説明

車両用空調装置

【課題】目標温度を補正することによって、快適な室内環境を保つことのできる車両用空調装置を提供すること。
【解決手段】車両用空調装置20は、イグニッションスイッチ31がオンから一旦オフに切り替わってから再びオンになるまでの間に、イグニッションスイッチ31がオンからオフに切り替わる直前の目標温度が予め設定されている所定の温度範囲内にあるという第1条件と、ドア開閉検知センサ21,22,23,24がドアの開閉を所定回数だけ検出して、その開閉を検出した席のシートベルト装着を検知したという第2条件と、イグニッションスイッチ31がオフに切り替わった時点から再びオンに切り替わった時点までのオフ継続時間が、予め設定されたオフ基準時間を経過していないという第3条件との3つの条件を全て満足しているとき、目標温度を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内の温度を調整するための、車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ドアの開閉時において、外気の侵入により生じる内気温の変化を抑制する、車両用空調装置の開発が進められている。従来の車両用空調装置は、温度センサで内外気温を検知して、検知した内外気温が予め設定した温度になるように吹き出し温度や吹き出し口、ファン風量を調整するものが一般的である。
【0003】
ところで、例えば車室内が快適な状態から乗員が車外で休憩を終えた後、車内に戻ってきたときには、外気温又は日射量によって乗員の表面温度は大きく変化している場合がある。しかし、従来の車両用空調装置は、表面温度の変化により乗員が暑さ又は寒さを感じていても、内気温の変化量がわずかである場合には目標吹き出し温度の調整は行わない場合がある。従って、乗員が暑さ又は寒さを感じた場合には、暖房又は冷房の強度を手動で操作する必要があるため、操作が面倒である。
【0004】
そこで、内気温の変化量がわずかであっても、暖房又は冷房の強度を自動で制御することができる車両用空調装置が開示されている(例えば、特許文献1(図4)参照。)。
【0005】
特許文献1に示す車両用空調装置は、ドアの開閉に関する情報を検知して、ドアが開いている間は自動で冷房を強くすることにより、内気温の変化量に関係なく、内気温を制御することができるというものである。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に示す車両用空調装置は、ドアが開いている時だけ一時的に冷房を強くするものであって、ドアが閉まった後の室内の快適性までは考慮していない。このため、ドアが閉まった直後の内気温とドアが開く前の内気温とでは温度差が発生する場合があり、快適な室内環境を保つためには改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−224827公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、目標温度を補正することによって、快適な室内環境を保つことのできる車両用空調装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明では、空調ダクトに導入された空気を冷却するエバポレータと、前記導入された空気を加熱するヒータと、前記空調ダクトから車室へ吹き出す前記空気の温度を調整するために前記ヒータを通過する空気の流量を調整するエアミックスダンパと、自動運転中に前記車室へ吹き出す空気の吹き出し温度を目標温度となるように制御する制御部と、を備えた車両用空調装置において、イグニッションスイッチと、ドアの開閉状態を検知するドア開閉検知センサとシートベルトの装着の有無を検知するシートベルト装着検知センサとを有し、前記制御部は、前記イグニッションスイッチがオンからオフに切り替わる直前の前記目標温度が、予め設定されている所定の温度範囲内にあるという第1条件と、前記イグニッションスイッチがオンからオフに一旦切り替わってから再びオンに切り替わるまでの間に、前記ドア開閉検知センサによって前記ドアの開と閉とを交互に、予め設定された基準回数ずつ検出して、その開閉を検知した席のシートベルト装着を検知したという第2条件と、前記イグニッションスイッチがオンからオフに切り替わった時点から、再びオンに切り替わった時点までの、オフ継続時間が予め設定されたオフ基準時間を経過していないという第3条件との、3つの条件を全て満足していると判断した場合に、前記目標温度を補正することを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明では、制御部は、オフ継続時間に応じて目標温度を補正することを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明では、制御部は、目標温度の補正を開始してから、予め設定された補正基準時間を経過したときに、目標温度の補正を停止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明では、制御部は、温度範囲に関する第1条件により目標温度の適切性を判断することができ、ドアの開閉とシートベルトの装着に関する第2条件により乗員の乗り降りを判断することができ、イグニッションスイッチに関する第3条件によりエンジンの状態を判断することができる。つまり、制御部は、これらの3つの条件を満たしている場合には、乗員が休憩を済ませて乗車したと判断して、目標温度を補正する。
【0013】
例えば休憩中において内気温に変化はなくても、乗員の表面温度は、外気温や日射量の影響を受けて変化している場合がある。そこで、請求項1に係る発明では、内気温の変化に関係なく外気温や日射量に応じて、暖房制御中には急速暖房を実行するように目標温度を補正し、冷房制御中には急速冷房を実行するように目標温度を補正する。つまり、請求項1に係る発明は、外気温や日射量による乗員の表面温度の変化を想定したものであって、乗員の表面温度を考慮した目標温度を補正することができるので、車室内の温度環境を快適に保つことができる。
【0014】
さらに、請求項1に係る発明では、乗員の表面温度を検知する赤外線センサ等を備えることなく目標温度を補正することができるため、車両用空調装置の製造コストを抑えることができる。
また請求項1に係る発明では、手動による煩わしい操作を必要としないため、簡便な方法で車室内の環境を好適に保つことができる。
【0015】
請求項2に係る発明では、制御部は、オフ継続時間に応じて目標温度を補正する。これは休憩時間が長いほど乗員の表面温度が変化することを想定したものである。このため、乗員の表面温度に応じて目標温度を補正することができるので、車室内の温度環境をより好適に保つことができる。
【0016】
請求項3に係る発明では、制御部は、目標温度の補正を開始してから、予め設定された補正基準時間だけ経過したときに、目標温度の補正を停止する。このため、例え内気温が設定温度に達さなくても補正を停止することができるので、省エネ効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る車両用空調装置を備える車両の平面図である。
【図2】本発明に係る車両用空調装置のブロック図である。
【図3】図2に示された制御部の第1制御フロー図である。
【図4】図2に示された制御部の第2制御フロー図である。
【図5】図2に示された制御部の第3制御フロー図である。
【図6】図5に示された急速暖房制御ステップのサブルーチンの制御フロー図である。
【図7】図6に示された急速暖房の補正マップである。
【図8】図5に示された急速冷房制御ステップのサブルーチンの制御フロー図である。
【図9】図8に示された急速冷房の補正マップである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0019】
実施例に係る車両用空調装置を図1〜図9に基づいて説明する。
図1に示すように、車両10は、車両用空調装置20(図2参照)を備えている。車両用空調装置20は、ドア12,13,14,15の開閉を個別に検知するドア開閉検知センサ21,22,23,24と、シートベルト16,17,18,19の装着の有無を検知するシートベルト装着検知センサ25,26,27,28と、イグニッションスイッチ31と、制御部32によって構成される。
【0020】
シートベルト装着検知センサ25,26,27,28は、シートベルト16,17,18,19に個別に対応するバックル内に備えられており、シートベルト装着の有無を検知する。
【0021】
図2に示すように、車両10は、車室11の前部がインストルメントパネル33で仕切られ、インストルメントパネル33の前に車両用空調装置20を備えている。この車両用空調装置20は、車両10に設けられて車室11内を空調するエアコンユニット(エアコンディショナユニット)34と、エアコンユニット34を制御するための各種の情報を検知する情報検知センサ35とを有している。
【0022】
エアコンユニット34は、車室11の前方に設けられたハウジング36(空調ダクト36)、ファン37、エバポレータ38、ヒータ39、コンプレッサ41、各種ダンパ54,55,56,57を有している。
【0023】
ハウジング36は、車室11外の空気aoを外気として導入する外気導入口44と、車室11内の空気aiを内気として導入する内気導入口45と、車室11内のフロア43に向けて(乗員の足元に向けて)空調風を吹き出すヒート吹出口46と、車室11内の乗員に空調風を吹き出すベント吹出口47と、車室11の窓ガラス42(フロントウインドガラス42)に空調風を吹き出すデフロスト吹出口48と、エバポレータ38の下流から枝分かれしたヒータ連通路51及びクール連通路52と、ヒート切替ダンパ54とデフロスト切替ダンパ55との間に位置するデフロスト連通路53とを有する。
ヒータ連通路51はヒータ39の上流側の通路であり、クール連通路52はヒータ39の下流側の通路である。
【0024】
ファン37は、ハウジング36内において、内外気切替ダンパ56の下流側に位置し、導入した外気(車室11外の空気ao)又は内気(車室11内の空気ai)を下流側のエバポレータ38に送るものであり、ファン用モータ61によって駆動される。
【0025】
エバポレータ38は、ハウジング36内において、ファン37の下流側に位置し、ファン37によって送られた空気ao,aiを、循環されている冷媒によって冷却するものである。つまり、冷媒は、コンプレッサ41により圧縮されてコンデンサ(図示せず)に送られ、このコンデンサによって冷却される。冷却された冷媒は、エバポレータ38に気化状態で供給され、熱交換をした後にコンプレッサ41へ戻る。
【0026】
ヒータ39は、ハウジング36内において、エアミックスダンパ57の下流側に位置し、エバポレータ38で冷却された空気を加熱するものである。温度設定部58は、車室11内の気温(内気温)を手動により任意の設定温度に設定するものである。
【0027】
各種ダンパ54,55,56,57は、ハウジング36内に設けられて空気の流れを規制するものであり、詳しくは次の通りである。
【0028】
内外気切替ダンパ56は、外気導入口44と内気導入口45とを選択して切り替える。つまり、内外気切替ダンパ56は、外気導入口44と内気導入口45との間に位置し、外気モードと内気モードとを選択して切り替えるものであり、内外気切替用モータ62によって駆動される。外気モード(外気導入モード)は、外気導入口44を開けるとともに内気導入口45を閉じることによって、車室11外の空気aoを外気として導入するモードである。内気モード(内気導入モード)は、外気導入口44を閉じるとともに内気導入口45を開けることによって、車室11内の空気aiを内気として導入する、いわゆる内気循環モードである。
【0029】
エアミックスダンパ57(冷暖房切替ダンパ57)は、エバポレータ38の下流側に位置し、開度調節をすることによって、ヒータ連通路51とクール連通路52とに流れる流量を配分するものであり、エアミックス用モータ63によって駆動される。流量の配分に応じて、各々の吹出口46,47,48から吹き出される空気の温度が、制御される。
なお、エアミックスダンパ57は、図示しない運転席側に設けられたエアミックスダンパ57aと助手席側に設けられたエアミックスダンパ57bとからなり、エアミックスダンパ57aとエアミックスダンパ57bは互いに独立して作動することができる。
【0030】
ヒート切替ダンパ54は、ヒータ39の下流側に位置し、ヒートモードとベント・ヒートモードやヒート・デフモードとに、切り換え及び開度調節をするものであり、ヒート切替用モータ64によって駆動される。
ヒートモード(フットモード)は、ヒート吹出口46を開けるとともにベント吹出口47を閉じることにより、エアコンユニット34によって空調された空気(空調風)が、ヒート吹出口46から車室11内のフロア43へ向かって(すなわち、乗員の足元へ向かって)吹き出すモードである。
ベント・ヒートモードは、ヒート吹出口46を開けるとともにベント吹出口47を開けることにより、空調風がヒート吹出口46及びベント吹出口47へ向かって流れるモードである。なお、このベント・ヒートモードの場合には、デフロスト切替ダンパ55はベントモードに切り換えられる。
ヒート・デフモードは、ヒート吹出口46を開けるとともにデフロスト吹出口48を開けることにより、空調風がヒート吹出口46及びデフロスト吹出口48へ向かって流れるモードである。なお、このヒート・デフモードの場合には、デフロスト切替ダンパ55はデフロストモードに切り換えられる。
【0031】
デフロスト切替ダンパ55は、ヒート切替ダンパ54の下流側に位置し、デフロストモードとベントモードとを切り換え及び開度調節するものであり、デフロスト切替用モータ65によって駆動される。
デフロストモードは、ベント吹出口47を閉じるとともにデフロスト吹出口48を開けることにより、空調風がデフロスト吹出口48から窓ガラス42へ向かって吹き出すモードである。
ベントモード(フェイスモード)は、ベント吹出口47を開けるとともにデフロスト吹出口48を閉じることにより、空調風がベント吹出口47から乗員へ向かって吹き出すモードである。
【0032】
各モータ61,62,63,64,65は制御部32によって駆動制御される。
【0033】
情報検知センサ35は、制御部32によってエアコンユニット34を制御するための各種の情報を検知する、センサ群であって、ドア開閉検知センサ21,22,23,24とシートベルト装着検知センサ25,26,27,28と内気温センサ66と外気温センサ67と日射センサ68と吹き出し温度センサ69とを含む。ドア開閉検知センサ21,22,23,24は、ドアの開閉を検知してその検知情報を発する。シートベルト装着検知センサ25,26,27,28は、シートベルト装着の有無を検知してその検知情報を発する。内気温センサ66は、車室11内の気温(内気温)を検知してその検知情報を発する。外気温センサ67は、車室11外の気温(外気温)を検知してその検知情報を発する。日射センサ68は、車室11内の日射量を検知してその検知情報を発する。吹き出し温度センサ69は、エアミックスダンパ57a,57bの下流側に設置されており、吹き出し温度を検知してその検知情報を発する。
【0034】
次に、制御部32の制御フローについて、図1,2を参照しつつ、図3〜図5に基づいて説明する。図3〜図5は、制御部32によって実行される制御フローチャートである。
【0035】
ステップS10で、制御部32は、エアコンユニット34を目標温度Taoで自動運転制御する。このとき、イグニッションスイッチ31はオン(ON)にあり、温度設定部58により任意の設定温度Tsetに設定されている。つまり、制御部32は、空調ダクト36から車室11へ吹き出す空気の吹き出し温度を、目標温度Taoとなるように、エアミックスダンパ57の開度、エバポレータ38及びヒータ39の温度、ファン37の風量を制御する。
【0036】
なお、目標温度Taoは、設定された設定温度Tsetと、情報検知センサ35によって検知された内気温Tin、外気温Tout及び日射量Tsunに基づいて算出される。また、設定温度Tsetは、運転席側の設定温度Tset_drと助手席側の設定温度Tset_assとに分けて設定される。このため、目標温度Taoは、運転席側の目標温度Tao_drと助手席側の目標温度Tao_assとに分けて次式により算出することができる。
Tao_dr=Kset×Tset_dr−Kin×Tin−Kout×Tout−Ksun×Tsun+C
Tao_ass=Kset×Tset_ass−Kin×Tin−Kout×Tout−Ksun×Tsun+C
但し、Kset,Kin,Kout,Ksunは制御ゲインであり、Cは定数である。
【0037】
次に、ステップS11において、目標温度Taoが予め設定されている所定の温度範囲内であるか否かを判断する。具体的には、ステップS10で設定された目標温度Taoが、エアミックスダンパの開度調節によって補正可能であるか否かを判断する。目標温度Taoが所定の温度範囲内(最低基準温度Tminから最高基準温度Tmaxまでの範囲内)であれば、十分に補正が可能であると判断して次のステップS12に進む。一方、目標温度Taoが所定の温度範囲内でなければ、設定温度Tsetを再設定する必要があると判断して、ステップS10に戻って自動運転制御を続ける。例えば、最低基準温度Tminは20℃、最高基準温度Tmaxは30℃に設定される。
【0038】
次に、ステップS12において、イグニッションスイッチ31のスイッチ信号を読込み、ステップS13において、読込んだスイッチ信号に基づいてイグニッションスイッチ31がオフ(OFF)であるか否かを判断する。これによって、エンジンが停止したか否かを判断することができる。つまり乗員が休憩を取っているか否かを判断することができる。スイッチ信号がオフ(OFF)であると判断した場合には、乗員が休憩を取っていると判断して次のステップS14に進む。一方、スイッチ信号がオン(ON)であると判断した場合には、乗員が休憩を取っていないと判断して、ステップS10に戻って自動運転制御を続ける。
【0039】
次に、ステップS14において、複数のフラグF1,F2,F3を0に設定する(F1=0,F2=0,F3=0)。それぞれ異なる所定条件を満たす場合に、各々のフラグには1が設定される。これらの所定条件については後述する。
【0040】
次に、ステップS15において、第1タイマのカウント値T1を0にリセットした後に(T1=0)、第1タイマをスタートする。このカウント値T1は、イグニッションスイッチ31のオフ継続時間T1に相当する。
【0041】
次に、ステップS16において、ドア開閉検知センサ21,22,23,24の信号を読込む。そして、ステップS17において、読込んだ信号に基づいて、各ドア12,13,14,15の開閉の回数Nrをカウントする。ここで、開閉の回数Nrとは、同一のドアにおいて先に開から閉となり、次に開から閉となる、いわゆる開と閉とが交互に行われた回数を言い、開の信号を読込んだときに1回、次に閉の信号を読込んだときに1回カウントする。
【0042】
次に、ステップS18において、開閉の回数Nrが予め設定された基準回数Nsに達したか否かを判断する。つまり、開閉の回数Nrが基準回数Nsに達したと判断した場合(Nr≧Ns)には、休憩を終えてドアを開閉したと判断して、次のステップS19においてフラグF1=1に設定した後、ステップS21に進む。一方、開閉の回数Nrが基準回数Nsに達していないと判断した場合(Nr<Ns)には、ステップS20においてフラグF1=0に設定した後、ステップS21に進む。
【0043】
次に、ステップS21において、シートベルト装着検知センサ25,26,27,28の信号を読込む。次に、ステップS22において、ドアの開閉が行われた席においてシートベルトの装着を検知すれば、その座席の乗員は、休憩で乗り降りを行ったと判断する。
【0044】
なお、シートベルト装着検知センサ25,26,27,28の信号は、ステップS16で読込んだドア開閉検知センサ21,22,23,24の信号と対応している。つまり、ステップS18で判断されたドアに対応するシートベルト(例えば、図1のドア12に対応するシートベルト16)について、装着の有無を判断することができる。例えば、上記ステップS18において、運転席29側のドア12の開閉の回数Nrが基準回数Nsに達したと判断された場合には、ステップS22において、運転席29に着座している乗員がシートベルト12を装着したか否かを判断する。
【0045】
シートベルト装着ありと判断した場合には、走行準備が完了したと判断して、次のステップS23においてフラグF2=1に設定した後、ステップS25に進む。一方、シートベルトの装着なしと判断した場合には、ステップS24においてフラグF2=0に設定した後、ステップS25に進む。
【0046】
次に、ステップS25において、イグニッションスイッチ31のスイッチ信号を再度読込む。次に、ステップS26において、読込んだスイッチ信号に基づいてイグニッションスイッチ31がオン(ON)であるか、つまり、オフ(OFF)から再びオン(ON)に切り替わったか否かを判断する。このとき、スイッチ信号がオン(ON)であると判断した場合には、エンジンの作動が再開されたと判断して、次のステップS27においてフラグF3=1に設定した後、ステップS29に進む。一方、スイッチ信号がオフ(OFF)であると判断した場合には、エンジンが停止していると判断して、ステップS28においてフラグF3=0に設定した後、ステップS29に進む。
【0047】
次に、ステップS29において、第1タイマをストップする。次に、ステップS30において、第1タイマのカウント値、つまりオフ継続時間T1が予め設定されているオフ基準時間Ts(例えば、Ts=60分。)を経過していないか否かを判断する。経過していない(T1<Ts)と判断した場合には、次のステップS31に進み、経過した(T1≧Ts)と判断した場合には、ステップS10に戻って自動運転制御を続ける。
【0048】
次に、ステップS31において、各フラグF1,F2,F3が全て1であるか否かを判断する。全てのフラグF1,F2,F3が1に設定されていると判断した場合には、次のステップS32に進む。一方、各フラグF1,F2,F3のうち1つでも0に設定されていると判断した場合には、ステップS16に戻り、各ドア開閉検知センサ21,22,23,24の信号を再度読込む。つまり、オフ継続時間T1がオフ基準時間Tsに達するまでの間は、全てのフラグF1,F2,F3が1に設定されるまで、ステップS16からステップS30までを繰り返し実行する。
【0049】
次に、ステップS32において、外気温Toutが暖房制御の第1しきい値Th1を下回っているか否かを判断する。外気温Toutは、S10において外気温センサ67によって検知された値である。また、暖房制御の第1しきい値Th1は、急速な暖房制御を実行するか否か判断するために予め設定された開始基準温度である(例えば、Th1=10℃。)。下回っている(Tout<Th1)と判断した場合には、次のステップS33に進む。一方、外気温Toutが暖房制御の第1しきい値まで上昇した(Tout≧Th1)と判断した場合には、ステップS36に進む。
【0050】
次に、ステップS33において、第2タイマのカウント値T2を0にリセットした後に(T2=0)、この第2タイマをスタートする。カウント値T2は急速暖房制御時間T2に相当する。次に、ステップS34において、急速暖房制御を実行する。なお、急速暖房制御の内容については後述する。
【0051】
次に、ステップS35において、急速暖房制御時間T2が予め設定された制御基準時間Te(例えば、Te=60秒。)を経過するまではステップS34を続行し、経過したとき(T2≧Te)には、ステップS10に戻り、通常の自動運転制御を実行する。このように目標温度よりも時間を優先して制御を行うことにより、快適性の向上と省エネ効果が期待できる。
【0052】
一方、上記ステップS32において、外気温Toutが暖房制御の第1しきい値まで上昇した(Tout≧Th1)と判断した場合には、ステップS36において、外気温Toutが冷房制御の第1しきい値Tc1を超えたか否かを判断する。この冷房制御の第1しきい値Tc1は、急速な冷房制御を実行するか否か判断するために予め設定された開始基準温度であり、暖房制御の第1しきい値Th1よりも高温に設定されている(例えば、Tc1=28℃。)。超えた(Tout>Tc1)と判断した場合には、次のステップS37に進む。一方、超えていない(Tout≦Tc1)と判断した場合には、ステップS10に戻り、通常の自動運転制御を続ける。
【0053】
次に、ステップS37において、第3タイマのカウント値を0にリセットした後に(T3=0)、この第3タイマをスタートする。カウント値T3は急速冷房制御時間T3に相当する。次に、ステップS38において、急速冷房制御を実行する。なお、急速冷房制御の内容については後述する。
【0054】
次に、ステップS39において、急速冷房制御時間T3が予め設定された制御基準時間Te(例えば、Te=60秒。)を経過するまではステップS38を続行し、経過したとき(T3≧Te)には、ステップS10に戻り、通常の自動運転制御を実行する。このように目標温度よりも時間を優先して制御を行うことにより、快適性の向上と省エネ効果が期待できる。
【0055】
ステップS34で実行される急速暖房制御の制御内容について、図6,7に基づいて説明する。図6は、図5に示されたステップS34(急速暖房制御ステップ)のサブルーチンの制御フロー図である。まずステップS40において、外気温Toutを読み込む。次に、ステップS41において、外気温Toutが暖房制御の第2しきい値Th2を上回っているか否かを判断する。この暖房制御の第2しきい値Th2は、第1の急速暖房制御と第2の急速暖房制御の、どちらを実行するかを判断するための基準温度であり、予め設定されている一定値(例えば、Th2=0℃。)である。第2の急速暖房制御は、第1の急速暖房制御よりも急速に車内温度を上昇させるものである。ここで、上回っている(Tout>Th2)と判断した場合には、第1の急速暖房制御を実行するために、次のステップS42に進み、目標温度Taoの値を図7の第1補正マップC1に基づいて補正する。一方、上回っていない(Tout≦Th2)と判断した場合には、第2の急速暖房制御を実行するために、ステップS44に進み、目標温度Taoの値を図7の第2補正マップC2に基づいて補正する。
【0056】
ここで、第1・第2補正マップC1,C2について説明する。図7は横軸をオフ継続時間T1とし、縦軸を補正量AMとして、オフ継続時間T1に対する補正量AMの変化特性を、第1・第2補正マップC1,C2として表してある。第1・第2補正マップC1,C2は、共に、オフ継続時間T1が0の場合であっても、補正量AMは0よりも大きく設定されており、しかも、オフ継続時間T1が増すにつれて補正量AMが増す特性を有している。但し、オフ継続時間T1の値いかんにかかわらず、第2補正マップC2の補正量AMは、第1補正マップC1の補正量AMよりも大きい。
【0057】
図6に示すステップS42,S44の説明に戻る。ステップS42,S44では、目標温度Taoの値に補正量AMを加算することによって、目標温度Taoを補正する(Tao=Tao+AM)。
【0058】
ステップS42の次には、ステップS43において、ヒート・デフモードの制御を実行した後に、このサブルーチンを終了する。この場合に、補正された目標温度Taoに基づいて、エアミックスダンパ57の開度を制御することによって、車室11へ吹き出す空気の吹き出し温度を目標温度Taoとなるように制御する。
【0059】
一方、ステップS44の次には、ステップS45において、ヒート・デフモードを実行する。この場合も、補正された目標温度Taoに基づいて、エアミックスダンパ57の開度を制御することによって、車室11へ吹き出す空気の吹き出し温度を目標温度Taoとなるように制御する。ステップS45の次には、ステップS46において、ファン37の風量を増すことによって、車室11へ吹き出す空気の吹き出し量を増大させた後に、このサブルーチンを終了する。
【0060】
次に、ステップS38で実行される急速冷房制御の制御内容について、図8,9に基づいて説明する。図8は、図5に示されたステップS38(急速冷房制御ステップ)のサブルーチンの制御フロー図である。まずステップS50において、日射量Tsunを読み込む。次に、ステップS51において、日射量Tsunが冷房制御の第2しきい値Tc2を下回っているか否かを判断する。この冷房制御の第2しきい値Tc2は、第1の急速冷房制御と第2の急速冷房制御の、どちらを実行するかを判断するための基準日射量であり、予め設定されている一定値(例えば、Tc2=450W/m)である。第2の急速冷房制御は、第1の急速冷房制御よりも急速に車内温度を降下させるものである。ここで、下回っている(Tsun<Tc2)と判断した場合には、第1の急速冷房制御を実行するために、次のステップS52に進み、目標温度Taoの値を図9の第3補正マップC3に基づいて補正する。一方、下回っていない(Tsun≧Tc2)と判断した場合には、第2の急速冷房制御を実行するために、ステップS53に進み、目標温度Taoの値を図9の第4補正マップに基づいて補正する。
【0061】
ここで、第3・第4補正マップC3,C4について説明する。図9は横軸をオフ継続時間T1とし、縦軸を補正量AMとして、オフ継続時間T1に対する補正量AMの変化特性を、第3・第4補正マップC3,C4として表してある。第3補正マップC3は、オフ継続時間が0の場合には、補正量AMは0であり、第4補正マップC4は、オフ継続時間が0の場合には、補正量AMは0よりも大きく設定されている。また、第3・第4補正マップC3,C4は、共に、オフ継続時間T1が増すにつれて補正量AMが増す特性を有している。但し、オフ継続時間T1の値いかんにかかわらず、第4補正マップC4の補正量AMは、第3補正マップC3の補正量AMよりも大きい。
【0062】
図8に示すステップS52,S53の説明に戻る。ステップS52,S53では、目標温度Taoの値に補正量AMを加算することによって、目標温度Taoを補正する(Tao=Tao+AM)。
【0063】
ステップS52を終えると、このサブルーチンを終了する。ステップS52では、補正された目標温度Taoに基づいて、エアミックスダンパ57の開度を制御することによって、車室11へ吹き出す空気の吹き出し温度を目標温度Taoとなるように制御する。
【0064】
一方、ステップS53の次には、ステップS54において、ファン37の風量を増すことによって、車室11へ吹き出す空気の吹き出し量を増大させた後に、このサブルーチンを終了する。
【0065】
尚、本発明に係る車両用空調装置20は、シートベルト装着検知センサ25,26,27,28を備えていなくても実行可能であるが、シートベルト装着検知センサ25,26,27,28を備えていることが好ましい。シートベルト装着検知センサ25,26,27,28を備えていれば、各座席に着座している乗員の表面温度を考慮して目標温度Taoを補正することができるので、車室11内の温度環境をより好適に保つことができる。
【0066】
また、本実施例において、暖房制御の第2しきい値Th2は外気温Toutを基準値としたが日射量Tsunを基準値としても良く、冷房制御の第2しきい値Tc2は日射量Tsunを基準値としたが外気温Toutを基準値としても良い。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の車両用空調装置20は、外気温Tout又は日射量Tsunに応じて目標温度Taoを補正するのに好適である。
【符号の説明】
【0068】
11…車室、20…車両用空調装置、21,22,23,24…ドア開閉検知センサ、25,26,27,28…シートベルト装着検知センサ、31…イグニッションスイッチ、32…制御部、36…空調ダクト、38…エバポレータ、39…ヒータ、57…エアミックスダンパ、Tao…目標温度、T1…オフ継続時間、Ts…オフ基準時間、Te…制御基準時間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調ダクトに導入された空気を冷却するエバポレータと、前記導入された空気を加熱するヒータと、前記空調ダクトから車室へ吹き出す前記空気の温度を調整するために前記ヒータを通過する空気の流量を調整するエアミックスダンパと、自動運転中に前記車室へ吹き出す空気の吹き出し温度を目標温度となるように制御する制御部と、を備えた車両用空調装置において、
イグニッションスイッチと、ドアの開閉状態を検知するドア開閉検知センサと、シートベルトの装着の有無を検知するシートベルト装着検知センサとを有し、
前記制御部は、
前記イグニッションスイッチがオンからオフに切り替わる直前の前記目標温度が、予め設定されている所定の温度範囲内にあるという第1条件と、
前記イグニッションスイッチがオンからオフに一旦切り替わってから再びオンに切り替わるまでの間に、前記ドア開閉検知センサによって前記ドアの開と閉とを交互に、予め設定された基準回数ずつ検出して、その開閉を検出した席のシートベルトを検知したという第2条件と、
前記イグニッションスイッチがオンからオフに切り替わった時点から、再びオンに切り替わった時点までの、オフ継続時間が予め設定されたオフ基準時間を経過していないという第3条件との、
3つの条件を全て満足していると判断した場合に、前記目標温度を補正することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記オフ継続時間に応じて前記目標温度を補正することを特徴とする請求項1記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記目標温度の補正を開始してから、予め設定された補正基準時間を経過したときに、前記目標温度の補正を停止することを特徴とする請求項1又は2記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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