車両用衝撃吸収体
【課題】凹状リブで補強された部分の衝撃に対する応力とブロー成形時のブロー比により薄肉となる部分の衝撃に対する応力とを均衡させ、全体としての衝撃吸収性を向上させて所期の衝撃吸収効果を得ることができる車両用衝撃吸収体を提供する。
【解決手段】衝撃吸収体1は、熱可塑性プラスチックをブロー成形して中空状に形成されていて、間隔をあけて互いに対向する一方の壁4および他方の壁5を有している。一方の壁4および他方の壁5をそれぞれ窪ませて互いの先端部を溶着部8として一体化した凹状リブ6,7を複数分散状に形成してある。凹状リブ6,7の窪み方向と交差する方向に延びた突起10からなる座屈誘導部9を形成してある。
【解決手段】衝撃吸収体1は、熱可塑性プラスチックをブロー成形して中空状に形成されていて、間隔をあけて互いに対向する一方の壁4および他方の壁5を有している。一方の壁4および他方の壁5をそれぞれ窪ませて互いの先端部を溶着部8として一体化した凹状リブ6,7を複数分散状に形成してある。凹状リブ6,7の窪み方向と交差する方向に延びた突起10からなる座屈誘導部9を形成してある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両構成部材、例えばドアあるいはボディーサイドパネルに内設することによって搭乗員が車両構成部材の内壁へ衝突するような車両内部で発生する衝撃、または他の車両との衝突のような外部から受ける衝撃を吸収するための車両用衝撃吸収体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用衝撃吸収体であって、熱可塑性樹脂をブロー成形して中空二重壁構造で中空部を有し、その表面壁と裏面壁から凹状リブを形成してその互いの先端部を接合して一体化し、衝撃吸収性の向上を企図したものは、特開2004−149074号公報に記載されている。また、円筒状の衝撃エネルギー吸収部材に破壊のトリガーとして、切れ込みまたはノッチ形状を形成し、安定した自己破壊を生じさせるものとしては、特開2000−193008号公報に記載されており、衝撃吸収体が押し潰された際にその壁面の一部を破裂誘導部より早期に破壊させて開口させることによって安定した衝撃吸収性能を発揮させることができる車両用衝撃吸収体は特開2006−96307号公報に記載されている。さらに、衝突エネルギ吸収用のリブを備えたトリム本体のエネルギ吸収効果の向上のためリブ側壁から所定の部位にリブの座屈変形を誘起させる剛性変化部を設けた構成については特開平8−11542号公報に記載されている。
【特許文献1】特開2004−149074号公報
【特許文献2】特開2000−193008号公報
【特許文献3】特開2006−96307号公報
【特許文献4】特開平8−11542号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この種の車両用衝撃吸収体は、ドアあるいはボディーサイドパネルなどの車両構成部材に内設するものであるが、前掲の特開2004−149074号公報および特開2006−96307号公報に示すように、車両用衝撃吸収体は熱可塑性プラスチックをブロー成形して中空状に形成され、その表面壁と裏面壁から凹状リブを形成してその互いの先端部を接合して一体化したものであるから、凹状リブで補強された部分の衝撃に対する応力と、ブロー成形時のブロー比により薄肉となる部分の衝撃に対する応力とに差が生じることは避けられないものである。このため、この種の車両用衝撃吸収体にあっては、衝撃を受けた際に全体として均等な変形が進行しないことに起因して衝撃吸収性がかえって低下する現象がみられ、所期の衝撃吸収効果が得られないことがその後判明している。また、特開平8−11542号公報に示すものにあっては、トリム本体が衝撃を受けた際の初期反力を小さく抑えることができるとしても、初期反力のタイミングを一定にすることはできないところから、衝撃吸収効果が劣ることは否めない。
【0004】
そこで、本発明は、熱可塑性プラスチックをブロー成形して中空状に形成され、その一方の壁および他方の壁をそれぞれ窪ませて互いの先端部を溶着一体化した凹状リブに窪み方向と交差する方向に延びた突起、凹みその他の変形部からなる座屈誘導部を形成したことにより、凹状リブで補強された部分の衝撃に対する応力とブロー成形時のブロー比により薄肉となる部分の衝撃に対する応力とを均衡させ、全体としての衝撃吸収性を向上させて所期の衝撃吸収効果を得ることができる車両用衝撃吸収体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成する本発明の車両用衝撃吸収体は、車両構成部材に内設することによって車両の内部または外部からの衝撃を吸収するための車両用衝撃吸収体であって、衝撃吸収体は、熱可塑性プラスチックをブロー成形して中空状に形成されていて、間隔をあけて互いに対向する一方の壁および他方の壁を有しており、前記一方の壁および他方の壁をそれぞれ窪ませて互いの先端部を溶着一体化した凹状リブを複数分散状に形成してあり、前記複数分散状に形成されている凹状リブの少なくとも一部には、凹状リブの窪み方向と交差する方向に延びた突起、凹みその他の変形部からなる座屈誘導部を形成してあることを特徴とするものである。
【0006】
本発明の車両用衝撃吸収体においては、凹状リブを、一方の壁または他方の壁を対向する壁方向に窪ませてその先端部を対向する壁に溶着一体化して形成したものとしてもよい。また、座屈誘導部を形成する突起または凹みとしては、凹状リブの窪み方向と交差する方向の長さが1.0mm〜6.0mm、凹状リブの窪み方向の長さが1.0mm〜4.0mm、深さが1.0mm〜4.0mmとするのが好適である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、熱可塑性プラスチックをブロー成形して中空状に形成され、その一方の壁および他方の壁をそれぞれ窪ませて互いの先端部を溶着一体化したものにおいて、凹状リブで補強された部分の衝撃に対する応力とブロー成形時のブロー比により薄肉となる部分の衝撃に対する応力とを均衡させ、全体としての衝撃吸収性を向上させて所期の衝撃吸収効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は本発明の一実施の形態に係る車両用衝撃吸収体を一部破断して示す斜視図、図2は図1のA−A線拡大断面図、図3は図2のB−B断面図、図4は図2に対応して作用を説明するための断面図、図5は本発明の一実施の形態に係る車両用衝撃吸収体の荷重と歪みとの関係を示すグラフ、図6は本発明に係る車両用衝撃吸収体を車両のドアパネルに内設した態様を示す断面図、図7は本発明に係る車両用衝撃吸収体を自動車のリヤーピラーに内設した態様を示す断面図、図8は本発明に係る車両用衝撃吸収体をフロントバンパーのバンパーフェイシアとバンパービームの間に介在させた態様の一部破断斜視図である。また、図9は本発明の他実施の形態に係る車両用衝撃吸収体を示す斜視図、図10は図9のC−C線拡大断面図、図11は本発明のさらに他実施の形態に係る車両用衝撃吸収体を示す斜視図、図12は図11のD−D線拡大断面図、図13は図11のE−E線拡大断面図、図14は図13に対応して作用を説明するための断面図である。
【0009】
図1ないし図4において、1は衝撃吸収体である。この衝撃吸収体1は、熱可塑性プラスチックをブロー成形して中空状に成形されたものであって、2は中空部、3は周壁面、4は一方の壁、5は他方の壁である。一方の壁4および他方の雄壁5は間隔をあけて互いに対向しており、中空状の衝撃吸収体1を形成する前記一方の壁4および他方の壁5の両方をそれぞれ他方へ向けて窪ませて形成された対をなす凹状リブ6,7を多数分散状に有している。そして、前記一方の壁4および他方の壁5をそれぞれ窪ませて形成した凹状リブ6,7はその互いの先端部を溶着して一体化して厚肉の溶着部8を形成している。
【0010】
前記複数分散状に形成されている凹状リブ6,7には、その凹状リブ6側に座屈誘導部9を形成してあり、その座屈誘導部9は凹状リブ6の窪み方向と交差する方向(図示の実施の形態では直交する方向)に延びかつ凹状リブ6内に凸となっている突起10を複数連鎖状に全周にわたって形成してなるものである。この座屈誘導部9は図示のような突起のほか、ノッチ形状、凹みその他の適宜の変形部からなる形態によって構成することができる。衝撃吸収体1において凹状リブ6,7の一部に前記座屈誘導部9をできるだけ均等に分散するように設けるとよいが、場合によっては多数分散状に形成されている凹状リブ6,7の全部に座屈誘導部9を設けてもよい。なお、座屈誘導部9を構成する突起10は複数連鎖状でなく一連に連続する凸状に形成してもよく、突起10を全周にわたって形成する場合には衝撃吸収体1の厚み方向と直交する面において同一平面とするほか、意図的に同一平面からずらすこともできる。
【0011】
衝撃吸収体1の平気肉厚は0.5mm〜2.5mmであり、座屈誘導部9を形成する突起10は、凹状リブ6の窪み方向と交差する方向の長さが1.0mm〜6.0mm、凹状リブ6の窪み方向の長さが1.0mm〜4.0mm、深さが1.0mm〜4.0mmとする。凹状リブ6の窪み方向と交差する方向の長さが1.0mm未満であると座屈を誘導する効果が得られず、また凹状リブ6の窪み方向の長さが6.0mmを超えるか窪み方向に4mmを超えると衝撃を受ける応力としては小さくなり過ぎて衝撃吸収効果が不足する。突起10の深さが4mmを超えると凹状リブ6の強度低下をきたし、ブロー成形時に金型の操作も複雑になる。座屈誘導部9を凹部で形成する場合も同様である。
【0012】
本発明に係る衝撃吸収体1は、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン、ABS樹脂等のスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタート等のポリエステル系樹脂、ポリアミドなど、剛性等の機械的高度の大きい樹脂で構成する。特に、座屈誘導部9を好適に機能させる観点からポリプロピレン、ABS樹脂、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、ポリフェニレンエーテル樹脂が好適であり、さらにこれらのブレンド物またはポリマーアロイとすることが好ましい。衝撃吸収体1をポリエチレンに比べて剛性の高いポリプロピレン系樹脂で構成すると、衝撃吸収体1自体の機械的強度と荷重負荷における初期の衝撃吸収特性のバランスを保つことができる点で有利である。
【0013】
本発明に係る衝撃吸収体1に衝撃が加わってそれが一定の限界を超えた場合には、図4に示すように凹状リブ6,7に設けてある座屈誘導部9が他の部分より先に凹状リブ6,7に座屈が生じる。このため、衝撃吸収体1が熱可塑性プラスチックをブロー成形して中空状に形成されていて、ブロー比によって薄肉部分を有していても、凹状リブ6,7で補強された部分の衝撃に対する応力とブロー成形時のブロー比により薄肉となる部分の衝撃に対する応力とが均衡して、全体としての衝撃吸収性を向上させて所期の衝撃吸収効果を得ることができる。
【0014】
図5のグラフは本発明に係る衝撃吸収体の圧縮荷重に対する変位(圧縮歪みの変化)を計測した結果を概略的に示している。すなわち、グラフに実線で示すように、本発明に係る衝撃吸収体1においては、衝撃吸収体1が押し潰された際に座屈誘導部9を設けてあることによって、安定した衝撃吸収性能を発揮させることができるのに対し、座屈誘導部9を有しない従来のものでは、グラフに破線で示すように荷重の値のバラツキが現れて、衝撃吸収性能を調整することが困難であるうえ所期の衝撃吸収効果を得ることができない。
【0015】
なお、本発明に係る車両用衝撃吸収体は、凹状リブを、一方の壁または他方の壁を対向する壁方向に窪ませてその先端部を対向する壁に溶着一体化して形成したものとしてもよいが、これについては図示していない。
【0016】
図6ないし図8は、本発明に係る車両用衝撃吸収体の使用例を示している。すなわち、図6はドアトリム11に、図7は自動車のリヤピラー12に、図8はフロントバンパー13のバンパーフェイシアとバンパービームの間にそれぞれ内設した例である。図7においてAは乗車者の頭部を示している。
【0017】
図9および図10には本発明の他の実施の形態に係る車両用衝撃吸収体を示している。すなわち、この実施の形態においては、衝撃吸収体1がその一方の壁4と他方の壁5との間の高さの大なる部分と小なる部分とを一体にブロー成形されているものである。そして、ブロー成形時のブロー比が大きくなる高さの大なる隅部aが薄肉になるので、その薄肉となる隅部aを有する高さの大なる部分の衝撃に対する初期荷重カーブの変動が起きる現象をともなうが、この実施の形態の衝撃吸収体1の薄肉となる側である一方の壁4の高さの小なる部分の凹状リブ6には座屈誘導部9を形成してあるので、この実施の形態のような衝撃吸収体1においても全体としての衝撃に対する荷重カーブの変動が抑制され、所期の衝撃吸収効果を得ることができる。
【0018】
図11および図14に示す本発明のさらに他の実施の形態に係る車両用衝撃吸収体においては、衝撃吸収体1の高さの大なる部分と小なる部分の境界部分に凹状リブ6,7を形成してあるので、その部分の凹状リブ6の立ち上がり壁bの衝撃に対する補強効果も加わって、衝撃吸収体1の高さの大なる部分と小なる部分の衝撃時の荷重カーブの変動が効果的に抑制され、いっそう優れた衝撃吸収効果を期待することができるものとなる(図14参照)。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施の形態に係る車両用衝撃吸収体を一部破断して示す斜視図である。
【図2】図1のA−A線拡大断面図である。
【図3】図2のB−B断面図である。
【図4】図2に対応して作用を説明するための断面図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係る車両用衝撃吸収体の荷重と歪みとの関係を示すグラフである。
【図6】本発明に係る車両用衝撃吸収体を車両のドアパネルに内設した態様を示す断面図である。
【図7】本発明に係る車両用衝撃吸収体を自動車のリヤーピラーに内設した態様を示す断面図である。
【図8】本発明に係る車両用衝撃吸収体をフロントバンパーのバンパーフェイシアとバンパービームの間に装着した態様の一部破断斜視図である。
【図9】本発明の他実施の形態に係る車両用衝撃吸収体を示す斜視図である。
【図10】図9のC−C線拡大断面図である。
【図11】本発明のさらに他実施の形態に係る車両用衝撃吸収体を示す斜視図である。
【図12】図11のD−D線拡大断面図である。
【図13】図11のE−E線拡大断面図である。
【図14】図13に対応して作用を説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 衝撃吸収体
2 中空部
3 周壁面
4 一方の壁
5 他方の壁
6,7 凹状リブ
8 溶着部
9 座屈誘導部
10 突起
11 ドアトリム
12 リヤピラー
13 フロントバンパー
A 頭部
a 隅部
b 立ち上がり壁
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両構成部材、例えばドアあるいはボディーサイドパネルに内設することによって搭乗員が車両構成部材の内壁へ衝突するような車両内部で発生する衝撃、または他の車両との衝突のような外部から受ける衝撃を吸収するための車両用衝撃吸収体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用衝撃吸収体であって、熱可塑性樹脂をブロー成形して中空二重壁構造で中空部を有し、その表面壁と裏面壁から凹状リブを形成してその互いの先端部を接合して一体化し、衝撃吸収性の向上を企図したものは、特開2004−149074号公報に記載されている。また、円筒状の衝撃エネルギー吸収部材に破壊のトリガーとして、切れ込みまたはノッチ形状を形成し、安定した自己破壊を生じさせるものとしては、特開2000−193008号公報に記載されており、衝撃吸収体が押し潰された際にその壁面の一部を破裂誘導部より早期に破壊させて開口させることによって安定した衝撃吸収性能を発揮させることができる車両用衝撃吸収体は特開2006−96307号公報に記載されている。さらに、衝突エネルギ吸収用のリブを備えたトリム本体のエネルギ吸収効果の向上のためリブ側壁から所定の部位にリブの座屈変形を誘起させる剛性変化部を設けた構成については特開平8−11542号公報に記載されている。
【特許文献1】特開2004−149074号公報
【特許文献2】特開2000−193008号公報
【特許文献3】特開2006−96307号公報
【特許文献4】特開平8−11542号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この種の車両用衝撃吸収体は、ドアあるいはボディーサイドパネルなどの車両構成部材に内設するものであるが、前掲の特開2004−149074号公報および特開2006−96307号公報に示すように、車両用衝撃吸収体は熱可塑性プラスチックをブロー成形して中空状に形成され、その表面壁と裏面壁から凹状リブを形成してその互いの先端部を接合して一体化したものであるから、凹状リブで補強された部分の衝撃に対する応力と、ブロー成形時のブロー比により薄肉となる部分の衝撃に対する応力とに差が生じることは避けられないものである。このため、この種の車両用衝撃吸収体にあっては、衝撃を受けた際に全体として均等な変形が進行しないことに起因して衝撃吸収性がかえって低下する現象がみられ、所期の衝撃吸収効果が得られないことがその後判明している。また、特開平8−11542号公報に示すものにあっては、トリム本体が衝撃を受けた際の初期反力を小さく抑えることができるとしても、初期反力のタイミングを一定にすることはできないところから、衝撃吸収効果が劣ることは否めない。
【0004】
そこで、本発明は、熱可塑性プラスチックをブロー成形して中空状に形成され、その一方の壁および他方の壁をそれぞれ窪ませて互いの先端部を溶着一体化した凹状リブに窪み方向と交差する方向に延びた突起、凹みその他の変形部からなる座屈誘導部を形成したことにより、凹状リブで補強された部分の衝撃に対する応力とブロー成形時のブロー比により薄肉となる部分の衝撃に対する応力とを均衡させ、全体としての衝撃吸収性を向上させて所期の衝撃吸収効果を得ることができる車両用衝撃吸収体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成する本発明の車両用衝撃吸収体は、車両構成部材に内設することによって車両の内部または外部からの衝撃を吸収するための車両用衝撃吸収体であって、衝撃吸収体は、熱可塑性プラスチックをブロー成形して中空状に形成されていて、間隔をあけて互いに対向する一方の壁および他方の壁を有しており、前記一方の壁および他方の壁をそれぞれ窪ませて互いの先端部を溶着一体化した凹状リブを複数分散状に形成してあり、前記複数分散状に形成されている凹状リブの少なくとも一部には、凹状リブの窪み方向と交差する方向に延びた突起、凹みその他の変形部からなる座屈誘導部を形成してあることを特徴とするものである。
【0006】
本発明の車両用衝撃吸収体においては、凹状リブを、一方の壁または他方の壁を対向する壁方向に窪ませてその先端部を対向する壁に溶着一体化して形成したものとしてもよい。また、座屈誘導部を形成する突起または凹みとしては、凹状リブの窪み方向と交差する方向の長さが1.0mm〜6.0mm、凹状リブの窪み方向の長さが1.0mm〜4.0mm、深さが1.0mm〜4.0mmとするのが好適である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、熱可塑性プラスチックをブロー成形して中空状に形成され、その一方の壁および他方の壁をそれぞれ窪ませて互いの先端部を溶着一体化したものにおいて、凹状リブで補強された部分の衝撃に対する応力とブロー成形時のブロー比により薄肉となる部分の衝撃に対する応力とを均衡させ、全体としての衝撃吸収性を向上させて所期の衝撃吸収効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は本発明の一実施の形態に係る車両用衝撃吸収体を一部破断して示す斜視図、図2は図1のA−A線拡大断面図、図3は図2のB−B断面図、図4は図2に対応して作用を説明するための断面図、図5は本発明の一実施の形態に係る車両用衝撃吸収体の荷重と歪みとの関係を示すグラフ、図6は本発明に係る車両用衝撃吸収体を車両のドアパネルに内設した態様を示す断面図、図7は本発明に係る車両用衝撃吸収体を自動車のリヤーピラーに内設した態様を示す断面図、図8は本発明に係る車両用衝撃吸収体をフロントバンパーのバンパーフェイシアとバンパービームの間に介在させた態様の一部破断斜視図である。また、図9は本発明の他実施の形態に係る車両用衝撃吸収体を示す斜視図、図10は図9のC−C線拡大断面図、図11は本発明のさらに他実施の形態に係る車両用衝撃吸収体を示す斜視図、図12は図11のD−D線拡大断面図、図13は図11のE−E線拡大断面図、図14は図13に対応して作用を説明するための断面図である。
【0009】
図1ないし図4において、1は衝撃吸収体である。この衝撃吸収体1は、熱可塑性プラスチックをブロー成形して中空状に成形されたものであって、2は中空部、3は周壁面、4は一方の壁、5は他方の壁である。一方の壁4および他方の雄壁5は間隔をあけて互いに対向しており、中空状の衝撃吸収体1を形成する前記一方の壁4および他方の壁5の両方をそれぞれ他方へ向けて窪ませて形成された対をなす凹状リブ6,7を多数分散状に有している。そして、前記一方の壁4および他方の壁5をそれぞれ窪ませて形成した凹状リブ6,7はその互いの先端部を溶着して一体化して厚肉の溶着部8を形成している。
【0010】
前記複数分散状に形成されている凹状リブ6,7には、その凹状リブ6側に座屈誘導部9を形成してあり、その座屈誘導部9は凹状リブ6の窪み方向と交差する方向(図示の実施の形態では直交する方向)に延びかつ凹状リブ6内に凸となっている突起10を複数連鎖状に全周にわたって形成してなるものである。この座屈誘導部9は図示のような突起のほか、ノッチ形状、凹みその他の適宜の変形部からなる形態によって構成することができる。衝撃吸収体1において凹状リブ6,7の一部に前記座屈誘導部9をできるだけ均等に分散するように設けるとよいが、場合によっては多数分散状に形成されている凹状リブ6,7の全部に座屈誘導部9を設けてもよい。なお、座屈誘導部9を構成する突起10は複数連鎖状でなく一連に連続する凸状に形成してもよく、突起10を全周にわたって形成する場合には衝撃吸収体1の厚み方向と直交する面において同一平面とするほか、意図的に同一平面からずらすこともできる。
【0011】
衝撃吸収体1の平気肉厚は0.5mm〜2.5mmであり、座屈誘導部9を形成する突起10は、凹状リブ6の窪み方向と交差する方向の長さが1.0mm〜6.0mm、凹状リブ6の窪み方向の長さが1.0mm〜4.0mm、深さが1.0mm〜4.0mmとする。凹状リブ6の窪み方向と交差する方向の長さが1.0mm未満であると座屈を誘導する効果が得られず、また凹状リブ6の窪み方向の長さが6.0mmを超えるか窪み方向に4mmを超えると衝撃を受ける応力としては小さくなり過ぎて衝撃吸収効果が不足する。突起10の深さが4mmを超えると凹状リブ6の強度低下をきたし、ブロー成形時に金型の操作も複雑になる。座屈誘導部9を凹部で形成する場合も同様である。
【0012】
本発明に係る衝撃吸収体1は、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン、ABS樹脂等のスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタート等のポリエステル系樹脂、ポリアミドなど、剛性等の機械的高度の大きい樹脂で構成する。特に、座屈誘導部9を好適に機能させる観点からポリプロピレン、ABS樹脂、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、ポリフェニレンエーテル樹脂が好適であり、さらにこれらのブレンド物またはポリマーアロイとすることが好ましい。衝撃吸収体1をポリエチレンに比べて剛性の高いポリプロピレン系樹脂で構成すると、衝撃吸収体1自体の機械的強度と荷重負荷における初期の衝撃吸収特性のバランスを保つことができる点で有利である。
【0013】
本発明に係る衝撃吸収体1に衝撃が加わってそれが一定の限界を超えた場合には、図4に示すように凹状リブ6,7に設けてある座屈誘導部9が他の部分より先に凹状リブ6,7に座屈が生じる。このため、衝撃吸収体1が熱可塑性プラスチックをブロー成形して中空状に形成されていて、ブロー比によって薄肉部分を有していても、凹状リブ6,7で補強された部分の衝撃に対する応力とブロー成形時のブロー比により薄肉となる部分の衝撃に対する応力とが均衡して、全体としての衝撃吸収性を向上させて所期の衝撃吸収効果を得ることができる。
【0014】
図5のグラフは本発明に係る衝撃吸収体の圧縮荷重に対する変位(圧縮歪みの変化)を計測した結果を概略的に示している。すなわち、グラフに実線で示すように、本発明に係る衝撃吸収体1においては、衝撃吸収体1が押し潰された際に座屈誘導部9を設けてあることによって、安定した衝撃吸収性能を発揮させることができるのに対し、座屈誘導部9を有しない従来のものでは、グラフに破線で示すように荷重の値のバラツキが現れて、衝撃吸収性能を調整することが困難であるうえ所期の衝撃吸収効果を得ることができない。
【0015】
なお、本発明に係る車両用衝撃吸収体は、凹状リブを、一方の壁または他方の壁を対向する壁方向に窪ませてその先端部を対向する壁に溶着一体化して形成したものとしてもよいが、これについては図示していない。
【0016】
図6ないし図8は、本発明に係る車両用衝撃吸収体の使用例を示している。すなわち、図6はドアトリム11に、図7は自動車のリヤピラー12に、図8はフロントバンパー13のバンパーフェイシアとバンパービームの間にそれぞれ内設した例である。図7においてAは乗車者の頭部を示している。
【0017】
図9および図10には本発明の他の実施の形態に係る車両用衝撃吸収体を示している。すなわち、この実施の形態においては、衝撃吸収体1がその一方の壁4と他方の壁5との間の高さの大なる部分と小なる部分とを一体にブロー成形されているものである。そして、ブロー成形時のブロー比が大きくなる高さの大なる隅部aが薄肉になるので、その薄肉となる隅部aを有する高さの大なる部分の衝撃に対する初期荷重カーブの変動が起きる現象をともなうが、この実施の形態の衝撃吸収体1の薄肉となる側である一方の壁4の高さの小なる部分の凹状リブ6には座屈誘導部9を形成してあるので、この実施の形態のような衝撃吸収体1においても全体としての衝撃に対する荷重カーブの変動が抑制され、所期の衝撃吸収効果を得ることができる。
【0018】
図11および図14に示す本発明のさらに他の実施の形態に係る車両用衝撃吸収体においては、衝撃吸収体1の高さの大なる部分と小なる部分の境界部分に凹状リブ6,7を形成してあるので、その部分の凹状リブ6の立ち上がり壁bの衝撃に対する補強効果も加わって、衝撃吸収体1の高さの大なる部分と小なる部分の衝撃時の荷重カーブの変動が効果的に抑制され、いっそう優れた衝撃吸収効果を期待することができるものとなる(図14参照)。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施の形態に係る車両用衝撃吸収体を一部破断して示す斜視図である。
【図2】図1のA−A線拡大断面図である。
【図3】図2のB−B断面図である。
【図4】図2に対応して作用を説明するための断面図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係る車両用衝撃吸収体の荷重と歪みとの関係を示すグラフである。
【図6】本発明に係る車両用衝撃吸収体を車両のドアパネルに内設した態様を示す断面図である。
【図7】本発明に係る車両用衝撃吸収体を自動車のリヤーピラーに内設した態様を示す断面図である。
【図8】本発明に係る車両用衝撃吸収体をフロントバンパーのバンパーフェイシアとバンパービームの間に装着した態様の一部破断斜視図である。
【図9】本発明の他実施の形態に係る車両用衝撃吸収体を示す斜視図である。
【図10】図9のC−C線拡大断面図である。
【図11】本発明のさらに他実施の形態に係る車両用衝撃吸収体を示す斜視図である。
【図12】図11のD−D線拡大断面図である。
【図13】図11のE−E線拡大断面図である。
【図14】図13に対応して作用を説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 衝撃吸収体
2 中空部
3 周壁面
4 一方の壁
5 他方の壁
6,7 凹状リブ
8 溶着部
9 座屈誘導部
10 突起
11 ドアトリム
12 リヤピラー
13 フロントバンパー
A 頭部
a 隅部
b 立ち上がり壁
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両構成部材に内設することによって車両の内部または外部からの衝撃を吸収するための車両用衝撃吸収体であって、
衝撃吸収体は、熱可塑性プラスチックをブロー成形して中空状に形成されていて、間隔をあけて互いに対向する一方の壁および他方の壁を有しており、
前記一方の壁および他方の壁をそれぞれ窪ませて互いの先端部を溶着一体化した凹状リブを複数分散状に形成してあり、
前記複数分散状に形成されている凹状リブの少なくとも一部には、凹状リブの窪み方向と交差する方向に延びた突起、凹みその他の変形部からなる座屈誘導部を形成してある
ことを特徴とする車両用衝撃吸収体。
【請求項2】
凹状リブは、一方の壁または他方の壁を対向する壁方向に窪ませてその先端部を対向する壁に溶着一体化して形成されていることを特徴とする請求項1記載の車両用衝撃吸収体。
【請求項3】
座屈誘導部を形成する突起または凹みは、凹状リブの窪み方向と交差する方向の長さが1.0mm〜6.0mm、凹状リブの窪み方向の長さが1.0mm〜4.0mm、深さが1.0mm〜4.0mmであることを特徴とする請求項1または2記載の車両用衝撃吸収体。
【請求項1】
車両構成部材に内設することによって車両の内部または外部からの衝撃を吸収するための車両用衝撃吸収体であって、
衝撃吸収体は、熱可塑性プラスチックをブロー成形して中空状に形成されていて、間隔をあけて互いに対向する一方の壁および他方の壁を有しており、
前記一方の壁および他方の壁をそれぞれ窪ませて互いの先端部を溶着一体化した凹状リブを複数分散状に形成してあり、
前記複数分散状に形成されている凹状リブの少なくとも一部には、凹状リブの窪み方向と交差する方向に延びた突起、凹みその他の変形部からなる座屈誘導部を形成してある
ことを特徴とする車両用衝撃吸収体。
【請求項2】
凹状リブは、一方の壁または他方の壁を対向する壁方向に窪ませてその先端部を対向する壁に溶着一体化して形成されていることを特徴とする請求項1記載の車両用衝撃吸収体。
【請求項3】
座屈誘導部を形成する突起または凹みは、凹状リブの窪み方向と交差する方向の長さが1.0mm〜6.0mm、凹状リブの窪み方向の長さが1.0mm〜4.0mm、深さが1.0mm〜4.0mmであることを特徴とする請求項1または2記載の車両用衝撃吸収体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−107027(P2010−107027A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−282583(P2008−282583)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000104674)キョーラク株式会社 (292)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000104674)キョーラク株式会社 (292)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]