説明

車両用空調装置

【課題】車両用空調装置において、簡素な構成で、エンジン停止時においても車室内へ冷風を送風可能とする。
【解決手段】車両用空調装置16のケーシング30には、空気を冷却可能なエバポレータ部50と、該空気を加熱可能なヒータコア部52とが一体的に形成された熱交換器ユニット34が設けられる。このヒータコア部52には、内部を循環した冷却水が排出される冷却水導出口68が形成され、前記冷却水導出口68に接続された第2配管26には、前記冷却水の流量を制御可能な流量制御機構28が設けられる。そして、ヒータコア部52において蓄冷を行う場合には、流量調整機構28において冷却水の流通を遮断し、エバポレータ部50を通過して冷却された空気をヒータコア部52に残存している冷却水に当てることで冷却された蓄冷体を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載され、熱交換器によって温度調整のなされた空気を車室内へと送風して車室内の温度調整を行う車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される車両用空調装置は、送風機によって内外気をケース内へと取り込み、冷却手段である蒸発器により冷却された空気と、加熱手段であるヒータコアにより加熱された空気とを前記ケース内で所望の混合比率で混合した後、車室内に設けられた複数の吹出口から選択的に送風することで前記車室内の温度及び湿度の調整を行っている。
【0003】
近年、車両の燃費向上や環境負荷の低減を目的として、前記車両が停車した際にエンジンを停止させるアイドリングストップ機構が普及し始めている。
【0004】
しかしながら、蒸発器に供給される冷媒を圧縮するための圧縮機は、一般的に、エンジンの駆動力を利用して駆動させているため、アイドリングストップ時において前記エンジンを停止させることで前記圧縮機が停止してしまうこととなり、圧縮された前記冷媒の蒸発器への供給が停止し、それに伴って、前記蒸発器による冷却が行われずに車室内へ冷風を送風することができなくなるという問題が生じる。
【0005】
そのため、エンジン停止時(アイドリングストップ時)における空調を行って車室内の快適性を維持する目的で、例えば、電動式圧縮機を採用して該エンジン停止時においても冷媒を圧縮して蒸発器へと供給することで、車室内への冷風を送風可能としたり、又は、特許文献1に開示されているように、蒸発器近傍に蓄冷器を設け、エンジン稼動時に供給される冷風によって該蓄冷器に予め冷気を蓄えておき、エンジン停止時に前記冷気から冷風を発生させて車室内へと供給することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−139201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した構成でエンジン停止時における空調を行おうとした場合に、電動式圧縮機はコストが高く、一方、蓄冷器は、車両用空調装置のケース内に設ける必要があるため、該車両用空調装置の大型化を招くと共に、該蓄冷器を設けることでコスト増加を招くという問題がある。
【0008】
本発明は、前記の課題を考慮してなされたものであり、簡素な構成で、エンジン停止時において車室内へ冷風を送風可能な車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本発明は、送風機からの空気が流通する通路が形成される空調ケースと、冷媒と前記通路を通る空気とを熱交換することで前記空気を冷却する蒸発器と、前記蒸発器により冷却された空気を車両の熱源を冷却する冷却水と熱交換することで加熱するヒータとを有する車両用空調装置において、
前記ヒータは、前記蒸発器の下流側に設けられ、前記ヒータに接続され該ヒータの内部へと冷却水を循環させる配管には、前記冷却水の流通状態を制御する流量調整機構を備え、前記蒸発器で冷却された前記空気を車両の車室内へと送風する際に、前記流量調整機構によって前記冷却水の流通を遮断することで前記ヒータ内に残留する前記冷却水を冷やして蓄冷を行うことを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、ヒータを蒸発器の下流側に配置し、且つ、接触させるように設けると共に、前記ヒータに接続され冷却水の流通する配管に、前記冷却水の流通状態を制御する流量調整機構を備えている。そして、蒸発器で冷却された空気を車室内へと送風する際、流量調整機構によって冷却水の流通を遮断する。
【0011】
従って、冷却水の流通が遮断されることでヒータの内部に冷却水を蓄え、蒸発器で熱交換されて冷却された空気で前記冷却水を好適に冷却することができる。
【0012】
その結果、ヒータに対して流量調整機構を設けるという簡素な構成で、別個に蓄冷器等を設けることなく前記ヒータ内に残留する前記冷却水を冷やして蓄冷を行うことができると共に、該蓄冷された冷却水を利用することでエンジンの停止時、すなわち、アイドリングストップ時において車室内へ冷風を好適に送風することが可能となる。
【0013】
また、流量調整機構を、ヒータの冷却水流れ方向下流側に設けるとよい。
【0014】
さらに、蒸発器とヒータとを一体的に形成するとよい。
【0015】
さらにまた、送風機を介して空調ケース内に導入する内気と外気とを切り換える内外気切換手段と、
車室内への空気の送風状態を制御する空調制御部と、
を有し、
前記空調制御部には、車両に搭載されるエンジンを制御するエンジン制御部からの制御信号に基づき、該エンジンのアイドリングストップを検知するアイドリングストップ検知手段とを備え、前記アイドリングストップ検知手段によって前記アイドリングストップを検知した際、前記内外気切換手段で内気を導入するように切り換えるとよい。
【0016】
またさらに、蒸発器は、上流側に設けられ前記冷媒が内部を流通する第1チューブと、
前記第1チューブに対して下流側に設けられ、前記冷媒が内部を流通する第2チューブと、
を備え、
前記第1チューブを、冷媒の供給される冷媒供給口に接続し、前記第2チューブを、前記冷媒の排出される冷媒排出口に接続するとよい。
【0017】
また、蒸発器には、上流側に臨む側面に温度センサを設けるとよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0019】
すなわち、ヒータを蒸発器の下流側に配置し、且つ、接触させるように設けると共に、前記ヒータに接続され冷却水の流通する配管に、前記冷却水の流通状態を制御する流量調整機構を備えている。そして、蒸発器で冷却された空気を車室内へと送風する際、流量調整機構によって冷却水の流通を遮断する。これにより、冷却水の流通が遮断されることで、ヒータの内部に蓄えられた冷却水を蒸発器で冷却された空気によって好適に冷却することが可能となる。その結果、ヒータに対して流量調整機構を設けるという簡素な構成で、別個に蓄冷器等を設けることなく前記ヒータ内に残留する前記冷却水を冷やして蓄冷を行うことができると共に、該蓄冷された冷却水を利用することでエンジンの停止時、すなわち、アイドリングストップ時において車室内へ冷風を好適に送風することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態に係る車両用空調装置を含む空調制御システムの概略構成図である。
【図2】図1の車両用空調装置を示す構成図である。
【図3】図2の車両用空調装置を構成する熱交換器ユニットの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る車両用空調装置について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明の実施の形態に係る車両用空調装置を駆動させるためのエンジンを含む空調制御システムの概略構成図を示す。先ず、図1を参照しながら、この空調制御システム10について簡単に説明する。
【0023】
空調制御システム10は、図1に示されるように、車両におけるエンジンルーム内に搭載されるエンジン12と、該エンジン12の駆動状態を制御するエンジン制御部14と、前記車両の車室内へと調温された空気を送風する車両用空調装置16と、該車両用空調装置16の駆動状態を制御する空調制御部18と、前記エンジン12の駆動作用下に駆動して冷媒を圧縮する圧縮機20と、前記エンジン12等に供給された冷却水を再び冷却して循環させるラジエータ22とを備える。なお、冷却水には、例えば、低温下においても液体状態を維持可能な凝固点の低い不凍液等が用いられる。
【0024】
エンジン制御部14は、エンジン12や車両に設けられた各センサ(図示せず)と電気的に接続され、前記各センサによって検出された検出値(例えば、エンジン12の回転数、車速信号)がそれぞれ入力される。また、エンジン制御部14は、後述する空調制御部18に対して上述した検出値を制御信号として出力している。
【0025】
空調制御部18は、例えば、車室内の温度、外気温、日照等の条件に応じて、車両用空調装置16を構成する流量調整機構28、送風機42、内外気切換ダンパ48等へと制御信号を出力し、前記車両用空調装置16から車室内へと送風される空気の送風量、送風温度等を制御する。
【0026】
圧縮機20は、エンジン12の駆動力が伝達されることによって駆動し、後述する車両用空調装置16に供給する冷媒を圧縮する。
【0027】
エンジン12は、例えば、ラジエータ22及び後述する車両用空調装置16のヒータコア部52に対して第1及び第2配管24、26を介して接続され、前記エンジン12を駆動力とするウォーターポンプ(図示なし)によって冷却水が循環されることで前記エンジン12が冷却される。
【0028】
また、エンジン12とヒータコア部52とを接続する第2配管26には、後述する車両用空調装置16の流量調整機構28が設けられ、前記ヒータコア部52へと流通する冷却水の流量を調整している。
【0029】
車両用空調装置16は、図1及び図2に示されるように、空気の各通路を構成するケーシング(空調ケース)30と、前記ケーシング30の側部に連結され、車室内へ送風するための送風機ユニット32と、前記ケーシング30の内部に配設され前記空気の熱交換を行う熱交換器ユニット34と、前記熱交換器ユニット34におけるヒータコア部52への冷却水の流量を調整する流量調整機構28とを含む。
【0030】
ケーシング30は、中空の箱状に形成され、その内部には、送風機ユニット32と連通して熱交換器ユニット34の上流側に形成される第1通路36と、前記熱交換器ユニット34を挟んで前記第1通路36の下流側に形成される第2通路38とを有する。
【0031】
送風機ユニット32は、ケーシング30の接続部に接続され連通する中空状のハウジング40と、前記ハウジング40の下部に設けられる送風機42とを含み、前記送風機42は、図示しない回転駆動源に対する通電作用下に回転するファン(図示せず)を備える。
【0032】
また、ハウジング40には、車両の外部から空気(外気)を取り入れるための外気導入口44と、車室内の空気(内気)を取り入れるための内気導入口46とが開口し、前記外気導入口44及び内気導入口46のいずれか一方とハウジング40の内部との連通状態を切り換える内外気切換ダンパ(内外気切換手段)48が設けられる。内外気切換ダンパ48は、ハウジング40の内部に回動自在に設けられ、例えば、空調制御部18の内外気切換制御部(図示せず)からの制御信号に基づいて外気を導入する場合には内気導入口46に臨む位置まで回動して該内気導入口46を閉塞し、一方、内気を導入する場合には外気導入口44に臨む位置まで回動して該外気導入口44を閉塞する(図2参照)。
【0033】
そして、送風機42に通電することによってファンが回転し、開口している外気導入口44又は内気導入口46のいずれか一方から空気を取り込んで、ハウジング40を通じてケーシング30へと送風する。
【0034】
熱交換器ユニット34は、図2及び図3に示されるように、第1通路36側に設けられ空気を冷却するエバポレータ部(蒸発器)50と、該エバポレータ部50に隣接して第2通路38側に設けられ前記空気を加熱するヒータコア部(ヒータ)52とからなる。このエバポレータ部50及びヒータコア部52は、図3に示されるように、ケーシング30の略中央部に上下方向に直立するように配置され、前記上下方向に沿って延在する複数の第1〜第3チューブ54、56、58と、該第1〜第3チューブ54、56、58の間に設けられ波状に折曲されたフィン(図示せず)と、前記第1〜第3チューブ54、56、58の一端部に接続される第1タンク60と、前記第1〜第3チューブ54、56、58の他端部に接続される第2タンク62とを備える。
【0035】
エバポレータ部50は、熱交換器ユニット34の厚さ方向に第1及び第2チューブ54、56が2層となるように設けられ、上流側となる第1チューブ54には、第1タンク60の冷媒導入口64から供給された冷媒が流通し、ヒータコア部52側となる下流側に配置された第2チューブ56には、前記第1チューブ54を流通して第2タンク62を循環した前記冷媒が流通する。
【0036】
第1及び第2タンク60、62は、第1〜第3チューブ54、56、58の延在方向と直交する熱交換器ユニット34の厚さ方向に沿って延在し、前記第1タンク60には、第1チューブ54に接続される冷媒導入口64と、前記第2チューブ56に接続される冷媒導出口66と、ヒータコア部52のチューブと接続される冷却水導出口68とが形成され、前記冷媒導入口64は、膨張弁71、冷媒用配管70aを介して凝縮器73に接続され、前記冷媒導出口66は冷媒用配管70bを介して圧縮機20にそれぞれ接続されると共に、冷却水導出口68が第2配管26を介してエンジン12に接続される。
【0037】
また、第1チューブ54と第2チューブ56は、それぞれの他端部が第2タンク62に接続され、該第2タンク62の内部を通じて互いに連通している。
【0038】
一方、エバポレータ部50の上流側に臨む側面には、図1及び図2に示されるように、第1通路36に臨むように第1検出センサ(温度センサ)72が設けられ、前記エバポレータ部50の表面温度が前記第1検出センサ72によって検出される。この第1検出センサ72で検出された表面温度は空調制御部18へと出力される。
【0039】
ヒータコア部52は、エバポレータ部50の第1及び第2チューブ54、56と並列に設けられ、最も下流側に設けられた第3チューブ58を有し、前記第3チューブ58は、その一端部が第1タンク60に形成された冷却水導出口68と連通し、他端部は、第2タンク62に形成された冷却水導入口74と連通している。そして、ラジエータ22から供給された冷却水が第1配管24を通じて冷却水導入口74へと導入され第3チューブ58を流通した後に、冷却水導出口68から導出され、第2配管26を通じて前記ラジエータ22へと循環する。
【0040】
この第1配管24には、該第1配管24を流通する冷却水の温度を検出可能な第2検出センサ76が設けられ、前記第2検出センサ76で検出された温度は、空調制御部18へと出力される。
【0041】
流量調整機構28は、例えば、空調制御部18からの制御信号に基づいて第2配管26を流通する冷却水の流量を制御可能な調整弁78からなり、ヒータコア部52から排出される冷却水の流通する第2配管26の途中に設けられている。そして、熱交換器ユニット34のヒータコア部52から排出され、ラジエータ22へと流通する冷却水の流量が調整弁78によって所定流量に調整される。
【0042】
本発明の実施の形態に係る車両用空調装置16は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその動作並びに作用効果について説明する。
【0043】
先ず、図2に示されるように車両用空調装置16が始動され、例えば、車室内の温度を低下させるべく冷房モードが選択された場合、エンジン12からの駆動力を利用して圧縮機20が駆動し、該圧縮機20によって圧縮された冷媒が冷媒用配管70aを通じて熱交換器ユニット34におけるエバポレータ部50へと供給される。一方、空調制御部18から送風機ユニット32へと制御信号が出力され、例えば、内外気切換ダンパ48を駆動させて内気導入口46を開口させる。
【0044】
これにより、車室内の空気が内気導入口46からハウジング40内へと導入され、送風機42の回転作用下に前記ハウジング40からケーシング30へと供給されることで、第1通路36から熱交換器ユニット34のエバポレータ部50を通過して冷却された後に、ヒータコア部52を通過して第2通路38へと流通し、開口部30aを通じて車室内に冷却された空気(冷風)が送風される。
【0045】
また、冷房モードが選択された場合には、流量調整機構28の調整弁78が空調制御部18からの制御信号に基づいて閉じた全閉状態にあり、第2通路38を通じたエンジン12とヒータコア部52との間の冷却水の流通が停止している。そのため、ヒータコア部52の第3チューブ58には冷却水が溜まっている状態となり、前記冷却水が、エバポレータ部50を通過して冷却された空気が通過することで冷却されていく。すなわち、ヒータコア部52に蓄えられている冷却水が冷やされて蓄冷体となる。
【0046】
次に、走行中の車両が停車してエンジン12が停止したアイドリングストップ状態になると、例えば、エンジン制御部14から空調制御部18へと出力される車速信号、エンジン12の回転数に基づき、前記空調制御部18のアイドリングストップ検知手段(図示せず)によって前記車両及びエンジン12の停止したアイドリングストップ状態が検知される。例えば、車両の車速が0kmで、エンジン12の回転数が0rpmの場合に、アイドリングストップ状態として検知する。この際、エンジン12の停止に伴って圧縮機20の駆動も停止しているため、圧縮された冷媒がエバポレータ部50へと供給されることがない。
【0047】
そして、空調制御部18から送風機42へと制御信号を出力し、前記送風機42を駆動させて車室内の空気(内気)を取り込んでケーシング30の内部へと送風を行う。なお、送風機ユニット32では、空調制御部18の内外気切換制御部からの制御信号によって内外気切換ダンパ48が外気導入口44を閉塞し、内気導入口46を開口した内気導入状態としておく。
【0048】
これにより、車室内の空気(内気)が送風機42の駆動作用下に第1通路36から冷媒の供給されていないエバポレータ部50を通過し、ヒータコア部52を通過することで冷却された冷却水である蓄冷体によって前記空気が所定温度に冷却される。この冷却された空気が、ヒータコア部52から第2通路38へと流通して、例えば、ケーシング30の開口部30aを通じて車室内へと供給される。
【0049】
その結果、エンジン12が停止することで圧縮機20の駆動が停止したアイドリングストップ状態においても、熱交換器ユニット34のヒータコア部52に冷却水を冷却させた蓄冷体を予め蓄えておき、前記蓄冷体(冷却水)に空気を通過させることで該空気を好適に冷却して車室内へと供給することが可能となる。
【0050】
また、車両の停車状態が解除されエンジン12が再び稼動(再始動)する場合には、例えば、前記エンジン12の回転数がエンジン制御部14から空調制御部18へと出力されることで、アイドリングストップ検知手段(図示せず)によって該エンジン12が再始動したと検知される。
【0051】
一方、車室内へ所定温度に加温された空気(温風)を送風する場合には、空調制御部18からの制御信号に基づいて流量調整機構28の調整弁78を開いて開状態とすることで、エンジン12を通過して加温された冷却水が第1配管24及び冷却水導入口74を通じてヒータコア部52の第3チューブ58へと供給される。そして、エバポレータ部50を通過した空気が、ヒータコア部52において加温されて第2通路38へと流通して車室内へと送風される。なお、調整弁78による第2配管26を流通する冷却水の流量を調整することで、ヒータコア部52を通過して加温される空気の温度を調整可能である。
【0052】
以上のように、本実施の形態では、ケーシング30内において、空気を冷却するエバポレータ部50と、前記エバポレータ部50の下流側において前記空気を加熱するヒータコア部52とを一体的に備えた熱交換器ユニット34を設けると共に、前記ヒータコア部52から排出される冷却水の流量を調整可能な流量調整機構28を設けることにより、前記流量調整機構28によって冷却水の流通を遮断してヒータコア部52に前記冷却水を蓄え、その冷却水に対してエバポレータ部50で冷却された空気を通過させることで好適に冷却することができる。
【0053】
その結果、熱交換器ユニット34及び流量調整機構28を設けるという簡素な構成で、別個に蓄冷器等を設けることなくヒータコア部52において冷却水を利用して蓄冷を行うことができると共に、該蓄冷された冷却水を利用することでエンジン12の停止時、すなわち、アイドリングストップ時における車室内の冷房を好適に行うことができる。
【0054】
また、流量調整機構28を、ヒータコア部52の下流側に接続された第2配管26に設けているため、前記流量調整機構28によって冷却水の流通を遮断することで、前記冷却水を好適に前記ヒータコア部52の内部(第3チューブ58)に蓄えておくことが可能となり、前記冷却水を冷却した蓄冷体を確実且つ大量に生成することができる。
【0055】
さらにまた、アイドリングストップ時において蓄冷体(冷却水)を利用して空調を行う場合、送風機ユニット32を内気循環へと切り換え、車室内において所定温度に冷却され外気と比較して温度の低い内気を導入することで、前記外気を導入して蓄冷した蓄冷体が急速に温度上昇してしまうことを防止でき、長時間にわたって空気を冷却して車室内へと送風することが可能となる。
【0056】
またさらに、エバポレータ部50とヒータコア部52とが一体的に設けられた熱交換器ユニット34を用いることで、それぞれ別体に設けられる場合と比較し、ケーシング30内において省スペース化を図ることが可能となる。その結果、ケーシング30を含む車両用空調装置16の小型化を図ることができる。
【0057】
また、エバポレータ部50では、下流側に設けられた第2チューブ56と冷媒導出口66とが連通しているため、前記エバポレータ部50の下流側に設けられ前記第2チューブ56に隣接したヒータコア部52の熱で前記第2チューブ56内の冷媒を全て気化させ、その気化熱で冷却できると共に、圧縮機20に液冷媒が入ることを防ぐことが可能となる。
【0058】
この場合、さらにエバポレータ部50の表面に、温度検出が可能な第1検出センサ72を設け、前記表面の温度を確認することによって前記エバポレータ部50の凍結を確実に回避することができる。
【0059】
なお、本発明に係る車両用空調装置は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0060】
10…空調制御システム 12…エンジン
14…エンジン制御部 16…車両用空調装置
18…空調制御部 20…圧縮機
22…ラジエータ 24…第1配管
26…第2配管 28…流量調整機構
30…ケーシング 32…送風機ユニット
34…熱交換器ユニット 36…第1通路
38…第2通路 48…内外気切換ダンパ
50…エバポレータ部 52…ヒータコア部
54…第1チューブ 56…第2チューブ
58…第3チューブ 60…第1タンク
62…第2タンク 64…冷媒導入口
66…冷媒導出口 68…冷却水導出口
74…冷却水導入口 78…調整弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風機からの空気が流通する通路が形成される空調ケースと、冷媒と前記通路を通る空気とを熱交換することで前記空気を冷却する蒸発器と、前記蒸発器により冷却された空気を車両の熱源を冷却する冷却水と熱交換することで加熱するヒータとを有する車両用空調装置において、
前記ヒータは、前記蒸発器の下流側に設けられ、前記ヒータに接続され該ヒータの内部へと冷却水を循環させる配管には、前記冷却水の流通状態を制御する流量調整機構を備え、前記蒸発器で冷却された前記空気を車両の車室内へと送風する際に、前記流量調整機構によって前記冷却水の流通を遮断することで前記ヒータ内に残留する前記冷却水を冷やして蓄冷を行うことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両用空調装置において、
前記流量調整機構は、前記ヒータの前記冷却水流れ方向下流側に設けられることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項3】
請求項1記載の車両用空調装置において、
前記蒸発器と前記ヒータとが一体的に形成されることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用空調装置において、
前記送風機を介して前記空調ケース内に導入する内気と外気とを切り換える内外気切換手段と、
車室内への空気の送風状態を制御する空調制御部と、
を有し、
前記空調制御部には、車両に搭載されるエンジンを制御するエンジン制御部からの制御信号に基づき、該エンジンのアイドリングストップを検知するアイドリングストップ検知手段を備え、前記アイドリングストップ検知手段によって前記アイドリングストップが検知された際、前記内外気切換手段が内気を導入するように切り換えられることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用空調装置において、
前記蒸発器は、上流側に設けられ前記冷媒が内部を流通する第1チューブと、
前記第1チューブに対して下流側に設けられ、前記冷媒が内部を流通する第2チューブと、
を備え、
前記第1チューブが、前記冷媒の供給される冷媒供給口に接続され、前記第2チューブが、前記冷媒の排出される冷媒排出口に接続されることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項6】
請求項5記載の車両用空調装置において、
前記蒸発器には、上流側に臨む側面に温度センサが設けられることを特徴とする車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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