説明

車両用空調装置

【課題】空調ケースから熱交換器を容易に着脱することが可能な車両用空調装置を提供すること。
【解決手段】空調ケース21は、車両前方側に位置する上ケース21A、21Bと、車両後方側に位置する下ケース21Cとを結合して構成され、蒸発器22は、上ケース21A、21Bと下ケース21Cとに挟持されて空調ケース21内に位置決め固定されている。上ケース21A、21Bと下ケース21Cとの結合を解除して下ケース21Cを移動させ、車両後方側の乗員搭乗スペースから蒸発器22を着脱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内の前方部に配置された空調ケース内に熱交換器を収容した車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車室内の前方部に配設されたインストルメントパネルの更に前方に配置された空調ケース内に、ヒータコアと蒸発器とを備える車両用空調装置がある。このような車両用空調装置では、メンテナンス等のために空調ケースから蒸発器を着脱する際には、空調ケースの車両幅方向の壁面にある開口部を閉塞する蓋部材を取り外して、蒸発器に膨張弁を介して接続する冷媒配管の接続を解除し、開口部から車両幅方向へ蒸発器を引き抜くものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−127641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術の車両用空調装置では、空調ケースから蒸発器を着脱する際には、空調ケースの側方側(車両幅方向の側)に、蒸発器を空調ケースから引き抜く等のために着脱作業用スペースが必要である。ところが、一般的に、空調ケースの側方側の部位は、各種車両搭載機器の設置スペースとなっている。したがって、空調ケースから熱交換器である蒸発器を着脱する際には、これらの各種車両搭載機器を取り外して熱交換器着脱作業用スペースを確保しなければならず、着脱作業が煩雑であるという問題がある。
【0005】
本発明は、上記点に鑑みてなされたものであり、空調ケースから熱交換器を容易に着脱することが可能な車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、
車室内の前方部に配設され、車室内へ吹き出す空気が内部を流通する空調ケース(21)と、
空調ケース(21)内に設けられ、内部を流通する熱媒体と外部を流通する空気との熱交換を行う熱交換器(22)と、
車室内と車室外とを仕切る隔壁(90)を貫通するように設けられ、内部を熱媒体が流通する熱媒体配管(221、222)と、を備え、
熱媒体配管(221、222)は、車両前方側で隔壁(90)を貫通して、貫通部で隔壁(90)に支持されるとともに、車室内側の端部が熱交換器(22)に接続されており、
空調ケース(21)は、車両前方側に位置する第1ケース体(21A、21B)と、第1ケース体(21A、21B)よりも車両後方側に位置する第2ケース体(21C)とを結合して構成され、熱交換器(22)は、第1ケース体(21A、21B)と第2ケース体(21C)とに挟持されて空調ケース(21)内に位置決め固定されていることを特徴としている。
【0007】
これによると、空調ケース(21)の第1ケース体(21A、21B)と第2ケース体(21C)との結合を解除して第2ケース体(21C)を移動させることで、熱交換器(22)の空調ケース(21)に対する位置決め固定を解除するとともに、第1ケース体(21A、21B)よりも車両後方側を熱交換器着脱作業用スペースとすることができる。したがって、第1ケース体(21A、21B)よりも車両後方側に位置する第2ケース体(21C)の移動(第1ケース体への着脱)と、車両前方側の隔壁(90)により支持される熱媒体配管(221、222)と固定解除された熱交換器(22)との接続解除および再接続とを行うことにより、熱交換器(22)の取り外しおよび取り付けを車両後方側から行うことが可能である。
【0008】
一般的に、車室内の前方部に配設された空調ケース(21)の車両後方側の部位は、乗員の搭乗スペースとなっている。したがって、多数の車両搭載機器を取り外すことなく熱交換器着脱作業用スペースを確保することが可能である。このようにして、空調ケース(21)から熱交換器(22)を容易に着脱することができる。
【0009】
また、請求項2に記載の発明では、熱交換器(22)は、空気の通過方向に対して交差する方向に広がる扁平状に形成され、上端が下端よりも車両後方側に位置するように鉛直方向に対して傾斜して配設されていることを特徴としている。
【0010】
これによると、第1ケース体(21A、21B)と第2ケース体(21C)との結合を解除して第2ケース体(21C)を移動させ、熱媒体配管(221、222)と熱交換器(22)との接続を解除した際には、傾斜する熱交換器(22)に対する第2ケース体(21C)による下方からの支えがなくなるために、熱交換器(22)は、自重により下方へ移動しようとする。これに伴い、熱交換器(22)を、空調ケース(21)内に固定されていた位置から、下方もしくは下方かつ後方へ移動させることが可能である。したがって、熱交換器(22)を車両後方側へ取り出すことが容易である。
【0011】
また、請求項3に記載の発明では、熱交換器(22)は、熱媒体と空気とを熱交換するコア部(22a)を有し、コア部(22a)を通過する空気を冷却する冷却用熱交換器(22)であることを特徴としている。
【0012】
冷却用熱交換器(22)は空調ケース(21)内において比較的空気流れ上流側の部位に配設され、空気とともに空調ケース(21)内に導入された異物等がコア部(22a)に堆積し易い。このため、冷却用熱交換器(22)は、メンテナンスのための着脱を必要とする場合が多い。したがって、コア部(22a)に異物が堆積し易い冷却用熱交換器(22)の空調ケース(21)からの着脱を容易とすることは、極めて効果が大きい。
【0013】
請求項4ないし請求項6に記載の発明は、以下に説明する課題を解決するためのものである。
【0014】
従来から、空調ケース内に、流通する空気を加熱する加熱用熱交換器と、加熱用熱交換器をバイパスして空気を流すためのバイパス通路と、加熱用熱交換器を通過する空気とバイパス通路を通過する空気との風量割合を調節するエアミックスドアとを備える車両用空調装置がある。エアミックドアは、空調ケースに回動可能に支持された回転軸と、この回転軸に対して固定されたドア板部とを有しており、ドア板部の回動位置により加熱用熱交換器を通過する温風とバイパス通路を通過する冷風との風量割合を調節する。このようなエアミックドアの機能により、加熱用熱交換器およびバイパス通路の下流側の冷温風混合空間で冷風と温風とを混合して車室内へ吹き出す空気の温度を調節するものが知られている(例えば特開2009−286363号公報参照。)。
【0015】
しかしながら、上記従来技術の車両用空調装置では、エアミックスドアの回動抵抗を抑制するために、エアミックスドアの回転軸を回動可能に支持する回転軸の軸線方向で互いに対向する空調ケースの側壁部と、エアミックスドアのドア板部の回転軸軸線方向端部との間に隙間部を形成する必要がある。そして、この隙間部からの空気漏れ量が大きくなると、ドア板部の回動位置に応じた車室内吹出風の温度調節性能が悪化する場合があるという問題がある。
【0016】
請求項4ないし請求項6に記載の発明は、上記点に鑑みてなされたものであり、空調ケースの側壁部と、エアミックスドアのドア板部の回転軸軸線方向端部との間に隙間部を形成したとしても、温度調節性能の悪化を抑制することが可能な車両用空調装置を提供することを目的としている。
【0017】
上記目的を達成するため、請求項4に記載の発明では、
空調ケース(21)内に設けられ、空気を加熱する加熱用熱交換器(23)と、
空調ケース(21)内に形成され、加熱用熱交換器(23)をバイパスして空気を流すためのバイパス通路(25)と、
空調ケース(21)に回動可能に支持された回転軸(281)と、回転軸(281)に対して固定されたドア板部(282)とを有し、ドア板部(282)の回動位置により加熱用熱交換器(23)を通過する空気とバイパス通路(25)を通過する空気との風量割合を調節するエアミックスドア(28)と、
エアミックスドア(28)の回転軸(281)の軸線方向で互いに対向する空調ケース(21)の側壁部(218)から空調ケース(21)の内方に向かって立設されるとともに、ドア板部(282)の先端回動軌跡に沿って延びる立設壁部(219)と、を備え、
立設壁部(219)は、回転軸(281)軸線方向の先端部がドア板部(282)の回転軸(281)軸線方向の端部よりも内方に位置するように立ち上がって、側壁部(218)とドア板部(282)の端部との間を覆っていることを特徴としている。
【0018】
これによると、空調ケース(21)の側壁部(218)から立設しドア板部(282)の先端回動軌跡に沿って延びる立設壁部(219)で、側壁部(218)とドア板部(282)の回転軸軸線方向端部との間の隙間部(218a)を覆うことができる。したがって、立設壁部(219)により、隙間部(218a)からの空気漏れ量を抑制して、温度調節性能の悪化を抑制することができる。
【0019】
また、請求項5に記載の発明では、空調ケース(21)の側壁部(218)には、加熱用熱交換器(23)よりも空気流れ下流側、かつ、バイパス通路(25)よりも空気流れ下流側となる部位に、車室内へ吹き出す空気が流入する開口部(33)が開口していることを特徴としている。
【0020】
加熱用熱交換器(23)よりも空気流れ下流側、かつ、バイパス通路(25)よりも空気流れ下流側となる部位において、空調ケース(21)の側壁部(218)に車室内へ吹き出す空気が流入する開口部(33)が開口しており、側壁部(218)とドア板部(282)の回転軸軸線方向端部との間の隙間部(218a)から大量の空気漏れがあると、隙間部(218a)を通過した空気が直接開口部(33)へ流入しやすく、この開口部(33)を介して車室内へ吹き出す空気の温度調節性能が悪化しやすい。
【0021】
これに対し、本請求項に記載の発明によれば、立設壁部(219)によって側壁部(218)とドア板部(282)の回転軸線方向端部との間の隙間部(218a)を覆うので、側壁部(218)に開口部(33)を設けたとしても、温度調節性能の悪化を抑制することができる。
【0022】
また、請求項6に記載の発明では、開口部(33)は、回転軸(281)の軸線方向で互いに対向する側壁部(218)のそれぞれに開口しており、一方の開口部(33a)から車室内への吹出口までの通風抵抗と、他方の開口部(33b)から車室内への吹出口までの通風抵抗とが異なることを特徴としている。
【0023】
加熱用熱交換器よりも空気流れ下流側、かつ、バイパス通路よりも空気流れ下流側となる部位において、空調ケースの対向する一対の側壁部のそれぞれに車室内へ吹き出す空気が流入する開口部が開口しており、一方の開口部から車室内への吹出口までの通風抵抗と、他方の開口部から車室内への吹出口までの通風抵抗とが異なる場合には、側壁部とドア板部の回転軸軸線方向端部との間の隙間部から大量の空気漏れがあると、隙間部を通過し直接開口部へ流入する空気量がアンバランスとなり、両開口部を介して車室内へ吹き出す空気の温度調節性能が悪化しやすいばかりでなく、吹出風の温度バランスも悪化するという問題がある。
【0024】
従来、この温度バランスの悪化を解消するためには、空調ケース内におけるエアミックスドアの回転軸線方向の位置を微調節して、両側の隙間部の寸法を調節する必要があった。
【0025】
これに対し、本請求項に記載の発明によれば、立設壁部(219)によって側壁部(218)とドア板部(282)の回転軸線方向端部との間の隙間部(218a)を覆うので、対向する側壁部(218)のそれぞれに開口部(33a、33b)を設け、一方の開口部(33a)から吹出口までの通風抵抗と、他方の開口部(33b)から吹出口までの通風抵抗とが異なったとしても、温度調節性能の悪化ばかりでなく温度バランスの悪化を抑制することができる。
【0026】
なお、上記各手段に付した括弧内の符号は、後述する実施形態記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明を適用した第1の実施形態における車両用空調装置の室内ユニット1の外観を示す正面図である。
【図2】室内ユニット1の外観を示す側面図である。
【図3】室内ユニット1の概略構成を示す縦断面図である。
【図4】下ケース21Cおよび蒸発器22を取り外した状態の室内ユニット1を示す正面図である。
【図5】蒸発器22の着脱作業を説明するための室内ユニット1の側面図である。
【図6】蒸発器22の着脱作業を説明するための室内ユニット1の側面図である。
【図7】蒸発器22の着脱作業を説明するための室内ユニット1の側面図である。
【図8】比較例における下ケースおよび蒸発器を取り外した状態の室内ユニットを示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した形態と同様とする。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0029】
(第1の実施形態)
図1は、本発明を適用した第1の実施形態における車両用空調装置の室内ユニット1の外観を示す正面図(車両後方側から見た図)であり、図2は、室内ユニット1の外観を示す側面図(図1のII矢視図)である。また、図3は、室内ユニット1の概略構成を示す縦断面図(図1のIII−III線断面図)である。
【0030】
図1に示すように、室内ユニット1は、内部に空気通路を形成するとともに、後述する各種機能部品を収容する空調ケース21を備えている。空調ケース21は、上ケースのうち車両左方側に配置される第1上ケース21A、上ケースのうち車両右方側に配置される第2上ケース21B(第1上ケース21Aおよび第2上ケース21Bが第1ケース体に相当)、および、下ケース21C(第2ケース体に相当)を、相互に結合して構成されている。
【0031】
第1上ケース21Aと第2上ケース21Bとは、上下方向に延びる結合面212で結合している。結合面212は、例えば、一方の結合端面に形成した嵌合突起部と他方の結合端面に形成した嵌合溝部とを嵌合する、比較的簡単な嵌合構造を有している。また、上ケース21A、21Bと下ケース21Cとの結合面212aも、結合面212と同様の嵌合構造を有している。
【0032】
結合面212aは、車両前方側の下方から車両後方側の上方へ延びている。具体的には、図2に示すように、結合面212aは、後述する扁平形状の蒸発器22の延在方向に沿って車両前方側の下方から車両後方側の上方へ延びるとともに、蒸発器22の上端位置からは車両後方へほぼ水平方向に延びている。したがって、上ケース21A、21Bは前ケース、下ケース21Cは前ケースよりも車両後方側に位置する後ケースということもできる。
【0033】
図2に示すように、本実施形態の車両用空調装置の室内ユニット1は、例えば、キャブオーバー型の大型車両(例えば大型トラック)の車室(キャビン)内前方部の計器盤91(インストルメントパネル、以下インパネという場合がある)の前方に図2に示す姿勢で設置される。
【0034】
図3に示すように、室内ユニット1は、大別して、送風ユニット10と空調ユニット20との2つの部分が並設されている。送風ユニット10は、室内ユニット1内部に車室内の内気もしくは車室外の外気を吸引するためのものであって、車両幅方向(図3の紙面表裏方向)に図示しない内外気切替箱が配設されている。
【0035】
送風ユニット10には、電動送風機11が備えられている。この送風機11は、遠心多翼ファン12と、ファン駆動用モータ13とを有し、遠心多翼ファン12はスクロールケーシング14内に配置されている。
【0036】
送風ユニット10のスクロールケーシング14の空気流れ下流側には、スクロールケーシング14出口から延びる流路を構成するダクト部15が形成されている。このダクト部15は、送風ユニット10から送風された送風空気を後述する蒸発器22に導入するためのものである。このダクト部15により送風ユニット10の出口部が空調ユニット20の入口部に接続されている。
【0037】
空調ユニット20は、1つの共通の空調ケース21内に蒸発器(冷房用熱交換器、冷却用熱交換器に相当)22とヒータコア(暖房用熱交換器、加熱用熱交換器に相当)23とを内蔵するタイプのものである。
【0038】
空調ケース21はポリプロピレンのような、ある程度弾性を有し、強度的にも優れた樹脂の成形品からなり、前述したように分割された複数のケース体からなる。この分割されたケース体は、上記熱交換器22、23、後述のドア等の機器を収納した後に、金属バネクリップ、ネジ等の締結手段により一体に結合されて空調ケース21を構成する。
【0039】
上ケース21A、21Bと、下ケース21Cとの結合形態を具体的に述べると、下ケース21cの下端辺部には、上ケース21A、21Bの下端辺部近傍に形成された係止溝部(係止スリット部、係止穴部)に係止する係止爪部が形成されている。上ケース21A、21Bに下ケース21Cを組み付ける際には、係止溝部に係止爪部を遊挿した後、この係止構造部(係止溝部および係止爪部)よりも上方において上ケース21A、21Bと下ケース21Cとを金属バネクリップ、ネジ等の締結手段により結合する。これにより、遊挿状態であった係止溝部と係止爪部とが確実な係止状態を形成し、上ケース21A、21Bと下ケース21Cとが、結合面212aの全域で確実に結合される。
【0040】
上ケース21A、21Bと下ケース21Cとの結合を解除する際には、上述した動作とは逆の動作で行うことができる。このような結合構成により、例えば、上ケース21A、21Bと下ケース21Cとの係止構造部が車室内の床面近傍に位置して、係止構造部に作業者の手が届かない場合であっても、上ケース21A、21Bに対して容易に下ケース21Cを着脱することができる。
【0041】
なお、本実施形態では、空調ケース21は、スクロールケーシング14、ダクト部15とともに一体的に成形されている。具体的には、スクロールケーシング14の車両左方側の一部が、第1上ケース21Aと一体成形されており、スクロールケーシング14の車両右方側の残部が、第2上ケース21Bと一体成形されている。また、ダクト部15が、下ケース21Cと一体成形されている。
【0042】
空調ケース21下方部の後方側の部位には、空気流入口24が設けられ、この空気流入口24には、前述の送風ユニット10から送風される空気がダクト部15を介して流入する。
【0043】
空調ケース21内において、空気流入口24直後の部位に蒸発器22が空気通路の全域を横切るように配置されている。この蒸発器22は、冷凍サイクルの冷媒の蒸発潜熱を空気から吸収して空気を冷却する熱交換器(空気冷媒熱交換器)である。
【0044】
蒸発器22は、相互に間隔を空けて配列された複数の冷媒管を有するコア部(熱交換部)22a、コア部22aの複数の冷媒管と連通する上下一対のヘッダタンク22b、および、ヘッダタンク22bと空調ケース21との間に配設されて空気漏れを防止するためのインシュレータ22cを備えている。
【0045】
蒸発器22のコア部22aは、概略の外形が矩形平板状をなしており、矩形平板状の厚さ方向に空気が通過するようになっている。コア部22aを主要部とする蒸発器22は、全体が扁平状をなしており、コア部22aの空気通過方向に対して略直交する方向に広がるように(車両左右方向、並びに、図3図示左下および右上方向に広がるように)延在している。
【0046】
図3から明らかなように、蒸発器22のコア部22aは、延在面(空気の通過方向に対して略直交する方向に広がるように延在する面、コア部22aの厚さ方向に直交する面)が鉛直方向(鉛直面、鉛直方向に延びる面)に対して傾斜している。すなわち、コア部22aを主要部とする蒸発器22は、上端が下端よりも車両後方側に位置するように鉛直方向に対して傾斜している。
【0047】
蒸発器22は、螺子止め等の固定部材を用いる固定方法によることなく、上ケース21A、21Bと下ケース21Cとに挟まれて、空調ケース21に対して位置決め固定されている。
【0048】
そして、蒸発器22の空気流れ下流側(車両前方側)に、ヒータコア23が配置されている。このヒータコア23は、蒸発器22を通過した冷風を再加熱するものであって、その内部に高温のエンジン冷却水(温水)が流れ、この冷却水を熱源として空気を加熱するものである。
【0049】
ヒータコア23も、螺子止め等の固定部材を用いる固定方法によることなく、第1上ケース21Aと第2上ケース21Bとに挟まれて、空調ケース21に対して位置決め固定されている。
【0050】
図2に示すように、蒸発器22には、蒸発器22内へ冷媒(熱媒体に相当)を導入するための冷媒導入配管221と、蒸発器22内から冷媒を導出するための冷媒導出配管222(冷媒導入配管221および冷媒導出配管222が熱媒体配管に相当)とが接続している。
【0051】
また、、ヒータコア23には、ヒータコア23内へ冷却水を導入するための冷却水導入配管231と、ヒータコア23内から冷却水を導出するための冷却水導出配管232とが接続している。
【0052】
各導出入配管221、222、231、232は、いずれも、各熱交換器から車両前方に向かって延びて、車室内と車室外とを仕切る隔壁(内部に車室内空間を形成する構造部材)のうち、車両前方側に位置する(車室前方の)隔壁90を貫通している。
【0053】
具体的には、各導出入配管221、222、231、232は、貫通部プレート部材223を貫通するように貫通部プレート部材223取り付けられている。そして、この貫通部プレート部材223が、隔壁90に形成された開口90aを閉塞するように、隔壁90に係止している。貫通部プレート部材223は、隔壁90と当接する面に、シール部材であるパッキン223aを備えている。このような構成により、各導出入配管221、222、231、232は、いずれも、隔壁90を共通の開口90a内で貫通するとともに、貫通部で(貫通部プレート部材223を介して)隔壁90によって支持されている。
【0054】
なお、冷媒導入配管221および冷媒導出配管222は、車室内側の端部が、膨張弁220を介して蒸発器22の上部のヘッダタンク22b(図3参照)に接続している。具体的には、冷媒導入配管221および冷媒導出配管222の端部のフランジ形状部と、膨張弁220とが、共通のねじ部材により蒸発器22に螺子止めされている(所謂共締めされている)。
【0055】
図3に示すように、空調ケース21内で、ヒータコア23の図中右方側(車両後方側)部位には、このヒータコア23をバイパスして空気(冷風)が流れるバイパス通路である冷風バイパス通路25が形成されている。
【0056】
そして、ヒータコア23車両後方側においてヒータコア23を通過する空気が流入する加熱用開口部26、および冷風バイパス通路25上流端のバイパス用開口部27には、ヒータコア23を通る空気(温風)と冷風バイパス通路25を通る空気(冷風)の風量割合(両開口部26、27へ流入する風量割合)を調整するエアミックスドア28が配置されている。
【0057】
エアミックスドア28は、空調ケース21に回動可能に支持された回転軸281と、回転軸281に結合された1枚の平板状のドア板部282とにより構成される、所謂片持ちドアである。エアミックスドア28の回転軸282は、空調ケース21の車両幅方向(車両左右方向)の側壁部218(回転軸282の軸線方向で対向する一対の側壁部218)に回動可能に支持されている。エアミックスドア28のドア板部282の回動位置により温風と冷風との風量割合が調節される。
【0058】
蒸発器22の空気流れ下流側でエアミックスドア28よりも上流側の部位には、側壁部218から立設し、蒸発器22から流出した冷風のうち側壁部218近傍を流れる冷風を車両幅方向の中央寄りへ案内するガイド壁219(立設壁部に相当)が設けられている。ガイド壁219は、エアミックッドア28のドア板部282の先端(反回転軸側の先端部)の回動軌跡から僅かに離れ、この回動軌跡に沿うように、円弧状に延びている。
【0059】
図4に示すように、ガイド壁219は、車両幅方向(回転軸281の軸線方向)において、側壁部218からドア板部282の端部(回転軸281の軸線方向における端部)よりも内方にまで立ち上がるように立設されている。これにより、ガイド壁219は、空気流れ上流側から見たときに、側壁部218とドア板部282の回転軸線方向端部との間の隙間部218aを、空気流れ上流側(本例では車両後方側)から覆っている。
【0060】
なお、図4は、ガイド壁219を説明するために、下ケース21Cおよび蒸発器22を取り外した状態の室内ユニット1を、車両後方側から見た模式的な図としている。
【0061】
図3に示すように、ヒータコア23および冷風バイパス通路25の下流側(車両上方側)の部位には、冷風バイパス通路25からの冷風とヒータコア23からの温風とを合流させて、冷風と温風とを混合させる冷温風混合空間30が形成されている。
【0062】
空調ケース21の上面部において、車両前方側の部位には、デフロスタ開口部31が開口している。このデフロスタ開口部31は冷温風混合空間30から温度制御された空気が流入するものである。デフロスタ開口部31は、図示しないデフロスタダクトを介してデフロスタ吹出口に接続され、この吹出口から、車両前面窓ガラスの内面に向けて風を吹き出す。
【0063】
空調ケース21の上面部において、デフロスタ開口部31よりも車両後方側の部位には、フェイス開口部32が開口している。このフェイス開口部32は冷温風混合空間30から温度制御された空気が流入するものである。フェイス開口部32は、図示しないフェイスダクトを介してフェイス吹出口に接続され、この吹出口から車室内の乗員頭部に向けて風を吹き出す。
【0064】
また、空調ケース21の側面部(側壁部218)には、フット開口部33(開口部に相当)が開口している。このフット開口部33も冷温風混合空間30から温度制御された空気が流入するものである。フット開口部33は、図示しないフットダクトを介してフット吹出口に接続され、この吹出口から車室内の乗員足元に向けて風を吹き出す。
【0065】
図3では1つしか図示されていないが、図4に示すように、フット開口部33は、車両幅方向の両側の側壁部218にそれぞれ設けられている。例えば左側のフット開口部33aは、図示しないフットダクトを介して助手席側のフット吹出口に接続されている。また、右側のフット開口部33bは、図示しないフットダクトを介して運転席側のフット吹出口に接続されている。
【0066】
図3に示すように、空調ケース21内のデフロスタ開口部31とフェイス開口部32との間には、両開口部31、32を開閉するためのデフロスタフェイスドア34が配設されている。デフロスタフェイスドア34は、空調ケース21に回動可能に支持された回転軸341と、回転軸341に結合された1枚の平板状のドア板部342とにより構成される、所謂片持ちドアである。
【0067】
また、空調ケース21内の冷温風混合空間30の上方には、フット開口部33と、デフロスタ開口部31およびフェイス開口部32に繋がる空気通路の上流端開口部と、を開閉するフットドア35が配設されている。フットドア35は、空調ケース21に回動可能に支持された回転軸351と、回転軸351に結合された2枚の平板状のドア板部352と、2枚のドア板部352を接続する扇形の連結板353とにより構成されるドアである。
【0068】
デフロスタ開口部31、フェイス開口部32およびフット開口部33は、2枚の吹出モードドアであるデフロスタフェイスドア34およびフットドア35により開閉され、設定された吹出モードに応じて各開口部31、32、33から送り出される風量割合が調節される。
【0069】
また、空調ケース21の下ケース21Cには、空調ケース21内の水(外部から流入した水や蒸発器22の表面で生成した凝縮水等)を車室外に排出するためのドレン孔(排水孔)211が設けられている。図3から明らかなように、空調ケース21内に傾斜して配設された蒸発器22の下方側となる部位に、ドレン孔211は形成されている。
【0070】
次に、上記構成に基づき本実施形態の車両用空調装置の作動について簡単に説明する。
【0071】
車両用空調装置は、空調操作パネルに設けられた各種操作部材からの操作信号および空調制御用の各種センサからのセンサ信号が入力される電子制御装置(図示せず)を備えており、この制御装置の出力信号に基づいて、モータ13の駆動、エアミックスドア28や各吹出モードドア34、35の位置が制御される。
【0072】
モータ13が駆動され遠心多翼ファン12が回転すると、スクロールケーシング14内に吸入された空気がダクト部15を介して空気流入口24より空調ユニット20内に流入する。
【0073】
空気流入口24から流入した送風空気は、蒸発器22のコア部22aにて冷却されて冷風となる。この蒸発器22を通過した冷風は、エアミックスドア28による各開口部26、27の開度により、冷風バイパス通路25を流れる部分と、ヒータコア23で再加熱される部分とに振り分けられる。
【0074】
ヒータコア23で加熱された温風は、冷温風混合空間30において、冷風バイパス通路25からの冷風と混合され、吹出モードドア34、35により形成された吹出モードに応じて、デフロスタ開口部31、フェイス開口部32およびフット開口部33のいずれか1つもしくは複数を介して車室内に吹き出される。
【0075】
蒸発器22を通過した冷風を、エアミックスドア28によって、冷風バイパス通路25を流れる部分と、ヒータコア23で再加熱される部分とに振り分ける(加熱用開口部26へ流入する冷風とバイパス用開口部27へ流入する冷風とに振り分ける)ときには、側壁部218から立設したガイド壁219で、側壁部218とエアミックスドア28のドア板部282の回転軸軸線方向端部との間の隙間部218aからの空気漏れ量を抑制することができる。
【0076】
したがって、エアミックスドア28のドア板部282の回動位置によって決定される冷温風混合空間30における混合風の温度が、隙間部218aから漏れる冷風により変動することを抑制することができる。すなわち、冷温風混合空間30から各開口部31、32、33の少なくともいずれかを介して車室内へ吹き出す空調風の温度調節性能が悪化することを抑制することが可能である。
【0077】
また、フット開口部33は、冷温風混合空間30よりも空気流れ下流側で側壁部218に開口している。したがって、フット開口部33を開く吹出モード時には、例えば図8にガイド壁を設けない比較例を示すように、隙間部218aから多量の冷風漏れがあると、矢印で示すように、漏れた冷風が側壁部218に沿って流れ、フット開口部33へ直接(冷温風混合空間30で温風と混合されずに)流入する場合がある。このような場合には、乗員の足元へ吹き出す空調風の温度調節の性能(精度)が悪化してしまう。本実施形態では、ガイド壁219を設けて隙間部218aからの冷風漏れを抑制しているので、乗員の足元へ吹き出す空調風の温度調節性能の悪化を防止することができる。
【0078】
また、フット開口部33は、冷温風混合空間30よりも空気流れ下流側で、車両幅方向両側の側壁部218にそれぞれ開口している。したがって、フット開口部33(フット開口部33a、33b)を開く吹出モード時には、隙間部218aから多量の冷風漏れがあると(図8比較例参照)、漏れた冷風が側壁部218に沿って流れ、両フット開口部33a、33bへ直接(冷温風混合空間30で温風と混合されずに)流入する場合がある。そして、このような場合に、左側のフット開口部33aに接続するフットダクトの通風抵抗と、右側のフット開口部33bに接続するフットダクトの通風抵抗が異なる場合には、助手席の乗員の足元へ吹き出す空調風の温度と、運転席の乗員の足元へ吹き出す空調風の温度とのバランスが崩れてしまう。本実施形態では、ガイド壁219を設けて隙間部218aからの冷風漏れを抑制しているので、乗員の足元へ吹き出す空調風の温度バランスの悪化を防止することができる。
【0079】
なお、左側のフット開口部33aに接続するフットダクトの通風抵抗と、右側のフット開口部33bに接続するフットダクトの通風抵抗が大きく異なる場合には、両側壁部218から立設するガイド壁219の立設高さを異ならせて(フットダクトの通風抵抗が小さい側のガイド壁219の高さを、通風抵抗が大きい側のガイド壁219の高さよりも高くして)、温度バランスの悪化を防止することが好ましい。
【0080】
次に、上記構成に基づき本実施形態の車両用空調装置の室内ユニット1における蒸発器22メンテナンス時の蒸発器着脱動作について説明する。
【0081】
蒸発器22を空調ケース21内から取り外す場合には、まず、図2に示すインパネ91を取り外す。次に、図5に示すように、室内ユニット1を車室内に搭載した状態のままで、締結手段(金属バネクリップ、ネジ等)による上ケース21A、21Bと下ケース21Cとの上部の結合を解除する。これにより、下ケース21Cが、上ケース21A、21Bと下ケース21Cとの下部の係止部を支点として、下方へ図示時計回り方向に回転するように移動する。
【0082】
この下ケース21Cの移動に伴い、係止部は遊びを持った状態となるので、図6に示すように、下ケース21Cを車両後方側へ引き抜いて取り外す。なお、下ケース21Cは、車両後方側へ引き抜いて移動させることなく、蒸発器22の取り外し作業が終わるまで図5に示す位置に留置してもかまわない。また、蒸発器22の取り外しおよび取り付けが完了するまで、図5に示す位置から移動させなくてもかまわない。
【0083】
下ケース21Cを下部の係止部を支点として下方へ移動させると、図5、図6に示すように、上ケース21A、21Bと下ケース21Cと挟持されていた蒸発器22は、挟持状態を解除されて下ケース21Cによる下方からの支えを失い、自重により若干下方へ移動する。具体的には、蒸発器22、および、蒸発器22に固定されている膨張弁220は、膨張弁220を介して蒸発器22に接続する冷媒導入配管221、冷媒導出配管222とともに(両冷媒配管221、222の撓みによって)、両冷媒配管221、222の隔壁90貫通部を支点として若干下方へ移動する。
【0084】
これにより、図5、図6に示すように、上ケース21A、21B内に一部が収容されていた蒸発器22の膨張弁220を介する冷媒配管221、222接続部が、上ケース21A、21Bと下ケース21Cとの結合面212aよりも下方に移動し、側方(車両幅方向)から見たときに、空調ケース21から完全に露出した状態となる。
【0085】
次に、図7に示すように、上ケース21A、21B外へ移動した蒸発器22の冷媒配管221、222接続部の固定ねじを車両幅方向へ(図示紙面手前側へ)取り外し、両冷媒配管221、222、膨張弁220および蒸発器22の接続を解除する。そして、両冷媒配管221、222との接続を解除された蒸発器22を、車両後方側へ取り外す。蒸発器22を空調ケース21内へ組み付けるときには、上述の手順に対し逆の手順で行う。
【0086】
上述の構成および作動によれば、空調ケース21は、車両前方側に位置する上ケース21A、21Bと、車両後方側に位置する下ケース21Cとを結合して構成され、蒸発器22は、上ケース21A、21Bと下ケース21Cとに挟持されて空調ケース21内に位置決め固定されている。また、蒸発器22に接続する両冷媒配管221、222は、車両前方側の隔壁90を貫通する部分で隔壁90に支持されている。
【0087】
したがって、上ケース21A、21Bと下ケース21Cとの結合を解除して下ケース21Cを移動させることで、蒸発器22の空調ケース21に対する位置決め固定を解除するとともに、上ケース21A、21Bよりも車両後方側の乗員搭乗スペースを蒸発器22を着脱する際の作業用スペースとすることができる。これにより、多数の車両搭載機器を取り外すことなく、空調ケース21から蒸発器22を容易に着脱することができる。
【0088】
また、車両前方側の隔壁90の冷媒配管221、222貫通部において、貫通部プレート部材223等を取り外す必要がなく、両冷媒配管221、222を留置したまま蒸発器22の着脱を行うことが可能である。
【0089】
また、蒸発器22は、空気の通過方向に対して交差する方向に広がる扁平状に形成され、上端が下端よりも車両後方側に位置するように鉛直方向に対して傾斜して配設されている。したがって、上ケース21A、21Bと下ケース21Cとの結合を解除して下ケース21Cを移動させた際には、両冷媒配管221、222を撓ませて蒸発器22を自重で下方に移動させることで、蒸発器22と両冷媒配管221、222との接続部を上ケース21A、21B外へ移動させることができる。これにより、蒸発器22と両冷媒配管221、222との接続解除を容易に行うことができる。
【0090】
また、蒸発器22を鉛直方向に対して車両後方側に傾斜して配設しているので、上ケース21A、21Bと下ケース21Cとの結合を解除したときや、蒸発器22や膨張弁220を車両後方側へ引き抜く際に、蒸発器22のコア部22aに堆積していた異物や冷凍機油等が落下したとしても、車両に搭載したままの上ケース21A、21B内に落下することを防止することができる。
【0091】
また、下ケース21Cを図5に示す位置に留置したまま蒸発器22や膨張弁220の取り外し作業を行えば、蒸発器22のコア部22aに堆積していた異物や冷凍機油等が落下したとしても、下ケース21Cの内面で受け留めることができ、車室の床面等に落下することを抑止することが可能である。
【0092】
また、本実施形態の室内ユニット1では、蒸発器22をヒータコア23よりも車両後方側に配置して、室内ユニット1全体を車両から取り外すことなく、蒸発器22を車両後方側の乗員搭乗スペースから着脱できるようにしている。蒸発器22は、空調ケース21内においてヒータコア23よりも空気流れ上流側の部位に配設され、空気とともに空調ケース21内に導入された異物等が蒸発器22のコア部22aに堆積し易い。したがって、異物が堆積し易い蒸発器22の空調ケース21からの着脱を容易とすることは効果が大きい。
【0093】
また、本実施形態では、車両用空調装置を比較的大型のトラック等に搭載している。大型トラック等の車両は、比較的空気中に粉塵等の異物が多い環境で用いられ、蒸発器22のメンテナンス頻度が比較的高い。したがって、大型トラック等の車両に搭載される空調装置に本発明を適用することは、極めて効果が大きい。
【0094】
(他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
【0095】
上記実施形態では、エアミックスドア28は、回転軸281から1つの方向にドア板部282が延出した所謂片持ちドアであったが、これに限定されるものではない。例えば、回転軸から2つの方向にドア板部が延出した所謂バタフライドアであってもよいし、断面円弧状のドア板部と回転軸とを扇形の側板で連結したロータリドアであってもかまわない。
【0096】
また、上記実施形態では、冷媒導入配管221および冷媒導出配管222が貫通する隔壁90は鉛直方向に延びていた。すなわち、貫通部プレート部材223は、鉛直方向に延びる部材であった。しかしながら、これに限定されるものではない。例えば、車室の前方において車室内と車室外とを仕切る隔壁は、鉛直方向に対して傾斜した壁部であってもかまわない。
【0097】
また、上記実施形態では、本発明を適用する熱交換器を蒸発器22としていたが、これに限定されるものではない。例えば、蒸発器22よりも車両後方側に配置したヒータコア23を、本発明を適用する熱交換器に相当する構成としてもかまわない。この場合には、冷却水導入配管231および冷却水導出配管232が熱媒体配管に相当する。
【0098】
また、上記実施形態では、本発明を適用した車両用空調装置をキャブオーバー型の大型車両に搭載した場合について説明したが、車両用空調装置が搭載される車両はこれに限定されるものではない。例えば、小型の車両であってもかまわない。
【符号の説明】
【0099】
21 空調ケース
21A 第1上ケース(第1ケース体の一部)
21B 第2上ケース(第1ケース体の一部)
21C 下ケース(第2ケース体)
22 蒸発器(熱交換器、冷却用熱交換器)
22a コア部
23 ヒータコア(加熱用熱交換器)
25 冷風バイパス通路(バイパス通路)
28 エアミックスドア
33、33a、33b フット開口部(開口部)
90 隔壁
218 側壁部
218a 隙間部
219 ガイド壁(立設壁部)
221 冷媒導入配管(熱媒体配管)
222 冷媒導出配管(熱媒体配管)
281 回転軸
282 ドア板部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内の前方部に配設され、前記車室内へ吹き出す空気が内部を流通する空調ケース(21)と、
前記空調ケース(21)内に設けられ、内部を流通する熱媒体と外部を流通する前記空気との熱交換を行う熱交換器(22)と、
前記車室内と車室外とを仕切る隔壁(90)を貫通するように設けられ、内部を前記熱媒体が流通する熱媒体配管(221、222)と、を備え、
前記熱媒体配管(221、222)は、車両前方側で前記隔壁(90)を貫通して、この貫通部で前記隔壁(90)に支持されるとともに、前記車室内側の端部が前記熱交換器(22)に接続されており、
前記空調ケース(21)は、車両前方側に位置する第1ケース体(21A、21B)と、前記第1ケース体(21A、21B)よりも車両後方側に位置する第2ケース体(21C)とを結合して構成され、前記熱交換器(22)は、前記第1ケース体(21A、21B)と前記第2ケース体(21C)とに挟持されて前記空調ケース(21)内に位置決め固定されていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記熱交換器(22)は、前記空気の通過方向に対して交差する方向に広がる扁平状に形成され、上端が下端よりも車両後方側に位置するように鉛直方向に対して傾斜して配設されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記熱交換器(22)は、前記熱媒体と前記空気とを熱交換するコア部(22a)を有し、前記コア部(22a)を通過する前記空気を冷却する冷却用熱交換器(22)であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記空調ケース(21)内に設けられ、前記空気を加熱する加熱用熱交換器(23)と、
前記空調ケース(21)内に形成され、前記加熱用熱交換器(23)をバイパスして前記空気を流すためのバイパス通路(25)と、
前記空調ケース(21)に回動可能に支持された回転軸(281)と、前記回転軸(281)に対して固定されたドア板部(282)とを有し、前記ドア板部(282)の回動位置により前記加熱用熱交換器(23)を通過する前記空気と前記バイパス通路(25)を通過する前記空気との風量割合を調節するエアミックスドア(28)と、
前記回転軸(281)の軸線方向で互いに対向する前記空調ケース(21)の側壁部(218)から前記空調ケース(21)の内方に向かって立設されるとともに、前記ドア板部(282)の先端回動軌跡に沿って延びる立設壁部(219)と、を備え、
前記立設壁部(219)は、前記軸線方向の先端部が前記ドア板部(282)の前記軸線方向の端部よりも内方に位置するように立ち上がって、前記側壁部(218)と前記ドア板部(282)の前記端部との間を覆っていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記側壁部(218)には、前記加熱用熱交換器(23)よりも空気流れ下流側、かつ、前記バイパス通路(25)よりも空気流れ下流側となる部位に、前記車室内へ吹き出す空気が流入する開口部(33)が開口していることを特徴とする請求項4に記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記開口部(33)は、前記軸線方向で互いに対向する前記側壁部(218)のそれぞれに開口しており、一方の前記開口部(33a)から前記車室内への吹出口までの通風抵抗と、他方の前記開口部(33b)から前記車室内への吹出口までの通風抵抗とが異なることを特徴とする請求項5に記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−10385(P2013−10385A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143171(P2011−143171)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】