車両用空調装置
【課題】内燃機関から出力される駆動力が走行用電動モータから出力される駆動力よりも大きくなる運転モードを有するプラグインハイブリッド車両に適用されて、充分な暖房を実現可能な車両用空調装置を提供する。
【解決手段】走行用電動モータから出力されるモータ側駆動力が内燃機関EGから出力される内燃機関側駆動力よりも大きくなるEV運転モード時に、内燃機関EGの回転数を増加させて車室内送風空気を加熱する熱源としての内燃機関EGの冷却水の温度を上昇させる際に、内燃機関側駆動力がモータ側駆動力よりも大きくなるHV運転モードよりも回転数の増加度合を高くする。これにより、冷却水の温度を上昇させにくいEV運転モードであっても、冷却水の温度を充分に上昇させて、充分な暖房を実現することができる。
【解決手段】走行用電動モータから出力されるモータ側駆動力が内燃機関EGから出力される内燃機関側駆動力よりも大きくなるEV運転モード時に、内燃機関EGの回転数を増加させて車室内送風空気を加熱する熱源としての内燃機関EGの冷却水の温度を上昇させる際に、内燃機関側駆動力がモータ側駆動力よりも大きくなるHV運転モードよりも回転数の増加度合を高くする。これにより、冷却水の温度を上昇させにくいEV運転モードであっても、冷却水の温度を充分に上昇させて、充分な暖房を実現することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン冷却水を熱源として車室内へ送風させる送風空気を加熱する車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジン(内燃機関)および走行用電動モータから走行用の駆動力を得るハイブリッド車両が知られており、特許文献1には、この種のハイブリッド車両に適用される車両用空調装置が開示されている。この特許文献1の車両用空調装置では、車室内の暖房を行う際に、エンジンの冷却水を熱源として車室内へ送風される送風空気を加熱している。
【0003】
ところが、この種のハイブリッド車両では、車両燃費向上のために、車両の停車時あるいは走行時であってもエンジンを停止させることがある。このため、車両用空調装置が車室内の暖房を行う際に、冷却水の温度が暖房用の熱源として充分な温度まで上昇していないことがある。
【0004】
そこで、特許文献1の車両用空調装置では、走行用の駆動力を出力させるためにエンジンを作動させる必要がない走行条件であっても、冷却水の温度が暖房用の熱源として充分な温度に上昇していない場合は、駆動力制御装置に対してエンジンの作動要求信号を出力して、冷却水の温度を暖房用の熱源として充分な温度となるまで上昇させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−174042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、昨今のハイブリッド車両には、車両停止時に外部電源(商用電源)から車両に搭載されたバッテリに充電することのできる、いわゆるプラグインハイブリッド車両と呼ばれるものがある。
【0007】
この種のプラグインハイブリッド車両では、車両停車時に外部電源からバッテリに充電しておくことによって、走行開始時のようにバッテリの蓄電残量が予め定めた走行用基準残量以上になっているときは、主に走行用電動モータから走行用の駆動力を得るEV運転モードで走行し、バッテリの蓄電残量が走行用基準残量よりも低くなったときには、主にエンジンから走行用の駆動力を得るHV運転モードで走行する。
【0008】
より詳細には、EV運転モードは、主に走行用電動モータが出力する駆動力によって車両を走行させ、車両走行負荷が高負荷となった際にはエンジンを作動させて走行用電動モータを補助する運転モードである。そのため、EV運転モードでは、エンジンから出力される駆動力に対する走行用電動モータから出力される駆動力の駆動力比が大きくなる。
【0009】
一方、HV運転モードは、主にエンジンが出力する駆動力によって車両を走行させ、車両走行負荷が高負荷となった際には走行用電動モータを作動させてエンジンを補助する運転モードである。そのため、HV運転モードでは、上述の駆動力比が小さくなる。
【0010】
そのため、特許文献1の車両用空調装置をプラグインハイブリッド車両に適用して、EV運転モード時に冷却水の温度を暖房用の熱源として充分な温度まで昇温させるためにエンジンを作動させたとしても、EV運転モード時には、もともと駆動力比が大きくエンジンの出力が小さくなるため、冷却水の温度を暖房用の熱源として充分な温度となるまで上昇させることができないことがある。
【0011】
その結果、特許文献1の車両用空調装置をプラグインハイブリッド車両に適用しても、車室内へ送風される送風空気を充分に加熱することができず、充分な暖房を実現することができなくなってしまうことが懸念される。
【0012】
上記点に鑑みて、本発明は、内燃機関から出力される駆動力が走行用電動モータから出力される駆動力よりも大きくなる運転モードを有するプラグインハイブリッド車両に適用される車両用空調装置において、充分な暖房を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、車両走行用の駆動力を出力する駆動源として、走行用電動モータおよび内燃機関(EG)を備える車両に適用され、さらに、車両の運転モードとして、内燃機関(EG)から出力される内燃機関側駆動力が走行用電動モータから出力されるモータ側駆動力よりも大きくなる第1運転モード、および、モータ側駆動力が内燃機関側駆動力よりも大きくなる第2運転モードを有する車両に適用される車両用空調装置であって、
内燃機関(EG)の冷却水を熱源として車室内へ送風される送風空気を加熱する加熱手段(36)と、車室内の暖房を行う際に、内燃機関(EG)の作動を制御する駆動力制御手段(70)に対して、内燃機関(EG)の回転数を増加させる要求信号を出力する要求信号出力手段(50a)とを備え、
要求信号出力手段(50a)は、要求信号として、第2運転モード時に増加させた回転数よりも第1運転モード時に増加させた前記回転数が高くなる信号を出力することを特徴とする。
【0014】
これによれば、車室内の暖房を行う際に、要求信号出力手段(50a)が、第1運転モード時に増加させる回転数よりも、モータ側駆動力が内燃機関側駆動力よりも大きくなって冷却水の温度が上昇しにくい第2運転モード時に増加させる回転数の方が高くなる要求信号を出力するので、第2運転モード時にも、冷却水の温度を暖房用の熱源として充分な温度となるまで上昇させることができる。
【0015】
その結果、加熱手段(36)にて車室内へ送風される送風空気を充分に加熱して、車室内の充分な暖房を実現することができる。
【0016】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の車両用空調装置において、さらに、外気温(Tam)を検出する外気温検出手段(52)を備え、要求信号出力手段(50a)は、要求信号として、外気温(Tam)の低下に伴って回転数を増加させる信号を出力することを特徴とする。
【0017】
これによれば、要求信号出力手段(50a)が、外気温(Tam)の低下に伴って内燃機関(EG)の回転数を増加させる要求信号を出力するので、低外気温時のように高い暖房能力が要求される際に、加熱手段(36)に高い加熱能力を発揮させることができる。さらに、外気温(Tam)が比較的高い場合には、回転数の増加度合を縮小させることができ、内燃機関(EG)の省燃費化を図ることができる。
【0018】
請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載の車両用空調装置において、さらに、乗員の操作によって車室内の目標温度(Tset)を設定する目標温度設定手段を備え、要求信号出力手段(50a)は、要求信号として、目標温度(Tset)の上昇に伴って回転数を増加させる信号を出力することを特徴とする。
【0019】
これによれば、要求信号出力手段(50a)が、目標温度(Tset)の上昇に伴って、内燃機関(EG)の回転数を増加させる要求信号を出力するので、乗員が高い車室内温度を要求している際に、加熱手段(36)に高い加熱能力を発揮させることができる。さらに、乗員が比較的低い車室内温度を要求している際には、回転数の増加度合を縮小させることができ、内燃機関(EG)の省燃費化を図ることができる。
【0020】
請求項4に記載の発明では、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、さらに、車室内の少なくとも一部の温度を上昇させる補助加熱手段(37、90)を備え、要求信号出力手段(50a)は、要求信号として、補助加熱手段(37、90)の作動時には、補助加熱手段(37、90)の非作動時よりも回転数を増加させる信号を出力することを特徴とする。
【0021】
これによれば、要求信号出力手段(50a)が、補助加熱手段(37、90)の作動時には、補助加熱手段(37、90)の非作動時よりも回転数を増加させる要求信号を出力するので、乗員の温感が補助加熱手段(37、90)によって補助される場合のように高い暖房能力が要求される際に、加熱手段(36)に高い加熱能力を発揮させることができる。
【0022】
請求項5に記載の発明では、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、さらに、乗員の操作によって、車室内の空調に必要とされる動力の省動力化を要求する省動力化要求信号を出力させる省動力化要求手段を備え、要求信号出力手段(50a)は、要求信号として、省動力化要求手段の投入時には、省動力化要求手段の非投入時よりも回転数を低下させる信号を出力することを特徴とする。
【0023】
これによれば、要求信号出力手段(50a)が、省動力化要求手段の投入時には、省動力化要求手段の非投入時よりも回転数を低下させるに要求信号を出力するので、乗員が省動力を要求している際に、内燃機関(EG)の省燃費化を図ることができる。さらに、省燃費意識の高い乗員にとっては、多少の暖房能力の低下は不快感を与えることもない。
【0024】
また、請求項6に記載の発明では、車両走行用の駆動力を出力する駆動源として、走行用電動モータおよび内燃機関(EG)を備える車両に適用され、さらに、車両の運転モードとして、内燃機関(EG)から出力される内燃機関側駆動力が走行用電動モータから出力されるモータ側駆動力よりも大きくなる第1運転モード、および、モータ側駆動力が内燃機関側駆動力よりも大きくなる第2運転モードを有する車両に適用される車両用空調装置であって、
内燃機関(EG)の冷却水を熱源として車室内へ送風される送風空気を加熱する加熱手段(36)と、第2運転モード時に車室内の暖房を行う際に、内燃機関(EG)および走行用電動モータの作動を制御する駆動力制御手段(70)に対して、内燃機関側駆動力に対するモータ側駆動力の駆動力比を低下させる要求信号を出力する要求信号出力手段(50a)とを備えることを特徴とする。
【0025】
これによれば、車室内の暖房を行う際に、要求信号出力手段(50a)が、第1運転モード時よりも駆動力比が小さくなって冷却水の温度を上昇させにくい第2運転モード時に、駆動力比を低下させる要求信号を出力する。この際、車両走行用の駆動力を変化させないためには、駆動力制御手段(70)が内燃機関側駆動力を増大させることになり、第2運転モード時にも、冷却水の温度を暖房用の熱源として充分な温度となるまで上昇させることができる。
【0026】
その結果、加熱手段(36)にて車室内へ送風される送風空気を充分に加熱して、車室内の充分な暖房を実現することができる。
【0027】
請求項7に記載の発明では、請求項6に記載の車両用空調装置において、さらに、外気温(Tam)を検出する外気温検出手段(52)を備え、要求信号出力手段(50a)は、要求信号として、外気温(Tam)の低下に伴って駆動力比を低下させる信号を出力することを特徴とする。
【0028】
これによれば、要求信号出力手段(50a)が、外気温(Tam)の低下に伴って駆動力比を低下させる要求信号を出力するので、モータ側駆動力が低下する。従って、駆動力制御手段(70)が内燃機関側駆動力を増大させるので、低外気温時のように高い暖房能力が要求される際に、加熱手段(36)に高い加熱能力を発揮させることができる。
【0029】
さらに、外気温(Tam)が比較的高い場合には、駆動力比の低下度合を縮小させることができ、内燃機関(EG)の省燃費化を図ることができる。
【0030】
請求項8に記載の発明では、請求項6または7に記載の車両用空調装置において、さらに、乗員の操作によって車室内の目標温度(Tset)を設定する目標温度設定手段を備え、要求信号出力手段(50a)は、要求信号として、目標温度の上昇に伴って駆動力比を低下させる信号であることを特徴とする。
【0031】
これによれば、要求信号出力手段(50a)が、目標温度(Tset)の上昇に伴って、駆動力比を低下させる要求信号を出力するので、モータ側駆動力が増加する。従って、駆動力制御手段(70)が内燃機関側駆動力を増大させるので、乗員が高い車室内温度を要求している際に、加熱手段(36)に高い加熱能力を発揮させることができる。さらに、乗員が比較的低い車室内温度を要求している際には、内燃機関(EG)の省燃費化を図ることができる。
【0032】
請求項9に記載の発明では、請求項6ないし8のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、さらに、車室内の少なくとも一部の温度を上昇させる補助加熱手段(37、90)を備え、要求信号出力手段(50a)は、要求信号として、補助加熱手段(37、90)の作動時には、補助加熱手段(37、90)の非作動時よりも駆動力比を低下させる信号を出力することを特徴とする。
【0033】
これによれば、要求信号出力手段(50a)が、補助加熱手段(37、90)の作動時には、駆動力比を低下させる要求信号を出力する。従って、駆動力制御手段(70)が内燃機関側駆動力を増大させるので、乗員の温感が補助加熱手段(37、90)によって補助される場合の高い暖房能力が要求される際に、加熱手段(36)に高い加熱能力を発揮させることができる。
【0034】
請求項10に記載の発明では、請求項6ないし9のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、さらに、乗員の操作によって、車室内の空調に必要とされる動力の省動力化を要求する省動力化要求信号を出力させる省動力化要求手段を備え、要求信号出力手段(50a)は、要求信号として、省動力化要求手段の投入時には、省動力化要求手段の非投入時よりも駆動力比を増加させる信号を出力することを特徴とする。
【0035】
これによれば、要求信号出力手段(50a)が、補助加熱手段(37、90)の作動時には、駆動力比を増加させる要求信号を出力するので、駆動力制御手段(70)が内燃機関側駆動力を増大させない。従って、乗員が省動力を要求している際に、内燃機関(EG)の省燃費化を図ることができる。さらに、省燃費意識の高い乗員にとっては、多少の暖房能力の低下は不快感を与えることもない。
【0036】
また、請求項11に記載の発明では、車両走行用の駆動力を出力する駆動源として、走行用電動モータおよび内燃機関(EG)を備える車両に適用され、さらに、車両の運転モードとして、内燃機関(EG)から出力される内燃機関側駆動力が走行用電動モータから出力されるモータ側駆動力よりも大きくなる第1運転モード、および、モータ側駆動力が内燃機関側駆動力よりも大きくなる第2運転モードを有する車両に適用される車両用空調装置であって、
内燃機関(EG)の冷却水を熱源として車室内へ送風される送風空気を加熱する加熱手段(36)と、第2運転モード時に車室内の暖房を行う際に、予め定めた所定条件が成立したときに内燃機関(EG)および走行用電動モータの作動を制御する駆動力制御手段(70)に対して、第1運転モードでの運転に切り替えることを要求する要求信号を出力する要求信号出力手段(50a)とを備えることを特徴とする。
【0037】
これによれば、要求信号出力手段(50a)が、車室内の暖房を行う際に、予め定めた所定条件が成立したときに内燃機関(EG)および走行用電動モータの作動を制御する駆動力制御手段(70)に対して、内燃機関側駆動力がモータ側駆動力よりも大きくなる第1運転モードでの運転に切り替えるので、冷却水の温度を暖房用の熱源として充分な温度となるまで上昇させることができる。
【0038】
その結果、加熱手段(36)にて車室内へ送風される送風空気を充分に加熱して、車室内の充分な暖房を実現することができる。
【0039】
なお、本請求項における所定条件とは、車両用空調装置に高い暖房能力が要求される条件とすればよい。例えば、請求項12に記載された発明のように、外気温(Tam)を検出する外気温検出手段(52)を備え、所定条件が成立したときとは、外気温(Tam)が予め定めた基準外気温以下となったときとしてもよい。
【0040】
また、請求項13に記載された発明のように、乗員の操作によって車室内の目標温度(Tset)を設定する目標温度設定手段を備え、所定条件が成立したときとは、目標温度(Tset)が予め定めた基準目標温度以上となったときとしてもよい。
【0041】
また、請求項14に記載された発明のように、車室内の少なくとも一部の温度を上昇させる補助加熱手段(37、90)を備え、所定条件が成立したときとは、補助加熱手段(37、90)が作動しているときとしてもよい。
【0042】
また、請求項15に記載された発明のように、乗員の操作によって、車室内の空調に必要とされる動力の省動力化を要求する省動力化要求信号を出力させる省動力化要求手段を備え、所定条件が成立したときとは、省動力化要求手段によって省動力化が要求されていないときとしてもよい。
【0043】
さらに、請求項11における所定条件とは、車両用空調装置に高い防曇能力が要求される条件とすればよい。すなわち、請求項16に記載された発明のように、車両窓ガラス(W)近傍の湿度を検出する湿度検出手段を備え、所定条件が成立したときとは、湿度検出手段によって検出された湿度が予め定めた基準湿度以上となったときとしてもよい。
【0044】
また、請求項17に記載された発明のように、少なくとも車両窓ガラス(W)に向けて送風空気を吹き出すデフロスタ吹出口(26)を含む複数の吹出口(25、26、27)から吹き出される風量割合を切り替えることによって、複数の吹出口モードを切り替える吹出口モード切替手段(24a、25a、26a)を備え、所定条件が成立したときとは、吹出口モード切替手段(24a、25a、26a)が、デフロスタ吹出口(26)から送風空気を吹き出すデフロスタモードに切り替えたときとしてもよい。
【0045】
さらに、請求項18に記載の発明のように、具体的に、補助加熱手段は、乗員が着座するシートの温度を上昇させるシート加熱手段(90)であってもよいし、請求項19に記載の発明のように、車両窓ガラス(W)を加熱する窓ガラス加熱手段であってもよい。
【0046】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】第1実施形態の車両用空調装置の全体構成図である。
【図2】第1実施形態の車両用空調装置の電気制御部を示すブロック図である。
【図3】第1実施形態のPTCヒータの回路図である。
【図4】第1実施形態の車両用空調装置の制御処理を示すフローチャートである。
【図5】第1実施形態の車両用空調装置の制御処理の要部を示すフローチャートである。
【図6】第1実施形態の車両用空調装置の制御処理の別の要部を示すフローチャートである。
【図7】第1実施形態の車両用空調装置の制御処理の別の要部を示すフローチャートである。
【図8】第1実施形態の車両用空調装置の制御処理の別の要部を示すフローチャートである。
【図9】第1実施形態の運転モードの決定状態を示す図表である。
【図10】第2実施形態の車両用空調装置の制御処理の要部を示すフローチャートである。
【図11】第2実施形態の車両用空調装置の制御処理の要部を示すフローチャートである。
【図12】第3実施形態の車両用空調装置の制御処理の要部を示すフローチャートである。
【図13】第4実施形態の車両用空調装置の制御処理の要部を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0048】
(第1実施形態)
以下、図面を用いて本発明の第1実施形態を説明する。図1は、本実施形態の車両用空調装置1の全体構成図であり、図2は、車両用空調装置1の電気制御部の構成を示すブロック図である。本実施形態では、この車両用空調装置1を、内燃機関(エンジン)EGおよび走行用電動モータから車両走行用の駆動力を得るハイブリッド車両に適用している。
【0049】
本実施形態のハイブリッド車両は、車両停車時に外部電源(商用電源)から供給された電力をバッテリ81に充電することのできるプラグインハイブリッド車両として構成されている。
【0050】
このプラグインハイブリッド車両は、車両走行開始前の車両停車時に外部電源からバッテリ81に充電しておくことによって、走行開始時のようにバッテリ81の蓄電残量SOCが予め定めた走行用基準残量以上になっているときには、主に走行用電動モータの駆動力によって走行する運転モードとなる。以下、この運転モードをEV運転モードという。また、EV運転モードは特許請求の範囲に記載された第2運転モードに対応している。
【0051】
一方、車両走行中にバッテリ81の蓄電残量SOCが走行用基準残量よりも低くなっているときには、主にエンジンEGの駆動力によって走行する運転モードとなる。以下、この運転モードをHV運転モードという。また、HV運転モードは特許請求の範囲に記載された第1運転モードに対応している。
【0052】
より詳細には、EV運転モードは、主に走行用電動モータが出力する駆動力によって車両を走行させる運転モードであるが、車両走行負荷が高負荷となった際にはエンジンEGを作動させて走行用電動モータを補助する。つまり、走行用電動モータから出力される走行用の駆動力(モータ側駆動力)がエンジンEGから出力される走行用の駆動力(内燃機関側駆動力)よりも大きくなる運転モードである。
【0053】
換言すると、内燃機関側駆動力に対するモータ側駆動力の駆動力比(モータ側駆動力/内燃機関側駆動力)が、少なくとも0.5より小さくなっている運転モードであると表現することもできる。
【0054】
一方、HV運転モードは、主にエンジンEGが出力する駆動力によって車両を走行させる運転モードであるが、車両走行負荷が高負荷となった際には走行用電動モータを作動させてエンジンEGを補助する。つまり、内燃機関側駆動力がモータ側駆動力よりも大きくなる運転モードである。換言すると、駆動力比(モータ側駆動力/内燃機関側駆動力)が、少なくとも0.5より大きくなっている運転モードであると表現することもできる。
【0055】
本実施形態のプラグインハイブリッド車両では、このようにEV運転モードとHV運転モードとを切り替えることによって、車両走行用の駆動力をエンジンEGのみから得る通常の車両に対してエンジンEGの燃料消費量を抑制して、車両燃費を向上させている。また、このようなEV運転モードとHV運転モードとの切り替え、および、駆動力比の制御は、後述する駆動力制御装置70によって制御される。
【0056】
さらに、エンジンEGから出力される駆動力は、車両走行用として用いられるのみならず、発電機80を作動させるためにも用いられる。そして、発電機80にて発電された電力および外部電源から供給された電力は、バッテリ81に蓄えることができ、バッテリ81に蓄えられた電力は、走行用電動モータのみならず、車両用空調装置1を構成する電動式構成機器をはじめとする各種車載機器に供給できる。
【0057】
次に、本実施形態の車両用空調装置1の詳細構成を説明する。本実施形態の車両用空調装置1は、図1に示す冷凍サイクル10、室内空調ユニット30、図2に示す空調制御装置50、シート空調装置90等を備えている。まず、室内空調ユニット30は、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置されて、その外殻を形成するケーシング31内に送風機32、蒸発器15、ヒータコア36、PTCヒータ37等を収容したものである。
【0058】
ケーシング31は、車室内に送風される送風空気の空気通路を形成しており、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)にて成形されている。ケーシング31内の送風空気流れ最上流側には、内気(車室内空気)と外気(車室外空気)とを切替導入する内外気切替手段としての内外気切替箱20が配置されている。
【0059】
より具体的には、内外気切替箱20には、ケーシング31内に内気を導入させる内気導入口21および外気を導入させる外気導入口22が形成されている。さらに、内外気切替箱20の内部には、内気導入口21および外気導入口22の開口面積を連続的に調整して、ケーシング31内へ導入させる内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる内外気切替ドア23が配置されている。
【0060】
従って、内外気切替ドア23は、ケーシング31内に導入される内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる吸込口モードを切り替える風量割合変更手段を構成する。より具体的には、内外気切替ドア23は、内外気切替ドア23用の電動アクチュエータ62によって駆動され、この電動アクチュエータ62は、後述する空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0061】
また、吸込口モードとしては、内気導入口21を全開とするとともに外気導入口22を全閉としてケーシング31内へ内気を導入する内気モード、内気導入口21を全閉とするとともに外気導入口22を全開としてケーシング31内へ外気を導入する外気モード、さらに、内気モードと外気モードとの間で、内気導入口21および外気導入口22の開口面積を連続的に調整することにより、内気と外気の導入比率を連続的に変化させる内外気混入モードがある。
【0062】
内外気切替箱20の空気流れ下流側には、内外気切替箱20を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する送風手段である送風機32(ブロア)が配置されている。この送風機32は、遠心多翼ファン(シロッコファン)を電動モータにて駆動する電動送風機であって、空調制御装置50から出力される制御電圧によって回転数(送風量)が制御される。従って、この電動モータは、送風機32の送風能力変更手段を構成している。
【0063】
送風機32の空気流れ下流側には、蒸発器15が配置されている。蒸発器15は、その内部を流通する冷媒と送風機32から送風された送風空気とを熱交換させて、送風空気を冷却する冷却用熱交換器として機能するものである。具体的には、蒸発器15は、圧縮機11、凝縮器12、気液分離器13および膨張弁14等とともに、蒸気圧縮式の冷凍サイクル10を構成している。
【0064】
圧縮機11は、エンジンルーム内に配置され、冷凍サイクル10において冷媒を吸入し、圧縮して吐出するものであり、吐出容量が固定された固定容量型圧縮機構11aを電動モータ11bにて駆動する電動圧縮機として構成されている。電動モータ11bは、インバータ61から出力される交流電圧によって、その作動(回転数)が制御される交流モータである。
【0065】
また、インバータ61は、後述する空調制御装置50から出力される制御信号に応じた周波数の交流電圧を出力する。そして、この回転数制御によって、圧縮機11の冷媒吐出能力が変更される。従って、電動モータ11bは、圧縮機11の吐出能力変更手段を構成している。
【0066】
凝縮器12は、ボンネット内に配置されて、内部を流通する冷媒と、室外送風機としての送風ファン12aから送風された車室外空気(外気)とを熱交換させることにより、圧縮機11吐出冷媒を凝縮させる室外熱交換器である。送風ファン12aは、空調制御装置50から出力される制御電圧によって稼働率、すなわち、回転数(送風空気量)が制御される電動式送風機である。
【0067】
気液分離器13は、凝縮器12にて凝縮された冷媒を気液分離して余剰冷媒を蓄えるとともに、液相冷媒のみを下流側に流すレシーバである。膨張弁14は、気液分離器13から流出した液相冷媒を減圧膨張させる減圧手段である。蒸発器15は、膨張弁14にて減圧膨張された冷媒を蒸発させて、冷媒に吸熱作用を発揮させる室内熱交換器である。これにより、蒸発器15は、送風空気を冷却する冷却用熱交換器として機能する。
【0068】
また、ケーシング31内において、蒸発器15の空気流れ下流側には、蒸発器15通過後の空気を流す加熱用冷風通路33、冷風バイパス通路34といった空気通路、並びに、加熱用冷風通路33および冷風バイパス通路34から流出した空気を混合させる混合空間35が形成されている。
【0069】
加熱用冷風通路33には、蒸発器15通過後の空気を加熱するためのヒータコア36およびPTCヒータ37が、送風空気流れ方向に向かってこの順に配置されている。ヒータコア36は、エンジンEGを冷却するエンジン冷却水(以下、単に冷却水という。)と蒸発器15通過後の送風空気とを熱交換させて、蒸発器15通過後の送風空気を加熱する加熱用熱交換器である。
【0070】
具体的には、ヒータコア36とエンジンEGは、冷却水配管によって接続されて、ヒータコア36とエンジンEGとの間を冷却水が循環する冷却水回路40が構成されている。そして、この冷却水回路40には、冷却水を循環させるための冷却水ポンプ40aが配置されている。この冷却水ポンプ40aは、空調制御装置50から出力される制御電圧によって回転数(冷却水循環流量)が制御される電動式の水ポンプである。
【0071】
PTCヒータ37は、PTC素子(正特性サーミスタ)を有し、このPTC素子に電力が供給されることによって発熱して、ヒータコア36通過後の空気を加熱する補助加熱手段としての電気ヒータである。なお、本実施形態のPTCヒータ37を作動させるために必要な消費電力は、冷凍サイクル10の圧縮機11を作動させるために必要な消費電力よりも少ない。
【0072】
より具体的には、このPTCヒータ37は、図3に示すように、複数(本実施形態では、3本)のPTCヒータ37a、37b、37cから構成されている。なお、図3は、本実施形態のPTCヒータ37の電気的接続態様を示す回路図である。
【0073】
図3に示すように、各PTCヒータ37a、37b、37cの正極側はバッテリ81側に接続され、負極側は各PTCヒータ37a、37b、37cが有する各スイッチ素子SW1、SW2、SW3を介して、グランド側へ接続されている。各スイッチ素子SW1、SW2、SW3は、各PTCヒータ37a、37b、37cが有する各PTC素子h1、h2、h3の通電状態(ON状態)と非通電状態(OFF状態)とを切り替えるものである。
【0074】
さらに、各スイッチ素子SW1、SW2、SW3の作動は、空調制御装置50から出力される制御信号によって、独立して制御される。従って、空調制御装置50は、各スイッチ素子SW1、SW2、SW3の通電状態と非通電状態とを独立に切り替えることによって、各PTCヒータ37a、37b、37cのうち、通電状態となり加熱能力を発揮するものを切り替えて、PTCヒータ37全体としての加熱能力を変化させることができる。
【0075】
一方、冷風バイパス通路34は、蒸発器15通過後の空気を、ヒータコア36およびPTCヒータ37を通過させることなく、混合空間35に導くための空気通路である。従って、混合空間35にて混合された送風空気の温度は、加熱用冷風通路33を通過する空気および冷風バイパス通路34を通過する空気の風量割合によって変化する。
【0076】
そこで、本実施形態では、蒸発器15の空気流れ下流側であって、加熱用冷風通路33および冷風バイパス通路34の入口側に、加熱用冷風通路33および冷風バイパス通路34へ流入させる冷風の風量割合を連続的に変化させるエアミックスドア39を配置している。
【0077】
従って、エアミックスドア39は、混合空間35内の空気温度(車室内へ送風される送風空気の温度)を調整する温度調整手段を構成する。より具体的には、エアミックスドア39は、エアミックスドア用の電動アクチュエータ63によって駆動され、この電動アクチュエータ63は、空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0078】
さらに、ケーシング31の送風空気流れ最下流部には、混合空間35から空調対象空間である車室内へ温度調整された送風空気を吹き出す吹出口24〜26が配置されている。この吹出口24〜26としては、具体的に、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すフェイス吹出口24、乗員の足元に向けて空調風を吹き出すフット吹出口25、および、車両前面窓ガラス内側面に向けて空調風を吹き出すデフロスタ吹出口26が設けられている。
【0079】
また、フェイス吹出口24、フット吹出口25、およびデフロスタ吹出口26の空気流れ上流側には、それぞれ、フェイス吹出口24の開口面積を調整するフェイスドア24a、フット吹出口25の開口面積を調整するフットドア25a、デフロスタ吹出口26の開口面積を調整するデフロスタドア26aが配置されている。
【0080】
これらのフェイスドア24a、フットドア25a、デフロスタドア26aは、吹出口モードを切り替える吹出口モード切替手段を構成するものであって、図示しないリンク機構を介して、吹出口モードドア駆動用の電動アクチュエータ64に連結されて連動して回転操作される。なお、この電動アクチュエータ64も、空調制御装置50から出力される制御信号によってその作動が制御される。
【0081】
また、吹出口モードとしては、フェイス吹出口24を全開してフェイス吹出口24から車室内乗員の上半身に向けて空気を吹き出すフェイスモード、フェイス吹出口24とフット吹出口25の両方を開口して車室内乗員の上半身と足元に向けて空気を吹き出すバイレベルモード、フット吹出口25を全開するとともにデフロスタ吹出口26を小開度だけ開口して、フット吹出口25から主に空気を吹き出すフットモード、およびフット吹出口25およびデフロスタ吹出口26を同程度開口して、フット吹出口25およびデフロスタ吹出口26の双方から空気を吹き出すフットデフロスタモードがある。
【0082】
さらに、乗員が後述する操作パネル60のスイッチをマニュアル操作することによって、デフロスタ吹出口を全開してデフロスタ吹出口から車両フロント窓ガラス内面に空気を吹き出すデフロスタモードとすることもできる。
【0083】
また、本実施形態の車両用空調装置1では、図示しない電熱デフォッガを備えている。電熱デフォッガは、車室内窓ガラスの内部あるいは表面に配置された電熱線であって、窓ガラスを加熱することで防曇あるいは窓曇り解消を行う窓ガラス加熱手段である。この電熱デフォッガについても空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動を制御できるようになっている。
【0084】
さらに、本実施形態の車両用空調装置1では、乗員が着座する座席の表面温度を上昇させる補助加熱手段としてのシート空調装置90を備えている。具体的には、このシート空調装置90は、座席表面に埋め込まれた電熱線で構成され、電力を供給されることによって発熱するシート加熱手段である。
【0085】
そして、室内空調ユニット10の各吹出口24〜26にから吹き出される空調風によって車室内の暖房が不十分となり得る際に作動させて乗員の暖房感を補う機能を果たす。なお、このシート空調装置90は、空調制御装置50から出力される制御信号によって作動が制御され、作動時には差席の表面温度を約40℃程度となるまで上昇させるように制御される。
【0086】
次に、図2により、本実施形態の電気制御部について説明する。空調制御装置50および駆動力制御装置70は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成され、そのROM内に記憶された空調制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続された各種機器の作動を制御する。
【0087】
駆動力制御装置70の出力側には、エンジンEGを構成する各種エンジン構成機器および走行用電動モータへ交流電流を供給する走行用インバータ等が接続されている。各種エンジン構成機器としては、具体的に、エンジンEGを始動させるスタータ、エンジンEGに燃料を供給する燃料噴射弁(インジェクタ)の駆動回路(いずれも図示せず)等が接続されている。
【0088】
また、駆動力制御装置70の入力側には、バッテリ81の端子間電圧VBを検出する電圧計、バッテリ81へ流れ込む電流ABinあるいはバッテリ81から流れる電流ABioutを検出する電流計、アクセル開度Accを検出するアクセル開度センサ、エンジン回転数Neを検出するエンジン回転数センサ、車速Vvを検出する車速センサ(いずれも図示せず)等の種々のエンジン制御用のセンサ群が接続されている。
【0089】
空調制御装置50の出力側には、送風機32、圧縮機11の電動モータ11b用のインバータ61、送風ファン12a、各種電動アクチュエータ62、63、64、第1〜第3PTCヒータ37a、37b、37c、冷却水ポンプ40a、シート空調装置90等が接続されている。
【0090】
また、空調制御装置50の入力側には、車室内温度Trを検出する内気センサ51、外気温Tamを検出する外気センサ52(外気温検出手段)、車室内の日射量Tsを検出する日射センサ53、圧縮機11吐出冷媒温度Tdを検出する吐出温度センサ54(吐出温度検出手段)、圧縮機11吐出冷媒圧力Pdを検出する吐出圧力センサ55(吐出圧力検出手段)、蒸発器15からの吹出空気温度(蒸発器温度)TEを検出する蒸発器温度センサ56(蒸発器温度検出手段)、エンジンEGから流出した冷却水の冷却水温度Twを検出する冷却水温度Twセンサ58、車室内の窓ガラス近傍の車室内空気の相対湿度を検出する湿度検出手段としての湿度センサ、窓ガラス近傍の車室内空気の温度を検出する窓ガラス近傍温度センサ、および窓ガラス表面温度を検出する窓ガラス表面温度センサ等の種々の空調制御用のセンサ群が接続されている。
【0091】
なお、本実施形態の蒸発器温度センサ56は、具体的に蒸発器15の熱交換フィン温度を検出している。もちろん、蒸発器温度センサ56として、蒸発器15のその他の部位の温度を検出する温度検出手段を採用してもよいし、蒸発器15を流通する冷媒自体の温度を直接検出する温度検出手段を採用してもよい。また、湿度センサ、窓ガラス近傍温度センサ、および窓ガラス表面温度センサの検出値は、窓ガラス表面の相対湿度RHWを算出するために用いられる。
【0092】
さらに、空調制御装置50の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された操作パネル60に設けられた各種空調操作スイッチからの操作信号が入力される。操作パネル60に設けられた各種空調操作スイッチとしては、具体的に、車両用空調装置1の作動スイッチ、オートスイッチ、運転モードの切替スイッチ、吹出口モードの切替スイッチ、送風機32の風量設定スイッチ、車室内温度設定スイッチ、エコノミースイッチ、現在の車両用空調装置1の作動状態等を表示する表示部等が設けられている。
【0093】
オートスイッチは、乗員の操作によって車両用空調装置1の自動制御を設定あるいは解除する自動制御設定手段である。車室内温度設定スイッチは、乗員の操作によって車室内の目標温度Tsetを設定する目標温度設定手段である。また、エコノミースイッチは、乗員の操作によって車室内の空調に必要とされる動力の省動力化を要求する省動力化要求信号を出力させる省動力化要求手段である。
【0094】
さらに、エコノミースイッチを投入することにより、EV運転モード時に、走行用電動モータを補助するために作動させるエンジンEGの作動頻度を低下させる信号が駆動力制御装置70に出力される。
【0095】
また、空調制御装置50および駆動力制御装置70は、電気的に接続されて通信可能に構成されている。これにより、一方の制御装置に入力された検出信号あるいは操作信号に基づいて、他方の制御装置が出力側に接続された各種機器の作動を制御することもできる。例えば、空調制御装置50が駆動力制御装置70へエンジンEGの要求信号を出力することによって、エンジンEGを作動させること、あるいは、エンジンEGの回転数を変化させることができる。
【0096】
なお、空調制御装置50および駆動力制御装置は、その出力側に接続された各種制御対象機器を制御する制御手段が一体に構成されたものであるが、それぞれの制御対象機器の作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が、それぞれの制御対象機器の作動を制御する制御手段を構成している。
【0097】
例えば、空調制御装置50のうち、圧縮機11の電動モータ11bに接続されたインバータ61から出力される交流電圧の周波数を制御して、圧縮機11の冷媒吐出能力を制御する構成が圧縮機制御手段を構成し、送風手段である送風機32の作動を制御して、送風機32の送風能力を制御する構成が送風機制御手段を構成する。さらに、駆動力制御装置70と制御信号の送受信を行う構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が、要求信号出力手段50aを構成している。
【0098】
次に、図4〜9により、上記構成における本実施形態の車両用空調装置1の作動を説明する。図4は、本実施形態の車両用空調装置1のメインルーチンとしての制御処理を示すフローチャートである。この制御処理は、車両用空調装置1の作動スイッチが投入された状態で、オートスイッチが投入されるとスタートする。なお、図4〜図8中の各制御ステップは、空調制御装置50が有する各種の機能実現手段を構成している。
【0099】
まず、ステップS1では、フラグ、タイマ等の初期化、および上述した電動アクチュエータを構成するステッピングモータの初期位置合わせ等のイニシャライズが行われる。なお、このイニシャライズでは、フラグや演算値のうち、前回の車両用空調装置1の作動終了時に記憶された値が維持されるものもある。
【0100】
次に、ステップS2では、操作パネル60の操作信号等を読み込んでステップS3へ進む。具体的な操作信号としては、車室内温度設定スイッチによって設定される車室内の目標温度Tset、吸込口モードスイッチの設定信号、エコノミースイッチの操作に応じて出力される省動力化要求信号等がある。
【0101】
次に、ステップS3では、空調制御に用いられる車両環境状態の信号、すなわち上述のセンサ群51〜58等の検出信号を読み込む。また、このステップS3では、駆動力制御装置70の入力側に接続されたセンサ群の検出信号、および駆動力制御装置70から出力される制御信号等の一部も、駆動力制御装置70から読み込んでいる。
【0102】
次に、ステップS4では、車室内吹出空気の目標吹出温度TAOを算出する。目標吹出温度TAOは、下記数式F1により算出される。
TAO=Kset×Tset−Kr×Tr−Kam×Tam−Ks×Ts+C…(F1)
ここで、Tsetは車室内温度設定スイッチによって設定された車室内設定温度、Trは内気センサ51によって検出された車室内温度(内気温)、Tamは外気センサ52によって検出された外気温、Tsは日射センサ53によって検出された日射量である。Kset、Kr、Kam、Ksは制御ゲインであり、Cは補正用の定数である。
【0103】
続くステップS5〜S13では、空調制御装置50に接続された各種機器の制御状態が決定される。まず、ステップS5では、エアミックスドア39の目標開度SWを目標吹出温度TAO、蒸発器温度センサ56によって検出された吹出空気温度TE、エアミックス前の温風温度TWDに基づいて算出する。
【0104】
具体的には、目標開度SWは、次の数式F2により算出できる。
SW=[{TAO−(TE+2)}/{TWD−(TE+2)}]×100(%)…(F2)
エアミックス前の温風温度TWDとは、加熱用冷風通路33に配置されたヒータコア36、およびPTCヒータ37の加熱能力に応じて決定される値であって、具体的には、次の数式F3により算出できる。
TWD=Tw×0.8+TE×0.2+ΔTptc…(F3)
ここで、Twは冷却水温度Twセンサ58によって検出された冷却水温度Tw、ΔTptcは、PTCヒータ37の作動による吹出温上昇量、すなわち吹出口から車室内へ吹き出される空調風の温度(吹出温)のうちPTCヒータ37の作動が寄与した温度上昇量である。本実施形態では、具体的に、ΔTptcは、PTCヒータ37の作動時には、10℃、非作動時には、0℃としている。
【0105】
つまり、式F3では、エアミックス前の温風温度TWDを、ヒータコア36による吹出温上昇量(Tw×0.8+TE×0.2)とPTCヒータ37の作動による吹出温上昇量ΔTptcとの合計値として求めている。
【0106】
ヒータコア36による吹出温上昇量(Tw×0.8+TE×0.2)は、ヒータコア36の熱交換効率が100%とすれば、送風空気はヒータコア36にて冷却水温度Twまで上昇すると考えられる。これに対して、実際のヒータコア36では、熱交換効率が80%前後となってしまうことから0.8という係数を決定している。
【0107】
また、本発明者らの検討により、ヒータコア36へ流入する送風空気の温度によっても、ヒータコア36による吹出温上昇量が変化することが判っている。ヒータコア36へ流入する送風空気の温度は、蒸発器15にて冷却された冷風の温度であるから、吹出空気温度TEを採用することができる。そして、このヒータコア36へ流入する送風空気の温度の吹出温上昇量に対する寄与度として実験的に求められた0.2という係数を採用している。
【0108】
一方、PTCヒータ37の作動による吹出温上昇量ΔTptcは、PTCヒータ37の消費電力W(Kw)、空気密度ρ(kg/m3)、空気比熱Cp、PTCヒータ37を通過する風量であるPTC通過風量Va(m3/h)を用いて、数式F4により演算できる。
ΔTptc=W/ρ/Cp/Va×3600…(F4)
ここで、PTC通過風量Vaとしては、送風機32の送風空気量に対して、前回のステップS5で算出したエアミックス開度SWを考慮したものを用いている。
【0109】
なお、SW=0%は、エアミックスドア39の最大冷房位置であり、冷風バイパス通路34を全開し、加熱用冷風通路33を全閉する。これに対し、SW=100%は、エアミックスドア39の最大暖房位置であり、冷風バイパス通路34を全閉し、加熱用冷風通路33を全開する。
【0110】
次のステップS6では、送風機32の送風能力(送風量)を決定する。具体的には、ステップS4にて決定された目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して、送風機32の送風能力(具体的には、電動モータに印加するブロワモータ電圧)を決定する。
【0111】
より詳細には、本実施形態では、TAOの極低温域(最大冷房域)および極高温域(最大暖房域)でブロワモータ電圧を最大値付近の高電圧にして、送風機32の風量を最大風量付近に制御する。また、TAOが極低温域から中間温度域に向かって上昇すると、TAOの上昇に応じてブロワモータ電圧を減少して、送風機32の風量を減少させる。
【0112】
さらに、TAOが極高温域から中間温度域に向かって低下すると、TAOの低下に応じてブロワモータ電圧を減少して、送風機32の風量を減少させる。また、TAOが所定の中間温度域内に入ると、ブロワモータ電圧を最小値にして送風機32の風量を最小値にする。
【0113】
次のステップS7では、吸込口モード、すなわち内外気切替箱の切替状態を決定する。この吸込口モードもTAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して決定する。本実施形態では、基本的に外気を導入する外気モードが優先されるが、TAOが極低温域となって高い冷房性能を得たい場合等に内気を導入する内気モードが選択される。さらに、外気の排ガス濃度を検出する排ガス濃度検出手段を設け、排ガス濃度が予め定めた基準濃度以上となったときに、内気モードを選択するようにしてもよい。
【0114】
次のステップS8では、吹出口モードを決定する。この吹出口モードも、TAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して決定する。本実施形態では、TAOが低温域から高温域へと上昇するにつれて吹出口モードをフットモード→バイレベルモード→フェイスモードへと順次切り替える。
【0115】
従って、夏季は主にフェイスモード、春秋季は主にバイレベルモード、そして冬季は主にフットモードが選択される。さらに、湿度センサの検出値から窓ガラスに曇りが発生する可能性が高い場合には、フットデフロスタモードあるいはデフロスタモードを選択するようにしてもよい。
【0116】
次のステップS9では、圧縮機11の冷媒吐出能力(具体的には、回転数(rpm))を決定する。このステップS9では、ステップS4で決定したTAO等に基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して、室内蒸発器15からの吹出空気温度Teの目標吹出温度TEOを決定する。
【0117】
そして、この目標吹出温度TEOと吹出空気温度Teの偏差En(TEO−Te)を算出し、今回算出された偏差Enから前回算出された偏差En−1を減算した偏差変化率Edot(En−(En−1))とを用いて、予め空調制御装置50に記憶されたメンバシップ関数とルールとに基づいたファジー推論に基づいて、前回の圧縮機回転数fCn−1に対する回転数変化量Δf_Cを求める。
【0118】
また、本実施形態の空調制御装置50に記憶されたメンバシップ関数とルールでは、上述の偏差Enと偏差変化率Edotに基づいて室内蒸発器15の着霜が防止されるようにΔf_Cが決定される。さらに、前回の圧縮機回転数fn−1に回転数変化量Δf_Cを加算した値を今回の圧縮機回転数fnとして更新する。なお、この圧縮機回転数fnの更新は、1秒毎の制御周期で実行される。
【0119】
次のステップS10では、PTCヒータ37の作動本数および電熱デフォッガの作動状態を決定する。まず、PTCヒータ37の作動本数の決定について説明すると、ステップS10では、外気温Tam、エアミックス開度SW、冷却水温度Twに応じて、PTCヒータ37の作動本数を決定する。
【0120】
このステップS10の詳細については、図5のフローチャートを用いて説明する。まず、ステップS101では、外気温に基づいてPTCヒータ37の作動の要否を判定する。具体的には、外気センサ52が検出した外気温が所定温度(本実施形態では、26℃)よりも高いか否かを判定する。
【0121】
ステップS101にて、外気温が26℃よりも高いと判定された場合は、PTCヒータ37による吹出温アシストは必要無いと判断して、ステップS105に進み、PTCヒータ37の作動本数を0本に決定する。一方、ステップS101で、外気温が26℃よりも低いと判定された場合は、ステップS102に進む。
【0122】
ステップS102、S103では、エアミックス開度SWに基づいてPTCヒータ37作動の要否を決定する。ここで、エアミックス開度SWが小さくなることは、加熱用冷風通路33にて送風空気を加熱する必要性が少なくなることを意味していることから、エアミックス開度SWが小さくなるに伴ってPTCヒータ37を作動させる必要性も少なくなる。
【0123】
そこで、ステップS102では、ステップS5で決定したエアミックス開度SWを予め定めた基準開度と比較して、エアミックス開度SWが第1基準開度(本実施形態では、100%)以下であれば、PTCヒータ37を作動させる必要は無いものとして、PTCヒータ作動フラグf(SW)=OFFとする。
【0124】
一方、エアミックス開度が第2基準開度(本実施形態では、110%)以上であれば、PTCヒータ37を作動させる必要があるものとして、PTCヒータ作動フラグf(SW)=ONとする。なお、第1基準開度と第2基準開度との開度差は、制御ハンチング防止のためのヒステリシス幅として設定されている。
【0125】
そして、ステップS103では、ステップS102で決定したPTCヒータ作動フラグf(SW)がOFFであれば、ステップS105に進み、PTCヒータの作動本数を0本に決定する。一方、PTCヒータ作動フラグf(SW)がONであれば、ステップS104へ進み、PTCヒータ37の作動本数を決定する。
【0126】
ステップS104では、冷却水温度Twに応じてPTCヒータ37の作動本数を決定する。具体的には、冷却水温度Twが上昇過程にあるときは、冷却水温度Tw≧第1所定温度T1であれば作動本数を0本とし、第1所定温度T1>冷却水温度Tw≧第2所定温度T2であれば作動本数を1本とし、第2所定温度T2>冷却水温度Tw≧第3所定温度T3であれば作動本数を2本とし、第3所定温度T3>冷却水温度Tw≧第2所定温度T4であれば作動本数を3本とする。
【0127】
一方、冷却水温度Twが下降過程にあるときは、第4所定温度T4≦冷却水温度Twであれば作動本数を3本とし、第4所定温度T4<冷却水温度Tw≦第3所定温度T3であれば作動本数を2本とし、第3所定温度T3<冷却水温度Tw≦第2所定温度T2であれば作動本数を1本とし、第2所定温度T1<冷却水温度Twであれば作動本数を0本としてステップS11へ進む。
【0128】
なお、各所定温度には、T1>T2>T3>T4の関係があり、本実施形態では、具体的に、T1=67.5℃、T2=65℃、T3=62.5℃、T4=60℃としている。また、各所定温度の温度差は、制御ハンチング防止のためのヒステリシス幅として設定されている。
【0129】
また、電熱デフォッガについては、車室内の湿度および温度から窓ガラスに曇りが発生する可能性が高い場合、あるいは窓ガラスに曇りが発生している場合は、電熱デフォッガを作動させる。
【0130】
次のステップS11では、空調制御装置50から駆動力制御装置70へ出力される要求信号を決定する。この要求信号としては、エンジンEGの作動要求信号(エンジンON要求信号)あるいはエンジンEGの作動停止信号(エンジンOFF要求信号)、さらに、エンジンEGの作動時あるいは作動を要求した際のエンジンEGの回転数の回転数要求信号等がある。
【0131】
ここで、車両走行用の駆動力をエンジンEGのみから得る通常の車両では、走行時に常時エンジンを作動させているので冷却水も常時高温となる。従って、通常の車両では冷却水をヒータコア14に流通させることで十分な暖房性能を発揮することができる。
【0132】
これに対して、本実施形態のプラグインハイブリッド車両では、EV運転モードで走行している際に、走行用電動モータのみから走行用の駆動力を得て走行することがあり得る。このため、高い暖房性能が必要な場合であっても、冷却水温度Twを暖房用の熱源として充分な温度となるまで上昇していないことがある。
【0133】
そこで、本実施形態では、高い暖房性能が必要にもかかわらず冷却水温度Twが予め定めた基準冷却水温度Twよりも低いときは、冷却水温度Twを所定温度以上に維持するため、空調制御装置50から駆動力制御装置70に対して、エンジンEGを適切な回転数が作動させるように、作動要求信号および回転数の変更要求信号をしている。これにより、冷却水温度Twを上昇させて高い暖房性能を得るようにしている。
【0134】
ステップS11の詳細については、図6〜図8のフローチャートを用いて説明する。まず、ステップS1101で、冷却水温度Twに基づくエンジンの作動要求信号あるいは作動停止信号の出力を行うか否かの判定に用いる判定閾値としてのエンジンON水温およびエンジンOFF水温を算出する。なお、エンジンON水温は、停止要求信号を出力することを決定する判定基準となる冷却水温度Twであり、エンジンOFF水温は、エンジンの作動停止信号を出力することを決定する判定基準となる冷却水温度Twである。
【0135】
エンジンOFF水温は、実際の車室内吹出空気温度がおおよそ目標吹出温度TAOとなるために要求される冷却水温度Twと、70℃とのうちの小さい方が採用される。お、実際の車室内吹出空気温度がおおよそ目標吹出温度TAOとなるために要求される冷却水温度Twは、下記数式F5を用いて演算される。
{(TAO−ΔTptc)−(TE×0.2)}/0.8…(F5)
なお、上記数式F5は、前述のステップS5にて説明したヒータコア14による吹出温上昇量(Tw×0.8+TE×0.2)とPTCヒータ37の作動による吹出温上昇量ΔTptcとの合計値がTAOと等しいものとして、Twの値を求めるように変形した式に相当する。
【0136】
一方、エンジンON水温は、頻繁にエンジンがON/OFFするのを防止するため、エンジンOFF水温よりも所定の値(本実施形態では、5℃)だけ低く設定される。この所定の値は、制御ハンチング防止のためのヒステリシス幅として設定されている。なお、エンジンOFF水温およびエンジンON水温を予め定めた固定値(例えば、KTw=45℃、KTw2=40℃)としてもよい。
【0137】
次に、ステップS1102では、冷却水温度Twに応じて、エンジンEGの作動要求信号あるいは作動停止信号を出力するか否かの仮の要求信号フラグf(Tw)を決定する。具体的には、冷却水温度TwがステップS1101で決定されたエンジンON水温より低ければ、仮の要求信号フラグf(Tw)=ONとしてエンジンEGの作動要求信号を出力することを仮決定し、冷却水温度TwがエンジンOFF水温より高ければ、仮の要求信号フラグf(Tw)=OFFとしてエンジンEGの作動停止信号を出力することを仮決定する。
【0138】
次に、ステップS1103は、送風機32の作動状態、外気温Tam、仮の要求信号フラグf(Tw)に基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して、駆動力制御装置70へ出力される要求信号を決定して、図7に示すステップS1104へ進む。
【0139】
具体的には、ステップS1103では、送風機32が作動しているときであって、かつ、目標吹出温度TAOが28℃未満の場合は、仮の要求信号フラグf(Tw)によらず、エンジンEGを停止させる要求信号に決定する。
【0140】
また、送風機32が作動しているときであって、かつ、目標吹出温度TAOが28℃以下の場合は、仮の要求信号フラグf(Tw)がONであれば、エンジンEGを作動させる要求信号に決定し、仮の要求信号フラグf(Tw)がOFFであれば、エンジンEGを停止させる要求信号に決定する。さらに、送風機32が作動していないときは、目標吹出温度TAOおよび仮の要求信号フラグf(Tw)によらず、エンジンEGを停止させる要求信号に決定する。
【0141】
続く図7に示すステップS1104〜S1111およびS1117の制御では、エンジンEGの回転数の回転数要求信号を決定する。まず、ステップS1104では、送風機32が作動しているか否かが判定される。ステップS1104にて、送風機32が作動していると判定された際には、ステップS1105へ進む。一方、ステップS1104にて、送風機32が作動していないと判定された際には、ステップS1117へ進み、エンジンEGの要求回転数を1300rpmに決定してステップS12へ進む。
【0142】
ステップS1105では、エコノミースイッチが投入されているか否かが判定される。ステップS1105にて、エコノミースイッチが投入されていないと判定された際には、ステップS1106へ進む。一方、ステップS1105にて、エコノミースイッチが投入されていると判定された際には、ステップS1117へ進み、エンジンEGの要求回転数を1300rpmに決定してステップS12へ進む。
【0143】
ステップS1106では、外気温Tamが予め定めた基準外気温(本実施形態では、−10℃)より低くなっているか否かが判定される。ステップS1106にて、外気温Tamが基準外気温より低くなっていると判定された際には、ステップS1107へ進む。一方、ステップS1106にて、外気温Tamが基準外気温より低くなっていないと判定された際には、ステップS1117へ進み、エンジンEGの要求回転数を1300rpmに決定してステップS12へ進む。
【0144】
ステップS1107では、ステップS5で決定したエアミックス開度SWが100%以上、すなわちエアミックスドア39が最大暖房位置になっているか否かが判定される。ステップS1107にて、エアミックスドア39が最大暖房位置になっていると判定された際には、ステップS1108へ進む。一方、ステップS1107にて、エアミックスドア39が最大暖房位置になっていないと判定された際には、ステップS1117へ進み、エンジンEGの要求回転数を1300rpmに決定してステップS12へ進む。
【0145】
ステップS1108では、操作パネル60の車室内温度設定スイッチによって設定された目標温度Tsetが予め定めた基準目標温度(本実施形態では、28℃)より高くなっているか否かが判定される。ステップS1108にて、目標温度Tsetが基準目標温度より高くなっていると判定された際には、ステップS1109へ進む。一方、ステップS1108にて、目標温度Tsetが基準目標温度より高くなっていないと判定された際には、ステップS1117へ進み、エンジンEGの要求回転数を1300rpmに決定してステップS12へ進む。
【0146】
ステップS1109では、内気センサ51によって検出された車室内温度Trが予め定めた基準車室内温度(本実施形態では、24℃)より低くなっているか否かが判定される。ステップS1109にて、車室内温度Trが基準車室内温度より低くなっていると判定された際には、ステップS1110へ進む。一方、ステップS1109にて、車室内温度Trが基準車室内温度よりも低くなっていないと判定された際には、ステップS1117へ進み、エンジンEGの要求回転数を1300rpmに決定してステップS12へ進む。
【0147】
続く、ステップS1110では、車両の運転モードがEV運転モードになっているかあるいはHV運転モードになっているか否かが判定される。なお、本実施形態のハイブリッド車両にでは、前述の如く、バッテリ81の蓄電残量SOCが予め定めた走行用基準残量以上となっている際には、バッテリ81の蓄電残量SOCが充分であるものとしてEV運転モードとし、バッテリの蓄電残量SOCが予め定めて走行用基準残量より少ない際には、バッテリ81の蓄電残量SOCが不充分であるものとして、HV運転モードとする。
【0148】
より具体的には、図9の図表に示すように運転モードが決定されている。また、乗員の操作によって、駆動力制御装置70に対して、EV運転モードを実行しないことを要求するEVキャンセルスイッチが投入(ON)されている際には、バッテリ81の蓄電残量SOCが充分であっても、HV運転モードとする。
【0149】
そして、ステップS1110にて、HV運転モードであると判定された際には、ステップS1111へ進み、車速センサによって検出された車速Vvに基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して、エンジンEGの要求回転数を決定して、ステップS12へ進む。具体的には、本実施形態では、車速Vvの低下に伴って、エンジンEGの要求回転数を低下させるように決定する。
【0150】
一方、ステップS1110にて、EV運転モードであると判定された際には、図8に示すステップS1112へ進む。ステップS1112では、PTCヒータ37が作動しているか否かが判定される。ステップS1112にて、PTCヒータ37が作動していると判定された際には、ステップS1116へ進む。一方、ステップS1112にて、PTCヒータ37が作動していないと判定された際には、ステップS1113へ進む。
【0151】
ステップS1113では、シート空調装置が作動しているか否かが判定されるステップS1113にて、シート空調装置90が作動していると判定された際には、ステップS1116へ進む。一方、ステップS1113にて、シート空調装置90が作動していないと判定された際には、ステップS1114へ進む。
【0152】
ステップS1114では、電熱デフォッガが作動しているか否かが判定されるステップS1114にて、電熱デフォッガが作動している(通電されている)と判定された際には、ステップS1116へ進む。一方、ステップS1114にて、電熱デフォッガが作動していないと判定された際には、ステップS1115へ進む。
【0153】
ステップS1115では、ステップS1111と同様に、車速Vvに基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して、エンジンEGの要求回転数を決定して、ステップS12へ進む。具体的には、本実施形態では、車速Vvの低下に伴って、エンジンEGの要求回転数を低下させるように決定する。この際、車速Vvが0km〜100kmの範囲で、ステップS1111にて決定されるエンジンEGの要求回転数よりも高い値が決定される。
【0154】
また、ステップS1116では、ステップS1111と同様に、車速Vvに基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して、エンジンEGの要求回転数を決定して、ステップS12へ進む。具体的には、本実施形態では、車速Vvの低下に伴って、エンジンEGの要求回転数を低下させるように決定する。
【0155】
この際、車速Vvが0km〜100kmの範囲で、ステップS1111にて決定されるエンジンEGの要求回転数よりも高い値となって、ステップS1115にて決定されるエンジンEGの要求回転数よりも低い値が決定される。
【0156】
以上の如く、本実施形態では、ステップS1110にて運転モードがEV運転モードであると判定されると、HV運転モードと判定された場合よりもエンジンEGの要求回転数が高い値となる。
【0157】
つまり、モータ側駆動力が内燃機関側駆動力よりも大きくなり、冷却水温度Twが上昇しにくいEV運転モード時に、HV運転モード時よりもエンジンEGの要求回転数が高くなるように要求信号が決定される。換言すると駆動力比(モータ側駆動力/内燃機関側駆動力)が比較的高くなり、冷却水温度Twが上昇しにくいEV運転モード時に、HV運転モード時よりもエンジンEGの要求回転数が増加するように要求信号が決定される。
【0158】
さらに、EV運転モードでは、PTCヒータ37、シート空調装置90および電熱デフォッガのうち、少なくとも1つが作動しているときは、いずれも作動していない場合よりもエンジンEGの要求回転数が高い値となる。
【0159】
つまり、EV運転モードであっても、補助加熱手段であるPTCヒータ37あるいはシート空調装置90が作動している際には、これらが作動していない際よりもエンジンEGの要求回転数が高くなるように要求信号が決定される。また、EVモードであっても、電熱デフォッガが作動している際には、これが作動していない際よりもエンジンEGの要求回転数が増加するように要求信号が決定される。
【0160】
次のステップS12では、冷却水回路40にてヒータコア36とエンジンEGとの間で冷却水を循環させる冷却水ポンプ40aを作動させるか否かを決定する。このステップS12の詳細については、図11のフローチャートを用いて説明する。まず、ステップS121では、冷却水温度Twが吹出空気温度TEより高いか否かを判定する。
【0161】
ステップS121にて、冷却水温度Twが吹出空気温度TE以下となっている場合は、ステップS124へ進み、冷却水ポンプ40aを停止(OFF)させることを決定する。その理由は、冷却水温度Twが吹出空気温度TE以下となっている場合に冷却水をヒータコア36へ流すと、ヒータコア36を流れる冷却水が蒸発器15通過後の空気を冷却してしまうことになるため、かえって吹出口からの吹出空気温度を低くしてしまうからである。
【0162】
一方、ステップS121にて、冷却水温度Twが吹出空気温度TEより高い場合は、ステップS122へ進む。ステップS122では、送風機32が作動しているか否かが判定される。ステップS122にて、送風機32が作動していないと判定された場合は、ステップS124に進み、省動力化のために冷却水ポンプ40aを停止(OFF)させることを決定する。
【0163】
一方、ステップS122にて送風機32が作動していると判定された場合は、ステップS123へ進み、冷却水ポンプ40aを作動(ON)させることを決定する。これにより、冷却水ポンプ40aが作動して、冷却水が冷媒回路内を循環するので、ヒータコア36を流れる冷却水とヒータコア36を通過する空気とを熱交換させて送風空気を加熱することができる。
【0164】
次に、ステップS13では、シート空調装置90の作動要否を決定する。シート空調装置90の作動状態は、ステップS5で決定した目標吹出温度TAO、ステップS10で決定されたPTCヒータ37の作動状態、ステップS2で読み込んだ車室内の目標温度Tset、外気温Tamに基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して決定される。
【0165】
具体的には、目標吹出温度TAOが100℃より低くなっており、かつ、PTCヒータ37が作動しているとき、すなわち、第1〜第3PTCヒータ37a、15b、15cのうち1本以上が作動しているときであって、かつ、外気温Tamが予め定めた基準外気温以下になっており、さらに、目標温度Tsetが予め定めた基準シート空調作動温度より低い場合には、シート空調装置90を作動(ON)させることを決定する。
【0166】
さらに、目標吹出温度TAOが100℃以上になっている場合は、PTCヒータ37の作動状態、外気温Tam、目標温度Tsetによらず、シート空調装置90を作動(ON)させることを決定する。さらに、上記のシート空調装置90を作動(ON)させる条件が成立しても、操作パネル60のエコノミースイッチが投入されている際には、シート空調装置90を非作動(OFF)としてもよい。
【0167】
ステップS14では、上述のステップS5〜S13で決定された制御状態が得られるように、空調制御装置50より各種機器32、12a、61、62、63、64、12a、37、40a、80に対して制御信号および制御電圧が出力される。さらに、要求信号出力手段50cからエンジン制御装置70に対して、ステップS11にて決定されたエンジンEGの作動およびエンジンEGの要求回転数の要求信号が送信される。
【0168】
次のステップS15では、制御周期τの間待機し、制御周期τの経過を判定するとステップS2に戻るようになっている。なお、本実施形態は制御周期τを250msとしている。これは、車室内の空調制御は、エンジン制御等と比較して遅い制御周期であってもその制御性に悪影響を与えないからである。これにより、車両内における空調制御のための通信量を抑制して、エンジン制御等のように高速制御を行う必要のある制御系の通信量を十分に確保することができる。
【0169】
本実施形態の車両用空調装置1は、以上の如く作動するので、送風機32から送風された送風空気が、蒸発器15にて冷却される。そして蒸発器15にて冷却された冷風は、エアミックスドア39の開度に応じて、加熱用冷風通路33および冷風バイパス通路34へ流入する。
【0170】
加熱用冷風通路33へ流入した冷風は、ヒータコア36およびPTCヒータ37を通過する際に加熱されて、混合空間35にて冷風バイパス通路34を通過した冷風と混合される。そして、混合空間35にて温度調整された空調風が、混合空間35から各吹出口を介して車室内に吹き出される。
【0171】
この車室内に吹き出される空調風によって車室内の内気温Trが外気温Tamより低く冷やされる場合には、車室内の冷房が実現されており、一方、内気温Trが外気温Tamより高く加熱される場合には、車室内の暖房が実現されることになる。
【0172】
さらに、本実施形態の車両用空調装置1では、制御ステップS11にて説明したように、HV運転モード時に出力される要求回転数よりも、モータ側駆動力が内燃機関側駆動力よりも大きくなって冷却水の温度が上昇しにくいEV運転モード時に出力される要求回転数の方が高くなるので、EV運転モード時にも、冷却水の温度を暖房用の熱源として充分な温度となるまで上昇させることができる。
【0173】
従って、EV運転モード時にヒータコア36にて車室内へ送風される送風空気を充分に加熱することができ、車室内の充分な暖房を実現することができる。
【0174】
この際、ステップS1106にて説明したように、EV運転モードおよびHV運転モードによらず、外気温Tamが基準外気温以下になっている場合には、外気温Tamが基準外気温より高くなっている場合よりもエンジンEGの要求回転数を増加させている。
【0175】
つまり、外気温Tamの低下に伴ってエンジンEGの要求回転数を増加させているので、低外気温時のように高い暖房能力が要求される場合に、冷却水温度Twを暖房用熱源として充分な温度となるまで上昇させることができる。さらに、外気温Tamが基準外気温より高くなっている場合には、エンジンEGの要求回転数を低下させているので、エンジンEGの省燃費化を図ることもできる。
【0176】
また、ステップS1108にて説明したように、EV運転モードおよびHV運転モードによらず、目標温度Tsetが基準目標温度より高くなっている場合は、目標温度Tsetが基準目標温度以下になっている場合よりもエンジンEGの要求回転数を増加させている。
【0177】
つまり、目標温度Tsetの上昇に伴ってエンジンEGの要求回転数を増加させているので、乗員によって高い暖房能力が要求される場合に、冷却水温度Twを暖房用熱源として充分な温度となるまで上昇させることができる。さらに、目標温度Tsetが基準目標温度以下になっている場合は、エンジンEGの要求回転数を低下させているので、エンジンEGの省燃費化を図ることもできる。
【0178】
また、ステップS1112〜S1116にて説明したように、EV運転モードであっても、補助加熱手段であるPTCヒータ37あるいはシート空調装置90のうち少なくとも一方が作動している場合には、これらが作動していない際よりもエンジンEGの要求回転数が増加するように要求信号が出力される。従って、乗員の温感が補助加熱手段37、90によって補助される場合のように高い暖房能力が要求される場合に、冷却水温度Twを暖房用熱源として充分な温度となるまで上昇させることができる。
【0179】
さらに、別の補助加熱手段である電熱デフォッガが作動している場合には、これが作動していない際よりもエンジンEGの要求回転数が増加するように要求信号が出力される。従って、車両窓ガラスWの曇りを防止するために高い防曇能力が要求される場合に、冷却水温度Twを暖房用熱源として充分な温度となるまで上昇させることができる。
【0180】
また、ステップS1105にて説明したように、操作パネル60のエコノミースイッチが投入されている場合には、EV運転モードおよびHV運転モードによらず、さらに、補助加熱手段37、90、電熱デフォッガの作動状態によらず、エコノミースイッチが投入されていない場合よりも要求回転数が低下するように要求信号が出力される。
【0181】
つまり、乗員が省動力を要求している場合に、要求回転数が低下するように要求信号を出力して、乗員の意志(すなわち、省燃費化ニーズ)に適う省燃費化を図ることができる。さらに、省燃費意識の高い乗員にとっては、多少の暖房能力の低下は不快感を与えることもない。
【0182】
また、ステップS1111、1115、1116にて説明したように、車速Vvの増加に伴って、要求回転数が増加するように要求信号が出力されるので、車速Vvの増加に伴って増加する走行負荷に応じて、要求回転数を変化させることもできる。
【0183】
(第2実施形態)
第1実施形態では、冷却水温度Twを暖房用熱源として充分な温度となるまで上昇させるために、エンジンEGの要求回転数が高くすることによって駆動力比(モータ側駆動力/内燃機関側駆動力)を低下させた例を説明したが、本実施形態では、第1実施形態のステップS11の制御態様を変更して、モータ側駆動力を低下させることによって駆動力比を低下させる例を説明する。
【0184】
具体的には、図10、図11に示すように、図6のステップS1103に続く制御フローを変更している。まず、図10のステップS1104〜S1110では、第1実施形態と同様に、送風機32が作動しているか否か、エコノミースイッチが投入されているか否か、外気温Tamが予め定めた基準外気温より低くなっているか否か、エアミックスドア39が最大暖房位置になっているか否か、目標温度Tsetが予め定めた基準目標温度より高くなっているか否か、車室内温度Trが予め定めた基準車室内温度より低くなっているか否か、運転モードがEV運転モードになっているかあるいはHV運転モードになっているか否かが判定される。
【0185】
そして、例えば、ステップS1104にて、送風機32が作動していないと判定された際には、ステップS1127へ進み、モータ側駆動力を低下させないことを決定してステップS12へ進む。ステップS1105〜S1109においても同様である。
【0186】
さらに、ステップS1110にて、HV運転モードであると判定された際には、ステップS1121へ進み、モータ側駆動力を25%低下させることを決定してステップS12へ進む。一方、ステップS1110にて、EV運転モードであると判定された際には、図11に示すS1112へ進む。ステップS1112〜S1114では、第1実施形態と同様に、PTCヒータ37が作動しているか否か、シート空調装置が作動しているか否か、電熱デフォッガが作動しているか否かが判定される。
【0187】
そして、例えば、ステップS1112にて、PTCヒータ37が作動していると判定された際には、ステップS1126へ進み、モータ側駆動力を−75%低減させることを決定してステップS12へ進む。一方、ステップS1112にて、PTCヒータ37が作動していると判定された際には、ステップS1125へ進み、モータ側駆動力を−50%低減させることを決定してステップS12へ進む。
【0188】
以上の如く、本実施形態では、ステップS1110にて運転モードがEV運転モードであると判定されると、HV運転モードと判定された場合よりもモータ側駆動力を低減させる量が多くなるように要求信号が決定される。すなわち、モータ側駆動力を低減させて、駆動力比(モータ側駆動力/内燃機関側駆動力)が低くなるように要求信号が決定される。
【0189】
さらに、EV運転モードでは、PTCヒータ37、シート空調装置90および電熱デフォッガのうち、少なくとも1つが作動しているときは、いずれも作動していない場合よりもモータ側駆動力を低減させるエンジンEGの要求回転数が高い値となる。
【0190】
つまり、EV運転モードであっても、補助加熱手段であるPTCヒータ37あるいはシート空調装置90が作動している際には、これらが作動していない際よりもモータ側駆動力を低減させる量が多くなるように要求信号が決定される。また、EVモードであっても、電熱デフォッガが作動している際には、これが作動していない際よりもモータ側駆動力を低減させる量が多くなるように要求信号が決定される。
【0191】
その他の作動および構成は、第1実施形態と同様である。従って、本実施形態の車両用空調装置1によれば、第1実施形態と同等の効果を得ることができる。
【0192】
つまり、本実施形態の車両用空調装置1によれば、モータ側駆動力が内燃機関側駆動力よりも大きくなって冷却水温度Twが上昇しにくいEV運転モード時に、駆動力比を低下させる要求信号が出力されるので、車両走行用の駆動力を変化させないためには、内燃機関側駆動力を増大させることになる。
【0193】
従って、EV運転モード時に、冷却水温度Twを暖房用熱源として充分な温度となるまで上昇させてヒータコア36にて車室内へ送風される送風空気を充分に加熱することができ、車室内の充分な暖房を実現することができる。
【0194】
この際、図10のステップS1106、S1108に図示されているように、外気温Tamが基準外気温以下になっている場合あるいは目標温度Tsetが基準目標温度より高くなっている場合に、駆動力比を低下させる要求信号が出力されるので、第1実施形態と同様に、高い暖房能力が要求される際に、冷却水温度Twを暖房用熱源として充分な温度となるまで上昇させることができる。
【0195】
また、図11のステップS1112〜S1116に図示されているように、EV運転モードであっても、補助加熱手段であるPTCヒータ37あるいはシート空調装置90が作動している場合には、これらが作動していない場合よりも駆動力比を低下させる要求信号が出力されるので、第1実施形態と同様に、高い暖房能力が要求される場合に、冷却水温度Twを暖房用熱源として充分な温度となるまで上昇させることができる。
【0196】
さらに、別の補助加熱手段である電熱デフォッガが作動している場合には、これが作動していない場合よりも駆動力比を低下させる要求信号が出力される。従って、第1実施形態と同様に、車両窓ガラスWの曇りを防止するために高い防曇能力が要求される場合に、冷却水温度Twを暖房用熱源として充分な温度となるまで上昇させることができる。
【0197】
また、図10のステップS1105に図示したように、操作パネル60のエコノミースイッチが投入されている場合には、駆動力比を低下させないので、第1実施形態と同様に、乗員の意志(すなわち、省燃費化ニーズ)に適う省燃費化を図ることができる。
【0198】
(第3実施形態)
本実施形態では、第1実施形態のステップS11の制御態様を変更して、第1実施形態の図9の図表で説明した運転モードとしてEV運転モードが選択されている場合でも、これを駆動力比の低いHV運転モードに切り替えることで、冷却水温度Twを暖房用熱源として充分な温度となるまで上昇させる例を説明する。
【0199】
具体的には、図12に示すように、図6のステップS1103に続く制御フローを変更している。まず、図12のステップS1104〜S1109では、第1実施形態と同様に、送風機32が作動しているか否か、エコノミースイッチが投入されているか否か、外気温Tamが予め定めた基準外気温より低くなっているか否か、エアミックスドア39が最大暖房位置になっているか否か、目標温度Tsetが予め定めた基準目標温度より高くなっているか否か、車室内温度Trが予め定めた基準車室内温度より低くなっているか否かが判定される。
【0200】
そして、例えば、ステップS1104にて、送風機32が作動していないと判定された際には、ステップS1137へ進み、図9の図表にて決定された運転モードが維持されてステップS12へ進む。続くステップS1105〜S1109においても同様である。さらに、ステップS1112、S1113では、第1実施形態と同様に、PTCヒータ37が作動しているか否か、シート空調装置が作動しているか否かが判定される。
【0201】
そして、例えば、ステップS1112にて、PTCヒータ37が作動していると判定された際には、ステップS1136へ進み、図9の図表にて決定された運転モードによらず、運転モードがHV運転モードに決定されてステップS12へ進む。一方、ステップS1112にて、PTCヒータ37が作動していないと判定された際には、ステップS1125へ進み、図9の図表にて決定された運転モードが維持される。
【0202】
その他の作動および構成は、第1実施形態と同様である。従って、本実施形態の車両用空調装置1によれば、PTCヒータ37およびシート空調装置90のうち少なくとも一方が作動している場合のように、高い暖房能力が要求されている際に、内燃機関側駆動力がモータ側駆動力よりも大きくなるHV運転モードに切り替えて、冷却水温度Twを暖房用熱源として充分な温度となるまで上昇させることができる。
【0203】
なお、本実施形態では、送風機32が作動しており、エコノミースイッチが投入されておらず、外気温Tamが予め定めた基準外気温より低くなっており、エアミックスドア39が最大暖房位置になっており、目標温度Tsetが予め定めた基準目標温度より高くなっており、さらに、車室内温度Trが予め定めた基準車室内温度より低くなっている場合であって、PTCヒータ37およびシート空調装置90のうち少なくとも一方が作動しているという条件が成立した際に、HV運転モードに切り替えているが、運転モードをHV運転モードに切り替える条件は、これに限定されない。
【0204】
もちろん、外気温Tamが基準外気温より高くなっている場合に、運転モードをHV運転モードに切り替えてもよい。また、目標温度Tsetが予め定めた基準目標温度以上となっている場合に、運転モードをHV運転モードに切り替えてもよい。また、エコノミースイッチが投入されていない場合に、運転モードをHV運転モードに切り替えてもよい。
【0205】
(第4実施形態)
本実施形態では、第3実施形態の変形例を説明する。つまり、運転モードとしてEV運転モードが選択されている場合でも、これを駆動力比の低いHV運転モードに切り替えることで、冷却水温度Twを暖房用熱源として充分な温度となるまで上昇させる例を説明する。
【0206】
具体的には、図13に示すように、図6のステップS1103に続く制御フローを変更している。まず、図13のステップS1104では、第1実施形態と同様に、送風機32が作動しているか否かが判定される。そして、ステップS1104にて、送風機32が作動していないと判定された際には、ステップS1147へ進み、図9の図表にて決定された運転モードが維持されてステップS12へ進む。
【0207】
一方、ステップS1104にて、送風機32が作動していると判定された際には、S1146へ進み、電熱デフォッガが作動していること、吹出口モードがデフロスタモードになっていること、および、車両窓ガラスW近傍の相対湿度が95%より高くなっていることのうち少なくとも1つの条件を満たすか否かを判定する。
【0208】
そして、ステップS1146にて、上記の条件のうち少なくとも1つを満たすと判定された際には、ステップS1148へ進み、図9の図表にて決定された運転モードによらず、運転モードがHV運転モードに決定されてステップS12へ進む。一方、ステップS1146にて、上記の条件のうちいずれの条件も満たさないと判定された際には、ステップS1147へ進む。
【0209】
その他の作動および構成は、第1実施形態と同様である。従って、本実施形態の車両用空調装置1によれば、送風機32が作動していると判定された際には、S1146へ進み、電熱デフォッガが作動していること、吹出口モードがデフロスタモードになっていること、および、車両窓ガラスW近傍の相対湿度が95%より高くなっていることのうち少なくとも1つの満たす際に、内燃機関側駆動力がモータ側駆動力よりも大きくなるHV運転モードに切り替えて、冷却水温度Twを暖房用熱源として充分な温度となるまで上昇させることができる。
【0210】
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。
【0211】
(1)上述の実施形態では、外気温が−10℃より低い極低温時等に車両用空調装置1に高い暖房性能が要求されているものとして、補助加熱手段37、90を作動させて、さらに、例えば、第1実施形態では、EV運転モード時にHV運転モード時よりもエンジンEGの回転数の増加量を大きくして冷却水温度Twを上昇させているが、補助加熱手段37、90の作動条件によっては、この制御態様を変更することもできる。
【0212】
つまり、外気温が比較的高い温度条件(例えば、10℃)以上で、補助加熱手段37、90を作動させる車両用空調装置1においては、補助加熱手段37、90が作動していることによって、乗員の温感を充分に満足させることができる。このような場合には、例えば、第1実施形態では、補助加熱手段37、90が作動している際には、EV運転モード時のエンジンEGの回転数の増加量をHV運転モード時のエンジンEGの回転数の増加量を低下させてもよい。
【0213】
同様に、第2実施形態では、補助加熱手段37、90が作動している際には、EV運転モード時の駆動力比の低下度合をHV運転モード時の駆動力比の低下度合よりも減少させてもよい。さらに、第3実施形態では、補助加熱手段37、90が作動している際に、運転モードを図9の図表にて決定された運転モードに維持するようにし、作動していない際に、運転モードをHV運転モードに切り替えるようにしてもよい。
【0214】
さらに、電熱デフォッガについても、車両窓ガラスW近傍の相対湿度が比較的低い条件で作動させる車両用空調装置1においては、電熱デフォッガが作動していることによって、充分な防曇効果を得ることができる。このような場合には、例えば、第1実施形態では、例えば、電熱デフォッガが作動している際には、EV運転モード時のエンジンEGの回転数の増加量をHV運転モード時のエンジンEGの回転数の増加量を低下させてもよい。
【0215】
同様に、第2実施形態では、電熱デフォッガが作動している際には、EV運転モード時の駆動力比の低下度合をHV運転モード時の駆動力比の低下度合よりも減少させてもよい。さらに、第3実施形態では、電熱デフォッガが作動している際に、運転モードを図9の図表にて決定された運転モードに維持するようにし、作動していない際に、運転モードをHV運転モードに切り替えるようにしてもよい。
【0216】
(2)上述の実施形態では、本発明の車両用空調装置1を、プラグインハイブリッド車両の車両走行用の駆動力について詳細を述べていないが、本発明の車両用空調装置1は、エンジンEGおよび走行用電動モータの双方から直接駆動力を得て走行可能な、いわゆるパラレル型のハイブリッド車両に適用してもよい。
【0217】
また、エンジンEGを発電機80の駆動源として用い、発電された電力をバッテリ81に蓄え、さらに、バッテリ81に蓄えられた電力を供給されることによって作動する走行用電動モータから駆動力を得て走行する、いわゆるシリアル型のハイブリッド車両に適用してもよい。
【符号の説明】
【0218】
26 デフロスタ吹出口
26a デフロスタドア
36 ヒータコア
37 PTCヒータ
50 空調制御手段
50a 要求信号出力手段
52 外気温センサ
70 駆動力制御手段
90 シート空調装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン冷却水を熱源として車室内へ送風させる送風空気を加熱する車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジン(内燃機関)および走行用電動モータから走行用の駆動力を得るハイブリッド車両が知られており、特許文献1には、この種のハイブリッド車両に適用される車両用空調装置が開示されている。この特許文献1の車両用空調装置では、車室内の暖房を行う際に、エンジンの冷却水を熱源として車室内へ送風される送風空気を加熱している。
【0003】
ところが、この種のハイブリッド車両では、車両燃費向上のために、車両の停車時あるいは走行時であってもエンジンを停止させることがある。このため、車両用空調装置が車室内の暖房を行う際に、冷却水の温度が暖房用の熱源として充分な温度まで上昇していないことがある。
【0004】
そこで、特許文献1の車両用空調装置では、走行用の駆動力を出力させるためにエンジンを作動させる必要がない走行条件であっても、冷却水の温度が暖房用の熱源として充分な温度に上昇していない場合は、駆動力制御装置に対してエンジンの作動要求信号を出力して、冷却水の温度を暖房用の熱源として充分な温度となるまで上昇させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−174042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、昨今のハイブリッド車両には、車両停止時に外部電源(商用電源)から車両に搭載されたバッテリに充電することのできる、いわゆるプラグインハイブリッド車両と呼ばれるものがある。
【0007】
この種のプラグインハイブリッド車両では、車両停車時に外部電源からバッテリに充電しておくことによって、走行開始時のようにバッテリの蓄電残量が予め定めた走行用基準残量以上になっているときは、主に走行用電動モータから走行用の駆動力を得るEV運転モードで走行し、バッテリの蓄電残量が走行用基準残量よりも低くなったときには、主にエンジンから走行用の駆動力を得るHV運転モードで走行する。
【0008】
より詳細には、EV運転モードは、主に走行用電動モータが出力する駆動力によって車両を走行させ、車両走行負荷が高負荷となった際にはエンジンを作動させて走行用電動モータを補助する運転モードである。そのため、EV運転モードでは、エンジンから出力される駆動力に対する走行用電動モータから出力される駆動力の駆動力比が大きくなる。
【0009】
一方、HV運転モードは、主にエンジンが出力する駆動力によって車両を走行させ、車両走行負荷が高負荷となった際には走行用電動モータを作動させてエンジンを補助する運転モードである。そのため、HV運転モードでは、上述の駆動力比が小さくなる。
【0010】
そのため、特許文献1の車両用空調装置をプラグインハイブリッド車両に適用して、EV運転モード時に冷却水の温度を暖房用の熱源として充分な温度まで昇温させるためにエンジンを作動させたとしても、EV運転モード時には、もともと駆動力比が大きくエンジンの出力が小さくなるため、冷却水の温度を暖房用の熱源として充分な温度となるまで上昇させることができないことがある。
【0011】
その結果、特許文献1の車両用空調装置をプラグインハイブリッド車両に適用しても、車室内へ送風される送風空気を充分に加熱することができず、充分な暖房を実現することができなくなってしまうことが懸念される。
【0012】
上記点に鑑みて、本発明は、内燃機関から出力される駆動力が走行用電動モータから出力される駆動力よりも大きくなる運転モードを有するプラグインハイブリッド車両に適用される車両用空調装置において、充分な暖房を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、車両走行用の駆動力を出力する駆動源として、走行用電動モータおよび内燃機関(EG)を備える車両に適用され、さらに、車両の運転モードとして、内燃機関(EG)から出力される内燃機関側駆動力が走行用電動モータから出力されるモータ側駆動力よりも大きくなる第1運転モード、および、モータ側駆動力が内燃機関側駆動力よりも大きくなる第2運転モードを有する車両に適用される車両用空調装置であって、
内燃機関(EG)の冷却水を熱源として車室内へ送風される送風空気を加熱する加熱手段(36)と、車室内の暖房を行う際に、内燃機関(EG)の作動を制御する駆動力制御手段(70)に対して、内燃機関(EG)の回転数を増加させる要求信号を出力する要求信号出力手段(50a)とを備え、
要求信号出力手段(50a)は、要求信号として、第2運転モード時に増加させた回転数よりも第1運転モード時に増加させた前記回転数が高くなる信号を出力することを特徴とする。
【0014】
これによれば、車室内の暖房を行う際に、要求信号出力手段(50a)が、第1運転モード時に増加させる回転数よりも、モータ側駆動力が内燃機関側駆動力よりも大きくなって冷却水の温度が上昇しにくい第2運転モード時に増加させる回転数の方が高くなる要求信号を出力するので、第2運転モード時にも、冷却水の温度を暖房用の熱源として充分な温度となるまで上昇させることができる。
【0015】
その結果、加熱手段(36)にて車室内へ送風される送風空気を充分に加熱して、車室内の充分な暖房を実現することができる。
【0016】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の車両用空調装置において、さらに、外気温(Tam)を検出する外気温検出手段(52)を備え、要求信号出力手段(50a)は、要求信号として、外気温(Tam)の低下に伴って回転数を増加させる信号を出力することを特徴とする。
【0017】
これによれば、要求信号出力手段(50a)が、外気温(Tam)の低下に伴って内燃機関(EG)の回転数を増加させる要求信号を出力するので、低外気温時のように高い暖房能力が要求される際に、加熱手段(36)に高い加熱能力を発揮させることができる。さらに、外気温(Tam)が比較的高い場合には、回転数の増加度合を縮小させることができ、内燃機関(EG)の省燃費化を図ることができる。
【0018】
請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載の車両用空調装置において、さらに、乗員の操作によって車室内の目標温度(Tset)を設定する目標温度設定手段を備え、要求信号出力手段(50a)は、要求信号として、目標温度(Tset)の上昇に伴って回転数を増加させる信号を出力することを特徴とする。
【0019】
これによれば、要求信号出力手段(50a)が、目標温度(Tset)の上昇に伴って、内燃機関(EG)の回転数を増加させる要求信号を出力するので、乗員が高い車室内温度を要求している際に、加熱手段(36)に高い加熱能力を発揮させることができる。さらに、乗員が比較的低い車室内温度を要求している際には、回転数の増加度合を縮小させることができ、内燃機関(EG)の省燃費化を図ることができる。
【0020】
請求項4に記載の発明では、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、さらに、車室内の少なくとも一部の温度を上昇させる補助加熱手段(37、90)を備え、要求信号出力手段(50a)は、要求信号として、補助加熱手段(37、90)の作動時には、補助加熱手段(37、90)の非作動時よりも回転数を増加させる信号を出力することを特徴とする。
【0021】
これによれば、要求信号出力手段(50a)が、補助加熱手段(37、90)の作動時には、補助加熱手段(37、90)の非作動時よりも回転数を増加させる要求信号を出力するので、乗員の温感が補助加熱手段(37、90)によって補助される場合のように高い暖房能力が要求される際に、加熱手段(36)に高い加熱能力を発揮させることができる。
【0022】
請求項5に記載の発明では、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、さらに、乗員の操作によって、車室内の空調に必要とされる動力の省動力化を要求する省動力化要求信号を出力させる省動力化要求手段を備え、要求信号出力手段(50a)は、要求信号として、省動力化要求手段の投入時には、省動力化要求手段の非投入時よりも回転数を低下させる信号を出力することを特徴とする。
【0023】
これによれば、要求信号出力手段(50a)が、省動力化要求手段の投入時には、省動力化要求手段の非投入時よりも回転数を低下させるに要求信号を出力するので、乗員が省動力を要求している際に、内燃機関(EG)の省燃費化を図ることができる。さらに、省燃費意識の高い乗員にとっては、多少の暖房能力の低下は不快感を与えることもない。
【0024】
また、請求項6に記載の発明では、車両走行用の駆動力を出力する駆動源として、走行用電動モータおよび内燃機関(EG)を備える車両に適用され、さらに、車両の運転モードとして、内燃機関(EG)から出力される内燃機関側駆動力が走行用電動モータから出力されるモータ側駆動力よりも大きくなる第1運転モード、および、モータ側駆動力が内燃機関側駆動力よりも大きくなる第2運転モードを有する車両に適用される車両用空調装置であって、
内燃機関(EG)の冷却水を熱源として車室内へ送風される送風空気を加熱する加熱手段(36)と、第2運転モード時に車室内の暖房を行う際に、内燃機関(EG)および走行用電動モータの作動を制御する駆動力制御手段(70)に対して、内燃機関側駆動力に対するモータ側駆動力の駆動力比を低下させる要求信号を出力する要求信号出力手段(50a)とを備えることを特徴とする。
【0025】
これによれば、車室内の暖房を行う際に、要求信号出力手段(50a)が、第1運転モード時よりも駆動力比が小さくなって冷却水の温度を上昇させにくい第2運転モード時に、駆動力比を低下させる要求信号を出力する。この際、車両走行用の駆動力を変化させないためには、駆動力制御手段(70)が内燃機関側駆動力を増大させることになり、第2運転モード時にも、冷却水の温度を暖房用の熱源として充分な温度となるまで上昇させることができる。
【0026】
その結果、加熱手段(36)にて車室内へ送風される送風空気を充分に加熱して、車室内の充分な暖房を実現することができる。
【0027】
請求項7に記載の発明では、請求項6に記載の車両用空調装置において、さらに、外気温(Tam)を検出する外気温検出手段(52)を備え、要求信号出力手段(50a)は、要求信号として、外気温(Tam)の低下に伴って駆動力比を低下させる信号を出力することを特徴とする。
【0028】
これによれば、要求信号出力手段(50a)が、外気温(Tam)の低下に伴って駆動力比を低下させる要求信号を出力するので、モータ側駆動力が低下する。従って、駆動力制御手段(70)が内燃機関側駆動力を増大させるので、低外気温時のように高い暖房能力が要求される際に、加熱手段(36)に高い加熱能力を発揮させることができる。
【0029】
さらに、外気温(Tam)が比較的高い場合には、駆動力比の低下度合を縮小させることができ、内燃機関(EG)の省燃費化を図ることができる。
【0030】
請求項8に記載の発明では、請求項6または7に記載の車両用空調装置において、さらに、乗員の操作によって車室内の目標温度(Tset)を設定する目標温度設定手段を備え、要求信号出力手段(50a)は、要求信号として、目標温度の上昇に伴って駆動力比を低下させる信号であることを特徴とする。
【0031】
これによれば、要求信号出力手段(50a)が、目標温度(Tset)の上昇に伴って、駆動力比を低下させる要求信号を出力するので、モータ側駆動力が増加する。従って、駆動力制御手段(70)が内燃機関側駆動力を増大させるので、乗員が高い車室内温度を要求している際に、加熱手段(36)に高い加熱能力を発揮させることができる。さらに、乗員が比較的低い車室内温度を要求している際には、内燃機関(EG)の省燃費化を図ることができる。
【0032】
請求項9に記載の発明では、請求項6ないし8のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、さらに、車室内の少なくとも一部の温度を上昇させる補助加熱手段(37、90)を備え、要求信号出力手段(50a)は、要求信号として、補助加熱手段(37、90)の作動時には、補助加熱手段(37、90)の非作動時よりも駆動力比を低下させる信号を出力することを特徴とする。
【0033】
これによれば、要求信号出力手段(50a)が、補助加熱手段(37、90)の作動時には、駆動力比を低下させる要求信号を出力する。従って、駆動力制御手段(70)が内燃機関側駆動力を増大させるので、乗員の温感が補助加熱手段(37、90)によって補助される場合の高い暖房能力が要求される際に、加熱手段(36)に高い加熱能力を発揮させることができる。
【0034】
請求項10に記載の発明では、請求項6ないし9のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、さらに、乗員の操作によって、車室内の空調に必要とされる動力の省動力化を要求する省動力化要求信号を出力させる省動力化要求手段を備え、要求信号出力手段(50a)は、要求信号として、省動力化要求手段の投入時には、省動力化要求手段の非投入時よりも駆動力比を増加させる信号を出力することを特徴とする。
【0035】
これによれば、要求信号出力手段(50a)が、補助加熱手段(37、90)の作動時には、駆動力比を増加させる要求信号を出力するので、駆動力制御手段(70)が内燃機関側駆動力を増大させない。従って、乗員が省動力を要求している際に、内燃機関(EG)の省燃費化を図ることができる。さらに、省燃費意識の高い乗員にとっては、多少の暖房能力の低下は不快感を与えることもない。
【0036】
また、請求項11に記載の発明では、車両走行用の駆動力を出力する駆動源として、走行用電動モータおよび内燃機関(EG)を備える車両に適用され、さらに、車両の運転モードとして、内燃機関(EG)から出力される内燃機関側駆動力が走行用電動モータから出力されるモータ側駆動力よりも大きくなる第1運転モード、および、モータ側駆動力が内燃機関側駆動力よりも大きくなる第2運転モードを有する車両に適用される車両用空調装置であって、
内燃機関(EG)の冷却水を熱源として車室内へ送風される送風空気を加熱する加熱手段(36)と、第2運転モード時に車室内の暖房を行う際に、予め定めた所定条件が成立したときに内燃機関(EG)および走行用電動モータの作動を制御する駆動力制御手段(70)に対して、第1運転モードでの運転に切り替えることを要求する要求信号を出力する要求信号出力手段(50a)とを備えることを特徴とする。
【0037】
これによれば、要求信号出力手段(50a)が、車室内の暖房を行う際に、予め定めた所定条件が成立したときに内燃機関(EG)および走行用電動モータの作動を制御する駆動力制御手段(70)に対して、内燃機関側駆動力がモータ側駆動力よりも大きくなる第1運転モードでの運転に切り替えるので、冷却水の温度を暖房用の熱源として充分な温度となるまで上昇させることができる。
【0038】
その結果、加熱手段(36)にて車室内へ送風される送風空気を充分に加熱して、車室内の充分な暖房を実現することができる。
【0039】
なお、本請求項における所定条件とは、車両用空調装置に高い暖房能力が要求される条件とすればよい。例えば、請求項12に記載された発明のように、外気温(Tam)を検出する外気温検出手段(52)を備え、所定条件が成立したときとは、外気温(Tam)が予め定めた基準外気温以下となったときとしてもよい。
【0040】
また、請求項13に記載された発明のように、乗員の操作によって車室内の目標温度(Tset)を設定する目標温度設定手段を備え、所定条件が成立したときとは、目標温度(Tset)が予め定めた基準目標温度以上となったときとしてもよい。
【0041】
また、請求項14に記載された発明のように、車室内の少なくとも一部の温度を上昇させる補助加熱手段(37、90)を備え、所定条件が成立したときとは、補助加熱手段(37、90)が作動しているときとしてもよい。
【0042】
また、請求項15に記載された発明のように、乗員の操作によって、車室内の空調に必要とされる動力の省動力化を要求する省動力化要求信号を出力させる省動力化要求手段を備え、所定条件が成立したときとは、省動力化要求手段によって省動力化が要求されていないときとしてもよい。
【0043】
さらに、請求項11における所定条件とは、車両用空調装置に高い防曇能力が要求される条件とすればよい。すなわち、請求項16に記載された発明のように、車両窓ガラス(W)近傍の湿度を検出する湿度検出手段を備え、所定条件が成立したときとは、湿度検出手段によって検出された湿度が予め定めた基準湿度以上となったときとしてもよい。
【0044】
また、請求項17に記載された発明のように、少なくとも車両窓ガラス(W)に向けて送風空気を吹き出すデフロスタ吹出口(26)を含む複数の吹出口(25、26、27)から吹き出される風量割合を切り替えることによって、複数の吹出口モードを切り替える吹出口モード切替手段(24a、25a、26a)を備え、所定条件が成立したときとは、吹出口モード切替手段(24a、25a、26a)が、デフロスタ吹出口(26)から送風空気を吹き出すデフロスタモードに切り替えたときとしてもよい。
【0045】
さらに、請求項18に記載の発明のように、具体的に、補助加熱手段は、乗員が着座するシートの温度を上昇させるシート加熱手段(90)であってもよいし、請求項19に記載の発明のように、車両窓ガラス(W)を加熱する窓ガラス加熱手段であってもよい。
【0046】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】第1実施形態の車両用空調装置の全体構成図である。
【図2】第1実施形態の車両用空調装置の電気制御部を示すブロック図である。
【図3】第1実施形態のPTCヒータの回路図である。
【図4】第1実施形態の車両用空調装置の制御処理を示すフローチャートである。
【図5】第1実施形態の車両用空調装置の制御処理の要部を示すフローチャートである。
【図6】第1実施形態の車両用空調装置の制御処理の別の要部を示すフローチャートである。
【図7】第1実施形態の車両用空調装置の制御処理の別の要部を示すフローチャートである。
【図8】第1実施形態の車両用空調装置の制御処理の別の要部を示すフローチャートである。
【図9】第1実施形態の運転モードの決定状態を示す図表である。
【図10】第2実施形態の車両用空調装置の制御処理の要部を示すフローチャートである。
【図11】第2実施形態の車両用空調装置の制御処理の要部を示すフローチャートである。
【図12】第3実施形態の車両用空調装置の制御処理の要部を示すフローチャートである。
【図13】第4実施形態の車両用空調装置の制御処理の要部を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0048】
(第1実施形態)
以下、図面を用いて本発明の第1実施形態を説明する。図1は、本実施形態の車両用空調装置1の全体構成図であり、図2は、車両用空調装置1の電気制御部の構成を示すブロック図である。本実施形態では、この車両用空調装置1を、内燃機関(エンジン)EGおよび走行用電動モータから車両走行用の駆動力を得るハイブリッド車両に適用している。
【0049】
本実施形態のハイブリッド車両は、車両停車時に外部電源(商用電源)から供給された電力をバッテリ81に充電することのできるプラグインハイブリッド車両として構成されている。
【0050】
このプラグインハイブリッド車両は、車両走行開始前の車両停車時に外部電源からバッテリ81に充電しておくことによって、走行開始時のようにバッテリ81の蓄電残量SOCが予め定めた走行用基準残量以上になっているときには、主に走行用電動モータの駆動力によって走行する運転モードとなる。以下、この運転モードをEV運転モードという。また、EV運転モードは特許請求の範囲に記載された第2運転モードに対応している。
【0051】
一方、車両走行中にバッテリ81の蓄電残量SOCが走行用基準残量よりも低くなっているときには、主にエンジンEGの駆動力によって走行する運転モードとなる。以下、この運転モードをHV運転モードという。また、HV運転モードは特許請求の範囲に記載された第1運転モードに対応している。
【0052】
より詳細には、EV運転モードは、主に走行用電動モータが出力する駆動力によって車両を走行させる運転モードであるが、車両走行負荷が高負荷となった際にはエンジンEGを作動させて走行用電動モータを補助する。つまり、走行用電動モータから出力される走行用の駆動力(モータ側駆動力)がエンジンEGから出力される走行用の駆動力(内燃機関側駆動力)よりも大きくなる運転モードである。
【0053】
換言すると、内燃機関側駆動力に対するモータ側駆動力の駆動力比(モータ側駆動力/内燃機関側駆動力)が、少なくとも0.5より小さくなっている運転モードであると表現することもできる。
【0054】
一方、HV運転モードは、主にエンジンEGが出力する駆動力によって車両を走行させる運転モードであるが、車両走行負荷が高負荷となった際には走行用電動モータを作動させてエンジンEGを補助する。つまり、内燃機関側駆動力がモータ側駆動力よりも大きくなる運転モードである。換言すると、駆動力比(モータ側駆動力/内燃機関側駆動力)が、少なくとも0.5より大きくなっている運転モードであると表現することもできる。
【0055】
本実施形態のプラグインハイブリッド車両では、このようにEV運転モードとHV運転モードとを切り替えることによって、車両走行用の駆動力をエンジンEGのみから得る通常の車両に対してエンジンEGの燃料消費量を抑制して、車両燃費を向上させている。また、このようなEV運転モードとHV運転モードとの切り替え、および、駆動力比の制御は、後述する駆動力制御装置70によって制御される。
【0056】
さらに、エンジンEGから出力される駆動力は、車両走行用として用いられるのみならず、発電機80を作動させるためにも用いられる。そして、発電機80にて発電された電力および外部電源から供給された電力は、バッテリ81に蓄えることができ、バッテリ81に蓄えられた電力は、走行用電動モータのみならず、車両用空調装置1を構成する電動式構成機器をはじめとする各種車載機器に供給できる。
【0057】
次に、本実施形態の車両用空調装置1の詳細構成を説明する。本実施形態の車両用空調装置1は、図1に示す冷凍サイクル10、室内空調ユニット30、図2に示す空調制御装置50、シート空調装置90等を備えている。まず、室内空調ユニット30は、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置されて、その外殻を形成するケーシング31内に送風機32、蒸発器15、ヒータコア36、PTCヒータ37等を収容したものである。
【0058】
ケーシング31は、車室内に送風される送風空気の空気通路を形成しており、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)にて成形されている。ケーシング31内の送風空気流れ最上流側には、内気(車室内空気)と外気(車室外空気)とを切替導入する内外気切替手段としての内外気切替箱20が配置されている。
【0059】
より具体的には、内外気切替箱20には、ケーシング31内に内気を導入させる内気導入口21および外気を導入させる外気導入口22が形成されている。さらに、内外気切替箱20の内部には、内気導入口21および外気導入口22の開口面積を連続的に調整して、ケーシング31内へ導入させる内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる内外気切替ドア23が配置されている。
【0060】
従って、内外気切替ドア23は、ケーシング31内に導入される内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる吸込口モードを切り替える風量割合変更手段を構成する。より具体的には、内外気切替ドア23は、内外気切替ドア23用の電動アクチュエータ62によって駆動され、この電動アクチュエータ62は、後述する空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0061】
また、吸込口モードとしては、内気導入口21を全開とするとともに外気導入口22を全閉としてケーシング31内へ内気を導入する内気モード、内気導入口21を全閉とするとともに外気導入口22を全開としてケーシング31内へ外気を導入する外気モード、さらに、内気モードと外気モードとの間で、内気導入口21および外気導入口22の開口面積を連続的に調整することにより、内気と外気の導入比率を連続的に変化させる内外気混入モードがある。
【0062】
内外気切替箱20の空気流れ下流側には、内外気切替箱20を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する送風手段である送風機32(ブロア)が配置されている。この送風機32は、遠心多翼ファン(シロッコファン)を電動モータにて駆動する電動送風機であって、空調制御装置50から出力される制御電圧によって回転数(送風量)が制御される。従って、この電動モータは、送風機32の送風能力変更手段を構成している。
【0063】
送風機32の空気流れ下流側には、蒸発器15が配置されている。蒸発器15は、その内部を流通する冷媒と送風機32から送風された送風空気とを熱交換させて、送風空気を冷却する冷却用熱交換器として機能するものである。具体的には、蒸発器15は、圧縮機11、凝縮器12、気液分離器13および膨張弁14等とともに、蒸気圧縮式の冷凍サイクル10を構成している。
【0064】
圧縮機11は、エンジンルーム内に配置され、冷凍サイクル10において冷媒を吸入し、圧縮して吐出するものであり、吐出容量が固定された固定容量型圧縮機構11aを電動モータ11bにて駆動する電動圧縮機として構成されている。電動モータ11bは、インバータ61から出力される交流電圧によって、その作動(回転数)が制御される交流モータである。
【0065】
また、インバータ61は、後述する空調制御装置50から出力される制御信号に応じた周波数の交流電圧を出力する。そして、この回転数制御によって、圧縮機11の冷媒吐出能力が変更される。従って、電動モータ11bは、圧縮機11の吐出能力変更手段を構成している。
【0066】
凝縮器12は、ボンネット内に配置されて、内部を流通する冷媒と、室外送風機としての送風ファン12aから送風された車室外空気(外気)とを熱交換させることにより、圧縮機11吐出冷媒を凝縮させる室外熱交換器である。送風ファン12aは、空調制御装置50から出力される制御電圧によって稼働率、すなわち、回転数(送風空気量)が制御される電動式送風機である。
【0067】
気液分離器13は、凝縮器12にて凝縮された冷媒を気液分離して余剰冷媒を蓄えるとともに、液相冷媒のみを下流側に流すレシーバである。膨張弁14は、気液分離器13から流出した液相冷媒を減圧膨張させる減圧手段である。蒸発器15は、膨張弁14にて減圧膨張された冷媒を蒸発させて、冷媒に吸熱作用を発揮させる室内熱交換器である。これにより、蒸発器15は、送風空気を冷却する冷却用熱交換器として機能する。
【0068】
また、ケーシング31内において、蒸発器15の空気流れ下流側には、蒸発器15通過後の空気を流す加熱用冷風通路33、冷風バイパス通路34といった空気通路、並びに、加熱用冷風通路33および冷風バイパス通路34から流出した空気を混合させる混合空間35が形成されている。
【0069】
加熱用冷風通路33には、蒸発器15通過後の空気を加熱するためのヒータコア36およびPTCヒータ37が、送風空気流れ方向に向かってこの順に配置されている。ヒータコア36は、エンジンEGを冷却するエンジン冷却水(以下、単に冷却水という。)と蒸発器15通過後の送風空気とを熱交換させて、蒸発器15通過後の送風空気を加熱する加熱用熱交換器である。
【0070】
具体的には、ヒータコア36とエンジンEGは、冷却水配管によって接続されて、ヒータコア36とエンジンEGとの間を冷却水が循環する冷却水回路40が構成されている。そして、この冷却水回路40には、冷却水を循環させるための冷却水ポンプ40aが配置されている。この冷却水ポンプ40aは、空調制御装置50から出力される制御電圧によって回転数(冷却水循環流量)が制御される電動式の水ポンプである。
【0071】
PTCヒータ37は、PTC素子(正特性サーミスタ)を有し、このPTC素子に電力が供給されることによって発熱して、ヒータコア36通過後の空気を加熱する補助加熱手段としての電気ヒータである。なお、本実施形態のPTCヒータ37を作動させるために必要な消費電力は、冷凍サイクル10の圧縮機11を作動させるために必要な消費電力よりも少ない。
【0072】
より具体的には、このPTCヒータ37は、図3に示すように、複数(本実施形態では、3本)のPTCヒータ37a、37b、37cから構成されている。なお、図3は、本実施形態のPTCヒータ37の電気的接続態様を示す回路図である。
【0073】
図3に示すように、各PTCヒータ37a、37b、37cの正極側はバッテリ81側に接続され、負極側は各PTCヒータ37a、37b、37cが有する各スイッチ素子SW1、SW2、SW3を介して、グランド側へ接続されている。各スイッチ素子SW1、SW2、SW3は、各PTCヒータ37a、37b、37cが有する各PTC素子h1、h2、h3の通電状態(ON状態)と非通電状態(OFF状態)とを切り替えるものである。
【0074】
さらに、各スイッチ素子SW1、SW2、SW3の作動は、空調制御装置50から出力される制御信号によって、独立して制御される。従って、空調制御装置50は、各スイッチ素子SW1、SW2、SW3の通電状態と非通電状態とを独立に切り替えることによって、各PTCヒータ37a、37b、37cのうち、通電状態となり加熱能力を発揮するものを切り替えて、PTCヒータ37全体としての加熱能力を変化させることができる。
【0075】
一方、冷風バイパス通路34は、蒸発器15通過後の空気を、ヒータコア36およびPTCヒータ37を通過させることなく、混合空間35に導くための空気通路である。従って、混合空間35にて混合された送風空気の温度は、加熱用冷風通路33を通過する空気および冷風バイパス通路34を通過する空気の風量割合によって変化する。
【0076】
そこで、本実施形態では、蒸発器15の空気流れ下流側であって、加熱用冷風通路33および冷風バイパス通路34の入口側に、加熱用冷風通路33および冷風バイパス通路34へ流入させる冷風の風量割合を連続的に変化させるエアミックスドア39を配置している。
【0077】
従って、エアミックスドア39は、混合空間35内の空気温度(車室内へ送風される送風空気の温度)を調整する温度調整手段を構成する。より具体的には、エアミックスドア39は、エアミックスドア用の電動アクチュエータ63によって駆動され、この電動アクチュエータ63は、空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0078】
さらに、ケーシング31の送風空気流れ最下流部には、混合空間35から空調対象空間である車室内へ温度調整された送風空気を吹き出す吹出口24〜26が配置されている。この吹出口24〜26としては、具体的に、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すフェイス吹出口24、乗員の足元に向けて空調風を吹き出すフット吹出口25、および、車両前面窓ガラス内側面に向けて空調風を吹き出すデフロスタ吹出口26が設けられている。
【0079】
また、フェイス吹出口24、フット吹出口25、およびデフロスタ吹出口26の空気流れ上流側には、それぞれ、フェイス吹出口24の開口面積を調整するフェイスドア24a、フット吹出口25の開口面積を調整するフットドア25a、デフロスタ吹出口26の開口面積を調整するデフロスタドア26aが配置されている。
【0080】
これらのフェイスドア24a、フットドア25a、デフロスタドア26aは、吹出口モードを切り替える吹出口モード切替手段を構成するものであって、図示しないリンク機構を介して、吹出口モードドア駆動用の電動アクチュエータ64に連結されて連動して回転操作される。なお、この電動アクチュエータ64も、空調制御装置50から出力される制御信号によってその作動が制御される。
【0081】
また、吹出口モードとしては、フェイス吹出口24を全開してフェイス吹出口24から車室内乗員の上半身に向けて空気を吹き出すフェイスモード、フェイス吹出口24とフット吹出口25の両方を開口して車室内乗員の上半身と足元に向けて空気を吹き出すバイレベルモード、フット吹出口25を全開するとともにデフロスタ吹出口26を小開度だけ開口して、フット吹出口25から主に空気を吹き出すフットモード、およびフット吹出口25およびデフロスタ吹出口26を同程度開口して、フット吹出口25およびデフロスタ吹出口26の双方から空気を吹き出すフットデフロスタモードがある。
【0082】
さらに、乗員が後述する操作パネル60のスイッチをマニュアル操作することによって、デフロスタ吹出口を全開してデフロスタ吹出口から車両フロント窓ガラス内面に空気を吹き出すデフロスタモードとすることもできる。
【0083】
また、本実施形態の車両用空調装置1では、図示しない電熱デフォッガを備えている。電熱デフォッガは、車室内窓ガラスの内部あるいは表面に配置された電熱線であって、窓ガラスを加熱することで防曇あるいは窓曇り解消を行う窓ガラス加熱手段である。この電熱デフォッガについても空調制御装置50から出力される制御信号によって、その作動を制御できるようになっている。
【0084】
さらに、本実施形態の車両用空調装置1では、乗員が着座する座席の表面温度を上昇させる補助加熱手段としてのシート空調装置90を備えている。具体的には、このシート空調装置90は、座席表面に埋め込まれた電熱線で構成され、電力を供給されることによって発熱するシート加熱手段である。
【0085】
そして、室内空調ユニット10の各吹出口24〜26にから吹き出される空調風によって車室内の暖房が不十分となり得る際に作動させて乗員の暖房感を補う機能を果たす。なお、このシート空調装置90は、空調制御装置50から出力される制御信号によって作動が制御され、作動時には差席の表面温度を約40℃程度となるまで上昇させるように制御される。
【0086】
次に、図2により、本実施形態の電気制御部について説明する。空調制御装置50および駆動力制御装置70は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成され、そのROM内に記憶された空調制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続された各種機器の作動を制御する。
【0087】
駆動力制御装置70の出力側には、エンジンEGを構成する各種エンジン構成機器および走行用電動モータへ交流電流を供給する走行用インバータ等が接続されている。各種エンジン構成機器としては、具体的に、エンジンEGを始動させるスタータ、エンジンEGに燃料を供給する燃料噴射弁(インジェクタ)の駆動回路(いずれも図示せず)等が接続されている。
【0088】
また、駆動力制御装置70の入力側には、バッテリ81の端子間電圧VBを検出する電圧計、バッテリ81へ流れ込む電流ABinあるいはバッテリ81から流れる電流ABioutを検出する電流計、アクセル開度Accを検出するアクセル開度センサ、エンジン回転数Neを検出するエンジン回転数センサ、車速Vvを検出する車速センサ(いずれも図示せず)等の種々のエンジン制御用のセンサ群が接続されている。
【0089】
空調制御装置50の出力側には、送風機32、圧縮機11の電動モータ11b用のインバータ61、送風ファン12a、各種電動アクチュエータ62、63、64、第1〜第3PTCヒータ37a、37b、37c、冷却水ポンプ40a、シート空調装置90等が接続されている。
【0090】
また、空調制御装置50の入力側には、車室内温度Trを検出する内気センサ51、外気温Tamを検出する外気センサ52(外気温検出手段)、車室内の日射量Tsを検出する日射センサ53、圧縮機11吐出冷媒温度Tdを検出する吐出温度センサ54(吐出温度検出手段)、圧縮機11吐出冷媒圧力Pdを検出する吐出圧力センサ55(吐出圧力検出手段)、蒸発器15からの吹出空気温度(蒸発器温度)TEを検出する蒸発器温度センサ56(蒸発器温度検出手段)、エンジンEGから流出した冷却水の冷却水温度Twを検出する冷却水温度Twセンサ58、車室内の窓ガラス近傍の車室内空気の相対湿度を検出する湿度検出手段としての湿度センサ、窓ガラス近傍の車室内空気の温度を検出する窓ガラス近傍温度センサ、および窓ガラス表面温度を検出する窓ガラス表面温度センサ等の種々の空調制御用のセンサ群が接続されている。
【0091】
なお、本実施形態の蒸発器温度センサ56は、具体的に蒸発器15の熱交換フィン温度を検出している。もちろん、蒸発器温度センサ56として、蒸発器15のその他の部位の温度を検出する温度検出手段を採用してもよいし、蒸発器15を流通する冷媒自体の温度を直接検出する温度検出手段を採用してもよい。また、湿度センサ、窓ガラス近傍温度センサ、および窓ガラス表面温度センサの検出値は、窓ガラス表面の相対湿度RHWを算出するために用いられる。
【0092】
さらに、空調制御装置50の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された操作パネル60に設けられた各種空調操作スイッチからの操作信号が入力される。操作パネル60に設けられた各種空調操作スイッチとしては、具体的に、車両用空調装置1の作動スイッチ、オートスイッチ、運転モードの切替スイッチ、吹出口モードの切替スイッチ、送風機32の風量設定スイッチ、車室内温度設定スイッチ、エコノミースイッチ、現在の車両用空調装置1の作動状態等を表示する表示部等が設けられている。
【0093】
オートスイッチは、乗員の操作によって車両用空調装置1の自動制御を設定あるいは解除する自動制御設定手段である。車室内温度設定スイッチは、乗員の操作によって車室内の目標温度Tsetを設定する目標温度設定手段である。また、エコノミースイッチは、乗員の操作によって車室内の空調に必要とされる動力の省動力化を要求する省動力化要求信号を出力させる省動力化要求手段である。
【0094】
さらに、エコノミースイッチを投入することにより、EV運転モード時に、走行用電動モータを補助するために作動させるエンジンEGの作動頻度を低下させる信号が駆動力制御装置70に出力される。
【0095】
また、空調制御装置50および駆動力制御装置70は、電気的に接続されて通信可能に構成されている。これにより、一方の制御装置に入力された検出信号あるいは操作信号に基づいて、他方の制御装置が出力側に接続された各種機器の作動を制御することもできる。例えば、空調制御装置50が駆動力制御装置70へエンジンEGの要求信号を出力することによって、エンジンEGを作動させること、あるいは、エンジンEGの回転数を変化させることができる。
【0096】
なお、空調制御装置50および駆動力制御装置は、その出力側に接続された各種制御対象機器を制御する制御手段が一体に構成されたものであるが、それぞれの制御対象機器の作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が、それぞれの制御対象機器の作動を制御する制御手段を構成している。
【0097】
例えば、空調制御装置50のうち、圧縮機11の電動モータ11bに接続されたインバータ61から出力される交流電圧の周波数を制御して、圧縮機11の冷媒吐出能力を制御する構成が圧縮機制御手段を構成し、送風手段である送風機32の作動を制御して、送風機32の送風能力を制御する構成が送風機制御手段を構成する。さらに、駆動力制御装置70と制御信号の送受信を行う構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が、要求信号出力手段50aを構成している。
【0098】
次に、図4〜9により、上記構成における本実施形態の車両用空調装置1の作動を説明する。図4は、本実施形態の車両用空調装置1のメインルーチンとしての制御処理を示すフローチャートである。この制御処理は、車両用空調装置1の作動スイッチが投入された状態で、オートスイッチが投入されるとスタートする。なお、図4〜図8中の各制御ステップは、空調制御装置50が有する各種の機能実現手段を構成している。
【0099】
まず、ステップS1では、フラグ、タイマ等の初期化、および上述した電動アクチュエータを構成するステッピングモータの初期位置合わせ等のイニシャライズが行われる。なお、このイニシャライズでは、フラグや演算値のうち、前回の車両用空調装置1の作動終了時に記憶された値が維持されるものもある。
【0100】
次に、ステップS2では、操作パネル60の操作信号等を読み込んでステップS3へ進む。具体的な操作信号としては、車室内温度設定スイッチによって設定される車室内の目標温度Tset、吸込口モードスイッチの設定信号、エコノミースイッチの操作に応じて出力される省動力化要求信号等がある。
【0101】
次に、ステップS3では、空調制御に用いられる車両環境状態の信号、すなわち上述のセンサ群51〜58等の検出信号を読み込む。また、このステップS3では、駆動力制御装置70の入力側に接続されたセンサ群の検出信号、および駆動力制御装置70から出力される制御信号等の一部も、駆動力制御装置70から読み込んでいる。
【0102】
次に、ステップS4では、車室内吹出空気の目標吹出温度TAOを算出する。目標吹出温度TAOは、下記数式F1により算出される。
TAO=Kset×Tset−Kr×Tr−Kam×Tam−Ks×Ts+C…(F1)
ここで、Tsetは車室内温度設定スイッチによって設定された車室内設定温度、Trは内気センサ51によって検出された車室内温度(内気温)、Tamは外気センサ52によって検出された外気温、Tsは日射センサ53によって検出された日射量である。Kset、Kr、Kam、Ksは制御ゲインであり、Cは補正用の定数である。
【0103】
続くステップS5〜S13では、空調制御装置50に接続された各種機器の制御状態が決定される。まず、ステップS5では、エアミックスドア39の目標開度SWを目標吹出温度TAO、蒸発器温度センサ56によって検出された吹出空気温度TE、エアミックス前の温風温度TWDに基づいて算出する。
【0104】
具体的には、目標開度SWは、次の数式F2により算出できる。
SW=[{TAO−(TE+2)}/{TWD−(TE+2)}]×100(%)…(F2)
エアミックス前の温風温度TWDとは、加熱用冷風通路33に配置されたヒータコア36、およびPTCヒータ37の加熱能力に応じて決定される値であって、具体的には、次の数式F3により算出できる。
TWD=Tw×0.8+TE×0.2+ΔTptc…(F3)
ここで、Twは冷却水温度Twセンサ58によって検出された冷却水温度Tw、ΔTptcは、PTCヒータ37の作動による吹出温上昇量、すなわち吹出口から車室内へ吹き出される空調風の温度(吹出温)のうちPTCヒータ37の作動が寄与した温度上昇量である。本実施形態では、具体的に、ΔTptcは、PTCヒータ37の作動時には、10℃、非作動時には、0℃としている。
【0105】
つまり、式F3では、エアミックス前の温風温度TWDを、ヒータコア36による吹出温上昇量(Tw×0.8+TE×0.2)とPTCヒータ37の作動による吹出温上昇量ΔTptcとの合計値として求めている。
【0106】
ヒータコア36による吹出温上昇量(Tw×0.8+TE×0.2)は、ヒータコア36の熱交換効率が100%とすれば、送風空気はヒータコア36にて冷却水温度Twまで上昇すると考えられる。これに対して、実際のヒータコア36では、熱交換効率が80%前後となってしまうことから0.8という係数を決定している。
【0107】
また、本発明者らの検討により、ヒータコア36へ流入する送風空気の温度によっても、ヒータコア36による吹出温上昇量が変化することが判っている。ヒータコア36へ流入する送風空気の温度は、蒸発器15にて冷却された冷風の温度であるから、吹出空気温度TEを採用することができる。そして、このヒータコア36へ流入する送風空気の温度の吹出温上昇量に対する寄与度として実験的に求められた0.2という係数を採用している。
【0108】
一方、PTCヒータ37の作動による吹出温上昇量ΔTptcは、PTCヒータ37の消費電力W(Kw)、空気密度ρ(kg/m3)、空気比熱Cp、PTCヒータ37を通過する風量であるPTC通過風量Va(m3/h)を用いて、数式F4により演算できる。
ΔTptc=W/ρ/Cp/Va×3600…(F4)
ここで、PTC通過風量Vaとしては、送風機32の送風空気量に対して、前回のステップS5で算出したエアミックス開度SWを考慮したものを用いている。
【0109】
なお、SW=0%は、エアミックスドア39の最大冷房位置であり、冷風バイパス通路34を全開し、加熱用冷風通路33を全閉する。これに対し、SW=100%は、エアミックスドア39の最大暖房位置であり、冷風バイパス通路34を全閉し、加熱用冷風通路33を全開する。
【0110】
次のステップS6では、送風機32の送風能力(送風量)を決定する。具体的には、ステップS4にて決定された目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して、送風機32の送風能力(具体的には、電動モータに印加するブロワモータ電圧)を決定する。
【0111】
より詳細には、本実施形態では、TAOの極低温域(最大冷房域)および極高温域(最大暖房域)でブロワモータ電圧を最大値付近の高電圧にして、送風機32の風量を最大風量付近に制御する。また、TAOが極低温域から中間温度域に向かって上昇すると、TAOの上昇に応じてブロワモータ電圧を減少して、送風機32の風量を減少させる。
【0112】
さらに、TAOが極高温域から中間温度域に向かって低下すると、TAOの低下に応じてブロワモータ電圧を減少して、送風機32の風量を減少させる。また、TAOが所定の中間温度域内に入ると、ブロワモータ電圧を最小値にして送風機32の風量を最小値にする。
【0113】
次のステップS7では、吸込口モード、すなわち内外気切替箱の切替状態を決定する。この吸込口モードもTAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して決定する。本実施形態では、基本的に外気を導入する外気モードが優先されるが、TAOが極低温域となって高い冷房性能を得たい場合等に内気を導入する内気モードが選択される。さらに、外気の排ガス濃度を検出する排ガス濃度検出手段を設け、排ガス濃度が予め定めた基準濃度以上となったときに、内気モードを選択するようにしてもよい。
【0114】
次のステップS8では、吹出口モードを決定する。この吹出口モードも、TAOに基づいて、予め空調制御装置50に記憶された制御マップを参照して決定する。本実施形態では、TAOが低温域から高温域へと上昇するにつれて吹出口モードをフットモード→バイレベルモード→フェイスモードへと順次切り替える。
【0115】
従って、夏季は主にフェイスモード、春秋季は主にバイレベルモード、そして冬季は主にフットモードが選択される。さらに、湿度センサの検出値から窓ガラスに曇りが発生する可能性が高い場合には、フットデフロスタモードあるいはデフロスタモードを選択するようにしてもよい。
【0116】
次のステップS9では、圧縮機11の冷媒吐出能力(具体的には、回転数(rpm))を決定する。このステップS9では、ステップS4で決定したTAO等に基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して、室内蒸発器15からの吹出空気温度Teの目標吹出温度TEOを決定する。
【0117】
そして、この目標吹出温度TEOと吹出空気温度Teの偏差En(TEO−Te)を算出し、今回算出された偏差Enから前回算出された偏差En−1を減算した偏差変化率Edot(En−(En−1))とを用いて、予め空調制御装置50に記憶されたメンバシップ関数とルールとに基づいたファジー推論に基づいて、前回の圧縮機回転数fCn−1に対する回転数変化量Δf_Cを求める。
【0118】
また、本実施形態の空調制御装置50に記憶されたメンバシップ関数とルールでは、上述の偏差Enと偏差変化率Edotに基づいて室内蒸発器15の着霜が防止されるようにΔf_Cが決定される。さらに、前回の圧縮機回転数fn−1に回転数変化量Δf_Cを加算した値を今回の圧縮機回転数fnとして更新する。なお、この圧縮機回転数fnの更新は、1秒毎の制御周期で実行される。
【0119】
次のステップS10では、PTCヒータ37の作動本数および電熱デフォッガの作動状態を決定する。まず、PTCヒータ37の作動本数の決定について説明すると、ステップS10では、外気温Tam、エアミックス開度SW、冷却水温度Twに応じて、PTCヒータ37の作動本数を決定する。
【0120】
このステップS10の詳細については、図5のフローチャートを用いて説明する。まず、ステップS101では、外気温に基づいてPTCヒータ37の作動の要否を判定する。具体的には、外気センサ52が検出した外気温が所定温度(本実施形態では、26℃)よりも高いか否かを判定する。
【0121】
ステップS101にて、外気温が26℃よりも高いと判定された場合は、PTCヒータ37による吹出温アシストは必要無いと判断して、ステップS105に進み、PTCヒータ37の作動本数を0本に決定する。一方、ステップS101で、外気温が26℃よりも低いと判定された場合は、ステップS102に進む。
【0122】
ステップS102、S103では、エアミックス開度SWに基づいてPTCヒータ37作動の要否を決定する。ここで、エアミックス開度SWが小さくなることは、加熱用冷風通路33にて送風空気を加熱する必要性が少なくなることを意味していることから、エアミックス開度SWが小さくなるに伴ってPTCヒータ37を作動させる必要性も少なくなる。
【0123】
そこで、ステップS102では、ステップS5で決定したエアミックス開度SWを予め定めた基準開度と比較して、エアミックス開度SWが第1基準開度(本実施形態では、100%)以下であれば、PTCヒータ37を作動させる必要は無いものとして、PTCヒータ作動フラグf(SW)=OFFとする。
【0124】
一方、エアミックス開度が第2基準開度(本実施形態では、110%)以上であれば、PTCヒータ37を作動させる必要があるものとして、PTCヒータ作動フラグf(SW)=ONとする。なお、第1基準開度と第2基準開度との開度差は、制御ハンチング防止のためのヒステリシス幅として設定されている。
【0125】
そして、ステップS103では、ステップS102で決定したPTCヒータ作動フラグf(SW)がOFFであれば、ステップS105に進み、PTCヒータの作動本数を0本に決定する。一方、PTCヒータ作動フラグf(SW)がONであれば、ステップS104へ進み、PTCヒータ37の作動本数を決定する。
【0126】
ステップS104では、冷却水温度Twに応じてPTCヒータ37の作動本数を決定する。具体的には、冷却水温度Twが上昇過程にあるときは、冷却水温度Tw≧第1所定温度T1であれば作動本数を0本とし、第1所定温度T1>冷却水温度Tw≧第2所定温度T2であれば作動本数を1本とし、第2所定温度T2>冷却水温度Tw≧第3所定温度T3であれば作動本数を2本とし、第3所定温度T3>冷却水温度Tw≧第2所定温度T4であれば作動本数を3本とする。
【0127】
一方、冷却水温度Twが下降過程にあるときは、第4所定温度T4≦冷却水温度Twであれば作動本数を3本とし、第4所定温度T4<冷却水温度Tw≦第3所定温度T3であれば作動本数を2本とし、第3所定温度T3<冷却水温度Tw≦第2所定温度T2であれば作動本数を1本とし、第2所定温度T1<冷却水温度Twであれば作動本数を0本としてステップS11へ進む。
【0128】
なお、各所定温度には、T1>T2>T3>T4の関係があり、本実施形態では、具体的に、T1=67.5℃、T2=65℃、T3=62.5℃、T4=60℃としている。また、各所定温度の温度差は、制御ハンチング防止のためのヒステリシス幅として設定されている。
【0129】
また、電熱デフォッガについては、車室内の湿度および温度から窓ガラスに曇りが発生する可能性が高い場合、あるいは窓ガラスに曇りが発生している場合は、電熱デフォッガを作動させる。
【0130】
次のステップS11では、空調制御装置50から駆動力制御装置70へ出力される要求信号を決定する。この要求信号としては、エンジンEGの作動要求信号(エンジンON要求信号)あるいはエンジンEGの作動停止信号(エンジンOFF要求信号)、さらに、エンジンEGの作動時あるいは作動を要求した際のエンジンEGの回転数の回転数要求信号等がある。
【0131】
ここで、車両走行用の駆動力をエンジンEGのみから得る通常の車両では、走行時に常時エンジンを作動させているので冷却水も常時高温となる。従って、通常の車両では冷却水をヒータコア14に流通させることで十分な暖房性能を発揮することができる。
【0132】
これに対して、本実施形態のプラグインハイブリッド車両では、EV運転モードで走行している際に、走行用電動モータのみから走行用の駆動力を得て走行することがあり得る。このため、高い暖房性能が必要な場合であっても、冷却水温度Twを暖房用の熱源として充分な温度となるまで上昇していないことがある。
【0133】
そこで、本実施形態では、高い暖房性能が必要にもかかわらず冷却水温度Twが予め定めた基準冷却水温度Twよりも低いときは、冷却水温度Twを所定温度以上に維持するため、空調制御装置50から駆動力制御装置70に対して、エンジンEGを適切な回転数が作動させるように、作動要求信号および回転数の変更要求信号をしている。これにより、冷却水温度Twを上昇させて高い暖房性能を得るようにしている。
【0134】
ステップS11の詳細については、図6〜図8のフローチャートを用いて説明する。まず、ステップS1101で、冷却水温度Twに基づくエンジンの作動要求信号あるいは作動停止信号の出力を行うか否かの判定に用いる判定閾値としてのエンジンON水温およびエンジンOFF水温を算出する。なお、エンジンON水温は、停止要求信号を出力することを決定する判定基準となる冷却水温度Twであり、エンジンOFF水温は、エンジンの作動停止信号を出力することを決定する判定基準となる冷却水温度Twである。
【0135】
エンジンOFF水温は、実際の車室内吹出空気温度がおおよそ目標吹出温度TAOとなるために要求される冷却水温度Twと、70℃とのうちの小さい方が採用される。お、実際の車室内吹出空気温度がおおよそ目標吹出温度TAOとなるために要求される冷却水温度Twは、下記数式F5を用いて演算される。
{(TAO−ΔTptc)−(TE×0.2)}/0.8…(F5)
なお、上記数式F5は、前述のステップS5にて説明したヒータコア14による吹出温上昇量(Tw×0.8+TE×0.2)とPTCヒータ37の作動による吹出温上昇量ΔTptcとの合計値がTAOと等しいものとして、Twの値を求めるように変形した式に相当する。
【0136】
一方、エンジンON水温は、頻繁にエンジンがON/OFFするのを防止するため、エンジンOFF水温よりも所定の値(本実施形態では、5℃)だけ低く設定される。この所定の値は、制御ハンチング防止のためのヒステリシス幅として設定されている。なお、エンジンOFF水温およびエンジンON水温を予め定めた固定値(例えば、KTw=45℃、KTw2=40℃)としてもよい。
【0137】
次に、ステップS1102では、冷却水温度Twに応じて、エンジンEGの作動要求信号あるいは作動停止信号を出力するか否かの仮の要求信号フラグf(Tw)を決定する。具体的には、冷却水温度TwがステップS1101で決定されたエンジンON水温より低ければ、仮の要求信号フラグf(Tw)=ONとしてエンジンEGの作動要求信号を出力することを仮決定し、冷却水温度TwがエンジンOFF水温より高ければ、仮の要求信号フラグf(Tw)=OFFとしてエンジンEGの作動停止信号を出力することを仮決定する。
【0138】
次に、ステップS1103は、送風機32の作動状態、外気温Tam、仮の要求信号フラグf(Tw)に基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して、駆動力制御装置70へ出力される要求信号を決定して、図7に示すステップS1104へ進む。
【0139】
具体的には、ステップS1103では、送風機32が作動しているときであって、かつ、目標吹出温度TAOが28℃未満の場合は、仮の要求信号フラグf(Tw)によらず、エンジンEGを停止させる要求信号に決定する。
【0140】
また、送風機32が作動しているときであって、かつ、目標吹出温度TAOが28℃以下の場合は、仮の要求信号フラグf(Tw)がONであれば、エンジンEGを作動させる要求信号に決定し、仮の要求信号フラグf(Tw)がOFFであれば、エンジンEGを停止させる要求信号に決定する。さらに、送風機32が作動していないときは、目標吹出温度TAOおよび仮の要求信号フラグf(Tw)によらず、エンジンEGを停止させる要求信号に決定する。
【0141】
続く図7に示すステップS1104〜S1111およびS1117の制御では、エンジンEGの回転数の回転数要求信号を決定する。まず、ステップS1104では、送風機32が作動しているか否かが判定される。ステップS1104にて、送風機32が作動していると判定された際には、ステップS1105へ進む。一方、ステップS1104にて、送風機32が作動していないと判定された際には、ステップS1117へ進み、エンジンEGの要求回転数を1300rpmに決定してステップS12へ進む。
【0142】
ステップS1105では、エコノミースイッチが投入されているか否かが判定される。ステップS1105にて、エコノミースイッチが投入されていないと判定された際には、ステップS1106へ進む。一方、ステップS1105にて、エコノミースイッチが投入されていると判定された際には、ステップS1117へ進み、エンジンEGの要求回転数を1300rpmに決定してステップS12へ進む。
【0143】
ステップS1106では、外気温Tamが予め定めた基準外気温(本実施形態では、−10℃)より低くなっているか否かが判定される。ステップS1106にて、外気温Tamが基準外気温より低くなっていると判定された際には、ステップS1107へ進む。一方、ステップS1106にて、外気温Tamが基準外気温より低くなっていないと判定された際には、ステップS1117へ進み、エンジンEGの要求回転数を1300rpmに決定してステップS12へ進む。
【0144】
ステップS1107では、ステップS5で決定したエアミックス開度SWが100%以上、すなわちエアミックスドア39が最大暖房位置になっているか否かが判定される。ステップS1107にて、エアミックスドア39が最大暖房位置になっていると判定された際には、ステップS1108へ進む。一方、ステップS1107にて、エアミックスドア39が最大暖房位置になっていないと判定された際には、ステップS1117へ進み、エンジンEGの要求回転数を1300rpmに決定してステップS12へ進む。
【0145】
ステップS1108では、操作パネル60の車室内温度設定スイッチによって設定された目標温度Tsetが予め定めた基準目標温度(本実施形態では、28℃)より高くなっているか否かが判定される。ステップS1108にて、目標温度Tsetが基準目標温度より高くなっていると判定された際には、ステップS1109へ進む。一方、ステップS1108にて、目標温度Tsetが基準目標温度より高くなっていないと判定された際には、ステップS1117へ進み、エンジンEGの要求回転数を1300rpmに決定してステップS12へ進む。
【0146】
ステップS1109では、内気センサ51によって検出された車室内温度Trが予め定めた基準車室内温度(本実施形態では、24℃)より低くなっているか否かが判定される。ステップS1109にて、車室内温度Trが基準車室内温度より低くなっていると判定された際には、ステップS1110へ進む。一方、ステップS1109にて、車室内温度Trが基準車室内温度よりも低くなっていないと判定された際には、ステップS1117へ進み、エンジンEGの要求回転数を1300rpmに決定してステップS12へ進む。
【0147】
続く、ステップS1110では、車両の運転モードがEV運転モードになっているかあるいはHV運転モードになっているか否かが判定される。なお、本実施形態のハイブリッド車両にでは、前述の如く、バッテリ81の蓄電残量SOCが予め定めた走行用基準残量以上となっている際には、バッテリ81の蓄電残量SOCが充分であるものとしてEV運転モードとし、バッテリの蓄電残量SOCが予め定めて走行用基準残量より少ない際には、バッテリ81の蓄電残量SOCが不充分であるものとして、HV運転モードとする。
【0148】
より具体的には、図9の図表に示すように運転モードが決定されている。また、乗員の操作によって、駆動力制御装置70に対して、EV運転モードを実行しないことを要求するEVキャンセルスイッチが投入(ON)されている際には、バッテリ81の蓄電残量SOCが充分であっても、HV運転モードとする。
【0149】
そして、ステップS1110にて、HV運転モードであると判定された際には、ステップS1111へ進み、車速センサによって検出された車速Vvに基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して、エンジンEGの要求回転数を決定して、ステップS12へ進む。具体的には、本実施形態では、車速Vvの低下に伴って、エンジンEGの要求回転数を低下させるように決定する。
【0150】
一方、ステップS1110にて、EV運転モードであると判定された際には、図8に示すステップS1112へ進む。ステップS1112では、PTCヒータ37が作動しているか否かが判定される。ステップS1112にて、PTCヒータ37が作動していると判定された際には、ステップS1116へ進む。一方、ステップS1112にて、PTCヒータ37が作動していないと判定された際には、ステップS1113へ進む。
【0151】
ステップS1113では、シート空調装置が作動しているか否かが判定されるステップS1113にて、シート空調装置90が作動していると判定された際には、ステップS1116へ進む。一方、ステップS1113にて、シート空調装置90が作動していないと判定された際には、ステップS1114へ進む。
【0152】
ステップS1114では、電熱デフォッガが作動しているか否かが判定されるステップS1114にて、電熱デフォッガが作動している(通電されている)と判定された際には、ステップS1116へ進む。一方、ステップS1114にて、電熱デフォッガが作動していないと判定された際には、ステップS1115へ進む。
【0153】
ステップS1115では、ステップS1111と同様に、車速Vvに基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して、エンジンEGの要求回転数を決定して、ステップS12へ進む。具体的には、本実施形態では、車速Vvの低下に伴って、エンジンEGの要求回転数を低下させるように決定する。この際、車速Vvが0km〜100kmの範囲で、ステップS1111にて決定されるエンジンEGの要求回転数よりも高い値が決定される。
【0154】
また、ステップS1116では、ステップS1111と同様に、車速Vvに基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して、エンジンEGの要求回転数を決定して、ステップS12へ進む。具体的には、本実施形態では、車速Vvの低下に伴って、エンジンEGの要求回転数を低下させるように決定する。
【0155】
この際、車速Vvが0km〜100kmの範囲で、ステップS1111にて決定されるエンジンEGの要求回転数よりも高い値となって、ステップS1115にて決定されるエンジンEGの要求回転数よりも低い値が決定される。
【0156】
以上の如く、本実施形態では、ステップS1110にて運転モードがEV運転モードであると判定されると、HV運転モードと判定された場合よりもエンジンEGの要求回転数が高い値となる。
【0157】
つまり、モータ側駆動力が内燃機関側駆動力よりも大きくなり、冷却水温度Twが上昇しにくいEV運転モード時に、HV運転モード時よりもエンジンEGの要求回転数が高くなるように要求信号が決定される。換言すると駆動力比(モータ側駆動力/内燃機関側駆動力)が比較的高くなり、冷却水温度Twが上昇しにくいEV運転モード時に、HV運転モード時よりもエンジンEGの要求回転数が増加するように要求信号が決定される。
【0158】
さらに、EV運転モードでは、PTCヒータ37、シート空調装置90および電熱デフォッガのうち、少なくとも1つが作動しているときは、いずれも作動していない場合よりもエンジンEGの要求回転数が高い値となる。
【0159】
つまり、EV運転モードであっても、補助加熱手段であるPTCヒータ37あるいはシート空調装置90が作動している際には、これらが作動していない際よりもエンジンEGの要求回転数が高くなるように要求信号が決定される。また、EVモードであっても、電熱デフォッガが作動している際には、これが作動していない際よりもエンジンEGの要求回転数が増加するように要求信号が決定される。
【0160】
次のステップS12では、冷却水回路40にてヒータコア36とエンジンEGとの間で冷却水を循環させる冷却水ポンプ40aを作動させるか否かを決定する。このステップS12の詳細については、図11のフローチャートを用いて説明する。まず、ステップS121では、冷却水温度Twが吹出空気温度TEより高いか否かを判定する。
【0161】
ステップS121にて、冷却水温度Twが吹出空気温度TE以下となっている場合は、ステップS124へ進み、冷却水ポンプ40aを停止(OFF)させることを決定する。その理由は、冷却水温度Twが吹出空気温度TE以下となっている場合に冷却水をヒータコア36へ流すと、ヒータコア36を流れる冷却水が蒸発器15通過後の空気を冷却してしまうことになるため、かえって吹出口からの吹出空気温度を低くしてしまうからである。
【0162】
一方、ステップS121にて、冷却水温度Twが吹出空気温度TEより高い場合は、ステップS122へ進む。ステップS122では、送風機32が作動しているか否かが判定される。ステップS122にて、送風機32が作動していないと判定された場合は、ステップS124に進み、省動力化のために冷却水ポンプ40aを停止(OFF)させることを決定する。
【0163】
一方、ステップS122にて送風機32が作動していると判定された場合は、ステップS123へ進み、冷却水ポンプ40aを作動(ON)させることを決定する。これにより、冷却水ポンプ40aが作動して、冷却水が冷媒回路内を循環するので、ヒータコア36を流れる冷却水とヒータコア36を通過する空気とを熱交換させて送風空気を加熱することができる。
【0164】
次に、ステップS13では、シート空調装置90の作動要否を決定する。シート空調装置90の作動状態は、ステップS5で決定した目標吹出温度TAO、ステップS10で決定されたPTCヒータ37の作動状態、ステップS2で読み込んだ車室内の目標温度Tset、外気温Tamに基づいて、予め空調制御装置50に記憶されている制御マップを参照して決定される。
【0165】
具体的には、目標吹出温度TAOが100℃より低くなっており、かつ、PTCヒータ37が作動しているとき、すなわち、第1〜第3PTCヒータ37a、15b、15cのうち1本以上が作動しているときであって、かつ、外気温Tamが予め定めた基準外気温以下になっており、さらに、目標温度Tsetが予め定めた基準シート空調作動温度より低い場合には、シート空調装置90を作動(ON)させることを決定する。
【0166】
さらに、目標吹出温度TAOが100℃以上になっている場合は、PTCヒータ37の作動状態、外気温Tam、目標温度Tsetによらず、シート空調装置90を作動(ON)させることを決定する。さらに、上記のシート空調装置90を作動(ON)させる条件が成立しても、操作パネル60のエコノミースイッチが投入されている際には、シート空調装置90を非作動(OFF)としてもよい。
【0167】
ステップS14では、上述のステップS5〜S13で決定された制御状態が得られるように、空調制御装置50より各種機器32、12a、61、62、63、64、12a、37、40a、80に対して制御信号および制御電圧が出力される。さらに、要求信号出力手段50cからエンジン制御装置70に対して、ステップS11にて決定されたエンジンEGの作動およびエンジンEGの要求回転数の要求信号が送信される。
【0168】
次のステップS15では、制御周期τの間待機し、制御周期τの経過を判定するとステップS2に戻るようになっている。なお、本実施形態は制御周期τを250msとしている。これは、車室内の空調制御は、エンジン制御等と比較して遅い制御周期であってもその制御性に悪影響を与えないからである。これにより、車両内における空調制御のための通信量を抑制して、エンジン制御等のように高速制御を行う必要のある制御系の通信量を十分に確保することができる。
【0169】
本実施形態の車両用空調装置1は、以上の如く作動するので、送風機32から送風された送風空気が、蒸発器15にて冷却される。そして蒸発器15にて冷却された冷風は、エアミックスドア39の開度に応じて、加熱用冷風通路33および冷風バイパス通路34へ流入する。
【0170】
加熱用冷風通路33へ流入した冷風は、ヒータコア36およびPTCヒータ37を通過する際に加熱されて、混合空間35にて冷風バイパス通路34を通過した冷風と混合される。そして、混合空間35にて温度調整された空調風が、混合空間35から各吹出口を介して車室内に吹き出される。
【0171】
この車室内に吹き出される空調風によって車室内の内気温Trが外気温Tamより低く冷やされる場合には、車室内の冷房が実現されており、一方、内気温Trが外気温Tamより高く加熱される場合には、車室内の暖房が実現されることになる。
【0172】
さらに、本実施形態の車両用空調装置1では、制御ステップS11にて説明したように、HV運転モード時に出力される要求回転数よりも、モータ側駆動力が内燃機関側駆動力よりも大きくなって冷却水の温度が上昇しにくいEV運転モード時に出力される要求回転数の方が高くなるので、EV運転モード時にも、冷却水の温度を暖房用の熱源として充分な温度となるまで上昇させることができる。
【0173】
従って、EV運転モード時にヒータコア36にて車室内へ送風される送風空気を充分に加熱することができ、車室内の充分な暖房を実現することができる。
【0174】
この際、ステップS1106にて説明したように、EV運転モードおよびHV運転モードによらず、外気温Tamが基準外気温以下になっている場合には、外気温Tamが基準外気温より高くなっている場合よりもエンジンEGの要求回転数を増加させている。
【0175】
つまり、外気温Tamの低下に伴ってエンジンEGの要求回転数を増加させているので、低外気温時のように高い暖房能力が要求される場合に、冷却水温度Twを暖房用熱源として充分な温度となるまで上昇させることができる。さらに、外気温Tamが基準外気温より高くなっている場合には、エンジンEGの要求回転数を低下させているので、エンジンEGの省燃費化を図ることもできる。
【0176】
また、ステップS1108にて説明したように、EV運転モードおよびHV運転モードによらず、目標温度Tsetが基準目標温度より高くなっている場合は、目標温度Tsetが基準目標温度以下になっている場合よりもエンジンEGの要求回転数を増加させている。
【0177】
つまり、目標温度Tsetの上昇に伴ってエンジンEGの要求回転数を増加させているので、乗員によって高い暖房能力が要求される場合に、冷却水温度Twを暖房用熱源として充分な温度となるまで上昇させることができる。さらに、目標温度Tsetが基準目標温度以下になっている場合は、エンジンEGの要求回転数を低下させているので、エンジンEGの省燃費化を図ることもできる。
【0178】
また、ステップS1112〜S1116にて説明したように、EV運転モードであっても、補助加熱手段であるPTCヒータ37あるいはシート空調装置90のうち少なくとも一方が作動している場合には、これらが作動していない際よりもエンジンEGの要求回転数が増加するように要求信号が出力される。従って、乗員の温感が補助加熱手段37、90によって補助される場合のように高い暖房能力が要求される場合に、冷却水温度Twを暖房用熱源として充分な温度となるまで上昇させることができる。
【0179】
さらに、別の補助加熱手段である電熱デフォッガが作動している場合には、これが作動していない際よりもエンジンEGの要求回転数が増加するように要求信号が出力される。従って、車両窓ガラスWの曇りを防止するために高い防曇能力が要求される場合に、冷却水温度Twを暖房用熱源として充分な温度となるまで上昇させることができる。
【0180】
また、ステップS1105にて説明したように、操作パネル60のエコノミースイッチが投入されている場合には、EV運転モードおよびHV運転モードによらず、さらに、補助加熱手段37、90、電熱デフォッガの作動状態によらず、エコノミースイッチが投入されていない場合よりも要求回転数が低下するように要求信号が出力される。
【0181】
つまり、乗員が省動力を要求している場合に、要求回転数が低下するように要求信号を出力して、乗員の意志(すなわち、省燃費化ニーズ)に適う省燃費化を図ることができる。さらに、省燃費意識の高い乗員にとっては、多少の暖房能力の低下は不快感を与えることもない。
【0182】
また、ステップS1111、1115、1116にて説明したように、車速Vvの増加に伴って、要求回転数が増加するように要求信号が出力されるので、車速Vvの増加に伴って増加する走行負荷に応じて、要求回転数を変化させることもできる。
【0183】
(第2実施形態)
第1実施形態では、冷却水温度Twを暖房用熱源として充分な温度となるまで上昇させるために、エンジンEGの要求回転数が高くすることによって駆動力比(モータ側駆動力/内燃機関側駆動力)を低下させた例を説明したが、本実施形態では、第1実施形態のステップS11の制御態様を変更して、モータ側駆動力を低下させることによって駆動力比を低下させる例を説明する。
【0184】
具体的には、図10、図11に示すように、図6のステップS1103に続く制御フローを変更している。まず、図10のステップS1104〜S1110では、第1実施形態と同様に、送風機32が作動しているか否か、エコノミースイッチが投入されているか否か、外気温Tamが予め定めた基準外気温より低くなっているか否か、エアミックスドア39が最大暖房位置になっているか否か、目標温度Tsetが予め定めた基準目標温度より高くなっているか否か、車室内温度Trが予め定めた基準車室内温度より低くなっているか否か、運転モードがEV運転モードになっているかあるいはHV運転モードになっているか否かが判定される。
【0185】
そして、例えば、ステップS1104にて、送風機32が作動していないと判定された際には、ステップS1127へ進み、モータ側駆動力を低下させないことを決定してステップS12へ進む。ステップS1105〜S1109においても同様である。
【0186】
さらに、ステップS1110にて、HV運転モードであると判定された際には、ステップS1121へ進み、モータ側駆動力を25%低下させることを決定してステップS12へ進む。一方、ステップS1110にて、EV運転モードであると判定された際には、図11に示すS1112へ進む。ステップS1112〜S1114では、第1実施形態と同様に、PTCヒータ37が作動しているか否か、シート空調装置が作動しているか否か、電熱デフォッガが作動しているか否かが判定される。
【0187】
そして、例えば、ステップS1112にて、PTCヒータ37が作動していると判定された際には、ステップS1126へ進み、モータ側駆動力を−75%低減させることを決定してステップS12へ進む。一方、ステップS1112にて、PTCヒータ37が作動していると判定された際には、ステップS1125へ進み、モータ側駆動力を−50%低減させることを決定してステップS12へ進む。
【0188】
以上の如く、本実施形態では、ステップS1110にて運転モードがEV運転モードであると判定されると、HV運転モードと判定された場合よりもモータ側駆動力を低減させる量が多くなるように要求信号が決定される。すなわち、モータ側駆動力を低減させて、駆動力比(モータ側駆動力/内燃機関側駆動力)が低くなるように要求信号が決定される。
【0189】
さらに、EV運転モードでは、PTCヒータ37、シート空調装置90および電熱デフォッガのうち、少なくとも1つが作動しているときは、いずれも作動していない場合よりもモータ側駆動力を低減させるエンジンEGの要求回転数が高い値となる。
【0190】
つまり、EV運転モードであっても、補助加熱手段であるPTCヒータ37あるいはシート空調装置90が作動している際には、これらが作動していない際よりもモータ側駆動力を低減させる量が多くなるように要求信号が決定される。また、EVモードであっても、電熱デフォッガが作動している際には、これが作動していない際よりもモータ側駆動力を低減させる量が多くなるように要求信号が決定される。
【0191】
その他の作動および構成は、第1実施形態と同様である。従って、本実施形態の車両用空調装置1によれば、第1実施形態と同等の効果を得ることができる。
【0192】
つまり、本実施形態の車両用空調装置1によれば、モータ側駆動力が内燃機関側駆動力よりも大きくなって冷却水温度Twが上昇しにくいEV運転モード時に、駆動力比を低下させる要求信号が出力されるので、車両走行用の駆動力を変化させないためには、内燃機関側駆動力を増大させることになる。
【0193】
従って、EV運転モード時に、冷却水温度Twを暖房用熱源として充分な温度となるまで上昇させてヒータコア36にて車室内へ送風される送風空気を充分に加熱することができ、車室内の充分な暖房を実現することができる。
【0194】
この際、図10のステップS1106、S1108に図示されているように、外気温Tamが基準外気温以下になっている場合あるいは目標温度Tsetが基準目標温度より高くなっている場合に、駆動力比を低下させる要求信号が出力されるので、第1実施形態と同様に、高い暖房能力が要求される際に、冷却水温度Twを暖房用熱源として充分な温度となるまで上昇させることができる。
【0195】
また、図11のステップS1112〜S1116に図示されているように、EV運転モードであっても、補助加熱手段であるPTCヒータ37あるいはシート空調装置90が作動している場合には、これらが作動していない場合よりも駆動力比を低下させる要求信号が出力されるので、第1実施形態と同様に、高い暖房能力が要求される場合に、冷却水温度Twを暖房用熱源として充分な温度となるまで上昇させることができる。
【0196】
さらに、別の補助加熱手段である電熱デフォッガが作動している場合には、これが作動していない場合よりも駆動力比を低下させる要求信号が出力される。従って、第1実施形態と同様に、車両窓ガラスWの曇りを防止するために高い防曇能力が要求される場合に、冷却水温度Twを暖房用熱源として充分な温度となるまで上昇させることができる。
【0197】
また、図10のステップS1105に図示したように、操作パネル60のエコノミースイッチが投入されている場合には、駆動力比を低下させないので、第1実施形態と同様に、乗員の意志(すなわち、省燃費化ニーズ)に適う省燃費化を図ることができる。
【0198】
(第3実施形態)
本実施形態では、第1実施形態のステップS11の制御態様を変更して、第1実施形態の図9の図表で説明した運転モードとしてEV運転モードが選択されている場合でも、これを駆動力比の低いHV運転モードに切り替えることで、冷却水温度Twを暖房用熱源として充分な温度となるまで上昇させる例を説明する。
【0199】
具体的には、図12に示すように、図6のステップS1103に続く制御フローを変更している。まず、図12のステップS1104〜S1109では、第1実施形態と同様に、送風機32が作動しているか否か、エコノミースイッチが投入されているか否か、外気温Tamが予め定めた基準外気温より低くなっているか否か、エアミックスドア39が最大暖房位置になっているか否か、目標温度Tsetが予め定めた基準目標温度より高くなっているか否か、車室内温度Trが予め定めた基準車室内温度より低くなっているか否かが判定される。
【0200】
そして、例えば、ステップS1104にて、送風機32が作動していないと判定された際には、ステップS1137へ進み、図9の図表にて決定された運転モードが維持されてステップS12へ進む。続くステップS1105〜S1109においても同様である。さらに、ステップS1112、S1113では、第1実施形態と同様に、PTCヒータ37が作動しているか否か、シート空調装置が作動しているか否かが判定される。
【0201】
そして、例えば、ステップS1112にて、PTCヒータ37が作動していると判定された際には、ステップS1136へ進み、図9の図表にて決定された運転モードによらず、運転モードがHV運転モードに決定されてステップS12へ進む。一方、ステップS1112にて、PTCヒータ37が作動していないと判定された際には、ステップS1125へ進み、図9の図表にて決定された運転モードが維持される。
【0202】
その他の作動および構成は、第1実施形態と同様である。従って、本実施形態の車両用空調装置1によれば、PTCヒータ37およびシート空調装置90のうち少なくとも一方が作動している場合のように、高い暖房能力が要求されている際に、内燃機関側駆動力がモータ側駆動力よりも大きくなるHV運転モードに切り替えて、冷却水温度Twを暖房用熱源として充分な温度となるまで上昇させることができる。
【0203】
なお、本実施形態では、送風機32が作動しており、エコノミースイッチが投入されておらず、外気温Tamが予め定めた基準外気温より低くなっており、エアミックスドア39が最大暖房位置になっており、目標温度Tsetが予め定めた基準目標温度より高くなっており、さらに、車室内温度Trが予め定めた基準車室内温度より低くなっている場合であって、PTCヒータ37およびシート空調装置90のうち少なくとも一方が作動しているという条件が成立した際に、HV運転モードに切り替えているが、運転モードをHV運転モードに切り替える条件は、これに限定されない。
【0204】
もちろん、外気温Tamが基準外気温より高くなっている場合に、運転モードをHV運転モードに切り替えてもよい。また、目標温度Tsetが予め定めた基準目標温度以上となっている場合に、運転モードをHV運転モードに切り替えてもよい。また、エコノミースイッチが投入されていない場合に、運転モードをHV運転モードに切り替えてもよい。
【0205】
(第4実施形態)
本実施形態では、第3実施形態の変形例を説明する。つまり、運転モードとしてEV運転モードが選択されている場合でも、これを駆動力比の低いHV運転モードに切り替えることで、冷却水温度Twを暖房用熱源として充分な温度となるまで上昇させる例を説明する。
【0206】
具体的には、図13に示すように、図6のステップS1103に続く制御フローを変更している。まず、図13のステップS1104では、第1実施形態と同様に、送風機32が作動しているか否かが判定される。そして、ステップS1104にて、送風機32が作動していないと判定された際には、ステップS1147へ進み、図9の図表にて決定された運転モードが維持されてステップS12へ進む。
【0207】
一方、ステップS1104にて、送風機32が作動していると判定された際には、S1146へ進み、電熱デフォッガが作動していること、吹出口モードがデフロスタモードになっていること、および、車両窓ガラスW近傍の相対湿度が95%より高くなっていることのうち少なくとも1つの条件を満たすか否かを判定する。
【0208】
そして、ステップS1146にて、上記の条件のうち少なくとも1つを満たすと判定された際には、ステップS1148へ進み、図9の図表にて決定された運転モードによらず、運転モードがHV運転モードに決定されてステップS12へ進む。一方、ステップS1146にて、上記の条件のうちいずれの条件も満たさないと判定された際には、ステップS1147へ進む。
【0209】
その他の作動および構成は、第1実施形態と同様である。従って、本実施形態の車両用空調装置1によれば、送風機32が作動していると判定された際には、S1146へ進み、電熱デフォッガが作動していること、吹出口モードがデフロスタモードになっていること、および、車両窓ガラスW近傍の相対湿度が95%より高くなっていることのうち少なくとも1つの満たす際に、内燃機関側駆動力がモータ側駆動力よりも大きくなるHV運転モードに切り替えて、冷却水温度Twを暖房用熱源として充分な温度となるまで上昇させることができる。
【0210】
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。
【0211】
(1)上述の実施形態では、外気温が−10℃より低い極低温時等に車両用空調装置1に高い暖房性能が要求されているものとして、補助加熱手段37、90を作動させて、さらに、例えば、第1実施形態では、EV運転モード時にHV運転モード時よりもエンジンEGの回転数の増加量を大きくして冷却水温度Twを上昇させているが、補助加熱手段37、90の作動条件によっては、この制御態様を変更することもできる。
【0212】
つまり、外気温が比較的高い温度条件(例えば、10℃)以上で、補助加熱手段37、90を作動させる車両用空調装置1においては、補助加熱手段37、90が作動していることによって、乗員の温感を充分に満足させることができる。このような場合には、例えば、第1実施形態では、補助加熱手段37、90が作動している際には、EV運転モード時のエンジンEGの回転数の増加量をHV運転モード時のエンジンEGの回転数の増加量を低下させてもよい。
【0213】
同様に、第2実施形態では、補助加熱手段37、90が作動している際には、EV運転モード時の駆動力比の低下度合をHV運転モード時の駆動力比の低下度合よりも減少させてもよい。さらに、第3実施形態では、補助加熱手段37、90が作動している際に、運転モードを図9の図表にて決定された運転モードに維持するようにし、作動していない際に、運転モードをHV運転モードに切り替えるようにしてもよい。
【0214】
さらに、電熱デフォッガについても、車両窓ガラスW近傍の相対湿度が比較的低い条件で作動させる車両用空調装置1においては、電熱デフォッガが作動していることによって、充分な防曇効果を得ることができる。このような場合には、例えば、第1実施形態では、例えば、電熱デフォッガが作動している際には、EV運転モード時のエンジンEGの回転数の増加量をHV運転モード時のエンジンEGの回転数の増加量を低下させてもよい。
【0215】
同様に、第2実施形態では、電熱デフォッガが作動している際には、EV運転モード時の駆動力比の低下度合をHV運転モード時の駆動力比の低下度合よりも減少させてもよい。さらに、第3実施形態では、電熱デフォッガが作動している際に、運転モードを図9の図表にて決定された運転モードに維持するようにし、作動していない際に、運転モードをHV運転モードに切り替えるようにしてもよい。
【0216】
(2)上述の実施形態では、本発明の車両用空調装置1を、プラグインハイブリッド車両の車両走行用の駆動力について詳細を述べていないが、本発明の車両用空調装置1は、エンジンEGおよび走行用電動モータの双方から直接駆動力を得て走行可能な、いわゆるパラレル型のハイブリッド車両に適用してもよい。
【0217】
また、エンジンEGを発電機80の駆動源として用い、発電された電力をバッテリ81に蓄え、さらに、バッテリ81に蓄えられた電力を供給されることによって作動する走行用電動モータから駆動力を得て走行する、いわゆるシリアル型のハイブリッド車両に適用してもよい。
【符号の説明】
【0218】
26 デフロスタ吹出口
26a デフロスタドア
36 ヒータコア
37 PTCヒータ
50 空調制御手段
50a 要求信号出力手段
52 外気温センサ
70 駆動力制御手段
90 シート空調装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両走行用の駆動力を出力する駆動源として、走行用電動モータおよび内燃機関(EG)を備える車両に適用され、
さらに、前記車両の運転モードとして、前記内燃機関(EG)から出力される内燃機関側駆動力が前記走行用電動モータから出力されるモータ側駆動力よりも大きくなる第1運転モード、および、前記モータ側駆動力が前記内燃機関側駆動力よりも大きくなる第2運転モードを有する車両に適用される車両用空調装置であって、
前記内燃機関(EG)の冷却水を熱源として車室内へ送風される送風空気を加熱する加熱手段(36)と、
前記車室内の暖房を行う際に、前記内燃機関(EG)の作動を制御する駆動力制御手段(70)に対して、前記内燃機関(EG)の回転数を増加させる要求信号を出力する要求信号出力手段(50a)とを備え、
前記要求信号出力手段(50a)は、前記要求信号として、前記第2運転モード時に増加させた前記回転数よりも前記第1運転モード時に増加させた前記回転数が高くなる信号を出力することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
外気温(Tam)を検出する外気温検出手段(52)を備え、
前記要求信号出力手段(50a)は、前記要求信号として、前記外気温(Tam)の低下に伴って前記回転数を増加させる信号を出力することを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
乗員の操作によって車室内の目標温度(Tset)を設定する目標温度設定手段を備え、
前記要求信号出力手段(50a)は、前記要求信号として、前記目標温度(Tset)の上昇に伴って前記回転数を増加させる信号を出力することを特徴とする請求項1または2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
車室内の少なくとも一部の温度を上昇させる補助加熱手段(37、90)を備え、
前記要求信号出力手段(50a)は、前記要求信号として、前記補助加熱手段(37、90)の作動時には、前記補助加熱手段(37、90)の非作動時よりも前記回転数を増加させる信号を出力することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項5】
乗員の操作によって、前記車室内の空調に必要とされる動力の省動力化を要求する省動力化要求信号を出力する省動力化要求手段を備え、
前記要求信号出力手段(50a)は、前記要求信号として、前記省動力化要求信号が出力されている際には、前記省動力化要求信号が出力されていないときよりも前記回転数を低下させる信号を出力することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項6】
車両走行用の駆動力を出力する駆動源として、走行用電動モータおよび内燃機関(EG)を備える車両に適用され、
さらに、前記車両の運転モードとして、前記内燃機関(EG)から出力される内燃機関側駆動力が前記走行用電動モータから出力されるモータ側駆動力よりも大きくなる第1運転モード、および、前記モータ側駆動力が前記内燃機関側駆動力よりも大きくなる第2運転モードを有する車両に適用される車両用空調装置であって、
前記内燃機関(EG)の冷却水を熱源として車室内へ送風される送風空気を加熱する加熱手段(36)と、
前記第2運転モード時に前記車室内の暖房を行う際に、前記内燃機関(EG)および前記走行用電動モータの作動を制御する駆動力制御手段(70)に対して、前記内燃機関側駆動力に対する前記モータ側駆動力の駆動力比を低下させる要求信号を出力する要求信号出力手段(50a)とを備えることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項7】
外気温(Tam)を検出する外気温検出手段(52)を備え、
前記要求信号出力手段(50a)は、前記要求信号として、前記外気温(Tam)の低下に伴って前記駆動力比を低下させる信号を出力することを特徴とする請求項6に記載の車両用空調装置。
【請求項8】
乗員の操作によって車室内の目標温度(Tset)を設定する目標温度設定手段を備え、
前記要求信号出力手段(50a)は、前記要求信号として、前記目標温度の上昇に伴って前記駆動力比を低下させる信号であることを特徴とする請求項6または7に記載の車両用空調装置。
【請求項9】
車室内の少なくとも一部の温度を上昇させる補助加熱手段(37、90)を備え、
前記要求信号出力手段(50a)は、前記要求信号として、前記補助加熱手段(37、90)の作動時には、前記補助加熱手段(37、90)の非作動時よりも前記駆動力比を低下させる信号を出力することを特徴とする請求項6ないし8のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項10】
乗員の操作によって、前記車室内の空調に必要とされる動力の省動力化を要求する省動力化要求信号を出力する省動力化要求手段を備え、
前記要求信号出力手段(50a)は、前記要求信号として、前記省動力化要求信号が出力されている際には、前記省動力化要求信号が出力されていないときよりも前記駆動力比を増加させる信号を出力することを特徴とする請求項6ないし9のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項11】
車両走行用の駆動力を出力する駆動源として、走行用電動モータおよび内燃機関(EG)を備える車両に適用され、
さらに、前記車両の運転モードとして、前記内燃機関(EG)から出力される内燃機関側駆動力が前記走行用電動モータから出力されるモータ側駆動力よりも大きくなる第1運転モード、および、前記モータ側駆動力が前記内燃機関側駆動力よりも大きくなる第2運転モードを有する車両に適用される車両用空調装置であって、
前記内燃機関(EG)の冷却水を熱源として車室内へ送風される送風空気を加熱する加熱手段(36)と、
前記第2運転モード時に前記車室内の暖房を行う際に、予め定めた所定条件が成立したときに前記内燃機関(EG)および前記走行用電動モータの作動を制御する駆動力制御手段(70)に対して、前記第1運転モードでの運転に切り替えることを要求する要求信号を出力する要求信号出力手段(50a)とを備えることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項12】
外気温(Tam)を検出する外気温検出手段(52)を備え、
前記所定条件が成立したときとは、前記外気温(Tam)が予め定めた基準外気温以下となったときであることを特徴とする請求項11に記載の車両用空調装置。
【請求項13】
乗員の操作によって車室内の目標温度(Tset)を設定する目標温度設定手段を備え、
前記所定条件が成立したときとは、前記目標温度(Tset)が予め定めた基準目標温度以上となったときであることを特徴とする請求項11または12に記載の車両用空調装置。
【請求項14】
車室内の少なくとも一部の温度を上昇させる補助加熱手段(37、90)を備え、
前記所定条件が成立したときとは、前記補助加熱手段(37、90)が作動しているときであることを特徴とする請求項11ないし13のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項15】
乗員の操作によって、前記車室内の空調に必要とされる動力の省動力化を要求する省動力化要求信号を出力させる省動力化要求手段を備え、
前記所定条件が成立したときとは、前記省動力化要求信号が出力されていないときであることを特徴とする請求項11ないし14のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項16】
車両窓ガラス(W)近傍の湿度を検出する湿度検出手段を備え、
前記所定条件が成立したときとは、前記湿度検出手段によって検出された湿度が予め定めた基準湿度以上となったときであることを特徴とする請求項11ないし15のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項17】
少なくとも車両窓ガラス(W)に向けて前記送風空気を吹き出すデフロスタ吹出口(26)を含む複数の吹出口(25、26、27)から吹き出される風量割合を切り替えることによって、複数の吹出口モードを切り替える吹出口モード切替手段(24a、25a、26a)を備え、
前記所定条件が成立したときとは、前記吹出口モード切替手段(24a、25a、26a)が、前記デフロスタ吹出口(26)から前記送風空気を吹き出すデフロスタモードに切り替えたときであることを特徴とする請求項11ないし15のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項18】
前記補助加熱手段(37、90)は、乗員が着座するシートの温度を上昇させるシート加熱手段(90)であることを特徴とする請求項4、9、14のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項19】
前記補助加熱手段(37、90)は、車両窓ガラス(W)を加熱する窓ガラス加熱手段であることを特徴とする請求項4、9、14のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項1】
車両走行用の駆動力を出力する駆動源として、走行用電動モータおよび内燃機関(EG)を備える車両に適用され、
さらに、前記車両の運転モードとして、前記内燃機関(EG)から出力される内燃機関側駆動力が前記走行用電動モータから出力されるモータ側駆動力よりも大きくなる第1運転モード、および、前記モータ側駆動力が前記内燃機関側駆動力よりも大きくなる第2運転モードを有する車両に適用される車両用空調装置であって、
前記内燃機関(EG)の冷却水を熱源として車室内へ送風される送風空気を加熱する加熱手段(36)と、
前記車室内の暖房を行う際に、前記内燃機関(EG)の作動を制御する駆動力制御手段(70)に対して、前記内燃機関(EG)の回転数を増加させる要求信号を出力する要求信号出力手段(50a)とを備え、
前記要求信号出力手段(50a)は、前記要求信号として、前記第2運転モード時に増加させた前記回転数よりも前記第1運転モード時に増加させた前記回転数が高くなる信号を出力することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
外気温(Tam)を検出する外気温検出手段(52)を備え、
前記要求信号出力手段(50a)は、前記要求信号として、前記外気温(Tam)の低下に伴って前記回転数を増加させる信号を出力することを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
乗員の操作によって車室内の目標温度(Tset)を設定する目標温度設定手段を備え、
前記要求信号出力手段(50a)は、前記要求信号として、前記目標温度(Tset)の上昇に伴って前記回転数を増加させる信号を出力することを特徴とする請求項1または2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
車室内の少なくとも一部の温度を上昇させる補助加熱手段(37、90)を備え、
前記要求信号出力手段(50a)は、前記要求信号として、前記補助加熱手段(37、90)の作動時には、前記補助加熱手段(37、90)の非作動時よりも前記回転数を増加させる信号を出力することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項5】
乗員の操作によって、前記車室内の空調に必要とされる動力の省動力化を要求する省動力化要求信号を出力する省動力化要求手段を備え、
前記要求信号出力手段(50a)は、前記要求信号として、前記省動力化要求信号が出力されている際には、前記省動力化要求信号が出力されていないときよりも前記回転数を低下させる信号を出力することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項6】
車両走行用の駆動力を出力する駆動源として、走行用電動モータおよび内燃機関(EG)を備える車両に適用され、
さらに、前記車両の運転モードとして、前記内燃機関(EG)から出力される内燃機関側駆動力が前記走行用電動モータから出力されるモータ側駆動力よりも大きくなる第1運転モード、および、前記モータ側駆動力が前記内燃機関側駆動力よりも大きくなる第2運転モードを有する車両に適用される車両用空調装置であって、
前記内燃機関(EG)の冷却水を熱源として車室内へ送風される送風空気を加熱する加熱手段(36)と、
前記第2運転モード時に前記車室内の暖房を行う際に、前記内燃機関(EG)および前記走行用電動モータの作動を制御する駆動力制御手段(70)に対して、前記内燃機関側駆動力に対する前記モータ側駆動力の駆動力比を低下させる要求信号を出力する要求信号出力手段(50a)とを備えることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項7】
外気温(Tam)を検出する外気温検出手段(52)を備え、
前記要求信号出力手段(50a)は、前記要求信号として、前記外気温(Tam)の低下に伴って前記駆動力比を低下させる信号を出力することを特徴とする請求項6に記載の車両用空調装置。
【請求項8】
乗員の操作によって車室内の目標温度(Tset)を設定する目標温度設定手段を備え、
前記要求信号出力手段(50a)は、前記要求信号として、前記目標温度の上昇に伴って前記駆動力比を低下させる信号であることを特徴とする請求項6または7に記載の車両用空調装置。
【請求項9】
車室内の少なくとも一部の温度を上昇させる補助加熱手段(37、90)を備え、
前記要求信号出力手段(50a)は、前記要求信号として、前記補助加熱手段(37、90)の作動時には、前記補助加熱手段(37、90)の非作動時よりも前記駆動力比を低下させる信号を出力することを特徴とする請求項6ないし8のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項10】
乗員の操作によって、前記車室内の空調に必要とされる動力の省動力化を要求する省動力化要求信号を出力する省動力化要求手段を備え、
前記要求信号出力手段(50a)は、前記要求信号として、前記省動力化要求信号が出力されている際には、前記省動力化要求信号が出力されていないときよりも前記駆動力比を増加させる信号を出力することを特徴とする請求項6ないし9のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項11】
車両走行用の駆動力を出力する駆動源として、走行用電動モータおよび内燃機関(EG)を備える車両に適用され、
さらに、前記車両の運転モードとして、前記内燃機関(EG)から出力される内燃機関側駆動力が前記走行用電動モータから出力されるモータ側駆動力よりも大きくなる第1運転モード、および、前記モータ側駆動力が前記内燃機関側駆動力よりも大きくなる第2運転モードを有する車両に適用される車両用空調装置であって、
前記内燃機関(EG)の冷却水を熱源として車室内へ送風される送風空気を加熱する加熱手段(36)と、
前記第2運転モード時に前記車室内の暖房を行う際に、予め定めた所定条件が成立したときに前記内燃機関(EG)および前記走行用電動モータの作動を制御する駆動力制御手段(70)に対して、前記第1運転モードでの運転に切り替えることを要求する要求信号を出力する要求信号出力手段(50a)とを備えることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項12】
外気温(Tam)を検出する外気温検出手段(52)を備え、
前記所定条件が成立したときとは、前記外気温(Tam)が予め定めた基準外気温以下となったときであることを特徴とする請求項11に記載の車両用空調装置。
【請求項13】
乗員の操作によって車室内の目標温度(Tset)を設定する目標温度設定手段を備え、
前記所定条件が成立したときとは、前記目標温度(Tset)が予め定めた基準目標温度以上となったときであることを特徴とする請求項11または12に記載の車両用空調装置。
【請求項14】
車室内の少なくとも一部の温度を上昇させる補助加熱手段(37、90)を備え、
前記所定条件が成立したときとは、前記補助加熱手段(37、90)が作動しているときであることを特徴とする請求項11ないし13のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項15】
乗員の操作によって、前記車室内の空調に必要とされる動力の省動力化を要求する省動力化要求信号を出力させる省動力化要求手段を備え、
前記所定条件が成立したときとは、前記省動力化要求信号が出力されていないときであることを特徴とする請求項11ないし14のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項16】
車両窓ガラス(W)近傍の湿度を検出する湿度検出手段を備え、
前記所定条件が成立したときとは、前記湿度検出手段によって検出された湿度が予め定めた基準湿度以上となったときであることを特徴とする請求項11ないし15のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項17】
少なくとも車両窓ガラス(W)に向けて前記送風空気を吹き出すデフロスタ吹出口(26)を含む複数の吹出口(25、26、27)から吹き出される風量割合を切り替えることによって、複数の吹出口モードを切り替える吹出口モード切替手段(24a、25a、26a)を備え、
前記所定条件が成立したときとは、前記吹出口モード切替手段(24a、25a、26a)が、前記デフロスタ吹出口(26)から前記送風空気を吹き出すデフロスタモードに切り替えたときであることを特徴とする請求項11ないし15のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項18】
前記補助加熱手段(37、90)は、乗員が着座するシートの温度を上昇させるシート加熱手段(90)であることを特徴とする請求項4、9、14のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項19】
前記補助加熱手段(37、90)は、車両窓ガラス(W)を加熱する窓ガラス加熱手段であることを特徴とする請求項4、9、14のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−76515(P2012−76515A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−221545(P2010−221545)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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