説明

車両用衝撃吸収材

【課題】車両のフロントフェンダーカバーからフロントピラーの領域に接触する歩行者等の衝撃を効果的に吸収することを可能とする。
【解決手段】車両用衝撃吸収材1は、フロントフェンダーカバー25に取付・固定される水平部10とフロントピラー28に取付・固定される立設部12とこの両者の連結部11とが、連続的かつ一体的に設けられており、車外側への突出高さは、水平部10の前方側から後方側へ向けて漸次大きくされて連結部11で最大とされ、さらに、立設部12の下端部から上方側に向けて漸次小さくされている。また、車外側からの押圧に対する剛性は、立設部12の方が、水平部10より高くすることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行者等が、車両のフロントフェンダーがフロントピラーに接触した際の衝撃を緩和するための車両用衝撃吸収材に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の前部においては、特にフロントフェンダー部は下方側にエンジンルームとの間に間隙が設けてあるボンネットフード上面に比較して上方からの応力に対して剛性が高く、従来は、フロントフェンダーカバーから上方へ向けた断面形状が瘤状の突出部を設け、突出部に作用する衝撃によって、フロントフェンダーカバーが潰れて衝撃吸収する衝撃吸収フェンダー構造が知られている。(例えば、特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−321136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術の衝撃吸収フェンダー構造では、フロントフェンダーカバーと、フロントフェンダーカバーが取り付けられるエプロンとの間隙は、ボンネットフード下方側の間隙に比較して小さく、フロントフェンダーカバーの潰れ代は十分ではない。
【0005】
さらに、従来技術の衝撃吸収フェンダー構造では、フロントフェンダーの前方部から後方部に亘る領域における衝撃を吸収することができるが、車両の前方に干渉した歩行者は、車両後方側へ倒れ込むようにして、車両のボンネットフードやフロントフェンダーに接触するが、加速度がついている場合には、ボンネットフードやフロントフェンダーの部位と越えてフロントウインドウガラスや、フロントウインドウガラスの左右両端を支持するよう配置された一対のフロントピラーに接触することとなる。フロントピラーは一般的には、板金製の柱状体で車室前方において、車両のルーフ等を支える機能を有するため、剛性が高く、ボンネットフードやフロントフェンダーと比較して、接触時の歩行者への衝撃が大きなものになってしまう。
【0006】
ところが、従来技術の衝撃吸収フェンダー構造では、フロントピラーには衝撃吸収構造は採用されておらず、加速度がついてフロントピラーに接触した歩行者の衝撃を効果的に和らげることができない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係る車両用衝撃吸収材においては、車両の車体に、取付手段を介して前記車体から車外側に突出するように取付・固定される車両用衝撃吸収材であって、 前記車体は、車両のボンネットフードの左右両側に配置された一対のフロントフェンダーカバーと、フロントウインドウガラスの左右両側に設けら前記フロントフェンダーカバーの後端部から上方に向けて立設されたフロントピラーと、から構成され、前記衝撃吸収材は、前記フロントフェンダーカバーの前方側から後方側にかけての水平部と、前記フロントピラーの下方側から上方側へ向けた立設部と、前記フロントフェンダーカバー後端部と前記フロントピラーの下端部との境界部において、水平方向から立設方向に向けて屈曲して前記水平部の後端側と前記立設部の下端側を連結するよう設けられた連結部と、から構成され、前記水平部と前記立設部とは、前記連結部を介して、連続的かつ一体的に形成されるとともに、前記車体からの突出高さは、前記水平部の前方側から後方側に向けて漸次大きくされて前記連結部において最大とされ、さらに、前記立設部の下端部から上方側に向けて漸次小さくされていることを主旨とする
【0008】
請求項1の発明においては、車両用衝撃吸収材を、フロントフェンダーカバーに対応する水平部と、フロントピラーに対応する立設部と、この両者の境界部で水平方向から立設方向へ屈曲する連結部と、から構成されて、車体としてのフロントフェンダーカバーおよびフロントピラーに取付・固定されている。このため、車両の前方部に接触した歩行者は、フロントフェンダーカバーとフロントピラーとのどちらに接触しても、その接触の際の衝撃を効果的に吸収することができる。また、車両用衝撃吸収材は、水平部と立設部とは連結部を介して連続的かつ一体的に形成され、車体からの突出高さは、水平部の前方側から後方側に向けて漸次大きくされて連結部において最大とされ、さらに、立設部の下端部から上方側に向けて漸次小さくされている。このため、車両用衝撃吸収材による車両の走行時の空気抵抗の増大を極力小さくすることが可能とすることができる。
【0009】
本発明の請求項2に係る車両用衝撃吸収材においては、請求項1に記載の発明に加えて、前記車両用衝撃吸収材において、車外側からの押圧に対する剛性を、前記水平部の領域よりも、前記立設部の領域を高くしたことを主旨とする。
【0010】
一般的に、歩行者が、走行中の車両や、停車中の車両であっても歩行者自身が所定の速度で、車両の前方側であるバンパーやフロントグリルあるいはヘッドライト等に接触すると、前方側に接触した後、車両後方に倒れ込むようにして、車両のボンネットフードやフロントフェンダーカバーに接触するが、車両前方側への接触の速度が速い場合には、後方への倒れ込み時に加速度がついて、フロントウインドウガラスやフロントピラーに接触することがある。この際においては、歩行者が車両から受ける衝撃は、ボンネットフードやフロントフェンダーカバーへの接触よりも衝撃が大きくなるため、車外側からの押圧力に対する剛性を、フロントフェンダーカバーに対応する水平部よりも、フロントピラーに対応する立設部の領域で高くすることにより、歩行者等の衝撃をより好適に吸収することができる。なお、歩行者には、自転車等に乗車している場合やランニング等で走行している場合も含むものとする。
【0011】
そこで、請求項2の発明においては、フロントピラー部に相当する立設部の単位表面積当たりの衝撃吸収力を、フロントフェンダーカバー部より大きくしたので、加速度のついた歩行者への衝撃を適確に吸収することができる。
【0012】
なお、衝撃吸収材の態様としては、衝撃吸収材の内部に、ウレタン材料やTPO(熱可塑性オレフィン材料)からなる発泡材を充填したり、歩行者の接触時に座屈可能なリブを配置したり、あるいは、この両者を組み合わせること等で形成することができるが、衝撃吸収材の単位表面積当たりの衝撃吸収力を高くするためには、この発泡材の発泡密度を高くしたり、リブの厚みを厚くすることで実現することができる。
【0013】
本発明の請求項3に係る車両用衝撃吸収材においては、請求項1または請求項2に記載の発明に加えて、前記車両用衝撃吸収材において、前記連結部は、車両後方側へ向けての延伸部が一体的かつ連続的に設けられ、前記延伸部の後端面は、車両のドアミラーの前面側への対向面とされ、前記対向面は、前記ドアミラーの前面側に近接あるいは当接していること主旨とする。
【0014】
請求項3の発明においては、連結部は、車両後方側へ向けての延伸部が一体的かつ連続的に設けられ、延伸部の後端面は、車両のドアミラーの前面側への対向面とされ、この対向面は、ドアミラーの前面側に近接あるいは当接している構成とした。連結部においては、本発明の衝撃吸収材に接触した歩行者が、衝撃吸収材で、衝撃が吸収されるものの、さらに、後方側のドアミラー方向へ移動することも考えられるが、この際に、歩行者は、延伸部に接触することによって、衝撃が吸収されるが、この延伸部での衝撃を、延伸部の後端面を、ドアミラーの前面側に近接あるいは当接させることにより、ドアミラーの前面側で受け止めて、効果的な衝撃吸収が可能となる。
【0015】
また、この延伸部を、ドアミラーに向けて流線型形状にすることにより、車両の通常走行時において可能である。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、車両の前面側に接触した歩行者の接触時の衝撃を効果的に吸収できるともに、車両に走行時における空気抵抗の増大も極力低減可能な車両用衝撃吸収材を提供することを最も主要な特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は本発明の車両衝撃吸収材を搭載した車両の側面視である。
【図2】図2は図1のa−a部分断面図である。
【図3】図3は図1のb−b部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明の車両用衝撃吸収材1を搭載した車両1の側面視である。図2は、本発明の車両用衝撃吸収材1を搭載した車両2のフロントドア20近傍の部分断面図であり図1のa−a断面図であり、図2では車両前方側を向いて左側のフロントドアを示す。図3は、図1におけるb−b断面図である。
【0019】
図1において、車両1には、前端部における下方部に車幅方向のほぼ全体に亘ってフロントバンパー21と、フロントバンパー21の上方部に、中央部にフロントグリル22と、フロントグリル22の左右両側には一対のヘッドライト23が図示しない取付手段によって車体に取り付けられている。それらの後方側には、図示しないエンジンルームが設けられ、その上方側と側方側は、ボンネットフード24と左右一対のフロントフェンダーカバー25で覆われている。
【0020】
フロントバンパー21には、図示しない歩行者の接触センサーまたは接触を予測する接触予測センサーが設けられている。
【0021】
左右一対のフロントフェンダーカバー25の後端からは、車両1の斜め後方に向けてフロントピラー28が立設され、フロントピラー28の上端は、車室の上面を覆うルーフ29の前端の左右両端部に連結されている。また、エンジンルームの後端は、ボンネットフード24の車幅方向のほぼ全体に亘ってカウル部26とされ、カウル部26と左右一対のフロントピラー28およびルーフ29の前端で囲まれた領域には、フロントウインドウガラス27が、図示しない接着剤等を用いて車室内を密封可能に取付・固定されている。また、一対のフロントフェンダーカバー25と一対のフロントピラー28の後方側には、車幅方向の左右両側に一対のフロントドア20が車体に対して図示しないヒンジ手段を介して取り付けられており、フロントドア20は、車体外側斜め前方側の点C(図2参照)を回転中心として矢印Aに示す円弧状の軌跡を描いて開閉可能とされている。なお、図2では、車両前方側に向いて左側のフロントドアを示すが、右側のフロントドア20は本図とは左右対象に設けられている。
【0022】
なお、一対のフロントフェンダーカバー25の下方側は、円弧状に切り欠かれてタイヤハウス3,3を形成し、その内部に一対のフロントタイヤ30,30が配置されている。
【0023】
また、フロントドア20の前端は、フロントフェンダーカバー25とフロントピラー28の後端側に沿った形状とされ、下方側がほぼ垂直で、上方側はフロントピラー28と同様に車両1の後方に向けて傾斜した形状とされている。また、フロントドア20の上方側には、フロントドアガラス20Gが取り付けられている。
【0024】
図1および図2に示すように、フロントドア20の前端部の上下方向ほぼ中央部には、乗員が車両後方を視認するためのドアミラー4が取り付けられている。
【0025】
図1に示すように、フロントフェンダーカバー25の上面の前方部からフロントフェンダーカバー25とフロントピラー28との境界部を経てフロントピラー28の上方部にかけては、左右一対の車両用衝撃吸収材1が取り付けられている。本実施形態においては、フロントフェンダーカバー25とフロントピラー28とが、車両用衝撃吸収材1が取り付けられる車体2aを構成し、車両用衝撃吸収体1は、車体2aから車外側に向けて突出するよう車体に取り付けられている。なお、本実施形態において、車体2aは、車両用衝撃吸収材1が取り付けられるフロントフェンダーカバー25およびフロントピラー28を示している。
【0026】
フロントフェンダーカバー25は、図1に示すように、前端がヘッドライト25の後端の部位に位置し、後端がフロントピラー28の下端に連結されている。また、フロントピラー28は、下端が布団とフェンダーカバー28に連結され、上端がルーフ29の左右側前端に連結されている・本実施形態では、車両用衝撃吸収体1は、フロントフェンダーカバー25の前方から約1/3の位置から後方側とフロントピラー28の上端に亘る領域に、連続的かつ一体的に後述する取付手段としての両面テープ5を介して取り付けられている。
【0027】
図1に示すように、車両用衝撃吸収体1は、フロントフェンダーカバー25の領域に相当する水平部10と、カウル部26の車幅方向の左右側に位置してフロントフェンダーカバー25の後端とフロントピラー28の下端との連結部の位置に相当する連結部11と、連結部から上方に向けてフロントピラー28の位置に相当する立設部12、とから形成され、水平部10と連結部11と立設部12とは、連続的かつ一体的に形成されている。
【0028】
図2および図3に示すように、車両用衝撃吸収体1は、車体2a側に対向する取付面1a(10a,11a,12a)と車外側に面した意匠面1b(10b,11b,12b)とを有し、取付面1a(10a,11a,12a)は、取付手段としての両面テープ5を介して車体2a(フロントフェンダーカバー25およびフロントピラー28)に取付・固定されている。また、意匠面1b(10b,11b,12b)は、車外側に突出した蒲鉾様の凸状をなし、その表面は滑らかな表面とされて、車体2aに施された塗装と同色の塗装が施してある。
【0029】
図1に示すように、意匠面1b(10b,11b,12b)の車体2a面からの突出高さは、水平部10においては、前方側が小さく、その前端部は突出高さがほぼ0となるよう形成されて車体2aとしてのフロントフェンダーカバー25の表面に沿って滑らかな曲線となるように形成されている。さらに、水平部10では、前方側から後方側に向けて滑らかな曲線を描いて車体2aからの高さ寸法が漸次大きくされ、連結部11において最大とされている。連結部11においては、フロントフェンダーカバー25の後端とフロントピラー28の下端との連結部に沿うように湾曲形状とされ、立設部12に繋がっている。立設部12において、車体2aとしてのフロントピラー28から突出する高さ寸法は、連結部12から上方に向かって漸次小さくされている。そして、立設部12の上端はフロントピラー28の上端とほぼ同じに位置し、立設部12の上端では、フロントピラー28との段差を極力小さくさくするよう突出高さをほぼ0とされている。
【0030】
また、意匠面1b(10b,11b,12b)の車幅方向の幅寸法は、突出高さと同様に、水平部10の前端部でほぼ0とされ、前方側から後方側へ向けて漸次大きくされ、連結部11において最大とされている。連結部11の幅寸法は、水平部10との接合部から立設部12にかけては車両前後方向にかけてほぼ一定の幅寸法とされ、立設部に連接されている。次に、立設部12においては、下方側から上方側に向けて漸次幅寸法が小さくされ、先端部においてほぼ0となるようにされている。
【0031】
ついで、連結部11においては、図1および図2に示すように、フロントフェンダーカバー25およびフロントピラー28からさらに車両の後方側のフロントドア20側に向けた延伸部13が、連結部11と連続的かつ一体的に設けられている。なお、図2は、図1におけるa−a断面で、連結部11と立設部12との境界部近傍の断面を示している。延伸部13は、連結部11の意匠面11bから車幅方向の外側と内側との両側で車両後方側に向けて延長された意匠面13bと、意匠面13bの後方側で、車体2aとしてのフロントピラーに面した取付面13aと、ドアミラー4に面した対向面13cとから形成されている。意匠面13bは、水平部11,連結部12,立設部13の意匠面11b,12b,13bと同様な表面とされている。対向面13cは、ドアミラー4の前面側との間の間隙が極力小さくなるよう、近接あるいは面当たりで当接するよう設けられている。なお、近接している場合には、対向面13cとドアミラー4の前面側との間隙はほぼ一定となるよう形成されている。
【0032】
図2に示すように、対向面13cは、車両への取付部から車外側に向けて車両前方側へ傾斜した傾斜面とされており、また、ドアミラー4における対向面13cに面した部位は、対向面13cと平行な傾斜面とされている。さらに、フロントドア20は、図2に示すC点を中心として矢印A方向に回転して車室内を開閉可能に、図示しない回転ヒンジで車体にとりつけられている。従って、フロントドア20が車室内を開閉するために点Cを中心に回転する場合において、車両用衝撃吸収材1は、ドアミラー4に干渉することなく、円滑に回転することができる。また、本実施形態において、対向面13cは、ほぼ直線状の傾斜面としたが、例えば、車両前方に向けた凸面状の湾曲形状とするなど、ドアミラー4と干渉しない範囲において適宜態様を変更することができる。
【0033】
なお、図2において、意匠面1b(11b),対向面13c,13aに囲まれた車両用衝撃吸収材1の内側については、図3と同様であり、図3において詳細を説明する。
【0034】
図3に示すように、本実施形態の車両用衝撃吸収材1は、車体2a側が取付面1aとされ、車外側を意匠面1bとされている。取付面1aと意匠面1bとは、オレフィン系熱可塑性エラストマー等の軟質樹脂材料やEPDM等のゴム材料が好適に用いられ、取付面1aと意匠面1bとの間には、所定の間隙が設けられた中空状の閉空間Sとされ、この閉空間には、車外側から車体2a側に向けた複数のリブ1cが配置されている。この複数のリブ1cは、本実施形態においては、両端が取付面1aと意匠面1bの閉空間に面した内側面に当接して一体的に形成された状態であるが、取付面1aと意匠面1bのいずれか一方の閉空間に面した内側面に当接して一体的に形成され、他方の内側面とは隙間を設けた態様としても良い。また、本実施形態において、リブ1cは、車両用衝撃吸収材1の車両前後方向、即ち、水平部10の前方側から後方側に向け、連結部11を経て、立設部12の上端に向けた方向に形成されているが、リブ1cを車両1の車幅方向に平行に形成しても良い。さらに、この両者を組み合わせた格子状のリブ1cでも本願の車両用衝撃吸収材1として用いることもできる。
【0035】
さらに、取付面1aと意匠面1bとで囲まれた閉空間Sには、樹脂材料やゴム材料等の発泡材1dが充填されている。本実施形態においては、発泡材1dは、硬質のウレタン材料から形成されている。
【0036】
また、本実施形態の車両用衝撃吸収材1においては、車外側からの押圧力に対する剛性を、立設部12の領域においては、水平部10の領域より高く設定してある。立設部12の領域における車外側からの剛性を水平部10の領域より高くするためには、図3に示すリブ1cの厚みtを、立設部12の領域では、水平部10の領域より厚くするか、あるいは、同じ厚みのリブ1cでも、単位表面積当たりにより多くのリブ1cを形成することによっても実現することができる。さらには、立設部12と水平部10との材料を異ならせて、立設部12の材料を水平部10より剛性の高い材料を用いて形成してもよい。また、他の手段として、立設部12と水平部との発泡材1dの材質や発泡密度を異ならせることによっても、立設部12の車外側からの押圧に対する剛性を水平部より高くすることができる。さらには、これらの、リブ1cと発泡材1dを組み合わせることによることも可能である。
【0037】
車両用衝撃吸収材1における連結部11の車外側からの押圧に対する剛性は、本実施形態においては、水平部10と同じ構成とされているが、リブ1cの厚みや発泡材1dの発泡密度や材質を調整することにより、立設部12と水平部10との中間の剛性としたり、水平部10の境界から立設部12の境界に向けてに徐変させることにより、剛性を次第に変化させてもよい。
【0038】
次に、本実施形態における車両用衝撃吸収材1を搭載した車両に、歩行者等が接触した場合の車両用衝撃吸収材1の作用について説明する。
【0039】
車両2の前面側のフロントバンパー21、フロントグリル22、ヘッドライト23等に図示しない歩行者等が接触すると、歩行者等は、接触の勢いに応じた加速度がついて、車両2の後方側へ倒れ込む。加速度が小さい場合には、歩行者等は、ボンネットフード24かあるいはボンネットフード24の車幅方向の左右両側に配置されたフロントフェンダーカバー25に再び接触することになる。ボンネットフード24に接触した場合には、ボンネットフード24とその下方側との間に設けられた隙間(歩行者等接触を検知してボンネットフード24を持上げることで隙間を形成してもよい。)によるボンネットフード24の撓みや変形を利用して衝撃吸収が可能である。歩行者等が、フロントフェンダーカバー25に向けて倒れ込んだ場合には、車両用衝撃吸収材1に接触することになり、前述の通り、歩行者等の衝撃を吸収することができる。即ち、水平部10に接触する歩行者等は、立設部12より小さい加速度で接触するので、車外側からの押圧に対して、比較的剛性の低い構成で衝撃吸収が可能である。
【0040】
また、ボンネットフード24に歩行者等が接触し、その後、車幅方向に向けて移動すると、車両2は、ボンネットフード24の中央部から車幅方向の外側のフロントフェンダーカバー25にかけて滑らかな弧を描くように高さが低くされているので、車幅方向外側まで移動してしまうが、車両用衝撃吸収材1の水平部10に干渉することによって、移動する歩行者等の移動抵抗となり、車幅方向外側へ向けての移動速度を抑制することができる。
【0041】
次に、歩行者等が、比較的大きな加速度で車両2の後方側へ倒れ込むと、直接あるいはボンネットフード24への接触後に、フロントウインドウガラス27かあるいはフロントピラー28に接触することがある。この場合、フロントピラー28は車両2のルーフ29等を支える構造物であるため、接触時の衝撃が大きい。車両用衝撃吸収材1の立設部12は、前述の通り水平部10より高剛性とされているため、水平部10より高い衝撃吸収力を備えている。
【0042】
本発明の車両用衝撃吸収材1は、上記のの実施形態に限られるものではなく、以下のように変形して実施することもできる。
(1)車両用衝撃吸収体1の前端部を、フロントフェンダーカバー25の前端部と一致するように設けてもよい。
(2)取付手段を両面テープに替えて、取付面1a(10a,11a,12a)に取り付けたクリップで、車体2aに取り付けてもよい。この際には、車体2a側には、クリップの位置に対応して取付孔を設ける構成とする。
(3)車両用衝撃吸収材1を、フロントピラー28を越えて、フロントドア20の上方側のルーフ29の車幅方向の左右端に沿って車両後方側まで配置した構成とする。この場合、車両用衝撃吸収材1は、フロントドア20の後端近傍まで設ける構成とすることができる。また、フロントドア20の後端を越えて、ルーフ29の後端まで設けてもよい。
(4)車両用衝撃吸収材1を、フロントピラー28の上端でほぼ90度折り曲げ部を設け、フロントウインドウガラス27の上端に沿って車幅方向の全域に亘って設ける構造としてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 車両用衝撃吸収材
2 車両
2a 車体
4 ドアミラー
5 両面テープ(取付手段)
10 水平部
11 連結部
12 立設部
24 ボンネットフード
25 フロントフェンダーカバー
27 フロントウインドウガラス
28 フロントピラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車体に、取付手段を介して前記車体から車外側に突出するように取付・固定される車両用衝撃吸収材であって、
前記車体は、車両のボンネットフードの左右両側に配置された一対のフロントフェンダーカバーと、フロントウインドウガラスの左右両側に設けら前記フロントフェンダーカバーの後端部から上方に向けて立設されたフロントピラーと、から構成され、
前記衝撃吸収材は、前記フロントフェンダーカバーの前方側から後方側にかけての水平部と、前記フロントピラーの下方側から上方側へ向けた立設部と、前記フロントフェンダーカバー後端部と前記フロントピラーの下端部との境界部において、水平方向から立設方向に向けて屈曲して前記水平部の後端側と前記立設部の下端側を連結するよう設けられた連結部と、から構成され、
前記水平部と前記立設部とは、前記連結部を介して、連続的かつ一体的に形成されるとともに、前記車体からの突出高さは、前記水平部の前方側から後方側に向けて漸次大きくされて前記連結部において最大とされ、さらに、前記立設部の下端部から上方側に向けて漸次小さくされていることを特徴とする車両用衝撃吸収材。
【請求項2】
前記車両用衝撃吸収材において、車外側からの押圧に対する剛性を、前記水平部の領域よりも、前記立設部の領域を高くしたことを特徴とする請求項1に記載の車両用衝撃吸収材。
【請求項3】
前記車両用衝撃吸収材において、前記連結部は、車両後方側へ向けての延伸部が一体的かつ連続的に設けられ、前記延伸部の後端面は、車両のドアミラーの前面側への対向面とされ、前記対向面は、前記ドアミラーの前面側に近接あるいは当接していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用衝撃吸収材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−25890(P2011−25890A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−176287(P2009−176287)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】