説明

車両用空調装置

【課題】空調ケース内の圧力損失を抑制し、小型化することができる車両用空調装置を提供する。
【解決手段】車両用空調装置10では、蒸発器16は、送風ファン12の下方に、空気通路15を横断するように上下方向に延びて配置される。また空調ケース14の内壁のうち、蒸発器16の空気流れ下流側に対向する部分28は、空気を上方へ導くように、蒸発器16に対して傾斜している。また蒸発器16は、前傾姿勢で配置され、第1仮想線29と第2仮想線30とが蒸発器16の下方で交わる。このような位置関係にあるので、蒸発器16を通過した空気を上方に案内するときに、蒸発器16の空気流れ下流側に対向する内壁にて鈍角に案内されることになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内を空調制御する車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1および特許文献2に記載の車両用空調装置は、小型化するために、スクロールケーシングの外周に沿って、蒸発器、エアミックスドアおよびヒータコアが順次、配置されている。そして後傾の蒸発器を通過した空気のうち、ヒータコアを迂回する空気は、各吹出口に向かうように上方へ鋭角に案内されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−132024号公報
【特許文献2】特開2008−296685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の車両用空調装置では、蒸発器が後傾であるので、蒸発器を通過した空気は、斜め下方向に吹き出される。その後、空気流れを上方に変更させるためには、大きな曲がり部が必要であり、通風抵抗が高くなるという問題がある。
【0005】
また特許文献2に記載の車両用空調装置では、蒸発器が後傾であるとともに、蒸発器下流の空調ケースの内壁が空気を上方へ案内するように傾斜している。このような構成であると、蒸発器を通過した空気は、斜め下方向に吹き出される。そして蒸発器を通過した空気が、傾斜している空調ケースの内壁に衝突してしまい、通風抵抗が高くなるという問題がある。
【0006】
このように特許文献1および特許文献2に記載の車両用空調装置では、蒸発器下流側における通風抵抗が高いので、圧力損失の増大し、風量低下を招くという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は前述の問題点を鑑みてなされたものであり、空調ケース内の圧力損失を抑制し、小型化することができる車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は前述の目的を達成するために以下の技術的手段を採用する。
【0009】
請求項1に記載の発明では、送風ファン(12)を収容するスクロールケーシング(13)を有し、空気を吸入して車室内に送風する送風機(11)と、
送風機から送風される空気が流れる空気通路(15)を形成する空調ケース(14)と、
空調ケース内における送風機の空気流れ下流側に設けられ、空気を冷却する冷房用熱交換器(16)と、
空調ケース内における冷房用熱交換器の空気流れ下流側に設けられ、空気を加熱する暖房用熱交換器(19)と、
空調ケース内における暖房用熱交換器の空気流れ下流側に設けられ、空気の流れ方向を変更する変更手段(23,27)と、を含み、
冷房用熱交換器は、送風ファンの下方に、空気通路を横断するように上下方向に延びて配置され、
空調ケースの内壁のうち、冷房用熱交換器の空気流れ下流側にて冷房用熱交換器の熱交換コア部に対向する部分(28)は、空気を上方へ導くように、冷房用熱交換器に対して傾斜し、
冷房用熱交換器が延びる方向に沿った第1仮想線(29)と、冷房用熱交換器の空気流れ下流側に対向する部分によって空気が案内される方向に沿った第2仮想線(30)とは、冷房用熱交換器の下方で交わることを特徴とする車両用空調装置である。
【0010】
請求項1に記載の発明に従えば、冷房用熱交換器は、送風ファンの下方に、空気通路を横断するように上下方向に延びて配置される。また空調ケースの内壁のうち、冷房用熱交換器の空気流れ下流側に対向する部分は、空気を上方へ導くように、冷房用熱交換器に対して傾斜している。これによってスクロールケーシングの外周を取り巻くように、冷房用熱交換器を通過した空気を案内することができる。したがって空調ケースがスクロールケーシングから前後方向に延びるような構成の車両用空調装置よりも、小型化することができ車両搭載性を向上することができる。
【0011】
また第1仮想線と第2仮想線とが冷房用熱交換器の下方で交わる。冷房用熱交換器の下方とは、冷房用熱交換器の下方に位置する空間を含むものである。このような位置関係にあるので、冷房用熱交換器を通過した空気を上方に案内するときに、冷房用熱交換器の空気流れ下流側に対向する内壁にて鈍角に案内されることになる。このように冷房用熱交換器を通過して空気を鈍角に案内することができるので、空気流れを案内するときに生じる圧力損失を抑制することができる。
【0012】
また請求項2に記載の発明では、冷房用熱交換は、車両に搭載された状態において、上方の端部が下方の端部よりも前方に位置する前傾姿勢で配置されていることを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明に従えば、冷房用熱交換は、車両に搭載された状態において前傾姿勢で配置されている。これによって車両用空調装置の上下方向の寸法を小さくすることができ、搭載性を向上することができる。
【0014】
また請求項3に記載の発明では、冷房用熱交換器、暖房用熱交換器および変更手段の一部は、スクロールケーシングの外壁の近傍であって、スクロールケーシングの外壁に沿うように、それぞれ配置されていることを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の発明に従えば、冷房用熱交換器、暖房用熱交換器および変更手段の一部は、スクロールケーシングの外壁の近傍であって、スクロールケーシングの外壁に沿ってそれぞれ配置されている。したがってクロールケーシングの外周を取り巻くように、冷房用熱交換器および暖房用熱交換器を通過した空気を案内し、車室内に導くことができる。したがって車両用空調装置をさらに小型化することができる。
【0016】
さらに請求項4に記載の発明では、空調ケース内のおける変更手段の空気流れ下流側に設けられ、車室内の複数箇所に向けて吹き出すための複数の吹出開口部(24〜26)をさらに含み、
変更手段は、吹出開口部を開閉して、空気が吹き出される吹出開口部を変更する開閉部(27)を含むことを特徴とする。
【0017】
請求項4に記載の発明に従えば、変更手段は、吹出開口部を開閉して、空気が吹き出される吹出開口部を変更する開閉部を含む。開閉部の開閉状態を変更することによって、暖房用熱交換器および冷房用熱交換器を通過した空気を、車室内の所定の箇所に向けて吹き出させることができる。
【0018】
さらに請求項5に記載の発明では、変更手段は、暖房用熱交換器を通過せずに冷房用熱交換器を通過した冷風と、暖房用熱交換器を通過した温風との割合を調整する調整部(23)を含むことを特徴とする。
【0019】
請求項5に記載の発明に従えば、変更手段は、暖房用熱交換器を通過せずに冷房用熱交換器を通過した冷風と、暖房用熱交換器を通過した温風との割合を調整する調整部を含む。したがって冷風と温風との割合を変更して、空調風の温度を制御することができる。
【0020】
さらに請求項6に記載の発明では、空調ケース内のおける変更手段の空気流れ下流側に設けられ、車室内の複数箇所に向けて吹き出す複数の吹出開口部をさらに含み、
変更手段は、
吹出開口部を開閉して、空気が吹き出される吹出開口部を変更する開閉部と、
暖房用熱交換器を通過せずに冷房用熱交換器を通過した冷風と、暖房用熱交換器を通過した温風との割合を調整する調整部とを含み、
調整部および開閉部は、それぞれ独立して駆動するロータリドアであり、
調整部の回転軸(L)は、開閉部の回転軸を中心に開閉部の移動軌跡を延長した仮想円内に位置していることを特徴とする。
【0021】
請求項6に記載の発明に従えば、冷風と温風との割合を変更して、空調風の温度を制御することができる。そして開閉部の開閉状態を変更することによって、温度調整した空調風を車室内の所定の箇所に向けて吹き出させることができる。また調整部および開閉部は、それぞれ独立して駆動するロータリドアであり、調整部の回転軸は、開閉部の移動軌跡の仮想円内(以下、「稼働範囲」ということがある)に位置している。したがって2つのロータリドアの稼働範囲の少なくとも一部が重複している。このように重複しているので、変更手段を小型化することができる。したがって車両用空調装置をさらに小型化することができる。
【0022】
なお、前述の各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】車両用空調装置10の断面図である。
【図2】5つの吹出モードにおける各ドア23,27の位置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に関して、図1および図2を用いて説明する。図1は、本実施形態の車両用空調装置10の断面図である。図1の前後上下の各矢印は車両搭載状態での方向を示す。車両左右(幅)方向は図1の紙面垂直方向である。
【0025】
車両用空調装置10は、車室内前部に位置する計器盤(インパネ)の内側において車両左右方向の略中央部に搭載される。車両用空調装置10のうち、車両前方側の上方部に送風機11が配置されている。送風機11は遠心式多翼ファン(シロッコファン)により構成される送風ファン12を有し、この送風ファン12を図示しない電動モータにより回転駆動する構成になっている。
【0026】
送風機11のスクロールケーシング13の巻始め部であるノーズ部13aは、送風ファン12の下側に位置しており、そして、スクロールケーシング13の巻終わり部13bは、ノーズ部13aの車両前方側に所定間隔を隔てて対向配置されている。スクロールケーシング13は、送風ファン12を回転可能に収容し送風ファン12の送風空気を案内する。送風ファン12の吸入側には、図示しない内外気切替箱が接続される。送風ファン12は、内外気切替箱を通して導入される外気または内気を吸入して、図1の矢印Pのように空調ケース14内の最前部の空間へ向かって上方から下方へと送風する。
【0027】
空調ケース14は、送風ファン12の送風空気が流れる空気通路15を構成する。空調ケース14の内部において送風ファン12の下方に冷房用熱交換器をなす蒸発器16が配置されている。蒸発器16を送風ファン12の送風空気の全量が車両前方側から後方側へと通過する。
【0028】
蒸発器16は、冷媒通路をなす偏平状のチューブ(図示せず)と空気側伝熱面積を増大するコルゲート状の伝熱フィン(図示せず)とを交互に多数積層して接合した周知の熱交換コア構成を有している。冷凍サイクルの減圧手段(図示せず)にて減圧された低圧冷媒が蒸発器16の熱交換コア部のチューブにて蒸発器16の通過空気から吸熱して蒸発することにより通過空気が冷却される。また蒸発器16の前方には、空気内の異物を除去するフィルタ17が設けられている。空調ケース14のうち、蒸発器16の下方に位置する最底部位に排水口18を開口して蒸発器16の凝縮水を排出するようになっている。
【0029】
そして、空調ケース14内において、蒸発器16の風下側(車両後方側)に暖房用熱交換器をなす温水式ヒータコア19が配置されている。ヒータコア19は、車両エンジン(図示せず)からの温水を熱源として空気を加熱するもので、温水通路をなす偏平状のチューブ(図示せず)と、空気側伝熱面積を増大するコルゲート状の伝熱フィン(図示せず)とを車両左右方向に交互に多数積層して接合した周知の熱交換コア部を有している。
【0030】
またヒータコア19は蒸発器16よりも高さ寸法が大幅に小さくしてあるので、ヒータコア19の下端部と空調ケース14の底面部との間にヒータコア19をバイパスして冷風が流れる冷風通路20が形成される。
【0031】
一方、空調ケース14内において、ヒータコア19の空気流れ下流側には、ヒータコア19の直後から上方に向かう温風通路21が形成されている。冷風通路20の下流側の部位には、冷風通路20からの冷風と温風通路21からの温風とを交差する方向から合流させて、冷風と温風とを混合させる冷温風混合空間22が形成されている。
【0032】
そして、ヒータコア19より下流側(上方側)には、ヒータコア19を通る空気(温風)と冷風通路20を通る空気(冷風)の風量割合を調整するエアミックスドア23が配置されている。エアミックスドア23は、本実施形態において調整部に相当する。
【0033】
空調ケース14の上面部において、車両前方側の部位にはデフロスタ開口部24が開口している。このデフロスタ開口部24は冷温風混合空間22から温度制御された空気が流入するものであって、図示しないデフロスタダクトを介してデフロスタ吹出口に接続され、この吹出口から車両前面窓ガラスの内面に向けて風を吹き出すようになっている。
【0034】
空調ケース14の上面部において、デフロスタ開口部24よりも車両後方側の部位にはフェイス開口部25が開口している。このフェイス開口部25も冷温風混合空間22から温度制御された空気が流入するものである。フェイス開口部25は、図示しないフェイスダクトを介してフェイス吹出口に接続され、この吹出口から車室内の乗員頭部に向けて風を吹き出すようになっている。
【0035】
また、空調ケース14の後方面部において、側方壁部の部位にはフット開口部26が開口している。側面壁部は、空調ケース14の車両幅方向の左右両側(紙面垂直方向奥側と手前側)の壁面を構成する部分である。このフット開口部26も冷温風混合空間22から温度制御された空気が流入するものであって、フット開口部26の下流側は、図示しないフットダクトを介してフット吹出口に接続され、この吹出口から乗員の足元に向けて風を吹き出すようになっている。
【0036】
上述した複数の吹出開口部、すなわち、デフロスタ開口部24、フェイス開口部25、およびフット開口部26は、吹出モードドア27により開閉されるようになっている。吹出モードドア27は、その回動停止位置に応じて、デフロスタ開口部24、フェイス開口部25、およびフット開口部26のいずれか1つもしくは複数を開く吹出モードを形成するようになっている。吹出モードドア27は、本実施形態において開閉部に相当する。
【0037】
上記構成の車両用空調装置10は、例えば、空調操作パネル(図示せず)に設けられた各種操作部材からの操作信号および空調制御用の各種センサからのセンサ信号が入力される電子制御装置(図示せず)を備えており、この制御装置の出力信号により各ドア23,27の位置が制御されるようになっている。
【0038】
エアミックスドア23は、例えば樹脂材料からなり、回転軸(駆動軸)Lから所定量離れた円弧面状に形成されたドア板部を有する。エアミックスドア23は、ドア板部が回転軸Lを中心に回動するロータリドアである。一方、吹出モードドア27も、例えば樹脂材料からなり、回転軸Lから所定量離れた円弧面状に形成されたドア板部および略円盤状の側板部が一体成形されており、ドア板部が回転軸Lを中心に回動するロータリドアである。吹出モードドア27の側板部は、フット開口部26を開閉するための部分である。吹出モードドア27のドア板部は、フェイス開口部25およびフット開口部26を開閉するための部分である。したがって本実施形態では、エアミックスドア23および吹出モードドア27は、それぞれ独立して駆動するロータリドアによって実現されている。各ドア23,27の回転軸Lは、車両左右方向(図1の紙面垂直方向)に延びるように配置されている。
【0039】
吹出モードドア27の回転軸Lは、それぞれエアミックスドア23の稼働範囲の内側に配設されており、2つの回転軸Lがほぼ一致している。また、エアミックスドア23のドア板部の回転軸Lからの離間距離は、吹出モードドア27のドア板部の回転軸Lからの離間距離よりも大きく設定されている。
【0040】
次に、エアミックスドア23および吹出モードドア27の動作に関して説明する。図2は、5つの吹出モードにおける各ドア23,27の位置を示す図である。図2では、各ドア23,27の動作の理解が容易となるよう、センタ断面とサイド断面の2つの断面図を示す。
【0041】
本実施形態の車両用空調装置10では、図2に示すように、吹出モードとして、たとえばフェイス(FACE)モード、バイレベル(B/L)モード、フット(FOOT)モード、フット/デフロスタ(F/D)モードおよびデフロスタ(DEF)モードがある。
【0042】
先ず、フェイスモードに関して説明する。フェイスモードは、主に乗員上半身に向けて空調風を吹き出すモードである。フェイスモードでは、フェイス開口部25が開状態であり、フット開口部26が閉状態であり、デフロスタ開口部24が閉状態となる位置に吹出モードドア27を配置している。これによって冷温風混合空間22からフェイス開口部25を介して空調風が車室内に送風される。またフェイスモードにおけるエアミックスドア23は、ヒータコア19の熱交換コア部を通過する温風通路21を全閉して冷風通路20を全開する最大冷房位置に配置している。
【0043】
次に、バイレベルモードに関して説明する。バイレベルモードは、乗員上半身および乗員の足元に向けて空調風を吹き出すモードである。バイレベルモードでは、フェイス開口部25およびフット開口部26が開状態であり、デフロスタ開口部24が閉状態となる位置に吹出モードドア27を配置している。これによって冷温風混合空間22からフェイス開口部25およびフット開口部26を介して空調風が車室内に送風される。またバイレベルモードにおけるエアミックスドア23は、温風通路21および冷風通路20の両方を開にする温度調整位置に配置している。
【0044】
次に、フットモードに関して説明する。フットモードは、主に乗員の足元に向けて空調風を吹き出すモードである。フットモードでは、フェイス開口部25およびデフロスタ開口部24が閉状態であり、フット開口部26が開状態である位置に吹出モードドア27を配置している。これによって冷温風混合空間22からフット開口部26を介して空調風が車室内に送風される。またフットモードのおけるエアミックスドア23は、ヒータコア19の熱交換コア部を通過する温風通路21を全開して冷風通路20を全閉する最大暖房位置に配置している。
【0045】
次に、フット/デフロスタモードに関して説明する。フット/デフロスタモードは、前側窓ガラスおよび乗員の足元に向けて空調風を吹き出すモードである。フット/デフロスタモードでは、フェイス開口部25が閉状態であり、フット開口部26が開状態であり、デフロスタ開口部24が開状態となる位置に吹出モードドア27を配置している。これによって冷温風混合空間22からデフロスタ開口部24およびフット開口部26を介して空調風が車室内に送風される。またフット/デフロスタモードのおけるエアミックスドア23は、最大暖房位置に配置している。
【0046】
次に、デフロスタモードに関して説明する。デフロスタモードは、前側窓ガラスに向けて空調風を吹き出すモードである。デフロスタモードでは、フェイス開口部25が閉状態であり、デフロスタ開口部24が開状態であり、フット開口部26が閉状態となる位置に吹出モードドア27を配置している。これによって冷温風混合空間22からデフロスタ開口部24を介して空調風が車室内に送風される。またデフロスタモードのおけるエアミックスドア23は、最大暖房位置に配置している。
【0047】
次に蒸発器16およびヒータコア19の搭載姿勢に関して説明する。蒸発器16は、空気通路15を横断して、熱交換コア面が上下方向に延びるように縦配置されている。そして蒸発器16の下端部よりも上端部が若干量だけ車両前方側(風上側)に位置するように蒸発器16は前傾姿勢で配置されている。このように配置された蒸発器16を送風ファン12の送風空気の全量が車両前方側から後方側へと通過する。
【0048】
またヒータコア19の上端部が蒸発器16の上端部に近接し、かつ、ヒータコア19の下端部が蒸発器16の熱交換コア面から車両後方側へ離れるようにヒータコア19は傾斜配置されている。したがって、蒸発器16とヒータコア19は、山形状(逆V字状)の配置形態をなしている。また、蒸発器16の上端部およびヒータコア19の上端部は、送風機11に隣接配置されている。さらにエアミックスドア23および吹出モードドア27も、ヒータコア19の上方の送風機11に近接した位置に配置されている。蒸発器16およびヒータコア19を逆V字状に配置し、各ドア23,27と共に送風機11と密接に配置することで、車両用空調装置10の上下方向の小型化を図るようにしている。
【0049】
さらに蒸発器16が延びる方向に沿った第1仮想線29と、対向する部分28によって空気が案内される方向に沿った第2仮想線30とが蒸発器16の下方で交わるように、蒸発器16は空調ケース14内に配置されている。蒸発器16の下方とは、蒸発器16の直下だけでなく、蒸発器16の下方に位置する空間を含むものである。また第1仮想線29と第2仮想線30は、図1に示す前後方向および上下方向を含む仮想一平面上において交差するよう、蒸発器16は前傾姿勢で配置されている。たとえば蒸発器16が後傾姿勢であると、第1仮想線29と第2仮想線30とは、蒸発器16の上方で交差することになる。
【0050】
また冷風通路20を構成する空調ケース14の内壁のうち、蒸発器16の空気流れ下流側にて蒸発器16の熱交換コア部に対向する部分28は、蒸発器16を通過した空気を上方へ導くように、蒸発器16に対して傾斜している。蒸発器16の空気流れ下流側とは、本実施形態では蒸発器16の後方側である。対向する部分28は、上方に向かうにつれて、後方に傾くように傾斜している。したがって図1にて破線の矢印で示すように、蒸発器16を通過した空気は、対向する部分28によって上方に向きを変えるように案内される。したがって対向する部分28によって空気は上方へ案内されるので、第2仮想線30は、上下方向に沿って延びる。換言すると、第2仮想線30は、対向する部分28の下流側に位置する空気通路15が延びる方向と同じ方向に沿って延びている。
【0051】
仮に蒸発器16が後傾姿勢の構成であると、蒸発器16を通過した空気は、対向する部分28に衝突し、上方に向きを変えるために鋭角で案内されることになる。したがって蒸発器16が後傾姿勢であると、通風抵抗が大きくなる。しかしながら本実施形態では、蒸発器16の下方で第1仮想線29と第2仮想線30とが交差するので、図1にて破線の矢印で示すように、蒸発器16を通過して後方に向かう冷風は、斜め上方に向かう空気流れとなる。そして蒸発器16を通過した空気は、対向する部分28によってさらに上方に向きを変えるように案内される。したがって蒸発器16を通過した空気は、対向する部分28にて鈍角で空気が案内されることになる。このように蒸発器16が前傾姿勢であると、通風抵抗が小さくなる。
【0052】
以上説明したように本実施形態の車両用空調装置10では、蒸発器16は、送風ファン12の下方に、空気通路15を横断するように上下方向に延びて配置される。また空調ケース14の内壁のうち、蒸発器16の空気流れ下流側に対向する部分28は、空気を上方へ導くように、蒸発器16に対して傾斜している。これによってスクロールケーシング13の外周を取り巻くように、蒸発器16を通過した空気を案内することができる。したがって空調ケース14がスクロールケーシング13から左右方向に延びるような構成の車両用空調装置10よりも、小型化することができ車両搭載性を向上することができる。
【0053】
また第1仮想線29と第2仮想線30とが蒸発器16の下方で交わる。このような位置関係にあるので、蒸発器16を通過した空気を上方に案内するときに、蒸発器16の空気流れ下流側に対向する内壁にて鈍角に案内されることになる。このように蒸発器16を通過して空気を鈍角に案内することができるので、空気流れを案内するときに生じる圧力損失を抑制することができる。
【0054】
また本実施形態では、蒸発器16、ヒータコア19、エアミックスドア23および吹出モードドア27の一部は、スクロールケーシング13の外壁の近傍であって、スクロールケーシング13の外壁に沿ってそれぞれ配置されている。したがってクロールケーシングの外周を取り巻くように、蒸発器16およびヒータコア19を通過した空気を案内し、車室内に導くことができる。したがって車両用空調装置10をさらに小型化することができる。
【0055】
また蒸発器16、ヒータコア19、および各ドア23,27の一部をスクロールケーシング13の外周に沿って近接配置しているので、空気流れは各吹出口へスクロールケーシング13の外周に沿ってスムースに流れる構成となり、圧力損失を最小限にすることが可能である。つまり、風量低下を最小限に抑えることが可能となる。
【0056】
さらに本実施形態では、空調ケース14内におけるヒータコア19の空気流れ下流側に設けられ、空気の流れ方向を変更する変更手段は、吹出モードドア27を含む。吹出モードドア27は、吹出開口部24〜26を開閉して、空気が吹き出される吹出開口部24〜26を変更するドアである。吹出モードドア27の開閉状態を変更することによって、ヒータコア19および蒸発器16を通過した空気を、車室内の所定の箇所に向けて吹き出させることができる。
【0057】
また本実施形態では、変更手段は、ヒータコア19を通過せずに蒸発器16を通過した冷風と、ヒータコア19を通過した温風との割合を調整するエアミックスドア23を含む。したがって冷風と温風との割合を変更して、空調風の温度を制御することができる。
【0058】
さらに本実施形態では、エアミックスドア23および吹出モードドア27は、それぞれ独立して駆動するロータリドアであり、エアミックスドア23の回転軸Lは、吹出モードドア27の稼働範囲内に位置している。吹出モードドア27の稼働範囲は、吹出モードドア27の回転軸Lを含む範囲であり、吹出モードドア27の移動軌跡を延長した仮想円内の範囲である。したがって2つのロータリドアの稼働範囲の少なくとも一部が重複している。このように重複しているので、全体として小型化することができる。したがって車両用空調装置10をさらに小型化することができる。
【0059】
(その他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
【0060】
前述の第1実施形態では、変更手段であるエアミックスドア23および吹出モードドア27は、いずれもロータリドアであったが、これに限定されるものではない。変更手段は、空気の流れ方向を変更する手段であればよく、たとえば一方がロータリドアで他方が片持ちタイプの板ドアであってもよいし、両方とも片持ちタイプの板ドアであってもよく、フィルムドアであってもよい。変更手段における空気流れの変更には、空気流れの向きを変更するだけでなく、空気流れの停止(開口を閉じる)する状態も含まれる。
【0061】
またエアミックスドア23は、ヒータコア19の下流側に設けられているが、下流側に限るものではなく、蒸発器16とヒータコア19との間に設けてもよい。このような構成の場合には、ヒータコア19の下流側に吹出モードドア27が設けられる。
【0062】
前述の第1実施形態では、蒸発器16は上下方向に対して前傾であったが、上下方向に沿って延びるように配置してもよい。このような構成であっても、第1仮想線29および第2仮想線30が蒸発器16の下方にて交差するように、対向する部分28の傾斜角度を調整することによって、同様の作用および効果を達成することができる。
【符号の説明】
【0063】
10…車両用空調装置
11…送風機
12…送風ファン
13…スクロールケーシング
14…空調ケース
15…空気通路
16…蒸発器(冷房用熱交換器)
19…ヒータコア(暖房用熱交換器)
20…冷風通路
21…温風通路
22…冷温風混合空間
23…エアミックスドア(変更手段,調整部)
24…デフロスタ開口部(吹出口開口部)
25…フェイス開口部(吹出口開口部)
26…フット開口部(吹出口開口部)
27…吹出モードドア(変更手段,開閉部)
28…対向する部分
29…第1仮想線
30…第2仮想線
L…回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風ファン(12)を収容するスクロールケーシング(13)を有し、空気を吸入して車室内に送風する送風機(11)と、
前記送風機から送風される空気が流れる空気通路(15)を形成する空調ケース(14)と、
前記空調ケース内における前記送風機の空気流れ下流側に設けられ、空気を冷却する冷房用熱交換器(16)と、
前記空調ケース内における前記冷房用熱交換器の前記空気流れ下流側に設けられ、空気を加熱する暖房用熱交換器(19)と、
前記空調ケース内における前記暖房用熱交換器の前記空気流れ下流側に設けられ、空気の流れ方向を変更する変更手段(23,27)と、を含み、
前記冷房用熱交換器は、前記送風ファンの下方に、前記空気通路を横断するように上下方向に延びて配置され、
前記空調ケースの内壁のうち、前記冷房用熱交換器の前記空気流れ下流側にて前記冷房用熱交換器の熱交換コア部に対向する部分(28)は、前記空気を上方へ導くように、前記冷房用熱交換器に対して傾斜し、
前記冷房用熱交換器が延びる方向に沿った第1仮想線(29)と、前記冷房用熱交換器の前記空気流れ下流側に対向する部分によって前記空気が案内される方向に沿った第2仮想線(30)とは、前記冷房用熱交換器の下方で交わることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記冷房用熱交換は、車両に搭載された状態において、上方の端部が下方の端部よりも前方に位置する前傾姿勢で配置されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記冷房用熱交換器、前記暖房用熱交換器および前記変更手段の一部は、前記スクロールケーシングの外壁の近傍であって、前記スクロールケーシングの外壁に沿うように、それぞれ配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記空調ケース内のおける前記変更手段の前記空気流れ下流側に設けられ、前記車室内の複数箇所に向けて吹き出すための複数の吹出開口部(24〜26)をさらに含み、
前記変更手段は、前記吹出開口部を開閉して、空気が吹き出される吹出開口部を変更する開閉部(27)を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記変更手段は、前記暖房用熱交換器を通過せずに前記冷房用熱交換器を通過した冷風と、前記暖房用熱交換器を通過した温風との割合を調整する調整部(23)を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記空調ケース内のおける前記変更手段の前記空気流れ下流側に設けられ、前記車室内の複数箇所に向けて吹き出す複数の吹出開口部をさらに含み、
前記変更手段は、
前記吹出開口部を開閉して、空気が吹き出される吹出開口部を変更する開閉部と、
前記暖房用熱交換器を通過せずに前記冷房用熱交換器を通過した冷風と、前記暖房用熱交換器を通過した温風との割合を調整する調整部とを含み、
前記調整部および前記開閉部は、それぞれ独立して駆動するロータリドアであり、
前記調整部の回転軸(L)は、前記開閉部の回転軸を中心に前記開閉部の移動軌跡を延長した仮想円内に位置していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の車両用空調装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2013−23120(P2013−23120A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161467(P2011−161467)
【出願日】平成23年7月24日(2011.7.24)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】