説明

車両用空調装置

【課題】乗員よりも前方の左右いずれか一方の位置から乗員の上半身に向けて冷風を吹き出すレイアウトの車両用空調装置において、乗員の冷房フィーリングを向上させる。
【解決手段】乗員3の斜め前方から冷風を吹き出す吹出グリル60に、乗員3の顔を除いた上半身に向けて冷風を吹き出す複数の上半身用吹出口を設け、上半身用吹出口から吹き出される吹き出し空気f、g、hのうち最も風速が高い吹き出し空気fが、乗員3の上半身のうち吹出グリル60から遠い側に向かって吹き出され、最も風速が低い吹き出し空気hが、乗員3の上半身のうち吹出グリル60に近い側に向かって吹き出されるようにする。これによると、乗員3の上半身の左右にバランスよく配風されるため、乗員3の冷房フィーリングを向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置に関するもので、油圧ショベル等の建設機械やトラクタ等の農業機械といった小型特殊車両に適用して有効である。
【背景技術】
【0002】
乗員の冷房フィーリング向上のためには、顔に向けて冷風を吹き出すスポット風だけではなく、上半身全体へも冷風をあてることが必要である。そこで、特許文献1の空調装置のように、小型特殊車両において、乗員よりも前方の左右2箇所から乗員の上半身に向けて冷風を吹き出すレイアウトとすることが考えられる。
【特許文献1】特開2004−338457号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、小型特殊車両においては、車室の左側は乗員の乗降口となっていることと、車室前方下の視認性向上のために前面ガラスがスライドして開く構造となっていることから、現実的には左側から冷風を吹き出すためのダクトを乗員よりも前方の左側位置に配置することは難しく、実際そのような車両はない。
【0004】
本発明は上記点に鑑みて、乗員よりも前方の左右いずれか一方の位置から乗員の上半身に向けて冷風を吹き出すレイアウトの車両用空調装置において、乗員の冷房フィーリングを向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、車室内に向かって空気を送風する送風機(18)と、送風機(18)によって送風された送風空気が流れるケース(11)と、ケース(11)内に配置され、送風空気を冷却する冷却用熱交換器(19)と、ケース(11)に接続され、送風空気を乗員よりも前方の左右いずれか一方の位置まで導く導風部材(50、60)と、導風部材(50、60)の空気流れ下流端近傍に設けられ、乗員の顔を除いた上半身に向けて送風空気を吹き出す複数の上半身用吹出口(61〜63)とを備え、上半身用吹出口(61〜63)のうち風速が高くなる高速吹出口(61)は、乗員の上半身のうち上半身用吹出口(61〜63)から遠い側に向かって送風空気を吹き出すように構成され、上半身用吹出口(61〜63)のうち風速が低くなる低速吹出口(63)は、乗員の上半身のうち上半身用吹出口(61〜63)に近い側に向かって送風空気を吹き出すように構成されていることを特徴とする。
【0006】
これによると、乗員よりも前方の左右いずれか一方の位置から乗員の上半身に向けて冷風を吹き出すレイアウトであっても、乗員の上半身の左右にバランスよく配風されるため、乗員の冷房フィーリングを向上させることができる。
【0007】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の車両用空調装置において、導風部材(50、60)の空気流れ下流端近傍に設けられ、送風空気を乗員の顔に向けて吹き出す顔用吹出口(51、69)を備えることを特徴とする。これによると、冷房感をアップすることができる。
【0008】
請求項3に記載の発明のように、請求項2に記載の車両用空調装置において、上半身用吹出口(61〜63)を顔用吹出口(51、69)よりも下方に配置することができる。
【0009】
請求項4に記載の発明では、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、複数の上半身用吹出口(61〜63)は、天地方向に並べて配置されていることを特徴とする。
【0010】
これによると、上半身用吹出口(61〜63)は車室左右方向の寸法が小さくなり、車室中央側(すなわち、乗員の正面側)へのはみ出し量が小さくなるため、乗員前方の視認性低下を少なくすることができる。
【0011】
請求項5に記載の発明では、空気を送風する送風機(18)と、送風機(18)によって送風された送風空気が流れるケース(11)と、ケース(11)内に配置され、送風空気を冷却する冷却用熱交換器(19)と、ケース(11)に接続され、送風空気を所定の部位まで導く導風部材(50、60)と、導風部材(50、60)の空気流れ下流端近傍に設けられ、送風空気を吹き出す複数の吹出口(61〜63)とを備え、吹出口(61〜63)のうち風速が高くなる高速吹出口(61)から吹き出される送風空気の向きと、吹出口(61〜63)のうち風速が低くなる低速吹出口(63)から吹き出される送風空気の向きが、異なるように構成されていることを特徴とする。
【0012】
この請求項5の発明に係る車両用空調装置を車両に搭載することにより、請求項1の発明に係る車両用空調装置を得ることができる。
【0013】
なお、特許請求の範囲およびこの欄で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0015】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について説明する。図1は第1実施形態に係る車両用空調装置を搭載した油圧ショベルのキャビン1内の透視斜視図、図2は図1のキャビン1内の透視平面図である。
【0016】
図1、図2に示すように、油圧ショベルのキャビン1における床部2の略中央には、乗員3が着座するシート(図示せず)が設置されており、図示される前後、上下、左右の各矢印は、シートに着座した乗員3から見たキャビン1の前後、上下、左右の各方向を示している。さらに、以下の説明における各方向についても、この乗員から見た各方向を基準としている。
【0017】
油圧ショベルのキャビン1は、前方に前面壁部4、左右両側に側面壁部5、後方に後面壁部6を有するとともに、天井部7および床部2を有し、これらによって囲まれた車室内空間を形成する。本実施形態では、前面壁部4の上部は前面ガラスによって構成され、後面壁部6の上部は後面ガラスによって構成されている。また、左側の側面壁部5には、乗員乗降用のドア(図示せず)が配置されている。
【0018】
キャビン1の後方下側部位、すなわち、シートの後方の床部2には空調ユニット10が搭載されている。このため、空調ユニット10は、前後方向の厚みを薄くした薄型の箱形状になっている。
【0019】
次に、空調ユニット10の具体的構成を説明する。図3は本実施形態の空調ユニット10の正面図、図4は図3のA−A線に沿う断面図である。
【0020】
図3、図4に示すように、空調ユニット10は上述した薄型の箱形状をなすケース11を有し、このケース11内に、キャビン1内に送風される空気が流れる空気通路が形成され、ケース11内に送風機部12と熱交換器部13が設けられている。
【0021】
送風機部12は、ケース11内部の左側部に構成されており、ケース11の左上側には空気通路の最上流部となる内外気切替箱14が配置されている。内外気切替箱14の前面には、ケース11内に内気を導入する内気導入口15が設けられ、内外気切替箱14の後面には、ダクト部(図示せず)を介してケース11内に外気を導入する外気導入口(図示せず)が設けられている。
【0022】
また、内外気切替箱14内には、内気導入口15および外気導入口を切替開閉する内外気切替ドア16が配置されている。この内外気切替ドア16は、電動アクチュエータ17によって駆動される。具体的には、内外気切替ドア16の回転位置によって、内気導入口15より内気を導入する内気モード、外気導入口より外気を導入する外気モード、および、内気と外気を同時に導入する内気/外気モードに切り替えることができる。
【0023】
内外気切替箱14の下方に送風機部12が位置しており、この送風機部12には、キャビン1内に空気を送風する電動式の送風機18が配置されている。そして、送風機18によって送風された空気は、送風機部12の空気出口部12aから熱交換器部13に向かって流れるようになっている。より詳細には、送風機18によって送風された空気は、熱交換器部13に配置された冷却用熱交換器19(詳細後述)のキャビン後方側の空間へ導かれるようになっている。
【0024】
次に、熱交換器部13について説明する。熱交換器部13は、ケース11内部の送風機部12の右側に構成されている。熱交換器部13内部の後側、すなわち熱交換器部13の空気流れ上流側には、略直方体形状の冷却用熱交換器19が配置されている。
【0025】
冷却用熱交換器19は冷凍サイクルの蒸発器であって、周知の如く冷媒が通過する複数本のチューブとこのチューブの外表面に接合されたフィンとからなる熱交換コア部を有している。送風機部12から送風された空気は熱交換コア部の空隙部を後方から前方へ通過し、この通過空気から冷凍サイクルの低温低圧冷媒が吸熱して蒸発することにより通過空気が冷却される。
【0026】
ケース11内において、冷却用熱交換器19の空気流れ下流側(すなわちキャビン前方側)かつ下方側に、略直方体形状の加熱用熱交換器20が配置されている。加熱用熱交換器20は、油圧ショベルのエンジン(図示せず)の冷却水(温水)を熱源として空気を加熱する温水式熱交換器であって、周知のごとく温水が通過する複数本のチューブとこのチューブの外表面に接合されたフィンとからなる熱交換コア部を有している。この熱交換コア部の空隙部を、冷却用熱交換器19通過後の空気が通過し、この通過空気と温水との熱交換により通過空気が加熱される。
【0027】
ケース11内において、加熱用熱交換器20の上方には、板状のエアミックスドア21が配置され、エアミックスドア21の回転軸21aが加熱用熱交換器20の上方端部付近に配置されている。エアミックスドア21の回転軸21aは、電動アクチュエータ(図示せず)に連結されている。
【0028】
ケース11内において、冷却用熱交換器19の空気流れ下流側であって加熱用熱交換器20の上方側に、加熱用熱交換器20をバイパスして冷風を矢印bのように流す冷風バイパス通路22が形成されている。一方、ケース11内において、加熱用熱交換器20の空気流れ下流側(キャビン前方側)には、加熱用熱交換器20で加熱された温風が矢印cのように流れる温風通路23が形成されている。また、温風通路23の上方側に、加熱用熱交換器20を通過する温風(矢印c)と冷風バイパス通路22を通過する冷風(矢印b)とを良好に混合させるためのエアミックスチャンバ24が形成されている。
【0029】
図4において、エアミックスドア21の実線位置は加熱用熱交換器20の通風路を全閉して、冷風バイパス通路22を全開する最大冷房位置であり、二点鎖線位置は冷風バイパス通路22を全閉して、加熱用熱交換器20の通風路を全開する最大暖房位置である。エアミックスドア21は、周知のごとく加熱用熱交換器20を通過する温風(矢印c)と加熱用熱交換器20をバイパスして冷風バイパス通路22を通過する冷風(矢印b)との風量割合を調整して、キャビン1内へ吹き出す空気の温度を調整する。そして、エアミックスチャンバ24において上記温風(矢印c)と上記冷風(矢印b)が混合されて所望温度の空気が得られる。
【0030】
図3、図4に示すように、ケース11内において、冷風バイパス通路22の上方側に、エアミックスチャンバ24と連通するフェイス・デフ通路25が形成されている。このフェイス・デフ通路25は、キャビン前方からキャビン後方へ延びるように形成されている。フェイス・デフ通路25のうちキャビン前方側のケース上壁面にデフ開口部26が開口している。また、フェイス・デフ通路25のうちキャビン後方側のケース右側壁面にフロントフェイス開口部27が開口している。また、フェイス・デフ通路25のうちキャビン後方側のケース上壁面にリアフェイス開口部28が開口している。
【0031】
デフ開口部26にはキャビン前方側に向かって延びるデフダクト(図示せず)が接続され、このデフダクトの下流側端部のデフ吹出口(図示せず)から前面ガラスに向けて空気を吹き出すようになっている。
【0032】
図1に示すように、フロントフェイス開口部27には、送風空気を乗員3よりも前方の右側位置まで導くフロントフェイスダクト50が接続され、このフロントフェイスダクト50の下流側端部の顔用吹出口51から、乗員3の顔部に向けて空気を吹き出すようになっている。
【0033】
フロントフェイスダクト50の下流端近傍には、フロントフェイスダクト50にて導かれた送風空気を吹き出す吹出グリル60が接続されており、吹出グリル60は乗員3の右側前方に位置している。この吹出グリル60に設けられた上半身用吹出口61〜63から、乗員3の顔部を除いた上半身(胸部および腹部)に向けて空気を吹き出すようになっている。
【0034】
吹出グリル60は、顔用吹出口51よりも下方に配置されている。換言すると、吹出グリル60の上半身用吹出口61〜63は、顔用吹出口51よりも下方に配置されている。なお、フロントフェイスダクト50および吹出グリル60は、本発明の導風部材を構成する。
【0035】
リアフェイス開口部28には上方に向かって延びるリアフェイスダクト70が接続され、このリアフェイスダクト70の下流側端部のリアフェイス吹出口71から吹き出される空気は、乗員後方側から乗員3の後方周辺に向けて吹き出されるようになっている。
【0036】
図3、図4に示すように、ケース11内において温風通路23のキャビン前方側に、エアミックスチャンバ24と連通するフット通路29が形成されている。このフット通路29は、上方から下方へ垂下するように形成されている。
【0037】
フット通路29の下方側のケース前側壁面にフット開口部30が開口している。フット開口部30にはキャビン前方側に向かって延びるフットダクト80(図1参照)が接続され、このフットダクト80の下流側端部のフット吹出口81(図1参照)から乗員3の足元部に空気を吹き出すようになっている。
【0038】
エアミックスチャンバ24のキャビン前方側には、フェイス・デフ通路25とフット通路29を切替開閉する板状の吹出モード切換ドア31が配置されている。吹出モード切換ドア31の回転軸31aの一端部はケース11の外部に突出して、電動アクチュエータ(図示せず)に連結されている。
【0039】
図4において、吹出モード切換ドア31の実線位置は、フット通路29を全閉し、フェイス・デフ通路25を全開するフェイスモード時の位置を示す。これに対し、吹出モード切換ドア31の二点鎖線位置は、フェイス・デフ通路25を全閉し、フット通路29を全開するフットモード位置を示す。
【0040】
デフ開口部26を開閉する板状のデフドア32は、デフ吹出口からの吹出風量を調整するものである。デフドア32の回転軸32aの一端部はケース11の外部に突出して、電動アクチュエータ(図示せず)に連結されている。デフドア32の実線位置はデフ開口部26を全閉する位置を示す。これに対し、デフドア32の二点鎖線位置は、デフ開口部26を全開する位置を示す。
【0041】
リアフェイス開口部28を開閉する板状のリアフェイスドア32は、顔用吹出口51、吹出グリル60の吹出口、およびデフ吹出口からの吹出風量と、リアフェイス吹出口71からの吹出風量との風量割合を調整するものである。リアフェイスドア32の回転軸32aの一端部はケース11の外部に突出して、電動アクチュエータ(図示せず)に連結されている。リアフェイスドア32の実線位置はリアフェイス開口部28を全開する位置を示す。これに対し、リアフェイスドア32の二点鎖線位置は、リアフェイス開口部28を全閉する位置を示す。
【0042】
次に、吹出グリル60について説明する。図5(a)は図1の吹出グリル60をキャビン前方に向かって見た状態の正面図、図5(b)は図5(a)の右側面図、図6は図5(a)のD−D線に沿う断面図である。
【0043】
図5、図6に示すように、吹出グリル60は、円形の取付部64がフロントフェイスダクト50(図1参照)の円形の開口部(図示せず)に回転可能に嵌合されている。吹出グリル60を回転させることにより、吹出グリル60から吹き出される空気の上下の向きを調整可能である。
【0044】
フロントフェイスダクト50にて導かれた送風空気は、取付部64に囲まれた空気流入口65から吹出グリル60内部に流入した後に、第1〜第3上半身用吹出口61〜63から吹き出されるようになっている。第1〜第3上半身用吹出口61〜63は、上下方向に1列に並べて配置されている。これにより、吹出グリル60は、縦長の形状でキャビン左右方向の寸法が小さくなり、キャビン1の中央側(すなわち、乗員3の正面側)へのはみ出し量が小さくなるため、乗員前方の視認性低下を少なくすることができる。
【0045】
吹出グリル60には、上下方向の中央部に2つの第1上半身用吹出口61が配置され、第1上半身用吹出口61の上下方向両側に隣接して、2つの第2上半身用吹出口62が配置され、さらに、第2上半身用吹出口62の上下方向両側に隣接して、2つの第3上半身用吹出口63が配置されている。

フロントフェイスダクト50から吹出グリル60に流入した空気eは、吹出グリル60内において水平方向の向きを変えつつ第1上半身用吹出口61に向かって流れ、水平方向の向きおよび上下方向の向きを変えつつ第2上半身用吹出口62および第3上半身用吹出口63に向かって流れる。また、流入空気eの上下方向の向きの変化量は、第2上半身用吹出口62に向かう流れよりも第3上半身用吹出口63に向かう流れの方が大きくなる。
【0046】
そして、第1上半身用吹出口61に向かう流れは、向きの変化が最も少ないため、第1上半身用吹出口61から吹き出される吹き出し空気fの風速は、他の上半身用吹出口62、63から吹き出される吹き出し空気g、hの風速よりも高くなる。また、第2上半身用吹出口62から吹き出される吹き出し空気gの風速は、第3上半身用吹出口63から吹き出される吹き出し空気hの風速よりも高くなる。
【0047】
吹出グリル60の内壁面のうち、空気流入口65に対向し且つ第1〜第3上半身用吹出口61〜63に連なる部位の内壁面(以下、ガイド面という)66によって、流入空気eの流れ向きが変えられとともに、第1〜第3上半身用吹出口61〜63から吹き出される吹き出し空気f、g、hの吹き出し向きが決定される。
【0048】
なお、第1上半身用吹出口61に連なるガイド面66と、第2上半身用吹出口62に連なるガイド面66と、第3上半身用吹出口63に連なるガイド面66は、平面視での方向が異なっており、したがって、第1〜第3上半身用吹出口61〜63から吹き出される吹き出し空気f、g、hの平面視での吹き出し向きも異なっている。
【0049】
具体的には、図2に示すように、第1上半身用吹出口61から吹き出される最も風速が高い吹き出し空気fは、乗員3の上半身のうち吹出グリル60から遠い側(すなわち、乗員3の上半身における左側部位)に向かって吹き出される。
【0050】
また、第3上半身用吹出口63から吹き出される最も風速が低い吹き出し空気hは、乗員3の上半身のうち吹出グリル60に近い側(すなわち、乗員3の上半身における右側部位)に向かって吹き出される。
【0051】
さらに、第2上半身用吹出口62から吹き出される中間速の吹き出し空気gは、吹き出し空気fと吹き出し空気hの間(すなわち、乗員3の上半身における左右方向中間部位)に向かって吹き出される。
【0052】
図示を省略しているが、空調操作パネルは、キャビン1内の前方側部位に配置された計器盤に設けられ、冷凍サイクルの圧縮機作動スイッチ、風量スイッチ、温度設定スイッチ、吹出モード切替スイッチ、前後風量調整スイッチ、内外気モード切替スイッチ等を有している。
【0053】
次に、本実施形態の作動を説明する。空調操作パネルの圧縮機作動スイッチを投入すると、冷凍サイクルの圧縮機の電磁クラッチに通電され、電磁クラッチが接続状態となるので、圧縮機がエンジンにより駆動される。これにより、冷却用熱交換器19では冷凍サイクルの低温の低圧冷媒が空気から吸熱して蒸発することにより空気を冷却する。
【0054】
オートスイッチを投入すると、温度設定スイッチで設定される設定温度に応じて、空調風の温度の調整と吹出モードの切替とが自動的に行われる。なお、空調風の温度の調整と吹出モードの切替は、マニュアル操作によっても行うことができる。
【0055】
空調風の温度の調整は、上述したとおり、エアミックスドア21を操作して、冷風バイパス通路22を流れる冷風と温風通路23を流れる温風との混合割合を調整することにより行う。
【0056】
吹出モードには、主に夏期の冷房時に選択されるフェイスモード、および主に冬期の暖房時に選択されるフットモード等がある。
【0057】
通常夏期の冷房時に使用されるフェイスモードでは、吹出モード切換ドア31がフェイス・デフ通路25を全開する位置(実線位置)になり、デフドア32がデフ開口部26を全閉する位置(実線位置)になり、リアフェイスドア32がリアフェイス開口部28を全開する位置(実線位置)になるように操作される。
【0058】
これにより、空調風(冷風)は、リアフェイス開口部28、リアフェイスダクト70を介して、リアフェイス吹出口71から乗員3の後方周辺へ向けて吹き出される。また、空調風は、フロントフェイス開口部27、フロントフェイスダクト50を介して、顔用吹出口51から乗員3の顔部へ向けて吹き出される。さらに、フロントフェイスダクト50から吹出グリル60側に分流された空調風は、乗員3の上半身へ向けて吹き出される。
【0059】
なお、例えば窓を開けたときのように、乗員3の顔部への送風量を増大させたい場合は、リアフェイスドア32がリアフェイス開口部28を閉塞する方向に移動した位置になるように操作されることもある。
【0060】
上述したように、第1〜第3上半身用吹出口61〜63から吹き出される吹き出し空気f、g、hのうち最も風速が高い吹き出し空気fが、乗員3の上半身のうち吹出グリル60から遠い側に向かって吹き出され、第3上半身用吹出口63から吹き出される最も風速が低い吹き出し空気hが、乗員3の上半身のうち吹出グリル60に近い側に向かって吹き出される。
【0061】
これにより、乗員3の上半身における左側部位に到達する風量と右側部位に到達する風量とを略等しくすることができる。したがって、乗員3よりも前方の左右いずれか一方の位置から乗員3の上半身に向けて空調風を吹き出すレイアウトであっても、乗員3の上半身の左右にバランスよく配風されるため、フェイスモード時の乗員3の冷房フィーリングを向上させることができる。
【0062】
また、フェイスモード時には、顔用吹出口51から乗員3の顔部に向けて空調風を吹き出すとともに、第1〜第3上半身用吹出口61〜63から乗員3の上半身に向けて空調風を吹き出すため、冷房感(パンチ力)をアップすることができる。なお、顔用吹出口51から吹き出す空調風と、第1〜第3上半身用吹出口61〜63から吹き出す空調風との風量割合は、7:3、或いは6:4程度に設定すると、良好な冷房フィーリングが得られる。
【0063】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。図7は第2実施形態に係る車両用空調装置における吹出グリル60をキャビン前方に向かって見た状態の正面図である。本実施形態は、吹出グリル60の構成が第1実施形態と異なっている。その他に関しては第1実施形態と同様であるため、異なる部分についてのみ説明する。
【0064】
図7に示すように、本実施形態の吹出グリル60は、乗員3の首部に向けて空気を吹き出す3つの首用吹出口67と、乗員3の足下に向けて空気を吹き出す3つの足下用吹出口68を備えている。
【0065】
首用吹出口67は、第1〜第3上半身用吹出口61〜63の上方に隣接して配置され、足下用吹出口68は、第1〜第3上半身用吹出口61〜63の下方に隣接して配置されている。また、第1〜第3上半身用吹出口61〜63、首用吹出口67、および足下用吹出口68は、上下方向に1列に並べて配置されている。
【0066】
これによると、吹出グリル60から吹き出される空気を上下方向にも拡散させて、乗員3の足下側にも送風するようにしているため、今まで冷風が届かなかった下半身にも冷風感を与えることができ、冷房フィーリングをさらに向上させることができる。
【0067】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態について説明する。図8は第3実施形態に係る車両用空調装置を搭載した油圧ショベルのキャビン1内の透視斜視図、図9は図8の吹出グリル60をキャビン前方に向かって見た状態の正面図である。本実施形態は、フロントフェイスダクト50および吹出グリル60の構成が第1実施形態と異なっている。その他に関しては第1実施形態と同様であるため、異なる部分についてのみ説明する。
【0068】
図8に示すように、本実施形態においては、フロントフェイスダクト50の顔用吹出口51を廃止している。
【0069】
図9に示すように、吹出グリル60は、乗員3の顔部に向けて空気を吹き出す3つの顔用吹出口69と、乗員3の足下に向けて空気を吹き出す3つの足下用吹出口68を備えている。
【0070】
顔用吹出口69は、第1〜第3上半身用吹出口61〜63の上方に隣接して配置され、足下用吹出口68は、第1〜第3上半身用吹出口61〜63の下方に隣接して配置されている。また、第1〜第3上半身用吹出口61〜63、顔用吹出口69、および足下用吹出口68は、上下方向に1列に並べて配置されている。
【0071】
これによると、フロントフェイスダクト50の簡素化を図ることができる。また、乗員3の足下側にも送風するようにしているため、今まで冷風が届かなかった下半身にも冷風感を与えることができ、冷房フィーリングをさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の第1実施形態に係る車両用空調装置を搭載した油圧ショベルのキャビン1内の透視斜視図である。
【図2】図1のキャビン1内の透視平面図である。
【図3】図1の空調ユニット10の正面図である。
【図4】図3のA−A線に沿う断面図である。
【図5】(a)は図1の吹出グリル60をキャビン前方に向かって見た状態の正面図、(b)は(a)の右側面図である。
【図6】図5(a)のD−D線に沿う断面図である。
【図7】第2実施形態に係る車両用空調装置における吹出グリル60をキャビン前方に向かって見た状態の正面図である。
【図8】第3実施形態に係る車両用空調装置を搭載した油圧ショベルのキャビン1内の透視斜視図である。
【図9】図8の吹出グリル60をキャビン前方に向かって見た状態の正面図である。
【符号の説明】
【0073】
11ケース
18送風機
19冷却用熱交換器
50フロントフェイスダクト(導風部材)
60吹出グリル(導風部材)
61第1上半身用吹出口
62第2上半身用吹出口
63第3上半身用吹出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内に向かって空気を送風する送風機(18)と、
前記送風機(18)によって送風された送風空気が流れるケース(11)と、
前記ケース(11)内に配置され、前記送風空気を冷却する冷却用熱交換器(19)と、
前記ケース(11)に接続され、前記送風空気を乗員よりも前方の左右いずれか一方の位置まで導く導風部材(50、60)と、
前記導風部材(50、60)の空気流れ下流端近傍に設けられ、乗員の顔を除いた上半身に向けて前記送風空気を吹き出す複数の上半身用吹出口(61〜63)とを備え、
前記上半身用吹出口(61〜63)のうち風速が高くなる高速吹出口(61)は、乗員の上半身のうち前記上半身用吹出口(61〜63)から遠い側に向かって前記送風空気を吹き出すように構成され、
前記上半身用吹出口(61〜63)のうち風速が低くなる低速吹出口(63)は、乗員の上半身のうち前記上半身用吹出口(61〜63)に近い側に向かって前記送風空気を吹き出すように構成されていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記導風部材(50、60)の空気流れ下流端近傍に設けられ、前記送風空気を乗員の顔に向けて吹き出す顔用吹出口(51、69)を備えることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記上半身用吹出口(61〜63)は前記顔用吹出口(51、69)よりも下方に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記複数の上半身用吹出口(61〜63)は、天地方向に並べて配置されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項5】
空気を送風する送風機(18)と、
前記送風機(18)によって送風された送風空気が流れるケース(11)と、
前記ケース(11)内に配置され、前記送風空気を冷却する冷却用熱交換器(19)と、
前記ケース(11)に接続され、前記送風空気を所定の部位まで導く導風部材(50、60)と、
前記導風部材(50、60)の空気流れ下流端近傍に設けられ、前記送風空気を吹き出す複数の吹出口(61〜63)とを備え、
前記吹出口(61〜63)のうち風速が高くなる高速吹出口(61)から吹き出される前記送風空気の向きと、前記吹出口(61〜63)のうち風速が低くなる低速吹出口(63)から吹き出される前記送風空気の向きが、異なるように構成されていることを特徴とする車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−76477(P2010−76477A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−243901(P2008−243901)
【出願日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】