説明

車両用緊急通報装置

【課題】本発明は、電話用アンテナを介して信号が送信できない場合であっても、当該信号を送信先に送信することができる、車両用緊急通報装置の提供を目的とする。
【解決手段】緊急時に電話用アンテナ10を介して信号を送信する通信モジュール40を備える車両用緊急通報装置であって、電話用アンテナ10を介して前記信号を送信できない場合、切替制御部30は前記信号を送信するためのアンテナを電話用アンテナ10から地上デジタル放送用アンテナ20に切り替えて、地上デジタル放送用アンテナ20を介して通信モジュール40が前記信号を送信することを特徴とする、車両用放送受信装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緊急時に電話用アンテナを介して信号を送信する車両用緊急通報装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、事故の状態に応じて、車載携帯電話に接続された複数の外部送受信アンテナあるいは車載携帯電話固有のアンテナを切り替えて通報する制御手段を備える、車両用緊急通報システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−353571号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述の従来技術のように電話用アンテナは緊急通報システムなどに使用されているが、車両の衝突時の衝撃によって電話用アンテナなどが破損すると、緊急時であるにもかかわらず緊急通報を行うことができなくなる。
【0004】
そこで、本発明は、電話用アンテナを介して緊急時の信号が送信できない状況であっても、当該信号を通報先に確実に送信することができる、車両用緊急通報装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明に係る車両用緊急通報装置は、
緊急時に電話用アンテナを介して信号を送信する車両用緊急通報装置であって、
前記電話用アンテナを介して前記信号を送信できない場合、前記電話用アンテナから切り替えられた地上デジタル放送用アンテナを介して前記信号を送信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、電話用アンテナを介して緊急時の信号が送信できない状況であっても、当該信号を通報先に確実に送信することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。本発明に係る車両用緊急通報装置は、例えば、メーデーシステムに用いられる。メーデーシステムは、衝突等の事故や急病や強盗などの緊急事態の発生時に、所定の通報先(例えば、警察、消防、病院、警備会社、緊急管理センター、ディーラー等)に自動的に緊急通報するシステムである。メーデーシステムは、例えば、現在の車両の位置情報、車両登録情報、音声情報、画像情報、異常情報などの緊急情報を所定の通報先に向けて電話用アンテナを介して無線送信するものである。また、メーデーシステムは、例えば、電話用アンテナを介して上記通報先等に配備の車外の通信装置からの音声情報、画像情報、遠隔操作制御信号などの情報を受信するものでもよい。
【実施例1】
【0008】
電話用アンテナを介して緊急通報を行うシステムにおいて、車両の衝突時の衝撃により、電話用アンテナを介した信号経路の故障(例えば、電話用アンテナ自体の破損や電話用アンテナに電気的に接続されるアンテナケーブルの断線など)が発生すると、電話用アンテナによって緊急通報ができなくなるおそれがある。
【0009】
そこで、実施例1では、そのような故障の際には、電話用アンテナから地上デジタルテレビ放送用アンテナに切り替えて緊急通報を行うこととしている。電話用アンテナの対応周波数が800MHz周辺で、地上デジタルテレビ放送用アンテナの対応周波数が700MHz程度まであるため、地上デジタルテレビ放送用アンテナを介して緊急情報を送信すると電話用アンテナに比べ性能は多少落ちるものの、通報自体は技術的に行うことができる。
【0010】
図1は、実施例1の車両用緊急通報装置のフローチャートである。図2は、実施例1の車両用緊急通報装置(以下、「車両用緊急通報装置1」という)のブロック図である。図2の(a)(b)は、アンテナの切替状態の違いを示している。以下、図2の説明後に、図1について説明する。
【0011】
車両用緊急通報装置1は、電話用アンテナ10と、地上デジタルテレビ放送用アンテナ(以下、「地デジ用アンテナ」という)20と、アンテナの切り替え制御を行う切替制御部30と、緊急時の情報を送受する電子機器である通信モジュール40と、地上デジタル放送を受信する地上デジタルテレビ放送用受信機(以下、「地デジ用受信機」という)50とを備える車載装置である。
【0012】
電話用アンテナ10は、車両に搭載されて車両の外側に設置された車外アンテナであって、例えば、車両のルーフパネルの上側(つまり、車室外側)に設置される。一方、地上デジタルテレビ放送用アンテナは、地上波デジタルテレビ放送帯(470〜770MHz)の受信に適した車載アンテナであって、例えば、車室内に設置されたり、ガラスアンテナとしてフロントウィンドシールドやリヤガラス等の窓ガラスに設けられたりする。
【0013】
切替制御部80は、所定の信号(例えば、電話用アンテナ10の異常信号)に基づいて、アンテナの切り替え制御を行う制御装置であって、通信モジュール40に接続すべきアンテナを選択的に切り替え、地デジ用受信機50に接続すべきアンテナを選択的に切り替える。図2(a)は、電話用アンテナ10と通信モジュール40とが電気的に接続されている状態、且つ、地デジ用アンテナ20と地デジ用受信機50とが電気的に接続されている状態を示している。図2(b)は、電話用アンテナ10が通信モジュール40にも地デジ用受信機50にも電気的に接続されていない状態、且つ、地デジ用アンテナ20が地デジ用受信機50に電気的に接続されずに通信モジュール40に電気的に接続されている状態を示している。
【0014】
図1において、通常時(デフォルト時)、切替制御部30は図2(a)の切替状態である(ステップ10)。緊急通報を行う状況が発生したことに伴い出力される制御信号(例えば、衝撃加速度の検知信号)が検出されると(ステップ12)、通信モジュール40は、電話用アンテナ10に関する断線検知を実行する(ステップ14)。電話用アンテナは、車両のルーフ上などの車両の外板に設置されていると、車両の衝突時のロールオーバーによって破損しやすいため、その破損状況を検知するためである。断線ありと検知されると、切替制御部30は、通信モジュール40の接続先を電話用アンテナ10から地デジ用アンテナ50に切り替えるとともに、地デジ用受信機50をアンテナに非接続にする(ステップ16)。通信モジュール40は、ステップ14において断線なしと検知された場合には電話用アンテナ10を介して緊急情報を送信し、ステップ16においてアンテナ切り替えが行われた場合には地デジ用アンテナ20を介して緊急情報を送信する(ステップ18)。
【0015】
このように、車両の衝突等によって電話用アンテナ自体やその接続ケーブルに異常が発生しても、電話の使用周波数帯に近い帯域をカバーする地デジ用アンテナに切り替えることができるので、緊急時に確実に所定の通報先に緊急情報を通報することができるようになる。
【実施例2】
【0016】
地上デジタルテレビ放送の高い周波数のチャンネルを受信する場合、800MHz帯のアンテナである電話用アンテナは、地デジ用アンテナより受信感度が良い場合がある。そこで、実施例2では、ユーザが帯域の高い地上デジタルテレビ放送のチャンネルを選局した場合、地デジ用受信機の接続先を電話用アンテナに切り替えることにより、満足度の高いシステムの提供が可能となる。
【0017】
図3は、実施例2の車両用緊急通報装置のフローチャートである。図4は、実施例2の車両用緊急通報装置(以下、「車両用緊急通報装置2」という)のブロック図である。図4の(a)(b)(c)は、アンテナの切替状態の違いを示している。図4(a)(c)については、図2と同様である。図4(b)は、電話用アンテナ10と地デジ用受信機50とが電気的に接続されている状態、且つ、地デジ用アンテナ20が通信モジュール40にも地デジ用受信機50にも電気的に接続されていない状態を示している。また、車両用緊急通報装置2の構成については、実施例1と同様の構成であるため、同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0018】
図3において、通常時(デフォルト時)、切替制御部30は図4(a)の切替状態である(ステップ20)。地上デジタルテレビ放送の受信放送局をユーザが変更したことが検出され(ステップ22)、地上デジタル放送帯の中の高い帯域(例えば、700MHz)が受信されると(ステップ24)、切替制御部30は、通信モジュール40をアンテナに非接続にするとともに、地デジ用受信機50の接続先を地デジ用アンテナ50から電話用アンテナ10に切り替える(ステップ26)。なお、ステップ24,26において、2つのアンテナのうち受信レベルの良いほうに切り替えることによって、ユーザが選択した受信放送局により最適なアンテナを選択することができる。その後、緊急通報を行う状況が発生したことに伴い出力される制御信号(例えば、衝撃加速度の検知信号)が検出されると(ステップ28)、通信モジュール40は、電話用アンテナ10に関する断線検知を実行する(ステップ30)。ステップ30において、地デジ用受信機50が、電話用アンテナ10に関する断線検知を実行してもよい。断線ありと検知されると、切替制御部30は、通信モジュール40の接続先を地デジ用アンテナ50に切り替えるとともに、地デジ用受信機50をアンテナに非接続にする(ステップ32)。断線なしの検知されると、切替制御部30は、通信モジュール40の接続先を電話用アンテナ10に切り替えるとともに、地デジ用受信機50の接続先を地デジ用アンテナ20に切り替える(ステップ34)。通信モジュール40は、ステップ30において断線ありと検知された場合には地デジ用アンテナ20を介して緊急情報を送信し、ステップ30において断線なしと検知された場合には電話用アンテナ10を介して緊急情報を送信する(ステップ36)。
【0019】
このように、ユーザの選択により電話用アンテナで地上デジタル放送を受信している状況で、車両の衝突等によって電話用アンテナ自体やその接続ケーブルに異常が発生しても、電話の使用周波数帯に近い帯域をカバーする地デジ用アンテナに切り替えることができるので、緊急時に確実に所定の通報先に緊急情報を通報することができるようになる。
【実施例3】
【0020】
車両に備え付けの電話用アンテナを介して緊急通報を行うシステムにおいて、車両の衝突時の衝撃により、当該電話用アンテナを介した信号経路の故障が発生すると、当該電話用アンテナによって緊急通報ができなくなるおそれがある。
【0021】
そこで、実施例3では、そのような故障の際には、通信モジュール40は、車両に乗っているユーザの携帯電話にbluetooth(登録商標)接続(以下、「BT接続」という)等の無線通信接続し、その携帯電話から緊急通報を行う。
【0022】
図5は、実施例3の車両用緊急通報装置のフローチャートである。図6は、実施例3の車両用緊急通報装置(以下、「車両用緊急通報装置3」という)のブロック図である。図6の(a)(b)は、アンテナの切替状態の違いを示している。図6(a)は、電話用アンテナ10と通信モジュール40とが電気的に接続されている状態を示している。図6(b)は、通信モジュール40と携帯電話60とがBT接続されている状態を示している。車両用緊急通報装置3の構成については、実施例1と同様の構成であるため、同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0023】
図5において、通常時(デフォルト時)、切替制御部30は図6(a)の切替状態である(ステップ40)。緊急通報を行う状況が発生したことに伴い出力される制御信号(例えば、衝撃加速度の検知信号)が検出されると(ステップ42)、通信モジュール40は、電話用アンテナ10に関する断線検知を実行する(ステップ44)。断線ありと検知されると、切替制御部30は、通信モジュール40の接続先を電話用アンテナ10からBT付の携帯電話60に切り替えて、携帯電話60とBT接続する(ステップ46)。通信モジュール40は、ステップ44において断線なしと検知された場合には電話用アンテナ10を介して緊急情報を送信し、ステップ46においてアンテナ切り替えが行われた場合には携帯電話60を介して緊急情報を送信する(ステップ48)。
【0024】
このように、車両の衝突等によって電話用アンテナ自体やその接続ケーブルに異常が発生しても、車両に備え付けのアンテナからユーザの携帯電話のアンテナに切り替えることができるので、緊急時に確実に所定の通報先に緊急情報を通報することができるようになる。
【実施例4】
【0025】
車両に備え付けの電話用アンテナを介して緊急通報を行うシステムにおいて、車両の衝突時の衝撃により、当該電話用アンテナを介した信号経路の故障が発生すると、当該電話用アンテナによって緊急通報ができなくなるおそれがある。
【0026】
そこで、実施例4では、そのような故障の際には、車両に備え付けの電話用アンテナから地デジ用アンテナに切り替えて緊急通報を行い、切り替え後の地デジ用アンテナも断線等の異常が生じている場合には、ユーザの携帯電話から通報を行うこととしている。
【0027】
図7は、実施例4の車両用緊急通報装置のフローチャートである。図8は、実施例4の車両用緊急通報装置(以下、「車両用緊急通報装置4」という)のブロック図である。図8の(a)(b)は、アンテナの切替状態の違いを示している。車両用緊急通報装置4の構成については、実施例1,3と同様の構成であるため、同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0028】
図7において、通常時(デフォルト時)、切替制御部30は図8(a)の切替状態である(ステップ50)。緊急通報を行う状況が発生したことに伴い出力される制御信号(例えば、衝撃加速度の検知信号)が検出されると(ステップ52)、通信モジュール40は、電話用アンテナ10に関する断線検知を実行する(ステップ54)。断線ありと検知されると、切替制御部30は、通信モジュール40の接続先を電話用アンテナ10から地デジ用アンテナ50に切り替えるとともに、地デジ用受信機50をアンテナに非接続にする(ステップ56)。通信モジュール40の接続先を地デジ用アンテナ20に切り替えた後、通信モジュール40は、地デジ用アンテナ20に関する断線検知を実行する(ステップ58)。断線ありと検知されると、切替制御部30は、通信モジュール40の接続先を地デジ用アンテナ20から携帯電話60に切り替える(ステップ60)。通信モジュール40は、ステップ54で断線なしと検知された場合には電話用アンテナ10を介して緊急情報を送信し、ステップ58で断線なしと検知された場合には地デジ用アンテナ20を介して緊急情報を送信し、ステップ60においてBT接続された場合には携帯電話60を介して緊急情報を送信する(ステップ62)。
【0029】
このように、車両の衝突等によって電話用アンテナ自体や地デジ用アンテナやそれらの接続ケーブルに異常が発生しても、通信可能な適切なアンテナに切り替えることができるので、緊急時に確実に所定の通報先に緊急情報を通報することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施例1の車両用緊急通報装置のフローチャートである。
【図2】実施例1の車両用緊急通報装置のブロック図である。
【図3】実施例2の車両用緊急通報装置のフローチャートである。
【図4】実施例2の車両用緊急通報装置のブロック図である。
【図5】実施例3の車両用緊急通報装置のフローチャートである。
【図6】実施例3の車両用緊急通報装置のブロック図である。
【図7】実施例4の車両用緊急通報装置のフローチャートである。
【図8】実施例4の車両用緊急通報装置のブロック図である。
【符号の説明】
【0031】
10 電話用アンテナ
20 地上デジタルテレビ放送用アンテナ
30 切替制御部
40 通信モジュール
50 地上デジタルテレビ放送用受信機
60 携帯電話

【特許請求の範囲】
【請求項1】
緊急時に電話用アンテナを介して信号を送信する車両用緊急通報装置であって、
前記電話用アンテナを介して前記信号を送信できない場合、前記電話用アンテナから切り替えられた地上デジタルテレビ放送用アンテナを介して前記信号を送信することを特徴とする、車両用緊急通報装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−122910(P2010−122910A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−296028(P2008−296028)
【出願日】平成20年11月19日(2008.11.19)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】