説明

車両用空調装置

【課題】ユーザに対して発信する車室内の温度情報と実際にユーザが体感する車室内の温度との乖離を抑制可能な車両用空調装置を提供する。
【解決手段】車両の内装部材の内部に配置され、所定部位の温度を検出する内気センサ51と、空調機器11、32を制御するために使用する車室内の温度情報である制御用室内温度を算出する制御用室内温度算出手段S6と、ユーザに対して車両情報を知らせるために使用する車室内の温度情報である発信用室内温度を算出する発信用室内温度算出手段S5と、を備える。制御用室内温度算出手段S6では、内気センサ51で検出する検出値の変化を鈍化させる遅れ処理を施すことで制御用室内温度を算出し、発信用室内温度算出手段S5は、制御用室内温度よりも内気センサ51で検出する検出値の変化に対する鈍化度合いが小さくなるように発信用室内温度を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用空調装置では、車室内の設定温度、車室内の温度(内気温)、車室外の温度(外気温)、および日射量等に基づいて、車室内に吹き出す空気の目標吹出温度TAOを設定し、設定した目標吹出温度TAOに応じて、各種空調機器(空調手段)を制御している。
【0003】
ここで、車室内温度を検出する内気センサは、一般的に、車室内空間における日射等の影響が少ない位置(例えば、計器盤等の内装部材の内部)に配置されている。
【0004】
このため、例えば、車室内の空調を開始する際には、内気センサでは、車室内空間における日射等の影響を受ける天井付近(ユーザが乗車した際の顔付近)よりも低い温度を検出する傾向があり、当該内気センサの検出値を用いて目標吹出温度を設定すると、目標吹出温度が高めに設定されてしまう。これにより、例えば、車室内に空気を送風する送風量等が低下し、ユーザが所望する空調性能を発揮することができない虞がある。
【0005】
これに対して、例えば、特許文献1では、内気センサの検出値に対して、所定の時定数により遅れ処理を行うことで、空調制御用の車室内温度を算出し、算出した空調制御用の車室内温度を用いて、目標吹出温度を設定するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−36847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、一般的な車両では、車室内温度を含む車両情報を、計器盤等に設けられた表示装置や、遠隔地にいるユーザの携帯端末等の表示手段へ発信することで、ユーザに対して車両情報を提供可能に構成されている。
【0008】
ユーザへ発信する車室内温度情報としては、例えば、内気センサの検出値をそのまま採用することが考えられる。しかし、車室内の空調を開始する際に、ユーザが車室内の温度を体感する部位よりも低い温度を検出する傾向があり、ユーザ側に発信する車室内温度と、実際にユーザが体感する車室内の温度とが乖離してしまうことがある。さらに、内気センサの検出値は、他の機器からのノイズや気流の変化等の影響を受けやすいので、車室内温度情報としてそのまま採用することが難しい。
【0009】
また、ユーザへ発信する車室内温度情報としては、内気センサの検出値に対して遅れ処理を施して算出した空調制御用の車室内温度を採用することが考えられる。しかし、空調制御用の車室内温度は、空調を開始して車室内の温度分布が縮小したとしても、遅れ処理の影響で、ユーザが車室内の温度を体感する部位よりも低い温度が維持され易い。
【0010】
このため、ユーザへ発信する車室内温度情報として空調制御用の車室内温度を採用したとしても、ユーザ側に発信された車室内温度と、実際にユーザが体感する車室内の温度とが乖離してしまう。
【0011】
このように、ユーザ側に発信された車室内温度と、実際にユーザが体感する車室内の温度とが乖離してしまうと、ユーザに違和感を与える要因となる。また、空調制御用の車室内温度をユーザ側に発信する場合には、遅れ処理によってユーザ側に発信された車室内温度の変化が小さくなるので、即効性のある空調を行ったとしても、そのことが充分にユーザに伝わらない虞がある。
【0012】
そこで、本発明では、ユーザに対して発信する車室内の温度情報と実際にユーザが体感する車室内の温度との乖離を抑制可能な車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、車室内を空調する空調手段(11、32)と、車室内に温度分布が生じた際に、車室内において相対的に低い温度となる部位に配置され、当該部位の温度を検出する室内温度検出手段(51)と、空調手段(11、32)を制御するために使用する車室内の温度情報である制御用室内温度を算出する制御用室内温度算出手段(S6)と、ユーザに対して車両情報を知らせるために使用する車室内の温度情報である発信用室内温度を算出する発信用室内温度算出手段(S5)と、を備え、制御用室内温度算出手段(S6)は、室内温度検出手段(51)で検出する検出値の変化を鈍化させる遅れ処理を施すことで制御用室内温度を算出し、発信用室内温度算出手段(S5)は、制御用室内温度よりも室内温度検出手段(51)で検出する検出値の変化に対する鈍化度合いが小さくなるように発信用室内温度を算出することを特徴とする。
【0014】
これによると、空調手段(11、32)の制御に用いる制御用室内温度よりも、室内温度検出手段(51)の検出値の変化に対する鈍化度合いが小さい温度をユーザに対して発信するので、制御用室内温度をユーザに対して発信する場合に比べて、ユーザに対して発信する車室内の温度情報と実際にユーザが体感する車室内の温度との乖離を抑制することができる。
【0015】
この結果、実際に車室内の温度とユーザに発信される車室内の温度情報との乖離によって生ずるユーザの違和感を低減できると共に、即効性のある空調を行った際の車室内の温度変化を適切にユーザに伝えることができる。
【0016】
また、室内温度検出手段(51)の検出値の変化を鈍化させた制御室内温度を用いて、空調手段(11、32)を制御するので、空調手段(11、32)の制御ハンチングを抑制することができると共に、ユーザの空調要求に応じた空調制御が可能となる。
【0017】
また、請求項2に記載の発明では、車室内を空調する空調手段(11、32)と、車室内に温度分布が生じた際に、車室内において相対的に低い温度となる部位に配置され、当該部位の温度を検出する室内温度検出手段(51)と、室内温度検出手段(51)で検出する検出値の低下に伴って、予め定めた温度範囲を示す温度レベルを段階的に変化させ、室内温度検出手段(51)で検出する検出値に対応する温度レベルを設定する温度レベル設定手段(S5)と、温度レベル設定手段(S5)にて設定した温度レベルに基づいて、ユーザに対して車室内の温度情報を知らせるための発信用温度範囲を表示する表示手段(60)と、を備え、表示手段(60)には、温度レベルが低温側へ一段階変化する際に表示する発信用温度範囲の上限値が、温度レベルが低温側へ一段階変化する際に室内温度検出手段(51)で検出する検出値よりも高い値で表示されていることを特徴とする。
【0018】
これによると、室内温度検出手段(51)の検出値が、車室内に温度分布が生じた際にユーザが体感する車室内の温度よりも低い温度となったとしても、表示手段(60)に表示される発信用温度範囲が、室内温度検出手段(51)の検出値に対して高めに表示され易くなる。従って、ユーザに対して発信する車室内の温度情報と実際にユーザが体感する車室内の温度との乖離を抑制することができる。
【0019】
なお、請求項2における「室内温度検出手段(51)で検出する検出値」には、実際に室内温度検出手段(51)から出力される情報に加えて、室内温度検出手段(51)から出力される情報を加工、修正した室内温度情報も含まれる。
【0020】
ここで、単純に、室内温度検出手段(51)で検出する検出値に応じて段階的に温度レベルを変化させると、室内温度検出手段(51)で検出する検出値の制御ハンチングによって、温度レベルが頻繁に変化することがあり、ユーザに違和感を与えてしまう虞がある。
【0021】
そこで、請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の車両用空調装置において、一段階異なる温度レベルのうち、高い温度範囲を示す高温側温度レベルから低い温度範囲を示す低温側温度レベルに変化させる際の第1の閾値が、低温側温度レベルから高温側温度レベルに変化させる際の第2の閾値よりも低い値に設定されており、温度レベル設定手段(S5)は、空調手段(11、32)の作動開始時において、室内温度検出手段(51)で検出する検出値が、第1の閾値よりも大きく、第2の閾値よりも小さいときは、温度レベルを高温側温度レベルに設定することを特徴とする。
【0022】
これによると、車室内の温度上昇過程と温度下降過程における温度レベルに切替える際の閾値に差を設けることで、温度レベルが頻繁に切り替わることを抑制することができる。
【0023】
さらに、空調手段(11、32)の作動開始時において、室内温度検出手段(51)で検出する検出値が、所定差を設けた閾値の間となる場合は、高い温度範囲を示す温度レベルに設定するので、表示手段(60)にて表示される発信用温度範囲が、室内温度検出手段(51)の検出値に対して高めに表示され易くなる。この結果、ユーザに対して実際の車室内の温度に近い温度情報を発信することが可能となる。
【0024】
ここで、車室内への日射量が多い場合には、車室内における天井付近が熱せられるので、車室内における天井付近(ユーザが乗車した際の顔付近)の温度が、室内温度検出手段(51)が配置される部位に比べて高くなり、車室内に温度分布が拡大し易くなる傾向がある。
【0025】
このため、請求項4に記載の発明では、車室内を空調する空調手段(11、32)と、車室内に温度分布が生じた際に車室内において相対的に低い温度となる箇所に配置され、当該箇所の温度を検出する室内温度検出手段(51)と、ユーザに対して車両情報を知らせるために使用する車室内の温度情報である発信用室内温度を、室内温度検出手段(51)で検出する検出値よりも高い温度となるように補正する発信用室内温度算出手段(S5)と、を備え、発信用室内温度算出手段(S5)は、車室内における日射量の増加に応じて、室内温度検出手段(51)で検出する検出値に対する補正量を増大させることを特徴とする。
【0026】
これによると、車室内における日射量の増加に応じて、発信用室内温度を室内温度検出手段(51)で検出する検出値よりも高い温度に補正するので、日射量の増大に応じて拡大する車室内の温度分布を考慮した温度情報をユーザに発信することができる。このため、室内温度検出手段(51)の検出値が、車室内に温度分布が生じた際にユーザが体感する車室内の温度よりも低い温度となったとしても、ユーザに対して実際の車室内の温度に近い温度情報を発信することが可能となる。従って、ユーザに対して発信する車室内の温度情報と実際にユーザが体感する車室内の温度との乖離を抑制することができる。
【0027】
また、空調手段(11、32)を停止してから再開するまでの経過時間、すなわち空調手段(11、32)の停止期間が長いほど、日射によって車室内における天井付近が熱せられる時間が長くなり、車室内に温度分布が拡大し易くなる傾向がある。
【0028】
そこで、請求項5に記載の発明では、請求項4に記載の車両用空調装置において、発信用室内温度算出手段(S5)は、空調手段(11、32)の作動を停止してから再開する際に、空調手段(11、32)の停止から再開までの経過時間の長さに応じて、室内温度検出手段(51)で検出する検出値に対する補正量を増大させることを特徴とする請求項4に記載の車両用空調装置。
【0029】
これによると、空調手段(11、32)の作動停止から再開までの経過時間の長さに応じて、発信用室内温度を室内温度検出手段(51)で検出する検出値よりも高い温度に補正するので、空調手段(11、32)の停止中に拡大する車室内の温度分布を考慮した温度情報をユーザに発信することができる。
【0030】
また、空調手段(11、32)の作動が再開された後は、車室内の空気が攪拌されて徐々に車室内の温度分布が縮小される。
【0031】
このため、請求項6に記載の発明では、請求項4または5に記載の車両用空調装置において、発信用室内温度算出手段(S5)は、空調手段(11、32)の作動が再開された後、空調手段(11、32)の作動を再開してからの経過時間の長さに応じて、室内温度検出手段(51)で検出する検出値に対する補正量を減少させることを特徴とする請求項4または5に記載の車両用空調装置。
【0032】
これによると、空調手段(11、32)の作動を再開してからの経過時間の長さに応じて、発信用室内温度を室内温度検出手段(51)で検出する検出値に対する補正量を減少させるので、空調手段の作動再開によって、縮小する車室内の温度分布を考慮した温度情報をユーザに発信することができる。
【0033】
ここで、ユーザが車両に乗車する前に空調を開始するプレ空調を実行する場合、車両が停車しているので、車室内の温度分布が拡大していることがある。このため、ユーザに対して発信される車室内の温度情報が、実際の車室内の温度と乖離していると、ユーザが適切にプレ空調の効果を確認することができないといった問題がある。
【0034】
そこで、請求項7に記載の発明では、ユーザが車両に乗り込む前に車室内の空調を開始するプレ空調を実行可能な車両用空調装置であって、車室内に温度分布が生じた際に車室内において相対的に低い温度となる箇所に配置され、当該箇所の温度を検出する室内温度検出手段(51)と、ユーザに対して車両情報を知らせるために使用する車室内の温度情報である発信用室内温度を算出する発信用室内温度算出手段(S5)と、を備え、発信用室内温度算出手段(S5)は、プレ空調を実行する際に、室内温度検出手段(51)で検出する検出値よりも高い温度となるように発信用室内温度を補正することを特徴とする。
【0035】
これによれば、プレ空調を実行する際に、車室内の温度分布を考慮して、発信用室内温度を補正するので、室内温度検出手段(51)の検出値が、車室内に温度分布が生じた際にユーザが体感する車室内の温度よりも低い温度となったとしても、ユーザに対して実際の車室内の温度に近い温度情報を発信することが可能となる。
【0036】
従って、ユーザに対して発信する車室内の温度情報と実際にユーザが体感する車室内の温度との乖離を抑制することができる。この結果、ユーザが適切にプレ空調の効果を確認することが可能となる。
【0037】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】第1実施形態の車両用空調装置の冷房モード時の冷媒回路を示す全体構成図である。
【図2】第1実施形態の車両用空調装置の暖房モード時の冷媒回路を示す全体構成図である。
【図3】第1実施形態の車両用空調装置の第1除湿モード時の冷媒回路を示す全体構成図である。
【図4】第1実施形態の車両用空調装置の第2除湿モード時の冷媒回路を示す全体構成図である。
【図5】第1実施形態の車両用空調装置の電気制御部を示すブロック図である。
【図6】第1実施形態のPTCヒータの回路図である。
【図7】第1実施形態の車両用空調装置の制御処理を示すフローチャートである。
【図8】第1実施形態の車両用空調装置の制御処理の要部を示すフローチャートである。
【図9】第1実施形態の車両用空調装置の制御処理の別の要部を示すフローチャートである。
【図10】第1実施形態の車両用空調装置の制御処理の別の要部を示すフローチャートである。
【図11】第1実施形態の車両用空調装置の制御処理の別の要部を示すフローチャートである。
【図12】第1実施形態の車両用空調装置の制御処理の別の要部を示すフローチャートである。
【図13】第1実施形態の各運転モードにおける各電磁弁の作動状態を示す図表である。
【図14】空調開始してからの発信用室内温度および制御用室内温度の変化を説明する説明図である。
【図15】第2実施形態の車両用空調装置の制御処理の要部を示すフローチャートである。
【図16】第2実施形態の変形例を説明する説明図である。
【図17】第3実施形態の車両用空調装置の制御処理の要部を示すフローチャートである。
【図18】第3実施形態の車両用空調装置の補正量算出処理を示すフローチャートである。
【図19】第4実施形態の車両用空調装置の補正量算出処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0040】
(第1実施形態)
図1〜図14により、本発明の第1実施形態を説明する。本実施形態では、本発明の車両用空調装置1を、内燃機関(エンジン)EGおよび走行用電動モータから車両走行用の駆動力を得るハイブリッド車両に適用している。本実施形態のハイブリッド車両は、車両停車時に外部電源(商用電源)から供給された電力をバッテリ81に充電することのできる、いわゆるプラグインハイブリッド車両として構成されている。
【0041】
さらに、本実施形態のプラグインハイブリッド車両は、車両走行開始前の車両停車時にバッテリ81に充電しておくことによって、走行開始時のようにバッテリ81の蓄電残量が予め定めた所定残量以上になっているときには、主にバッテリ81から供給される電力によって作動する走行用電動モータの駆動力によって走行する(以下、この運転モードをEV運転モードという)。
【0042】
一方、車両走行中にバッテリ81の蓄電残量が予め定めた所定残量よりも低くなったときには、主にエンジンEGの駆動力によって走行する(以下、この運転モードをHV運転モードという)。このように、EV運転モードとHV運転モードとを切り換えることによって、車両走行用の駆動力をエンジンEGのみから得る通常の車両に対してエンジンEGの燃料消費量を抑制して、車両燃費を向上させている。
【0043】
なお、EV運転モードは、主に走行用電動モータが出力する駆動力によって車両を走行させる運転モードであるが、車両走行負荷が高負荷となった際にはエンジンEGを作動させて走行量電動モータを補助する。同様に、HV運転モードは、主にエンジンEGが出力する駆動力によって車両を走行させる運転モードであるが、車両走行負荷が高負荷となった際には走行用電動モータを作動させてエンジンEGを補助する。このようなエンジンEGおよび走行用電動モータの作動は、図示しないエンジン制御装置によって制御される。
【0044】
また、エンジンEGから出力される駆動力は、車両走行用として用いられるのみならず、発電機80を作動させるためにも用いられる。そして、発電機80にて発電された電力および外部電源から供給された電力は、バッテリ81に蓄えることができ、バッテリ81に蓄えられた電力は、走行用電動モータのみならず、車両用空調装置1を構成する各構成機器(空調手段)をはじめとする各種車載機器に供給できる。
【0045】
次に、本実施形態の車両用空調装置1の詳細構成を説明する。この車両用空調装置1は、車両走行時に車室内の空調を行う通常空調の他に、外部電源からバッテリ81への充電中に、ユーザ(乗員)が車両に乗り込む前に車室内の空調を行うプレ空調を実行可能に構成されている。なお、本実施形態のプレ空調は、外部電源からバッテリ81への充電中でなくとも実行可能となっている。
【0046】
車両用空調装置1は、通常空調、およびプレ空調において、車室内を冷房する冷房モード(COOLサイクル)、車室内を暖房する暖房モード(HOTサイクル)、車室内を除湿する第1除湿モード(DRY_EVAサイクル)および第2除湿モード(DRY_ALLサイクル)の冷媒回路を切替可能に構成された蒸気圧縮式の冷凍サイクル10を備えている。
【0047】
図1〜図4は、それぞれ、冷房モード、暖房モード、第1、第2除湿モード時の冷媒の流れを実線矢印で示している。なお、第1除湿モードは、暖房能力に対して除湿能力を優先する除湿モードであり、第2除湿モードは、除湿能力に対して暖房能力を優先する除湿モードである。従って、第1除湿モードを低温除湿モードあるいは単なる除湿モード、第2除湿モードを高温除湿モードあるいは除湿暖房モードと表現することもできる。
【0048】
冷凍サイクル10は、圧縮機11、室内熱交換器としての室内凝縮器12および室内蒸発器26、冷媒を減圧膨張させる減圧手段としての温度式膨張弁27および固定絞り14、並びに、冷媒回路切替手段としての複数(本実施形態では5つ)の電磁弁13、17、20、21、24等を備えている。
【0049】
また、この冷凍サイクル10では、冷媒として通常のフロン系冷媒を採用しており、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界冷凍サイクルを構成している。さらに、この冷媒には圧縮機11を潤滑するための冷凍機油が混入されており、この冷凍機油の一部は冷媒とともにサイクルを循環している。
【0050】
圧縮機11は、エンジンルーム内に配置され、冷凍サイクル10において冷媒を吸入し、圧縮して吐出するもので、吐出容量が固定された固定容量型圧縮機構11aを電動モータ11bにて駆動する電動圧縮機として構成されている。固定容量型圧縮機構11aとしては、具体的に、スクロール型圧縮機構、ベーン型圧縮機構等の各種圧縮機構を採用できる。
【0051】
電動モータ11bは、インバータ61から出力される交流電圧によって、その作動(回転数)が制御される交流モータである。また、インバータ61は、後述する空調制御装置50から出力される制御信号に応じた周波数の交流電圧を出力する。そして、この回転数制御によって、圧縮機11の冷媒吐出能力が変更される。従って、電動モータ11bは、圧縮機11の吐出能力変更手段を構成している。
【0052】
圧縮機11の吐出側には、室内凝縮器12の冷媒入口側が接続されている。室内凝縮器12は、車両用空調装置の室内空調ユニット30において車室内へ送風される送風空気の空気通路を形成するケーシング31内に配置されて、その内部を流通する冷媒と後述する室内蒸発器26通過後の送風空気とを熱交換させることで送風空気を加熱する加熱用熱交換器である。なお、室内空調ユニット30の詳細については後述する。
【0053】
室内凝縮器12の冷媒出口側には、電気式三方弁13が接続されている。この電気式三方弁13は、空調制御装置50から出力される制御電圧によって、その作動が制御される冷媒回路切替手段である。
【0054】
より具体的には、電気式三方弁13は、電力が供給される通電状態では、室内凝縮器12の冷媒出口側と固定絞り14の冷媒入口側との間を接続する冷媒回路に切り替え、電力の供給が停止される非通電状態では、室内凝縮器12の冷媒出口側と第1三方継手15の1つの冷媒流入出口との間を接続する冷媒回路に切り替える。
【0055】
固定絞り14は、暖房モード、第1および第2除湿モード時に、電気式三方弁13から流出した冷媒を減圧膨張させる暖房除湿用の減圧手段である。この固定絞り14としては、キャピラリチューブ、オリフィス等を採用できる。もちろん、暖房除湿用の減圧手段として、空調制御装置50から出力される制御信号によって絞り通路面積が調整される電気式の可変絞り機構を採用してもよい。固定絞り14の冷媒出口側には、後述する第3三方継手23の冷媒流入出口が接続されている。
【0056】
第1三方継手15は、3つの冷媒流入出口を有し、冷媒流路を分岐する分岐部として機能するものである。このような三方継手は、冷媒配管を接合して構成してもよいし、金属ブロックや樹脂ブロックに複数の冷媒通路を設けて構成してもよい。また、第1三方継手15の別の冷媒流入出口には、室外熱交換器16の一方の冷媒流入出口が接続され、さらに別の冷媒流入出口には、低圧電磁弁17の冷媒入口側が接続されている。
【0057】
低圧電磁弁17は、冷媒流路を開閉する弁体部と、弁体部を駆動するソレノイド(コイル)を有し、空調制御装置50から出力される制御電圧によって、その作動が制御される冷媒回路切替手段である。より具体的には、低圧電磁弁17は、通電状態で開弁して非通電状態で閉弁する、いわゆるノーマルクローズ型の開閉弁として構成されている。
【0058】
低圧電磁弁17の冷媒出口側には、第1逆止弁18を介して、後述する第5三方継手28の1つの冷媒流入出口が接続されている。この第1逆止弁18は、低圧電磁弁17側から第5三方継手28側へ冷媒が流れることのみを許容している。
【0059】
室外熱交換器16は、エンジンルーム内に配置されて、内部を流通する冷媒と送風ファン16aから送風された車室外空気(外気)とを熱交換させるものである。送風ファン16aは、空調制御装置50から出力される制御電圧によって回転数(送風空気量)が制御される電動式送風機である。
【0060】
さらに、本実施形態の送風ファン16aは、室外熱交換器16のみならず、エンジンEGの冷却水を放熱させるラジエータ(図示せず)にも室外空気を送風している。具体的には、送風ファン16aから送風された車室外空気は、室外熱交換器16→ラジエータの順に流れる。
【0061】
また、図1〜図4の破線で示す冷却水回路には、冷却水を循環させるための冷却水ポンプが配置されている。この冷却水ポンプ40aは、空調制御装置50から出力される制御電圧によって回転数(冷却水循環量)が制御される電動式の水ポンプである。
【0062】
室外熱交換器16の他方の冷媒流入出口には、第2三方継手19の1つの冷媒流入出口が接続されている。この第2三方継手19の基本的構成は、第1三方継手15と同様である。また、第2三方継手19の別の冷媒流入出口には、高圧電磁弁20の冷媒入口側が接続され、さらに別の冷媒流入出口には、熱交換器遮断電磁弁21の一方の冷媒流入出口が接続されている。
【0063】
高圧電磁弁20および熱交換器遮断電磁弁21は、空調制御装置50から出力される制御電圧によって、その作動が制御される冷媒回路切替手段であり、その基本的構成は、低圧電磁弁17と同様である。但し、高圧電磁弁20および熱交換器遮断電磁弁21は、通電状態で閉弁して非通電状態で開弁する、いわゆるノーマルオープン型の開閉弁として構成されている。
【0064】
高圧電磁弁20の冷媒出口側には、第2逆止弁22を介して、後述する温度式膨張弁27の絞り機構部入口側が接続されている。この第2逆止弁22は、高圧電磁弁20側から温度式膨張弁27側へ冷媒が流れることのみを許容している。
【0065】
熱交換器遮断電磁弁21の他方の冷媒流入出口には、第3三方継手23の1つの冷媒流入出口が接続されている。この第3三方継手23の基本的構成は、第1三方継手15と同様である。また、第3三方継手23の別の冷媒流入出口には、前述の如く、固定絞り14の冷媒出口側が接続され、さらに別の冷媒流入出口には、除湿電磁弁24の冷媒入口側が接続されている。
【0066】
除湿電磁弁24は、空調制御装置50から出力される制御電圧によって、その作動が制御される冷媒回路切替手段であり、その基本的構成は、低圧電磁弁17と同様である。さらに、除湿電磁弁24もノーマルクローズ型の開閉弁として構成されている。そして、本実施形態の冷媒回路切替手段は、電力の供給が停止されると予め定めた開弁状態あるいは閉弁状態となる電気式三方弁13、低圧電磁弁17、高圧電磁弁20、熱交換器遮断電磁弁21、除湿電磁弁24の複数(5つ)の電磁弁によって構成される。
【0067】
除湿電磁弁24の冷媒出口側には、第4三方継手25の1つの冷媒流入出口が接続されている。この第4三方継手25の基本的構成は、第1三方継手15と同様である。また、第4三方継手25の別の冷媒流入出口には、温度式膨張弁27の絞り機構部出口側が接続され、さらに別の冷媒流入出口には、室内蒸発器26の冷媒入口側が接続されている。
【0068】
室内蒸発器26は、室内空調ユニット30のケーシング31内のうち、室内凝縮器12の送風空気流れ上流側に配置されて、その内部を流通する冷媒と送風空気とを熱交換させて送風空気を冷却する冷却用熱交換器である。
【0069】
室内蒸発器26の冷媒出口側には、温度式膨張弁27の感温部入口側が接続されている。温度式膨張弁27は、絞り機構部入口から内部へ流入した冷媒を減圧膨張させて絞り機構部出口から外部へ流出させる冷房用の減圧手段である。
【0070】
より具体的には、本実施形態では、温度式膨張弁27として、室内蒸発器26出口側冷媒の温度および圧力に基づいて室内蒸発器26出口側冷媒の過熱度を検出する感温部27aと、感温部27aの変位に応じて室内蒸発器26出口側冷媒の過熱度が予め定めた所定範囲となるように絞り通路面積(冷媒流量)を調整する可変絞り機構部27bとを1つのハウジング内に収容した内部均圧型膨張弁を採用している。
【0071】
温度式膨張弁27の感温部出口側には、第5三方継手28の1つの冷媒流入出口が接続されている。この第5三方継手28の基本的構成は、第1三方継手15と同様である。また、第5三方継手28の別の冷媒流入出口には、前述の如く、第1逆止弁18の冷媒出口側が接続され、さらに別の冷媒流入出口には、アキュムレータ29の冷媒入口側が接続されている。
【0072】
アキュムレータ29は、第5三方継手28から、その内部に流入した冷媒の気液を分離して、余剰冷媒を蓄える低圧側気液分離器である。さらに、アキュムレータ29の気相冷媒出口には、圧縮機11の冷媒吸入口が接続されている。
【0073】
次に、室内空調ユニット30について説明する。室内空調ユニット30は、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置されて、その外殻を形成するケーシング31内に送風機32、前述の室内蒸発器26、室内凝縮器12、ヒータコア36、PTCヒータ37等を収容したものである。
【0074】
ケーシング31は、車室内に送風される送風空気の空気通路を形成しており、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)にて成形されている。ケーシング31内の送風空気流れ最上流側には、内気(車室内空気)と外気(車室外空気)とを切替導入する図示しない内外気切替箱が配置されている。
【0075】
より具体的には、内外気切替箱には、ケーシング31内に内気を導入させる内気導入口および外気を導入させる外気導入口が形成されている。さらに、内外気切替箱の内部には、内気導入口および外気導入口の開口面積を連続的に調整して、内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる内外気切替ドアが配置されている。
【0076】
従って、内外気切替ドアは、ケーシング31内に導入される内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる吸込口モードを切り替える風量割合変更手段を構成する。より具体的には、内外気切替ドアは、内外気切替ドア用の電動アクチュエータ62によって駆動され、この電動アクチュエータ62は、空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0077】
また、吸込口モードとしては、内気導入口を全開とするとともに外気導入口を全閉としてケーシング31内へ内気を導入する内気モード、内気導入口を全閉とするとともに外気導入口を全開としてケーシング31内へ外気を導入する外気モード、さらに、内気モードと外気モードとの間で、内気導入口および外気導入口の開口面積を連続的に調整することにより、内気と外気の導入比率を連続的に変化させる内外気混入モードがある。
【0078】
内外気切替箱の空気流れ下流側には、内外気切替箱を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する送風機32が配置されている。この送風機32は、遠心多翼ファン(シロッコファン)を電動モータにて駆動する電動送風機であって、空調制御装置50から出力される制御電圧によって回転数(送風量)が制御される。
【0079】
送風機32の空気流れ下流側には、前述の室内蒸発器26が配置されている。さらに、室内蒸発器26の空気流れ下流側には、室内蒸発器26通過後の空気を流す加熱用冷風通路33、冷風バイパス通路34といった空気通路、並びに、加熱用冷風通路33および冷風バイパス通路34から流出した空気を混合させる混合空間35が形成されている。
【0080】
加熱用冷風通路33には、室内蒸発器26通過後の空気を加熱するための加熱手段としてのヒータコア36、室内凝縮器12、およびPTCヒータ37が、送風空気流れ方向に向かってこの順で配置されている。ヒータコア36は、車両走行用駆動力を出力するエンジンEGの冷却水と室内蒸発器26通過後の空気とを熱交換させて、室内蒸発器26通過後の空気を加熱する加熱用熱交換器である。
【0081】
また、PTCヒータ37は、PTC素子(正特性サーミスタ)を有し、このPTC素子に電力を供給されることによって発熱して、室内凝縮器12通過後の空気を加熱する電気ヒータである。なお、本実施形態のPTCヒータ37は、複数本(具体的には3本)設けられており、空調制御装置50が、通電するPTCヒータ37の本数を変化させることによって、複数のPTCヒータ37全体としての加熱能力が制御される。
【0082】
より具体的には、このPTCヒータ37は、図6に示すように、複数(本実施形態では、3本)のPTCヒータ37a、37b、37cから構成されている。なお、図6は、本実施形態のPTCヒータ37の電気的接続態様を示す回路図である。また、本実施形態のPTCヒータ37を作動させるために必要な消費電力は、冷凍サイクル10の圧縮機11を作動させるために必要な消費電力よりも少ない。
【0083】
図6に示すように、各PTCヒータ37a、37b、37cの正極側はバッテリ81側に接続され、負極側は各PTCヒータ37a、37b、37cが有する各スイッチ素子SW1、SW2、SW3を介して、グランド側へ接続されている。各スイッチ素子SW1、SW2、SW3は、各PTCヒータ37a、37b、37cが有する各PTC素子h1、h2、h3の通電状態(ON状態)と非通電状態(OFF状態)とを切り替えるものである。
【0084】
さらに、各スイッチ素子SW1、SW2、SW3の作動は、空調制御装置50から出力される制御信号によって、独立して制御される。従って、空調制御装置50は、各スイッチ素子SW1、SW2、SW3の通電状態と非通電状態とを独立に切り替えることによって、各PTCヒータ37a、15b、15cのうち、通電状態となり加熱能力を発揮するものを切り替えて、PTCヒータ37全体としての加熱能力を変化させることができる。
【0085】
一方、冷風バイパス通路34は、室内蒸発器26通過後の空気を、ヒータコア36、室内凝縮器12、およびPTCヒータ37を通過させることなく、混合空間35に導くための空気通路である。従って、混合空間35にて混合された送風空気の温度は、加熱用冷風通路33を通過する空気および冷風バイパス通路34を通過する空気の風量割合によって変化する。
【0086】
そこで、本実施形態では、室内蒸発器26の空気流れ下流側であって、加熱用冷風通路33および冷風バイパス通路34の入口側に、加熱用冷風通路33および冷風バイパス通路34へ流入させる冷風の風量割合を連続的に変化させるエアミックスドア38を配置している。
【0087】
従って、エアミックスドア38は、混合空間35内の空気温度(車室内へ送風される送風空気の温度)を調整する温度調整手段を構成する。より具体的には、エアミックスドア38は、エアミックスドア用の電動アクチュエータ63によって駆動され、この電動アクチュエータ63は、空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0088】
さらに、ケーシング31の送風空気流れ最下流部には、混合空間35から冷却対象空間である車室内へ温度調整された送風空気を吹き出す吹出口(図示せず)が配置されている。この吹出口としては、具体的に、車室内のユーザの上半身に向けて空調風を吹き出すフェイス吹出口、ユーザの足元に向けて空調風を吹き出すフット吹出口、および、車両前面窓ガラス内側面に向けて空調風を吹き出すデフロスタ吹出口が設けられている。
【0089】
また、フェイス吹出口、フット吹出口、およびデフロスタ吹出口の空気流れ上流側には、それぞれ、フェイス吹出口の開口面積を調整するフェイスドア、フット吹出口の開口面積を調整するフットドア、デフロスタ吹出口の開口面積を調整するデフロスタドア(いずれも図示せず)が配置されている。
【0090】
これらのフェイスドア、フットドア、デフロスタドアは、吹出口モードを切替える吹出口モード切替手段を構成するものであって、図示しないリンク機構を介して、吹出口モードドア駆動用の電動アクチュエータ64に連結されて連動して回転操作される。なお、この電動アクチュエータ64も、空調制御装置50から出力される制御信号によってその作動が制御される。
【0091】
また、吹出口モードとしては、フェイス吹出口を全開してフェイス吹出口から車室内のユーザの上半身に向けて空気を吹き出すフェイスモード、フェイス吹出口とフット吹出口の両方を開口して車室内のユーザの上半身と足元に向けて空気を吹き出すバイレベルモード、フット吹出口を全開するとともにデフロスタ吹出口を小開度だけ開口して、フット吹出口から主に空気を吹き出すフットモード、およびフット吹出口およびデフロスタ吹出口を同程度開口して、フット吹出口およびデフロスタ吹出口の双方から空気を吹き出すフットデフロスタモードがある。
【0092】
さらに、ユーザが後述する操作パネル60のスイッチをマニュアル操作することによって、デフロスタ吹出口を全開してデフロスタ吹出口から車両フロント窓ガラス内面に空気を吹き出すデフロスタモードとすることもできる。
【0093】
なお、本実施形態の車両用空調装置1が適用されるハイブリッド車両は、車両用空調装置とは別に、図示しない電熱デフォッガを備えている。電熱デフォッガとは、車室内窓ガラスの内部あるいは表面に配置された電熱線であって、窓ガラスを加熱することで防曇あるいは窓曇り解消を行うものである。この電熱デフォッガについても空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動を制御できるようになっている。
【0094】
次に、図5により、本実施形態の電気制御部について説明する。空調制御装置50は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成され、そのROM内に記憶された空調制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続された圧縮機11の電動モータ11b用のインバータ61、冷媒回路切替手段を構成する各電磁弁13、17、20、21、24、送風ファン16a、送風機32、各種電動アクチュエータ62、63、64等の作動を制御する。
【0095】
なお、空調制御装置50は、上述した各種機器(空調手段)を制御する制御手段が一体に構成されたものであるが、本実施形態では、特に、圧縮機11の吐出能力変更手段である電動モータ11bの作動(冷媒吐出能力)を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)を吐出能力制御手段50aとする。もちろん、吐出能力制御手段50aを空調制御装置50に対して別体で構成してもよい。
【0096】
また、空調制御装置50の入力側には、車室内温度Trを検出する内気センサ51(室内温度検出手段)、外気温Tamを検出する外気センサ52(外気温検出手段)、車室内の日射量Tsを検出する日射センサ53、圧縮機11の吐出冷媒温度Tdを検出する吐出温度センサ54(吐出温度検出手段)、圧縮機11の吐出側冷媒圧力(高圧側冷媒圧力)Pdを検出する吐出圧力センサ55(吐出圧力検出手段)、室内蒸発器26からの吹出空気温度(蒸発器温度)Teを検出する蒸発器温度センサ56(蒸発器温度検出手段)、第1三方継手15と低圧電磁弁17との間を流通する冷媒の温度Tsiを検出する吸入温度センサ57、エンジン冷却水温度Twを検出する冷却水温度センサ、車室内の窓ガラス近傍の車室内空気の相対湿度を検出する湿度センサ、窓ガラス近傍の車室内空気の温度を検出する窓ガラス近傍温度センサ、および窓ガラス表面温度を検出する窓ガラス表面温度センサ等のセンサ群の検出信号が入力される。
【0097】
なお、本実施形態の内気センサ51は、車室内における空調手段(圧縮機11、送風機32等)の作動中よりも作動停止中に温度分布が大きくなる所定部位に配置されている。具体的には、車室内において温度分布が生じた際に相対的に低い温度となる部位、例えば、車室内における日射等の影響を受け難い車室内の内装部材の内部に配置されている。なお、本実施形態では、車両前部の計器盤のフェイス吹出口近傍に設けられた凹部に収容されている。
【0098】
また、本実施形態の圧縮機11の吐出側冷媒圧力(高圧側冷媒圧力)Pdは、冷房モードでは、圧縮機11の冷媒吐出口側から温度式膨張弁27の可変絞り機構部27b入口側へ至るサイクルの高圧側冷媒圧力であり、その他の運転モードでは、圧縮機11の冷媒吐出口側から固定絞り14入口側へ至るサイクルの高圧側冷媒圧力となる。なお、吐出圧力センサ55は、一般的な冷凍サイクルにおいても、高圧側冷媒圧力の異常上昇を監視するために設けられている。
【0099】
また、蒸発器温度センサ56は、具体的に室内蒸発器26の熱交換フィン温度を検出している。もちろん、蒸発器温度センサ56として、室内蒸発器26のその他の部位の温度を検出する温度検出手段を採用してもよいし、室内蒸発器26を流通する冷媒自体の温度を直接検出する温度検出手段を採用してもよい。また、湿度センサ、窓ガラス近傍温度センサ、および窓ガラス表面温度センサの検出値は、窓ガラス表面の相対湿度RHWを算出するために用いられる。
【0100】
さらに、空調制御装置50の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された操作パネル60に設けられた各種空調操作スイッチからの操作信号が入力される。操作パネル60に設けられた各種空調操作スイッチとしては、具体的に、車両用空調装置1の作動スイッチ(イグニッションスイッチIG)、オートスイッチ、運転モードの切替スイッチ、吹出口モードの切替スイッチ、送風機32の風量設定スイッチ、車室内温度設定スイッチ、エコノミースイッチ(エコスイッチ)、プレ空調のスタートスイッチ等が設けられている。
【0101】
オートスイッチは、車両用空調装置1の自動制御を設定あるいは解除するスイッチであり、エコノミースイッチは、冷凍サイクル10の省動力化を優先させるスイッチである。また、プレ空調のスタートスイッチは、ユーザがプレ空調をスタートさせる時刻や、スタートさせるタイミング(例えば、10分後)を設定するためのスイッチである。
【0102】
さらに、操作パネル60には、現在の車両用空調装置1の運転状態を表示する表示部が設けられている。この表示部には、制御装置50の通信処理部50bを介して、車両用空調装置1の自動制御が実行させていること、車室内の温度情報、吹出口モード情報、送風機32の風量情報等が出力され、出力された各情報が車両用空調装置1の運転状態として表示される。従って、操作パネル60は、本発明の表示手段としての機能も備えている。
【0103】
本実施形態の空調制御装置50の通信処理部50bは、操作パネル60以外にも、ユーザが携帯する近距離通信手段である図示しない無線端末(例えば、リモコン)、あるいは図示しない移動体通信手段(例えば、携帯電話)に対して、車室内の温度情報(車室内温度、日射情報等)を含む車両情報を出力可能に構成されている。なお、車両に、ユーザが着座する座席の温度を調整するシート空調手段や車両のステアリングの温度を検出する温度検出手段等が設けられている場合には、シート空調手段の作動状態やステアリングの温度についても車両情報として操作パネル60の表示部、無線端末、あるいは移動体通信手段に対して出力するようにしてもよい。
【0104】
無線端末および移動体通信手段には、車室内に設けられた操作パネル60と同様に、ユーザに対して車両情報を表示する表示部が設けられており、通信処理部50bから受信した車両情報を表示部に表示可能に構成されている。従って、無線端末および移動体通信手段は、本発明の表示手段としての機能も備えている。
【0105】
また、無線端末および移動体通信手段には、通信処理部50bに各種要求を指示する操作指示部が設けられており、ユーザが操作指示部を操作することで、通信処理部50bに対して各種要求信号を出力可能に構成されている。
【0106】
無線端末および移動体通信手段それぞれには、操作指示部にプレ空調のスタートスイッチが設けられている。従って、ユーザは車両から離れた場所から車両情報を取得し、取得した車両情報に応じて、プレ空調等を実行させることが可能となっている。
【0107】
さらに、空調制御装置50は、車両外部の電源から供給される電力やバッテリ81に蓄えられた電力に応じて、車両における各種電気機器に配分する電力の決定等を行う電力制御装置(図示略)が電気的に接続されている。本実施形態の空調制御装置50には、電力制御装置から出力される出力信号(空調用に使用を許可する空調使用許可電力を示すデータ等)が入力される。
【0108】
ここで、空調使用許可電力は、「車両全体で使用可能な電力のうち、空調用に使用が許可された電力」である。本実施形態のように、車両外部の電源から供給される電力を使用してプレ空調を行う場合、車両外部の電源からの電力を車両で使用可能とするための電圧変換手段の変換効率を車両使用可能電力に乗じた上で、さらに、空調機器以外の電装機器、補機類に電力を供給する12Vバッテリなどで使用する電力を減算することで算出することができる。
【0109】
また、図示しないエンジン制御装置は、空調制御装置50と同様に、周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成され、そのROM内に記憶されたエンジン制御用プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続された各種エンジン制御機器の作動を制御する。
【0110】
エンジン制御装置の出力側には、図示しないエンジンEGを構成する各種エンジン構成機器等が接続されている。具体的には、エンジンEGを始動させるスタータ、エンジンEGに燃料を供給する燃料噴射弁(インジェクタ)の駆動回路(いずれも図示せず)等が接続されている。
【0111】
エンジン制御装置の入力側には、車両の速度を検出する速度センサ(車速検出手段)、バッテリ81の端子間電圧VBを検出する電圧計(図示略)、アクセル開度Accを検出するアクセル開度センサ(図示略)、エンジン回転数Neを検出するエンジン回転数センサ(図示略)等の種々のエンジン制御用のセンサ群が接続されている。
【0112】
さらに、空調制御装置50およびエンジン制御装置は、電気的接続されて、電気的に通信可能に構成されている。これにより、一方の制御装置に入力された検出信号あるいは操作信号に基づいて、他方の制御装置が出力側に接続された各種機器の作動を制御することもできる。例えば、空調制御装置50がエンジン制御装置へエンジンEGの作動要求指令を出力することによって、エンジンEGを作動させることができる。
【0113】
なお、空調制御装置50およびエンジン制御装置は、その出力側に接続された各種制御対象機器を制御する制御手段が一体に構成されたものであるが、それぞれの制御対象機器の作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が、それぞれの制御対象機器の作動を制御する制御手段を構成している。
【0114】
例えば、空調制御装置50のうち、圧縮機11の電動モータ11bに接続されたインバータ61から出力される交流電圧の周波数を制御して、圧縮機11の冷媒吐出能力を制御する構成が圧縮機制御手段を構成し、送風手段である送風機32の作動を制御して、送風機32の送風能力を制御する構成が送風機制御手段を構成する。
【0115】
次に、図7により、上記構成における本実施形態の作動を説明する。図7は、本実施形態の車両用空調装置1の制御処理を示すフローチャートである。この制御処理は、車両システムが停止している場合でも、バッテリ81から空調制御装置50に電力が供給されていれば実行される。
【0116】
まず、ステップS1の処理では、車両用空調装置1の作動スイッチが投入(ON)されているか否か、および、プレ空調のスタートスイッチが投入されているか否かを判定する。そして、車両用空調装置1の作動スイッチ、あるいはプレ空調のスタートスイッチが投入されていると判定されるとステップS2へ進む。この際、プレ空調であることを示すフラグがONされる。
【0117】
ここで、プレ空調のスタートスイッチが投入されているか否かの判定は、例えば、ユーザが操作パネル60のプレ空調のスタートスイッチによって、プレ空調の実行が指示されている場合、ユーザが設定したプレ空調のスタート時刻となった際に、プレ空調のスタートスイッチが投入されたことが判定される。また、無線端末のプレ空調のスタートスイッチによって、プレ空調の実行が指示されている場合、車両側が無線端末から送信されるプレ空調スタート信号を直接受信することによって、プレ空調のスタートスイッチが投入されたことが判定される。さらに、移動体通信手段のプレ空調のスタートスイッチによってプレ空調の実行が指示されている場合、車両側が携帯電話基地局等を介して送信されるプレ空調スタート信号を間接的に受信することによって、プレ空調のスタートスイッチが投入されたことが判定される。
【0118】
なお、本実施形態の車両用空調装置1は、プラグインハイブリッド車両に適用されているので、プレ空調は、車両に外部電源から電力が供給されている場合は、ユーザからプレ空調の停止が要求されるまで継続され、外部電源から電力が供給されていない場合は、バッテリ81の蓄電残量が所定量以下となるまで行うようになっている。
【0119】
ステップS2の処理では、フラグ、タイマ等の初期化、および上述した電動アクチュエータを構成するステッピングモータの初期位置合わせ等が行われる。続くステップS3の処理では、操作パネル60の操作信号を読み込んでステップS4へ進む。具体的な操作信号としては、車室内温度設定スイッチによって設定される車室内設定温度Tset、吹出口モードの選択信号、吸込口モードの選択信号、送風機32の風量の設定信号等がある。
【0120】
ステップS4の処理では、空調制御に用いられる車両環境状態の信号、すなわち上述のセンサ群51〜57の検出信号を読み込んで、ステップS5へ進む。
【0121】
ステップS5では、車両用空調装置1の運転状態を表示する操作パネル60、無線端末、移動体通信手段等の表示部に表示するための発信用室内温度を演算する。このステップS5の詳細については、図8のフローチャートに基づいて説明する。
【0122】
まず、ステップS51にて、所定期間(本実施形態では4秒間)に検出される内気センサ51の検出値Trの平均値TR(16)newを算出する。具体的には、図8のステップS51中の数式で示すように、所定のサンプリング周期(本実施形態では250msec)、内気センサ51での検出値Trの16回分の平均値TR(16)newを算出する。
【0123】
次に、ステップS52では、ステップS51の処理を開始してから、内気センサ51の検出値Trの平均値TR(16)newを算出する時間(4秒)を経過したか否かを判定する。この結果、4秒経過していないと判定された場合(S52:NO)には、ステップS51の処理に戻る。一方、4秒経過していると判定された場合(S52:YES)には、ステップS53の処理に移行して、ステップS51にて算出した平均値TR(16)newを今回の車室内温度TR(16)に設定する。このように、本実施形態の車室内温度TR(16)は、4秒毎に更新される。なお、更新した今回の車室内温度TR(16)は、TRNEWとして制御装置50のRAM等の記憶手段に記憶され、更新前の車室内温度TR(16)は、TROLDとして制御装置50のRAM等の記憶手段に記憶される。
【0124】
次のステップS54では、今回の車室内温度TR(16)を、ユーザに対して車両情報を表示する表示部に出力するための発信用室内温度に設定し、ステップS6へ移行する。この発信用室内温度は、今回の内気センサ51での検出値Trに対して、前15回分の内気センサ51での検出値Trの影響を受けることなる。すなわち、発信用室内温度は、内気センサ51に生ずるノイズや内気センサ51付近の一時的な温度変化による検出値の変動が抑制(平滑化)された値となり、内気センサ51の検出値に対して鈍化した温度(遅れた温度)となる。
【0125】
続くステップS6では、各種空調機器の制御に用いる制御用室内温度を演算する。このステップS6の詳細については、図9のフローチャートに基づいて説明する。
【0126】
ステップS6の処理では、まず、ステップS61にて、車室内の温度が上昇中であるか否かを判定する。すなわち、ステップS5の処理にて制御装置50のRAM等の記憶手段に記憶されたTRNEW(更新後の車室内温度TR(16))が、TROLD(更新前の車室内温度TR(16))よりも高くなっているか否かを判定する。
【0127】
この判定処理の結果、車室内の温度が上昇中(TRNEW>TROLD)であると判定された場合(ステップS61:YES)には、車室内の温度が上昇しているものと判断できるので、ステップS62に移行して、時定数τを通常時に設定する第1の時定数τ1に設定する。そして、ステップS63にて、ステップS62で設定した第1の時定数τ1を用いて、内気センサ51の検出値の変化、すなわち車室内温度TR(16)の変化を鈍化させる遅れ処理を行った後、ステップS7へ移行する。具体的には、ステップS63で行う遅れ処理では、ステップS63中に示す数式を用いて制御用室内温度を算出する。
【0128】
一方、ステップS61の判定処理の結果、車室内の温度が上昇中でない、すなわち、車室内の温度が下降中(TRNEW≦TROLD)であると判定された場合(ステップS61:NO)には、実際の車室内の温度が低下しているものと判断できるので、ステップS64に移行して、空調開始の初期段階であるか否かを判定する。具体的には、ステップS64の処理では、空調開始時(イグニッションスイッチIGをOFFからONに設定した時)の内気センサ51の検出値TR0が、予め設定された基準設定温度(例えば、28℃)以上であるか否かを判定する。
【0129】
この判定処理の結果、空調開始の初期段階でないと判定された場合(ステップS64:NO)には、車室内空調によって車室内の空気が充分に攪拌されて、車室内の温度分布が縮小していると判断できるので、ステップS62の処理に移行する。そして、ステップS62にて時定数τを通常時に設定する第1の時定数τ1に設定し、ステップS63にて遅れ処理を行った後、ステップS7へ移行する。
【0130】
一方、空調開始の初期段階でないと判定された場合(ステップS64:YES)には、車室内空調によって車室内の空気が充分に攪拌されておらず、車室内の温度分布(例えば、天井付近が高温、内気センサ51を設けた部位付近が低温)が拡大していると判断できるので、ステップS65の処理に移行して、通常時に設定する第1の時定数τ1よりも遅れが大きい時定数に設定する。そして、ステップS63にて、ステップS65で設定した時定数τを用いて遅れ処理を行った後、ステップS7へ移行する。
【0131】
具体的にステップS65では、イグニッションスイッチIGがオフからオンに切り替わったときからの経過時間が長いほど、段階的(ステップ的)に時定数が小さくなるようにしている。例えば、図9のステップS65中に示すように、イグニッションスイッチIGがオフからオンに切り替わってから10分経過するまでは、第2の時定数τ2(τ2>τ1)を設定し、10分から15分の間であれば、第3の時定数τ3(τ2>τ3>τ1)を設定する。そして、イグニッションスイッチIGがオフからオンに切り替わってから15分を越えている場合には、時定数τを第1の時定数τ1を設定する。
【0132】
本実施形態の制御用室内温度は、ユーザへ発信するための発信用室内温度に対して遅れ処理を行って算出しているので、ユーザへ発信するための発信用室内温度に対して鈍化した温度(遅れた温度)となる。換言すれば、ステップS5にて算出した発信用室内温度は、ステップS6にて算出した制御用室内温度よりも内気センサ51の変化に対する鈍化度合い(遅れ)が小さくなっている。なお、ステップ5の処理が、本発明の発信用室内温度算出手段に相当し、ステップS6の処理が、本発明の制御用室内温度算出手段に相当している。
【0133】
次のステップS7の処理では、車室内吹出温度の目標吹出温度TAOを算出する。本実施形態では、内気センサ51の検出値に対して遅れ処理を施して算出した制御用室内温度TRCを用いて、車室内へ吹き出す空気の目標吹出温度TAOを算出する。具体的には、目標吹出温度TAOは、下記数式F1により算出することができる。
TAO=Kset×Tset−Kr×TRC−Kam×Tam−Ks×Ts+c…(F1)
ここで、Tsetが車室内温度設定スイッチによって設定される車室内設定温度、TRCがステップ8にて算出した制御用室内温度、Tamが外気センサ52によって検出された外気温、日射センサ53によって検出された日射量である。Kset、Kr、Kam、Ksは、制御ゲインであり、Cは補正用の定数である。
【0134】
このように、TAOを内気センサ51の検出値Trに対して遅れ処理を施して算出した制御用室内温度TRCを用いて算出することで、車室内の気流の影響などによって内気センサ51の検出値がユーザの体感温度等に比較して低下したとしても、TAOの変化が鈍感となり内気センサ51の検出値の変化が空調制御へ反映されることを遅くすることができる。これにより、プレ空調等の即効性が要求される空調運転時において、ユーザの空調要求に応じた空調制御が可能となる。
【0135】
なお、暖房用熱交換器目標温度は、基本的に上述の数式F1にて算出される値となるが、消費電力の抑制のために数式F1にて算出されTAOよりも低い値とする補正が行われる場合もある。
【0136】
次のステップS8〜S20では、空調制御装置50に接続された各種機器の制御状態が決定される。まず、ステップS8では、空調環境状態に応じて、冷房モード、暖房モード、第1除湿モードおよび第2除湿モードの選択およびPTCヒータ37に対する通電有無の決定が行われる。このステップS8の詳細については、図10を用いて説明する。
【0137】
まず、ステップS81では、プレ空調を行っているか否かを判定する。ステップS81にてプレ空調を行っていると判定された場合は、ステップS82へ進み、外気温Tamが−3℃よりも低いか否かを判定する。ステップS82にて外気温Tamが−3℃よりも低いと判定された場合は、ステップS83にてPTCヒータ37への通電の必要があると判定してステップS9へ進む。
【0138】
このように外気温Tamが−3℃よりも低いときにPTCヒータ37への通電が必要であると判定する理由は、外気温Tamが−3℃よりも低いときに冷凍サイクル10にて暖房を行うと、サイクルの高低圧差が大きくなり、サイクル効率(COP)が低下してしまうとともに、室外熱交換器16における冷媒蒸発温度が低くなり、室外熱交換器16に着霜するおそれがあるからである。
【0139】
ステップS82にて外気温Tamが−3℃よりも低くなっていないと判定された場合は、ステップS84へ進み、吹出口モードがフェイスモードであるか否かを判定する。ステップS84にて吹出口モードがフェイスモードであると判定された場合は、ステップS85へ進み、冷房モードを選択してステップS9へ進む。その理由は、後述するステップS11で説明するように、フェイスモードは主に夏季に選択される運転モードだからである。
【0140】
ステップS84にて吹出口モードがフェイスモードでないと判定された場合は、ステップS86へ進み、室内蒸発器26からの吹出空気温度Teの低下に伴って、除湿の必要性が高くなるものとして、暖房モード→第1除湿モード→第2除湿モードの順に選択されて、ステップS9へ進む。
【0141】
一方、ステップS81にてプレ空調を行っていないと判定された場合は、ステップS87へ進み、外気温Tamが−3℃よりも低いか否かを判定する。ステップS87にて外気温Tamが−3℃よりも低いと判定された場合は、ステップS88へ進み、冷房モードを選択してステップS9へ進む。
【0142】
ステップS87にて外気温Tamが−3℃よりも低くなっていないと判定された場合は、ステップS89へ進み、吹出口モードがフェイスモードであるか否かを判定する。ステップS89にて吹出口モードがフェイスモードであると判定された場合は、ステップS90へ進み、冷房モードを選択してステップS9へ進む。その理由はステップS85と同様である。ステップS89にて吹出口モードがフェイスモードでないと判定された場合は、前述のステップS86へ進む。
【0143】
ステップS9では、送風機32により送風される空気の目標送風量を決定する。具体的には、ステップS7にて設定した目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して、送風機32の電動モータに印加するブロワモータ電圧を決定する。
【0144】
より詳細には、本実施形態では、TAOの極低温域(最大冷房域)および極高温域(最大暖房域)でブロワモータ電圧を最大値(約12V)付近の高電圧にして、送風機32の風量を最大風量付近に制御する。また、TAOが極低温域から中間温度域に向かって上昇すると、TAOの上昇に応じてブロワモータ電圧を減少して、送風機32の風量を減少させる。
【0145】
さらに、TAOが極高温域から中間温度域に向かって低下すると、TAOの低下に応じてブロワモータ電圧を減少して、送風機32の風量を減少させる。また、TAOが所定の中間温度域内に入ると、ブロワモータ電圧を最小値(約4V)にして送風機32の風量を最小値にする。
【0146】
ステップS10では、吸込口モード、すなわち内外気切替箱の切替状態を決定する。この吸込口モードも、ステップS7にて設定したTAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して決定する。本実施形態では、基本的に外気を導入する外気モードが優先されるが、TAOが極低温域となって高い冷房性能を得たい場合等に内気を導入する内気モードが選択される。さらに、外気の排ガス濃度を検出する排ガス濃度検出手段を設け、排ガス濃度が予め定めた基準濃度以上となったときに、内気モードを選択するようにしてもよい。
【0147】
ステップS11では、吹出口モードを決定する。この吹出口モードもステップS7にて設定したTAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して決定する。本実施形態では、TAOが低温域から高温域へと上昇するにつれて吹出口モードをフットモード→バイレベルモード→フェイスモードへと順次切り替える。
【0148】
従って、夏季は主にフェイスモード、春秋季は主にバイレベルモード、そして冬季は主にフットモードが選択される。さらに、湿度センサ等の検出値から算出される窓ガラス表面の相対湿度RHWに基づいて、窓ガラスに曇りが発生する可能性が高いと判定された場合に、フットデフロスタモードあるいはデフロスタモードを選択するようにしてもよい。
【0149】
ステップS12では、エアミックスドア38の目標開度SWを上記TAO、蒸発器温度センサ56によって検出された室内蒸発器26からの吹出空気温度Te、加熱器温度に基づいて算出する。
【0150】
ここで、加熱器温度とは、加熱用冷風通路33に配置された加熱手段(ヒータコア36、室内凝縮器12、およびPTCヒータ37)の加熱能力に応じて決定される値であって、一般的には、エンジン冷却水温度Twを採用できる。従って、目標開度SWは、次の数式F2により算出できる。
SW=[(TAO−Te)/(Tw−Te)]×100(%)…(F2)
なお、SW=0(%)は、エアミックスドア38の最大冷房位置であり、冷風バイパス通路34を全開し、加熱用冷風通路33を全閉する。これに対し、SW=100(%)は、エアミックスドア38の最大暖房位置であり、冷風バイパス通路34を全閉し、加熱用冷風通路33を全開する。
【0151】
ステップS13では、圧縮機11の冷媒吐出能力(具体的には、圧縮機11の回転数)を決定する。ここで、圧縮機11の基本的な回転数の決定手法を説明する。例えば、冷房モードでは、ステップS7で決定したTAO等に基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して、室内蒸発器26からの吹出空気温度Teの目標吹出温度TEOを決定する。
【0152】
そして、この目標吹出温度TEOと吹出空気温度Teの偏差En(TEO−Te)を算出し、今回算出された偏差Enから前回算出された偏差En−1を減算した偏差変化率Edot(En−(En−1))とを用いて、予め空調制御装置50に記憶されたメンバシップ関数とルールとに基づいたファジー推論に基づいて、前回の圧縮機回転数fCn−1に対する回転数変化量Δf_Cを求める。
【0153】
また、暖房モード、第1除湿モードおよび第2除湿モードでは、ステップS7で決定した暖房用熱交換器目標温度等に基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して、吐出側冷媒圧力(高圧側冷媒圧力)Pdの目標高圧PDOを決定する。
【0154】
そして、この目標高圧PDOと吐出側冷媒圧力Pdの偏差Pn(PDO−Pd)を算出し、今回算出された偏差Pnから前回算出された偏差Pn−1を減算した偏差変化率Pdot(Pn−(Pn−1))とを用いて、予め空調制御装置50に記憶されたメンバシップ関数とルールとに基づいたファジー推論に基づいて、前回の圧縮機回転数fHn−1に対する回転数変化量Δf_Hを求める。
【0155】
このステップS13のより詳細な制御内容については、図11および図12を用いて説明する。まず、ステップS1305では、冷房モード(COOLサイクル)時の回転数変化量Δf_Cを求める。図11のステップS1305には、ルールとして用いるファジールール表を記載している。このルール表では、上述の偏差Enと偏差変化率Edotに基づいて室内蒸発器26の着霜が防止されるようにΔf_Cが決定される。
【0156】
ステップS1310では、暖房モード(HOTサイクル)、第1除湿モード(DRY_EVAサイクル)および第2除湿モード(DRY_ALLサイクル)時の回転数変化量Δf_Hを求める。図11のステップS1310には、ルールとして用いるファジールール表を記載している。このルール表では、上述の偏差Pnと偏差変化率Pdotに基づいて高圧側冷媒圧力Pdの異常上昇が防止されるようにΔf_Hが決定される。
【0157】
続くステップS1315では、現在の車両用空調装置1の作動がプレ空調としての作動であるか否かを判定する。具体的には、ステップS1にて説明したプレ空調であることを示すフラグがONとなっているか否かを判定する。
【0158】
ステップS1315にてプレ空調としての作動であると判定された場合(S1315:YES)には、ステップS1320に移行して、プレ空調の作動が近距離通信手段である無線端末のスタートスイッチの操作によってなされたか否かを判定する。具体的には、無線端末からの出力信号に基づいてプレ空調の作動を開始する際に設定する無線端末フラグがONであるか否かを設定する。
【0159】
このステップS1320の判定処理にて、無線端末よるプレ空調の作動であると判定された場合(S1320:YES)には、ステップS1325に移行する。ステップS1325では、空調使用許可電力f(TIMER)=2500[W]に設定する。なお、空調使用許可電力f(TIMER)は、車両全体で使用可能な電力のうち、空調用に使用が許可された電力である。
【0160】
次のステップS1330(図12参照)では、ステップS1325にて設定した空調使用許可電力f(TIMER)に応じて、仮の回転数変化量Δf_PREを求める。具体的には、空調機器(圧縮機11、送風機32、送風ファン16a)における消費電力が空調使用許可電力を上回らないように、空調使用許可電力から空調機器における消費電力を減算した値に基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して、Δf_PREを決定する。
【0161】
ここで、本実施形態の制御マップは、ステップS1330中に記載のように、空調使用許可電力から空調機器(圧縮機11、送風機32、送風ファン16a)における消費電力を減算した値の増加に伴って、Δf_PREが増加するように決定する。なお、圧縮機11、送風機32、送風ファン16aにおける消費電力は、現在設定されている回転数に基づいて算出する。
【0162】
一方、ステップS1320(図11参照)の判定処理にて、無線端末以外の手段(操作パネル60、移動体通信手段)によるプレ空調の作動であると判定された場合(S1320:NO)には、ステップS1335に移行する。ステップS1335では、空調使用許可電力f(TIMER)=2100[W]に設定する。すなわち、プレ空調の作動が無線端末以外のスタートスイッチの操作によってなされた場合には、無線端末のスタートスイッチの操作によってなされた場合に比べて、空調使用許可電力が小さくなるように設定する。
【0163】
無線端末は近距離通信手段であり、ユーザが短時間で乗車する可能性が高いため、空調使用許可電力を高めに設定することで、プレ空調時における空調機器の作動制限を緩和して空調の即効性を確保することができる。さらに、室内蒸発器26の温度を速やかに低下させることができるので、室内蒸発器26に付着した凝縮水が乾く際の悪臭の発生を抑制することができる。
【0164】
一方、無線端末以外の手段では、ユーザが短時間で乗車する可能性が低いため、空調使用許可電力を低めに設定することで、プレ空調時における空調機器の消費電力を抑え、車室内の空調を継続することができる。さらに、車両における空調機器の作動音(騒音)を抑制することができるので、ユーザが近くにいない場合に、車両の周囲にいる人に迷惑を掛けてしまう虞も低減することができる。さらに、プレ空調時において、圧縮機11、送風機32、送風ファン16aといった空調機器の高負荷での作動を抑制することができ、空調機器の寿命の向上を図ることもできる。
【0165】
次のステップS1340(図12参照)では、ステップS8で設定された運転モードが冷房モードであるか否かを判定する。この結果、冷房モードであると判定された場合(S1340:YES)には、ステップS1345に移行して、ステップS1305で決定したΔf_CおよびステップS1330で設定したΔf_PREのうち小さいほうの値を今回の回転数変化量Δfに決定する。これにより、空調機器の消費電力が空調使用許可電力を超過してしまうことを抑制できると共に、室内蒸発器26の着霜を防止することができる。
【0166】
一方、ステップS8で設定された運転モードが冷房モードでないと判定された場合(S1340:NO)には、ステップS1350に移行して、ステップS1310で決定したΔf_HおよびステップS1330で設定したΔf_PREのうち小さいほうの値を、今回の回転数変化量Δfに決定する。これにより、空調機器の消費電力が空調使用許可電力を超過してしまうことを抑制できると共に、高圧側冷媒圧力の異常上昇の防止を図ることができる。
【0167】
そして、ステップS1355にて、前回設定した圧縮機11の回転数に、ステップS1345およびステップS1350の何れかで決定された回転数変化量Δfを加算して今回の圧縮機11の回転数を決定する。なお、この圧縮機11の回転数の更新は1秒毎の制御周期で実行される。
【0168】
また、ステップS1315(図11参照)にてプレ空調としての作動でないと判定された場合(S1315:NO)には、ステップS1360(図12参照)に移行して、ステップS8で設定された運転モードが冷房モードであるか否かを判定する。この結果、冷房モードである判定された場合(S1360:YES)には、ステップS1365に移行して、ステップS1305で決定したΔf_Cを今回の回転数変化量Δfに決定する。これにより、室内蒸発器26の着霜を防止することができる。
【0169】
一方、ステップS1360にて、ステップS8で設定された運転モードが冷房モードでないに決定されていないと判定された場合(S1360:NO)には、ステップS1370に移行して、ステップS1310で決定したΔf_Hを今回の回転数変化量Δfに決定する。これにより、高圧側冷媒圧力の異常上昇の防止を図ることができる。
【0170】
そして、ステップS1355にて、前回設定した圧縮機11の回転数に、ステップS1365およびステップS1370の何れかで決定された回転数変化量Δfを加算して今回の圧縮機11の回転数を決定して、ステップS14に移行する。
【0171】
次のステップS14では、PTCヒータ37の作動本数の決定および電熱デフォッガの作動状態の決定が行われる。PTCヒータ37の作動本数は、例えば、ステップS8にてPTCヒータ37への通電の必要があるとされたときに、暖房モード時にエアミックスドア38の目標開度SWが100%となっても、暖房用熱交換器目標温度を得られない場合に、内気温Trと暖房用熱交換器目標温度との差に応じて決定すればよい。
【0172】
また、車室内の湿度および温度から窓ガラスに曇りが発生する可能性が高い場合、あるいは窓ガラスに曇りが発生している場合は、電熱デフォッガを作動させる。
【0173】
ステップS15では、表示部への車両情報の発信処理を行う。具体的には、操作パネル60の表示部に、ステップS5にて算出した発信用温度を含む車室内の温度情報、吹出口モード情報、送風機32の風量情報を表示する。なお、無線端末または移動体通信手段からの要求があった場合には、操作パネル60の表示部にて表示する温度情報等を無線端末や移動体通信手段に向けて出力する。
【0174】
これにより、無線端末または移動体通信手段の表示部に発信用温度を含む車室内の温度情報、吹出口モード情報、送風機32の風量情報が表示される。
【0175】
ステップS16では、上述のステップS8で決定された運転モードに応じて、冷媒回路切替手段である各電磁弁13〜24の作動状態を決定する。
【0176】
具体的には、図13の図表に示すように、運転モードが冷房モードに決定されている場合は、全ての電磁弁を非通電状態とする。また、暖房モードに決定されている場合は、電気式三方弁13、高圧電磁弁20、低圧電磁弁17を通電状態とし、残りの電磁弁21、24を非通電状態とする。
【0177】
また、第1除湿モードに決定されている場合は、電気式三方弁13、低圧電磁弁17、除湿電磁弁24および熱交換器遮断電磁弁21を通電状態とし、高圧電磁弁20を非通電状態とする。また、第2除湿モードに決定されている場合は、電気式三方弁13、低圧電磁弁17、除湿電磁弁24を通電状態とし、残りの電磁弁20、21を非通電状態とする。
【0178】
つまり、本実施形態では、いずれの運転モードの冷媒回路に切り替えた場合であっても、各電磁弁13〜24のうち少なくとも1つの電磁弁に対する電力の供給が停止されるように構成されている。これにより、本実施形態の各電磁弁13〜24の合計消費電力を低減できるようにしている。
【0179】
ステップS17では、上述のステップS8〜S16で決定された制御状態が得られるように、空調制御装置50より各種機器61、13、17、20、21、24、16a、32、62、63、64に対して制御信号および制御電圧が出力される。例えば、圧縮機11の電動モータ11b用のインバータ61に対しては、圧縮機11の回転数がステップS11で決定された回転数となるように制御信号が出力される。
【0180】
ステップS18では、制御周期τの間待機し、制御周期τの経過を判定するとステップS3へ戻る。なお、本実施形態は制御周期τを250msとしている。これは、車室内の空調制御は、エンジン制御等と比較して遅い制御周期であってもその制御性に悪影響を与えないからである。さらに、車両内における空調制御のための通信量を抑制して、エンジン制御等のように高速制御を行う必要のある制御系の通信量を充分に確保することができる。
【0181】
本実施形態の車両用空調装置1は、以上の如く制御されるので、制御ステップS8にて選択された運転モードに応じて以下のように作動する。
【0182】
(a)冷房モード(COOLサイクル:図1参照)
冷房モードでは、空調制御装置50が全ての電磁弁を非通電状態とするので、電気式三方弁13が室内凝縮器12の冷媒出口側と第1三方継手15の1つの冷媒流入出口との間を接続し、低圧電磁弁17が閉弁し、高圧電磁弁20が開弁し、熱交換器遮断電磁弁21が開弁し、除湿電磁弁24が閉弁する。
【0183】
これにより、図1の矢印に示すように、圧縮機11→室内凝縮器12→電気式三方弁13→第1三方継手15→室外熱交換器16→第2三方継手19→高圧電磁弁20→第2逆止弁22→温度式膨張弁27の可変絞り機構部27b→第4三方継手25→室内蒸発器26→温度式膨張弁27の感温部27a→第5三方継手28→アキュムレータ29→圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式冷凍サイクルが構成される。
【0184】
この冷房モードの冷媒回路では、電気式三方弁13から第1三方継手15へ流入した冷媒は、低圧電磁弁17が閉弁しているので低圧電磁弁17側へ流出することはない。また、室外熱交換器16から第2三方継手19へ流入した冷媒は、除湿電磁弁24が閉弁しているので熱交換器遮断電磁弁21側へ流出することはない。また、温度式膨張弁27の可変絞り機構部27bから流出した冷媒は、除湿電磁弁24が閉弁しているので除湿電磁弁24側へ流出することはない。さらに、温度式膨張弁27の感温部27aから第5三方継手28へ流入した冷媒は、第2逆止弁22の作用によって第2逆止弁22側に流出することはない。
【0185】
従って、圧縮機11にて圧縮された冷媒は、室内凝縮器12にて室内蒸発器26通過後の送風空気(冷風)と熱交換して冷却され、さらに、室外熱交換器16にて外気と熱交換して冷却され、温度式膨張弁27にて減圧膨張される。温度式膨張弁27にて減圧された低圧冷媒は室内蒸発器26へ流入し、送風機32から送風された送風空気から吸熱して蒸発する。これにより、室内蒸発器26を通過する送風空気が冷却される。
【0186】
この際、前述の如くエアミックスドア38の開度が調整されるので、室内蒸発器26にて冷却された送風空気の一部(または全部)が冷風バイパス通路34から混合空間35へ流入し、室内蒸発器26にて冷却された送風空気の一部(または全部)が加熱用冷風通路33へ流入してヒータコア36、室内凝縮器12、ヒータコア36を通過する際に再加熱されて混合空間35へ流入する。
【0187】
これにより、混合空間35にて混合されて車室内へ吹き出す送風空気の温度が所望の温度に調整されて、車室内の冷房を行うことができる。なお、冷房モードでは、送風空気の除湿能力も高いが、暖房能力は殆ど発揮されない。
【0188】
また、室内蒸発器26から流出した冷媒は、温度式膨張弁27の感温部61aを介して、アキュムレータ29へ流入する。アキュムレータ29にて気液分離された気相冷媒は、圧縮機11に吸入されて再び圧縮される。
【0189】
さらに、この冷房モードの冷媒回路では、図1の記載から明らかなように、冷凍サイクル10の冷媒流路内の異なる2箇所の部位が互いに連通している。換言すると、冷房モードの冷媒回路では、冷凍サイクル10を構成する冷媒流路内に他の部位と連通しない閉塞回路が形成されていない。
【0190】
(b)暖房モード(HOTサイクル:図2参照)
暖房モードでは、空調制御装置50が電気式三方弁13、高圧電磁弁20、低圧電磁弁17を通電状態とし、残りの電磁弁21、24を非通電状態とするので、電気式三方弁13が室内凝縮器12の冷媒出口側と固定絞り14の冷媒入口側との間を接続し、低圧電磁弁17が開弁し、高圧電磁弁20が閉弁し、熱交換器遮断電磁弁21が開弁し、除湿電磁弁24が閉弁する。
【0191】
これにより、図2の矢印に示すように、圧縮機11→室内凝縮器12→電気式三方弁13→固定絞り14→第3三方継手23→熱交換器遮断電磁弁21→第2三方継手19→室外熱交換器16→第1三方継手15→低圧電磁弁17→第1逆止弁18→第5三方継手28→アキュムレータ29→圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式冷凍サイクルが構成される。
【0192】
この暖房モードの冷媒回路では、固定絞り14から第3三方継手23へ流入した冷媒は、除湿電磁弁24が閉弁しているので除湿電磁弁24側へ流出することはない。また、熱交換器遮断電磁弁21から第2三方継手19へ流入した冷媒は、高圧電磁弁20が閉弁しているので高圧電磁弁20側へ流出することはない。また、室外熱交換器16から第1三方継手15へ流入した冷媒は、電気式三方弁13が室内凝縮器12の冷媒出口側と固定絞り14の冷媒入口側との間を接続しているので電気式三方弁13側へ流出することはない。第1逆止弁18から第5三方継手28へ流入した冷媒は、除湿電磁弁24が閉じているので温度式膨張弁27側へ流出することはない。
【0193】
従って、圧縮機11にて圧縮された冷媒は、室内凝縮器12にて送風機32から送風された送風空気と熱交換して冷却される。これにより、室内凝縮器12を通過する送風空気が加熱される。この際、エアミックスドア38の開度が調整されるので、冷房モードと同様に、混合空間35にて混合されて車室内へ吹き出す送風空気の温度が所望の温度に調整されて、車室内の暖房を行うことができる。なお、暖房モードでは、送風空気の除湿能力は発揮されない。
【0194】
また、室内凝縮器12から流出した冷媒は、固定絞り14にて減圧されて室外熱交換器16へ流入する。室外熱交換器16へ流入した冷媒は、送風ファン16aから送風された車室外空気から吸熱して蒸発する。室外熱交換器16から流出した冷媒は、低圧電磁弁17、第1逆止弁18等を介して、アキュムレータ29へ流入する。アキュムレータ29にて気液分離された気相冷媒は、圧縮機11に吸入されて再び圧縮される。
【0195】
(c)第1除湿モード(DRY_EVAサイクル:図3参照)
第1除湿モードでは、空調制御装置50が電気式三方弁13、低圧電磁弁17、熱交換器遮断電磁弁21および除湿電磁弁24を通電状態とし、高圧電磁弁20を非通電状態とするので、電気式三方弁13が室内凝縮器12の冷媒出口側と固定絞り14の冷媒入口側との間を接続し、低圧電磁弁17が開弁し、高圧電磁弁20が開弁し、熱交換器遮断電磁弁21が閉弁し、除湿電磁弁24が開弁する。
【0196】
これにより、図3の矢印に示すように、圧縮機11→室内凝縮器12→電気式三方弁13→固定絞り14→第3三方継手23→除湿電磁弁24→第4三方継手25→室内蒸発器26→温度式膨張弁27の感温部27a→第5三方継手28→アキュムレータ29→圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式冷凍サイクルが構成される。
【0197】
この第1除湿モードの冷媒回路では、固定絞り14から第3三方継手23へ流入した冷媒は、熱交換器遮断電磁弁21が閉弁しているので熱交換器遮断電磁弁21側へ流出することはない。また、除湿電磁弁24から第4三方継手25へ流入した冷媒は、第2逆止弁22の作用によって温度式膨張弁27の可変絞り機構部27b側へ流出することはない。また、温度式膨張弁27の感温部27aから第5三方継手28へ流入した冷媒は、第1逆止弁18の作用によって第1逆止弁18側へ流出することはない。
【0198】
従って、圧縮機11にて圧縮された冷媒は、室内凝縮器12にて室内蒸発器26通過後の送風空気(冷風)と熱交換して冷却される。これにより、室内凝縮器12を通過する送風空気が加熱される。室内凝縮器12から流出した冷媒は、固定絞り14にて減圧されて室内蒸発器26へ流入する。
【0199】
室内蒸発器26へ流入した低圧冷媒は、送風機32から送風された送風空気から吸熱して蒸発する。これにより、室内蒸発器26を通過する送風空気が冷却されて除湿される。従って、室内蒸発器26にて冷却されて除湿された送風空気は、ヒータコア36、室内凝縮器12、ヒータコア36を通過する際に再加熱されて、混合空間35から車室内へ吹き出される。すなわち、車室内の除湿を行うことができる。なお、第1除湿モードでは、送風空気の除湿能力を発揮できるが、暖房能力は小さい。
【0200】
また、室内蒸発器26から流出した冷媒は、温度式膨張弁27の感温部61aを介して、アキュムレータ29へ流入する。アキュムレータ29にて気液分離された気相冷媒は、圧縮機11に吸入されて再び圧縮される。
【0201】
(d)第2除湿モード(DRY_ALLサイクル:図4参照)
第2除湿モードでは、空調制御装置50が電気式三方弁13、低圧電磁弁17、除湿電磁弁24を通電状態とし、残りの電磁弁20、21を非通電状態とするので、電気式三方弁13が室内凝縮器12の冷媒出口側と固定絞り14の冷媒入口側との間を接続し、低圧電磁弁17が開弁し、高圧電磁弁20が開弁し、熱交換器遮断電磁弁21が開弁し、除湿電磁弁24が開弁する。
【0202】
これにより、図4の矢印に示すように、圧縮機11→室内凝縮器12→電気式三方弁13→固定絞り14→第3三方継手23→熱交換器遮断電磁弁21→第2三方継手19→室外熱交換器16→第1三方継手15→低圧電磁弁17→第1逆止弁18→第5三方継手28→アキュムレータ29→圧縮機11の順に冷媒が循環するとともに、圧縮機11→室内凝縮器12→電気式三方弁13→固定絞り14→第3三方継手23→除湿電磁弁24→第4三方継手25→室内蒸発器26→温度式膨張弁27の感温部27a→第5三方継手28→アキュムレータ29→圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式冷凍サイクルが構成される。
【0203】
つまり、第2除湿モードでは、固定絞り14から第3三方継手23へ流入した冷媒が熱交換器遮断電磁弁21側および除湿電磁弁24側の双方に流出して、第1逆止弁18から第5三方継手28へ流入した冷媒および温度式膨張弁27の感温部27aから第5三方継手28へ流入した冷媒の双方が第5三方継手28にて合流してアキュムレータ29側へ流出する。
【0204】
なお、この第2除湿モードの冷媒回路では、室外熱交換器16から第1三方継手15へ流入した冷媒は、電気式三方弁13が室内凝縮器12の冷媒出口側と固定絞り14の冷媒入口側との間を接続しているので電気式三方弁13側へ流出することはない。また、除湿電磁弁24から第4三方継手25へ流入した冷媒は、第2逆止弁22の作用によって温度式膨張弁27の可変絞り機構部27b側へ流出することはない。
【0205】
従って、圧縮機11にて圧縮された冷媒は、室内凝縮器12にて室内蒸発器26通過後の送風空気(冷風)と熱交換して冷却される。これにより、室内凝縮器12を通過する送風空気が加熱される。室内凝縮器12から流出した冷媒は、固定絞り14にて減圧された後、第3三方継手23にて分岐されて室外熱交換器16および室内蒸発器26へ流入する。
【0206】
室外熱交換器16へ流入した冷媒は、送風ファン16aから送風された車室外空気から吸熱して蒸発する。室外熱交換器16から流出した冷媒は、低圧電磁弁17、第1逆止弁18等を介して、第5三方継手28へ流入する。室内蒸発器26へ流入した低圧冷媒は、送風機32から送風された送風空気から吸熱して蒸発する。これにより、室内蒸発器26を通過する送風空気が冷却されて除湿される。
【0207】
従って、室内蒸発器26にて冷却されて除湿された送風空気は、ヒータコア36、室内凝縮器12、ヒータコア36を通過する際に再加熱されて、混合空間35から車室内へ吹き出される。この際、第2除湿モードでは、第1除湿モードに対して、室外熱交換器16にて吸熱した熱量を室内凝縮器12にて放熱することができるので、送風空気を第1除湿モードよりも高温に加熱できる。すなわち、第2除湿モードでは、高い暖房能力を発揮させながら除湿能力も発揮させる除湿暖房を行うことができる。
【0208】
また、室内蒸発器26から流出した冷媒は、第5三方継手28へ流入して室外熱交換器16から流出した冷媒と合流し、アキュムレータ29へ流入する。アキュムレータ29にて気液分離された気相冷媒は、圧縮機11に吸入されて再び圧縮される。
【0209】
さらに、上記の如く、冷房モードの冷媒回路、暖房モードの冷媒回路、および第1除湿モードの冷媒回路は、いずれも圧縮機11に吸入される冷媒を室外熱交換器16と室内熱交換器(具体的には、室内凝縮器12、室内蒸発器26)とのうちいずれか一方に流通させる単独熱交換器モードの冷媒回路であり、第2除湿モードの冷媒回路は、圧縮機11に吸入される冷媒を室外熱交換器16と室内熱交換器(具体的には、室内蒸発器26)との双方に流通させる複合熱交換器モードの冷媒回路であると表現することもできる。
【0210】
本実施形態の車両用空調装置は、以上の如く作動するので、以下のような優れた効果を発揮することができる。
【0211】
まず、制御ステップS5にて説明したように、ユーザに対して車両情報を知らせるために使用する車室内の温度情報である発信用室内温度を、複数回(本実施形態では16回)分の内気センサ51の検出値Trを平均した平均値としている。このため、発信用室内温度は、現在の内気センサ51での検出値Trに対して、前15回分の内気センサ51での検出値Trの影響を受けることとなり、内気センサ51の検出値Trの変化に対して鈍化した温度情報となる。
【0212】
従って、ユーザに対して、内気センサ51に生ずるノイズや内気センサ51付近の一時的な温度変化による検出値の変動が抑制(平滑化)された値を発信用室内温度として発信することができる。
【0213】
また、制御ステップS6にて説明したように、本実施形態では、発信用室内温度を各種空調機器の制御に用いる制御用室内温度に対して鈍化度合い、すなわち遅れが小さい温度情報としている。
【0214】
ここで、冷房モードによって車室内の空調を開始した際の発信用室内温度および制御用室内温度の温度変化について図14に基づいて説明する。なお、空調開始直前における車室内の平均的な温度が55℃程度となっているものとする。
【0215】
図14に示すように、車室内の空調の初期段階(例えば、0分〜1分)において、制御用室内温度は、時定数の影響によって空調開始直前における車室内の平均的な温度よりも10度程度低い温度となる。このため、制御用室内温度をユーザに発信したとしても、ユーザに対して車室内の温度が高いことを充分に伝えることができない。
【0216】
また、空調を開始した後、車室内の空気が攪拌されて、車室内の温度分布が縮小した段階(例えば、5分〜10分)において、制御用室内温度は、空調の初期段階からの変化が小さく、ユーザに対して車室内の空調の効果や商品としての価値(商品性)を充分に伝えることができない。
【0217】
これに対して、発信用室内温度は、制御用室内温度よりも鈍化度合いが小さいので、制御用室内温度よりも早く、空調開始直前における車室内の平均的な温度に近い温度となる。このため、発信用室内温度をユーザに発信する場合は、制御用室内温度をユーザに発信する場合に比べて、ユーザに対して車室内の温度が高いことを充分に伝えることができる。
【0218】
また、空調を開始した後、車室内の空気が攪拌されて、車室内の温度分布が縮小した段階(例えば、5分〜10分)において、空調の初期段階からの変化が大きく、ユーザに対して車室内の空調の効果や商品としての価値(商品性)を充分に伝えることができる。
【0219】
このように、本実施形態では、空調機器の制御に用いる制御用室内温度よりも、内気センサ51の検出値の変化に対する鈍化度合いが小さい温度をユーザに対して発信するので、ユーザに対して発信する車室内の温度情報と実際にユーザが体感する車室内の温度との乖離を抑制することができる。
【0220】
この結果、実際に車室内の温度とユーザに発信される車室内の温度情報との乖離によって生ずるユーザの違和感を低減できると共に、即効性のある空調を行った際の車室内の温度変化を適切にユーザに伝えることができる。
【0221】
また、内気センサ51とは別に、発信用室内温度を検出する温度センサを設けることなく、制御用室内温度および発信用室内温度といった使用目的の異なる温度情報を算出することができる。このため、車両用空調装置1の部品点数を増加させる必要がなく、コスト面でも有利となる。
【0222】
本実施形態では、内気センサ51の検出値の変化を鈍化させる遅れ処理によって算出した制御用室内温度を用いて各種空調機器を制御するので、制御ハンチングを抑制することができる。さらに、実際の車室内の温度よりも高めの温度となり、目標吹出温度TAOが高めに算出されるので、例えば、送風機32の送風量や圧縮機11の回転数を高めに設定することができる。この結果、ユーザの空調要求に応じた空調制御が可能となる。
【0223】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図15および図16に基づいて説明する。図15は、第1実施形態の図8に対応する制御フローを示すフローチャートである。なお、本実施形態では、図8と同様または均等な部分についての説明を省略、または簡略化して説明する。
【0224】
第1実施形態では、車室内の温度情報を具体的な数値で表示するようにしているのに対して、本実施形態では、車室内の温度情報を所定の温度範囲を示す温度レベルを用いて、にて表示するようにしている。
【0225】
本実施形態の発信用温度情報の発信態様について説明すると、図15に示すように、本実施形態では、ステップS53にて今回の車室内温度TR(16)を設定した後、ステップS55に移行する。ステップS55では、内気センサ51で検出した情報を加工した温度情報である車室内温度TR(16)が低下するに伴って、予め定めた温度範囲を示す温度レベルが段階的(ステップ的)に小さくなるようにしている。
【0226】
具体的には、現在の車室内の温度を示すTR(16)が上昇する温度上昇過程において、TR(16)が低温側温度レベルの温度範囲の上限値以上となった際に、低温側温度レベルから高温側温度レベルに温度レベルを一段上げる。一方で、TR(16)が下降する温度下降過程において、TR(16)が高温側温度レベルの温度範囲の下限値以下となった際に、高温側温度レベルから低温側温度レベルに温度レベルを一段下げる。
【0227】
例えば、図15のステップS55中に示すように、現在の車室内の温度を示すTR(16)が低下する温度下降過程では、TR(16)が44℃より高ければ温度レベルを最大の「10」に設定し、TR(16)が44℃まで低下すると温度レベルを一段低い「9」に変化させる。そして、TR(16)が5℃低下する毎に温度レベルを一段ずつ段階的に低下させ、TR(16)が4℃まで低下すると温度レベルを最低の「1」とする。
【0228】
逆に、現在の車室内の温度を示すTR(16)が上昇する温度上昇過程では、T(16)が6℃より低ければ温度レベルを最低の「1」に設定し、T(16)が6℃まで上昇すると温度レベルを一段高い「2」に変化させる。そして、T(16)が5℃上昇する毎に温度レベルを一段ずつ段階的に低下させ、TR(16)が46℃まで上昇すると温度レベルを最大の「10」とする。なお、温度レベルが10段階に設定された場合を例に説明したが、温度レベルの段階は適宜設定することが可能である。
【0229】
また、本実施形態では、一段階異なる温度レベルのうち、高い温度範囲を示す高温側温度レベルから低い温度範囲を示す低温側温度レベルに下げる際の閾値(高温側温度レベルの温度範囲の下限値)と、低温側温度レベルから高温側レベルに上げる際の閾値(低温側温度レベルの温度範囲の上限値)とに差(ヒステリシス域)を設けている。
【0230】
このように、ヒステリシス域を設けることにより、TR(16)がハンチング(上下に変動)した際であっても、温度レベルが頻繁に変化してしまうことを抑制することができる。
【0231】
なお、温度上昇過程であるのか温度下降過程であるのを判別できない車室内の空調開始時において、TR(16)が低温側温度レベルの温度範囲の上限値よりも高く、高温側温度レベルの温度範囲の下限値よりも低いときには、高温側温度レベルに設定するようにしている。これにより、空調開始時には、高い温度範囲を示す温度レベルが選択され易くなる。
【0232】
そして、ステップS56に移行して、今回の車室内温度TR(16)に対応する温度レベルを今回の温度レベルに設定して、ステップS5の処理を終了する。なお、ステップ5の処理が、本発明の温度レベル設定手段に相当している。
【0233】
次に、ステップS15の車両情報の発信処理において、ステップS56にて設定された温度レベルを、操作パネル60に対して発信する。なお、ステップS56にて設定された温度レベルは、必要に応じて、無線端末、移動体通信手段に対して発信される。
【0234】
そして、操作パネル60の表示部に、空調制御装置50から発信された温度レベルに対応する現在の車室内の温度範囲(発信用温度範囲)を表示(摂氏で表示)する。
【0235】
この際、操作パネル60の表示部では、TR(16)が低下する温度低下過程においては、温度レベルが低温側へ一段階低下する際に表示する発信用温度範囲の上限値を、温度レベルが低温側へ一段階変化する際のTR(16)よりも高い値で表示する。すなわち、TR(16)よりも高い値を含む温度範囲をユーザに対して表示するようにしている。
【0236】
例えば、図15のステップS55中に示すように、TR(16)が低下する温度下降過程において、温度レベルの「9」として設定された温度範囲は、「39℃〜44℃」であるのに対して、実際に表示部に表示される温度範囲である発信用温度範囲を「40℃〜45℃」とする(S55中の紙面左側に示す発信用温度範囲参照)。
【0237】
なお、表示部では、TR(16)が上昇する温度上昇過程においては、温度レベルが高温側へ一段階変化する際に表示する発信用温度範囲の下限値を、温度レベルが高温側へ一段階変化する際のTR(16)よりも低い値で表示する。すなわち、TR(16)よりも低い値を含む温度範囲をユーザに対して表示するようにしている。
【0238】
以上説明した本実施形態によると、内気センサ51の検出値が、車室内に温度分布が生じた際にユーザが体感する車室内の温度よりも低い温度となったとしても、表示部にて表示される発信用温度範囲が、内気センサ51の検出値に対して高めに表示され易くなる。従って、ユーザに対して発信する車室内の温度情報と実際にユーザが体感する車室内の温度との乖離を抑制することができる。
【0239】
また、今回の温度レベルを設定する際の閾値を温度上昇過程と温度低下過程とで差(ヒステリシス域)を設けているので、内気センサ51の検出値やTR(16)がハンチングした際に温度レベルが頻繁に変化することを抑制することができ、ユーザに違和感を与えてしまうことを抑制することができる。
【0240】
さらに、各種空調機器(圧縮機11、送風機32等)の作動開始時において、TR(16)が、所定差を設けた閾値の間となる場合は、高い温度範囲を示す温度レベルに設定するので、操作パネル60に表示される発信用温度範囲が、内気センサ51の検出値に対して高めに表示され易くなる。この結果、ユーザに対して実際の車室内の温度に近い温度情報を発信することが可能となる。
【0241】
ここで、図15では、ユーザに対して表示する発信用温度範囲の温度表記を摂氏で表示するようにしているが、図16に示すように、ユーザに対して表示する発信用温度範囲の温度表記を華氏に変更して表示するようにしてもよい。
【0242】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について図17および図18に基づいて説明する。図17は、第2実施形態の図17に対応する制御フローを示すフローチャートである。本実施形態では、第1、第2実施形態と同様または均等な部分についての説明を省略、または簡略化して説明する。
【0243】
車室内への日射量が多い場合に車両の停車期間が長いと、車室内における天井付近が高温に熱せられるので、車室内における天井付近(ユーザが乗車した際の顔付近)の温度が、内気センサ51が配置された部位(内装部材の内部)よりも高くなるといったように、車室内の温度分布が拡大し易くなる傾向がある。
【0244】
このため、本実施形態では、車両の停車期間が長い場合には、車室内への日射量を考慮して温度レベルを設定するようにしている。本実施形態の制御ステップS5について説明すると、図17に示すように、まず、ステップS57にて、今回の車室内温度を示すTR(16)の補正量TR(TS)を算出する補正量算出処理を行う。このステップS57の詳細な制御処理については、図18を用いて説明する。
【0245】
まず、ステップS57では、ステップS571にて、空調開始時(IG:OFF→ON)であるか否か、すなわち空調を停止(IGオフ)から再開(オン)したか否かを判定する。この結果、空調開始時と判定された場合(S571:YES)には、ステップS572に移行する。そして、ステップS572にて、前回空調が停止(IGオフ)されてから所定時間(本実施形態では60分)以上経過しているか否かを判定する。なお、所定時間は、60分に限らず適宜設定することができる。
【0246】
ステップS572の判定処理の結果、前回空調が停止(IGオフ)されてから60分以上経過していると判定された場合(S572:YES)には、車室内への日射量の影響によって車室内の温度分布が拡大していると判断できるので、ステップS573に移行して、車室内への日射量(日射センサ53の検出値)に応じて初期補正量TR(TS)iniを設定する。ここで、ステップS573では、車室内への日射量が多いほど、初期補正量TR(TS)iniが大きくなるようにしている。
【0247】
一方、ステップS572の判定処理の結果、前回空調が停止(IGオフ)されてから60分以上経過していないと判定された場合(S572:NO)には、車室内への日射量の影響が小さいと判断できるので、ステップS574に移行して、初期補正量TR(TS)iniを日射量によらず「0」に設定する。
【0248】
また、ステップS571の判定処理にて、空調開始時でない、すなわち、空調が継続して実行されている判定された場合(S571:NO)には、ステップS575に移行して、時間補正量f(TIMER)を算出する。空調が継続して実行されている場合は、空調によって車室内の空気が攪拌されて、徐々に車室内の温度分布が縮小するため、空調開始からの時間経過に伴って時間補正量f(TIMER)を徐々に小さくする。
【0249】
そして、ステップS576にて、ステップS573またはステップS574にて設定された初期補正量TR(TS)ini、およびステップS575にて設定された時間補正量f(TIMER)に基づいて今回の補正量TR(TS)を算出する。
【0250】
具体的には、今回の補正量TR(TS)は、TR(TS)iniとf(TIMER)とを乗算した値、および「0」のうち大きいほうの値を、今回の補正量TR(TS)に設定する。なお、空調開始時には、f(TIMER)の初期値として「1」が設定される。
【0251】
次に、図17のステップS51に戻り、内気センサ51の検出値Trの平均値TR(16)newを算出する。そして、ステップS52の判定処理にて平均値TR(16)newを算出する時間(4秒)が経過したと判定されると、ステップS58に移行して、ステップS51にて算出した平均値TR(16)newにステップ57にて算出した補正量TR(TS)を加算した値と今回の車室内温度TR(16)に設定する。そして、ステップS55、S56にて今回の温度レベルを設定する。
【0252】
以上説明した本実施形態によれば、車両停車中における車室内の日射量の補正量TR(TS)を考慮して今回の温度レベルを設定しているので、車室内への日射量の増大に応じて拡大する車室内の温度分布を考慮した温度情報をユーザに発信することができる。
【0253】
このため、内気センサ51の検出値が、車室内に温度分布が生じた際にユーザが体感する車室内の温度よりも低い温度となったとしても、ユーザに対して実際の車室内の温度に近い温度情報を発信することが可能となる。従って、ユーザに対して発信する車室内の温度情報と実際にユーザが体感する車室内の温度との乖離を抑制することができる。
【0254】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について図19に基づいて説明する。図19は、第3実施形態の図18に対応する制御フローを示すフローチャートである。図19では、図18と同様または均等な部分についての説明を省略、または簡略化して説明する。
【0255】
第3実施形態では、空調開始時において、前回空調が停止されてから60分以上経過している場合に、車室内への日射量を考慮した初期補正量TR(TS)iniを設定するようにしている。
【0256】
これに対して、本実施形態では、空調開始時(IG:OFF→ON)において、前回空調が停止(IGオフ)されてからの経過時間の長さに応じて、車室内への日射量を考慮した初期補正量TR(TS)iniを算出するようにしている。
【0257】
具体的には、本実施形態では、ステップS571の処理において、空調開始時と判定された場合(S571:YES)には、ステップS577にて、日射量補正割合f1(TIMER)を設定する。日射量補正割合f1(TIMER)は、ステップS577中に示すように、前回IGがオフされてからの経過時間に応じて徐々に小さくなるように設定される。
【0258】
次のステップ573にて、空調開始時の日射量に基づいて、仮の初期補正量TR(TS)´を設定する。そして、ステップS578にて、仮の初期補正量TR(TS)´と日射量補正割合f1(TIMER)とを乗算して、今回の初期補正量TR(TS)iniを算出する。
【0259】
また、ステップS571の判定処理にて、空調開始時でない、すなわち、空調が継続して実行されている判定された場合(S571:NO)には、ステップS575に移行して、時間補正量f(TIMER)を算出する。空調開始後は、空調によって車室内の空気が攪拌されて、徐々に車室内の温度分布が縮小するため、空調開始からの時間経過に伴って時間補正量f(TIMER)を徐々に小さくする。
【0260】
そして、ステップS576にて、ステップS578にて設定された初期補正量TR(TS)ini、およびステップS575にて設定された時間補正量f(TIMER)に基づいて今回の補正量TR(TS)を算出する。具体的には、今回の補正量TR(TS)は、TR(TS)iniとf(TIMER)とを乗算した値、および「0」のうち大きいほうの値を、今回の補正量TR(TS)に設定する。
【0261】
本実施形態のように、空調開始してからの経過時間の長さに応じて、車室内への日射量を考慮した補正量TR(TS)を算出しても、第3実施形態と同様の効果を奏することできる。
【0262】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各請求項に記載した範囲を逸脱しない限り、各請求項の記載文言に限定されず、当業者がそれらから容易に置き換えられる範囲にも及び、かつ、当業者が通常有する知識に基づく改良を適宜付加することができる。例えば、以下のように種々変形可能である。
【0263】
(1)上述の各実施形態では、プレ空調の実行の有無によらず、ステップS5の発信用室内温度情報の算出処理、ステップS6の制御用室内温度を算出するようにしているが、例えば、プレ空調の実行時にステップS5およびステップS6の処理を実行するようにしてもよい。
【0264】
これによると、プレ空調を実行する際に、車室内の温度分布を考慮して、発信用室内温度を補正するので、内気センサ51の検出値が、車室内に温度分布が生じた際にユーザが体感する車室内の温度よりも低い温度となったとしても、ユーザに対して実際の車室内の温度に近い温度情報を発信することが可能となる。
【0265】
従って、ユーザに対して発信する車室内の温度情報と実際にユーザが体感する車室内の温度との乖離を抑制することができ、ユーザが適切にプレ空調の効果を確認することが可能となる。
【0266】
(2)上述の第2〜第4実施形態のように、制御ハンチングの抑制を図るためには、高い温度範囲を示す高温側温度レベルから低い温度範囲を示す低温側温度レベルに下げる際の閾値と、低温側温度レベルから高温側レベルに上げる際の閾値とにヒステリシス域を設けることが好ましいが、例えば、制御ハンチングが無視できる程度に小さいような場合には、ヒステリシス域を無くしてもよい。
【0267】
(3)上述の第2〜第4実施形態では、内気センサ51から出力された情報を加工(平均化、補正)した温度情報であるTR(16)の低下に伴って、温度レベルを低下させるようにしているが、内気センサ51から出力された温度の低下に伴って温度レベルを低下させるようにしてもよい。
【0268】
(4)上述の第2〜第4実施形態では、高い値の温度レベルが高い温度範囲を示すようにしているが、低い値の温度レベルが高い温度範囲を示すようにしてもよい。例えば、最も低い温度範囲を示す温度レベルを「10」とし、最も高い温度範囲を示す温度レベルを「1」としてもよい。この場合、TR(16)の低下に伴って、温度レベルを増加させることとなる。
【0269】
(5)上述の第3、第4実施形態では、第2実施形態と同様にステップS5にて、今回の車室内温度TR(16)に応じて温度レベルを設定しているが、これに限定されず、例えば、第1実施形態の如く、今回の車室内温度TR(16)を発信用室内温度としてもよい。
【0270】
(6)上述の第3、第4実施形態では、ステップS575において、時間補正量f(TIMER)を車室内の空調を開始してからの経過時間に応じて徐々に小さくしているが、経過時間に応じて段階的小さくするようにしてもよい。
【0271】
(7)上述の各実施形態では、冷房モード、暖房モード、第1除湿モードおよび第2除湿モードの冷媒回路を切替可能に構成された冷凍サイクル10を採用した例を説明したが、本実施形態では、冷媒回路の切替機能を有していない冷凍サイクル10を採用してもよい。例えば、圧縮機11、室外熱交換器16、温度式膨張弁27、室内蒸発器26をこの順で環状に接続した冷凍サイクル10を採用してもよい。つまり、上述の各実施形態における冷房モードを実現可能な構成としてもよい。
【0272】
このように、送風機車室内へ送風される送風空気を冷却する冷房モードを実現する機能に特化された冷凍サイクル10を採用する車両用空調装置1であっても、上述の各実施形態に記載された制御態様を適用することで、上述の各実施形態に記載された効果を得ることができる。
【0273】
(8)上述の各実施形態では、冷媒回路を切り替えることによって車室内へ送風される送風空気を加熱あるいは冷却する冷凍サイクル10を採用した例を説明したが、もちろん、圧縮機11吐出冷媒を放熱させる放熱器を室内熱交換器として、冷媒を蒸発させる蒸発器を室外熱交換器として送風空気を加熱するヒートポンプサイクルを採用してもよい。
【0274】
(9)上述の実施形態では、本発明の車両用空調装置1を、プラグインハイブリッド車両の車両走行用の駆動力について詳細を述べていないが、本発明の車両用空調装置1は、エンジンEGおよび走行用電動モータの双方から直接駆動力を得て走行可能な、いわゆるパラレル型のハイブリッド車両に適用してもよいし、エンジンEGを発電機80の駆動源として用い、発電された電力をバッテリ81に蓄え、さらに、バッテリ81に蓄えられた電力を供給されることによって作動する走行用電動モータから駆動力を得て走行する、いわゆるシリアル型のハイブリッド車両に適用してもよい。
【0275】
(10)上述の各実施形態は、可能な範囲で適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0276】
11 圧縮機(空調手段)
32 送風機(空調手段)
51 内気センサ(室内温度検出手段)
60 操作パネル(表示手段)
S5 発信用温度算出手段、温度レベル設定手段
S6 制御用温度算出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内を空調する空調手段(11、32)と、
前記車室内に温度分布が生じた際に、前記車室内において相対的に低い温度となる部位に配置され、当該部位の温度を検出する室内温度検出手段(51)と、
前記空調手段(11、32)を制御するために使用する車室内の温度情報である制御用室内温度を算出する制御用室内温度算出手段(S6)と、
ユーザに対して車両情報を知らせるために使用する前記車室内の温度情報である発信用室内温度を算出する発信用室内温度算出手段(S5)と、を備え、
前記制御用室内温度算出手段(S6)は、前記室内温度検出手段(51)で検出した検出値の変化を鈍化させる遅れ処理を施すことで前記制御用室内温度を算出し、
前記発信用室内温度算出手段(S5)は、前記制御用室内温度よりも前記室内温度検出手段(51)で検出した検出値の変化に対する鈍化度合いが小さくなるように前記発信用室内温度を算出することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
車室内を空調する空調手段(11、32)と、
前記車室内に温度分布が生じた際に、前記車室内において相対的に低い温度となる部位に配置され、当該部位の温度を検出する室内温度検出手段(51)と、
前記室内温度検出手段(51)で検出する検出値の低下に伴って、予め定めた温度範囲を示す温度レベルを段階的に変化させ、前記室内温度検出手段(51)で検出する検出値に対応する前記温度レベルを設定する温度レベル設定手段(S5)と、
前記温度レベル設定手段(S5)にて設定した前記温度レベルに基づいて、ユーザに対して前記車室内の温度情報を知らせるための発信用温度範囲を表示する表示手段(60)と、を備え、
前記表示手段(60)には、前記温度レベルが低温側へ一段階変化する際に表示する前記発信用温度範囲の上限値が、前記温度レベルが低温側へ一段階変化する際に前記室内温度検出手段(51)で検出する検出値よりも高い値で表示されていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項3】
一段階異なる前記温度レベルのうち、高い温度範囲を示す高温側温度レベルから低い温度範囲を示す低温側温度レベルに変化させる際の第1の閾値が、前記低温側温度レベルから前記高温側温度レベルに変化させる際の第2の閾値よりも低い値に設定されており、
前記温度レベル設定手段(S5)は、
前記空調手段(11、32)の作動開始時において、前記室内温度検出手段(51)で検出する検出値が、前記第1の閾値よりも大きく、前記第2の閾値よりも小さいときは、前記温度レベルを前記高温側温度レベルに設定することを特徴とする請求項2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
車室内を空調する空調手段(11、32)と、
前記車室内に温度分布が生じた際に前記車室内において相対的に低い温度となる箇所に配置され、当該箇所の温度を検出する室内温度検出手段(51)と、
ユーザに対して車両情報を知らせるために使用する前記車室内の温度情報である発信用室内温度を、前記室内温度検出手段(51)で検出した検出値よりも高い温度となるように補正する発信用室内温度算出手段(S5)と、を備え、
前記発信用室内温度算出手段(S5)は、前記車室内における日射量の増加に応じて前記室内温度検出手段(51)で検出した検出値に対する補正量を増大させることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項5】
前記発信用室内温度算出手段(S5)は、前記空調手段(11、32)の作動を停止してから再開する際に、前記空調手段(11、32)の停止から再開までの経過時間の長さに応じて、前記室内温度検出手段(51)で検出した検出値に対する補正量を増大させることを特徴とする請求項4に記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記発信用室内温度算出手段(S5)は、前記空調手段(11、32)の作動が再開された後、前記空調手段(11、32)の作動を再開してからの経過時間の長さに応じて、前記室内温度検出手段(51)で検出した検出値に対する補正量を減少させることを特徴とする請求項4または5に記載の車両用空調装置。
【請求項7】
ユーザが車両に乗り込む前に前記車室内の空調を開始するプレ空調を実行可能な車両用空調装置であって、
前記車室内に温度分布が生じた際に前記車室内において相対的に低い温度となる箇所に配置され、当該箇所の温度を検出する室内温度検出手段(51)と、
ユーザに対して車両情報を知らせるために使用する前記車室内の温度情報である発信用室内温度を算出する発信用室内温度算出手段(S5)と、を備え、
前記発信用室内温度算出手段(S5)は、前記プレ空調を実行する際に、前記室内温度検出手段(51)で検出した検出値よりも高い温度となるように前記発信用室内温度を補正することを特徴とする車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−76507(P2012−76507A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−221225(P2010−221225)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】