説明

車両用空調装置

【課題】ヒートポンプ式冷凍サイクルを構成する機器の数を低減しうるとともに、暖房用配管および除湿用配管の取り回しが簡単になる車両用空調装置を提供する。
【解決手段】車両用空調装置は、冷凍サイクルと空調ケース2とを備えている。冷凍サイクルの暖房時に圧縮機で圧縮された冷媒から熱を放熱して冷媒を凝縮させる第1室内熱交換器7と、暖房時に第1室内熱交換器7を通過した冷媒を過冷却する第2室内熱交換器8とを一体化することによって一体型熱交換器14を形成する。空調ケース2のエバポレータ6よりも下流側の部分に、一体型熱交換器14の第1室内熱交換器7が配置される第1通路部分31と、第1通路部分31とは隔てられかつ一体型熱交換器14の第2室内熱交換器8が配置される第2通路部分32とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車や、電気自動車などの比較的廃熱の少ない車両に用いられる車両用空調装置として、ヒートポンプ式冷凍サイクルと、空気吸入口、車室内に空気を吹き出す空気吹き出し口、および空気吸入口と空気吹き出し口とを通じさせる空気通路を有する空調ケースとを備えた車両用空調装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1記載の車両空調装置のヒートポンプ式冷凍サイクル(60)は、図6に示すように、圧縮機(61)、車室外に配置されかつ冷房時に圧縮機(61)で圧縮された冷媒から熱を放熱して凝縮させるとともに、暖房時に減圧された冷媒に受熱させて蒸発させる室外熱交換器(62)、車室内に配置されかつ冷房時に室外熱交換器(62)を通過した冷媒を減圧する第1減圧器(63)、冷房時に第1減圧器(63)で減圧された冷媒に受熱させて蒸発させるエバポレータ(64)、車室内に配置されかつ暖房時に圧縮機(61)で圧縮された冷媒から熱を放熱して冷媒を凝縮させる第1室内熱交換器(65)、第1室内熱交換器(65)と別個に形成されるとともに車室内に配置され、かつ暖房時に第1室内熱交換器(65)を通過した冷媒から放熱して過冷却する第2室内熱交換器(66)、ならびに暖房時に第2室内熱交換器(66)を通過した冷媒を減圧する第2減圧器としての膨張弁(67)を有し、室外熱交換器(62)が暖房時に膨張弁(67)で減圧された冷媒を蒸発させるようになされ、第1室内熱交換器(65)および第2室内熱交換器(66)が暖房時に空気に熱を与える発熱源となっている。
【0004】
ヒートポンプ式冷凍サイクル(60)の全ての機器は、冷房時に、冷媒を圧縮機(61)、第1室内熱交換器(65)、室外熱交換器(62)、第1減圧器(63)およびエバポレータ(64)の間で循環させる冷房用配管(68)と、暖房時に、冷媒を圧縮機(61)、第1室内熱交換器(65)、第2室内熱交換器(66)、膨張弁(67)および室外熱交換器(62)の間で循環させる暖房用配管(69)と、除湿時に、冷媒を圧縮機(61)、第1室内熱交換器(65)、第2室内熱交換器(66)、膨張弁(67)およびエバポレータ(64)の間で循環させる除湿用配管(71)とによって接続されている。
【0005】
上述した3つの配管(68)(69)(71)は共有部分を有しており、冷房用配管(68)、暖房用配管(69)および除湿用配管(71)における第1室内熱交換器(65)よりも下流側の部分に冷媒の流れ方向を制御する三方弁(72)が設けられ、冷房用配管(68)における室外熱交換器(62)の下流側とエバポレータ(64)とを接続する第1配管部分(68a)に冷媒を減圧する機能を有しかつ第1減圧器(63)となる第1電磁弁が設けられ、暖房用配管(69)における室外熱交換器(62)の下流側と圧縮機(61)とを接続する第2配管部分(69a)に第2電磁弁(73)が設けられ、暖房用配管(69)および除湿用配管(71)における第1室内熱交換器(65)と第2室内熱交換器(66)との間の部分でかつ三方弁(72)の下流側にレシーバ(74)が設けられ、暖房用配管(69)および除湿用配管(71)における第2室内熱交換器(66)よりも下流側に膨張弁(67)が設けられている。そして、三方弁(72)および2つの電磁弁(63)(73)の働きによって、冷媒が、冷房用配管(68)、暖房用配管(69)および除湿用配管(71)のいずれか1つに流れるように切り替えられる。冷房時には、冷媒は、圧縮機(61)で圧縮された後、第1室内熱交換器(65)を通過してから室外熱交換器(62)で熱を放熱して凝縮し、ついで第1減圧器(63)により減圧された後にエバポレータ(64)で熱を受熱して蒸発し、その後圧縮機(61)に戻される。暖房時には、冷媒は、圧縮機(61)で圧縮された後に第1室内熱交換器(65)で熱を放熱して凝縮し、ついでレシーバ(74)で気液分離された後に第2室内熱交換器(66)で放熱して過冷却され、ついで膨張弁(67)により減圧された後に室外熱交換器(62)で熱を奪って蒸発し、圧縮機(61)に戻される。除湿時には、冷媒は、圧縮機(61)で圧縮された後に第1室内熱交換器(65)で熱を放熱して凝縮し、ついでレシーバ(74)で気液分離された後に第2室内熱交換器(66)で熱を放熱して過冷却され、ついで膨張弁(67)により減圧された後にエバポレータ(64)で熱を奪って蒸発し、圧縮機(61)に戻される。
【0006】
また、特許文献1記載の車両空調装置の空調ケース(75)は、図7に示すように、外気を吸い込む第1空気吸入口(76)、車室内空気を吸い込む第2空気吸入口(77)、車室内に空気を吹き出す空気吹き出し口(78)、両空気吸入口(76)(77)と空気吹き出し口(78)とを通じさせる空気通路(79)、第1空気吸入口(21)および第2空気吸入口(22)のうちのいずれか一方のみから選択的に空気を吸い込む吸気切り替え部材(84)、空気通路(79)における空気吹き出し口(78)側の部分に設けられた2つの分岐通路(81)(82)、ならびに2つの分岐通路(81)(82)のうちのいずれか一方に選択的に空気を流す切り替え部材(83)を備えている。空調ケース(75)の空気通路(79)内における2つの分岐通路(81)(82)よりも空気吸入口(76)(77)側にエバポレータ(64)が配置され、一方の第1分岐通路(81)に第1室内熱交換器(65)が配置され、空気通路(79)内のエバポレータ(6)よりも上流側部分に、空気通路(79)の略半部を占めるように第2室内熱交換器(66)が配置され、空気通路(79)内の第2室内熱交換器(66)よりも上流側に送風機(85)が配置されている。
【0007】
しかしながら、特許文献1記載の車両用空調装置のヒートポンプ式冷凍サイクル(60)の場合、第1室内熱交換器(65)と第2室内熱交換器(66)とが別個に形成されているので、ヒートポンプ式冷凍サイクル(60)を構成する機器の数が多くなる。また、第1室内熱交換器(65)と第2室内熱交換器(66)とが別個に形成されて、エバポレータ(64)の両側に配置されているので、暖房用配管および除湿用配管の取り回しが面倒になるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−23564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明の目的は、上記問題を解決し、ヒートポンプ式冷凍サイクルを構成する機器の数を低減しうるとともに、暖房用配管および除湿用配管の取り回しが簡単になる車両用空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するために以下の態様からなる。
【0011】
1)圧縮機、車室外に配置され、かつ冷房時に冷媒から熱を放熱させるとともに暖房時に冷媒に熱を受熱させる室外熱交換器、冷房時に室外熱交換器を通過した冷媒を減圧する第1減圧器、車室内に配置されかつ冷房時に第1減圧器で減圧された冷媒を蒸発させるエバポレータ、車室内に配置されかつ暖房時に圧縮機で圧縮された冷媒から熱を放熱して冷媒を凝縮させる第1室内熱交換器、暖房時に第1室内熱交換器を通過した冷媒を過冷却する第2室内熱交換器、および暖房時に第2室内熱交換器を通過した冷媒を減圧する第2減圧器を有するヒートポンプ式冷凍サイクルと、空気吸入口、車室内に空気を吹き出す空気吹き出し口、および空気吸入口と空気吹き出し口とを通じさせる空気通路を有する空調ケースとを備えており、室外熱交換器が、冷房時に圧縮機で圧縮された冷媒を凝縮させるとともに暖房時に第2減圧器で減圧された冷媒を蒸発させるようになされ、エバポレータが空調ケースの空気通路内に配置されている車両用空調装置であって、
冷凍サイクルの第1室内熱交換器と第2室内熱交換器とが一体化されることによって一体型熱交換器が形成されており、空調ケースにおけるエバポレータよりも下流側の部分に、一体型熱交換器の第1室内熱交換器が配置される第1通路部分と、第1通路部分とは隔てられかつ一体型熱交換器の第2室内熱交換器が配置される第2通路部分とが設けられている車両用空調装置。
【0012】
2)空調ケースに、第2通路部分における第2室内熱交換器よりも下流側の部分と、空気通路におけるエバポレータよりも上流側の部分とを通じさせる空気戻し通路が設けられ、暖房時に、第2室内熱交換器を通過した空気が空気戻し通路を通って空気通路におけるエバポレータよりも上流側の部分に送られるとともに、第1室内熱交換器を通過した空気が車室内に送られるようになされている上記1)記載の車両用空調装置。
【0013】
3)空調ケースに、空気戻し通路を開閉する開閉部材が設けられている上記2)記載の車両用空調装置。
【0014】
4)空調ケースの第2通路部分の一端部が車室外空気および車室内空気のうちのいずれか一方を吸い込む空気吸入口となっているとともに、他端部が空気通路におけるエバポレータよりも上流側の部分に通じさせられており、暖房時に、第2室内熱交換器を通過した空気が第2通路部分を通って空気通路におけるエバポレータよりも上流側の部分に送られるとともに、第1室内熱交換器を通過した空気が車室内に送られるようになされている上記1)記載の車両用空調装置。
【0015】
5)空調ケースに、第2通路部分を開閉する開閉部材が設けられている上記4)記載の車両用空調装置。
【0016】
6)空調ケースに、第2通路部分における第2室内熱交換器よりも下流側の部分と、室外熱交換器における空気入り側の部分とを通じさせる暖気通路が設けられ、暖房時に、第2室内熱交換器を通過した空気が暖気通路を通って室外熱交換器の空気入り側に送られるとともに、第1室内熱交換器を通過した空気が車室内に送られるようになされている上記1)記載の車両用空調装置。
【0017】
7)暖気通路に、第2室内熱交換器を通過した空気を室外熱交換器の空気入り側に送る送風機が設けられている上記6)記載の車両用空調装置。
【0018】
8)空調ケースに、暖気通路を開閉する開閉部材が設けられている上記6)または7)記載の車両用空調装置。
【発明の効果】
【0019】
上記1)の車両用空調装置によれば、冷凍サイクルの第1室内熱交換器と第2室内熱交換器とが一体化されることによって一体型熱交換器が形成されているので、第1室内熱交換器と第2室内熱交換器とが別個に形成された特許文献1記載の車両用空調装置に比較して、ヒートポンプ式冷凍サイクルを構成する機器の数が低減されるとともに、暖房用配管および除湿用配管の取り回しが簡単になる。また、空調ケースにおけるエバポレータよりも下流側の部分に、一体型熱交換器の第1室内熱交換器が配置される第1通路部分と、第1通路部分とは隔てられかつ一体型熱交換器の第2室内熱交換器が配置される第2通路部分とが設けられているので、暖房時に、第1室内熱交換器を通過した空気と第2室内熱交換器を通過した空気とを、有効に利用することができる。
【0020】
しかも、第2室内熱交換器は空調ケースにおけるエバポレータの下流側の第2通路部分に配置されるので、エバポレータの上流側に障害物が存在することはなく、特許文献1記載の車両用空調装置に比べて、冷房時の風量の乱れが抑制されて冷房効率が向上する。
【0021】
上記2)および3)の車両用空調装置によれば、次の効果を奏する。すなわち、暖房時には、一体型熱交換器の第1室内熱交換器および第2室内熱交換器を通過した空気は加熱されるが、第2室内熱交換器を流れる冷媒は液相主体冷媒であるから、第2室内熱交換器を通過した空気の温度は、同じく第1室内熱交換器を通過した空気の温度よりも低くなる。その結果、一体型熱交換器の第1室内熱交換器および第2室内熱交換器を通過した全ての空気を、空調ケースの空気吹き出し口から車室内に吹き出した場合、吹き出される空気の温度分布が不均一になる。しかしながら、上記2)の車両用空調装置のように、空調ケースに、第2通路部分における第2室内熱交換器よりも下流側の部分と、空気通路におけるエバポレータよりも上流側の部分とを通じさせる空気戻し通路が設けられ、暖房時に、第2室内熱交換器を通過した空気が空気戻し通路を通って空気通路におけるエバポレータよりも上流側の部分に送られるとともに、第1室内熱交換器を通過した空気が車室内に送られるようになされていると、第2室内熱交換器を通過しかつ第1室内熱交換器を通過した空気よりも低温の空気を、空気戻し通路を通して空調ケースの空気通路におけるエバポレータの上流側に戻し、エバポレータに送り込まれる空気に混合することができる。したがって、暖房時には、第2室内熱交換器を通過した空気は車室内に吹き出されず、第1室内熱交換器を通過した空気だけが車室内に吹き出されることになり、吹き出される空気の温度分布を均一化することが可能になる。
【0022】
上記4)および5)の車両用空調装置によれば、次の効果を奏する。暖房時には、一体型熱交換器の第1室内熱交換器および第2室内熱交換器を通過した空気は加熱されるが、第2室内熱交換器を流れる冷媒は液相主体冷媒であるから、第2室内熱交換器を通過した空気の温度は、同じく第1室内熱交換器を通過した空気の温度よりも低くなる。その結果、一体型熱交換器の第1室内熱交換器および第2室内熱交換器を通過した全ての空気を、空調ケースの空気吹き出し口から車室内に吹き出した場合、吹き出される空気の温度分布が不均一になる。しかしながら、上記4)の車両用空調装置のように、空調ケースの第2通路部分の一端部が車室外空気および車室内空気のうちのいずれか一方を吸い込む空気吸入口となっているとともに、他端部が空気通路におけるエバポレータよりも上流側の部分に通じさせられており、暖房時に、第2室内熱交換器を通過した空気が第2通路部分を通って空気通路におけるエバポレータよりも上流側の部分に送られるとともに、第1室内熱交換器を通過した空気が車室内に送られるようになされていると、第2室内熱交換器により加熱された空気を、第2通路部分を通して空調ケースの空気通路におけるエバポレータの上流側に送り込み、エバポレータに送り込まれる空気に混合することができる。したがって、暖房時には、第2室内熱交換器を通過した空気は車室内に吹き出されず、第1室内熱交換器を通過した空気だけが車室内に吹き出されることになり、吹き出される空気の温度分布を均一化することが可能になる。
【0023】
上記6)〜8)の車両用空調装置によれば、次の効果を奏する。暖房時には、一体型熱交換器の第1室内熱交換器および第2室内熱交換器を通過した空気は加熱されるが、第2室内熱交換器を流れる冷媒は液相主体冷媒であるから、第2室内熱交換器を通過した空気の温度は、同じく第1室内熱交換器を通過した空気の温度よりも低くなる。その結果、一体型熱交換器の第1室内熱交換器および第2室内熱交換器を通過した全ての空気を、空調ケースの空気吹き出し口から車室内に吹き出した場合、吹き出される空気の温度分布が不均一になる。しかしながら、上記6)の車両用空調装置のように、空調ケースに、第2通路部分における第2室内熱交換器よりも下流側の部分と、室外熱交換器における空気入り側の部分とを通じさせる暖気通路が設けられ、暖房時に、第2室内熱交換器を通過した空気が暖気通路を通って室外熱交換器の空気入り側に送られるとともに、第1室内熱交換器を通過した空気が車室内に送られるようになされていると、暖房時には、第2室内熱交換器を通過した空気は車室内に吹き出されず、第1室内熱交換器を通過した空気だけが車室内に吹き出されることになり、吹き出される空気の温度分布を均一化することが可能になる。
【0024】
また、暖房時には、第2室内熱交換器を通過した空気は、暖気通路を通して室外熱交換器における空気入り側の部分に送り込むこまれるので、暖房時に第2減圧器で減圧された冷媒を蒸発させる室外熱交換器において、結露水が凍結した場合に、凍結した結露水を解氷することが可能になる。しかも、暖房時に、室外熱交換器において凍結した結露水を解氷するためのヒータなどの専用の機器が不要になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明による実施形態1の車両空調装置のヒートポンプ式冷凍サイクルを示す概略図である。
【図2】この発明による実施形態1の車両用空調装置の空調ケースの一部を示す冷房時の概略図である。
【図3】この発明による実施形態1の車両用空調装置の空調ケースの一部を示す暖房時の概略図である。
【図4】この発明による実施形態2の車両用空調装置の空調ケースの一部を示す暖房時の概略図である。
【図5】この発明による実施形態3の車両用空調装置の一部を示す暖房時の概略図である。
【図6】従来の車両空調装置のヒートポンプ式冷凍サイクルを示す概略図である。
【図7】従来の車両空調装置の空調ケースの一部を示す暖房時の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0027】
全図面を通じて同一部分および同一物には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0028】
実施形態1
この実施形態は図1〜図3に示すものである。
【0029】
図1はこの発明による車両空調装置のヒートポンプ式冷凍サイクルを示し、図2および図3はこの発明による車両用空調装置の空調ケースの一部を示す。
【0030】
ハイブリッド自動車や電気自動車に好適に用いられる実施形態1の車両空調装置は、図1に示すヒートポンプ式冷凍サイクル(1)と、図2および図3に示す空調ケース(2)とを備えている。
【0031】
図1において、車両用空調装置のヒートポンプ式冷凍サイクル(1)は、圧縮機(3)、車室外に配置されかつ冷房時に圧縮機(3)で圧縮された冷媒から熱を放熱するとともに、暖房時に減圧された冷媒に受熱させる室外熱交換器(4)、冷房時に室外熱交換器(4)を通過した冷媒を減圧する第1減圧器(5)、車室内に配置されかつ冷房時に第1減圧器(5)で減圧された冷媒を蒸発させるエバポレータ(6)、車室内に配置されかつ暖房時に圧縮機(3)で圧縮された冷媒から熱を放熱して冷媒を凝縮させる第1室内熱交換器(7)、暖房時に第1室内熱交換器(7)を通過した冷媒から熱を放熱して冷媒を過冷却する第2室内熱交換器(8)、および暖房時に第2室内熱交換器(8)を通過した冷媒を減圧する第2減圧器としての膨張弁(9)を備えており、これらの機器が冷房用配管(11)と暖房用配管(12)と除湿用配管(13)とにより接続されている。室外熱交換器(4)は、暖房時に、膨張弁(9)で減圧された冷媒を蒸発させる。
【0032】
第1室内熱交換器(7)と第2室内熱交換器(8)とが一体化されることによって一体型熱交換器(14)が形成されている。図示は省略したが、一体型熱交換器(14)は、上下に連続して並んだ複数の熱交換管からなる2以上の熱交換パスが設けられており、冷媒は全ての熱交換パスを順次流れる。そして、冷媒の流れ方向の最終熱交換パスを含んだ少なくとも1つの熱交換パス、たとえば最終熱交換パスを液相主体冷媒が流れるようになっており、当該熱交換パスが第2室内熱交換器(8)隣、他の熱交換パスが第1室内熱交換器(7)となっている。
【0033】
冷房用配管(11)は、冷房時に冷媒を圧縮機(3)、一体型熱交換器(14)、室外熱交換器(4)、第1減圧器(5)およびエバポレータ(6)の間で循環させるものである。暖房用配管(12)は、暖房時に冷媒を圧縮機(3)、一体型熱交換器(14)、膨張弁(9)および室外熱交換器(4)の間で循環させるものである。除湿用配管(13)は、除湿時に冷媒を圧縮機(3)、一体型熱交換器(14)、膨張弁(9)およびエバポレータ(6)の間で循環させるものである。これらの配管(11)(12)(13)は共有部分を有しており、全配管(11)(12)(13)における第2室内熱交換器(8)よりも下流側の部分に冷媒の流れ方向を制御する三方弁(15)が設けられ、冷房用配管(11)における室外熱交換器(4)とエバポレータ(6)とを接続する配管部分(11a)に第1減圧器(5)が設けられ、暖房用配管(12)における三方弁(15)と室外熱交換器(4)とを接続する配管部分(12a)に気液分離器としてのレシーバ(16)および膨張弁(9)が、前者が三方弁(15)側に位置するように設けられている。また、暖房用配管(12)における室外熱交換器(4)と圧縮機(3)とを接続する配管部分(12b)に電磁弁(17)が設けられている。第1減圧器(5)は、冷媒を減圧する機能を有する電磁弁からなり、第1減圧器(5)、三方弁(15)および電磁弁(17)の働きによって、冷媒が、冷房用配管(11)、暖房用配管(12)および除湿用配管(13)のいずれか1つに流れるように切り替えられる。
【0034】
冷房時には、冷媒は、圧縮機(3)で圧縮された後に一体型熱交換器(14)を通過し、ついで室外熱交換器(4)で熱を放熱して凝縮した後に第1減圧器(5)により減圧され、ついでエバポレータ(6)で熱を奪って蒸発した後圧縮機(3)に戻される。暖房時には、冷媒は、圧縮機(3)で圧縮された後に一体型熱交換器(14)の第1室内熱交換器(7)および第2室内熱交換器(8)で熱を放熱し、ついでレシーバ(16)で気液分離された後に膨張弁(9)により減圧され、ついで室外熱交換器(4)で熱を奪って蒸発した後に圧縮機(3)に戻される。除湿時には、冷媒は、圧縮機(3)で圧縮された後に一体型熱交換器(14)の第1室内熱交換器(7)および第2室内熱交換器(8)で熱を放熱し、ついでレシーバ(16)で気液分離された後に膨張弁(9)により減圧され、ついでエバポレータ(6)で熱を奪って蒸発した後圧縮機(3)に戻される。
【0035】
図2および図3に示すように、空調ケース(2)は、外気を吸い込む第1空気吸入口(21)、車室内空気を吸い込む第2空気吸入口(22)、車室内に空気を吹き出す空気吹き出し口(23)、および両空気吸入口(21)(22)と空気吹き出し口(23)とを通じさせる空気通路(24)を有し、空気通路(24)内にエバポレータ(6)が配置されている。空調ケース(2)の空気通路(24)内のエバポレータ(6)よりも上流側部分に送風機(25)が配置されている。また、空調ケース(2)に、第1空気吸入口(21)および第2空気吸入口(22)のうちのいずれか一方のみから選択的に空気を吸い込む吸気切り替え部材(26)が設けられている。空調ケース(2)の空気通路(24)におけるエバポレータ(6)よりも下流側部分に2つの分岐通路(27)(28)が設けられており、いずれか一方の第1分岐通路(27)に一体型熱交換器(14)が配置されている。また、空調ケース(2)に、2つの分岐通路(27)(28)のうちのいずれか一方に選択的に空気を流す切り替え部材(29)が設けられている。
【0036】
切り替え部材(29)の働きによって、冷房時には、一体型熱交換器(14)が配置された第1分岐通路(27)には空気が流れず、第2分岐通路(28)のみに空気が流されるようになっている。暖房時には、一体型熱交換器(14)が配置された第1分岐通路(27)に空気が流され、第2分岐通路(28)には空気が流れないようになっている。除湿のみを行う除湿時には、一体型熱交換器(14)が配置された第1分岐通路(27)に空気が流され、第2分岐通路(28)には空気が流れないようになっている。なお、上述した暖房時および除湿時において、切り替え部材(29)の切り替え角度を調整することによって、第1分岐通路(27)および第2分岐通路(28)の両方を開いて両分岐通路(27)(28)に空気を流すとともに、両分岐通路(27)(28)を流れる空気の量を調整することもある。この場合、第1分岐通路(27)を通過して一体型熱交換器(14)により加熱された空気と、第2分岐通路(28)した空気とを混合するとともに混合空気の温度を調整することができ、空気吹き出し口(23)から車室内に吹き出される温度を調整することが可能になる。
【0037】
空調ケース(2)の空気通路(24)の第1分岐通路(27)に、一体型熱交換器(14)の第1室内熱交換器(7)が配置される第1通路部分(31)と、第1通路部分(31)とは隔てられかつ一体型熱交換器(14)の第2室内熱交換器(8)が配置される第2通路部分(32)とが設けられている。第1通路部分(31)および第2通路部分(32)を、空気が同一方向に流れるようになっている。また、空調ケース(2)に、第2通路部分(32)における第2室内熱交換器(8)よりも下流側の部分と、空気通路(24)におけるエバポレータ(6)よりも上流側の部分とを通じさせる空気戻し通路(33)が設けられている。空調ケース(2)に、第2通路部分(32)の下流端(空気吹き出し口(23)側端部)と空気戻し通路(33)の上流端(第2通路部分(32)側端部)とを選択的に開閉する第1開閉部材(34)が設けられている。なお、第2通路部分(32)の下流端と空気戻し通路(33)の上流端を開閉する開閉部材が別個に設けられていてもよい。また、空調ケース(2)に、空気戻し通路(33)の下流端を開閉する第2開閉部材(35)が設けられている。
【0038】
夏季などの冷房時には、図2に示すように、切り替え部材(29)により第1分岐通路(27)が閉鎖されるとともに第2分岐通路(28)が開かれる。また、第1開閉部材(34)により第2通路部分(32)の下流端部が開かれるるとともに、空気戻し通路(33)の上流端部が閉じられ、さらに第2開閉部材(35)により空気戻し通路(33)の下流端部が閉じられる。冷媒は、圧縮機(3)で圧縮された後に、一体型熱交換器(14)の第1室内熱交換器(7)および第2室内熱交換器(8)を順次通過し、室外熱交換器(4)において熱を放熱して凝縮させられる。ついで、冷媒は、減圧器(5)により減圧された後に、エバポレータ(6)において空気通路(24)を流れる空気から熱を奪って蒸発し、その後圧縮機(3)に戻される。エバポレータ(6)により熱を奪われた空気は、第2分岐通路(28)を通って空気吹き出し口(23)から車室内に吹き出される。
【0039】
冬季などの暖房時には、図3に示すように、切り替え部材(29)により第1分岐通路(27)が開かれるとともに第2分岐通路(28)が閉じられる。また、第1開閉部材(34)により第2通路部分(32)の下流端部が閉じられるとともに、空気戻し通路(33)の上流端部が開かれ、さらに第2開閉部材(35)により空気戻し通路(33)の下流端部が開かれる。
【0040】
冷媒は、圧縮機(3)で圧縮された後に、一体型熱交換器(14)の第1室内熱交換器(7)において第1分岐通路(27)の第1通路部分(31)を流れる空気に熱を放熱して凝縮させられ、空気が加熱される。第1通路部分(31)を流れる間に加熱された空気は空気吹き出し口(23)から車室内に吹き出される。また、一体型熱交換器(14)の第1室内熱交換器(7)を通過した冷媒は、第2室内熱交換器(8)において第1分岐通路(27)の第2通路部分(32)を流れる空気に熱を放熱して過冷却され、空気が加熱される。第2通路部分(32)を流れる間に加熱された空気の温度は、第1通路部分(31)を流れる間に加熱された空気よりも低温になっているが、空気戻し通路(33)を通って空気通路(24)におけるエバポレータ(6)の上流側に戻され、いずれかの空気吸入口(21)(22)から吸い込まれてエバポレータ(6)に送り込まれる空気に混合される。一体型熱交換器(14)の両室内熱交換器(7)(8)において熱を放熱して凝縮させられるとともに過冷却された冷媒は、レシーバ(16)で気液分離された後に膨張弁(9)により減圧され、ついで室外熱交換器(4)で熱を奪って蒸発した後に圧縮機(3)に戻される。
【0041】
冬季などの暖房時において、切り替え部材(29)の切り替え角度を調整することによって、第1分岐通路(27)および第2分岐通路(28)の両方を開いて両分岐通路(27)(28)に空気を流すとともに、両分岐通路(27)(28)を流れる空気の量を調整して車室内に吹き出される空気の温度が調節される場合、第1分岐通路(27)の第2通路部分(32)の下流端部が開かれるとともに、空気戻し通路(33)の上流端部および下流端部が閉じられることもある。
【0042】
除湿時には、上述した暖房時と同様に、切り替え部材(29)により第1分岐通路(27)が開かれるとともに第2分岐通路(28)が閉じられる。また、第1開閉部材(34)により第2通路部分(32)の下流端部が閉じられるとともに、空気戻し通路(33)の上流端部が開かれ、さらに第2開閉部材(35)により空気戻し通路(33)の下流端部が開かれる。
【0043】
冷媒は、圧縮機(3)で圧縮された後に、一体型熱交換器(14)の第1室内熱交換器(7)において第1分岐通路(27)の第1通路部分(31)を流れる空気に放熱して凝縮させられるとともに、第2室内熱交換器(8)において第1分岐通路(27)の第2通路部分(32)を流れる空気に放熱して過冷却される。一体型熱交換器(14)の両室内熱交換器(7)(8)において凝縮させられるとともに過冷却された冷媒は、レシーバ(16)で気液分離された後に膨張弁(9)により減圧され、ついでエバポレータ(6)において空気通路(24)を流れる空気から熱を奪って蒸発し、その後圧縮機(3)に戻される。エバポレータ(6)により熱を奪われた空気は、第1分岐通路(27)の両通路部分(31)(32)において第1室内熱交換器(7)および第2室内熱交換器(8)から放熱される熱により加熱された後に空気吹き出し口(23)から車室内に吹き出される。
【0044】
また、除湿時には、車室内に吹き出される空気の温度を調節するために、切り替え部材(29)の切り替え角度を調整することによって、第1分岐通路(27)および第2分岐通路(28)の両方を開いて両分岐通路(27)(28)に空気を流すとともに、両分岐通路(27)(28)を流れる空気の量を調整することがある。このとき、第1分岐通路(27)の第2通路部分(32)の下流端部が開かれるとともに、空気戻し通路(33)の上流端部および下流端部が閉じられていてもよいし、あるいは第1分岐通路(27)の第2通路部分(32)の下流端部が閉じられるとともに、空気戻し通路(33)の上流端部および下流端部が開かれていてもよい。
【0045】
実施形態2
この実施形態は図4に示すものである。
【0046】
図4はこの発明による車両空調装置の空調ケースの一部を示す。
【0047】
ハイブリッド自動車や電気自動車に好適に用いられる実施形態2の車両空調装置は、実施形態1の車両用空調装置の図1に示すヒートポンプ式冷凍サイクル(1)と、図4に示す空調ケース(40)とを備えている。
【0048】
図4に示すように、実施形態2の空調ケース(40)のいずれか一方の第1分岐通路(27)に一体型熱交換器(14)の第1室内熱交換器(7)が配置されている。また、空調ケース(40)に、一端部が車室外空気および車室内空気のうちのいずれか一方を送り込む空気供給口(42)となっているとともに、他端部が空気通路(24)におけるエバポレータ(6)よりも上流側の部分に通じる連通路(41)が設けられており、連通路(41)に一体型熱交換器(14)の第2室内熱交換器(8)が配置されている。したがって、第1分岐通路(27)が一体型熱交換器(14)の第1室内熱交換器(7)が配置される第1通路部分となり、連通路(41)が一体型熱交換器(14)の第2室内熱交換器(8)が配置される第2通路部分となっている。また、空調ケース(40)に、連通路(41)の空気通路(24)側端部を開閉する開閉部材(43)が設けられている。
【0049】
その他の構成は、図2および図3に示す実施形態1の車両用空調装置の空調ケース(2)と同様である。
【0050】
夏季などの冷房時には、図示は省略したが、切り替え部材(29)により第1分岐通路(27)が閉鎖されるとともに第2分岐通路(28)が開かれる。また、開閉部材(43)により連通路(41)の空気通路(24)側端部が閉じられる。冷媒は、圧縮機(3)で圧縮された後に、一体型熱交換器(14)の第1室内熱交換器(7)および第2室内熱交換器(8)を順次通過し、室外熱交換器(4)において熱を放熱して凝縮させられる。ついで、冷媒は、減圧器(5)により減圧された後に、エバポレータ(6)において空気通路(24)を流れる空気から熱を奪って蒸発し、その後圧縮機(3)に戻される。エバポレータ(6)により熱を奪われた空気は、第2分岐通路(28)を通って空気吹き出し口(23)から車室内に吹き出される。
【0051】
冬季などの暖房時には、図4に示すように、切り替え部材(29)により第1分岐通路(27)が開かれるとともに第2分岐通路(28)が閉じられる。また、開閉部材(43)により供給路(42)の空気通路(24)側端部が開かれる。
【0052】
冷媒は、圧縮機(3)で圧縮された後に、一体型熱交換器(14)の第1室内熱交換器(7)において第1分岐通路(27)を流れる空気に熱を放熱して凝縮させられ、空気が加熱される。第1分岐通路(27)を流れる間に加熱された空気は空気吹き出し口(23)から車室内に吹き出される。また、第1室内熱交換器(7)を通過した冷媒は、一体型熱交換器(14)の第2室内熱交換器(8)において、空気供給口(42)から吸い込まれて空気連通路(41)を流れる空気に熱を放熱して過冷却され、空気が加熱される。連通路(41)を流れる間に加熱された空気の温度は、第1分岐通路(27)を流れる間に加熱された空気よりも低温になっているが、連通路(41)を通って空気通路(24)におけるエバポレータ(6)の上流側に送り込まれ、いずれかの空気吸入口(21)(22)から吸い込まれてエバポレータ(6)に送り込まれる空気に混合される。一体型熱交換器(14)の両室内熱交換器(7)(8)において熱を放熱して凝縮させられるとともに過冷却された冷媒は、レシーバ(16)で気液分離された後に膨張弁(9)により減圧され、ついで室外熱交換器(4)で熱を奪って蒸発した後に圧縮機(3)に戻される。
【0053】
冬季などの暖房時において、開閉部材(43)により供給路(42)の空気通路(24)側端部が閉じられることによって、車室内に吹き出される空気の温度が調節される場合がある。この場合、一体型熱交換器(14)の第1室内熱交換器(7)を通過した冷媒は、第2室内熱交換器(8)において過冷却されることなくレシーバ(16)で気液分離された後に膨張弁(9)により減圧され、ついで室外熱交換器(4)で熱を奪って蒸発した後に圧縮機(3)に戻される。また、冬季などの暖房時において、切り替え部材(29)の切り替え角度を調整することによって、第1分岐通路(27)および第2分岐通路(28)の両方を開いて両分岐通路(27)(28)に空気を流すとともに、両分岐通路(27)(28)を流れる空気の量を調整されることよって、車室内に吹き出される空気の温度が調節される場合がある。
【0054】
除湿時には、上述した暖房時と同様に、切り替え部材(29)により第1分岐通路(27)が開かれるとともに第2分岐通路(28)が閉じられる。また、開閉部材(43)により供給路(42)の空気通路(24)側端部が開かれる。
【0055】
冷媒は、圧縮機(3)で圧縮された後に、一体型熱交換器(14)の第1室内熱交換器(7)において第1分岐通路(27)を流れる空気に熱を放熱して凝縮させられ、空気が加熱される。第1分岐通路(27)を流れる間に加熱された空気は空気吹き出し口(23)から車室内に吹き出される。また、第1室内熱交換器(7)を通過した冷媒は、一体型熱交換器(14)の第2室内熱交換器(8)において、空気供給口(42)から吸い込まれて空気連通路(41)を流れる空気に熱を放熱して過冷却され、空気が加熱される。連通路(41)を流れる間に加熱された空気の温度は、第1分岐通路(27)を流れる間に加熱された空気よりも低温になっているが、連通路(41)を通って空気通路(24)におけるエバポレータ(6)の上流側に送り込まれ、いずれかの空気吸入口(21)(22)から吸い込まれてエバポレータ(6)に送り込まれる空気に混合される。一体型熱交換器(14)の両室内熱交換器(7)(8)において凝縮させられるとともに過冷却された冷媒は、レシーバ(16)で気液分離された後に膨張弁(9)により減圧され、ついでエバポレータ(6)において空気通路(24)を流れる空気から熱を奪って蒸発し、その後圧縮機(3)に戻される。エバポレータ(6)により熱を奪われた空気は、第1分岐通路(27)において第1室内熱交換器(7)から放熱される熱により加熱された後に空気吹き出し口(23)から車室内に吹き出される。
【0056】
除湿時において、開閉部材(43)により供給路(42)の空気通路(24)側端部が閉じられることによって、車室内に吹き出される空気の温度が調節される場合がある。この場合、一体型熱交換器(14)の第1室内熱交換器(7)を通過した冷媒は、第2室内熱交換器(8)において過冷却されることなくレシーバ(16)で気液分離された後に膨張弁(9)により減圧され、ついでエバポレータ(6)において空気通路(24)を流れる空気から熱を奪って蒸発し、その後圧縮機(3)に戻される。また、除湿時において、切り替え部材(29)の切り替え角度を調整することによって、第1分岐通路(27)および第2分岐通路(28)の両方を開いて両分岐通路(27)(28)に空気を流すとともに、両分岐通路(27)(28)を流れる空気の量を調整されることよって、車室内に吹き出される空気の温度が調節される場合がある。
【0057】
実施形態3
この実施形態は図5に示すものである。
【0058】
図5はこの発明による実施形態3の車両空調装置の一部を示す。
【0059】
ハイブリッド自動車や電気自動車に好適に用いられる実施形態3の車両空調装置は、実施形態1の車両用空調装置の図1に示すヒートポンプ式冷凍サイクル(1)と、図5に示す空調ケース(50)とを備えている。
【0060】
図5に示すように、実施形態3の空調ケース(50)は、空気戻し通路(33)が設けられていない点を除いては、実施形態1の空調ケース(2)と同様な構成である。
【0061】
車両用空調装置の空調ケース(50)に、空調ケース(50)の第2通路部分(32)における第2室内熱交換器(8)よりも下流側の部分と、室外熱交換器(4)の空気入り側の部分とを通じさせる暖気通路(51)が設けられている。室外熱交換器(4)は、車両用空調装置が設置されている車両のエンジン(52)およびエンジン(52)の冷却水を冷却するラジエータ(53)の前方に配置されている。
【0062】
暖気通路(51)に、一体型熱交換器(14)の第2室内熱交換器(8)を通過した空気を室外熱交換器(4)の空気入り側に送る送風機(54)が設けられている。また、暖気通路(51)に、暖気通路(51)を開閉する開閉部材(55)が設けられている。
【0063】
その他の構成は、実施形態1の車両用空調装置と同様である。
【0064】
夏季などの冷房時には、図示は省略したが、切り替え部材(29)により第1分岐通路(27)が閉鎖されるとともに第2分岐通路(28)が開かれる。冷媒は、圧縮機(3)で圧縮された後に、一体型熱交換器(14)の第1室内熱交換器(7)および第2室内熱交換器(8)を順次通過し、室外熱交換器(4)において熱を放熱して凝縮させられる。ついで、冷媒は、減圧器(5)により減圧された後に、エバポレータ(6)において空気通路(24)を流れる空気から熱を奪って蒸発し、その後圧縮機(3)に戻される。エバポレータ(6)により熱を奪われた空気は、第2分岐通路(28)を通って空気吹き出し口(23)から車室内に吹き出される。
【0065】
冬季などの暖房時には、図5に示すように、切り替え部材(29)により第1分岐通路(27)が開かれるとともに第2分岐通路(28)が閉じられる。
【0066】
冷媒は、圧縮機(3)で圧縮された後に、一体型熱交換器(14)の第1室内熱交換器(7)において第1分岐通路(27)の第1通路部分(31)を流れる空気に熱を放熱して凝縮させられ、空気が加熱される。第1通路部分(31)を流れる間に加熱された空気は空気吹き出し口(23)から車室内に吹き出される。また、第1室内熱交換器(7)を通過した冷媒は第2室内熱交換器(8)を通過し、レシーバ(16)で気液分離された後に膨張弁(9)により減圧され、ついで室外熱交換器(4)で熱を奪って蒸発した後に圧縮機(3)に戻される。
【0067】
ここで、冬季などの暖房時には、室外熱交換器(4)において結露水が凍結するので、結露水の凍結が発生した場合、あるいは所定時間毎に、開閉部材(55)により暖気通路(51)が開かれるとともに、送風機(54)が作動させられる。すると、一体型熱交換器(14)の第1室内熱交換器(7)において第1分岐通路(27)の第1通路部分(31)を流れる空気に熱を放熱して凝縮させられた冷媒が、第2室内熱交換器(8)において第2通路部分(32)を流れる空気に熱を放熱して過冷却され、空気が加熱される。第2通路部分(32)を流れる間に加熱された空気は、送風機(54)により暖気通路(51)を通って室外熱交換器(4)の空気入り側に吹き出され、当該空気の熱によって、室外熱交換器(4)において凍結した結露水が解氷される。そして、第2室内熱交換器(8)において過冷却された冷媒が、レシーバ(16)で気液分離された後に膨張弁(9)により減圧され、ついで室外熱交換器(4)で熱を奪って蒸発した後に圧縮機(3)に戻される。
【0068】
冬季などの暖房時において、切り替え部材(29)の切り替え角度を調整することによって、第1分岐通路(27)および第2分岐通路(28)の両方を開いて両分岐通路(27)(28)に空気を流すとともに、両分岐通路(27)(28)を流れる空気の量を調整して車室内に吹き出される空気の温度が調節される場合、第1分岐通路(27)の第2通路部分(32)の下流端部が開かれるとともに、空気戻し通路(33)の上流端部および下流端部が閉じられることもある。
【0069】
除湿時には、上述した暖房時と同様に、切り替え部材(29)により第1分岐通路(27)が開かれるとともに第2分岐通路(28)が閉じられる。また、第1開閉部材(34)により第2通路部分(32)の下流端部が閉じられるとともに、空気戻し通路(33)の上流端部が開かれ、さらに第2開閉部材(35)により空気戻し通路(33)の下流端部が開かれる。
【0070】
冷媒は、圧縮機(3)で圧縮された後に、一体型熱交換器(14)の第1室内熱交換器(7)において第1分岐通路(27)の第1通路部分(31)を流れる空気に放熱して凝縮させられ、空気が加熱される。第1通路部分(31)を流れる間に加熱された空気は空気吹き出し口(23)から車室内に吹き出される。また、第1室内熱交換器(7)を通過した冷媒は第2室内熱交換器(8)を通過し、レシーバ(16)で気液分離された後に膨張弁(9)により減圧され、ついで室外熱交換器(4)で熱を奪って蒸発した後に圧縮機(3)に戻される。
【0071】
冬季などの除湿時には、室外熱交換器(4)において結露水が凍結することがある。この場合、上述した暖房時と同様に、結露水の凍結が発生した場合、あるいは所定時間毎に、開閉部材(55)により暖気通路(51)が開かれるとともに、送風機(54)が作動させられ、これにより室外熱交換器(4)において凍結した結露水が解氷される。
【0072】
上記3つの実施形態においては、室外熱交換器(4)は、冷房時に冷媒から熱を放熱して凝縮させるとともに、暖房時に冷媒から熱を奪って蒸発させるようになっているが、これに限定されるものではなく、冷房時に冷媒から熱を放熱して凝縮させる第1の室外熱交換器と、暖房時に冷媒から熱を奪って蒸発させる第2の室外熱交換器とが別々に設けられていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0073】
この発明による車両空調装置は、比較的廃熱の少ないハイブリッド自動車や電気自動車に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0074】
(1):ヒートポンプ式冷凍サイクル
(2)(40)(50):空調ケース
(3):圧縮機
(4):室外熱交換器
(5):第1減圧器
(6):エバポレータ
(7):第1室内熱交換器
(8):第2室内熱交換器
(9):膨張弁(第2減圧器)
(14):一体型熱交換器
(21)(22):空気吸入口
(23):空気吹き出し口
(24):空気通路
(27):第1分岐通路(第1通路部分)
(31):第1通路部分
(32):第2通路部分
(33):空気戻し通路
(34)(35):開閉部材
(41):連通路(第2通路部分)
(42):空気吸入口
(51):暖気通路
(54):送風機
(55):開閉部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、車室外に配置され、かつ冷房時に冷媒から熱を放熱させるとともに暖房時に冷媒に熱を受熱させる室外熱交換器、冷房時に室外熱交換器を通過した冷媒を減圧する第1減圧器、車室内に配置されかつ冷房時に第1減圧器で減圧された冷媒を蒸発させるエバポレータ、車室内に配置されかつ暖房時に圧縮機で圧縮された冷媒から熱を放熱して冷媒を凝縮させる第1室内熱交換器、暖房時に第1室内熱交換器を通過した冷媒を過冷却する第2室内熱交換器、および暖房時に第2室内熱交換器を通過した冷媒を減圧する第2減圧器を有するヒートポンプ式冷凍サイクルと、空気吸入口、車室内に空気を吹き出す空気吹き出し口、および空気吸入口と空気吹き出し口とを通じさせる空気通路を有する空調ケースとを備えており、室外熱交換器が、冷房時に圧縮機で圧縮された冷媒を凝縮させるとともに暖房時に第2減圧器で減圧された冷媒を蒸発させるようになされ、エバポレータが空調ケースの空気通路内に配置されている車両用空調装置であって、
冷凍サイクルの第1室内熱交換器と第2室内熱交換器とが一体化されることによって一体型熱交換器が形成されており、空調ケースにおけるエバポレータよりも下流側の部分に、一体型熱交換器の第1室内熱交換器が配置される第1通路部分と、第1通路部分とは隔てられかつ一体型熱交換器の第2室内熱交換器が配置される第2通路部分とが設けられている車両用空調装置。
【請求項2】
空調ケースに、第2通路部分における第2室内熱交換器よりも下流側の部分と、空気通路におけるエバポレータよりも上流側の部分とを通じさせる空気戻し通路が設けられ、暖房時に、第2室内熱交換器を通過した空気が空気戻し通路を通って空気通路におけるエバポレータよりも上流側の部分に送られるとともに、第1室内熱交換器を通過した空気が車室内に送られるようになされている請求項1記載の車両用空調装置。
【請求項3】
空調ケースに、空気戻し通路を開閉する開閉部材が設けられている請求項2記載の車両用空調装置。
【請求項4】
空調ケースの第2通路部分の一端部が車室外空気および車室内空気のうちのいずれか一方を吸い込む空気吸入口となっているとともに、他端部が空気通路におけるエバポレータよりも上流側の部分に通じさせられており、暖房時に、第2室内熱交換器を通過した空気が第2通路部分を通って空気通路におけるエバポレータよりも上流側の部分に送られるとともに、第1室内熱交換器を通過した空気が車室内に送られるようになされている請求項1記載の車両用空調装置。
【請求項5】
空調ケースに、第2通路部分を開閉する開閉部材が設けられている請求項4記載の車両用空調装置。
【請求項6】
空調ケースに、第2通路部分における第2室内熱交換器よりも下流側の部分と、室外熱交換器における空気入り側の部分とを通じさせる暖気通路が設けられ、暖房時に、第2室内熱交換器を通過した空気が暖気通路を通って室外熱交換器の空気入り側に送られるとともに、第1室内熱交換器を通過した空気が車室内に送られるようになされている請求項1記載の車両用空調装置。
【請求項7】
暖気通路に、第2室内熱交換器を通過した空気を室外熱交換器の空気入り側に送る送風機が設けられている請求項6記載の車両用空調装置。
【請求項8】
空調ケースに、暖気通路を開閉する開閉部材が設けられている請求項6または7記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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