車両用空調装置
【課題】エコモードが設定されるときに、寒すぎるといった不満を持ちにくくする、あるいは、寒すぎると感じることに不満足をあらわすことが少なくなる車両用空調装置を提供する。
【解決手段】自動制御中表示を行うオートモード表示部708aを有し、エコモードが選択されてエコモードで運転されたときに、空調風の温度を自動制御するオートモードで運転していることを示すオートモード表示部708aにおける自動制御中表示を消す(S1304)。エコモード中は、オートモード表示を行わないため、自動的に車室内温度を快適に空調することをあらわすオートモードを乗員に対して表示しないから、自動制御中であるのに車室内が寒すぎるといった不満を乗員が持ちにくくなる。また、エコモード中に、オートモードでの運転が選択されたときに、エコモードでの運転をキャンセルする(S1303)。
【解決手段】自動制御中表示を行うオートモード表示部708aを有し、エコモードが選択されてエコモードで運転されたときに、空調風の温度を自動制御するオートモードで運転していることを示すオートモード表示部708aにおける自動制御中表示を消す(S1304)。エコモード中は、オートモード表示を行わないため、自動的に車室内温度を快適に空調することをあらわすオートモードを乗員に対して表示しないから、自動制御中であるのに車室内が寒すぎるといった不満を乗員が持ちにくくなる。また、エコモード中に、オートモードでの運転が選択されたときに、エコモードでの運転をキャンセルする(S1303)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内を空調する車両用空調装置に関する。特には、省エネルギー運転のためのエコモード運転を示すエコモード表示と、自動的に温度調節するオートモード運転を示すオートモード表示を備えた車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用空調装置では、吹出モード切替ドアおよびエアミックスドア等の空気調和用制御機器の駆動にあたっては、一般的に、乗員の手動操作によって設定された吹出口モードで、設定された吹出温度および風量が所定の吹出口から吹き出す乗員の手動操作による所謂マニュアルモードと、日射センサ、外気温センサおよび内気温センサ等の各センサと、各センサの検出値に基づいて制御出力値を演算する制御装置と、サーボモータ等の電動アクチュエータとを備えて、乗員が設定した設定温度となるように吹出温度、風量、吹出モード等を自動調節するオートモードが周知である。
【0003】
また、特許文献1に記載のハイブリッド車用空調装置が知られている。この装置は、エンジン冷却水の熱を用いて車室内を暖房する暖房用熱交換機であるヒータコアを有し、車室内の吹出口から吹き出される空調風によって車室内の空気を調和する空気調和機能を備えた車両用空調装置を構成し、省燃費性が損なわれてしまうのを抑えながら、乗員の要求に応じた空調状態が得られるようにするものである。
【0004】
また、エンジン冷却水の温度を検出するエンジン冷却水温度センサと、車両用空調装置の通常の空気調和機能よりも省燃費効果を優先するエコモード(省動力モード)を指示するエコモードスイッチとを有している。
【0005】
更に、上記装置は、走行停止中に、エコモードスイッチがエコモードを指示してない場合は、エンジン冷却水温度センサにより検出されたエンジン冷却水の温度が通常のエンジン停止閾値を超えた場合に、エンジンを停止させている。
【0006】
また、エンジン冷却水の温度センサにより検出された温度が、通常のエンジン停止閾値より低い所定の値(通常のエンジン始動閾値)を下回った場合に、エンジンを始動させて、エンジン冷却水の温度を上げるようにしている。
【0007】
そして、エコモードスイッチによりエコモードが指示されている場合は、温度センサにより検出されたエンジン冷却水の温度が、通常のエンジン停止閾値より低い停止閾値を超えた場合に、エンジンを停止させている。
【0008】
すなわち、エコモードの時は、通常のエンジン停止閾値より低いエンジン停止閾値を設定しているので、この低いエンジン停止閾値を超えた場合に、エンジンを停止させている。さらに、エンジン冷却水の温度が通常の始動閾値より低い始動閾値が設定されているので、この通常のエンジン始動閾値より低い始動閾値を下回った場合に、エンジンを始動させている。
【0009】
このようにして、特許文献1では、エコモード時に、通常よりも要求水温を下げて、エンジン冷却水の温度を低下気味に制御して、エコモード効果のある暖房を行うものである。このような、特許文献1によると、エコモード時には、本来必要な熱量をエンジン冷却水により作り出せないことがあり、室温が、乗員の希望している温度に達しない可能性がある。また、上記エコモード時においても、吹出温度、風量等がオートモードで制御されていれば、オートモードの表示がなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第4382761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
これにより、空調運転が、オートモードになっているにもかかわらず、車室内の乗員が寒いという感覚を持つという問題があった。本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目して成されたものであり、その目的は、エコモードが設定されるときに、乗員が寒すぎるといった不満を持ちにくくする、あるいは、寒すぎると感じることに不満足をあらわすことが少なくなる車両用空調装置を提供することにある。
【0012】
従来技術として列挙された特許文献の記載内容は、この明細書に記載された技術的要素の説明として、参照によって導入ないし援用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上記目的を達成するために、下記の技術的手段を採用する。すなわち、請求項1に記載の発明では、車室内に空調風を供給する空調運転において、省動力運転を行うエコモードを選択可能な車両用空調装置(100)であって、空調風の温度を自動制御するオートモードで運転していることを示すオートモード表示部(708a)と、エコモードが選択されてエコモードで運転されたときに、オートモード表示部(708a)における表示を消す手段(S1304)と、を有することを特徴としている。
【0014】
この発明によれば、エコモード中は、オートモード表示を禁止するため、自動的に車室内温度を快適に空調することをあらわすオートモードを乗員に対して表示しないから、自動制御中であるのに車室内が寒すぎるといった不満を乗員が持ちにくくなる車両用空調装置を提供することができる。
【0015】
請求項2に記載の発明では、エコモードでの運転中に、乗員によりオートモードでの運転が選択されたときに、エコモードでの運転をキャンセルする手段(S1303)を有することを特徴としている。
【0016】
この発明によれば、エコモードによる運転とオートモードによる運転が同時に選択できないように表示することで、寒すぎるといった不満を乗員が持ちにくくなる車両用空調装置を提供することができる。
【0017】
請求項3に記載の発明では、更に、エコモードによる運転中にエコモードを表示するエコモード表示部(710a)を有することを特徴としている。
【0018】
この発明によれば、エコモード表示部とオートモード表示部により、いずれのモードによる運転中であるかの表示ができ、エコモードが選択されてエコモードで車両用空調装置が運転されたときに、車両用空調装置が空調温度を自動制御するオートモードで運転していることを示すオートモード表示部(708a)における自動制御中表示を消すから、エコモード表示部のみの表示となり、車室内が寒すぎるといった不満を乗員が持ちにくくなる車両用空調装置を提供することができる。
【0019】
請求項4に記載の発明では、オートモードでの運転中において、エコモードが選択されているときは、エコモードが選択されていないときに比し、空調風を送風するブロワ(16)の送風量を示すブロワレベルを低下させる手段(S62、S65)を備えることを特徴としている。
【0020】
この発明によれば、エコモードが選択されているときは、エコモードが選択されていないときに比し、ブロワレベルが低下するから、省電力化を図ることができる。
【0021】
請求項5に記載の発明では、エコモードが選択されているときは、エコモードが選択されていないときに比し、車両用空調装置(100)の冷媒を循環させる圧縮機(41)の最大回転数を低下させることを特徴としている。
【0022】
この発明によれば、エコモードが選択されているときは、圧縮機の最大回転数を低下させるから、省動力化を図ることができる。
【0023】
なお、特許請求の範囲および上記各手段に記載の括弧内の符号ないし説明は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を分かり易く示す一例であり、発明の内容を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態を示す車両用空調装置の概略構成図である。
【図2】図1中の電気ヒータの電気接続図である。
【図3】上記実施形態に用いるエアコンECUへの接続を示すブロック図である。
【図4】上記実施形態におけるエコモードスイッチおよび操作パネルの正面図である。
【図5】上記実施形態におけるエアコンECUの処理の一例を示したフローチャートである。
【図6】上記実施形態におけるブロワ電圧決定処理を示すフローチャートである。
【図7】上記実施形態における吸込口モード決定処理を示すフローチャートである。
【図8】上記実施形態における吹出口モード決定処理を示すフローチャートである。
【図9】上記実施形態における圧縮機回転数決定処理を示すフローチャートである。
【図10】上記実施形態におけるPTC作動本数決定処理を示すフローチャートである。
【図11】上記実施形態における要求水温決定処理を示すフローチャートである。
【図12】上記実施形態における電動ウォータポンプ作動決定処理を示すフローチャートである。
【図13】上記実施形態におけるエコモードスイッチおよびオートスイッチの表示動作の制御を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(一実施形態)
以下、本発明の一実施形態について図1ないし図13を用いて詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態を示す車両用空調装置の概略構成図である。図2は、図1中の電気ヒータの電気接続図、図3は、上記実施形態に用いるエアコンECUへの接続を示すブロック図である。
【0026】
図示しないハイブリッドECU(ハイブリッド電子ユニット)は、図1の電動発電機51およびエンジン50のうち、いずれの駆動力を駆動輪に伝達するかの駆動切替制御を行う機能、および車載用蓄電装置である図示しない電池の充放電を制御する機能を備えている。
【0027】
また、電池は、車室内空調および走行等によって消費される電力を充電するための図示しない充電装置を備えている。また、充電装置は、電力供給源としての電気スタンドや商業用電源(家庭用電源)に接続されるコンセントを備えており、このコンセントに電源供給源を接続することにより、電池の充電を行うことができる。
【0028】
図3のエンジンECU61および上記ハイブリッドECUは、具体的には、以下のような制御を行う。
(1)車両が停止しているときは、基本的にエンジン50を停止させる。
(2)走行中は、減速時を除き、エンジン50で発生した駆動力を駆動輪に伝達する。なお、減速時は、エンジン50を停止させて電動発電機51にて発電して電池に充電する。
(3)発進、加速、登坂および高速走行時等の走行負荷が大きいときには、電動発電機51を電動モータとして機能させて、エンジン50で発生した駆動力に加えて、電動発電機51に発生した駆動力を駆動輪に伝達する。
(4)電池の充電残量が充電開始目標値以下になったときには、エンジン50の動力を電動発電機51に伝達して電動発電機51を発電機として作動させて電池の充電を行う。
(5)車両が停止しているときに、電池の充電残量が充電開始目標値以下になったときには、エンジンECU61に対してエンジン50を始動する指令が発せられるとともに、エンジン50の動力が電動発電機51に伝達される。
【0029】
次に、図1の車両用空調装置100に関して説明する。車両用空調装置100は、走行用に水冷のエンジン50を搭載する自動車等の車両において、車室内を空調する空調ユニットをエアコンECU60(図3)によって制御するように構成されている。この車両用空調装置100は、いわゆるオートエアコンシステムとして構成されている。車両用空調装置100は、冷凍サイクル1の冷媒流れ、およびエンジン50の起動を制御して、車室内を空調する。
【0030】
空調ユニットは、車両の車室内前方に配置され、内部を送風空気が通過する空調ケース10を備えている。空調ケース10は、一方側に空気取入口が形成され、他方側に車室内に向かう空気が通過する複数の吹出口が形成される。
【0031】
空調ケース10は、空気取入口と吹出口との間に送風空気が通過する通風路10aを有する。空調ケース10の上流側(一方側)には、送風機ユニット14が設けられている。送風機ユニット14(空調用送風機)は、内外気切替ドア13およびブロワ16を含む。この内外気切替ドア13は、サーボモータ等のアクチュエータによって駆動され、空気取入口である内気吸込口11と外気吸込口12との開度を変更する吸込口切替手段を構成している。
【0032】
空調ユニットは、具体的には図示しないが、完全センター置きといわれるタイプのものであり、車室内前方の計器盤下方部であって、車両左右方向の中央位置に搭載されている。送風機ユニット14は、空調ユニットの車両前方側に配設されている。送風機ユニット14の内気吸込口11は、車室内空気を吸い込む。
【0033】
ブロワ16は、ブロワ駆動回路(図示せず)によって制御されるブロワモータ15により回転駆動されて、空調ケース10内において、車室内に向かう空気流を発生させる遠心式送風機である。ブロワ16は、後述する各吹出口から車室内に向けてそれぞれ吹き出される空調風の吹出風量を変更する機能を有する。
【0034】
空調ケース10には、送風機ユニット14から送風された空気を加熱または冷却して空調風とし、複数の吹出口に送る空調部としてエバポレータ7およびヒータコア34が設けられている。エバポレータ7は、空調ケース10を通過する空気を冷却する冷却用熱交換器として機能する。
【0035】
また、エバポレータ7の空気下流側には、通風路10aを通過する空気を、エンジン50のエンジン冷却水と熱交換して加熱する暖房用熱交換器としてのヒータコア34が設けられている。エンジン冷却水が循環する冷却水回路31は、電動ウォータポンプ32によって、エンジン50のウォータジャケットで暖められたエンジン冷却水を循環させる回路である。この回路には、ラジエータ(図示せず)、サーモスタット(図示せず)およびヒータコア34が設けられている。
【0036】
ヒータコア34は、内部にエンジン50を冷却して高温となったエンジン冷却水が流れ、このエンジン冷却水を暖房用熱源として冷風を再加熱する。ヒータコア34は、通風路10aを部分的に塞ぐように、空調ケース10内においてエバポレータ7よりも下流側に配設されている。
【0037】
ヒータコア34の空気上流側には、車室内の温度調節を行うためのエアミックスドア17が設けられている。エアミックスドア17は、サーボモータ等のアクチュエータにより駆動される。また、エアミックスドア17は、各吹出口から車室内に向けて、それぞれ吹き出される空調風の吹出温度を変更する。換言すると、エアミックスドア17は、エバポレータ7を通過する空気と、ヒータコア34を通過する空気との風量比率を調整するエアミックス手段として機能する。
【0038】
エバポレータ7は、冷凍サイクル1の一構成部品を成すものである。また、電池の直流をインバータ42で三相交流に変換し、この三相交流が入力される電動機43により駆動されて、冷媒を吸入して、圧縮してから吐出する圧縮機41を上記冷凍サイクル1に含んでいる。
【0039】
また冷凍サイクル1は、圧縮機41より吐出された冷媒を凝縮液化させるコンデンサ3と、このコンデンサ3より流入した液冷媒を気液分離するレシーバ5と、このレシーバ5より流入した液冷媒を断熱膨張させる膨張弁6と、この膨張弁6より流入した気液二相状態の冷媒を蒸発気化させるエバポレータ7とを含む。
【0040】
電動機43の回転動力が圧縮機41に伝達されて、エバポレータ7による空気冷却作用が行われ、電動機43の回転が停止(OFF)した時に、圧縮機41による冷媒の吐出が無くなり、エバポレータ7による空気冷却作用が停止される。また、電池は電動発電機51の電力で充電される。従って、電動機43で駆動される圧縮機41は、電動発電機51の電力を動力源としている電動圧縮機41、42、43の圧縮部を構成する。
【0041】
また、コンデンサ3は、ハイブリッド自動車が走行する際に生じる走行風を受け易い場所に配設され、内部を流れる冷媒と、室外ファン4により送風される外気および走行風とを熱交換する室外熱交換器を構成している。
【0042】
空調ケース10の最も下流側には、吹出口切替部を構成する、それぞれ、デフロスタ開口部18、フェイス開口部19およびフット開口部20が形成されている。そして、デフロスタ開口部18には、デフロスタダクト23が接続されて、このデフロスタダクト23の最下流端には、車両のフロント窓ガラス49の内面に向かって主に温風を吹き出すデフロスタ吹出口が開口している。
【0043】
フェイス開口部19には、フェイスダクト24が接続されて、このフェイスダクト24の最下流端には、乗員の頭胸部に向かって主に冷風を吹き出すフェイス吹出口が開口している。さらに、フット開口部20には、フットダクト25が接続されて、このフットダクト25の最下流端には、乗員の足元部に向かって主に温風を吹き出すフット吹出口が開口している。
【0044】
各吹出口の内側には、2組の吹出口切替ドア21、22が回動自在に取り付けられている。吹出口切替ドア21、22は、サーボモータ等のアクチュエータによりそれぞれ駆動されて、吹出口モードを周知のフェイスモード、バイレベルモード、フットモード、フットデフロスタモードまたはデフロスタモードのいずれに切り替えることが可能である。
【0045】
ヒータコア34の下流側には、エンジン50の廃熱以外の熱源を用いて車室内の空気を加熱する補助加熱装置となる電気ヒータ35が設けられている。電気ヒータ35は、ヒータコア51を通過した温風を加熱する。
【0046】
電気ヒータ35は、図2に示すように、PTCやニクロム線からなるヒータ線351、352、353からなり、ヒータ線351、352、353は、電源Baおよびグランドの間に並列に接続されている。
【0047】
ヒータ線351、352、353のそれぞれに対して、スイッチ素子SW1、SW2、SW3が設けられ、スイッチ素子SW1、SW2、SW3は、そのオン、オフにより電源Baからヒータ線351、352、353への通電、および通電停止を行う。スイッチ素子SW1、SW2、SW3のオン、オフは、図3のエアコンECU60により制御される。
【0048】
次に、車両用空調装置100の電気的構成に関して説明する。図3のエアコンECU60は、制御手段を構成し、図1のエンジン50の始動および停止を司るイグニッションスイッチが入れられた時に、車両に搭載された車載電源である電池(図示せず)から直流電源が供給され、演算処理や制御処理を開始するように構成されている。
【0049】
エアコンECU60には、エンジンECU61から出力される通信信号、車室内前面に設けられた操作パネル70上の各スイッチからのスイッチ信号、および各センサからのセンサ信号が入力される。エンジンECU61は、燃料噴射ECUと呼ばれることがある。
【0050】
ここで、操作パネル70等の操作系に関して説明する。図4は、上記実施形態におけるエコモードスイッチ710および操作パネル70の正面図である。エアコンECU60には、車両用空調装置100の運転操作、各種の設定操作を行なう操作パネル70が接続されている。図4の(a)に示されるように、操作パネル70は、自動車内のインストルメントパネルに設けられており、前席に着座した乗員が操作可能となっている。
【0051】
この操作パネル70には、各種の表示がなされるディスプレイ701と共に、車両用空調装置100の運転/停止操作を行う運転スイッチ(A/Cスイッチ)702、温度設定(設定温度のアップ/ダウン)を行う温度設定スイッチ703、内気循環モードを選択(内気循環モードと外気導入モードの切り換え)する内気循環スイッチ704、空調風の風量を設定(ブロワ風量のアップ/ダウン)するブロワスイッチ705および、空調風を吹き出す吹出口を選択するモード切換スイッチ706、外気温表示スイッチ707が設けられている。
【0052】
これにより、車両用空調装置100では、ディスプレイ701等の表示を見ながら、空調運転の運転/停止、内気循環モードと外気導入モードの切換、温度設定、風量設定と共に、吹出モードの設定が可能となっており、エアコンECU60は、操作パネル70における設定に基づいた空調運転が可能となっている。
【0053】
また、操作パネル70には、オート(AUTO)スイッチ708が設けられている。エアコンECU60は、オートスイッチ708がオン操作されることにより、設定温度、室内温度、外気温度、日射量等に基づいて、車室内が設定温度となるように吹出風の温度(目標吹出温度)、風量および吹出モード等の設定を行い、設定に基づいた自動空調制御を行う。
【0054】
すなわち、エアコンECU60では、設定温度、環境条件等に基づいて目標吹出温度を設定し、設定した目標吹出温度が得られるように圧縮機41の回転数(電動機43の回転数)、エアミックスダンパ17の開度等を設定すると共に、吹出口の選択および吹出風量(ブロワ風量)の設定を行う。
【0055】
そして、これらの設定に基づいて自動空調運転を行うことにより、車室内を設定温度とすると共に、車室内が設定温度に維持されるようにしている。また、エアコンECU60(図3)では、外気温表示スイッチ707が操作されると、外気温センサ72(図3)によって検出された外気温度Tamをディスプレイ701に表示する。
【0056】
エアコンECU60は、エンジンECU61およびハイブリッドECUに接続しており、例えば、冷却水温センサで検出したエンジン冷却水温度Twが予め設定された温度に達していないときには、エンジン50の駆動要求(エンジンON要求)を行う。これによりエンジン50が駆動されてエンジン冷却水温度Twが上昇することにより、ヒータコア34を充分に加熱できるようにしている。また、エンジン50の停止制御を行うことにより省燃費効果が得られるようにしている。
【0057】
車両用空調装置100では、省燃費効果が損ねられるのを抑えるエコモード(エコノミーモード、または省動力モードとも呼ばれる)が設定可能とされている。すなわち、車両用空調装置100では、省燃費効果を優先するエコモードでの運転と、車室内の快適性を優先するオートモードでの運転の選択が可能となっている。
【0058】
エアコンECU60には、選択手段として、エコモードを選択するか否かを切り換えるエコモードスイッチ710が接続されている。図4の(b)に示されるように、このエコモードスイッチ710は、乗員が操作可能となるインストルメントパネルの所定位置に設けられている。また、このエコモードスイッチ710は、押下操作(タッチ操作)によって、オン、オフされ、これにより、エコモードと非エコモードの切り換えが行われる。そして、エコモードが選択されるとエコモード表示部710aの発光ダイオードが発光する。
【0059】
エアコンECU60の内部には、図示は省略するが、演算処理や制御処理を行うCPU(中央演算装置)、ROMやRAM等のメモリ、およびI/Oポート(入力/出力回路)等の機能を含んで構成される周知のマイクロコンピュータが設けられている。
【0060】
各種センサからのセンサ信号がI/OポートまたはA/D変換回路によってA/D変換された後に、マイクロコンピュータに入力される。エアコンECU60には、運転席の周囲の空気温度(内気温度)Trを検出する内気温検出手段としての内気温センサ71、車室外温度(外気温度)Tamを検出する外気温検出手段としての外気温センサ72、および車室外の日射量Tsを検出する日射量検出手段としての日射センサ73が接続されている。
【0061】
また、エアコンECU60には、エバポレータ7を通過した直後の空気温度(エバポレータ後温度TE)を検出するエバ後温度検出手段としてのエバ後温度センサ、車室内の相対湿度を検出する湿度検出手段としての湿度センサ等が接続されているが、図3では図示を省略している。
【0062】
エンジンECU61には、車両のエンジン冷却水温度Twを検出する水温検出手段としての図示しない冷却水温センサが接続されている。エアコンECU60は、エンジンECU61を介してエンジン冷却水温Twを取得する。また、内気温センサ71、外気温センサ72、エバポレータ後温度センサ、および冷却水温センサは、たとえばサーミスタ等の感温素子が使用されている。
【0063】
更に、日射センサ73は、空調空間内に照射される日射量(日射強度)を検出する日射強度検出手段を有しており、たとえばフォトダイオード等が使用されている。湿度センサは、たとえば内気温センサ71とともに、運転席近傍のインストルメントパネルの前面に形成された凹所内に収容されており、前面窓ガラス49(図1)の防曇のためにデフロスタ吹き出しの要否の判定に利用される。
【0064】
次に、エアコンECU60による制御を、図5を用いて説明する。図5は、エアコンECU60の処理の一例を示したフローチャートである。まず、イグニッションスイッチがオンされて、エアコンECU60に直流電源が供給されると、予めメモリに記憶されている制御プログラムが実行される。イグニッションスイッチがオンされたときは、操作者の操作によって車両が駐車状態から走行可能な走行状態に起動したときである。
【0065】
ステップS1では、エアコンECU60内部のマイクロコンピュータに内蔵されたデータ処理用メモリの記憶内容等を初期化(イニシャライズ)し、ステップS2に移る。
【0066】
ステップS2では、操作パネル70上の各種操作スイッチからのスイッチ信号を読込み、ステップS3に移る。ステップS3では、各種センサからのセンサ信号を読込み、ステップS4に移る。なお、ステップS2、S3では、各種データがデータ処理用メモリに読み込みこまれる。
【0067】
センサ信号としては、例えば、内気温センサ71が検知する内気温度(車室内温度)Tr、外気温センサ72が検知する外気温度Tam、日射センサ73が検知する日射量Ts、エバポレータ後温度センサが検知するエバポレータ後温度Te、および冷却水温センサが検知するエンジン冷却水温Twがある。
【0068】
ステップS4では、記憶している下記の数式1に入力データを代入して目標吹出温度TAOを演算し、ステップS5に移る。
【0069】
(数式1)TAO=Kset×Tset−Kr×Tr−Kam×Tam−Ks×Ts+C
ここで、Tsetは、温度設定スイッチにて設定された設定温度、Trは内気温度、Tamは外気温度、Tsは日射量である。また、Kset、Kr、KamおよびKsは各ゲインであり、Cは全体にかかる補正用の定数である。そして、このTAOおよび上記各種センサからの信号により、エアミックスドア17のアクチュエータの制御値および電動ウォータポンプ32の回転数の制御値等を算出する。
【0070】
ステップS5では、ブロワ電圧を決定する処理を実施する。ブロワ電圧は、ブロワモータ15に印可される電圧であり、ブロワ電圧に応じて吹出風量が変更される。ブロワ電圧決定処理の詳細については後述する。
【0071】
次に、ステップS6では、吸込口モード決定処理を実行し、目標吹出温度TAOに基づき、空調ケース10内に空気を取り込む吸込口を決定し、ステップS7に移る。吸込口モード決定処理の詳細については、後述する。
【0072】
ステップS7では、後述する吹出口モード決定処理を実施し、目標吹出温度TAOに基づき、車室内に空調風を吹き出す吹出口を決定し、ステップS8に移る。吹出口モードは、たとえばROMに記憶されたマップから目標吹出温度TAOに対応する吹出口モードを決定する。
【0073】
ステップS8では、後述する圧縮機回転数決定処理を実施し、ステップS9に移る。ステップS9では、電気ヒータを構成するPTCヒータ(単にPTCともいう)の作動本数を決定する処理を行う。
【0074】
ステップS10では、要求水温決定処理を実施し、ステップS11に移る。要求水温決定処理は、エンジン冷却水を暖房および防曇等の熱源にするため、目標吹出温度TAO等に基づき決定する。要求水温決定処理の詳細については後述する。
【0075】
ステップS11では、電動ウォータポンプ作動決定処理を実施し、ステップS12に移る。電動ウォータポンプ作動決定処理は、エンジン冷却水温Tw等に基づいて、電動ウォータポンプ32(図1)のオンオフを決定する処理である。電動ウォータポンプ作動決定処理の詳細については後述する。
【0076】
ステップS12では、上記各ステップS5〜S11で算出または決定された各制御状態が得られるように、各種アクチュエータ等に対して制御信号を出力し、ステップS13に移る。また、ステップS12では、エコモードおよびオートモードの表示制御も行う。そしてステップS13において、所定時間Tの経過を待って、ステップS2に戻り、継続して各ステップが実行される。
【0077】
次に、各ステップの詳細に関して説明する。まずブロワ電圧決定処理(ステップS5)に関して説明する。ステップS5は、具体的には、図6に従って実行される。図6は、図5のステップS5におけるブロワ電圧決定処理の詳細を示すフローチャートである。ブロワ電圧は、電池の電力により駆動されるブロワモータ15に印加される電圧である。
【0078】
図6に示すように、本制御がスタートすると、ステップS61にて風量設定がオート(自動)であるか否かを判断し、オートの場合は、ステップS62に移し、オートでない場合には、ステップS69に移る。
【0079】
オートの場合、ステップS62にて、ベースとなる仮のブロワレベル(f(TAO))をマップから演算する。エコモードの場合、エコモード以外の時(非エコモード時)に比べて低いブロワレベルを出力するようにしている。これにより、ブロワ消費電力が抑制されると共に、冷房時はエバポレータの温度上昇が遅くなり、また、暖房時はエンジン水温の低下が遅くなるので、車両用空調装置100の省動力運転が可能になる。
【0080】
次に、ステップS63において、ヒータコア34の水温および電気ヒータ35のPTC作動本数に応じてウオームアップ風量(f(Tw))を算出する。次に、ステップS64にて、吹出口がフットモードでの吹出口からの吹出し(FOOT)、バイレベルモードでの吹出口からの吹出し(B/L)、およびフットデフモードでの吹出口からの吹出し(F/D)のいずれかであるか否かを判定する。
【0081】
上記吹出口のいずれかであり、YESと判定されたときは、ステップS65に進む。このステップS65では、上記(f(TAO))の最小値、および(f(Tw))の値のいずれか大きい方を選択する。ステップS66では、ステップS65で選択されたブロワレベルをブロワ電圧にマップを用いて変換する。
【0082】
ステップS64でNOと判定されたときは、つまりフェイス(FACE)吹出口のみから吹出されているような場合は、ステップS67に進み、ブロワレベルとして上記(f(TAO))を選択する。次のステップS68では、選択されたブロワレベル(f(TAO))をブロワ電圧にマップにて変換する。
【0083】
なお、ステップS61において、風量設定がオート(自動)でなくマニュアルの場合には、ステップS69において、それぞれマップにて指定された電圧(4ボルトから12ボルト)をブロワモータ15に印加する。
【0084】
次に、吸込口モード決定処理(ステップS6)に関して説明する。ステップS6は、具体的には、図7にしたがって実行される。図7は、図5のステップS6における吸込口モード決定処理の詳細を示すフローチャートである。
【0085】
図7に示すように、ステップS71にて吸込口制御がオートか否かを判定する。オートの場合、ステップS73にて、TAOに応じた内外気切替制御を行う。オートで無くマニュアルの場合、ステップS72において、マニュアル設定に応じた内外気切替制御を行う。つまり、内気モード(REC)のときは、外気導入率を0%とする。また、外気モード(FRS)のときは、外気導入率を100%に設定する。
【0086】
次に、吹出口モード決定処理(ステップS7)に関して説明する。ステップS7は、具体的には、図8にしたがって実行する。図8は、図5のステップS7の吹出口モード決定処理を示すフローチャートである。この図8のように、目標吹出温度TAOに応じて吹出口モードをフェイス(FACE)、バイレベル(B/L)、フット(FOOT)のいずれかに決定する。
【0087】
次に、圧縮機回転数決定処理(ステップS8)に関して説明する。ステップS8は、具体的には、図9にしたがって実行する。図9は、図5のステップS8における圧縮機回転数決定処理の詳細を示すフローチャートである。図9に示すように、本制御がスタートすると、ステップS91にて、各種センサの検出信号を用いて算出した目標エバポレータ後温度TEOから、実際のエバポレータ後温度TEを差し引いた値である温度偏差Enを下記数式2に基づいて演算する。
【0088】
次に、数式3を用いて偏差変化率EDOTを求め、更に、図9に一例を示したマップから圧縮機の回転数変化量(Δf)を求める。なお、E(n−1)は、偏差Enの先回の値であり、nは自然数である。
【0089】
(数式2)En=TEO−TE
(数式3)EDOT=En−En−1
ここで、Enは1秒に1回更新されるため、En−1は、Enに対して1秒前の値となる。
【0090】
図9のステップS91には、上記偏差Enと、偏差変化率EDOTと、回転数変更分(Δf)との関係を示すマップの一例(冷房運転時の例)が示されている。上記のように、EnとEDOTとを用いて、図3のエアコンECU60内の図示しないROMに記憶されたマップを用いて1秒前の圧縮機回転数f(n−1)に対して、増減する回転数変更分(Δf)を求める。
【0091】
なお、この圧力偏差Enおよび偏差変化率EDOTにおける回転数変更分(Δf)は、ROMに記憶された所定のメンバーシップ関数、およびルールに基づいて、ファジー制御にて求めることも出来る。このようにして、圧縮機の1秒毎の回転数変化量(Δf)を演算する。
【0092】
次に、ステップS92にて、図4のエコモードスイッチ710がオンされてエコモードになっているか否かを判定する。エコモード以外の場合は、ステップS93において、最大回転数を10000rpmとする。次にステップS95では、(前回の圧縮機回転数+Δf)rpmと、このときの最大回転数10000rpmの内、小さい方の値を求め、この小さい方の値を、今回の圧縮機回転数とする。
【0093】
次に、ステップS92において、エコモードの場合は、ステップS96において、最大回転数を7000rpmに設定する。
【0094】
そして、ステップS95では、前回の圧縮機回転数に回転数変化量(Δf)を加えた値と、このときの最大回転数である7000rpmとの内、小さい方の値を求め、この小さい方の値を、今回の圧縮機回転数とする。
【0095】
なお、上記の場合、エコモードにおいては、最大回転数は、非エコモード時の10000rpmよりも低い7000rpmに設定されるから、エコモードにおいて最大回転数を低減することで、電動圧縮機41、42、43での消費電力を抑制できる。
【0096】
次に、図5のステップS9のPTC作動本数決定ステップについて説明する。図10は、図5のステップS9のPTC作動本数決定処理を示すフローチャートである。この図10に示すように、ステップS101において、ブロワスイッチ705(図4)がONになっているか否かを判定する。つまり、ブロワスイッチ705が投入され「OFF」以外の「風量AUTO」、「LO」、「ME」、「HI」に設定されているとき、ブロワスイッチがONになっているとして、YESと判定する。ステップS102では、電気ヒータ35の作動本数をエンジン冷却水温(Tw)に基づいて算出する。
【0097】
具体的には、図10の特性マップに示すように、エンジン冷却水温(Tw)<71のとき、電気ヒータ35の作動本数を3本とし、71<冷却水温(Tw)<74のとき、電気ヒータ35の作動本数を2本とし、74<エンジン冷却水温(Tw)<77のとき、電気ヒータ35の作動本数を1本とし、77<エンジン冷却水温(Tw)のとき、電気ヒータ35の作動本数を0本とする。
【0098】
なお、図10のS101において、ブロワスイッチ705が、OFFに設定されているとき、NOと判定して、ステップS103で電気ヒータ35をOFF、すなわち作動本数を0本とする。このようにして、電気ヒータ35の作動本数を決定すると、この決定本数に対応して、図2のスイッチ素子SW1、SW2、SW3のオン、オフを実行する。これにより、電気ヒータ35の作動本数に対応して、ヒータコア35の通過温風に付与する熱量が変わることになる。
【0099】
次に、要求水温決定処理(ステップS10)に関して説明する。図5のステップS10は、具体的には、図11のフローチャートにしたがって実行される。図11は、図5のステップS10における要求水温決定処理の詳細を示すフローチャートである。
【0100】
図11に示すように、本制御がスタートすると、ステップS111にて、エンジン冷却水温度に基づくエンジンON要求の要否判定に用いる判定しきい値であるエンジンOFF水温と、エンジンON水温を算出する。エンジンOFF水温は、エンジン50を停止させるときの判定基準となるエンジン冷却水温度であり、エンジンON水温は、エンジン50を作動させるときの判定基準となるエンジン冷却水温度である。
【0101】
エンジンOFF水温は、数式5に示すように、数式4で算出された基準エンジン冷却水温度TwOと、70℃との小さい方に決定される。一方、エンジンON水温は、頻繁にエンジン50がON/OFFするのを防止するため、エンジンOFF水温よりも所定温度(本例では5℃)低く設定される。
【0102】
(数式4)TwO={(TAO−ΔTpct)−(TE×0.2)}/0.8
(数式5)エンジンOFF水温=MIN(TwO,70)
なお、基準エンジン冷却水温度TwOは、エアミックス前の温風温度が目標吹出温度TAOになるものと仮定したときに必要とされるエンジン冷却水温度である。TEは、エバポレータ後温度である。また、ΔTpctはPTCによる吹出温度の上昇分の推定値であり、電気ヒータ35の作動本数に応じてマップにて演算される。
【0103】
次に、ステップS112では、エンジン冷却水温度に基づくエンジンON要求の要否決定を行う。このステップS112では、仮のエンジンON要求要否を演算する。具体的には、実際のエンジン冷却水温度Twを、ステップS111で求めたエンジンOFF水温およびエンジンON水温と比較する。そして、エンジン冷却水温度がエンジンON水温より低ければ、f(Tw)=ONとしてエンジン50の稼動を仮決定し、エンジン冷却水温度がエンジンOFF水温より高ければ、f(Tw)=OFFとしてエンジン50の停止を仮決定する。
【0104】
次に、ステップS113にて、乗員のシートを温めるシートヒータ101(図3)がONしているか否かを判定する。ステップS113にて、シートヒータ101がOFFの場合、ステップS114にて、日射量に応じてf(日射量)を演算する。ステップS113にてシートヒータ101がONしている場合は、ステップS115にて、ステップS114よりも低いf(日射量)の値を演算する。
【0105】
次に、ステップS116にて、ステップS114あるいはステップS115にて演算したf(日射量)の値に応じて、f(外気温)のONまたはOFFを選択する。ステップS116において制御当初は、f(外気温)OFFを選択する。
【0106】
次に、ステップS117にて、エアコンECU60からの最終のエンジンON要求の有無を演算する。エコモードであり、かつ目標吹出温度TAO=20℃以上で、かつf(Tw)=ONの時、通常はエンジンON(エンジン稼動)を許可するが、設定温度が28℃以上の場合を除き、f(外気温)=OFFの場合には、エンジンONを許可しない。
【0107】
また、ステップS113で、シートヒータ101がONの時は、乗員の温感が高くなるので、f(日射量)の値を小さくして、シートヒータON時にエンジンON要求を許可しにくくすることで、最低限の温感確保を達成しつつ、燃費を向上させることができる。更に、車両周辺の騒音である車外音が低減し、また、電池に充電した電力の有効利用が達成できる。また、日射量が多い程、乗員の温感は高くなるので、日射量が多い程、エンジンON要求を許可しにくくすることで、最低限の温感確保と燃費向上・車外音低減・充電電力の有効利用ができる。
【0108】
次に、電動ウォータポンプ作動決定処理(ステップS11)に関して説明する。ステップS11は、具体的には、図12に従って実行する。図12は、図5のステップS11における電動ウォータポンプ作動決定処理の詳細を示すフローチャートである。
【0109】
図12に示すように、本制御がスタートすると、ステップS121にて、冷却水温センサによって検出されるエンジン冷却水温度Twがエバポレータ後温度TEより高いか否かを判定する。エンジン冷却水温度Twが、エバポレータ後温度TE以下であると判定されると、ステップS122で電動ウォータポンプ32をOFFする要求を決定し、本制御を終了する。
【0110】
ステップS121にて、冷却水温度センサによって検出される冷却水温度Twが比較的低く、エンジン冷却水温Twがエバポレータ後温度TE以下であると判定されると、エンジン冷却水をヒータコア34に流した時、かえって吹出温度を低くしてしまうため、ステップS122で電動ウォータポンプ32をOFFするのである。
【0111】
ステップS121でエンジン冷却水温度Twが、エバポレータ後温度TEよりも高いと判定すると、ステップS123で図1のブロワ16をON(運転)した状態であるか否かを判定する。ブロワ16をONしていない状態であれば、ステップS122に進み、電動ウォータポンプ32をOFFする要求を決定し、本制御を終了する。ブロワ16をONした状態であれば、ステップS124に進み、電動ウォータポンプ32をONする要求を決定し、本制御を終了する。
【0112】
つまり、エンジン冷却水温Twが比較的高いときにブロワ16がOFF(停止)の時は、省動力のため、電動ウォータポンプ32をOFFする。一方、ブロワONの時は、電動ウォータポンプ32のON要求を行う。これにより、エンジンOFFの時でも、エンジン冷却水が持っている熱量を空調に利用することができる。従って、吹出温度が上がり、吹出温度を目標吹出温度TAOに近づけることができるので、エンジンOFFの状態でも室温が下がるのを緩和できる。
【0113】
次に、図5のステップS12では、以上のようにして求めた制御信号を出力して、ブロワ16の制御、インバータ42の制御による圧縮機41の回転数制御、室外ファン4の回転数制御、内外気切替ドア13の制御、吹出口切替ドア21、22の制御、電動ウォータポンプ32の制御、電気ヒータ35となるヒータ線(PTC)351〜353の通電本数制御を行う。また、このステップS12では、図13に示したフローチャートの制御を実行し、図4に図示したエコモードスイッチ710およびオートスイッチ708の表示動作の制御を行う。
【0114】
前述したように、操作パネル70には、オートスイッチ708が設けられている。そして、オートモードで制御されているときに、このオートスイッチ708内のオートモード表示部708aを構成する発光ダイオード(LED)が発光し、オートモードによる運転中であることを表示する(オートモード表示部708aをなすオートインジケータが点灯する)。
【0115】
また、エコモードを選択するか否かを切り換えるエコモードスイッチ710が車室内に設けられている。乗員によりエコモードスイッチ710が操作されて、エコモードによる運転がなされると、エコモードスイッチ710内の発光ダイオードが点灯し、エコモードによる運転中であることを表示する(エコモード表示部710aをなすエコモードインジケータを点灯する)。
【0116】
図13は、図5のステップS12における表示制御であるエコモードスイッチ710およびオートスイッチ708の表示動作の制御を説明するフローチャートである。この図13において、ステップS1301において、エコモード中か否かを判定する。エコモード中の場合、ステップS1302にて乗員のオートスイッチ708の操作入力があったか否かを判定する。オートスイッチ708の操作入力があった場合、ステップS1303にてエコモードをキャンセルし、ステップS1304でエコモードインジケータ(エコモード表示部710a)を消灯させる。
【0117】
ステップS1301でエコモード中ではない場合、ステップS1305に進み、オートモードか否かを判定する。オートモードである場合、ステップS1306で乗員によるエコモードスイッチ入力があったか否かを判定する。エコモードスイッチ入力があった場合、ステップS1307でエコモードによる運転を開始し、ステップS1308においてオートインジケータを消灯させる。
【0118】
ステップS1305において、オートモードではないと判定されたときは、ステップS1309に進み、マニュアルモードでの車両用空調装置100の運転を継続する。そして、ステップS1310において、エコモードインジケータを消灯し、かつオートインジケータを消灯する。
【0119】
次に、ステップS1306で乗員によるエコモードスイッチ入力がないと判定された場合は、ステップS1311でオートモードを継続し、ステップS1312において、オートインジケータを点灯させる。
【0120】
またステップS1302において、乗員のオートスイッチ708の操作入力がなかった場合、ステップS1313にてエコモードを継続し、ステップS1314でエコモードインジケータを点灯させる。
【0121】
このように、エコモードとオートモードが同時に選択できないようにすることで、エコモード中は空調が自動的に室温を快適に制御することを表すオートインジケータが点灯しないため、オートモードなのに寒すぎるといった不満を乗員が感じにくくなる。
【0122】
(その他の実施形態)
本発明は上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、次のように変形または拡張することができる。例えば、上述の一実施形態では、エコモードを選択するか否かを切り換えるエコモードスイッチ710が、乗員によって操作可能なインストルメントパネルの所定位置に設けられている例を示したが、このエコモードスイッチ710が、図4の(a)に示された操作パネル70内に存在してもよいのは勿論である。
【0123】
また、空調の自動制御中表示を行う表示部708aをオートスイッチ708内に内蔵された発光ダイオードで構成したが、操作パネル70内におけるディスプレイ701内に表示されたAUTOの文字やシンボルで構成してもよい。同様に、エコモードにより運転中であることを示す表示部710aをエコモードスイッチ710内に内蔵された発光ダイオードで構成したが、操作パネル70のディスプレイ701内に表示されたECOの文字やシンボルで構成してもよい。
【符号の説明】
【0124】
3 コンデンサ
7 エバポレータ
13 内外気切替ドア
16 ブロワ
32 電動ウォータポンプ
34 ヒータコア
41 圧縮機
42 インバータ
43 電動機
51 電動発電機
50 エンジン
60 エアコンECU
61 エンジンECU
70 操作パネル
100 車両用空調装置
702 運転スイッチ(A/Cスイッチ)
703 温度設定スイッチ
704 内気循環スイッチ
705 ブロワスイッチ
708 オートスイッチ
708a オートモード表示部
710 エコモードスイッチ
710a エコモード表示部
EDOT 偏差変化率
En 温度偏差
E(n−1) 偏差Enの先回の値
Δf 回転数変化量
S62、S65 ブロワレベルを低下させる手段
S1303 エコモードでの運転をキャンセルする手段
S1304 自動制御中表示を消す手段
TE エバポレータ後温度
TEO 目標エバポレータ後温度
Tw エンジン冷却水温度
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内を空調する車両用空調装置に関する。特には、省エネルギー運転のためのエコモード運転を示すエコモード表示と、自動的に温度調節するオートモード運転を示すオートモード表示を備えた車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用空調装置では、吹出モード切替ドアおよびエアミックスドア等の空気調和用制御機器の駆動にあたっては、一般的に、乗員の手動操作によって設定された吹出口モードで、設定された吹出温度および風量が所定の吹出口から吹き出す乗員の手動操作による所謂マニュアルモードと、日射センサ、外気温センサおよび内気温センサ等の各センサと、各センサの検出値に基づいて制御出力値を演算する制御装置と、サーボモータ等の電動アクチュエータとを備えて、乗員が設定した設定温度となるように吹出温度、風量、吹出モード等を自動調節するオートモードが周知である。
【0003】
また、特許文献1に記載のハイブリッド車用空調装置が知られている。この装置は、エンジン冷却水の熱を用いて車室内を暖房する暖房用熱交換機であるヒータコアを有し、車室内の吹出口から吹き出される空調風によって車室内の空気を調和する空気調和機能を備えた車両用空調装置を構成し、省燃費性が損なわれてしまうのを抑えながら、乗員の要求に応じた空調状態が得られるようにするものである。
【0004】
また、エンジン冷却水の温度を検出するエンジン冷却水温度センサと、車両用空調装置の通常の空気調和機能よりも省燃費効果を優先するエコモード(省動力モード)を指示するエコモードスイッチとを有している。
【0005】
更に、上記装置は、走行停止中に、エコモードスイッチがエコモードを指示してない場合は、エンジン冷却水温度センサにより検出されたエンジン冷却水の温度が通常のエンジン停止閾値を超えた場合に、エンジンを停止させている。
【0006】
また、エンジン冷却水の温度センサにより検出された温度が、通常のエンジン停止閾値より低い所定の値(通常のエンジン始動閾値)を下回った場合に、エンジンを始動させて、エンジン冷却水の温度を上げるようにしている。
【0007】
そして、エコモードスイッチによりエコモードが指示されている場合は、温度センサにより検出されたエンジン冷却水の温度が、通常のエンジン停止閾値より低い停止閾値を超えた場合に、エンジンを停止させている。
【0008】
すなわち、エコモードの時は、通常のエンジン停止閾値より低いエンジン停止閾値を設定しているので、この低いエンジン停止閾値を超えた場合に、エンジンを停止させている。さらに、エンジン冷却水の温度が通常の始動閾値より低い始動閾値が設定されているので、この通常のエンジン始動閾値より低い始動閾値を下回った場合に、エンジンを始動させている。
【0009】
このようにして、特許文献1では、エコモード時に、通常よりも要求水温を下げて、エンジン冷却水の温度を低下気味に制御して、エコモード効果のある暖房を行うものである。このような、特許文献1によると、エコモード時には、本来必要な熱量をエンジン冷却水により作り出せないことがあり、室温が、乗員の希望している温度に達しない可能性がある。また、上記エコモード時においても、吹出温度、風量等がオートモードで制御されていれば、オートモードの表示がなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第4382761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
これにより、空調運転が、オートモードになっているにもかかわらず、車室内の乗員が寒いという感覚を持つという問題があった。本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目して成されたものであり、その目的は、エコモードが設定されるときに、乗員が寒すぎるといった不満を持ちにくくする、あるいは、寒すぎると感じることに不満足をあらわすことが少なくなる車両用空調装置を提供することにある。
【0012】
従来技術として列挙された特許文献の記載内容は、この明細書に記載された技術的要素の説明として、参照によって導入ないし援用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上記目的を達成するために、下記の技術的手段を採用する。すなわち、請求項1に記載の発明では、車室内に空調風を供給する空調運転において、省動力運転を行うエコモードを選択可能な車両用空調装置(100)であって、空調風の温度を自動制御するオートモードで運転していることを示すオートモード表示部(708a)と、エコモードが選択されてエコモードで運転されたときに、オートモード表示部(708a)における表示を消す手段(S1304)と、を有することを特徴としている。
【0014】
この発明によれば、エコモード中は、オートモード表示を禁止するため、自動的に車室内温度を快適に空調することをあらわすオートモードを乗員に対して表示しないから、自動制御中であるのに車室内が寒すぎるといった不満を乗員が持ちにくくなる車両用空調装置を提供することができる。
【0015】
請求項2に記載の発明では、エコモードでの運転中に、乗員によりオートモードでの運転が選択されたときに、エコモードでの運転をキャンセルする手段(S1303)を有することを特徴としている。
【0016】
この発明によれば、エコモードによる運転とオートモードによる運転が同時に選択できないように表示することで、寒すぎるといった不満を乗員が持ちにくくなる車両用空調装置を提供することができる。
【0017】
請求項3に記載の発明では、更に、エコモードによる運転中にエコモードを表示するエコモード表示部(710a)を有することを特徴としている。
【0018】
この発明によれば、エコモード表示部とオートモード表示部により、いずれのモードによる運転中であるかの表示ができ、エコモードが選択されてエコモードで車両用空調装置が運転されたときに、車両用空調装置が空調温度を自動制御するオートモードで運転していることを示すオートモード表示部(708a)における自動制御中表示を消すから、エコモード表示部のみの表示となり、車室内が寒すぎるといった不満を乗員が持ちにくくなる車両用空調装置を提供することができる。
【0019】
請求項4に記載の発明では、オートモードでの運転中において、エコモードが選択されているときは、エコモードが選択されていないときに比し、空調風を送風するブロワ(16)の送風量を示すブロワレベルを低下させる手段(S62、S65)を備えることを特徴としている。
【0020】
この発明によれば、エコモードが選択されているときは、エコモードが選択されていないときに比し、ブロワレベルが低下するから、省電力化を図ることができる。
【0021】
請求項5に記載の発明では、エコモードが選択されているときは、エコモードが選択されていないときに比し、車両用空調装置(100)の冷媒を循環させる圧縮機(41)の最大回転数を低下させることを特徴としている。
【0022】
この発明によれば、エコモードが選択されているときは、圧縮機の最大回転数を低下させるから、省動力化を図ることができる。
【0023】
なお、特許請求の範囲および上記各手段に記載の括弧内の符号ないし説明は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を分かり易く示す一例であり、発明の内容を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態を示す車両用空調装置の概略構成図である。
【図2】図1中の電気ヒータの電気接続図である。
【図3】上記実施形態に用いるエアコンECUへの接続を示すブロック図である。
【図4】上記実施形態におけるエコモードスイッチおよび操作パネルの正面図である。
【図5】上記実施形態におけるエアコンECUの処理の一例を示したフローチャートである。
【図6】上記実施形態におけるブロワ電圧決定処理を示すフローチャートである。
【図7】上記実施形態における吸込口モード決定処理を示すフローチャートである。
【図8】上記実施形態における吹出口モード決定処理を示すフローチャートである。
【図9】上記実施形態における圧縮機回転数決定処理を示すフローチャートである。
【図10】上記実施形態におけるPTC作動本数決定処理を示すフローチャートである。
【図11】上記実施形態における要求水温決定処理を示すフローチャートである。
【図12】上記実施形態における電動ウォータポンプ作動決定処理を示すフローチャートである。
【図13】上記実施形態におけるエコモードスイッチおよびオートスイッチの表示動作の制御を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(一実施形態)
以下、本発明の一実施形態について図1ないし図13を用いて詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態を示す車両用空調装置の概略構成図である。図2は、図1中の電気ヒータの電気接続図、図3は、上記実施形態に用いるエアコンECUへの接続を示すブロック図である。
【0026】
図示しないハイブリッドECU(ハイブリッド電子ユニット)は、図1の電動発電機51およびエンジン50のうち、いずれの駆動力を駆動輪に伝達するかの駆動切替制御を行う機能、および車載用蓄電装置である図示しない電池の充放電を制御する機能を備えている。
【0027】
また、電池は、車室内空調および走行等によって消費される電力を充電するための図示しない充電装置を備えている。また、充電装置は、電力供給源としての電気スタンドや商業用電源(家庭用電源)に接続されるコンセントを備えており、このコンセントに電源供給源を接続することにより、電池の充電を行うことができる。
【0028】
図3のエンジンECU61および上記ハイブリッドECUは、具体的には、以下のような制御を行う。
(1)車両が停止しているときは、基本的にエンジン50を停止させる。
(2)走行中は、減速時を除き、エンジン50で発生した駆動力を駆動輪に伝達する。なお、減速時は、エンジン50を停止させて電動発電機51にて発電して電池に充電する。
(3)発進、加速、登坂および高速走行時等の走行負荷が大きいときには、電動発電機51を電動モータとして機能させて、エンジン50で発生した駆動力に加えて、電動発電機51に発生した駆動力を駆動輪に伝達する。
(4)電池の充電残量が充電開始目標値以下になったときには、エンジン50の動力を電動発電機51に伝達して電動発電機51を発電機として作動させて電池の充電を行う。
(5)車両が停止しているときに、電池の充電残量が充電開始目標値以下になったときには、エンジンECU61に対してエンジン50を始動する指令が発せられるとともに、エンジン50の動力が電動発電機51に伝達される。
【0029】
次に、図1の車両用空調装置100に関して説明する。車両用空調装置100は、走行用に水冷のエンジン50を搭載する自動車等の車両において、車室内を空調する空調ユニットをエアコンECU60(図3)によって制御するように構成されている。この車両用空調装置100は、いわゆるオートエアコンシステムとして構成されている。車両用空調装置100は、冷凍サイクル1の冷媒流れ、およびエンジン50の起動を制御して、車室内を空調する。
【0030】
空調ユニットは、車両の車室内前方に配置され、内部を送風空気が通過する空調ケース10を備えている。空調ケース10は、一方側に空気取入口が形成され、他方側に車室内に向かう空気が通過する複数の吹出口が形成される。
【0031】
空調ケース10は、空気取入口と吹出口との間に送風空気が通過する通風路10aを有する。空調ケース10の上流側(一方側)には、送風機ユニット14が設けられている。送風機ユニット14(空調用送風機)は、内外気切替ドア13およびブロワ16を含む。この内外気切替ドア13は、サーボモータ等のアクチュエータによって駆動され、空気取入口である内気吸込口11と外気吸込口12との開度を変更する吸込口切替手段を構成している。
【0032】
空調ユニットは、具体的には図示しないが、完全センター置きといわれるタイプのものであり、車室内前方の計器盤下方部であって、車両左右方向の中央位置に搭載されている。送風機ユニット14は、空調ユニットの車両前方側に配設されている。送風機ユニット14の内気吸込口11は、車室内空気を吸い込む。
【0033】
ブロワ16は、ブロワ駆動回路(図示せず)によって制御されるブロワモータ15により回転駆動されて、空調ケース10内において、車室内に向かう空気流を発生させる遠心式送風機である。ブロワ16は、後述する各吹出口から車室内に向けてそれぞれ吹き出される空調風の吹出風量を変更する機能を有する。
【0034】
空調ケース10には、送風機ユニット14から送風された空気を加熱または冷却して空調風とし、複数の吹出口に送る空調部としてエバポレータ7およびヒータコア34が設けられている。エバポレータ7は、空調ケース10を通過する空気を冷却する冷却用熱交換器として機能する。
【0035】
また、エバポレータ7の空気下流側には、通風路10aを通過する空気を、エンジン50のエンジン冷却水と熱交換して加熱する暖房用熱交換器としてのヒータコア34が設けられている。エンジン冷却水が循環する冷却水回路31は、電動ウォータポンプ32によって、エンジン50のウォータジャケットで暖められたエンジン冷却水を循環させる回路である。この回路には、ラジエータ(図示せず)、サーモスタット(図示せず)およびヒータコア34が設けられている。
【0036】
ヒータコア34は、内部にエンジン50を冷却して高温となったエンジン冷却水が流れ、このエンジン冷却水を暖房用熱源として冷風を再加熱する。ヒータコア34は、通風路10aを部分的に塞ぐように、空調ケース10内においてエバポレータ7よりも下流側に配設されている。
【0037】
ヒータコア34の空気上流側には、車室内の温度調節を行うためのエアミックスドア17が設けられている。エアミックスドア17は、サーボモータ等のアクチュエータにより駆動される。また、エアミックスドア17は、各吹出口から車室内に向けて、それぞれ吹き出される空調風の吹出温度を変更する。換言すると、エアミックスドア17は、エバポレータ7を通過する空気と、ヒータコア34を通過する空気との風量比率を調整するエアミックス手段として機能する。
【0038】
エバポレータ7は、冷凍サイクル1の一構成部品を成すものである。また、電池の直流をインバータ42で三相交流に変換し、この三相交流が入力される電動機43により駆動されて、冷媒を吸入して、圧縮してから吐出する圧縮機41を上記冷凍サイクル1に含んでいる。
【0039】
また冷凍サイクル1は、圧縮機41より吐出された冷媒を凝縮液化させるコンデンサ3と、このコンデンサ3より流入した液冷媒を気液分離するレシーバ5と、このレシーバ5より流入した液冷媒を断熱膨張させる膨張弁6と、この膨張弁6より流入した気液二相状態の冷媒を蒸発気化させるエバポレータ7とを含む。
【0040】
電動機43の回転動力が圧縮機41に伝達されて、エバポレータ7による空気冷却作用が行われ、電動機43の回転が停止(OFF)した時に、圧縮機41による冷媒の吐出が無くなり、エバポレータ7による空気冷却作用が停止される。また、電池は電動発電機51の電力で充電される。従って、電動機43で駆動される圧縮機41は、電動発電機51の電力を動力源としている電動圧縮機41、42、43の圧縮部を構成する。
【0041】
また、コンデンサ3は、ハイブリッド自動車が走行する際に生じる走行風を受け易い場所に配設され、内部を流れる冷媒と、室外ファン4により送風される外気および走行風とを熱交換する室外熱交換器を構成している。
【0042】
空調ケース10の最も下流側には、吹出口切替部を構成する、それぞれ、デフロスタ開口部18、フェイス開口部19およびフット開口部20が形成されている。そして、デフロスタ開口部18には、デフロスタダクト23が接続されて、このデフロスタダクト23の最下流端には、車両のフロント窓ガラス49の内面に向かって主に温風を吹き出すデフロスタ吹出口が開口している。
【0043】
フェイス開口部19には、フェイスダクト24が接続されて、このフェイスダクト24の最下流端には、乗員の頭胸部に向かって主に冷風を吹き出すフェイス吹出口が開口している。さらに、フット開口部20には、フットダクト25が接続されて、このフットダクト25の最下流端には、乗員の足元部に向かって主に温風を吹き出すフット吹出口が開口している。
【0044】
各吹出口の内側には、2組の吹出口切替ドア21、22が回動自在に取り付けられている。吹出口切替ドア21、22は、サーボモータ等のアクチュエータによりそれぞれ駆動されて、吹出口モードを周知のフェイスモード、バイレベルモード、フットモード、フットデフロスタモードまたはデフロスタモードのいずれに切り替えることが可能である。
【0045】
ヒータコア34の下流側には、エンジン50の廃熱以外の熱源を用いて車室内の空気を加熱する補助加熱装置となる電気ヒータ35が設けられている。電気ヒータ35は、ヒータコア51を通過した温風を加熱する。
【0046】
電気ヒータ35は、図2に示すように、PTCやニクロム線からなるヒータ線351、352、353からなり、ヒータ線351、352、353は、電源Baおよびグランドの間に並列に接続されている。
【0047】
ヒータ線351、352、353のそれぞれに対して、スイッチ素子SW1、SW2、SW3が設けられ、スイッチ素子SW1、SW2、SW3は、そのオン、オフにより電源Baからヒータ線351、352、353への通電、および通電停止を行う。スイッチ素子SW1、SW2、SW3のオン、オフは、図3のエアコンECU60により制御される。
【0048】
次に、車両用空調装置100の電気的構成に関して説明する。図3のエアコンECU60は、制御手段を構成し、図1のエンジン50の始動および停止を司るイグニッションスイッチが入れられた時に、車両に搭載された車載電源である電池(図示せず)から直流電源が供給され、演算処理や制御処理を開始するように構成されている。
【0049】
エアコンECU60には、エンジンECU61から出力される通信信号、車室内前面に設けられた操作パネル70上の各スイッチからのスイッチ信号、および各センサからのセンサ信号が入力される。エンジンECU61は、燃料噴射ECUと呼ばれることがある。
【0050】
ここで、操作パネル70等の操作系に関して説明する。図4は、上記実施形態におけるエコモードスイッチ710および操作パネル70の正面図である。エアコンECU60には、車両用空調装置100の運転操作、各種の設定操作を行なう操作パネル70が接続されている。図4の(a)に示されるように、操作パネル70は、自動車内のインストルメントパネルに設けられており、前席に着座した乗員が操作可能となっている。
【0051】
この操作パネル70には、各種の表示がなされるディスプレイ701と共に、車両用空調装置100の運転/停止操作を行う運転スイッチ(A/Cスイッチ)702、温度設定(設定温度のアップ/ダウン)を行う温度設定スイッチ703、内気循環モードを選択(内気循環モードと外気導入モードの切り換え)する内気循環スイッチ704、空調風の風量を設定(ブロワ風量のアップ/ダウン)するブロワスイッチ705および、空調風を吹き出す吹出口を選択するモード切換スイッチ706、外気温表示スイッチ707が設けられている。
【0052】
これにより、車両用空調装置100では、ディスプレイ701等の表示を見ながら、空調運転の運転/停止、内気循環モードと外気導入モードの切換、温度設定、風量設定と共に、吹出モードの設定が可能となっており、エアコンECU60は、操作パネル70における設定に基づいた空調運転が可能となっている。
【0053】
また、操作パネル70には、オート(AUTO)スイッチ708が設けられている。エアコンECU60は、オートスイッチ708がオン操作されることにより、設定温度、室内温度、外気温度、日射量等に基づいて、車室内が設定温度となるように吹出風の温度(目標吹出温度)、風量および吹出モード等の設定を行い、設定に基づいた自動空調制御を行う。
【0054】
すなわち、エアコンECU60では、設定温度、環境条件等に基づいて目標吹出温度を設定し、設定した目標吹出温度が得られるように圧縮機41の回転数(電動機43の回転数)、エアミックスダンパ17の開度等を設定すると共に、吹出口の選択および吹出風量(ブロワ風量)の設定を行う。
【0055】
そして、これらの設定に基づいて自動空調運転を行うことにより、車室内を設定温度とすると共に、車室内が設定温度に維持されるようにしている。また、エアコンECU60(図3)では、外気温表示スイッチ707が操作されると、外気温センサ72(図3)によって検出された外気温度Tamをディスプレイ701に表示する。
【0056】
エアコンECU60は、エンジンECU61およびハイブリッドECUに接続しており、例えば、冷却水温センサで検出したエンジン冷却水温度Twが予め設定された温度に達していないときには、エンジン50の駆動要求(エンジンON要求)を行う。これによりエンジン50が駆動されてエンジン冷却水温度Twが上昇することにより、ヒータコア34を充分に加熱できるようにしている。また、エンジン50の停止制御を行うことにより省燃費効果が得られるようにしている。
【0057】
車両用空調装置100では、省燃費効果が損ねられるのを抑えるエコモード(エコノミーモード、または省動力モードとも呼ばれる)が設定可能とされている。すなわち、車両用空調装置100では、省燃費効果を優先するエコモードでの運転と、車室内の快適性を優先するオートモードでの運転の選択が可能となっている。
【0058】
エアコンECU60には、選択手段として、エコモードを選択するか否かを切り換えるエコモードスイッチ710が接続されている。図4の(b)に示されるように、このエコモードスイッチ710は、乗員が操作可能となるインストルメントパネルの所定位置に設けられている。また、このエコモードスイッチ710は、押下操作(タッチ操作)によって、オン、オフされ、これにより、エコモードと非エコモードの切り換えが行われる。そして、エコモードが選択されるとエコモード表示部710aの発光ダイオードが発光する。
【0059】
エアコンECU60の内部には、図示は省略するが、演算処理や制御処理を行うCPU(中央演算装置)、ROMやRAM等のメモリ、およびI/Oポート(入力/出力回路)等の機能を含んで構成される周知のマイクロコンピュータが設けられている。
【0060】
各種センサからのセンサ信号がI/OポートまたはA/D変換回路によってA/D変換された後に、マイクロコンピュータに入力される。エアコンECU60には、運転席の周囲の空気温度(内気温度)Trを検出する内気温検出手段としての内気温センサ71、車室外温度(外気温度)Tamを検出する外気温検出手段としての外気温センサ72、および車室外の日射量Tsを検出する日射量検出手段としての日射センサ73が接続されている。
【0061】
また、エアコンECU60には、エバポレータ7を通過した直後の空気温度(エバポレータ後温度TE)を検出するエバ後温度検出手段としてのエバ後温度センサ、車室内の相対湿度を検出する湿度検出手段としての湿度センサ等が接続されているが、図3では図示を省略している。
【0062】
エンジンECU61には、車両のエンジン冷却水温度Twを検出する水温検出手段としての図示しない冷却水温センサが接続されている。エアコンECU60は、エンジンECU61を介してエンジン冷却水温Twを取得する。また、内気温センサ71、外気温センサ72、エバポレータ後温度センサ、および冷却水温センサは、たとえばサーミスタ等の感温素子が使用されている。
【0063】
更に、日射センサ73は、空調空間内に照射される日射量(日射強度)を検出する日射強度検出手段を有しており、たとえばフォトダイオード等が使用されている。湿度センサは、たとえば内気温センサ71とともに、運転席近傍のインストルメントパネルの前面に形成された凹所内に収容されており、前面窓ガラス49(図1)の防曇のためにデフロスタ吹き出しの要否の判定に利用される。
【0064】
次に、エアコンECU60による制御を、図5を用いて説明する。図5は、エアコンECU60の処理の一例を示したフローチャートである。まず、イグニッションスイッチがオンされて、エアコンECU60に直流電源が供給されると、予めメモリに記憶されている制御プログラムが実行される。イグニッションスイッチがオンされたときは、操作者の操作によって車両が駐車状態から走行可能な走行状態に起動したときである。
【0065】
ステップS1では、エアコンECU60内部のマイクロコンピュータに内蔵されたデータ処理用メモリの記憶内容等を初期化(イニシャライズ)し、ステップS2に移る。
【0066】
ステップS2では、操作パネル70上の各種操作スイッチからのスイッチ信号を読込み、ステップS3に移る。ステップS3では、各種センサからのセンサ信号を読込み、ステップS4に移る。なお、ステップS2、S3では、各種データがデータ処理用メモリに読み込みこまれる。
【0067】
センサ信号としては、例えば、内気温センサ71が検知する内気温度(車室内温度)Tr、外気温センサ72が検知する外気温度Tam、日射センサ73が検知する日射量Ts、エバポレータ後温度センサが検知するエバポレータ後温度Te、および冷却水温センサが検知するエンジン冷却水温Twがある。
【0068】
ステップS4では、記憶している下記の数式1に入力データを代入して目標吹出温度TAOを演算し、ステップS5に移る。
【0069】
(数式1)TAO=Kset×Tset−Kr×Tr−Kam×Tam−Ks×Ts+C
ここで、Tsetは、温度設定スイッチにて設定された設定温度、Trは内気温度、Tamは外気温度、Tsは日射量である。また、Kset、Kr、KamおよびKsは各ゲインであり、Cは全体にかかる補正用の定数である。そして、このTAOおよび上記各種センサからの信号により、エアミックスドア17のアクチュエータの制御値および電動ウォータポンプ32の回転数の制御値等を算出する。
【0070】
ステップS5では、ブロワ電圧を決定する処理を実施する。ブロワ電圧は、ブロワモータ15に印可される電圧であり、ブロワ電圧に応じて吹出風量が変更される。ブロワ電圧決定処理の詳細については後述する。
【0071】
次に、ステップS6では、吸込口モード決定処理を実行し、目標吹出温度TAOに基づき、空調ケース10内に空気を取り込む吸込口を決定し、ステップS7に移る。吸込口モード決定処理の詳細については、後述する。
【0072】
ステップS7では、後述する吹出口モード決定処理を実施し、目標吹出温度TAOに基づき、車室内に空調風を吹き出す吹出口を決定し、ステップS8に移る。吹出口モードは、たとえばROMに記憶されたマップから目標吹出温度TAOに対応する吹出口モードを決定する。
【0073】
ステップS8では、後述する圧縮機回転数決定処理を実施し、ステップS9に移る。ステップS9では、電気ヒータを構成するPTCヒータ(単にPTCともいう)の作動本数を決定する処理を行う。
【0074】
ステップS10では、要求水温決定処理を実施し、ステップS11に移る。要求水温決定処理は、エンジン冷却水を暖房および防曇等の熱源にするため、目標吹出温度TAO等に基づき決定する。要求水温決定処理の詳細については後述する。
【0075】
ステップS11では、電動ウォータポンプ作動決定処理を実施し、ステップS12に移る。電動ウォータポンプ作動決定処理は、エンジン冷却水温Tw等に基づいて、電動ウォータポンプ32(図1)のオンオフを決定する処理である。電動ウォータポンプ作動決定処理の詳細については後述する。
【0076】
ステップS12では、上記各ステップS5〜S11で算出または決定された各制御状態が得られるように、各種アクチュエータ等に対して制御信号を出力し、ステップS13に移る。また、ステップS12では、エコモードおよびオートモードの表示制御も行う。そしてステップS13において、所定時間Tの経過を待って、ステップS2に戻り、継続して各ステップが実行される。
【0077】
次に、各ステップの詳細に関して説明する。まずブロワ電圧決定処理(ステップS5)に関して説明する。ステップS5は、具体的には、図6に従って実行される。図6は、図5のステップS5におけるブロワ電圧決定処理の詳細を示すフローチャートである。ブロワ電圧は、電池の電力により駆動されるブロワモータ15に印加される電圧である。
【0078】
図6に示すように、本制御がスタートすると、ステップS61にて風量設定がオート(自動)であるか否かを判断し、オートの場合は、ステップS62に移し、オートでない場合には、ステップS69に移る。
【0079】
オートの場合、ステップS62にて、ベースとなる仮のブロワレベル(f(TAO))をマップから演算する。エコモードの場合、エコモード以外の時(非エコモード時)に比べて低いブロワレベルを出力するようにしている。これにより、ブロワ消費電力が抑制されると共に、冷房時はエバポレータの温度上昇が遅くなり、また、暖房時はエンジン水温の低下が遅くなるので、車両用空調装置100の省動力運転が可能になる。
【0080】
次に、ステップS63において、ヒータコア34の水温および電気ヒータ35のPTC作動本数に応じてウオームアップ風量(f(Tw))を算出する。次に、ステップS64にて、吹出口がフットモードでの吹出口からの吹出し(FOOT)、バイレベルモードでの吹出口からの吹出し(B/L)、およびフットデフモードでの吹出口からの吹出し(F/D)のいずれかであるか否かを判定する。
【0081】
上記吹出口のいずれかであり、YESと判定されたときは、ステップS65に進む。このステップS65では、上記(f(TAO))の最小値、および(f(Tw))の値のいずれか大きい方を選択する。ステップS66では、ステップS65で選択されたブロワレベルをブロワ電圧にマップを用いて変換する。
【0082】
ステップS64でNOと判定されたときは、つまりフェイス(FACE)吹出口のみから吹出されているような場合は、ステップS67に進み、ブロワレベルとして上記(f(TAO))を選択する。次のステップS68では、選択されたブロワレベル(f(TAO))をブロワ電圧にマップにて変換する。
【0083】
なお、ステップS61において、風量設定がオート(自動)でなくマニュアルの場合には、ステップS69において、それぞれマップにて指定された電圧(4ボルトから12ボルト)をブロワモータ15に印加する。
【0084】
次に、吸込口モード決定処理(ステップS6)に関して説明する。ステップS6は、具体的には、図7にしたがって実行される。図7は、図5のステップS6における吸込口モード決定処理の詳細を示すフローチャートである。
【0085】
図7に示すように、ステップS71にて吸込口制御がオートか否かを判定する。オートの場合、ステップS73にて、TAOに応じた内外気切替制御を行う。オートで無くマニュアルの場合、ステップS72において、マニュアル設定に応じた内外気切替制御を行う。つまり、内気モード(REC)のときは、外気導入率を0%とする。また、外気モード(FRS)のときは、外気導入率を100%に設定する。
【0086】
次に、吹出口モード決定処理(ステップS7)に関して説明する。ステップS7は、具体的には、図8にしたがって実行する。図8は、図5のステップS7の吹出口モード決定処理を示すフローチャートである。この図8のように、目標吹出温度TAOに応じて吹出口モードをフェイス(FACE)、バイレベル(B/L)、フット(FOOT)のいずれかに決定する。
【0087】
次に、圧縮機回転数決定処理(ステップS8)に関して説明する。ステップS8は、具体的には、図9にしたがって実行する。図9は、図5のステップS8における圧縮機回転数決定処理の詳細を示すフローチャートである。図9に示すように、本制御がスタートすると、ステップS91にて、各種センサの検出信号を用いて算出した目標エバポレータ後温度TEOから、実際のエバポレータ後温度TEを差し引いた値である温度偏差Enを下記数式2に基づいて演算する。
【0088】
次に、数式3を用いて偏差変化率EDOTを求め、更に、図9に一例を示したマップから圧縮機の回転数変化量(Δf)を求める。なお、E(n−1)は、偏差Enの先回の値であり、nは自然数である。
【0089】
(数式2)En=TEO−TE
(数式3)EDOT=En−En−1
ここで、Enは1秒に1回更新されるため、En−1は、Enに対して1秒前の値となる。
【0090】
図9のステップS91には、上記偏差Enと、偏差変化率EDOTと、回転数変更分(Δf)との関係を示すマップの一例(冷房運転時の例)が示されている。上記のように、EnとEDOTとを用いて、図3のエアコンECU60内の図示しないROMに記憶されたマップを用いて1秒前の圧縮機回転数f(n−1)に対して、増減する回転数変更分(Δf)を求める。
【0091】
なお、この圧力偏差Enおよび偏差変化率EDOTにおける回転数変更分(Δf)は、ROMに記憶された所定のメンバーシップ関数、およびルールに基づいて、ファジー制御にて求めることも出来る。このようにして、圧縮機の1秒毎の回転数変化量(Δf)を演算する。
【0092】
次に、ステップS92にて、図4のエコモードスイッチ710がオンされてエコモードになっているか否かを判定する。エコモード以外の場合は、ステップS93において、最大回転数を10000rpmとする。次にステップS95では、(前回の圧縮機回転数+Δf)rpmと、このときの最大回転数10000rpmの内、小さい方の値を求め、この小さい方の値を、今回の圧縮機回転数とする。
【0093】
次に、ステップS92において、エコモードの場合は、ステップS96において、最大回転数を7000rpmに設定する。
【0094】
そして、ステップS95では、前回の圧縮機回転数に回転数変化量(Δf)を加えた値と、このときの最大回転数である7000rpmとの内、小さい方の値を求め、この小さい方の値を、今回の圧縮機回転数とする。
【0095】
なお、上記の場合、エコモードにおいては、最大回転数は、非エコモード時の10000rpmよりも低い7000rpmに設定されるから、エコモードにおいて最大回転数を低減することで、電動圧縮機41、42、43での消費電力を抑制できる。
【0096】
次に、図5のステップS9のPTC作動本数決定ステップについて説明する。図10は、図5のステップS9のPTC作動本数決定処理を示すフローチャートである。この図10に示すように、ステップS101において、ブロワスイッチ705(図4)がONになっているか否かを判定する。つまり、ブロワスイッチ705が投入され「OFF」以外の「風量AUTO」、「LO」、「ME」、「HI」に設定されているとき、ブロワスイッチがONになっているとして、YESと判定する。ステップS102では、電気ヒータ35の作動本数をエンジン冷却水温(Tw)に基づいて算出する。
【0097】
具体的には、図10の特性マップに示すように、エンジン冷却水温(Tw)<71のとき、電気ヒータ35の作動本数を3本とし、71<冷却水温(Tw)<74のとき、電気ヒータ35の作動本数を2本とし、74<エンジン冷却水温(Tw)<77のとき、電気ヒータ35の作動本数を1本とし、77<エンジン冷却水温(Tw)のとき、電気ヒータ35の作動本数を0本とする。
【0098】
なお、図10のS101において、ブロワスイッチ705が、OFFに設定されているとき、NOと判定して、ステップS103で電気ヒータ35をOFF、すなわち作動本数を0本とする。このようにして、電気ヒータ35の作動本数を決定すると、この決定本数に対応して、図2のスイッチ素子SW1、SW2、SW3のオン、オフを実行する。これにより、電気ヒータ35の作動本数に対応して、ヒータコア35の通過温風に付与する熱量が変わることになる。
【0099】
次に、要求水温決定処理(ステップS10)に関して説明する。図5のステップS10は、具体的には、図11のフローチャートにしたがって実行される。図11は、図5のステップS10における要求水温決定処理の詳細を示すフローチャートである。
【0100】
図11に示すように、本制御がスタートすると、ステップS111にて、エンジン冷却水温度に基づくエンジンON要求の要否判定に用いる判定しきい値であるエンジンOFF水温と、エンジンON水温を算出する。エンジンOFF水温は、エンジン50を停止させるときの判定基準となるエンジン冷却水温度であり、エンジンON水温は、エンジン50を作動させるときの判定基準となるエンジン冷却水温度である。
【0101】
エンジンOFF水温は、数式5に示すように、数式4で算出された基準エンジン冷却水温度TwOと、70℃との小さい方に決定される。一方、エンジンON水温は、頻繁にエンジン50がON/OFFするのを防止するため、エンジンOFF水温よりも所定温度(本例では5℃)低く設定される。
【0102】
(数式4)TwO={(TAO−ΔTpct)−(TE×0.2)}/0.8
(数式5)エンジンOFF水温=MIN(TwO,70)
なお、基準エンジン冷却水温度TwOは、エアミックス前の温風温度が目標吹出温度TAOになるものと仮定したときに必要とされるエンジン冷却水温度である。TEは、エバポレータ後温度である。また、ΔTpctはPTCによる吹出温度の上昇分の推定値であり、電気ヒータ35の作動本数に応じてマップにて演算される。
【0103】
次に、ステップS112では、エンジン冷却水温度に基づくエンジンON要求の要否決定を行う。このステップS112では、仮のエンジンON要求要否を演算する。具体的には、実際のエンジン冷却水温度Twを、ステップS111で求めたエンジンOFF水温およびエンジンON水温と比較する。そして、エンジン冷却水温度がエンジンON水温より低ければ、f(Tw)=ONとしてエンジン50の稼動を仮決定し、エンジン冷却水温度がエンジンOFF水温より高ければ、f(Tw)=OFFとしてエンジン50の停止を仮決定する。
【0104】
次に、ステップS113にて、乗員のシートを温めるシートヒータ101(図3)がONしているか否かを判定する。ステップS113にて、シートヒータ101がOFFの場合、ステップS114にて、日射量に応じてf(日射量)を演算する。ステップS113にてシートヒータ101がONしている場合は、ステップS115にて、ステップS114よりも低いf(日射量)の値を演算する。
【0105】
次に、ステップS116にて、ステップS114あるいはステップS115にて演算したf(日射量)の値に応じて、f(外気温)のONまたはOFFを選択する。ステップS116において制御当初は、f(外気温)OFFを選択する。
【0106】
次に、ステップS117にて、エアコンECU60からの最終のエンジンON要求の有無を演算する。エコモードであり、かつ目標吹出温度TAO=20℃以上で、かつf(Tw)=ONの時、通常はエンジンON(エンジン稼動)を許可するが、設定温度が28℃以上の場合を除き、f(外気温)=OFFの場合には、エンジンONを許可しない。
【0107】
また、ステップS113で、シートヒータ101がONの時は、乗員の温感が高くなるので、f(日射量)の値を小さくして、シートヒータON時にエンジンON要求を許可しにくくすることで、最低限の温感確保を達成しつつ、燃費を向上させることができる。更に、車両周辺の騒音である車外音が低減し、また、電池に充電した電力の有効利用が達成できる。また、日射量が多い程、乗員の温感は高くなるので、日射量が多い程、エンジンON要求を許可しにくくすることで、最低限の温感確保と燃費向上・車外音低減・充電電力の有効利用ができる。
【0108】
次に、電動ウォータポンプ作動決定処理(ステップS11)に関して説明する。ステップS11は、具体的には、図12に従って実行する。図12は、図5のステップS11における電動ウォータポンプ作動決定処理の詳細を示すフローチャートである。
【0109】
図12に示すように、本制御がスタートすると、ステップS121にて、冷却水温センサによって検出されるエンジン冷却水温度Twがエバポレータ後温度TEより高いか否かを判定する。エンジン冷却水温度Twが、エバポレータ後温度TE以下であると判定されると、ステップS122で電動ウォータポンプ32をOFFする要求を決定し、本制御を終了する。
【0110】
ステップS121にて、冷却水温度センサによって検出される冷却水温度Twが比較的低く、エンジン冷却水温Twがエバポレータ後温度TE以下であると判定されると、エンジン冷却水をヒータコア34に流した時、かえって吹出温度を低くしてしまうため、ステップS122で電動ウォータポンプ32をOFFするのである。
【0111】
ステップS121でエンジン冷却水温度Twが、エバポレータ後温度TEよりも高いと判定すると、ステップS123で図1のブロワ16をON(運転)した状態であるか否かを判定する。ブロワ16をONしていない状態であれば、ステップS122に進み、電動ウォータポンプ32をOFFする要求を決定し、本制御を終了する。ブロワ16をONした状態であれば、ステップS124に進み、電動ウォータポンプ32をONする要求を決定し、本制御を終了する。
【0112】
つまり、エンジン冷却水温Twが比較的高いときにブロワ16がOFF(停止)の時は、省動力のため、電動ウォータポンプ32をOFFする。一方、ブロワONの時は、電動ウォータポンプ32のON要求を行う。これにより、エンジンOFFの時でも、エンジン冷却水が持っている熱量を空調に利用することができる。従って、吹出温度が上がり、吹出温度を目標吹出温度TAOに近づけることができるので、エンジンOFFの状態でも室温が下がるのを緩和できる。
【0113】
次に、図5のステップS12では、以上のようにして求めた制御信号を出力して、ブロワ16の制御、インバータ42の制御による圧縮機41の回転数制御、室外ファン4の回転数制御、内外気切替ドア13の制御、吹出口切替ドア21、22の制御、電動ウォータポンプ32の制御、電気ヒータ35となるヒータ線(PTC)351〜353の通電本数制御を行う。また、このステップS12では、図13に示したフローチャートの制御を実行し、図4に図示したエコモードスイッチ710およびオートスイッチ708の表示動作の制御を行う。
【0114】
前述したように、操作パネル70には、オートスイッチ708が設けられている。そして、オートモードで制御されているときに、このオートスイッチ708内のオートモード表示部708aを構成する発光ダイオード(LED)が発光し、オートモードによる運転中であることを表示する(オートモード表示部708aをなすオートインジケータが点灯する)。
【0115】
また、エコモードを選択するか否かを切り換えるエコモードスイッチ710が車室内に設けられている。乗員によりエコモードスイッチ710が操作されて、エコモードによる運転がなされると、エコモードスイッチ710内の発光ダイオードが点灯し、エコモードによる運転中であることを表示する(エコモード表示部710aをなすエコモードインジケータを点灯する)。
【0116】
図13は、図5のステップS12における表示制御であるエコモードスイッチ710およびオートスイッチ708の表示動作の制御を説明するフローチャートである。この図13において、ステップS1301において、エコモード中か否かを判定する。エコモード中の場合、ステップS1302にて乗員のオートスイッチ708の操作入力があったか否かを判定する。オートスイッチ708の操作入力があった場合、ステップS1303にてエコモードをキャンセルし、ステップS1304でエコモードインジケータ(エコモード表示部710a)を消灯させる。
【0117】
ステップS1301でエコモード中ではない場合、ステップS1305に進み、オートモードか否かを判定する。オートモードである場合、ステップS1306で乗員によるエコモードスイッチ入力があったか否かを判定する。エコモードスイッチ入力があった場合、ステップS1307でエコモードによる運転を開始し、ステップS1308においてオートインジケータを消灯させる。
【0118】
ステップS1305において、オートモードではないと判定されたときは、ステップS1309に進み、マニュアルモードでの車両用空調装置100の運転を継続する。そして、ステップS1310において、エコモードインジケータを消灯し、かつオートインジケータを消灯する。
【0119】
次に、ステップS1306で乗員によるエコモードスイッチ入力がないと判定された場合は、ステップS1311でオートモードを継続し、ステップS1312において、オートインジケータを点灯させる。
【0120】
またステップS1302において、乗員のオートスイッチ708の操作入力がなかった場合、ステップS1313にてエコモードを継続し、ステップS1314でエコモードインジケータを点灯させる。
【0121】
このように、エコモードとオートモードが同時に選択できないようにすることで、エコモード中は空調が自動的に室温を快適に制御することを表すオートインジケータが点灯しないため、オートモードなのに寒すぎるといった不満を乗員が感じにくくなる。
【0122】
(その他の実施形態)
本発明は上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、次のように変形または拡張することができる。例えば、上述の一実施形態では、エコモードを選択するか否かを切り換えるエコモードスイッチ710が、乗員によって操作可能なインストルメントパネルの所定位置に設けられている例を示したが、このエコモードスイッチ710が、図4の(a)に示された操作パネル70内に存在してもよいのは勿論である。
【0123】
また、空調の自動制御中表示を行う表示部708aをオートスイッチ708内に内蔵された発光ダイオードで構成したが、操作パネル70内におけるディスプレイ701内に表示されたAUTOの文字やシンボルで構成してもよい。同様に、エコモードにより運転中であることを示す表示部710aをエコモードスイッチ710内に内蔵された発光ダイオードで構成したが、操作パネル70のディスプレイ701内に表示されたECOの文字やシンボルで構成してもよい。
【符号の説明】
【0124】
3 コンデンサ
7 エバポレータ
13 内外気切替ドア
16 ブロワ
32 電動ウォータポンプ
34 ヒータコア
41 圧縮機
42 インバータ
43 電動機
51 電動発電機
50 エンジン
60 エアコンECU
61 エンジンECU
70 操作パネル
100 車両用空調装置
702 運転スイッチ(A/Cスイッチ)
703 温度設定スイッチ
704 内気循環スイッチ
705 ブロワスイッチ
708 オートスイッチ
708a オートモード表示部
710 エコモードスイッチ
710a エコモード表示部
EDOT 偏差変化率
En 温度偏差
E(n−1) 偏差Enの先回の値
Δf 回転数変化量
S62、S65 ブロワレベルを低下させる手段
S1303 エコモードでの運転をキャンセルする手段
S1304 自動制御中表示を消す手段
TE エバポレータ後温度
TEO 目標エバポレータ後温度
Tw エンジン冷却水温度
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内に空調風を供給する空調運転において、省動力運転を行うエコモードを選択可能な車両用空調装置(100)であって、
前記空調風の温度を自動制御するオートモードで運転していることを示すオートモード表示部(708a)と、
前記エコモードが選択されて前記エコモードで運転されたときに、前記オートモード表示部(708a)における表示を消す手段(S1304)と、を有することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記エコモードでの運転中に、乗員により前記オートモードでの運転が選択されたときに、前記エコモードでの運転をキャンセルする手段(S1303)を有することを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
更に、前記エコモードによる運転中に前記エコモードを表示するエコモード表示部(710a)を有することを特徴とする請求項1または2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記オートモードでの運転中において、前記エコモードが選択されているときは、前記エコモードが選択されていないときに比し、前記空調風を送風するブロワ(16)の送風量を示すブロワレベルを低下させる手段(S62、S65)を備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記エコモードが選択されているときは、前記エコモードが選択されていないときに比し、前記車両用空調装置(100)の冷媒を循環させる圧縮機(41)の最大回転数を低下させることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の車両用空調装置。
【請求項1】
車室内に空調風を供給する空調運転において、省動力運転を行うエコモードを選択可能な車両用空調装置(100)であって、
前記空調風の温度を自動制御するオートモードで運転していることを示すオートモード表示部(708a)と、
前記エコモードが選択されて前記エコモードで運転されたときに、前記オートモード表示部(708a)における表示を消す手段(S1304)と、を有することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記エコモードでの運転中に、乗員により前記オートモードでの運転が選択されたときに、前記エコモードでの運転をキャンセルする手段(S1303)を有することを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
更に、前記エコモードによる運転中に前記エコモードを表示するエコモード表示部(710a)を有することを特徴とする請求項1または2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記オートモードでの運転中において、前記エコモードが選択されているときは、前記エコモードが選択されていないときに比し、前記空調風を送風するブロワ(16)の送風量を示すブロワレベルを低下させる手段(S62、S65)を備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記エコモードが選択されているときは、前記エコモードが選択されていないときに比し、前記車両用空調装置(100)の冷媒を循環させる圧縮機(41)の最大回転数を低下させることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の車両用空調装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−82343(P2013−82343A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224058(P2011−224058)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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