹出温度特性を得ることができる。よって、吹出温度を一定に調節することができ、乗員の快適性を向上させることができる。また、この乗員の快適性向上を得るのにあたり、高価な電磁弁を使用しないため、電磁弁を使用する従来技術と比較して、コストダウンを図ることができる。
【0059】
また、実施例3では、実施例2と同様に、冷却器30の車両上方にバイパス通路313bを配置したため、車両前後方向の寸法が限られた部位に設置するのに好適である。
【0060】
さらに、上壁14にガイド用凸部314aを形成したため、バイパスドア340の開状態で、バイパス通路313bの車室温度の送風を合流チャンバ318の方向に導いて、主通路313aの冷風との混合を円滑に行い、吹出温度の均一化を図ることができる。
【0061】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態および実施例1〜3について詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態および実施例1〜3に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0062】
例えば、実施例1では、車両用空調装置A,B,Cを床下空間3に配置した例を示したが、配置場所は、床下空間3に限定されない。例えば、天井にスペースを確保できる場合、天井に設置することができる。あるいは、セダンタイプの車両では、車室後部のトランクスペースに配置することができる。また、空調装置本体が車両後部に搭載されている場合には、実施例1〜3とは逆に、本発明装置を車両前部に搭載することもできる。
【0063】
また、実施例1〜3では、送風方向が車幅方向となるように設置した例を示したが、送風方向が車両前後方向を向くように、すなわち、実施例1〜3で示した装置を、上下方向の軸を中心に90度回動させて配置させることもできる。
【0064】
また、実施例1〜3では、バイパスドア40,240,340は、ドア駆動装置50により自動で回動させるものを示したが、これに限定されず、ワイヤなどの作動力を伝達する機構を介して、手動により回動可能としてもよい。
【0065】
また、実施例1〜3では、冷却器30を通過した冷風と、バイパス通路13b,213b,313bを通過した車室温度の送風とを、合流させて混合させる合流チャンバ18,218,318をユニットケース10,210,310内に配置した例を示した。しかし、これに限定されることはなく、ユニットケース10,210,310の吹出口12から車室RMに開口された送風口までのダクトが長い場合や、ユニットケース内に合流チャンバを確保できない場合、吹出口12よりも下流のダクト部分で冷風と車室温度の送風とを合流させるようにしてもよい。
【0066】
また、実施例1〜3では、バイパスドアとして、基端部の回動軸を中心に回動するドアを示したが、このような回動タイプのドアに限定されるものではなく、スライドタイプのドアなど、バイパス通路の流路断面積を変更可能なドアであればどのような形式のドアを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の最良の実施の形態の実施例1の車両用空調装置Aの概略を示す縦断面図である。
【図2】実施例1の車両用空調装置Aの要部を示す斜視図である。
【図3】実施例1の車両用空調装置Aの制御装置を示すブロック図である。
【図4】実施例1の車両用空調装置Aのバイパスドア40のドア開度と吹出温度との関係を示すドア開度特性図である。
【図5】実施例1の車両用空調装置Aの吹出温度変更特性の説明図である。
【図6】実施例1の車両用空調装置Aと比較する従来の吹出温度変更特性の説明図である。
【図7】実施例2の車両用空調装置Bの概略を示す縦断面図である。
【図8】実施例3の車両用空調装置Cの概略を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0068】
10 ユニットケース
11 吸入口
12 吹出口
13 送風通路
13b バイパス通路
20 ブロワファン(送風機)
30 冷却器
31 流入面
32 流出面
40 バイパスドア
50 ドア駆動装置
60 制御装置
61 冷却器温度センサ
62 温度設定装置
63 吹出温度センサ
210 ユニットケース
213bバイパス通路
240 バイパスドア
310 ユニットケース
313bバイパス通路
340 バイパスドア
A 実施例1の車両用空調装置
B 実施例2の車両用空調装置
C 実施例3の車両用空調装置
RM 車室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室に連通された吸入口から同じく車室に連通された吹出口へ至る送風通路を備えたケースと、
前記送風通路において、前記吸入口から吹出口へ向かう送風を形成する送風機と、
前記送風通路に配置され、前記送風を冷却する冷却器と、
を備え、前記車室空気を冷却して前記車室内に吹き出させる車室冷房専用の車両用空調装置であって、
前記冷却器を迂回するとともに、前記冷却器を通過した冷風と合流可能に形成されたバイパス通路と、
このバイパス通路の流路断面積を変更可能なバイパスドアと、
を備えていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記冷却器が、送風の流入面および流出面を送風方向に対して斜めに傾斜して設置されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記バイパス通路が、前記冷却器の前記流入面と流出面の側方に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記バイパス通路が、前記冷却器の前記流入面と流出面とのいずれかと対向する方向に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記冷却器の送風下流直後に、冷却器を通過した送風温度を検出する冷却器温度センサが設けられ、
前記バイパスドアは、前記冷却器温度センサへの送風を妨げないよう配置されていることを特徴とする請求項4に記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記バイパスドアの開度を変更する駆動を実行可能なドア駆動機構と、
このドア駆動機構の駆動を制御する制御装置と、
この制御装置が、入力側に少なくとも、乗員による車室空気温度を設定する温度設定装置と、前記吹出口からの吹出空気温度を検出する吹出温度センサと、を備え、
前記制御装置は、前記温度設定装置により設定された車室温度と、前記吹出温度センサが検出する吹出空気温度と、に基づいて、前記バイパスドアの開度を制御することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−67363(P2009−67363A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−241005(P2007−241005)
【出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】