説明

車両用空調装置

【課題】再生用の加熱手段の電力消費を抑えて、暖房時の除湿が行える車両用空調装置を提供することを目的とする。
【解決手段】顕熱交換器30を通過した外気と除湿部24で除湿された内気を混合し、第二車内熱交換器9で加熱された空気の一部を、第二の風路切替手段10により、少なくとも一部を再生風路28へ流入させ、再生部25を通過した後の空気から顕熱交換器30によって車内へ吹出す空気へ熱回収して除湿暖房を行う。よって、車内の暖房用に加熱され除湿された空気の一部を除湿手段26の再生に用いることで、別の加熱手段を設けなくてもよく、除湿された空気を除湿手段26の再生に用いているので、除湿しない空気に比べてより低温で再生可能であり、ヒートポンプの電力消費が抑えられる。また、車外へ排出される空気から車内へ吹出す空気へ熱回収するので、第二車内熱交換器9の加熱負荷を低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内を暖房可能にする車両用空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ガソリン車の暖房ではエンジンの廃熱を利用したものが主流であり、暖房時の課題である窓等の曇りを防止する除湿装置が考案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この除湿装置は図7に示すように、車両用除湿装置として構成されており、車室内後方のトランクルーム内に空調装置の通風系とは独立に設置されるもので、除湿装置101の室内空気の吸入口102は車室内後方のリアパッセージトレーの開口部(図示せず)を通して車室内後方部に連通している。
【0004】
この吸入口102の下方部に送風機103を配置している。この送風機103は周知の遠心多翼ファン103aと、この遠心多翼ファン103aを回転自在に収容しているスクロールケース103bとを有し、この空気出口部にケース104が接続されている。このケース104の内部の通風路は、仕切り板105により除湿用の第一通風路106と再生用の第2通風路107とに仕切られている。
【0005】
そして、除湿用の第一通風路106の入口部には、冷却手段としての第一通風路106内の室内空気と低温外気との間で熱交換を行う第1顕熱交換器108が配置されている。この第1顕熱交換器108の下流側に乾燥剤を有する乾燥剤ユニット109が配置され、さらに、その下流側に第2顕熱交換器110が配置されている。
【0006】
このため、第1顕熱交換器108は外気用通路111に接続されており、この外気用通路111の一端部111aは車室外に開口しており、冬期暖房時の低温外気を吸入する。また、外気用通路111の他端部側は送風機103のモータ103cの外周側に形成された補助吸入口112を介して遠心多翼ファン103aの負圧部に連通している。これにより、遠心多翼ファン103aが回転駆動されると、低温外気が外気用通路111および第1顕熱交換器108を通して遠心多翼ファン103aの負圧部に向かって流れる。
【0007】
乾燥剤ユニット109は除湿用の第一通風路106だけでなく、再生用の第2通風路107にわたって設置されており、図示しないモータ等の駆動手段によりケース体109bを回転駆動するようになっている。また、再生用の第2通風路107において、乾燥剤ユニット109の上流側には電気発熱体113が設置され、第2顕熱交換器110は、再生用の第2通風路107の高温空気により除湿用の第一通風路106の空気を加熱する。除湿用の第一通風路106において、第2顕熱交換器110の下流側には車室内への吹出口114が設けられ、第2顕熱交換器110からの再生空気の出口115は車室外に開口している。
【0008】
上記のように、この車両用除湿装置は空調装置の通風系とは独立しており、空調装置の通風系内には前記の再生用の電気発熱体113とは別に暖房用の加熱手段が設置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−108655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような車両用除湿装置では、再生空気としては内気と外気を混合した空気を使用しているため、再生用の第2通風路内に加熱手段を設置して再生空気を高温に加熱しなければならず、そのための電力消費が増大するという課題があった。
【0011】
そこで本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、再生用の加熱手段の電力消費を抑えて、暖房時の除湿が行える車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そして、この目的を達成するために、本発明は、外気を導入する外気導入口から車内に空調風を吹出す空調吹出口にかけての車外吸気風路と、この車外吸気風路内に、前記外気導入口側から順に、車内に吹出す上流側の空気流を切替える第一の風路切替手段、前記外気導入口から前記空調吹出口に向かう空気流を発生させる送風手段、車内に吹出す空気を冷却または加熱する第一車内熱交換器および第二車内熱交換器、車内に吹出す下流側の空気流を切替える第二の風路切替手段を備え、内気を導入する内気導入口から前記第一の風路切替手段へ接続される車内吸気風路と、前記内気導入口と前記第一の風路切替手段の間から分岐して前記第一の風路切替手段へと接続される除湿風路と、前記除湿風路内の空気を冷却する第三車内熱交換器を備え、前記第二の風路切替手段から分岐し、前記送風手段によって吹出す空気の少なくとも一部を車外へ吹出す車外吹出口を接続する再生風路と、前記除湿風路内の前記第三車内熱交換器と前記第一の風路切替手段の間に除湿部、前記再生風路内に再生部を有する除湿手段と、外気と冷媒を熱交換する車外熱交換器と、冷媒を圧縮する圧縮機と、冷媒を膨張させて減圧する減圧手段と、前記第一車内熱交換器、前記第二車内熱交換器、前記第三車内熱交換器、前記車外熱交換器、前記圧縮機、および前記減圧手段の間で冷媒を循環させるヒートポンプとを備えたものであって、前記車外吸気口と前記第一の風路切替手段の間から分岐して前記第一の風路切替手段へと接続される熱回収風路と、前記熱回収風路と前記再生部より下流側の前記再生風路との交差部に顕熱交換器を配置し、前記再生風路内の空気から車内へ吹出す空気へ熱を回収し除湿暖房を行うものであり、これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、車内の暖房用に加熱され除湿された空気の一部を除湿手段の再生に用いることにより、除湿手段の再生用に別の加熱手段を設けなくてもよく、除湿された空気を除湿手段の再生に用いているので、除湿しない空気に比べより低温での再生が可能となり、ヒートポンプの電力消費を抑えて、省エネ効果のある車両用空調装置を提供することができる効果を得ることができる。
【0014】
さらに、前記再生風路の前記再生部より下流側の部分と前記熱回収風路との交差部に顕熱交換器を配置することで、前記再生風路を通り前記再生部を介して車外へ吹出される空気から、前記熱回収風路を通り車内へ吹出される空気へ熱を回収できるので、前記第二車内熱交換器の加熱負荷を低減させることができ、省エネ効果のある車両空調装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態1の車両用空調装置の風路構成図
【図2】同除湿暖房時運転の風路構成図
【図3】同除湿暖房時運転における凍結防止モード風路構成図
【図4】同冷房時運転の風路構成図
【図5】本発明の実施の形態2の車両用空調装置の風路構成図
【図6】同除湿暖房時運転の風路構成図
【図7】従来の車両用除湿装置の概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0017】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1の車両用空調装置の除湿暖房運転時の風路構成図である。図1に示すように、車両用空調装置は空調システムおよび除湿システムによって構成されている。
【0018】
空調システムには、送風路として、車外から外気を導入する外気導入口1から車内に空調風を吹き出す空調吹出口2にかけての車外吸気風路3と、車内から内気を導入する内気導入口4から空調吹出口2にかけての車内吸気風路5が設けられている。車外吸気風路3と車内吸気風路5は第一の風路切替手段6から空調吹出口2にかけて同一風路となっている。ここでは、この同一部分を代表して車外吸気風路3と呼ぶ。
【0019】
車外吸気風路3内には、外気導入口1側から順に、車内に吹出す上流側の空気を切替える第一の風路切替手段6、外気導入口1から空調吹出口2に向かう空気流を発生させる送風手段7、車内に吹出す空気を冷却または加熱する第一車内熱交換器8および第二車内熱交換器9、車内に吹出す下流側の空気流を切替える第二の風路切替手段10が配置され、第一車内熱交換器8と第二車内熱交換器9との間には第二車内熱交換器9を通過させる風量を調整して温度を調整する温度調整手段11を配置している。また、後述する除湿風路12内に、除湿風路12内の空気を冷却する第三車内熱交換器13を配置している。この第一車内熱交換器8、第二車内熱交換器9および第三車内熱交換器13は、次に述べるヒートポンプサイクルの一部を形成するものであり、ヒートポンプサイクルの作用によって車室内に吹出される空気の冷却または加熱を行うものである。また、外気と冷媒との熱交換を行う車外熱交換器14と、車外熱交換器14に外気を送風する車外送風手段15が車室外に配置されている。
【0020】
ヒートポンプサイクルは、冷媒を圧縮する圧縮機16と、冷媒を膨張させて減圧する減圧手段と、冷媒の流れ方向を切り替える四方弁17と、第一車内熱交換器8、第二車内熱交換器9、第三車内熱交換器13、車外熱交換器14とこれらの間に冷媒を循環させる冷媒配管で構成されている。そして、圧縮機16の高圧冷媒吐出側に四方弁17が、四方弁17と車外熱交換器14の間に冷媒の流れを一方向に制限する逆止弁18が、第三車内熱交換器13と第一車内熱交換器8の間に減圧手段としての絞り弁19(図に示すように膨張弁19aと電磁弁19bを内蔵)と、第二車内熱交換器9と車外熱交換器14の間に逆止弁20と減圧手段としての絞り弁21(図に示すように膨張弁21aと電磁弁21bを内蔵)と、車外熱交換器14と第三車内熱交換器13との間から分岐し第三車内熱交換器13と絞り弁19との間に接続される電磁弁31が配置されている。
【0021】
内気導入口4には、車内の空気温度および湿度を検知する内気温湿度検知手段としての内気温湿度センサ22が、また、外気導入口1には、車外の空気温度および湿度を検知する外気温湿度検知手段としての外気温湿度センサ23が設けられている。
【0022】
温度調整手段11は、ダンパ機構によって第二車内熱交換器9を通過させる風量を調整して温度調整を行うものであり、第一車内熱交換器8と第二車内熱交換器9との間に配置されている。
【0023】
上記した構成によって空調システムが構成されている。
【0024】
一方、除湿システムは、内気を除湿するための、後述する除湿部24と再生部25を有する除湿手段26と、車内吸気風路5の内気導入口4と第一の風路切替手段6の間から分岐して第一の風路切替手段6へと接続される除湿風路12と、除湿風路12内に凝縮器として熱交換する第三車内熱交換器13と、第二の風路切替手段10から分岐して、車外吹出口27へと接続される再生風路で構成されている。
【0025】
そして、除湿風路12内の第三車内熱交換器13と第一の風路切替手段6との間に除湿手段26の除湿部24が配置され、再生風路28内に除湿手段26の再生部25が配置されている。
【0026】
除湿手段26は、吸湿材料を有し、吸湿材料への吸湿によって通過する空気を除湿する除湿部24と、吸湿材料からの通過する空気への放湿によって吸湿材料を再生する再生部25によって構成されている。
【0027】
また、車外吸気風路3の外気導入口1と第一の風路切替手段6の間から分岐して第一の風路切替手段6へと接続される熱回収風路29が設けられ、再生風路28の再生部25から下流側の部分、すなわち、再生風路28の再生部25から車外吹出口27にかけての部分と、前述した熱回収風路29との交差部に顕熱交換器30が配置されている。
【0028】
また、内気温湿度センサ22および外気温湿度センサ23で検知されるそれぞれの温湿度によって、空調装置の冷暖房を切替える図示しない制御手段を備え、予め設定した所定の温度または温湿度になるように運転制御を行う構成となっている。
【0029】
また、第一の風路切替手段6および第二の風路切替手段10は、接続されるそれぞれの風路の開口部にダンパ機構と、そのダンパを開閉するモータによって構成されている。そして、制御手段から送信される信号によってダンパの開閉などを行い、連通させる風路の組合せの制御を行う構成となっている。
【0030】
以上述べた構成において、その運転動作について図2〜4を参照しながら説明する。本構成において、除湿暖房運転とは除湿手段26の作用によって除湿しながら暖房する運転をいい、また、暖房運転とは除湿手段26を作用させないで暖房を行う運転のことをいう。
【0031】
初めに、除湿暖房運転時の動作について、図2を参照しながら説明する。除湿暖房運転時には、第一の風路切替手段6の動作によって、外気導入口1から熱回収風路29を通って第一の風路切替手段6に至る風路と、内気導入口4から除湿風路12を通って第一の風路切替手段6に至る風路とが形成される。送風手段7の運転により、外気および内気がこれらの風路から第一の風路切替手段6を介して混合され、送風手段7に吸引される。
【0032】
このとき、除湿風路12を通る内気は第三車内熱交換器13内の冷媒と熱交換することによって冷却されて相対湿度が上昇する。一方、第三車内熱交換器13内の冷媒は内気から吸熱する。
【0033】
第三車内熱交換器13によって冷却されて相対湿度が上昇した内気は除湿手段26の除湿部24へと送風され、除湿部24で除湿されて乾燥する。そして除湿手段26での除湿に伴い、吸湿材料の水分吸着熱を受け取って加熱されその温度が上昇する。
【0034】
またこのとき、熱回収風路29を通る外気と後述する再生風路28を通り車外へ吹出される空気とが、顕熱交換器30の作用によって熱交換され、熱回収風路29を通る外気の温度が上昇する。
【0035】
除湿部24を通過して乾燥および温度上昇した内気と、顕熱交換器30を通過して温度上昇した外気は、第一の風路切替手段6を通じて混合され、送風手段7に吸引される。
【0036】
このとき、ヒートポンプサイクルは、制御手段によって冷媒が圧縮機16、四方弁17、第二車内熱交換器9、絞り弁21、逆止弁20、車外熱交換器14、第三車内熱交換器13、圧縮機16の順に流れるように動作し、第二車内熱交換器9が凝縮器、車外熱交換器14および第三車内熱交換器13が蒸発器として作用する。また、第一車内熱交換器8には冷媒は流さない。さらに、車外送風手段15が作動して車外熱交換器14で外気と冷媒が熱交換する。
【0037】
第二車内熱交換器9が凝縮器として作用することで、送風手段7から吐出された空気は、温度調整手段11によってその一部または全部が第二車内熱交換器9で加熱され、所望の温度に調整されて第二の風路切替手段10へ送風される。
【0038】
第二の風路切替手段10に送風された空気は、第二の風路切替手段10の動作によって、その一部が除湿風路12へと分配され、その残りは空調吹出口2から車内各所、例えば窓、顔、足元へと分配される。
【0039】
再生風路28へ送風された加熱空気は除湿手段26の再生部25へと送風される。再生部25において、除湿手段26の吸湿材料は再生風路28内の空気から熱を受け取って水分を空気中に放湿する。このようにして除湿手段26の再生が行われる。また、再生風路28と前述した熱回収風路29との交差部に配置される顕熱交換器30の作用によって、再生風路28を通る空気と、熱回収風路29を通る外気とが熱交換される。
【0040】
ここで、本発明の構成では、車内暖房用に除湿され加熱された空気を第二の風路切替手段10によって再生風路28に分配し、除湿手段26の再生にこの空気を用いる構成となっている。
【0041】
このように構成することで、再生のための別の加熱手段を設ける必要がなく、除湿された空気の一部を用いて再生を行うので、相対湿度を再生に必要な値まで下げるために昇温する空気の温度を、除湿されていない状態の空気よりも低温にすることが可能となるので、ヒートポンプの電力消費が抑えられ、省エネ効果のある車両用空調装置を提供することができる。
【0042】
また、本発明の構成では、熱回収風路29と再生部25より下流側の再生風路28との交差部に顕熱交換器30を配置する構成となっている。
【0043】
このように構成することで,再生風路28を通り再生部25を介して車外へ吹出される空気から、熱回収風路29を通り車内へ吹出される空気へ熱を回収できるので、第二車内熱交換器9の加熱負荷を低減させることができ、省エネ効果のある車両空調装置を提供することができる。
【0044】
なお、除湿風路12内の除湿手段26と車外吹出口27との間に、第三車内熱交換器13を配置し、第三車内熱交換器13で除湿風路12内の空気を冷却除湿してから除湿手段26へと流れる構成としている。
【0045】
このように構成することで、除湿風路12内の内気は第三車内熱交換器13によって冷却され相対湿度が上昇するので、除湿手段26の吸湿材料に水分が吸湿されやすくなる。そのため、内気と外気を混合させてから除湿する場合、もしくは、内気を冷却せずに除湿する場合と比較して相対湿度を高くできるので、より多くの水分を除湿することができる。
【0046】
さらに、第三車内熱交換器13によって内気を露点以下まで冷却させると、第三車内熱交換器13でも結露除湿を行うことが可能となり、除湿手段26のみでの除湿作用と比較して、さらに除湿効果の高い車両空調装置を提供することができる。
【0047】
加えて、外気温が氷点下の場合、車外熱交換器14による外気から冷媒への吸熱が不足しやすいが、第三車内熱交換器13によって除湿風路12を通る内気から吸熱できるので、不足分の吸熱を補うことによってヒートポンプサイクルを継続して作用させることが可能となる。
【0048】
次に、極寒冷地での使用など、外気温が氷点下であり、車内気温に比べて非常に低い温度である場合の動作について、図3を参照しながら説明する。この場合、除湿暖房運転中に顕熱交換器30が凍結する可能性がある。本実施の形態では、外気温湿度センサ23および内気温湿度センサ22が所定の値以下の温度および湿度を検知すると、除湿暖房運転の凍結防止モードとなり、制御手段によって第一の風路切替手段6が外気を導入する風路を熱回収風路29から車外吸気風路3へと切替える。また、再生風路28を通り車外へ排気される空気はそのまま顕熱交換器30を通過させる。このように変更すると、顕熱交換器30に導入される空気が再生風路28を通過する空気のみとなり、外気が導入されなくなるので、顕熱交換器30の温度が上昇して表面に着氷しにくくなる、もしくは氷が付着してもそれを融かすことができる。よって、顕熱交換器30の凍結を抑制できるので、極寒冷地でも連続的な除湿暖房を行うことができる。
【0049】
次に、夏季など、車内気温よりも車外気温が高い場合の動作について図4を参照しながら説明する。外気温湿度センサ23および内気温湿度センサ22によって車内気温よりも車外気温が高いと検知した場合には、冷房運転に切り替わる。
【0050】
冷房運転に切り替わると、第一の風路切替手段6が動作し、外気導入口1から車外吸気風路3を通過して第一の風路切替手段6に至る風路と、内気導入口4から車内吸気風路5を通過して第一の風路切替手段6に至る風路が形成される。また、第二の風路切替手段10が動作し、再生風路28への連通が遮断される。
【0051】
送風手段7が運転開始すると、外気および内気がこれらの風路および第一の風路切替手段6を介して混合されて送風手段7に吸引される。
【0052】
このときヒートポンプサイクルは、制御手段によって電磁弁31が開放され、冷媒が圧縮機16、四方弁17、逆止弁18、車外熱交換器14、電磁弁31、絞り弁19、第一車内熱交換器8、圧縮機16の順に流れるように動作し、車外熱交換器14が凝縮器、第一車内熱交換器8が蒸発器として作用する。またこのとき、第二車内熱交換器9および第三車内熱交換器13には冷媒は流さない。また、車外送風手段15が作動し、車外熱交換器14で冷媒は外気に放熱する。
【0053】
第一車内熱交換器8が蒸発器として作用することにより、送風手段7から吹出された空気は、この第一車内熱交換器8によって冷却され第二の風路切替手段10へ送風される。
【0054】
第二の風路切替手段10では、再生風路28は遮断されているため、冷却された空気は空調吹出口2へと送風され、車内各所へ吹出され、冷房運転が行われる。
【0055】
以上述べたように、本発明における実施の形態1の構成および動作によれば、車内の暖房用に加熱され除湿された空気の一部を除湿手段26の再生に用いることにより、除湿手段26の再生に別の加熱手段を設ける必要がない。また、除湿された空気を除湿手段26の再生に用いているので、除湿しない空気に比べより低温での再生が可能となり、ヒートポンプの電力消費を抑え、省エネ効果のある車両用空調装置を提供するという効果を得ることができる。
【0056】
(実施の形態2)
図5は本発明の実施の形態2の車両用空調装置の除湿暖房運転時の風路構成図である。以下、その構成について図5及び図6を参照しながら説明するが、実施の形態1と同等の構成及び同じ作用となる部分についてはその詳細な説明を省略する。
【0057】
説明に先立って、本実施の形態では、実施の形態1と同様の構成とした車外吸気風路3のうち、第一の風路切替手段6と温度調整手段11を連通する部分を混合風路32と呼ぶこととする。
【0058】
図5に示すように、本実施の形態では、再生部25よりも下流側の再生風路28、すなわち、再生風路28のうち再生部25から車外吹出口27へと接続される部分と混合風路32との交差部に顕熱交換器30を配置している。その他の構成部分は上記実施の形態1の同等の構成及び同じ作用である。
【0059】
以上述べた実施の形態2の構成において、その運転動作について図6を参照しながら説明する。図6に示すように、暖房運転時には、第一の風路切替手段6の動作によって、外気導入口1から車外吸気風路3を通って第一の風路切替手段6に至る風路と、内気導入口4から除湿風路12を通って第一の風路切替手段6に至る風路が形成される。送風手段7の運転により、外気および内気がこれらの風路から第一の風路切替手段6を介して混合され、混合風路32を通り顕熱交換器30を介して送風手段7に吸引される。
【0060】
送風手段7から吹出された空気は温度調整手段11によってその一部または全部が第二車内熱交換器9によって加熱され、所望の温度に調整されて第二の風路切替手段10に送風される。第二の風路切替手段10に送風された空気は、第二の風路切替手段10の作用によって、再生風路28に送風される空気と空調吹出口2から吹出される空気とに分流される。
【0061】
再生風路28へ送風された加熱空気は除湿手段26の再生部25へと送風される。再生部25において、実施の形態1と同様の作用によって除湿手段26の吸湿材料は再生風路28内の空気から熱を受け取って水分を空気中に放湿する。除湿手段26を通過し吸湿材料の再生を行った空気は顕熱交換器30を介して車外へ吹出される。
【0062】
ここで、実施の形態2における構成では、再生部25より下流側の再生風路28と混合風路32との交差部に顕熱交換器30を配置し、再生風路28を通って車外へ吹出す空気から混合風路32を通って車内へ吹出す空気へ熱回収する構成となっている。
【0063】
このような構成とすることで、極寒冷地での使用など、暖房時の外気温が氷点下であり、外気温が車内気温に比べて非常に低く、除湿暖房運転中に顕熱交換器30が凍結する可能性のある場合でも、第一の風路切替手段6で外気に内気を混合して昇温させた混合空気と再生風路28内の空気とを熱交換することで、混合により顕熱交換器30内の再生風路28の空気温度を凍結温度以上にすることができる。よって、極寒冷地であっても顕熱交換器30内部での凍結を抑制しつつ、熱回収を行うことができるので、第二車内熱交換器9の加熱負荷を抑制した省エネ効果のある車両用空調装置を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明にかかる車両用空調装置は、車内の暖房用に加熱され除湿された空気の一部を除湿手段の再生に用い、また、車外への排気から熱を回収することができるため、暖房のためのヒートポンプの電力消費が抑えられて省エネ効果のあるもので、暖房の熱源の得られにくい電気自動車やハイブリッド車等に使用される車両用空調装置として有用である。
【符号の説明】
【0065】
1 外気導入口
2 空調吹出口
3 車外吸気風路
4 内気導入口
5 車内吸気風路
6 第一の風路切替手段
7 送風手段
8 第一車内熱交換器
9 第二車内熱交換器
10 第二の風路切替手段
12 除湿風路
13 第三車内熱交換器
14 車外熱交換器
16 圧縮機
19 絞り弁
21 絞り弁
24 除湿部
25 再生部
26 除湿手段
27 車外吹出口
28 再生風路
29 熱回収風路
30 顕熱交換器
32 混合風路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外気を導入する外気導入口から車内に空調風を吹き出す空調吹出口にかけての車外吸気風路と、
この車外吸気風路内に、前記外気導入口側から順に、
車内に吹出す上流側の空気流を切替える第一の風路切替手段、
前記外気導入口から前記空調吹出口に向かう空気流を発生させる送風手段、
車内に吹出す空気を冷却または加熱する第一車内熱交換器および第二車内熱交換器、
車内に吹出す下流側の空気流を切替える第二の風路切替手段を備え、
内気を導入する内気導入口から前記第一の風路切替手段へ接続される車内吸気風路と、
前記内気導入口と前記第一の風路切替手段の間から分岐して前記第一の風路切替手段へと接続される除湿風路と、
前記除湿風路内の空気を冷却する第三車内熱交換器を備え、
前記第二の風路切替手段から分岐し前記送風手段によって吹出す空気の少なくとも一部を車外へ吹出す車外吹出口を接続する再生風路と、
前記除湿風路内の前記第三車内熱交換器と前記第一の風路切替手段の間に除湿部、前記再生風路内に再生部を有する除湿手段と、
外気と冷媒を熱交換する車外熱交換器と、
冷媒を圧縮する圧縮機と、
冷媒を膨張させて減圧する減圧手段と、
前記第一車内熱交換器、前記第二車内熱交換器、前記第三車内熱交換器、前記車外熱交換器、前記圧縮機、および前記減圧手段の間で冷媒を循環させるヒートポンプとを備えたものであって、
前記外気導入口と前記第一の風路切替手段の間から分岐して前記第一の風路切替手段へと接続される熱回収風路と、
前記熱回収風路と前記再生部から下流側の前記再生風路との交差部に顕熱交換器を配置し、
前記再生風路内の空気から車内へ吹出す空気へ熱を回収し除湿暖房を行うことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
外気を導入する外気導入口から車内に空調風を吹き出す空調吹出口にかけての車外吸気風路と、
この車外吸気風路内に、前記外気導入口側から順に、
車内に吹出す上流側の空気流を切替える第一の風路切替手段、
前記外気導入口から前記空調吹出口に向かう空気流を発生させる送風手段、
車内に吹出す空気を冷却または加熱する第一車内熱交換器および第二車内熱交換器、
車内に吹出す下流側の空気流を切替える第二の風路切替手段を備え、
内気を導入する内気導入口から前記第一の風路切替手段へ接続される車内吸気風路と、
前記内気導入口と前記第一の風路切替手段の間から分岐して前記第一の風路切替手段へと接続される除湿風路と、
前記除湿風路内の空気を冷却する第三車内熱交換器を備え、
前記第二の風路切替手段から分岐し前記送風手段によって吹出す空気の少なくとも一部を車外へ吹出す車外吹出口を接続する再生風路と、
前記除湿風路内の前記第三車内熱交換器と前記第一の風路切替手段の間に除湿部、前記再生風路内に再生部を有する除湿手段と、
外気と冷媒を熱交換する車外熱交換器と、
冷媒を圧縮する圧縮機と、
冷媒を膨張させて減圧する減圧手段と、
前記第一車内熱交換器、前記第二車内熱交換器、前記第三車内熱交換器、前記車外熱交換器、前記圧縮機、および前記減圧手段の間で冷媒を循環させるヒートポンプとを備えたものであって、
第一の風路切替手段と温度調整手段を連通する混合風路を備え、
再生部より下流側の再生風路と前記混合風路との交差部に顕熱交換器を配置し、前記再生風路を通って車外へ吹出す空気から前記混合風路を通って車内へ吹出す空気へ熱回収し除湿暖房を行うことを特徴とする車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−35484(P2013−35484A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174734(P2011−174734)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】