説明

車両用荷重伝達部構造

【課題】車両衝突時に車両部材のエッジとパネル部材の面との接触部の応力集中を緩和し、パネル部材又は車両部材のエッジの局所変形を抑制する車両用荷重伝達部構造を得る。
【解決手段】ベルトラインリインフォース40の後端のエッジ部40Aと対向するドアインナパネル28の後壁部28Bに、エッジ部40A側に半球状に突出する複数の凸状ビード44が形成されている。複数の凸状ビード44の中心位置は、ベルトラインリインフォース40のエッジ部40Aの車両幅方向両側に交互にずれて配置されており、隣り合う凸状ビード44の外縁部44Bの一部が接触している。車両側面視にて複数の凸状ビード44の外周面44Aは、エッジ部40Aと近接している。車両の前突時にベルトラインリインフォース40が後退してエッジ部40Aが複数の凸状ビード44に接触し、凸状ビード44が変形して隣り合う凸状ビード44同士が干渉する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両衝突時に車両部材のエッジからパネル部材の面に荷重が伝達され、又はパネル部材の面から車両骨格部材のエッジに荷重が伝達される車両用荷重伝達部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、車両側部のサイドドアの内部に、車両前後方向に沿ってベルトラインリインフォースを配設した構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−119919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1による場合、車両の前面衝突時(以下、単に「前突時」という。)にベルトラインリインフォースの後端からの荷重を受けるサイドドアの受け面の受圧面積が小さいと、サイドドアの受け面が局所変形してセンタピラーに食い込む可能性がある。サイドドアの受け面がセンタピラーに食い込むと、サイドドアの開扉性を低下させる可能性がある。
【0005】
また、例えば、車両の前突時にフロントピラーロアが後退し、フロントピラーロアがロッカの車両前面の幅方向両側のエッジに接触すると、ロッカのエッジ等が局所変形する可能性がある。
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、車両衝突時に車両部材のエッジとパネル部材の面との接触部の応力集中を緩和し、パネル部材又は車両部材のエッジの局所変形を抑制することができる車両用荷重伝達部構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明に係る車両用荷重伝達部構造は、車両衝突時に車両部材のエッジからパネル部材の面に荷重が伝達され、又はパネル部材の面から車両部材のエッジに荷重が伝達される車両用荷重伝達部構造であって、前記パネル部材の面における前記車両部材のエッジと対向する部位に設けられ、前記エッジ側に突出して前記エッジと近接又は接触すると共に、中心位置が前記エッジの両側に交互にずれて配置され、かつ、外周面の一部が互いに近接又は接触して配置される複数の凸状ビードを有するものである。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の車両用荷重伝達部構造において、前記車両部材が、車両側部のサイドドアの内部に車両前後方向に沿って配置されるドアベルトラインリインフォースであり、車両の前面衝突時に前記ドアベルトラインリインフォースの後端のエッジが、前記サイドドアの内部の前記面に設けられた複数の前記凸状ビードに接触するものである。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1に記載の車両用荷重伝達部構造において、前記車両部材が、車両側部の下部に車両前後方向に沿って配置されるロッカであり、車両の前面衝突時にサイドアウタパネル又はフロントピラーロアの前記面の幅方向両側に設けられた複数の前記凸状ビードが、前記ロッカの車両前面の幅方向両側のエッジに接触するものである。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の車両用荷重伝達部構造において、前記凸状ビードが、半球状ビードであるものである。
【0011】
請求項1記載の本発明によれば、パネル部材の面における車両部材のエッジと対向する部位に、車両部材のエッジ側に突出して当該エッジと近接又は接触する複数の凸状ビードを有しており、複数の凸状ビードの中心位置が車両部材のエッジの両側に交互にずれて配置されている。車両衝突時には、車両部材のエッジが複数の凸状ビードと接触することにより、車両部材のエッジからパネル部材の面に荷重が伝達され、又はパネル部材の面から車両部材のエッジに荷重が伝達される。その際、車両部材のエッジと接触することで複数の凸状ビードが変形し、さらに複数の凸状ビードの外周面の一部が互いに近接又は接触して配置されていることにより、隣り合う凸状ビード同士が干渉する。これによって、車両衝突時に車両部材のエッジとパネル部材の面との接触部の応力集中が緩和され、パネル部材又は車両部材のエッジの局所変形を抑制することができる。
【0012】
請求項2記載の本発明によれば、車両側部のサイドドアの内部に車両前後方向に沿ってドアベルトラインリインフォースが配置されており、車両の前面衝突時にドアベルトラインリインフォースの後端のエッジが、サイドドアの内部のパネル部材の面に設けられた複数の凸状ビードに接触する。これにより、複数の凸状ビードが変形し、隣り合う凸状ビード同士が干渉することによって、ドアベルトラインリインフォースの後端のエッジによるサイドドアのパネル部材の面への応力集中が緩和される。このため、パネル部材の面の局所変形が抑制され、サイドドアの局所変形によるピラーへの食い込みが抑制される。従って、サイドドアの開扉性を確保することができる。
【0013】
請求項3記載の本発明によれば、車両側部の下部に車両前後方向に沿ってロッカが配置されており、車両の前面衝突時にサイドアウタパネル又はフロントピラーロアの面の幅方向両側に設けられた複数の凸状ビードが、ロッカの車両前面の幅方向両側のエッジに接触する。これにより、複数の凸状ビードが変形し、隣り合う凸状ビード同士が干渉することによって、サイドアウタパネル又はフロントピラーロアとロッカのエッジとの接触部の応力集中が緩和される。このため、ロッカのエッジ等の局所変形が抑制され、ロッカのエッジの向きを保ちながら、サイドアウタパネル又はフロントピラーロアからロッカへ荷重を伝達させることができる。
【0014】
請求項4記載の本発明によれば、凸状ビードが半球状ビードであり、車両衝突時に車両部材のエッジと半球状ビードとが接触したときに効率的に応力を分散させることができる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、請求項1記載の本発明に係る車両用荷重伝達部構造は、車両衝突時に車両部材のエッジとパネル部材の面との接触部の応力集中を緩和し、パネル部材又は車両部材のエッジの局所変形を抑制することができるという優れた効果を有する。
【0016】
請求項2記載の本発明に係る車両用荷重伝達部構造は、車両の前突時にドアベルトラインリインフォースの後端のエッジによるサイドドアの局所変形が抑制され、サイドドアのピラーへの食い込みが抑制されることによりサイドドアの開扉性を確保することができるという優れた効果を有する。
【0017】
請求項3記載の本発明に係る車両用荷重伝達部構造は、車両の前突時にロッカのエッジ等の局所変形が抑制され、ロッカのエッジの向きを保ちながら、サイドアウタパネル又はフロントピラーロアからロッカへ荷重を伝達させることができるという優れた効果を有する。
【0018】
請求項4記載の本発明に係る車両用荷重伝達部構造は、車両衝突時に車両部材のエッジと複数の凸状ビードが接触したときに効率的に応力を分散させることができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1実施形態に係る車両用荷重伝達部構造が適用された車両の側部を示す側面図である。
【図2】図1中の2−2線に沿った車両用荷重伝達部構造のフロントサイドドアの後端部付近を示す横断面図である。
【図3】図2に示すドアベルトラインリインフォースの後端部と凸状ビード付近を示す拡大横断面図である。
【図4】車両の前突時のドアベルトラインリインフォースの後端部におけるフロントサイドドアの車両幅方向の寸法と応力との関係を示すグラフである。
【図5】車両の前突時の初期状態におけるドアベルトラインリインフォースの後端部と凸状ビードを示す縦断面図である。
【図6】図5中の3−3線に沿ったドアベルトラインリインフォースの後端部と凸状ビードを示す側面図である。
【図7】車両の前突時の後半状態におけるドアベルトラインリインフォースの後端部と凸状ビードを示す縦断面図である。
【図8】図7中の4−4線に沿ったドアベルトラインリインフォースの後端部と凸状ビードを示す側面図である。
【図9】第2実施形態に係る車両用荷重伝達部構造に用いられるフロントピラーロアとロッカの前端部付近を示す平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図1〜図8を用いて、本発明に係る車両用荷重伝達部構造の第1実施形態について説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印OUTは車両幅方向外側を示している。
【0021】
図1には、本実施形態に係る車両用荷重伝達部構造が適用された車両10の側部が示されている。図1に示されるように、車体側部12の前部、中間部、後部には、略車両上下方向に延在するフロントピラー14、センタピラー16及びリヤピラー18が形成されてこの順に配設されている。フロントピラー14、センタピラー16及びリヤピラー18は、ドア開口部12A、12Bにおける車両前後方向の前後縁部を成している。ドア開口部12Aの前縁部を成すフロントピラー14と、ドア開口部12Aの後縁部を成すセンタピラー16との間には、車両用のサイドドアとしてのフロントサイドドア20が配設されている。また、ドア開口部12Bの前縁部を成すセンタピラー16と、ドア開口部12Bの後縁部を成すリヤピラー18との間には、リヤサイドドア22が配設されている。車体側部12のフロントサイドドア20及びリヤサイドドア22の各ドア本体部の上縁に沿ったラインがベルトライン24(図1では、フロント側のみ図示)である。
【0022】
図2には、図1中の2−2線に沿った断面図(車両用荷重伝達部構造25の全体構成を示す横断面図)が示されている。また、図3には、車両用荷重伝達部構造25が適用されるドアベルトラインリインフォース(車両部材)の後端部付近が示されている。図2に示されるように、フロントサイドドア20は、車室外側に配置されるドアアウタパネル26と、車室内側に配置されてヘミング加工によりドアアウタパネル26に一体化されて閉断面部20Aを構成するドアインナパネル28と、を含んで構成されている。ドアインナパネル28は、横断面視で車幅方向外側が開放された略ハット形状とされている(図2ではドアインナパネル28の後端部のみ図示している)。ドアインナパネル28の後端部には、車両幅方向内側に配置された内側壁部28Aと、内側壁部28Aの後端から車両幅方向外側に延びた後壁部28B等が設けられている。
【0023】
フロントサイドドア20の車両後方側には、車両骨格部材であるセンタピラー16が略車両上下方向に沿って延在されており、このセンタピラー16は、車両幅方向外側に配置される断面略ハット状のピラーアウタパネル30と、車両幅方向内側に配置される断面略ハット状のピラーインナパネル32とによって閉断面構造とされている。ピラーアウタパネル30とピラーインナパネル32の前端部及び後端部には、それぞれ前後一対の前端フランジ部30A、32Aと、後端フランジ部30B、32Bが形成されている。また、ピラーアウタパネル30とピラーインナパネル32とによって閉断面構造に構成される断面内には、ピラーアウタパネル30の内壁面に沿ってピラーリインフォース34が配置されている。ピラーリインフォース34の前端部及び後端部には、前後一対の前端フランジ部34Aと後端フランジ部34Bが形成されている。そして、前端フランジ部34Aと後端フランジ部34Bがピラーアウタパネル30及びピラーインナパネル32の前端フランジ部30A、32Aと後端フランジ部30B、32Bとの間に挟持された状態で各フランジ部が接合されている。
【0024】
センタピラー16のピラーアウタパネル30の前壁部30Cとフロントサイドドア20のドアインナパネル28の後壁部28Bとは車両前後方向に対向して配置されており、両者の間には所定の隙間が形成されている。ピラーインナパネル32の車両幅方向内側(車室側)には、内側壁部28Aを覆うドアトリム36が配設されている。
【0025】
フロントサイドドア20の内部でドアインナパネル28側には、車両部材(車両補強部材)としてのベルトラインリインフォース40(インパクトバーともいう)が配設されている。ベルトラインリインフォース40は、金属製の板状部材からなり、図示を省略するが、板状部材の車両上下方向の中間部に車両平面視にて凹凸状に屈曲された屈曲部を備え、その凹凸状の屈曲部が長手方向(車両前後方向)に沿って延在されている。ベルトラインリインフォース40の前端部と後端部は、それぞれリインフォースエクステンション(図示省略)を介してドアインナパネル28の内側壁部28Aに固定されている。本実施形態では、ベルトラインリインフォース40は、通常の鋼板よりも引っ張り強度が高い所謂高張力鋼板、又はこのような高張力鋼板よりも更に引っ張り強度が高い所謂超高張力鋼板でプレス成形されたものが用いられている。なお、ベルトラインリインフォース40は、高張力鋼板や超高張力鋼板に限定されるものではなく、アルミニウム合金等、他の材料から形成されたものであっても良い。
【0026】
図2及び図3に示されるように、本実施形態の車両用荷重伝達部構造25は、ベルトラインリインフォース40の車両後方側のドアインナパネル28に設けられている。車両用荷重伝達部構造25は、ベルトラインリインフォース40の後端の左右両側のエッジ部40Aと対向するドアインナパネル(パネル部材)28の後壁部28Bの内壁面に、エッジ部40A側に突出する複数の凸状ビード44を備えている。本実施形態では、凸状ビード44は半球状のビードからなり、金属製のドアインナパネル28を凸状に加工することにより形成されている。車両側面視にて複数の凸状ビード44の外周面44Aは、ベルトラインリインフォース40の後端のエッジ部40Aと近接するように配置されている。
【0027】
図5に示されるように、車両正面視にて(車両前方から見て)複数の凸状ビード44の中心位置がベルトラインリインフォース40の後端のエッジ部40Aの車両幅方向両側に交互にずれて配置されている。また、車両正面視にて複数の凸状ビード44は、外縁部44B(外周面44Aの周縁部)の一部が互いに接触するように配置されている。言い換えると、複数の凸状ビード44は、外縁部44Bの一部が交互に隣接して配置されている。また、ベルトラインリインフォース40のエッジ部40Aは、車両幅方向両側の複数の凸状ビード44の隣接する側の外周面44A(外周面44Aの内側部位)に近接するように配置されている。
【0028】
車両10の前突時には、ベルトラインリインフォース40が後退してベルトラインリインフォース40の後端のエッジ部40Aがドアインナパネル28の後壁部28Bに設けられた複数の凸状ビード44に接触し、ベルトラインリインフォース40のエッジ部40Aから複数の凸状ビード44を介してドアインナパネル28の後壁部28Bに荷重が伝達される。その際、複数の凸状ビード44が変形(圧壊)し、凸状ビード44同士が干渉するようになっている。
【0029】
なお、車両側面視にて複数の凸状ビード44の外周面44Aが、ベルトラインリインフォース40の後端のエッジ部40Aと接触するように配置される構成でもよい。また、車両正面視にて複数の凸状ビード44の外縁部44Bの一部が互いに近接するように配置される構成でもよい。
【0030】
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0031】
図1、図3及び図6等に示されるように、車両10の前突時には、フロントピラー14の後退によりベルトラインリインフォース40が後退し、ベルトラインリインフォース40の後端のエッジ部40Aがドアインナパネル28の後壁部28Bに設けられた複数の凸状ビード44に接触する。これによって、ベルトラインリインフォース40のエッジ部40Aから複数の凸状ビード44を介してドアインナパネル28の後壁部28Bに荷重が伝達される。
【0032】
図5に示されるように、車両10の前突の初期状態では、複数の凸状ビード44の中心位置がベルトラインリインフォース40のエッジ部40Aの車両幅方向両側に交互にずれて配置されていることにより、ベルトラインリインフォース40のエッジ部40Aが車両幅方向両側の複数の凸状ビード44の隣接する側の外周面44A(外周面44Aの内側部位)に接触する。これによって、ベルトラインリインフォース40のエッジ部40Aは、複数の凸状ビード44の外周面の接触点から各々逆向きの反力を受ける(図5中の矢印A、A´を参照)。このとき、反力は複数の凸状ビード44の外周面の法線方向に作用している。このため、ベルトラインリインフォース40のエッジ部40Aが複数の凸状ビード44の外周面44Aに接触する位置は、左右両側の複数の凸状ビード44に跨った車両上下方向に沿った中央部Bの位置から外れない。また、ベルトラインリインフォース40のエッジ部40Aからの入力により、複数の凸状ビード44が変形する。
【0033】
図7及び図8に示されるように、車両10の前突の後半状態では、複数の凸状ビード44の変形が進行し(複数の凸状ビード44が圧壊し)、複数の凸状ビード44の外縁部44Bの一部が互いに接触して配置されていることにより、隣り合う凸状ビード44同士が干渉し合う。これによって、図7中の矢印に示されるように、凸状ビード44の外周面44A同士の接触面で集中荷重が分散される。そして、凸状ビード44の変形が半球の外側に向かうことで、応力集中が緩和される。
【0034】
図4には、ベルトラインリインフォース40のエッジ部40Aと対向するドアインナパネル28の後壁部28Bの車両幅方向の寸法に対する応力分布のグラフが示されている。このグラフ中の実線は本実施形態の複数の凸状ビード44を設けた場合、グラフ中の点線は凸状ビード44を設けない場合である。このグラフに示されるように、ベルトラインリインフォース40のエッジ部40A側に突出する複数の凸状ビード44を設けることにより、凸状ビード44がない場合に比べて、エッジ部40Aからドアインナパネル28の後壁部28Bに作用する応力が小さくなると共に、応力集中が緩和されている。
【0035】
これによって、ベルトラインリインフォース40のエッジ部40Aによるドアインナパネル28の後壁部28Bの局所変形を抑制することができる。このため、ドアインナパネル28の後壁部28Bの局所変形によるセンタピラー16への食い込みが抑制され、フロントサイドドア20の開扉性を確保することができる。
【0036】
また、凸状ビード44を半球状とすることで、ベルトラインリインフォース40のエッジ部40Aと接触したときに効率的に応力を分散させることができる。
【0037】
なお、第1実施形態では、複数の凸状ビード44がドアインナパネル28の後壁部28Bに設けられているが、これに限定されず、ベルトラインリインフォース40の後端のエッジ部40Aと近接又は接触する構成であれば、例えば、ロックリインフォース又はドアインナパッチなどに複数の凸状ビードを設けてもよい。
【0038】
次に、図9を用いて、本発明に係る車両用荷重伝達部構造の第2実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0039】
図9に示されるように、車両50の側部の前方側には、フロントピラー(図1参照)の下部に略車両上下方向に沿ってフロントピラーロア52が配設されている。車両50の側部の下部には、フロントピラーロア52の車両後方側に車両前後方向に沿って車両部材(車両骨格部材)としてのロッカ54が延在されており、ロッカ54の前端部54Aはフロントピラーロア52の下端部に連結されている。
【0040】
ロッカ54は、車両外側に配置された断面略ハット状のアウタパネル56と、車両内側に配置された断面略ハット状のインナパネル58と、を備えており、アウタパネル56とインナパネル58の上下一対のフランジ部56A、58Aを接合することで、閉断面構造とされている。
【0041】
フロントピラーロア52のパネル部材としての前壁部52Aの車両前方側には、前壁部52Aと所定の間隔をおいてタイヤホイール60が配設されている。本実施形態では、アウタパネル56の前端エッジ部(角部)56B及びインナパネル58の前端エッジ部(角部)58Bの車両前方側に車両用荷重伝達部構造62が設けられている。車両用荷重伝達部構造62は、アウタパネル56の前端エッジ部56B及びインナパネル58の前端エッジ部58Bと対向するフロントピラーロア52の前壁部52Aの内側面(後面)に、前端エッジ部56B、58B側にそれぞれ突出する複数の凸状ビード64、66を備えている。本実施形態では、凸状ビード64、66は第1実施形態の凸状ビード44と同様に半球状のビードからなり、フロントピラーロア52の前壁部52Aをプレス成形することにより形成されている。
【0042】
車両正面視にて複数の凸状ビード64、66の中心位置は、それぞれアウタパネル56の前端エッジ部56B及びインナパネル58の前端エッジ部58Bの車両幅方向両側に交互にずれて配置されている。また、車両側面視にて複数の凸状ビード64、66の外周面は、それぞれアウタパネル56の前端エッジ部56B及びインナパネル58の前端エッジ部58Bと近接するように配置されている。また、図示を省略するが、車両正面視にて複数の凸状ビード64、66は、外縁部(外周面の周縁部)の一部が互いに接触するように配置されている。
【0043】
なお、車両側面視にて複数の凸状ビード64、66の外周面が、それぞれアウタパネル56の前端エッジ部56B及びインナパネル58の前端エッジ部58Bと接触するように配置される構成でもよい。
【0044】
このような構成では、車両50の前突時にタイヤホイール60に矢印C方向の力が作用し、タイヤホイール60がフロントピラーロア52に当り、フロントピラーロア52が後退してフロントピラーロア52の前壁部52Aに設けられた複数の凸状ビード64、66がロッカ54の前端エッジ部56B、58Bに当たる。その際、複数の凸状ビード64、66が変形(圧壊)し、隣り合う凸状ビード64、66同士が干渉し合う。これにより、凸状ビード64、66とロッカ54の前端エッジ部56B、58Bとの接触部の応力集中が緩和され、ロッカ54の前端エッジ部56B、58Bの局所変形(局所折れ)等が抑制される。このため、フロントピラーロア52の前壁部52Aからロッカ54に対して、前端エッジ部56B、58Bの向きを保ちながら荷重を伝達させることができる。
【0045】
なお、第2実施形態では、フロントピラーロア52の前壁部52Aに複数の凸状ビード64、66が設けられているが、これに限定されず、ロッカ54の前端エッジ部56B、58Bに対向する部材であれば、例えば、サイドアウタパネル(サイメンアウタとも言う。)などに複数の凸状ビード64、66を設けてもよい。
【0046】
なお、第1及び第2実施形態では、凸状ビードは金属製であるが、これに限定されず、例えば樹脂製でもよい。
【0047】
また、第1及び第2実施形態では、複数の凸状ビード44、64、66は半球状であるが、これに限定されず、車両部材のエッジから作用する応力を分散できる形状であれば、例えば、円錐状(断面視にて外周面が略三角形状)、断面視にて外周面が略逆U字状、断面視にて外周面が略楕円状のビードなどでもよい。
【0048】
また、第1及び第2実施形態では、凸状ビードの個数は3個に限定されるものではなく、適宜変更可能である。また、車両部材のエッジからの入力状況に応じて、凸状ビードの大きさを変更してもよい。例えば、車両衝突時の応力集中の高い部位には大きな凸状ビードを設けることにより、車両部材のエッジとの接触面に応じて、応力集中の緩和状態をコントロールすることができる。
【0049】
また、第1及び第2実施形態では、車両正面視にて複数の凸状ビード44、64、66の中心位置が車両部材のエッジの両側に交互にずれて配置されているが、本発明の「交互」には、凸状ビードが車両部材のエッジの両側に1個ずつ交互にずれて配置された場合の他、凸状ビードが車両部材のエッジの両側に複数個ずつ(例えば2個ずつ、又は3個ずつ)交互にずれて配置された場合を含む。
【0050】
また、変形例として、例えば、車両のフロアのクロスメンバとロッカとの付き当て部、車両の前部のクラッシュボックスとバンパリインフォースとの付き当て部など、車両部材のエッジとパネル部材の面との付き当て部に本発明の車両用荷重伝達部構造を適用することもできる。また、本発明の「車両衝突時」は「車両の前突時」に限定されるものではなく、側面衝突時又は後面衝突時にも本発明の車両用荷重伝達部構造を適用可能である。
【符号の説明】
【0051】
10 車両
12 車体側部
16 センタピラー
20 フロントサイドドア(サイドドア)
25 車両用荷重伝達部構造
28 ドアインナパネル(パネル部材)
28B 後壁部(面)
40 ベルトラインリインフォース
40A エッジ部(エッジ)
44 凸状ビード
50 車両
52 フロントピラーロア(パネル部材)
52A 前壁部(面)
54 ロッカ
56 アウタパネル
56B 前端エッジ部(エッジ)
58 インナパネル
58B 前端エッジ部(エッジ)
62 車両用荷重伝達部構造
64 凸状ビード
66 凸状ビード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両衝突時に車両部材のエッジからパネル部材の面に荷重が伝達され、又はパネル部材の面から車両部材のエッジに荷重が伝達される車両用荷重伝達部構造であって、
前記パネル部材の面における前記車両部材のエッジと対向する部位に設けられ、前記エッジ側に突出して前記エッジと近接又は接触すると共に、中心位置が前記エッジの両側に交互にずれて配置され、かつ、外周面の一部が互いに近接又は接触して配置される複数の凸状ビードを有する車両用荷重伝達部構造。
【請求項2】
前記車両部材が、車両側部のサイドドアの内部に車両前後方向に沿って配置されるドアベルトラインリインフォースであり、
車両の前面衝突時に前記ドアベルトラインリインフォースの後端のエッジが、前記サイドドアの内部の前記面に設けられた複数の前記凸状ビードに接触する請求項1に記載の車両用荷重伝達部構造。
【請求項3】
前記車両部材が、車両側部の下部に車両前後方向に沿って配置されるロッカであり、
車両の前面衝突時にサイドアウタパネル又はフロントピラーロアの前記面の幅方向両側に設けられた複数の前記凸状ビードが、前記ロッカの車両前面の幅方向両側のエッジに接触する請求項1に記載の車両用荷重伝達部構造。
【請求項4】
前記凸状ビードが、半球状ビードである請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の車両用荷重伝達部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−96639(P2012−96639A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245351(P2010−245351)
【出願日】平成22年11月1日(2010.11.1)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】