説明

車両用空調装置

【課題】再生用の加熱手段の電力消費を抑えて、暖房時の除湿が行える車両用空調装置を提供することを目的とする。
【解決手段】予冷熱交換器27を通過した外気と除湿部24で除湿された内気を混合され第一車内熱交換器8で加熱された混合空気の一部を、第二の風路切替手段10により、再生風路12へ流入させ、再生部25を通過した後の混合空気を、蒸発器として熱交換する第三車内熱交換器13により除湿してから車内へ戻して除湿暖房を行う。よって、車内の暖房用に加熱され除湿された空気の一部を除湿手段26の再生に用いることで、別の加熱手段を設けなくてもよく、除湿された空気を除湿手段26の再生に用いているので、除湿しない空気に比べてより低温で再生可能であり、ヒートポンプの電力消費が抑えられる。また、再生部25を通過した後の混合空気から第三車内熱交換器13で水蒸気潜熱を回収するので、ヒートポンプの暖房負荷を低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内を暖房可能にする車両用空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ガソリン車の暖房ではエンジンの廃熱を利用したものが主流であり、暖房時の課題である窓等の曇りを防止する除湿装置が考案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この除湿装置は図7に示すように、車両用除湿装置として構成されており、車室内後方のトランクルーム内に空調装置の通風系とは独立に設置されるもので、除湿装置101の室内空気の吸入口102は車室内後方のリアパッセージトレーの開口部(図示せず)を通して車室内後方部に連通している。
【0004】
この吸入口102の下方部に送風機103を配置している。この送風機103は周知の遠心多翼ファン103aと、この遠心多翼ファン103aを回転自在に収容しているスクロールケース103bとを有し、この空気出口部にケース104が接続されている。このケース104の内部の通風路は、仕切り板105により除湿用の第一通風路106と再生用の第二通風路107とに仕切られている。
【0005】
そして、除湿用の第一通風路106の入口部には、冷却手段としての第一通風路106内の室内空気と低温外気との間で熱交換を行う第一顕熱交換器108が配置されている。この第一顕熱交換器108の下流側に乾燥剤を有する乾燥剤ユニット109が配置され、さらに、その下流側に第二顕熱交換器110が配置されている。
【0006】
このため、第一顕熱交換器108は外気用通路111に接続されており、この外気用通路111の一端部111aは車室外に開口しており、冬期暖房時の低温外気を吸入する。また、外気用通路111の他端部側は送風機103のモータ103cの外周側に形成された補助吸入口112を介して遠心多翼ファン103aの負圧部に連通している。これにより、遠心多翼ファン103aが回転駆動されると、低温外気が外気用通路111および第一顕熱交換器108を通して遠心多翼ファン103aの負圧部に向かって流れる。
【0007】
乾燥剤ユニット109は除湿用の第一通風路106だけでなく、再生用の第二通風路107にわたって設置されており、図示しないモータ等の駆動手段によりケース体109bを回転駆動するようになっている。また、再生用の第二通風路107において、乾燥剤ユニット109の上流側には電気発熱体113が設置され、第二顕熱交換器110は、再生用の第二通風路107の高温空気により除湿用の第一通風路106の空気を加熱する。除湿用の第一通風路106において、第二顕熱交換器110の下流側には車室内への吹出口114が設けられ、第二顕熱交換器110からの再生空気の出口115は車室外に開口している。
【0008】
上記のように、この車両用除湿装置は空調装置の通風系とは独立しており、空調装置の通風系内には前記の再生用の電気発熱体113とは別に暖房用の加熱手段が設置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−108655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような車両用除湿装置では、再生空気としては内気と外気を混合した空気を使用しているため、再生用の第二通風路内に加熱手段を設置して再生空気を高温に加熱しなければならず、そのための電力消費が増大するという課題があった。
【0011】
そこで本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、再生用の加熱手段の電力消費を抑えて、暖房時の除湿が行える車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そして、この目的を達成するために、本発明は、外気を導入する外気導入口から車内に空調風を吹き出す空調吹出口にかけての車外吸気風路と、車外吸気風路内に、前記外気導入口側から順に、車内に吹出す上流側の空気流を切替える第一の風路切替手段、前記外気導入口から前記空調吹出口に向かう空気流を発生させる送風手段、車内に吹出す空気を冷却または加熱する第一車内熱交換器および第二車内熱交換器、車内に吹出す下流側の空気流を切替える第二の風路切替手段を備え、内気を導入する内気導入口から前記第一の風路切替手段へ接続される車内吸気風路と、前記内気導入口と前記第一の風路切替手段の間から分岐して前記第一の風路切替手段へと接続される除湿風路と、前記第二の風路切替手段から内気を車内へ吹出す再生吹出口にかけての再生風路と、前記除湿風路内の前記第一の風路切替手段の上流側に除湿部と前記再生風路内に再生部を有する除湿手段を備え、外気と冷媒を熱交換する車外熱交換器と、冷媒を圧縮する圧縮機と、冷媒を膨張させて減圧する減圧手段と、前記第一車内熱交換器、前記第二車内熱交換器、前記車外熱交換器、前記圧縮機、および前記減圧手段の間で冷媒を循環させるヒートポンプとを備えたものであって、外気導入時の暖房運転において、前記第一の風路切替手段により、前記外気導入口から導入した外気と前記除湿部で除湿された内気とを混合した混合空気の一部を、前記第二の風路切替手段により、前記再生風路へ流入させ、除湿暖房運転を行うものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、車内の暖房用に加熱され除湿された空気の一部を除湿手段の再生に用いることにより、除湿手段の再生用に別の加熱手段を設けなくてもよく、除湿された空気を除湿手段の再生に用いているので、除湿しない空気に比べより低温での再生が可能となり、ヒートポンプの電力消費を抑えて、省エネ効果のある車両用空調装置を提供することができる。
【0014】
さらに、除湿手段の再生部を通過した後の混合空気から第三車内熱交換器で水蒸気潜熱を回収することにより、第二車内熱交換器の加熱能力を向上することができるとともに、除湿手段の再生部を通過した後の混合空気を車内に戻すことで、再生に用いた空気を車外に排出する場合と比較してヒートポンプの電力消費を抑え、省エネ効果のある車両用空調装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態1の車両用空調装置の風路構成図
【図2】同除湿暖房運転時の風路構成図
【図3】同除湿暖房運転の凍結防止モード時の風路構成図
【図4】同冷房運転時の風路構成図
【図5】同排気風量調整手段を備える場合の風路構成図
【図6】本発明の実施の形態2の車両用空調装置の風路構成図
【図7】従来の車両用除湿装置の概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0017】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1の車両用空調装置の除湿暖房運転時の風路構成図である。図1に示すように、車両用空調装置は空調システムおよび除湿システムによって構成されている。
【0018】
先ず、本発明の空調システムについて、図1を参照しながら説明する。
【0019】
空調システムには、送風路として、車外から外気を導入する外気導入口1から車内に空調風を吹き出す空調吹出口2にかけての車外吸気風路3と、車内から内気を導入する内気導入口4から空調吹出口2にかけての車内吸気風路5が設けられている。車外吸気風路3と車内吸気風路5は第一の風路切替手段6から空調吹出口2にかけて同一風路となっている。ここでは、この同一部分を代表して車外吸気風路3と呼ぶ。
【0020】
車外吸気風路3内には、外気導入口1側から順に、車内に吹出す上流側の空気を切替える第一の風路切替手段6、外気導入口1から空調吹出口2に向かう空気流を発生させる送風手段7、車内に吹出す空気を冷却または加熱する第一車内熱交換器8および第二車内熱交換器9、車内に吹出す下流側の空気流を切替える第二の風路切替手段10が配置され、第一車内熱交換器8と第二車内熱交換器9との間には第二車内熱交換器9を通過させる風量を調整して温度を調整する温度調整手段11を配置している。
【0021】
また、後述する再生風路12内に、冷房運転時に凝縮器、暖房運転時に蒸発器として熱交換する第三車内熱交換器13が配置されている。
【0022】
この第一車内熱交換器8、第二車内熱交換器9および第三車内熱交換器13は、次に述べるヒートポンプサイクルの一部を形成するものであり、ヒートポンプサイクルの作用によって車室内に吹出される空気の冷却または加熱を行うものである。また、外気と冷媒との熱交換を行う車外熱交換器14と、車外熱交換器14に外気を送風する車外送風手段15が車室外に配置されている。
【0023】
ヒートポンプサイクルは、冷媒を圧縮する圧縮機16と、冷媒を膨張させて減圧する減圧手段と、冷媒の流れ方向を切り替える四方弁17と、第一車内熱交換器8、第二車内熱交換器9、第三車内熱交換器13、車外熱交換器14とこれらの間に冷媒を循環させる冷媒配管で構成されている。そして、圧縮機16の高圧冷媒吐出側に四方弁17が、四方弁17と車外熱交換器14の間に冷媒の流れを一方向に制限する逆止弁18が、第三車内熱交換器13と第一車内熱交換器8の間に減圧手段としての絞り弁19(図に示すように膨張弁19aと電磁弁19bを内蔵)が、第二車内熱交換器9と車外熱交換器14の間に逆止弁20と減圧手段としての絞り弁21(図に示すように膨張弁21aと電磁弁21bを内蔵)が配置されている。
【0024】
内気導入口4には、車内の空気温度および湿度を検知する内気温湿度検知手段としての内気温湿度センサ22が、また、外気導入口1には、車外の空気温度および湿度を検知する外気温湿度検知手段としての外気温湿度センサ23が設けられている。
【0025】
温度調整手段11は、ダンパ機構によって第二車内熱交換器9を通過させる風量を調整して温度調整を行うものであり、第一車内熱交換器8と第二車内熱交換器9との間に配置されている。
【0026】
次いで、本発明の除湿システムについても同じく図1を参照しながら説明する。
【0027】
除湿システムは、内気を除湿するための、後述する除湿部24と再生部25を有する除湿手段26と、内気導入口4から導入される内気と外気導入口1から導入される外気とを熱交換させる予冷熱交換器27と、車外吸気風路3の外気導入口1と第一の風路切替手段6の間から分岐して第一の風路切替手段6へと接続される予冷風路28と、車内吸気風路5の内気導入口4と第一の風路切替手段6の間から分岐して第一の風路切替手段6へと接続される除湿風路29と、第二の風路切替手段10から内気を車内へ戻す再生吹出口30にかけての再生風路12で構成されている。
【0028】
そして、除湿風路29と予冷風路28の交差部に予冷熱交換器27が設けられており、除湿風路29内の予冷熱交換器27と第一の風路切替手段6との間に除湿手段26の除湿部24が配置され、再生風路12内に除湿手段26の再生部25が配置されている。
【0029】
除湿手段26は、吸湿材料を有し、吸湿材料への吸湿によって通過する空気を除湿する除湿部24と、吸湿材料からの通過する空気への放湿によって吸湿材料を再生する再生部25によって構成されている。
【0030】
また、再生風路12内の、除湿手段26と再生吹出口30との間に、冷房運転時に凝縮器、暖房運転時に蒸発器として作用する第三車内熱交換器13が配置されている。
【0031】
また、内気温湿度センサ22および外気温湿度センサ23で検知されるそれぞれの温湿度によって、空調装置の冷暖房を切替える図示しない制御手段を備え、予め設定した所定の温度または温湿度になるように運転制御を行う構成となっている。
【0032】
また、第一の風路切替手段6および第二の風路切替手段10は、接続されるそれぞれの風路の開口部にダンパ機構と、そのダンパを開閉するモータによって構成されている。そして、制御手段から送信される信号によってダンパの開閉などを行い、連通させる風路の組合せの制御を行う構成となっている。
【0033】
尚、除湿手段26は、吸湿材料を基材に保持させ回転自在な円筒形状の吸着ローターで構成し、この場合は除湿手段26に駆動部を備え所定の速度にて回転させることにより、除湿手段26の内、除湿風路29に跨る除湿部24と、再生風路12に跨る再生部25を連続して入れ替えることができる。
【0034】
また尚、除湿手段26を、吸湿材料を基材に保持させた互い違いに交差する風路を備えた伝熱板の積層体で構成しても良く、この場合は除湿手段26には駆動部を設けず、除湿部24に連通する除湿風路29と再生部25に連通する再生風路12を切換手段、例えば駆動部を備えたシャッターやダンパ、により所定間隔毎に切り替えることができる。
【0035】
また尚、予冷熱交換器27は、互い違いに交差する風路を備えた伝熱板の積層体で構成される顕熱交換器であることが望ましく、この場合伝熱板は風路高さを保持するリブを所定間隔で複数配置しており、材質は樹脂または金属である。
【0036】
以上述べた構成において、その運転動作について図2〜4を参照しながら説明する。
【0037】
本構成において、除湿暖房運転とは除湿手段26の作用によって除湿しながら暖房する運転をいい、また、暖房運転とは除湿手段26を作用させないで暖房を行う運転のことをいう。
【0038】
初めに、除湿暖房運転時の動作について、図2を参照しながら説明する。
【0039】
除湿暖房運転時には、第一の風路切替手段6の動作によって、外気が外気導入口1から予冷風路28を通って第一の風路切替手段6に至る風路と、内気が内気導入口4から除湿風路29を通って第一の風路切替手段6に至る風路とが形成される。
【0040】
このとき、外気導入口1から予冷風路28内に送風された外気と、内気導入口4から除湿風路29内に送風された内気とが、予冷熱交換器27の作用によって熱交換され、すなわち除湿風路29を通る内気は外気によって冷却されて相対湿度が上昇する。
【0041】
予冷熱交換器27を通過して相対湿度が上昇した内気は除湿手段26の除湿部24へと送風され、除湿部24で除湿されて乾燥する。そして除湿手段26での除湿に伴い、吸湿材料の水分吸着熱を受け取って加熱されその温度が上昇する。
【0042】
一方、予冷風路28内の外気は予冷熱交換器27で熱交換し、すなわち内気によって加熱され温度が上昇する。
【0043】
そして除湿部24を通過して乾燥および温度上昇した内気と、予冷熱交換器27を通過して温度上昇した外気は、第一の風路切替手段6を通じて混合され、送風手段7に吸引される。
【0044】
このとき、ヒートポンプサイクルは、制御手段によって冷媒が圧縮機16、四方弁17、第二車内熱交換器9、絞り弁21、逆止弁20、車外熱交換器14、第三車内熱交換器13、圧縮機16の順に流れるように動作し、第二車内熱交換器9が凝縮器、車外熱交換器14および第三車内熱交換器13が蒸発器として作用する。また、第一車内熱交換器8には冷媒は流さない。さらに、車外送風手段15が作動して車外熱交換器14で外気と冷媒が熱交換する。
【0045】
第二車内熱交換器9が凝縮器として作用することで、送風手段7から吐出された空気は、温度調整手段11によってその一部または全部が第二車内熱交換器9で加熱され、所望の温度に調整されて第二の風路切替手段10へ送風される。
【0046】
第二の風路切替手段10に送風された空気は、第二の風路切替手段10の動作によって、その一部が再生風路12へと分配され、その残りは空調吹出口2から車内各所、例えば窓、顔、足元へと分配される。
【0047】
再生風路12へ送風された加熱空気は除湿手段26の再生部25へと送風され、再生部25において、除湿手段26の吸湿材料は再生風路12内の空気から熱を受け取って水分を空気中に放湿する。
【0048】
このようにして除湿手段26の再生が行われ、除湿手段26を通過した空気は再生吹出口30より車内へ吹出される。
【0049】
ここで、本発明の構成では、車内暖房用に除湿され加熱された空気を第二の風路切替手段10によって再生風路12に分配し、除湿手段26の再生にこの空気を用いる構成となっている。
【0050】
このように構成することで、再生のための別の加熱手段を設ける必要がなく、除湿された空気の一部を用いて再生を行うので、相対湿度を再生に必要な値まで下げるために昇温する空気の温度を、除湿されていない状態の空気よりも低温にすることが可能となるので、ヒートポンプの電力消費が抑えられ、省エネ効果のある車両用空調装置を提供することができる。
【0051】
またさらに、本発明の請求項2の構成では、再生風路12内の除湿手段26と再生吹出口30との間に、除湿暖房時に蒸発器として作用する第三車内熱交換器13を配置し、第三車内熱交換器13で再生風路12内の空気を冷却除湿してから再生吹出口30を通じて車内に戻す構成となっている。
【0052】
このように構成することで、除湿手段26の再生部25を通過した後の空気から第三車内熱交換器13で水蒸気潜熱を回収し、冷媒を介してその熱を第二車内熱交換器9へ戻すことで、第二車内熱交換器9の加熱能力を向上することができる。
【0053】
また、除湿手段26の再生に用いた空気を車内に戻すことにより、再生に用いた空気を車外に排出する場合と比較してヒートポンプの暖房負荷を低減できるので、省エネ効果のある車両用空調装置を提供することができる。
【0054】
さらに、熱を車外に逃がしにくくなるので車内温度を快適温度に維持するためにより少ない風量の暖房でもよくなり、空調吹出口2や送風手段7から発生する騒音が小さくなるので、車内の静粛性を保つことができる。
【0055】
また、外気導入口1から予冷風路28内に吸込まれた外気と、内気導入口4から除湿風路29内に吸込まれた内気とが、予冷熱交換器27の作用によって顕熱交換されるので、除湿風路29内の内気は外気によって冷却され相対湿度が上昇し、内気は、相対湿度が上昇することにより、除湿手段26の吸湿材料に水分が吸湿されやすくなる。
【0056】
そのため、内気と外気を混合させてから除湿する場合、もしくは、内気を顕熱交換せずに除湿する場合と比較して、相対湿度が高いため、より多くの水分を除湿することができる。
【0057】
除湿された空気は、水分の吸着熱により空気温度が上昇するが、除湿量増加に比例して吸着熱も大きくなるので、より多くの水分を除湿された内気は、より多くの吸着熱によって温度が上昇することになり、予冷熱交換器27で熱交換された外気と混合した混合空気の温度が上昇するため、ヒートポンプの暖房負荷をより低減することができる。
【0058】
次に、極寒冷地での使用など、外気温が氷点下であり、車内気温に比べて非常に低い温度である場合の動作について、図3を参照しながら説明する。
【0059】
この場合、除湿暖房運転中に予冷熱交換器27が凍結する可能性がある。本実施の形態では、外気温湿度センサ23および内気温湿度センサ22が所定の値以下の温度および湿度を検知すると、除湿暖房運転の凍結防止モードとなり、制御手段によって第一の風路切替手段6が外気を導入する風路を予冷風路28から車外吸気風路3へと切替える。
【0060】
また、内気を導入する風路は除湿風路29のまま維持する。このように変更すると、予冷熱交換器27に導入される空気が内気導入口4からの内気のみとなり、外気が導入されなくなるので、予冷熱交換器27の温度が上昇して表面に着氷しにくくなる、もしくは氷が付着してもそれを融かすことができる。
【0061】
よって、予冷熱交換器27の凍結を抑制できるので、極寒冷地でも連続的な除湿暖房を行うことができる。
【0062】
尚、エンジンや電力機器を冷却する循環冷却水との熱交換によって空気を加熱する加熱用熱交換器、もしくは、PTCヒータ等の電気ヒータ、もしくはその両方によって構成される加熱手段を送風手段7の下流側に備えても良く、この場合、極寒冷地において車外熱交換器14での外気からの吸熱が少なくなることで、すなわち第二車内熱交換器の暖房能力が低下したとしても、除湿暖房運転を行うことができる。
【0063】
次に、夏季など、車内気温よりも車外気温が高い場合の動作について図4を参照しながら説明する。
【0064】
外気温湿度センサ23および内気温湿度センサ22によって車内気温よりも車外気温が高い状態を検知した場合には、冷房運転に切り替わる。
【0065】
冷房運転に切り替わると、第一の風路切替手段6が動作し、外気導入口1から車外吸気風路3を通過して第一の風路切替手段6に至る風路と、内気導入口4から車内吸気風路5を通過して第一の風路切替手段6に至る風路が形成される。また、第二の風路切替手段10が動作し、再生風路12への連通が遮断される。
【0066】
そして送風手段7が運転開始すると、外気および内気がこれらの風路および第一の風路切替手段6を介して混合されて送風手段7に吸引される。
【0067】
このときヒートポンプサイクルは、制御手段によって冷媒が圧縮機16、四方弁17、逆止弁18、車外熱交換器14、第三車内熱交換器13、絞り弁19、第一車内熱交換器8、圧縮機16の順に流れるように動作し、車外熱交換器14が凝縮器、第一車内熱交換器8が蒸発器として作用する。
【0068】
またこのとき、第二車内熱交換器9には冷媒は流さない。また、車外送風手段15が作動し、車外熱交換器14で冷媒は外気に放熱する。
【0069】
第一車内熱交換器8が蒸発器として作用することにより、送風手段7から吐出された空気は、この第一車内熱交換器8によって冷却され第二の風路切替手段10へ送風される。
【0070】
第二の風路切替手段10では、再生風路12は遮断されているため、冷却された空気は空調吹出口2へと送風され、車内各所へ吹出され、冷房運転が行われる。
【0071】
以上述べたように、本発明における実施の形態1の構成および動作によれば、車内の暖房用に加熱され除湿された空気の一部を除湿手段26の再生に用いることにより、除湿手段26の再生に別の加熱手段を設ける必要がない。また、除湿された空気を除湿手段26の再生に用いているので、除湿しない空気に比べより低温での再生が可能となり、ヒートポンプの電力消費を抑え、省エネ効果のある車両用空調装置を提供するという効果を得ることができる。
【0072】
さらに、除湿手段26の再生部を通過した後の混合空気から第三車内熱交換器13で水蒸気潜熱を回収することで、第二車内熱交換器9の加熱能力を向上することができるとともに、除湿手段26の再生部25を通過した後の空気を車内に戻すことにより、再生に用いた空気を車外に排出する場合と比較してヒートポンプの空調負荷を低減でき、省エネ効果のある車両用空調装置を提供するという効果を得ることができる。
【0073】
なお、図5に示すように、再生風路12内の第三車内熱交換器13と再生吹出口30との間から分岐して内気を車外へ排出する内気排出口31にかけての内気排出風路32を備え、再生風路12と内気排出風路32の分岐点に配置され、再生風路12を通過する空気について車内へ戻す量と車外へ排出する量を調整するダンパ機構で構成された排気風量調整手段33を備える構成としてもよい。
【0074】
このような構成とすると、除湿暖房時に急速に窓の曇りを解消したい場合、制御手段によって排気風量調整手段33を動作させ、再生吹出口30から車内に戻る風量と、内気排出口31から車外へ排出する風量を調整し、一部を積極的に車外へと排出して車室内の水分量を減少させ、窓の曇りを急速に解消することができる。
【0075】
(実施の形態2)
図6は本発明における実施の形態2の車両用空調装置の除湿暖房運転時の風路構成図である。以下、その構成について図6を参照しながら説明するが、実施の形態1と同等の構成および同じ作用となる部分についてはその詳細な説明を省略する。
【0076】
先ず、本実施の形態の構成および空調システムについて、図6を参照しながら説明する。
【0077】
図6に示すように、本実施の形態の構成では、再生風路12内の再生部25と再生吹出口30との間と、車外吸気風路3内の第一車内熱交換器8の上流側との交差部に、再生熱交換器34を設けている。
【0078】
再生吹出口30は車外と連通し、再生部25を通過した空気は、再生熱交換器34により、車外吸気風路3を通って車内へ吹出す空気と熱交換した後、再生吹出口30から車外へと排出される。
【0079】
また、除湿風路29内の除湿部24の上流側には第四車内熱交換器35を設けており、第一車内熱交換器8、第二車内熱交換器9、第四車内熱交換器35、車外熱交換器14、圧縮機16、および減圧手段の間で冷媒を循環させて構成されるヒートポンプの作用によって車室内に吹出される空気の冷却または加熱を行うものである。
【0080】
次いで、本実施の形態の除湿システムについても同じく図6を参照しながら説明する。
【0081】
除湿システムは、内気を除湿するための、除湿部24と再生部25を有する除湿手段26と、車内吸気風路5の内気導入口4と第一の風路切替手段6の間から分岐して第一の風路切替手段6へと接続される除湿風路29と、第二の風路切替手段10から内気を車内へ戻す再生吹出口30にかけての再生風路12で構成されている。
【0082】
さらに、除湿風路29内の、除湿部24の上流側には、除湿暖房運転時に蒸発器として作用する第四車内熱交換器35が設けられており、内気導入口4から除湿風路29へ送風された内気は、第四車内熱交換器35により熱交換と除湿を行われた後、除湿部24へと流入し、さらに除湿と熱交換が行われるものである。
【0083】
以上述べた構成において、その運転動作について同じく図6を参照しながら説明する。
【0084】
除湿暖房運転時には、第一の風路切替手段6の動作によって、外気が外気導入口1から車外吸気風路3を通って第一の風路切替手段6に至る風路と、内気が内気導入口4から除湿風路29を通って第一の風路切替手段6に至る風路とが形成される。
【0085】
このとき、内気導入口4から除湿風路29内に送風された内気は、第四車内熱交換器35の作用によって熱交換および除湿がなされ、すなわち除湿風路29を通る内気は第四車内熱交換器35内の冷媒と熱交換して冷却されることで相対湿度が上昇する。
【0086】
第四車内熱交換器35を通過して相対湿度が上昇した内気は除湿手段26の除湿部24へと送風され、除湿部24でさらに除湿されて乾燥する。そして除湿手段26での除湿に伴い、吸湿材料の水分吸着熱を受け取って加熱されその温度が上昇する。
【0087】
そして除湿部24を通過して乾燥および温度上昇した内気と、外気導入口1より車外吸気風路3を通過して導入された外気は、第一の風路切替手段6を通じて混合され、送風手段7に吸引される。
【0088】
このとき、ヒートポンプサイクルは、制御手段によって冷媒が圧縮機16、四方弁17、第二車内熱交換器9、絞り弁21、逆止弁20、車外熱交換器14、第四車内熱交換器35、圧縮機16の順に流れるように動作し、第二車内熱交換器9が凝縮器、車外熱交換器14および第四車内熱交換器35が蒸発器として作用する。
【0089】
また、第一車内熱交換器8には冷媒は流さない。さらに、車外送風手段15が作動して車外熱交換器14で外気と冷媒が熱交換する。
【0090】
第二車内熱交換器9が凝縮器として作用することで、送風手段7から吐出された空気は、温度調整手段11によってその一部または全部が第二車内熱交換器9で加熱され、所望の温度に調整されて第二の風路切替手段10へ送風される。
【0091】
第二の風路切替手段10に送風された空気は、第二の風路切替手段10の動作によって、その一部が再生風路12へと分配され、その残りは空調吹出口2から車内各所、例えば窓、顔、足元へと分配される。
【0092】
再生風路12へ送風された加熱空気は除湿手段26の再生部25へと送風され、再生部25において、除湿手段26の吸湿材料は再生風路12内の空気から熱を受け取って水分を空気中に放湿し、除湿手段26の再生が行われる。
【0093】
除湿手段26を通過した空気は、再生熱交換器34により車外吸気風路3を通過し車内へ吹出す空気との間で熱交換を行い、再生吹出口30より除湿材料から放湿させた水分とともに車外へと排気される。
【0094】
ここで、本実施の形態の構成では、除湿風路29内の除湿部24よりも上流側に蒸発器として作用する第四車内熱交換器35を配置し、第四車内熱交換器35で除湿風路29内の空気を冷却除湿してからさらに除湿部24で除湿させる構成となっている。
【0095】
このように構成することで、内気導入口4から除湿風路29へ送風された内気から第四車内熱交換器35で水蒸気潜熱を回収し、冷媒を介してその熱を第二車内熱交換器9へ戻すことで、第二車内熱交換器9の加熱能力を向上することができる。
【0096】
またさらに、第四車内熱交換器35および除湿部24の両方で除湿を行うことができるので、車内へ吹出す空気を急速に除湿することができる。
【0097】
また尚、再生熱交換器34は、互い違いに交差する風路を備えた伝熱板の積層体で構成される顕熱交換器であることが望ましく、この場合伝熱板は風路高さを保持するリブを所定間隔で複数配置しており、材質は樹脂または金属である。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明にかかる車両用空調装置は、車内の暖房用に加熱され除湿された空気の一部を除湿手段の再生に用い、また、除湿手段の再生に用いた空気から水蒸気潜熱を回収することにより、暖房のためのヒートポンプの電力消費が抑えられて省エネ効果のあるもので、暖房の熱源の得られにくい電気自動車やハイブリッド車等に使用される車両用空調装置として有用である。
【符号の説明】
【0099】
1 外気導入口
2 空調吹出口
3 車外吸気風路
4 内気導入口
5 車内吸気風路
6 第一の風路切替手段
7 送風手段
8 第一車内熱交換器
9 第二車内熱交換器
10 第二の風路切替手段
12 再生風路
13 第三車内熱交換器
14 車外熱交換器
16 圧縮機
19 絞り弁
21 絞り弁
24 除湿部
25 再生部
26 除湿手段
27 予冷熱交換器
28 予冷風路
29 除湿風路
30 再生吹出口
31 内気排出口
32 内気排出風路
33 排気風量調整手段
34 再生熱交換器
35 第四車内熱交換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外気を導入する外気導入口から車内に空調風を吹き出す空調吹出口にかけての車外吸気風路と、
この車外吸気風路内に、前記外気導入口側から順に、
車内に吹出す上流側の空気流を切替える第一の風路切替手段、
前記外気導入口から前記空調吹出口に向かう空気流を発生させる送風手段、
車内に吹出す空気を冷却または加熱する第一車内熱交換器および第二車内熱交換器、
車内に吹出す下流側の空気流を切替える第二の風路切替手段を備え、
内気を導入する内気導入口から前記第一の風路切替手段へ接続される車内吸気風路と、
前記内気導入口と前記第一の風路切替手段の間から分岐して前記第一の風路切替手段へと接続される除湿風路と、
前記第二の風路切替手段から分岐され、前記送風手段が吹出す空気の少なくとも一部を再生吹出口に連通させる再生風路と、
前記除湿風路内の前記第一の風路切替手段の上流側に除湿部、前記再生風路内に再生部を有する除湿手段と、
外気と冷媒を熱交換する車外熱交換器と、
冷媒を圧縮する圧縮機と、
冷媒を膨張させて減圧する減圧手段と、
前記第一車内熱交換器、前記第二車内熱交換器、前記車外熱交換器、前記圧縮機、および前記減圧手段の間で冷媒を循環させるヒートポンプを備えたものであって
外気導入時の暖房運転時において、前記第一の風路切替手段により、前記外気導入口から導入した外気と前記除湿部で除湿された内気を混合した混合空気の一部を、前記第二の風路切替手段により、前記再生風路へ流入させることで除湿暖房を行うことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
再生風路内の再生部と再生吹出口の間に第三車内熱交換器を備え、
前記再生吹出口は車内と連通し、
第一車内熱交換器、第二車内熱交換器、前記第三車内熱交換器、車外熱交換器、圧縮機、および減圧手段の間で冷媒を循環させるヒートポンプを備えたものであって、
前記再生部を通過した空気は、蒸発器として作用する前記第三車内熱交換器により熱交換および除湿を行われた後、前記再生吹出口から車内へと戻されることを特徴とする請求項1記載の車両用空調装置。
【請求項3】
再生風路内の再生部と再生吹出口との間と、車外吸気風路内の第一車内熱交換器の上流側との交差部に、再生熱交換器を備え、
前記再生吹出口は車外と連通し、
前記再生部を通過した空気は、前記再生熱交換器により、前記車外吸気風路を通って車内へ吹出す空気と熱交換した後、前記再生吹出口から車外へと排出されることを特徴とする請求項1記載の車両用空調装置。
【請求項4】
除湿風路内の除湿部の上流側に第四車内熱交換器を備え、
第一車内熱交換器、第二車内熱交換器、前記第四車内熱交換器、車外熱交換器、圧縮機、および減圧手段の間で冷媒を循環させるヒートポンプを備えるものであって、
内気導入口から前記除湿風路へ流入した内気は、蒸発器として作用する前記第四車内熱交換器により熱交換と除湿を行われた後、前記除湿部へと流入することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の車両用空調装置。
【請求項5】
外気導入口と第一の風路切替手段の間から分岐して前記第一の風路切替手段へ接続される予冷風路と、
除湿風路内の除湿部の上流側と、前記予冷風路との交差部に予冷熱交換器を備え、
前記予冷熱交換器により、内気導入口から前記除湿風路へ流入した内気と、前記外気導入口から導入した外気を熱交換させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の車両用空調装置。
【請求項6】
再生風路内の第三車内熱交換器と再生吹出口との間から分岐して内気を車外へ排出する内気排出口にかけての内気排出風路と、
前記再生風路と前記内気排出風路の分岐点に配置され、
前記再生風路を通過する空気について車内に戻す量と車外へ排出する量を調整する排出風量調整手段を備えることを特徴とする、
請求項1乃至5のいずれかに記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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