説明

車両用空調装置

【課題】ケースの脱着用開口部と同じ高さにフィルタ部材を装着させつつ、脱着時にインストルメントパネルやグローブボックスなどとフィルタ部材とが干渉することを抑制することができる車両用空調装置を提供する。
【解決手段】空調空気の通路を形成するケース3は、脱着用開口部32と、脱着用開口部の高さの装着位置にフィルタ部材31を支持する下ガイド部33a、33bと、フィルタ部材の高さを規制する上ガイド部35a、35bとを備える。上ガイド部は、奥側に設けた装着位置の高さの装着ガイド部36a、36b、及び、フィルタ部材の傾きをガイド及び規制する傾きガイド部37a、37bからなる。フィルタ部材の脱着過程において、装着ガイド部を脱した領域では、傾きガイド部で規制される角度内でフィルタ部材の傾きが許容される。これにより、フィルタ部材を傾けた状態で脱着できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置に関し、詳しくは、空調空気の通路を形成するケース内に配置されるフィルタ部材の脱着構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両用空調装置において、フィルタ部材の脱着作業性を向上させるための構造が提案されている。
例えば、特許文献1には、着脱用開口部から奥側に向かうに連れて上り傾斜する傾斜部と、奥側の水平部とからなるガイドを設け、フィルタ部材を取り付ける際に、フィルタ部材の下面が前記ガイドによって案内されることで、着脱用開口部よりも高い所定位置にフィルタ部材を装着させるようにした構造が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、フィルタ部材を着脱用開口部から車両前方に向けて挿入すると、フィルタ部材の先端部がケース側のテーパ面に沿ってフィルタ支持部材の上側にまで移動することで、フィルタ部材を着脱用開口部よりも高い所定の装着位置に組み付けるようにした構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−235913号公報
【特許文献2】特許第4389715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来のフィルタ脱着構造では、フィルタ部材の装着位置よりも脱着用開口部を下げることで、脱着作業においてインストルメントパネルやグローブボックスなどとフィルタ部材とが干渉することを抑制しているが、脱着用開口部からフィルタ部材を下側のガイドに沿って斜めに挿入した後、最終的には、フィルタ部材の後端を持ち上げる操作を必要とすることで、作業性や構造上において不利となっていた。
【0006】
例えば、フィルタ部材の後端を持ち上げるためのテーパ面を、脱着用開口部を閉塞する蓋部材に設ける場合、テーパ面をフィルタ部材の下面に差し入れるための複雑な形状や構造が必要となり、また、蓋部材を装着するときの向きや位置に高い精度が要求され、更に、テーパ面の途中でフィルタ部材が引っ掛かるなどして、蓋部材を確実に装着できなくなったり、フィルタ部材を所定位置に装着させることができなくなったりする可能性もあった。
また、フィルタ部材を手で持ち上げて、フィルタ部材の後端の係止部を、ケース側に係合させる場合には、係止部が直接見えない手探りの状態で係合作業を行う必要があるために、フィルタ脱着の作業性が悪く、また、フィルタ部材の後端のケースに対する係合が不十分になって、フィルタ部材の後端が脱落した状態のまま使用されてしまう可能性があった。
【0007】
そこで、本発明は、ケースの脱着用開口部と同じ高さにフィルタ部材を装着させつつ、脱着時にインストルメントパネルやグローブボックスなどとフィルタ部材とが干渉することを抑制することができる車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る車両用空調装置は、空調空気の通路を形成するケースと、前記ケース内に空調空気の通路を横断するように配置され、空調空気を浄化するフィルタ部材と、を備え、
前記ケースは、前記フィルタ部材を脱着するための脱着用開口部と、前記脱着用開口部の高さの装着位置に前記フィルタ部材を支持する下ガイド部と、前記フィルタ部材の高さを規制する上ガイド部と、を備え、
前記上ガイド部は、脱着方向の奥側において前記フィルタ部材の先端を前記装着位置の高さに規制する装着ガイド部を含み、かつ、前記上ガイド部は、脱着過程において前記フィルタ部材が前記装着ガイド部による規制領域から外れているときに、装着方向の奥側に向けて上り傾斜となる前記フィルタ部材の傾きを許容するようにした。
【0009】
このような構成では、フィルタ部材をケースから取り外す際には、フィルタ部材を装着位置の高さで略水平に脱着用開口部から引き出し、フィルタ部材の先端が上ガイド部による規制域を脱すると、フィルタ部材は、奥側に向けて上り傾斜となること、換言すれば、引き出し方向に向け下り傾斜となることが許容されるので、その後、斜め下方に傾けてフィルタ部材を脱着用開口部から引き出すことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る車両用空調装置によれば、ケースの脱着用開口部と同じ高さにフィルタ部材を装着させつつ、フィルタ部材の脱着時に、脱着用開口部から飛び出した部分のフィルタ部材が斜め下方に向けられるので、脱着用開口部の前面に位置するインストルメントパネルやグローブボックスなどを避けて、ケースに対するフィルタ部材の脱着を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態における車両用空調装置を示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態における送風装置のケース及びフィルタ部材を示す分解斜視図である。
【図3】本発明の実施形態におけるフィルタ部材のガイド部を示す断面図である。
【図4】本発明の実施形態におけるケースの蓋部材を示す図である。
【図5】本発明の実施形態におけるフィルタ部材の取り外し手順を示す図である。
【図6】本発明の実施形態の効果を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、実施形態における車両用空調装置を示す断面図であり、この車両用空調装置は、送風装置1と、この送風装置1が送風する空気の温度調整を行う温度調整装置2とを備える。
【0013】
送風装置1は、内気と外気とを2層状態で送風することが可能な2層構造であり、空気導入口を有し空調空気の通路を形成するケース3と、空気導入口を開閉する切替ドア4、5と、ケース3内に収容したファン6、7と、このファン6、7を回転駆動するモータ8とを備えている。
ケース3は、空気導入口として、ケース3内に外気を導入する外気導入口9と、ケース3内に内気を導入する第1の内気導入口10及び第2の内気導入口11とを有している。
また、ケース3は、第1のファン6が送風する空気を吐出する第1の吐出通路12と、第2のファン7が送風する空気を吐出する第2の吐出通路13とを有している。
【0014】
切替ドア4は、外気導入口9と第1の内気導入口10とを切り替え、切替ドア5は、第2の内気導入口11を開閉し、吸込モードに応じて切替ドア4,5の開閉を設定する。
吸込モードとして、内外気2層モード、内気モード、外気モードの3種のモードを設定してある。
内外気2層モードでは、図1に示すように、切替ドア4が外気導入口9を開き、切替ドア5が第2の内気導入口11を開くことにより、第1のファン6の回転によって外気導入口9より導入した外気を第1の吐出通路12から吐出させ、第2のファン7の回転によって第2の内気導入口11より導入した内気を第2の吐出通路13から吐出させる。
【0015】
内気モードでは、切替ドア4が第1の内気導入口10を開き、切替ドア5が第2の内気導入口11を開くことにより、第1のファン6の回転によって第1の内気導入口10より導入した内気を第1の吐出通路12から吐出させ、第2のファン7の回転によって第2の内気導入口11より導入した内気を第2の吐出通路13から吐出させる。
また、外気モードでは、切替ドア4が外気導入口9を開き、切替ドア5が第2の内気導入口11を閉じることにより、第1のファン6及び第2のファン7の回転によって外気導入口9より導入した外気を第1の吐出通路12及び第2の吐出通路13から吐出させる。
【0016】
制御ユニット14は、ブロワモータ8の回転速度を段階的または無段階に制御する。
温度調整装置2は、空気通路を形成するケース15と、ケース15内に収容したエバポレータ16、ヒータコア17、混合ドア18(18a、18b)、切替ドア27〜30などを備える。
ケース15は、送風装置1のケース3の吐出通路に接続され、その接続口からエバポレータ16までの間を、仕切り板19が第1の送風通路20と第2の送風通路21とに仕切る。
【0017】
第1の送風通路20は、ケース3の第1の吐出通路12に連通し、第2の送風通路21はケース3の第2の吐出通路13に連通している。
ケース15の下流端には、車室内に通じる複数の吹出口(ベンチレータ吹出口22、サイドベンチレータ吹出口23、デフロスタ吹出口24、フロントフット吹出口25、リアフット吹出口26)を設けてある。
【0018】
エバポレータ16は、低温冷媒との熱交換によって内部を流れる空気を冷却し、ヒータコア17は、エンジン冷却水(温水)を熱源として内部を通過する空気を加熱する。
混合ドア18は、ヒータコア17に隣接して設けられ、ヒータコア17を通過する空気量とヒータコア17をバイパスする空気量との割合を調節することにより、吹出空気の温度調節を行うもので、第1の送風通路20を通ってエバポレータ16を通過する空気の風量割合を調節する第1の混合ドア18aと、第2の送風通路21を通ってエバポレータ16を通過する空気の風量割合を調節する第2の混合ドア18bとからなる。
【0019】
切替ドア27〜30は、選択された吹出モードに応じて各吹出口を切り替えるもので、ベンチレータドア27、デフロスタドア28、フロントフットドア29、リアフットドア30からなる。
上記のように、本実施形態では、車両用空調装置を内外気2層式のユニットとしたが、仕切り板19を備えない1層式のユニットであってもよい。
【0020】
次に、送風装置1のケース3におけるフィルタ部材31の取り付け構造を説明する。
図1に示したように、送風装置1のケース3のファン6、7よりも上流側であって、切替ドア4の開閉空間よりも下流側に、ケース3内に取り入れた空気(内外気)をろ過して塵埃などを除去するためのフィルタ部材31を、ケース3内の空気通路を横断するように、ケース3内に略水平に取り付けてある。
【0021】
フィルタ部材31は、図2に示すように、蛇腹状に折り畳んだ濾紙31aを、四角の枠部材31bに取り付けて薄い箱状をなすものであり、厚み方向を空気の通過方向として、ケース3内に脱着可能に保持される。
フィルタ部材31をケース3に対して脱着するために、ケース3の側面(車両の後方を向く側の面)に、フィルタ部材31が通過可能なスリット状の脱着用開口部32を設けてある。
【0022】
脱着用開口部32は、ケース3に対する装着高さに位置するフィルタ部材31を、そのまま略水平に取り出せるような位置及び開口形状に形成される。
ここで、脱着用開口部32を設けた面に直交するケース3の両側面の内側それぞれには、脱着用開口部32の高さの装着位置にフィルタ部材31を支持する下ガイド部33a、33bを、脱着用開口部32から装着方向の奥側に向けて連続的に設けてある。
【0023】
下ガイド部33a、33bは、ケース3の両側面の内側それぞれに一体的に形成した階段状の段差で構成される。具体的には、図3に示すように、ケース3の両側面がフィルタ部材31の幅Wよりも僅かに長い距離で対向する部分40a、40bから、ケース3の両側面がフィルタ部材31の幅Wよりも狭い距離で対向する部分へと下方に向けて階段状に切り替わるようにすることで、フィルタ部材31の装着高さに棚状部を形成し、この棚状部を下ガイド部33a、33bとする。
そして、下ガイド部33a、33b(棚状部の上面)に、フィルタ部材31の下面の縁部を載置することで、ケース3内の装着高さにフィルタ部材31を支持する。
【0024】
また、下ガイド部33a、33bよりも上方の、ケース3の両側面がフィルタ部材31の幅Wよりも僅かに長い距離で対向する部分40a、40bは、装着方向に直交する左右方向におけるフィルタ部材31の位置決めを行う。
更に、フィルタ部材31の高さを規制する上ガイド部35a,35bをケース3の両側面の内側に一体的に設けてある。
【0025】
上ガイド部35a,35bは、図3に示すように、ケース3の両側面がフィルタ部材31の幅Wよりも僅かに長い距離で対向する部分40a、40bから、ケース3の両側面がフィルタ部材31の幅Wよりも狭い距離で対向する部分へと上方に向けて階段状に切り替わるようにすることで、フィルタ部材31の高さを規制する位置に天井部を形成し、この天井部を上ガイド部35a,35bとする。
即ち、下ガイド部33a、33bと上ガイド部35a,35bとは上下方向に略平行に対向し、下ガイド部33a、33bと上ガイド部35a,35bとで挟まれる範囲が、フィルタ部材31の可動範囲となる。
【0026】
ここで、下ガイド部33a、33bは、前述のように略水平に延び、フィルタ部材31を下ガイド部33a、33bに載せることで、フィルタ部材31が可動範囲の下端の水平位置に支持されることになる。
一方、上ガイド部35a,35bは、図3に示すように、脱着用開口部32の上縁付近からケース3の後面(装着方向の奥側)にわたって連続的に設けられるが、装着高さよりもフィルタ部材31の位置が上方にずれることを規制するための装着ガイド部36a,36bと、脱着時におけるフィルタ部材31の傾き角をガイド及び規制する傾きガイド部37a,37bとから構成される。
【0027】
装着ガイド部36a,36bは、装着方向の奥側に装着方向に沿って延設され、かつ、フィルタ部材31の厚さHを僅かに超える距離D1で下ガイド部33a、33bと平行に対向し、下ガイド部33a、33bと装着ガイド部36a,36bとの間にフィルタ部材31の先端部を挟み込むことで、フィルタ部材31が装着高さから上方に位置ずれしないようにする。
一方、傾きガイド部37a,37bは、装着ガイド部36a,36bの脱着用開口部32側の端部から、脱着用開口部32側に向けて徐々に装着ガイド部36a,36bの高さよりも高くなる傾斜面(第2傾きガイド部)38と、この傾斜面38の頂点から脱着用開口部32側に向けて徐々に装着ガイド部36a,36bの高さに戻る傾斜面(第1傾きガイド部)39とからなる。
【0028】
即ち、上ガイド部35a,35bは、ケース3の側面から見た場合に、装着方向の奥側で略水平に延設される一方、係る水平な部分と脱着用開口部32との間で、上方に凸の山型をなすように設けられている。
換言すれば、上ガイド部35a,35bの下ガイド部33a、33bに対する高さは、装着方向の奥側の所定範囲では、フィルタ部材31の厚さHを僅かに超える距離D1を保持し、係る距離D1を保持する範囲よりも脱着用開口部32側では、距離D1から徐々に増大して途中で最大距離になった後、係る最大距離となる位置から脱着用開口部32に向けて徐々に減少して距離D1付近にまで戻るように形成されている。
【0029】
脱着用開口部32は、スナップフィットによってケース3に対して脱着可能な蓋部材41によって閉塞される。
図4に示すように、蓋部材41の幅方向両端には、蓋部材41の幅方向に弾性変形して広がるリップ部42a,42bが設けられ、ケース3の脱着用開口部32近傍の両側面には、図2に示すように、フィルタ部材31の装着方向奥側に向けて徐々にケース3の側面から離れて上り勾配をなす係止部43が設けられている。
【0030】
そして、蓋部材41を脱着用開口部32に向けて押し込むようにすると、リップ部42a,42bが係止部43に案内されて相互に離れる方向に徐々に弾性変形し、リップ部42a,42bに設けた係合孔44に係止部43が嵌まり込む位置にまで蓋部材41を押し込むと、リップ部42a,42bが元の形状に戻ることで、係合孔44に係止部43が嵌まり込み、蓋部材41が脱着用開口部32を閉塞する位置に固定される。
一方、蓋部材41を取り外す場合には、リップ部42a,42bが相互に離れる方向に力を加え、リップ部42a,42bが、係止部43を乗り越えるようにすれば、係合状態が解かれ、蓋部材41を取り外すことができる。
【0031】
また、蓋部材41の裏面(ケース3の空気通路側となる面)には、図4に示すように、下ガイド部33a、33bとの間にフィルタ部材31の装着方向基端側を挟み込んで、フィルタ部材31の高さを装着位置の高さに規制する位置規制用のリブ部46a,46bを設けてある。
リブ部46a,46bは、蓋部材41を脱着用開口部32に取り付けた状態で、下ガイド部33a、33bとの間にフィルタ部材31の基端側を挟み込み、装着高さよりもフィルタ部材31が上方に位置ずれしないようにする。
【0032】
即ち、ケース3内にフィルタ部材31を装着した後に蓋部材41で脱着用開口部32を閉塞すると、装着方向の奥側では、下ガイド部33a、33bと上ガイド部35a,35bの装着ガイド部36a,36bとの間にフィルタ部材31の装着方向先端部が挟持され、装着方向の手前側では、下ガイド部33a、33bと蓋部材41のリブ部46a,46bとの間にフィルタ部材31の装着方向基端部が挟持され、係る2箇所での挟持によって、フィルタ部材31が装着位置から上方に位置ずれすることを阻止する。
尚、脱着用開口部32に対して蓋部材41の上下が逆に装着されると、リブ部46a,46bによるフィルタ部材31の押さえが正常に機能しない。そこで、脱着用開口部32に対して蓋部材41が上下逆に装着されることを阻止するために、蓋部材41の表面には、上側とすべき方向を「UP」の表記及び矢印のマークで示してあり、更に、リップ部42a,42bの高さ位置を左右で異ならせることで、ケース3の脱着用開口部32に対して上下を逆に装着しようとしても、装着できないようにしてある。
【0033】
上記構成とした車両用空調装置において、フィルタ部材31を取り外す場合の手順を、図5を参照しながら説明する。
まず、蓋部材41を脱着用開口部32から取り外し、脱着用開口部32から手を差し入れてフィルタ部材31の基端部を持って、略水平に引き出すようにする(図5(A)、(B)参照)。
【0034】
フィルタ部材31の先端が、下ガイド部33a、33bと装着ガイド部36a,36bとで挟まれる領域から脱すると、フィルタ部材31の上面と上ガイド部35a,35bとの距離が広がった部分にフィルタ部材31が位置するようになり、上ガイド部35a,35bの傾きガイド部37a,37bにフィルタ部材31が当たる角度まで、奥側から脱着用開口部32に向けて下り傾斜となるフィルタ部材21の傾きが許容されるようになる。
【0035】
このため、上ガイド部35a,35b(傾きガイド部37a,37b)に突き当たる方向に力を加えながらフィルタ部材31を引き抜くようにすると、下ガイド部33a、33bと装着ガイド部36a,36bとで挟まれる領域からフィルタ部材31の先端が脱したときに、脱着用開口部32の縁を支点としてフィルタ部材31の先端が傾きガイド部37a,37bに突き当たるようになるまで傾斜して、フィルタ部材31は引き抜き側に向けて下り勾配となる(図5(C)参照)。
【0036】
ここで、傾きガイド部37a,37bの傾斜面38にフィルタ部材31の先端が突き当たる状態では、傾きガイド部37a,37bが、徐々に下ガイド部33a、33bから離れるために、フィルタ部材31の傾きも徐々に増すことになる。
そして、傾きガイド部37a,37bの山型の頂点部分にフィルタ部材31の先端が位置するようになると(図5(D)参照)、フィルタ部材31の傾き角θの増大は停止し、傾きガイド部37a,37bの脱着用開口部32に向けて下り傾斜となる傾斜面39に沿ってフィルタ部材31が傾斜し、係る傾斜角θ(最大傾き角θ)を保持しながら脱着用開口部32から引き出される(図5(E)、(F)参照)。
【0037】
即ち、傾きガイド部37a,37bは、脱着用開口部32から装着方向の奥側に向けて上り勾配をなし、脱着用開口部32側でフィルタ部材31の傾き角を最大傾斜角θに規制する第1傾きガイド部(傾斜面39)と、装着方向の奥側から脱着用開口部32に向けて上り勾配をなし、装着ガイド部36a,36bから前記第1傾きガイド部に向けて、許容する傾き角θを徐々に前記最大傾斜角θにまで増大させる第2傾きガイド部(傾斜面38)とで構成される。
【0038】
一方、フィルタ部材31を、ケース3に対して装着する場合には、図5に示した手順を逆にたどるように作業することで、フィルタ部材31をケース3の所期の装着位置に装着できる。
フィルタ部材31を装着する場合には、脱着用開口部32から斜め上方に向けてフィルタ部材31を差し入れることで、フィルタ部材31の先端を傾きガイド部37a,37bに突き当て、傾きガイド部37a,37bに当たった状態を保持するようにしてフィルタ部材31を押し込めば、フィルタ部材31は、装着ガイド部36a,36bにガイドされて最大傾斜角を保持しつつ、ケース3内に挿入される(図5(F)、(E)参照)。
【0039】
そして、フィルタ部材31の先端が、傾斜面38に突き当たるようになると、係る傾斜面に沿ってフィルタ部材31の先端がガイドされることで、フィルタ部材31の傾斜角が徐々に小さくなって最終的には略水平(空気通路の横断面の略平行な状態)になり(図5(D)、(C)、(B)参照)、更に、フィルタ部材31を押し込めば、フィルタ部材31の先端が、下ガイド部33a、33bと装着ガイド部36a,36bとで挟まれる領域に差し入れられることになる(図5(B)、(A)参照)。
【0040】
次に、上記構成の車両用空調装置の効果を説明する。
例えば、図6に示すように、空調装置の車載状態において、脱着用開口部32の前面に、インストルメントパネルやグローブボックスなどの車室の前席正面部分を構成するパネル部材45が干渉する場合であって、脱着用開口部32からパネル部材45までの距離D2が、フィルタ部材31の長さLよりも短いと、脱着用開口部32からフィルタ部材31を水平状態としたまま引き出すことができない。
【0041】
これに対し、上記のようにして、ケース3の脱着用開口部32から斜め下方に傾けてフィルタ部材31を引き出せるようにすれば、インストルメントパネルやグローブボックスなどのパネル部材45が途切れる下方空間に向けてフィルタ部材31を引き出せるので、フィルタ部材31の取り外しが可能となる。
また、取り外し時と同様にして、斜め下方から脱着用開口部32にフィルタ部材31を差し込むようにすれば、脱着用開口部32の前面にインストルメントパネルやグローブボックスなどのパネル部材45が干渉する場合であっても、フィルタ部材31をケース3に装着することができる。
【0042】
また、脱着過程におけるフィルタ部材31の傾きが、傾きガイド部37a,37bでガイド及び規制されるので、傾きガイド部37a,37bでガイド及び規制されるフィルタ部材31の最大傾斜角を、フィルタ部材31がインストルメントパネルやグローブボックスに干渉しないで脱着できる角度に設定しておけば、傾きガイド部37a,37bにフィルタ部材31を押し当てるようにしてフィルタ部材31の脱着を行うことで、インストルメントパネルやグローブボックスなどとフィルタ部材31との干渉を容易に回避でき、高い作業性を実現できる。
【0043】
また、フィルタ部材31を装着する場合には、脱着用開口部32から最大傾斜角で差し入れたフィルタ部材31の傾斜角が、装着ガイド部36a,36b付近にまでフィルタ部材31を押し込むと、傾きガイド部37a,37bに案内されて徐々に水平になり、そのままフィルタ部材31を押し込めば、フィルタ部材31の先端が下ガイド部33a、33bと装着ガイド部36a,36bとで挟まれるようになる。
従って、脱着用開口部32が直接目視できず、手探りでフィルタ部材31の脱着を行うような場合であっても、インストルメントパネルやグローブボックスを避けて容易にフィルタ部材31を脱着できる。
【0044】
また、脱着用開口部32は、フィルタ部材31の装着高さに設けるから、フィルタ部材31をケース3内に押し込んだ後で、フィルタ部材31の後端を装着高さまで持ち上げる操作などが不要であり、脱着作業が簡単でかつ所期の装着位置にフィルタ部材31を安定的に装着できる。
以上、好ましい実施形態を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種々の変形態様を採り得ることは自明である。
【0045】
例えば、上ガイド部35a,35bが、傾きガイド部37a,37bを備えずに、装着ガイド部36a,36bのみからなり、フィルタ部材31の先端が、装着ガイド部36a,36bと下ガイド部33a、33bとで挟まれる領域から引き抜かれた場合に、フィルタ部材31が、引く抜き方向に下り勾配となるように傾斜することを許容することができる。
【0046】
上記のように、傾きガイド部37a,37bを省略しても、フィルタ部材31を斜め下方に向けて引き抜くことが可能ではあるが、フィルタ部材31の傾き角をガイド及び規制する機能が無くなるため、フィルタ部材31を装着する場合に、装着ガイド部36a,36bと下ガイド部33a、33bとで挟まれる領域にフィルタ部材31の先端を差し入れることが難しくなり、また、適正な傾き角に安定的に傾けることができず、傾き角の不足によってインストルメントパネルやグローブボックスなどにフィルタ部材31が衝突したり、逆に過剰にフィルタ部材31を傾けてしまうことで、フィルタ部材31を脱着用開口部32の開口縁に引っ掛かったりする可能性がある。
従って、上記実施形態に示したように、上ガイド部35a,35bを、装着ガイド部36a,36bと傾きガイド部37a,37bとで構成することが好ましい。
【0047】
但し、装着ガイド部36a,36bと傾きガイド部37a,37bとを連続的に形成せずに、個別に設けることができ、例えば、傾きガイド部37a,37bを上記実施形態と同様に装着方向の両側の内壁に設ける一方、装着ガイド部36a,36bを、装着方向の突き当たり側のケース3内壁に形成することができる。
また、下ガイド部33a、33b及び上ガイド部35a,35bは、ケース3の内壁に対して階段状の凹凸として形成することができる一方、リブ状に形成することができ、また、下ガイド部33a、33b及び上ガイド部35a,35bを別部品としてケース3に取り付けることもできる。
【0048】
また、バネの弾性復帰力によってフィルタ部材31を傾きガイド部37a,37bに向けて下方から押圧する押圧部材を設けて、フィルタ部材31が装着ガイド部36a,36bと下ガイド部33a、33bとで挟まれる領域から脱したときに、前記押圧部材によってフィルタ部材31を傾きガイド部37a,37bに押し付けることで、傾きガイド部37a,37bが規制する角度に自動的に傾くように構成することができる。ここで、下ガイド部33a、33bの一部(装着ガイド部36a,36bに対向する部分を除く領域)を、押圧部材として機能させることができる。
また、下ガイド部33a、33b及び上ガイド部35a,35bは、上記実施形態のように連続的に設けることができる他、不連続に設けることができる。
【符号の説明】
【0049】
1…送風装置、2…温度調整装置、3…ケース、9…外気導入口、10…第1の内気導入口、31…フィルタ部材、32…脱着用開口部、33a、33b…下ガイド部、35a,35b…上ガイド部、36a,36b…装着ガイド部、37a,37b…傾きガイド部、41…蓋部材、46a,46b…リブ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調空気の通路を形成するケースと、
前記ケース内に空調空気の通路を横断するように配置され、空調空気を浄化するフィルタ部材と、
を備えた車両用空調装置において、
前記ケースは、
前記フィルタ部材を脱着するための脱着用開口部と、前記脱着用開口部の高さの装着位置に前記フィルタ部材を支持する下ガイド部と、前記フィルタ部材の高さを規制する上ガイド部と、を備え、
前記上ガイド部は、脱着方向の奥側において前記フィルタ部材の先端を前記装着位置の高さに規制する装着ガイド部を含み、かつ、
前記上ガイド部は、脱着過程において前記フィルタ部材が前記装着ガイド部による規制領域から外れているときに、装着方向の奥側に向けて上り傾斜となる前記フィルタ部材の傾きを許容することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記上ガイド部は、前記装着ガイド部と前記脱着用開口部との間で、前記フィルタ部材の傾き角を規制する傾きガイド部を備えることを特徴とする請求項1記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記傾きガイド部は、前記脱着用開口部側で前記フィルタ部材の傾き角を最大角に規制する第1傾きガイド部と、前記装着ガイド部から前記第傾き1ガイド部に向けて、許容する傾き角を徐々に前記最大角にまで増大させる第2傾きガイド部とを含むことを特徴とする請求項2記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記下ガイド部及び上ガイド部は、前記ケースの両側壁の内面に設けた段差部で形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記脱着用開口部に対して脱着可能に装着される蓋部材の裏側に、前記フィルタ部材の後端を前記装着位置の高さに規制する後端ガイド部を一体的に設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項6】
空調空気の通路を形成するケースと、
前記ケース内に空調空気の通路を横断するように配置され、空調空気を浄化するフィルタ部材と、
を備えた車両用空調装置において、
前記ケースは、
前記フィルタ部材を脱着するための脱着用開口部と、前記脱着用開口部の高さの装着位置に前記フィルタ部材を支持する下ガイド部と、前記フィルタ部材の高さを規制する上ガイド部と、を備え、
前記上ガイド部は、脱着方向の奥側に設けた前記装着位置の高さの装着ガイド部と、前記脱着用開口部側から奥側に向けて装着位置の高さから徐々に離れる上り勾配に形成した第1傾きガイド部と、前記装着ガイド部と第1傾きガイド部との間に設けられ、前記脱着用開口部側から奥側に向けて装着位置の高さに徐々に近づく下り勾配に形成した第2傾きガイド部とを含むことを特徴とする車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−236437(P2012−236437A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−104949(P2011−104949)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(000001845)サンデン株式会社 (1,791)
【Fターム(参考)】