説明

車両用空調装置

【課題】フィルタの目詰まりの進行を遅らせて、風速分布の偏り抑制やフィルタ交換寿命の長期化を図る車両用空調装置を提供する。
【解決手段】送風装置20は、内外気二層モード時には、外気取入口220からの外気を独立通路の一方を介して外気取入口寄りのフィルタの一方側部分210を通過させて吸い込むとともに、内気取入口221からの内気を、独立通路の他方を介して内気取入口寄りのフィルタの他方側部分211を通過させて吸い込み、外気モード時には、外気取入口220からの外気を、連続通路228を介して外気取入口寄り及び内気取入口寄りのフィルタの両方210,211にわたって通過させて吸い込む。空気取入装置22は、外気モードから内外気二層モードへ切り替え可能に構成される。フィルタ21は、送風装置20の吸込部に対して、傾斜した姿勢となるように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置内部に取り入れた空気が通過するフィルタを備えた車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の従来技術は、内外気二層モードと外気モードとを有する車両用空調装置である。内外気二層モードでは、外気取入口と内気取入口の両方が開放され、取入口からフィルタに至るまでに、外気が通る外気通路と内気が通る内気通路が独立に区画形成される。このため、内気と外気はそれぞれ内気取入口、外気取入口から送風ユニット内に同時に取り入れられ、それぞれ独立区画された外気通路、内気通路を通りフィルタを通過してファンに吸い込まれた後、空調ユニットに向けて吹き出されて空調される。
【0003】
外気モードでは、外気取入口のみが開放され、内外気二層モード時の外気通路及び内気通路の区画が解除される。このため、外気は外気取入口からインテーク送風ユニット内に取り入れられ、フィルタ面を全体にわたって通過してファンに吸い込まれた後、空調ユニットに向けて吹き出されて空調される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−36834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の車両用空調装置では、内外気二層モード時に、外気がフィルタを通過するときに異物(例えば、塵、埃、花粉等)がフィルタの外部側表面に捕捉されて付着する。外気は、フィルタ面全体における外気取入口寄りに位置する部分のみに流れるため、外気に含まれる異物は、外気が通過する部分に偏って付着するようになる。
【0006】
そして、外気モード時に切り替わった場合に、外気取入口から取り込まれた外気は、外気取入口寄りのフィルタの部分だけでなく、内気取入口寄りに位置するフィルタの部分にも流れるようになり、フィルタ全体にわたって通過するようになる。しかしながら、先の内外気二層モードによって、外気取入口寄りのフィルタ部分のみで異物が捕捉された状態であるので、この部分が他の部分に比べて圧力損失が高くなり、フィルタにおける外気の風速分布は不均一になるという問題や、偏った部分で目詰まりが進行してフィルタ交換時期が早まるといった問題が生じる。
【0007】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、フィルタの目詰まりの進行を遅らせて、風速分布の偏り抑制やフィルタ交換寿命の長期化を図る車両用空調装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために以下の技術的手段を採用する。すなわち、請求項1は、車室内に向けて送風される空気を空調する空調ユニット(3)と、空調ユニットに空気を供給する送風ユニット(2)とを有する車両用空調装置(1)に係る発明であって、
送風ユニットは、
車室外の外気の流入口である外気取入口(220)、及び車室内の内気の流入口である内気取入口(221)が設けられ、外気取入口及び内気取入口の両方を開放する内外気二層モードを実施する場合にはそれぞれの取入口からの空気を独立して下方に導く2つの独立通路(226,227)を形成し、内気取入口を閉鎖して外気取入口を開放する外気モードを実施する場合には外気取入口から流入した外気が外気取入口の下方から内気取入口の下方にわたって流れる連続通路(228)を形成する空気取入装置(22)と、
外気取入口の下方と内気取入口の下方の両方にわたって配置され、内外気二層モード時の2つの独立通路及び外気モード時の連続通路を通ってきた空気が通過する際に埃等を捕捉するフィルタ(21)と、
フィルタの下方に設けられ、内外気二層モード時には、外気取入口からの外気を独立通路の一方を介して外気取入口寄りのフィルタの一方側部分(210)を通過させて吸い込むとともに、内気取入口からの内気を、独立通路の他方を介して内気取入口寄りのフィルタの他方側部分(211)を通過させて吸い込み、外気モード時には、外気取入口からの外気を、連続通路を介して外気取入口寄り及び内気取入口寄りのフィルタの両方にわたって通過させて吸い込む送風装置(20)と、
を備え、
空気取入装置は、外気モードから前記内外気二層モードへ切り替え可能に構成され、
フィルタは、送風装置の吸込部(204)に対して、傾斜した姿勢となるように配置されていることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、内外気二層モードで当該フィルタの一方側部分に付着した塵、埃等の異物を、外気モード時のフィルタ表面上を内気取入口側に流れる外気流とフィルタの傾斜姿勢とによって、フィルタの他の部分に飛ばせることにより、異物をフィルタに分散させることができる。また、これにより、フィルタ面の目詰り進行度合いに偏った部分が生じることを抑制することができる。したがって、フィルタの目詰まりの進行を遅らせて、風速分布の偏り抑制やフィルタ交換寿命の長期化を図る車両用空調装置を提供できる。
【0010】
請求項2によると、上記フィルタは、外気取入口寄りの一方側部分(210)が内気取入口寄りの他方側部分(211)よりも高い位置になるように配置されることを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、内外気二層モードで当該フィルタの一方側部分に付着した塵、埃等の異物を、外気モード時のフィルタ表面上を内気取入口側に流れる外気流と内気取入口側が低いフィルタの傾斜姿勢とによって、フィルタの他方側部分に確実に飛ばせることにより、フィルタ全体に異物を広く分散させることができる。また、これにより、フィルタ面の目詰り進行度合いがフィルタの外気取入口側に偏ることを抑制することができる。さらに、フィルタは、外気取入口寄りの一方側部分が高くなる傾斜姿勢であることにより、外気取入口側のフィルタ下面と送風装置の吸込部との間に距離を確保することができるので、吸込み抵抗を低減できる。またフィルタは、内気取入口寄りの他方側部分が低くなる傾斜姿勢であることにより、送風装置の高さ寸法を抑制することができるので、装置の小型化が図れる。
【0012】
請求項3によると、フィルタはその断面形状が波形状を有して形成されており、当該波形状の谷部(212)は、外気モード時に外気が内気取入口側に向かう空気流の方向に対して直交する方向に延びるように形成されることを特徴とする。この発明によれば、フィルタは、当該波形状の谷部がフィルタ表面上を流れる外気流の方向に対して直交して延びることと、内気取入口側が低い位置となるフィルタの傾斜姿勢とを併せ持つことになる。当該谷部の延びる方向と当該フィルタの傾斜姿勢との構成によって、フィルタの断面波形において内気取入口側が高く外気取入口側が低い斜面に関して、その傾斜が緩やかになるため、埃等の異物は当該斜面に堆積しやすくなる。このように緩やかになる斜面に多く堆積した異物は、外気モード時に外気流に乗って内気取入口側へ飛ばされやすく、異物のフィルタ面上の分散化をさらに高めることができる。
【0013】
請求項4によると、フィルタはその断面形状が波形状を有して形成されており、当該波形状の谷部(212)は、外気モード時に外気が内気取入口側に向かう空気流の方向に対して平行な方向に延びるように形成されることを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、当該波形状の谷部がフィルタ表面上を流れる外気流の方向に沿うため、フィルタ表面の抵抗となる形状の存在を低減することができる。これにより、内外気二層モード時にフィルタ表面の外気取入口側に付着した異物を気流によって内気取入口側にスムーズに移動させることができる。さらに、内気取入口側が低い位置となるフィルタの傾斜姿勢を併せ持つことにより、異物の自重により移動する力と外気流による推力を異物に対して十分に作用させることができる。
【0015】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明を適用した第1実施形態に係る車両用空調装置を説明するために一部に内部構造を示した正面図である。
【図2】第1実施形態の送風ユニットにおける内外気二層モード時の空気流れを説明するために内部構造を示した正面図である。
【図3】図2に示すフィルタを車両下方に向かって見たときの平面図である。
【図4】第1実施形態の送風ユニットにおける外気モード時の空気流れを説明するために内部構造を示した正面図である。
【図5】図4に示すフィルタを車両下方に向かって見たときの平面図である。
【図6】車両搭載状態で傾斜して設置されるフィルタにおいて、低くなる側を斜線で示した平面図である。
【図7】車両搭載状態で傾斜して設置されるフィルタについて、他の形態を示した平面図である。
【図8】第2実施形態の送風ユニットにおける内外気二層モード時の空気流れを説明するために内部構造を示した正面図である。
【図9】図8に示すフィルタを車両下方に向かって見たときの平面図である。
【図10】第2実施形態の送風ユニットにおける外気モード時の空気流れを説明するために内部構造を示した正面図である。
【図11】図10に示すフィルタを車両下方に向かって見たときの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示してなくとも実施形態同士を部分的に組み合わせることも可能である。
【0018】
(第1実施形態)
本発明を適用した第1実施形態の車両用空調装置について図1〜図7にしたがって説明する。図1は、第1実施形態に係る車両用空調装置1を説明するために一部に内部構造を示した正面図である。図1において、紙面の上方が車両上方、下方が車両下方、左方向が車両左側、右方向が車両右側、紙面の手前方向が車両後方、紙面の奥方向が車両前方、をそれぞれ示している。
【0019】
車両用空調装置1は、図1に示すように、送風ユニット2と、この送風ユニット2から送風された送風空気の温度調節を行う調整部をなす空調ユニット3と、送風ユニット2と空調ユニット3を接続する空気通路を構成するダクト部4と、を備えている。空調ユニット3、送風ユニット2、ダクト部4は、それぞれ、例えばポリプロピレンといった樹脂の成型品からなる。さらに強度を向上する場合には、所定量のタルクやガラス繊維を含有したPP樹脂を用いてもよい。送風ユニット2は、車室内のインストルメントパネル裏の空間のうち、中央部から助手席側へオフセットして配置されている。これに対し、空調ユニット3は、インストルメントパネル裏の空間のうち、車両幅の略中央部に配置されている。
【0020】
送風ユニット2は、車室内空気である内気及び車室外空気である外気の少なくとも一方を取り入れる空気取入装置22と、当該外気及び内気の少なくとも一方が通過する際に埃等を捕捉するフィルタ21と、フィルタ21の下方に設けられる送風装置20と、を備える。送風装置20は、空気取入装置22を通して外気または内気を吸入する。
【0021】
送風装置20は、遠心多翼ファンからなる2つのファン201,202を有し、各ファン201,202は、渦巻き状のスクロールケーシング203内に1つの回転軸によって同軸に上下に配置され、モータ200にて同時に回転駆動される。スクロールケーシング203は、上面にファン201の吸込部である吸込口204が形成され、下面にファン202の吸込部である吸込口205が形成されている。スクロールケーシング203の上面及び下面は、車両搭載状態において、地面と平行またはほぼ平行に位置するので、吸込口204及び吸込口205も同様に地面と平行またはほぼ平行な状態に開口している。
【0022】
上部のファン201による送風空気は、スクロールケーシング203の上方から下方に向けて吸込口204から吸い込まれ、スクロールケーシング203の渦巻き形状に沿って図1に示す矢印方向にダクト部4内に送風される。下部のファン202による送風空気は、スクロールケーシング203の下方から上方に向けて吸込口205から吸い込まれ、スクロールケーシング203の渦巻き形状に沿って図1に示す矢印方向にダクト部4内に送風される。
【0023】
空気取入装置22には、車室外の外気の流入口である外気取入口220、及び車室内の内気の流入口である内気取入口221が設けられ、これらの空気取入口を開閉して空気取入モードを設定する空気取入ドア223,224を有している。空気取入ドア223は、外気取入口220を開閉するドアである。空気取入ドア224は、内気取入口221を開閉するドアである。
【0024】
さらに空気取入装置22は、空気取入モードに応じて、空気取入装置22内の空気流れの経路を空気取入ドア223,224とともに変更する通路仕切りドア225を備えている。通路仕切りドア225は、空気取入装置22の内部空間を仕切って、外気取入口220側の空間と内気取入口221側の空間とに区画したり、内部空間の仕切りを解除して外気取入口220側と内気取入口221側を連通させて空気取入装置22の内部空間をひとつの空間にしたりすることができるドアである。
【0025】
制御装置5は、マニュアル操作による指令やオートエアコンの設定温度に応じて、空気取入装置22による空気取入モードを制御する。制御装置5は、空気取入モードとして、外気モード、内気モード、内外気二層モードのいずれかに設定する。また、制御装置5は、マニュアル操作による指令やオートエアコンの設定温度に応じて、送風装置20による送風量を制御する。また、制御装置5は、マニュアル操作による指令やオートエアコンの設定温度に応じて、吹き出しモードともに各吹出口を開閉する各吹出口ドアの動作を制御する。
【0026】
フィルタ21は、外気取入口220の下方と内気取入口221の下方との両方にわたって配置されており、内外気二層モード時の2つの独立通路(外気側独立通路226と内気側独立通路227)及び外気モード時の連続通路228を通ってきた空気が通過する際に埃等を捕捉する。
【0027】
フィルタ21は、送風装置20の吸込口204に対して、傾斜した姿勢となるように配置されている。特に図示するように、フィルタ21は、外気取入口寄りの一方側部分210が内気取入口寄りの他方側部分211よりも高い位置になるように配置されることが好ましい。フィルタ21は、その断面形状が波形状を有して形成されている。フィルタ21が折り目が形成された断面ジグザグ状である場合には、当該折り目が、波形の山部及び谷部212を構成する。当該波形状の谷部212は、外気モード時に外気が外気取入口220から内気取入口221側に向かう空気流の方向に対して直交する方向、換言すれば車両左右方向に延びるように形成されている。すなわち、フィルタ21は、その断面波形形状が、外気モード時の外気の当該主流方向、換言すれば車両後方に進行するように形成されている。フィルタ21は、例えば、繊維で形成されたエアフィルタである。
【0028】
送風装置20は、内外気二層モード時には、外気取入口220からの外気を、独立通路の一方である外気側独立通路226を介して外気取入口寄りのフィルタの一方側部分210に通過させて吸い込むとともに、内気取入口221からの外気を、独立通路の他方である内気側独立通路227を介して内気取入口寄りのフィルタの他方側部分211を通過させて吸い込む。また外気モード時には、外気取入口220からの外気を、連続通路228を介して外気取入口寄り及び内気取入口寄りのフィルタの両方にわたって通過させて吸い込む。
【0029】
図2は、送風ユニット2における内外気二層モード時の空気流れを説明するための図である。図2に示すように、空気取入装置22は、外気取入口220と内気取入口221の両方を開放する内外気二層モードを実施する場合には、それぞれの取入口からの空気を別々に下方に導く外気側独立通路226と内気側独立通路227を形成する。内外気二層モードでは、空気取入ドア223は外気取入口220を開放し、空気取入ドア224は内気取入口221を開放し、通路仕切りドア225はフィルタ21の表面に対して垂直になる姿勢で位置することにより、空気取入装置22の内部空間を外気側独立通路226と内気側独立通路227に区画する。
【0030】
内外気二層モードでは、このように空気取入装置22の内部空間が2つの独立通路に区画された状態でファン201及びファン202が駆動される。これにより、外気取入口220から吸い込まれた外気は、外気側独立通路226を通り、フィルタの一方側部分210を通過後、スクロールケーシング上面の吸込口204からファン201に吸い込まれてダクト部4内に送風される。さらに内気取入口221から吸い込まれた内気は、内気側独立通路227を通り、フィルタの他方側部分211を通過後、スクロールケーシング203の側方空間206を下降してスクロールケーシング下面の吸込口205からファン202に吸い込まれ、ダクト部4内に送風される。
【0031】
内外気二層モードで外気は、外気取入口220寄りに位置するフィルタの一方側部分210のみを通過するため、外気とともに侵入した塵、埃、花粉等の異物が当該部分のみに補足されることになる。したがって、図3に示すように、当該異物は、フィルタの一方側部分210における外側の表面に偏って付着して留まる。内気は外気ほど異物を運んでこないため、フィルタの他方側部分211における外側の表面には、あまり異物は付着しない。
【0032】
図4は、送風ユニット2における外気モード時の空気流れを説明するための図である。図4に示すように、空気取入装置22は、内気取入口221を閉鎖して外気取入口220を開放する外気モードを実施する場合には外気取入口220から流入した外気が外気取入口220の下方から内気取入口221の下方にわたって流れる連続通路228を形成する。外気モードでは、空気取入ドア223は外気取入口220を開放し、空気取入ドア224は内気取入口221を閉鎖し、通路仕切りドア225はフィルタ21の表面に対してほぼ平行に姿勢で位置することにより、連続通路228を形成する。
【0033】
外気モードでは、このように空気取入装置22の内部空間に連続通路228が形成された状態でファン201及びファン202が駆動される。これにより、外気取入口220から吸い込まれた外気は、連続通路228を外気取入口側から内気取入口側に向かって流れ、フィルタ21の面全体を通過する。フィルタ21の面全体のうち、外気取入口寄りのフィルタ部分を通過した外気は、スクロールケーシング上面の吸込口204からファン201に吸い込まれてダクト部4内に送風され、内気取入口寄りのフィルタ部分を通過した外気は、スクロールケーシング203の側方空間206を下降してスクロールケーシング下面の吸込口205からファン202に吸い込まれ、ダクト部4内に送風される。このモードでは、外気が連続通路228を外気取入口側から内気取入口側に向かって流れるため、外気取入口寄りのフィルタ部分表面付近において内気取入口側に向かう気流が形成されることになる。
【0034】
したがって、内外気二層モードから外気モードへのモード切り替えが行われると、内外気二層モード時に外気取入口寄りのフィルタ部分に付着した異物が、連続通路228を外気取入口側から内気取入口側に向かう外気流によって、内気取入口221側に拡散され、付着した異物の一部が内気取入口寄りのフィルタ部分に移動して、フィルタ21の面全体に異物が分散するようになる。異物は、図5に示すように、フィルタの一方側部分210からフィルタの他方側部分211にかけての外側の表面に広く分散して留まるようになる。これにより、内外気二層モード時に外気取入口寄りのフィルタ部分に付着し続ける異物が、外気モードへの切り替えにより減少するので、当該部分の目詰りを回避することができるため、フィルタ21の目詰りの偏りを解消することができる。したがって、フィルタ21の交換時期を遅らせることができる。
【0035】
フィルタ21は、車両搭載状態で、外気取入口寄りの一方側部分210が他方側よりも高くなるように地面に対して傾斜して配置されている。これにより、フィルタ21は、図6で斜線を付した部分が低くなっている。このフィルタ21の傾斜した姿勢によれば、フィルタ21の表面に付着した異物は、外気流に伴って白抜き矢印の方向に移動しやすく、フィルタ21の表面全体に分散する方向に働く。
【0036】
また、フィルタ21の傾斜姿勢は、図7で斜線を付した部分が低くなるようにしてもよい。この場合、フィルタ21は、車両搭載状態で、車両右側部分が車両左側部分よりも高くなるように地面に対して傾斜して配置されている。このフィルタ21の傾斜した姿勢によれば、内外気二層モード時にフィルタ21の車両右側部分に付着した異物は、外気流に伴って白抜き矢印の方向に移動しやすく、フィルタ21の車両右側部分での異物の集中が緩和され、分散する方向に働く。したがって、フィルタ21の交換時期を遅らせる効果が期待できる。
【0037】
空調ユニット3は、共通のケース内に蒸発器30、ヒータコア31、エアミックスドア等を内蔵する。蒸発器30は、車両前後方向には薄型の形態でケース内の通路を横断するように配置されている。したがって、蒸発器30の車両上下及び車両左右に延びる前面に送風ユニット2からの送風空気が流入する。この蒸発器30は、冷凍サイクルの冷媒の蒸発潜熱を空調空気から吸熱して、空調空気を冷却する。
【0038】
蒸発器30の空気流れ下流側である車両後方には、所定の間隔を隔ててヒータコア31が配置されている。ヒータコア31は、蒸発器30を通過した冷風を加熱し、その内部に高温の温水(例えばエンジン冷却水)が流れ、この温水を熱源として空気を加熱する。
【0039】
ケース内のヒータコア31よりも上方部位には、このヒータコア31をバイパスして冷風空気が流れる冷風バイパス通路が形成されている。また、ケース内のヒータコア31と蒸発器30との間の部位には、ヒータコア31で加熱される温風と、冷風バイパス通路を通ってヒータコア31をバイパスする冷風との風量割合を調整するエアミックスドアが設けられている。
【0040】
エアミックスドアは、その位置により、ヒータコア31を通る温風の風量とヒータコア31を通過しない冷風の風量との比率を調節する。エアミックスドアは、その開度に応じて冷風と温風の風量割合を調節し、空調風の温度調節を行う。制御装置5は、マニュアル操作による指令やオートエアコンの設定温度に応じて、エアミックスドアの位置を制御する。
【0041】
ケース内には、蒸発器30から流れてきた冷風空気とヒータコア31で加熱された温風空気とが混ざり合う空間であるエアミックスチャンバが形成されている。この空間で温度調節された空調風は、車室内につながる各吹出口を開閉する各ドアを制御することによって、適正な風量割合で車室内へ供給することができる。
【0042】
以下に、本実施形態の車両用空調装置1がもたらす作用効果について述べる。車両用空調装置1は、送風ユニット2と空調ユニット3を有する。送風ユニット2は、空気取入装置22、フィルタ21、及び送風装置20を備える。送風装置20は、フィルタ21の下方に設けられる。送風装置20は、内外気二層モード時には、外気取入口220からの外気を独立通路の一方を介して外気取入口寄りのフィルタの一方側部分210を通過させて吸い込むとともに、内気取入口221からの内気を、独立通路の他方を介して内気取入口寄りのフィルタの他方側部分211を通過させて吸い込み、外気モード時には、外気取入口220からの外気を、連続通路228を介して外気取入口寄り及び内気取入口寄りのフィルタの両方210,211にわたって通過させて吸い込む。空気取入装置22は、外気モードから内外気二層モードへ切り替え可能に構成される。フィルタ21は、送風装置の吸込部に対して、傾斜した姿勢となるように配置されている。
【0043】
この構成によれば、外気モード時のフィルタ表面上を内気取入口側に流れる外気流とフィルタ21の傾斜姿勢とによって、内外気二層モードでフィルタの一方側部分210に付着した塵、埃等の異物をフィルタ21の他の部分に飛ばすことができる。これにより、偏って付着する異物をフィルタ21に分散させることができる。また、これにより、フィルタ面の目詰り進行度合いに偏った部分が生じることを抑制することができる。したがって、フィルタ21の目詰まりの進行を遅らせることにより、風速分布の偏り抑制やフィルタ交換寿命の長期化が図れる。
【0044】
また、車両用空調装置1においてフィルタ21は、外気取入口寄りの一方側部分210が内気取入口寄りの他方側部分211よりも高い位置になるように配置されている。
【0045】
この構成によれば、外気モード時のフィルタ表面上を内気取入口側に流れる外気流と、内気取入口側が低いフィルタの傾斜姿勢とによって、内外気二層モードでフィルタの一方側部分210に付着した塵、埃等の異物をフィルタ21の他方側部分に確実に飛ばすことができる。これにより、フィルタ全体に異物を広く分散させることができる。また、これにより、フィルタ面の目詰り進行度合いがフィルタ21の外気取入口側に偏ることを抑制することができる。さらに、フィルタ21は、外気取入口寄りの一方側部分210が高くなる傾斜姿勢であることにより、外気取入口側のフィルタ下面と送風装置20の吸込口204との間に距離を確保することができるため、送風装置20の吸込み抵抗を低減することができる。またフィルタ21は、内気取入口寄りの他方側部分211が低くなる傾斜姿勢であることにより、スクロールケーシング203の側方空間206を小さくして送風装置20の高さ寸法を抑制することができる。このため、送風装置20の小型化を実現できる。
【0046】
また、フィルタ21はその断面形状が波形状を有して形成されている。当該波形状の谷部212は、外気モード時に外気が内気取入口221側に向かう空気流の方向に対して直交する方向に延びるように形成されている。この構成によれば、フィルタ21は、当該波形状の谷部212がフィルタ表面上を流れる外気流の主方向に対して直交して延びることと、内気取入口側が低い位置となるフィルタ21の傾斜姿勢とを併せ持つことになる。
【0047】
当該谷部212の延びる方向と当該フィルタ21の傾斜姿勢との構成によって、フィルタ21の波形形状の断面において内気取入口側が高く外気取入口側が低い傾斜を呈する斜面213に関して、内気取入口側が下がる姿勢になるため、その傾斜が緩やかになる。すなわち、フィルタ21の折り目によって形成された斜面213が緩やかになる。また、内外気二層モード時のフィルタの一方側部分210を通過する外気は、そのベクトルが斜面213に対して垂直に近い角度になるため、斜面213での風速分布が大きくなる。これらのことから、埃等の異物は当該斜面213に堆積しやすくなる。さらに、外気モード時の連続通路228の風流れに沿いやすい面である斜面213に異物を堆積させることができる。したがって、緩やかな斜面213に多く堆積した異物は、外気モード時に外気流に乗って内気取入口側へ飛ばされやすいので、異物のフィルタ面上の分散化をさらに高めることができる。
【0048】
(第2実施形態)
第2実施形態は、車両用空調装置の送風ユニットの構成について、第1実施形態を変更する実施形態である。図8は、第2実施形態の送風ユニット2Aにおける内外気二層モード時の空気流れを説明するための図である。図9は、図8に示すフィルタ21Aを車両下方に向かって見たときの平面図である。図10は、送風ユニット2Aにおける外気モード時の空気流れを説明するための図である。図11は、図10に示すフィルタを車両下方に向かって見たときの平面図である。送風ユニット2Aは、第1実施形態の送風ユニット2に対して、フィルタ21Aが異なっている。以下、特に説明しない形態は、第1実施形態と同様とし、異なる形態を主に説明する。
【0049】
送風ユニット2Aのフィルタ21Aは、第1実施形態のフィルタ21と異なり、その断面波形状の谷部212が外気モード時に外気が内気取入口221側に向かう空気流の主方向に対して平行な方向に延びる形態である。すなわち、図9に図示するように、その断面波形状の谷部212及び山部が車両左右に延びる形態であり、断面波形状は車両前後方向に進行する形態である。
【0050】
図8に示すように、内外気二層モードでは、外気取入口220から吸い込まれた外気は、外気側独立通路226を通り、フィルタの一方側部分210Aを通過後、スクロールケーシング上面の吸込口204からファン201に吸い込まれてダクト部4内に送風される。さらに内気取入口221から吸い込まれた内気は、内気側独立通路227を通り、フィルタの他方側部分211Aを通過後、スクロールケーシング203の側方空間206を下降してスクロールケーシング下面の吸込口205からファン202に吸い込まれ、ダクト部4内に送風される。
【0051】
内外気二層モードで外気は、外気取入口220寄りに位置するフィルタの一方側部分210Aのみを通過するため、外気とともに侵入した塵、埃、花粉等の異物が当該部分のみに補足されることになる。したがって、図9に示すように、当該異物は、フィルタの一方側部分210Aにおける外側の表面に偏って付着して留まる。内気は外気ほど異物を運んでこないため、フィルタの他方側部分211Aにおける外側の表面には、あまり異物は付着しない。
【0052】
図10に示すように、外気モードでは、外気取入口220から吸い込まれた外気は、連続通路228を外気取入口側から内気取入口側に向かって流れ、フィルタ21Aの面全体を通過する。フィルタ21Aの面全体のうち、外気取入口寄りのフィルタ部分を通過した外気は、スクロールケーシング上面の吸込口204からファン201に吸い込まれてダクト部4内に送風され、内気取入口寄りのフィルタ部分を通過した外気は、スクロールケーシング203の側方空間206を下降してスクロールケーシング下面の吸込口205からファン202に吸い込まれ、ダクト部4内に送風される。このモードでは、外気が連続通路228を外気取入口側から内気取入口側に向かって流れるため、外気取入口寄りのフィルタ部分表面付近において内気取入口側に向かう気流が形成されることになる。
【0053】
したがって、内外気二層モードから外気モードへのモード切り替えが行われると、内外気二層モード時に外気取入口寄りのフィルタ部分に付着した異物が、連続通路228を外気取入口側から内気取入口側に向かう外気流によって、内気取入口221側に拡散され、付着した異物の一部が内気取入口寄りのフィルタ部分に移動して、フィルタ21Aの面全体に異物が分散するようになる。異物は、図11に示すように、フィルタの一方側部分210Aからフィルタの他方側部分211Aにかけての外側の表面に広く分散して留まるようになる。これにより、内外気二層モード時に外気取入口寄りのフィルタ部分に付着し続ける異物が、外気モードへの切り替えにより減少するので、当該部分の目詰りを回避することができるため、フィルタ21Aの目詰りの偏りを解消することができる。したがって、フィルタ21Aの交換時期を遅らせることができる。
【0054】
本実施形態によると、第2実施形態の送風ユニット2Aにおいて、フィルタ21Aは、その断面形状が波形状を有して形成されている。当該波形状の谷部212は、外気モード時に外気が内気取入口221側に向かう空気流の主方向に対して平行な方向に延びるように形成されている。
【0055】
この構成によれば、当該波形状の谷部212である折り目が連続通路228を流れる外気の気流の主方向に沿うため、内外気二層モード時にフィルタ表面の外気取入口側に付着した異物を気流によって内気取入口側にスムーズに移動させることができる。さらに、内気取入口側が低い位置にあるフィルタ21Aの傾斜姿勢と、谷部212が外気流の主方向に沿うこととを併せ持つことにより、フィルタ21Aの表面に抵抗となる形状が存在しないため、異物の自重によって移動する力と外気流による推力(異物を推す力)を十分に活用することができる。したがって、フィルタ表面における異物分散性能を向上することができる。
【0056】
(他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
【0057】
上記実施形態では、内外気二層モードから外気モードに切り替わった場合に、フィルタ表面に付着した異物がフィルタの一方側部分210から他方側部分211に移動して分散することを説明しているが、このような形態に限るものではない。例えば、フィルタ表面に付着した異物は、フィルタの一方側部分210からフィルタの目詰りに影響のない他端部に集まるように移動する形態であってもよい。
【0058】
また、上記実施形態において説明した空気取入ドア223,224は、片持ち支持のドアであるが、ドア本体の中央部に支持部を有するバタフライ式のドア、平行移動するスライド移動方式のドア等の他の形式のドアであってもよい。
【符号の説明】
【0059】
1…車両用空調装置
2…送風ユニット
3…空調ユニット
20…送風装置
21…フィルタ
22…空気取入装置
204…吸込口(送風装置の吸込部)
210…フィルタの一方側部分、外気取入口寄りの一方側部分
211…フィルタの他方側部分、内気取入口寄りの他方側部分
212…谷部
220…外気取入口
221…内気取入口
226…外気側独立通路(独立通路)
227…内気側独立通路(独立通路)
228…連続通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内に向けて送風される空気を空調する空調ユニット(3)と、前記空調ユニットに空気を供給する送風ユニット(2)とを有する車両用空調装置(1)であって、
前記送風ユニットは、
車室外の外気の流入口である外気取入口(220)、及び車室内の内気の流入口である内気取入口(221)が設けられ、前記外気取入口及び前記内気取入口の両方を開放する内外気二層モードを実施する場合にはそれぞれの前記取入口からの空気を独立して下方に導く2つの独立通路(226,227)を形成し、前記内気取入口を閉鎖して前記外気取入口を開放する外気モードを実施する場合には前記外気取入口から流入した外気が前記外気取入口の下方から前記内気取入口の下方にわたって流れる連続通路(228)を形成する空気取入装置(22)と、
前記外気取入口の下方と前記内気取入口の下方とにわたって配置され、前記内外気二層モード時の前記2つの独立通路及び前記外気モード時の前記連続通路を通ってきた空気が通過する際に埃等を捕捉するフィルタ(21)と、
前記フィルタの下方に設けられ、前記内外気二層モード時には、前記外気取入口からの外気を前記独立通路の一方を介して前記外気取入口寄りの前記フィルタの一方側部分(210)を通過させて吸い込むとともに、前記内気取入口からの内気を、前記独立通路の他方を介して前記内気取入口寄りの前記フィルタの他方側部分(211)を通過させて吸い込み、前記外気モード時には、前記外気取入口からの外気を、前記連続通路を介して前記外気取入口寄り及び前記内気取入口寄りの前記フィルタの両方にわたって通過させて吸い込む送風装置(20)と、
を備え、
前記空気取入装置は、前記外気モードから前記内外気二層モードへ切り替え可能に構成され、
前記フィルタは、前記送風装置の吸込部(204)に対して、傾斜した姿勢となるように配置されていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記フィルタは、前記外気取入口寄りの一方側部分(210)が前記内気取入口寄りの他方側部分(211)よりも高い位置になるように配置されることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記フィルタはその断面形状が波形状を有して形成されており、当該波形状の谷部(212)は、前記外気モード時に前記外気が前記内気取入口側に向かう空気流の方向に対して直交する方向に延びるように形成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記フィルタはその断面形状が波形状を有して形成されており、当該波形状の谷部(212)は、前記外気モード時に前記外気が前記内気取入口側に向かう空気流の方向に対して平行な方向に延びるように形成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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