説明

車両用空調装置

【課題】除湿時に圧縮機を作動させる必要がない車両用空調装置を提供する。
【解決手段】車両用空調装置は、冷凍サイクルと空調ケース2とを備えている。冷凍サイクルのエバポレータ6は、冷媒流通管および内部に蓄冷材が封入された蓄冷材容器を備え、かつ蓄冷材容器内の蓄冷材が冷媒流通管内を流れる冷媒の有する冷熱により冷却される蓄冷機能付きエバポレータであり、空調ケース2の空気通路17内に配置する。空調ケース2に、エバポレータ6に外気を導く外気導入路21および導入した外気を排出する外気排出路22と、エバポレータ6を迂回させて空気を送るバイパス路23と、空気通路17のエバポレータ6の上流側部分および下流側部分を開閉する第1開閉部材24と、外気導入路21および外気排出路22を開閉する第2開閉部材25と、バイパス路23を開閉する第3開閉部材24とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車に用いられる車両用空調装置として、圧縮機、車室外に配置されかつ冷房時に圧縮機で圧縮された冷媒から熱を放熱する室外側熱交換器、冷房時に室外側熱交換器を通過した冷媒を減圧する減圧器、および冷房時に減圧器で減圧された冷媒を蒸発させるエバポレータを有する冷凍サイクルと、空気吸入口、車室内に空気を吹き出す空気吹き出し口、および空気吸入口と空気吹き出し口とを通じさせる空気通路を有する空調ケースとを備えており、エバポレータが空調ケースの空気通路内に配置され、冷凍サイクルが、暖房時および除湿暖房時に、空気吹き出し口から吹き出される空気に熱を与える発熱源を備えており、空調ケースの空気通路におけるエバポレータよりも空気吹き出し口側の部分に2つの分岐通路が設けられるとともに、いずれか一方の分岐通路に冷凍サイクルの発熱源が配置され、空調ケースに、2つの分岐通路のうちのいずれか一方、または両方に選択的に空気を流す切り替え部材が設けられている車両用空調装置が広く用いられている。
【0003】
通常のエンジンのみを駆動源とする自動車においては、上述した車両用空調装置における発熱源は、エンジンの廃熱を利用したヒータコアである。しかしながら、この場合、除湿時または除湿暖房時にも、冷房時と同様に圧縮機を作動させてエバポレータで冷媒を蒸発させる必要があるので、燃費が低下するおそれがある。
【0004】
ところで、近年では、比較的廃熱の少ないハイブリッド自動車や、電気自動車が増加している。ハイブリッド自動車や、電気自動車に用いられる車両用空調装置としては、上述したような空調ケースと、ヒートポンプ式冷凍サイクルとを備えた車両用空調装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1記載の車両空調装置のヒートポンプ式冷凍サイクル(30)は、図4に示すように、圧縮機(31)、冷房時に圧縮機(31)で圧縮された冷媒から熱を放熱する室外側熱交換器(32)、冷房時に室外側熱交換器(32)を通過した冷媒を減圧する減圧器(33)、冷房時に減圧器(33)で減圧された冷媒を蒸発させるエバポレータ(34)、空調ケースの一方の分岐通路に配置されかつ暖房時および除湿暖房時に圧縮機(31)で圧縮された冷媒から熱を放熱する室内側熱交換器(35)、および室内側熱交換器(35)を通過した冷媒を減圧する第2の減圧器(36)を備えており、室外側熱交換器(32)が、暖房時および除湿暖房時に第2減圧器(36)で減圧された冷媒を蒸発させるようになされ、室内側熱交換器(35)が、暖房時および除湿暖房時に空気に熱を与える発熱源となっている。
【0006】
特許文献1記載の車両用空調装置におけるヒートポンプ式冷凍サイクルの全ての機器は、図4に示すように、冷房用配管(37)、暖房用配管(38)および除湿用配管(39)によって接続されている。冷房用配管(37)は、冷房時に、冷媒を圧縮機(31)、室内側熱交換器(35)、室外側熱交換器(32)およびエバポレータ(34)の間で循環させるものである。なお、冷房時には、空調ケースの切り替え部材によって、発熱源である室内側熱交換器(35)が配置された第1分岐通路には空気が流れず、第2分岐通路のみに空気が流されるようになっている。暖房用配管(38)は、暖房時に、冷媒を圧縮機(31)、室内側熱交換器(35)、第2の減圧器(36)および室外側熱交換器(32)の間で循環させるものである。なお、暖房時には、空調ケースの切り替え部材によって、発熱源である室内側熱交換器(35)が配置された第1分岐通路のみに空気が流され、第2分岐通路には空気が流れないようになっている。除湿用配管(39)は、除湿時に、冷媒を圧縮機(31)、室内側熱交換器(35)、第2の減圧器(36)およびエバポレータ(34)の間で循環させるものである。なお、除湿のみを行う除湿時には、空調ケースの切り替え部材によって、発熱源である室内側熱交換器(35)が配置された第1分岐通路には空気が流れず、第2分岐通路のみに空気が流されるようになっており、除湿と暖房を同時に行う除湿暖房時には、空調ケースの切り替え部材によって、発熱源である室内側熱交換器(35)が配置された第1分岐通路のみに空気が流され、第2分岐通路には空気が流れないようになっている。
【0007】
上述した3つの配管(37)(38)(39)は共有部分を有しており、冷房用配管(37)、暖房用配管(38)および除湿用配管(39)における室内側熱交換器(35)よりも下流側の部分に冷媒の流れ方向を制御する三方弁(41)が設けられ、冷房用配管(37)における室外側熱交換器(32)の下流側とエバポレータ(34)とを接続する第1配管部分(37a)に冷媒を減圧する機能を有しかつ減圧器(33)となる第1電磁弁が設けられ、暖房用配管(38)における室外側熱交換器(32)の下流側と圧縮機(31)とを接続する第2配管部分(38a)に第2電磁弁(42)が設けられ、暖房用配管(38)および除湿用配管(39)における室内側熱交換器(35)の下流側でかつ三方弁(41)の下流側にレシーバ(43)および冷媒を減圧する膨張弁からなる第2の減圧器(36)が設けられている。そして、三方弁(41)および2つの電磁弁(33)(42)の働きによって、冷媒が、冷房用配管(37)、暖房用配管(38)および除湿用配管(39)のいずれか1つに流れるように切り替えられる。冷房時には、冷媒は、圧縮機(31)で圧縮された後、室内側熱交換器(35)を通過してから室外側熱交換器(32)で熱を放熱し、ついで第1電磁弁(33)により減圧された後にエバポレータ(34)で熱を奪って蒸発し、その後圧縮機(31)に戻される。暖房時には、冷媒は、圧縮機(31)で圧縮された後に室内側熱交換器(35)で熱を放熱し、ついでレシーバ(43)で気液分離された後に膨張弁(36)により減圧され、ついで室外側熱交換器(32)で熱を奪って蒸発した後に圧縮機(31)に戻される。除湿時には、冷媒は、圧縮機(31)で圧縮された後に室内側熱交換器(35)で熱を放熱し、ついで膨張弁(36)により減圧された後にエバポレータ(34)で熱を奪って蒸発し、その後圧縮機(31)に戻される。
【0008】
しかしながら、特許文献1記載の車両用空調装置のヒートポンプ式冷凍サイクルの場合、冷房用配管(37)および暖房用配管(38)の他に除湿用配管(39)や、除湿用配管(39)に冷媒を流すための第2電磁弁(42)を必要とし、配管構成が複雑になるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−23564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この発明の目的は、上記問題を解決し、除湿時に圧縮機を作動させる必要がなく、しかも特許文献1記載の車両空調装置に比較して配管構成が簡単な車両用空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記目的を達成するために以下の態様からなる。
【0012】
1)圧縮機、車室外に配置されかつ冷房時に圧縮機で圧縮された冷媒から熱を放熱する室外側熱交換器、冷房時に室外側熱交換器を通過した冷媒を減圧する減圧器、および冷房時に減圧器で減圧された冷媒を蒸発させるエバポレータを有する冷凍サイクルと、空気吸入口、車室内に空気を吹き出す空気吹き出し口、および空気吸入口と空気吹き出し口とを通じさせる空気通路を有する空調ケースとを備えており、エバポレータが空調ケースの空気通路内に配置されている車両用空調装置であって、
冷凍サイクルのエバポレータが、複数の冷媒流通管および内部に蓄冷材が封入された蓄冷材容器を備え、かつ蓄冷材容器内の蓄冷材が冷媒流通管内を流れる冷媒の有する冷熱により冷却されるようになされている蓄冷機能付きエバポレータであり、
空調ケースに、蓄冷機能付きエバポレータに外気を導く外気導入路および導入した外気を排出する外気排出路と、空気を、蓄冷機能付きエバポレータを迂回させて空気吸入口側から空気吹き出し口側に送るバイパス路と、空気通路における蓄冷機能付きエバポレータの上流側部分および下流側部分を開閉する第1の開閉部材と、外気導入路および外気排出路を開閉する第2の開閉部材と、バイパス路を開閉する第3の開閉部材とが設けられている車両用空調装置。
【0013】
2)冷凍サイクルが、暖房時および除湿暖房時に、空気吹き出し口から吹き出される空気に熱を与える発熱源を備えており、空調ケースの空気通路におけるバイパス路の下流側開口よりも空気吹き出し口側の部分に2つの分岐通路が設けられるとともに、いずれか一方の分岐通路に冷凍サイクルの発熱源が配置され、空調ケースに、2つの分岐通路のうちのいずれか一方、または両方に選択的に空気を流す切り替え部材が設けられている上記1)記載の車両用空調装置。
【0014】
3)冷凍サイクルがヒートポンプ式冷凍サイクルであり、前記圧縮機、前記室外側熱交換器、前記減圧器および前記エバポレータの他に、空調ケースの一方の分岐通路に配置されかつ暖房時および除湿暖房時に圧縮機で圧縮された冷媒から熱を放熱する室内側熱交換器、および室内側熱交換器を通過した冷媒を減圧する第2の減圧器を備えており、室外側熱交換器が、暖房時および除湿暖房時に第2減圧器で減圧された冷媒を蒸発させるようになされ、室内側熱交換器が、暖房時および除湿暖房時に吸気に熱を与える発熱源となっている上記2)記載の車両用空調装置。
【0015】
4)ヒートポンプ式冷凍サイクルの室外側熱交換器が、冷房時に室外側熱交換器を通過した冷媒から熱を放熱して凝縮させる上記3)記載の車両用空調装置。
【0016】
5)冷凍サイクルが蒸気圧縮式冷凍サイクルであり、エンジン冷却水から熱を奪うヒータコアが、暖房時および除湿暖房時に吸気に熱を与える発熱源となっている上記2)記載の車両用空調装置。
【発明の効果】
【0017】
上記1)の車両用空調装置によれば、冬季などには、第1開閉部材により空調ケースの空気通路における蓄冷機能付きエバポレータの上流側部分および下流側部分が閉じられるとともにバイパス路が開かれ、さらに第2開閉部材により外気導入路および外気排出路が開かれることによって、外気導入路から蓄冷機能付きエバポレータに導入された低温の外気により蓄冷機能付きエバポレータの蓄冷材に冷熱が蓄えられる。除湿時には、第1開閉部材により空気通路における蓄冷機能付きエバポレータの上流側部分および下流側部分が開かれるとともにバイパス路が閉じられ、さらに第2開閉部材により外気導入路および外気排出路が閉じられる。そして、空気通路内を流れる空気に、蓄冷機能付きエバポレータの蓄冷材に蓄えられた冷熱が放冷されて除湿される。したがって、特許文献1記載の車両用空調装置のように、除湿時に圧縮機を作動させる必要がなく、燃費が向上する。
【0018】
上記3)の車両用空調装置によれば、冷凍サイクルが、ヒートポンプ式冷凍サイクルであり、前記圧縮機、前記室外側熱交換器、前記減圧器および前記エバポレータの他に、空調ケースの一方の分岐通路に配置されかつ暖房時および除湿暖房時に圧縮機で圧縮された冷媒から熱を放熱する室内側熱交換器、および室内側熱交換器を通過した冷媒を減圧する第2の減圧器を備えており、室外側熱交換器が、暖房時および除湿暖房時に第2減圧器で減圧された冷媒を蒸発させるようになされ、室内側熱交換器が、暖房時および除湿暖房時に吸気に熱を与える発熱源となっており、空調ケースの空気通路におけるバイパス路の下流側開口よりも空気吹き出し口側の部分に2つの分岐通路が設けられるとともに、いずれか一方の分岐通路に前記発熱源が配置されているので、特許文献1記載の車両用空調装置のヒートポンプ式冷凍サイクルのように、除湿用配管や、除湿用配管に冷媒を流すための電磁弁を必要とせず、配管構成が簡単になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明による車両空調装置の冷凍サイクルを示す概略図である。
【図2】この発明による車両用空調装置の空調ケースの一部を示す暖房時の概略図である。
【図3】この発明による車両用空調装置の空調ケースの一部を示す除湿暖房時の概略図である。
【図4】従来の車両空調装置の冷凍サイクルを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0021】
図1はこの発明による車両空調装置の冷凍サイクルを示し、図2および図3はこの発明による車両用空調装置の空調ケースの一部を示す。
【0022】
ハイブリッド自動車や電気自動車に好適に用いられる車両空調装置は、図1に示すヒートポンプ式冷凍サイクル(1)と、図2および図3に示す空調ケース(2)とを備えている。
【0023】
図1において、車両用空調装置のヒートポンプ式冷凍サイクル(1)は、圧縮機(3)、車室外に配置されかつ冷房時に圧縮機(3)で圧縮された冷媒から熱を放熱する室外側熱交換器(4)、冷房時に室外側熱交換器(4)を通過した冷媒を減圧する減圧器(5)、冷房時に減圧器(5)で減圧された冷媒を蒸発させるエバポレータ(6)、暖房時に圧縮機(3)で圧縮された冷媒から熱を放熱する室内側熱交換器(7)、および暖房時に室内側熱交換器(7)を通過した冷媒を減圧する第2の減圧器としての膨張弁(8)を備えており、これらの機器が冷房用配管(9)と暖房用配管(11)とにより接続されている。
【0024】
エバポレータ(6)は蓄冷機能を有しており、図示は省略したが、複数の冷媒流通管および内部に蓄冷材が封入された蓄冷材容器を備えている。蓄冷機能を有するエバポレータ(6)の構成は公知のものであり、冷媒流通管内を冷媒が流れている場合に蓄冷材容器内の蓄冷材が冷媒流通管内を流れる冷媒の有する冷熱により冷却され、冷媒流通管への冷媒の流通が停止した場合には蓄冷材容器内の蓄冷材に蓄えられた冷熱が放出されるようになっている。
【0025】
室外側熱交換器(4)は、暖房時および除湿暖房時に膨張弁(8)で減圧された冷媒を蒸発させるようになされ、室内側熱交換器(7)は、暖房時に空気に熱を与える発熱源となっている。
【0026】
冷房用配管(9)は、冷房時に冷媒を圧縮機(3)、室内側熱交換器(7)、室外側熱交換器(4)およびエバポレータ(6)の間で循環させるものであり、暖房用配管(11)は、暖房時に冷媒を圧縮機(3)、室内側熱交換器(7)、膨張弁(8)および室外側熱交換器(4)の間で循環させるものである。両配管(9)(11)は共有部分を有しており、冷房用配管(9)および暖房用配管(11)における室内側熱交換器(7)よりも下流側の部分に冷媒の流れ方向を制御する三方弁(12)が設けられ、冷房用配管(9)における室外側熱交換器(4)とエバポレータ(6)とを接続する配管部分(9a)に減圧器(5)が設けられ、暖房用配管(11)における三方弁(12)と室外側熱交換器(4)とを接続する配管部分(11a)に気液分離器としてのレシーバ(13)および膨張弁(8)が、前者が三方弁(12)側に位置するように設けられている。減圧器(5)は、冷媒を減圧する機能を有する電磁弁からなり、減圧器(5)と三方弁(12)の働きによって、冷媒が、冷房用配管(9)および暖房用配管(11)のいずれか1つに流れるように切り替えられる。
【0027】
冷房時には、冷媒は、圧縮機(3)で圧縮された後に室外側熱交換器(4)で熱を放熱して凝縮され、ついで減圧器(5)により減圧された後にエバポレータ(6)で熱を奪って蒸発し、その後圧縮機(3)に戻される。暖房時には、冷媒は、圧縮機(3)で圧縮された後に室内側熱交換器(7)で熱を放熱し、ついでレシーバ(13)で気液分離された後に膨張弁(8)により減圧され、ついで室外側熱交換器(4)で熱を奪って蒸発した後に圧縮機(3)に戻される。
【0028】
図2および図3に示すように、空調ケース(2)は、外気を吸い込む第1空気吸入口(14)、車室内空気を吸い込む第2空気吸入口(15)、車室内に空気を吹き出す空気吹き出し口(16)、および両空気吸入口(14)(15)と空気吹き出し口(16)とを通じさせる空気通路(17)を有する。空調ケース(2)の空気通路(17)内に蓄冷機能付きエバポレータ(6)が配置され、空気通路(17)内の蓄冷機能付きエバポレータ(6)よりも上流側部分に送風機(18)が配置されている。また、空調ケース(2)に、第1空気吸入口(14)および第2空気吸入口(15)のうちのいずれか一方のみから選択的に空気を吸い込む吸気切り替え部材(19)が設けられている。
【0029】
空調ケース(2)に、蓄冷機能付きエバポレータ(6)に外気を導く外気導入路(21)および導入した外気を排出する外気排出路(22)と、空気を、蓄冷機能付きエバポレータ(6)を迂回させて両空気吸入口(14)(15)側から空気吹き出し口(16)側に送るバイパス路(23)とが設けられている。空調ケース(2)に、空気通路(17)における蓄冷機能付きエバポレータ(6)の上流側部分および下流側部分を開閉する第1の開閉部材(24)と、外気導入路(21)および外気排出路(22)を開閉する第2の開閉部材(25)と、バイパス路(23)を開閉する第3の開閉部材とが設けられている。ここでは、第1の開閉部材(24)がバイパス路(23)を開閉する第3の開閉部材を兼ねており、空気通路(17)における蓄冷機能付きエバポレータ(6)の上流側部分および下流側部分が開かれた際には、バイパス路(23)が閉じられ、同じく空気通路(17)における蓄冷機能付きエバポレータ(6)の上流側部分および下流側部分が閉じられた際には、バイパス路(23)が開かれる。
【0030】
また、空調ケース(2)の空気通路(17)におけるバイパス路(23)の下流側開口よりも空気吹き出し口(16)側の部分に2つの分岐通路(26)(27)が設けられており、いずれか一方の第1分岐通路(26)に冷凍サイクル(1)の発熱源である室内側熱交換器(7)が配置され、他方の第2分岐通路(27)には何も配置されていない。また、空調ケース(2)に、2つの分岐通路(26)(27)のうちのいずれか一方に選択的に空気を流す切り替え部材(28)が設けられている。切り替え部材(28)の働きによって、冷房時には、発熱源である室内側熱交換器(7)が配置された第1分岐通路(26)には空気が流れず、第2分岐通路(27)のみに空気が流されるようになっている。暖房時には、発熱源である室内側熱交換器(7)が配置された第1分岐通路(26)のみに空気が流され、第2分岐通路(27)には空気が流れないようになっている。除湿のみを行う除湿時には、発熱源である室内側熱交換器(7)が配置された第1分岐通路(26)には空気が流れず、第2分岐通路(27)のみに空気が流されるようになっており、除湿と暖房を同時に行う除湿暖房時には、発熱源である室内側熱交換器(7)が配置された第1分岐通路(26)のみに空気が流され、第2分岐通路(27)には空気が流れないようになっている。
【0031】
図示は省略したが、夏季などの冷房時には、第1開閉部材(24)により空気通路(17)における蓄冷機能付きエバポレータ(6)の上流側部分および下流側部分が開かれ、これと同時に第1開閉部材(24)によりバイパス路(23)が閉じられる。また、第2開閉部材(25)が閉じられるとともに、切り替え部材(28)により第1分岐通路(26)が閉鎖されるとともに第2分岐通路(27)が開かれる。冷媒は、圧縮機(3)で圧縮された後に室内側熱交換器(7)を通過し、室外側熱交換器(4)で熱を放熱して凝縮される。ついで、冷媒は、減圧器(5)により減圧された後にエバポレータ(6)で空気通路(17)を流れる空気から熱を奪って蒸発し、その後圧縮機(3)に戻される。エバポレータ(6)により熱を奪われた空気は、第2分岐通路(27)を通って空気吹き出し口(16)から車室内に吹き出される。
【0032】
冬季などの暖房時には、図2に示すように、第1開閉部材(24)により空気通路(17)における蓄冷機能付きエバポレータ(6)の上流側部分および下流側部分が閉じられ、これと同時にバイパス路(23)が開かれる。また、第2開閉部材(25)により外気導入路(21)および外気排出路(22)が開かれるとともに、切り替え部材(28)により第1分岐通路(26)が開かれるとともに第2分岐通路(27)が閉じられる。冷媒は、圧縮機(3)で圧縮された後に室内側熱交換器(7)で、第1分岐通路(26)を流れる空気に熱を放熱し、加熱された空気が空気吹き出し口(16)から車室内に吹き出される。熱を放熱した冷媒は、レシーバ(13)で気液分離された後に膨張弁(8)により減圧され、ついで室外側熱交換器(4)で熱を奪って蒸発した後に圧縮機(3)に戻される。
【0033】
また、暖房時には、外気導入路(21)から蓄冷機能付きエバポレータ(6)に導入された低温の外気により蓄冷機能付きエバポレータ(6)の蓄冷材に冷熱が蓄えられる。
【0034】
冬季などにおいて、除湿および暖房を行う除湿暖房時には、図3に示すように、第1開閉部材(24)により空気通路(17)における蓄冷機能付きエバポレータ(6)の上流側部分および下流側部分が開かれ、これと同時にバイパス路(23)が閉じられる。また、第2開閉部材(25)により外気導入路(21)および外気排出路(22)が閉じられ、さらに切り替え部材(28)により第1分岐通路(26)が開かれるとともに第2分岐通路(27)が閉じられる。この場合、空気通路(17)内を流れる空気に、蓄冷機能付きエバポレータ(6)の蓄冷材に蓄えられた冷熱が放冷されて除湿される。冷媒は、圧縮機(3)で圧縮された後に室内側熱交換器(7)で、第1分岐通路(26)を流れる除湿された空気に熱を放熱し、加熱された除湿空気が空気吹き出し口(16)から車室内に吹き出される。熱を放熱した冷媒は、レシーバ(13)で気液分離された後に膨張弁(8)により減圧され、ついで室外側熱交換器(4)で熱を奪って蒸発した後に圧縮機(3)に戻される。
【0035】
上述した暖房時および除湿暖房時において、切り替え部材(28)の切り替え角度を調整することによって、第1分岐通路(26)および第2分岐通路(27)の両方を開いて両分岐通路(26)(27)に空気を流すとともに、両分岐通路(26)(27)を流れる空気の量を調整することもある。この場合、第1分岐通路(26)を通過して室内側熱交換器(7)により加熱された空気と、第2分岐通路(27)した空気とを混合するとともに混合空気の温度を調整することができ、空気吹き出し口(16)から車室内に吹き出される温度を調整することが可能になる。
【0036】
なお、図示は省略したが、冬季などにおいて除湿のみを行う除湿時には、第1開閉部材(24)により空気通路(17)における蓄冷機能付きエバポレータ(6)の上流側部分および下流側部分が開かれ、これと同時にバイパス路(23)が閉じられる。また、第2開閉部材(25)が閉じられるとともに、切り替え部材(28)により第1分岐通路(26)が閉鎖されるとともに第2分岐通路(27)が開かれる。この場合、空気通路(17)内を流れる空気に、蓄冷機能付きエバポレータ(6)の蓄冷材に蓄えられた冷熱が放冷されて除湿される。除湿空気は、第2分岐通路(27)を通り、空気吹き出し口(16)から車室内に吹き出される。
【0037】
上記実施形態においては、室外側熱交換器(4)は、冷房時に冷媒から熱を放熱して凝縮させるとともに、暖房時に冷媒から熱を奪って蒸発させるようになっているが、これに限定されるものではなく、冷房時に冷媒から熱を放熱して凝縮させる第1の室外側熱交換器と、暖房時に冷媒から熱を奪って蒸発させる第2の室外側熱交換器とが別々に設けられていてもよい。
【0038】
また、上記実施形態においては、この発明による車両用空調装置の冷凍サイクルはヒートポンプ式冷凍サイクルであるが、これに代えて、蒸気圧縮式冷凍サイクルが用いられることもある。この場合、エンジン冷却水から熱を奪うヒータコアが、暖房時および除湿暖房時に吸気に熱を与える発熱源となる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
この発明による車両空調装置は、比較的廃熱の少ないハイブリッド自動車や電気自動車に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0040】
(1):ヒートポンプ式冷凍サイクル
(2):空調ケース
(3):圧縮機
(4):室外側熱交換器
(5):減圧器
(6):蓄冷機能付きエバポレータ
(7):室内側熱交換器
(8):第2の減圧器
(14)(15):空気吸入口
(16):空気吹き出し口
(17):空気通路
(21):外気導入路
(22):外気排出路
(23):バイパス路
(24):第1の開閉部材(第3の開閉部材)
(25):第2の開閉部材
(26)(27):分岐通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、車室外に配置されかつ冷房時に圧縮機で圧縮された冷媒から熱を放熱する室外側熱交換器、冷房時に室外側熱交換器を通過した冷媒を減圧する減圧器、および冷房時に減圧器で減圧された冷媒を蒸発させるエバポレータを有する冷凍サイクルと、空気吸入口、車室内に空気を吹き出す空気吹き出し口、および空気吸入口と空気吹き出し口とを通じさせる空気通路を有する空調ケースとを備えており、エバポレータが空調ケースの空気通路内に配置されている車両用空調装置であって、
冷凍サイクルのエバポレータが、複数の冷媒流通管および内部に蓄冷材が封入された蓄冷材容器を備え、かつ蓄冷材容器内の蓄冷材が冷媒流通管内を流れる冷媒の有する冷熱により冷却されるようになされている蓄冷機能付きエバポレータであり、
空調ケースに、蓄冷機能付きエバポレータに外気を導く外気導入路および導入した外気を排出する外気排出路と、空気を、蓄冷機能付きエバポレータを迂回させて空気吸入口側から空気吹き出し口側に送るバイパス路と、空気通路における蓄冷機能付きエバポレータの上流側部分および下流側部分を開閉する第1の開閉部材と、外気導入路および外気排出路を開閉する第2の開閉部材と、バイパス路を開閉する第3の開閉部材とが設けられている車両用空調装置。
【請求項2】
冷凍サイクルが、暖房時および除湿暖房時に、空気吹き出し口から吹き出される空気に熱を与える発熱源を備えており、空調ケースの空気通路におけるバイパス路の下流側開口よりも空気吹き出し口側の部分に2つの分岐通路が設けられるとともに、いずれか一方の分岐通路に冷凍サイクルの発熱源が配置され、空調ケースに、2つの分岐通路のうちのいずれか一方、または両方に選択的に空気を流す切り替え部材が設けられている請求項1記載の車両用空調装置。
【請求項3】
冷凍サイクルがヒートポンプ式冷凍サイクルであり、前記圧縮機、前記室外側熱交換器、前記減圧器および前記エバポレータの他に、空調ケースの一方の分岐通路に配置されかつ暖房時および除湿暖房時に圧縮機で圧縮された冷媒から熱を放熱する室内側熱交換器、および室内側熱交換器を通過した冷媒を減圧する第2の減圧器を備えており、室外側熱交換器が、暖房時および除湿暖房時に第2減圧器で減圧された冷媒を蒸発させるようになされ、室内側熱交換器が、暖房時および除湿暖房時に吸気に熱を与える発熱源となっている請求項2記載の車両用空調装置。
【請求項4】
ヒートポンプ式冷凍サイクルの室外側熱交換器が、冷房時に室外側熱交換器を通過した冷媒から熱を放熱して凝縮させる請求項3記載の車両用空調装置。
【請求項5】
冷凍サイクルが蒸気圧縮式冷凍サイクルであり、エンジン冷却水から熱を奪うヒータコアが、暖房時および除湿暖房時に吸気に熱を与える発熱源となっている請求項2記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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