説明

車両用蓄熱器

【課題】車両への搭載性に優れ、かつ、高い断熱性能が得られる蓄熱器を提供する。
【解決手段】車両用蓄熱器10は、扁平な端面を有する柱形状のタンク1と、タンク1の側面及び端面に貼り付けられる複数の真空断熱材2と、を備える。タンク1の側面において、曲率半径が真空断熱材2の許容曲げ半径未満になる部分を二箇所以下にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの冷却水を貯留・保温する車両用蓄熱器に関する。
【背景技術】
【0002】
高温になったエンジンの冷却水を蓄熱器に貯留・保温しておき、エンジンを再始動する時に蓄熱器に貯留してある高温の冷却水をエンジンの冷却水回路に戻すことで、エンジンの暖機時間を短縮する技術が実用化されている(特許文献1)。このような蓄熱器を備えた車両では、燃費、暖房促進、排気性能向上といった効果が期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−250043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在実用化されている蓄熱器は、内タンク及び内タンクを内部に収容する外タンクを有する二重構造の蓄熱器である。二重構造の蓄熱器では、内タンクと外タンクとの間の空間を真空にすることによって、内タンク内に貯留される冷却水からの放熱を抑制している。
【0005】
しかしながら、二重構造の蓄熱器は、内タンク及び外タンクに作用する圧力を均等にするために各タンクの形状を円柱形状にする必要があり、デッドスペースが大きくなって、車両への搭載性が悪かった。タンクの容量は、エンジンの排気量、冷却水量等に応じて3〜5リットルの容量が必要であり、現状の車両の空きスペースに円筒形状かつこのような大容量の蓄熱器を搭載することは難しい。
【0006】
本発明は、このような技術的課題に鑑みてなされたもので、車両への搭載性に優れ、かつ、高い断熱性能が得られる蓄熱器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様によれば、エンジンの冷却水を貯留する車両用蓄熱器であって、扁平な端面を有する柱形状のタンクと、前記タンクの側面及び端面に貼り付けられる複数の真空断熱材と、を備え、前記タンクの側面において、曲率半径が前記真空断熱材の許容曲げ半径未満になる部分が二箇所以下である、ことを特徴とする車両用蓄熱器が提供される。
【発明の効果】
【0008】
上記態様によれば、タンクを扁平な端面を有する柱形状にしたことによって、車両への搭載性が向上する。さらに、タンクの側面において、曲率半径が真空断熱材の許容曲げ半径未満になる部分が2個以下になるようにしたことによって、真空断熱材のつなぎ目の数を少なくすることができ、蓄熱器の断熱性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施形態に係る車両用蓄熱器の全体構成を示した図である。
【図2】タンク内部の通路を示した図である。
【図3】タンク内部の通路を示した図である。
【図4】入口パイプの詳細を示した図である。
【図5】タンクに貼り付けられる真空断熱材をタンクから分離して示した図である。
【図6】タンクの側面の断面を示した図である。
【図7】車両への搭載例を示した図である。
【図8】本発明の第2実施形態を示した図である。
【図9】本発明の第3実施形態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0011】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る車両用蓄熱器10の全体構成を示している。蓄熱器10は、タンク1と、真空断熱材2と、入口パイプ3と、出口パイプ4とを有する。タンク1は、全体が真空断熱材2によって覆われているので、図中、タンク1を破線で表している。
【0012】
タンク1は、扁平な端面を有する柱形状の樹脂性のタンクであり、内部にエンジンの冷却水を貯留する空間を有する。ここで「柱形状」とは、平行な端面と、両端面に対して垂直で、かつ、両端面の縁部を接続する湾曲及び/又は屈曲した側面とで構成される立体形状を指す。
【0013】
図2及び図3に示すように、タンク1は、つづら折り形状(蛇行形状)の通路11と、つづら折り形状の通路11に接続し、つづら折り形状の通路11の外側に沿って配置されるL字形の戻り通路12とを内部に有する。タンク1の一方の側の端面には、入口パイプ3及び出口パイプ4が接続される入口開口13及び出口開口14が形成されている。なお、図2は、タンク内部の通路が分かりやすいようにタンク1の側面の一部を取り除いた状態を示しており、図3は、タンク1の内部の通路をさらに簡略化して示している。
【0014】
真空断熱材2は、多孔質素材を金属フィルムで包み、内部を真空にしたシート状の断熱材であり、タンク1の側面及び端面に隙間なく貼り付けられる。真空断熱材2は、気圧によって押し潰されることなく、高い断熱性能を実現する。
【0015】
ただし、真空断熱材2は、予め定められた許容曲げ半径よりも曲率半径が小さくなるような曲げを行うと、内部の多孔質素材が押し潰され、その部分の断熱性能が低下してしまう。したがって、タンク1の端面に貼り付けられる真空断熱材2は一枚のシートで構成されるが、タンク1の側面に貼り付けられる真空断熱材2は複数のシートで構成され、曲率半径が許容曲げ半径未満となる部分にシートとシートとのつなぎ目が位置するようにすることで、真空断熱材2に曲率半径が許容まげ半径未満となるような曲げが生じないようにする。
【0016】
入口パイプ3及び出口パイプ4は、一箇所にまとめて、かつ、同一方向に延びるように設けられ、それぞれ図示しない配管を介してエンジンの冷却水回路に接続される。
【0017】
図4は、入口パイプ3の詳細な構成を示している。本実施形態のように入口開口13の径と入口パイプ3に接続される配管の径とが異なる場合は、入口開口13の径から配管の径まで径が連続的に変化する移行部31を入口パイプ3の内部に形成し、冷却水が入口パイプ3を流れる時の抵抗を低減する。なお、図4は入口パイプ3の構成を示しているが、出口パイプ4の構成も同様である。
【0018】
図5は、タンク1に貼り付けられる真空断熱材2をタンク1から分離して示している。タンク1に貼り付けられる真空断熱材2は、タンク1の側面に貼り付けられる矩形の二枚の側面用シート21、22と、タンク1の端面に貼り付けられるタンク1の側面と略同一形状の二枚の端面用シート23、24とで構成される。
【0019】
図6は、タンク1の側面の断面を示している。
【0020】
タンク1の側面は、曲率半径が許容曲げ半径未満となる部分を二箇所有している。言い換えれば、タンク1の側面は、二箇所を除き、曲率半径が全て許容曲げ半径以上である。具体的には、図中の曲率半径R1〜R5のうち、R1及びR3は許容曲げ半径よりも小さく、R2、R4及びR5は許容曲げ半径よりも大きい。
【0021】
また、タンク1の側面は、対向し、かつ、同一方向に湾曲する部分を有している。この例では、曲率半径R2の部分と曲率半径R4の部分が、対向し、かつ、同一方向に湾曲している。タンク1の側面をこのような形状とすることで、タンク1の全体形状が一方向に反った形状(弓形)になっている。
【0022】
側面用シート21、22は、タンク1の側面を曲率半径が許容曲げ半径よりも小さくなる部分(曲率半径R1の部分と曲率半径R2の部分)を境にして二つの領域に分け、これら2つの領域に対応する形状にそれぞれ形成される。側面用シート21、22は、タンク1の側面に貼り付けるために、タンク1の側面に沿って曲げられるが、その曲率半径が許容曲げ半径よりも小さくなることはない。
【0023】
続いて、上記構成を備えたことによる作用効果について説明する。
【0024】
まず、上記構成によれば、タンク1の形状を扁平な柱形状に、特に、一方向に反った形状にしたことによって、蓄熱器10を、タイヤハウス、バンパーの隙間、フェンダーの内側、コンプレッサ、モータ等の円筒形部材の周囲の空間等の様々な隙間に配置することが可能になり、車両への搭載性が向上する。
【0025】
図7は、蓄熱器10をタイヤハウス内に配置した例を示している。上記構成によればこのような形状が特殊な空間であっても蓄熱器10を配置することができ、さらに、エンジンルーム内の熱の影響を受けにくく、蓄熱器10の劣化を抑えることができるという利点がある。
【0026】
また、タンク1に貯留された冷却水の熱は、真空断熱材2のシートとシートとのつなぎ目から外部に逃げる。したがって、高い断熱性能を得るためには、シートとシートとのつなぎ目の数をなるべく少なくするのがよい。
【0027】
この点に関しては、上記構成によれば、タンク1の側面において、曲率半径が許容曲げ半径未満となる部分が二箇所しかなく、シートとシートとのつなぎ目の数が少なくなるので、つなぎ目から逃げる熱量を少なくして、高い断熱性能を実現することができる。
【0028】
また、タンク1内の通路の一部をつづら折り形状の通路11としたことにより、タンク1の形状自由度が向上する。また、この形状によれば、タンク1内に貯留された高温の冷却水をエンジンに戻す際には、高温の冷却水とタンク1内に流入する低温の冷却水との混合を抑えながら、高温の冷却水がエンジンに戻されるので、高温の冷却水の排出効率を向上させ、エンジンの暖機時間を短縮することができる。
【0029】
また、つづら折り形状の通路11にL字形の戻り通路12を接続し、入口パイプ3と出口パイプ4とが隣接して略同じ位置に配置されるようにした。これによって入口パイプ3及び出口パイプ4の周辺から逃げる熱量も少なくなり、蓄熱器10の断熱性能をさらに向上させることができる。
【0030】
<第2実施形態>
図8は第2実施形態に係る蓄熱器10を示している。第2実施形態では、タンク1の側面において曲率半径が許容曲げ半径未満となる部分を一箇所とし(R7<許容曲げ半径)、タンク1の側面には一枚の真空断熱材2のシートのみが巻き付けられるようにし、当該シートの両端が、曲率半径が許容曲げ半径未満となる部分でつなぎ合わされるようにした点が第1実施形態と相違する。その他の構成は第1実施形態と同じである。
【0031】
本構成によれば、シートとシートとのつなぎ目の数が第1実施形態よりも少なくなり、より一層断熱性能を向上させることができる。
【0032】
<第3実施形態>
図9は第3実施形態に係る蓄熱器10を示している。第3実施形態では、タンク1の側面の曲率半径を全周にわたって許容曲げ半径以上とし、曲率半径が許容曲げ半径未満となる部分が存在しないようにした点が第1実施形態と相違する。一枚の真空断熱材2のシートのみがタンク1の側面に巻き付けられる点は第2実施形態と同じであるが、当該シートの端部をつなぎ合わせる部位はタンク1の側面の任意の位置でよい。
【0033】
本構成によれば、第2実施形態と同様に、シートとシートとのつなぎ目の数が第1実施形態よりも少なくなり、より一層断熱性能を向上させることができる。
【0034】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例を示したものであり、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0035】
1 タンク
2 真空断熱材
3 入口パイプ
4 出口パイプ
10 蓄熱器
11 つづら折り形状の通路
12 戻り通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの冷却水を貯留する車両用蓄熱器であって、
扁平な端面を有する柱形状のタンクと、
前記タンクの側面及び端面に貼り付けられる複数の真空断熱材と、
を備え、
前記タンクの側面において、曲率半径が前記真空断熱材の許容曲げ半径未満になる部分が二箇所以下である、
ことを特徴とする車両用蓄熱器。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用蓄熱器であって、
前記タンクの側面は、対向し、かつ、同一方向に湾曲する部分を有する、
ことを特徴とする車両用蓄熱器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両用蓄熱器であって、
前記タンク内にはつづら折り形状の通路が形成される、
ことを特徴とする車両用蓄熱器。
【請求項4】
請求項3に記載の車両用蓄熱器であって
前記つづら折り形状の通路の一方の端部に接続する入口パイプと、
前記つづら折り形状の通路の他方の端部から前記入口パイプに向けて延びる戻り通路と、
前記戻り通路に接続され、前記入口パイプに隣接して配置される出口パイプと、
備えたことを特徴とする車両用蓄熱器。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一つに記載の車両用蓄熱器であって、
前記車両用蓄熱器は、前記車両のタイヤハウス内に配置される、
ことを特徴とする車両用蓄熱器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2013−2346(P2013−2346A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133647(P2011−133647)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)