説明

車両用衝突検知装置

【課題】圧力検出用のチャンバ部材の内部に浸入した水を排出しやすくした車両用衝突検知装置を提供する。
【解決手段】チャンバ部材7は、チャンバ本体71の下面側に開口する3つの呼吸孔721a〜723aを備え、3つの呼吸孔721a〜723aは、チャンバ本体71の下面部から下方へ突出形成された管状部721〜723の下端に開口する。そして、3つの呼吸孔721a〜723aのうち、1つの呼吸孔721aが他の呼吸孔722a、723aよりも低い高さ位置にて形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両への歩行者等の衝突を検知する車両用衝突検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の安全性に関して、事故時に車両の搭乗者の安全性を確保するだけでなく、車両に歩行者が衝突した際に、歩行者が致命的なダメージを受けないことも求められている。従来の車両用衝突検知装置は、例えば、特許文献1に記載されているように、車両のバンパ内に配設された圧力検出用のチャンバ部材がバンパレインフォースメントの前面に配設され、障害物がバンパに衝突した際に、押圧されたバンパがチャンバ部材を潰し変形させる。このときのチャンバ部材の変形による圧力変化を検出し、歩行者か否かを判定する。車両用衝突検知装置は、歩行者が車両のバンパに衝突したと判定した場合、歩行者を保護するための装置を作動させる。ここで、チャンバ部材は、内部に大気(空気)が充填されるものであるが、完全密閉性を有する必要はなく、チャンバ部材にチャンバ部材内の大気と外部の大気とが流通するための呼吸孔を設けることもある。このような呼吸孔を設けることによって、標高の変化による大気圧変動の影響を受けることなく、バンパへの衝突に伴うチャンバ部材内の圧力変化を正確に検出することができる。
【0003】
一方、車両が冠水した道路を走行した場合などには、上述した呼吸孔を介してチャンバ部材内部に水が浸入することが考えられる。このような場合、車両が冠水道路を脱出した時に、チャンバ部材内部に溜まった水は呼吸孔を介して外部へ排出される。つまり、チャンバ部材の呼吸孔は、外部の大気と連通するための呼吸孔として機能するだけではなく、チャンバ内の水を排出するための水抜き孔としても機能するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−117157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、チャンバ部材に複数の呼吸孔をチャンバ部材本体部の下面側で同じ高さ位置にて開口する構成では、各呼吸孔の排出量が同一であるため、チャンバ部材内部の水が排出されにくく、チャンバ部材内部に溜まった水が完全に排出されるのに時間を要するおそれがある。
【0006】
本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、圧力検出用のチャンバ部材の内部に浸入した水を排出しやすくした車両用衝突検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、車両のバンパ内でバンパレインフォースメントの前面に配設されチャンバ空間を内部に形成してなるチャンバ本体を有するチャンバ部材と、前記チャンバ空間内の圧力を検出する圧力センサとを備え、前記圧力センサの検出結果に基づいて前記車両バンパへの衝突を検知するように構成された車両用衝突検知装置において、
前記チャンバ部材は、前記チャンバ本体の下面側に開口する複数の呼吸孔を備え、
複数の前記呼吸孔のうち少なくとも1つが、他の前記呼吸孔よりも低い高さ位置にて開口することを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、チャンバ部材は、チャンバ本体の下面側に開口する複数の呼吸孔を備えているので、チャンバ本体内部が外部の大気と連通し、標高の変化による大気圧変動の影響を受けることなく、バンパへの衝突に伴うチャンバ部材内の圧力変化を正確に検出することができる。また、複数の呼吸孔のうち少なくとも1つが、他の呼吸孔よりも低い高さ位置にて開口しているので、チャンバ本体内部に呼吸孔を介して水が浸入した場合には、その溜まった水が呼吸孔を介して迅速に外部へ排出される。すなわち、各呼吸孔の高さ位置が同一である構成とした場合、各呼吸孔の排出量も同一となるため、水抜けと同時に同一の孔から大気の侵入が無ければ水を排出することができない。これに対し、本発明の構成では、少なくとも1つの呼吸孔が、他の呼吸孔よりも低い高さ位置にて開口することによって、他の呼吸孔よりも排出量が大きくなる。このため、呼吸孔による排出量の違いが水排出のきっかけを形成し、チャンバ部材内部に溜まった水が外部へ迅速に排出される。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記少なくとも1つの呼吸孔は、前記チャンバ本体の下面部から下方へ突出形成された管状部の下端に開口することを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、少なくとも1つの呼吸孔は、チャンバ本体の下面部から下方へ突出形成された管状部の下端に開口しているので、チャンバ本体内部に加工粉が入ることなく、呼吸孔を容易に形成することができる。例えば、チャンバ部材のブロー成形によって、まず先端が塞がった管状部を形成し、管状部の先端を径方向に切断して開口することによって、チャンバ本体内部に加工粉が入ることなく、呼吸孔を容易に形成することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記チャンバ部材は、長さの異なる複数の前記管状部を備え、
前記少なくとも1つの呼吸孔は、複数の前記管状部のうち最も長い管状部の下端に開口することを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、複数の呼吸孔のうち少なくとも1つが、他の呼吸孔よりも低い高さ位置にて形成されることにより、チャンバ本体内に浸入して溜まった水を迅速に外部へ排出することができる。更に、管状部の下端部の切断位置を任意に決定し、呼吸孔の高さ位置を簡単に調整することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、前記チャンバ本体が、下面部の高さ位置が異なる複数の領域から構成され、
前記少なくとも1つの呼吸孔は、前記複数の領域のうち高さ位置が最も低い領域の下面側に開口することを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、チャンバ本体内部に溜まった水が高さ位置の最も低い領域に集まりやすく、チャンバ本体内部に溜まった水が外部へ迅速に排出される。
【0015】
請求項5に記載の発明は、複数の前記呼吸孔は、前記チャンバ本体の下面側で且つ該チャンバ本体の車両後方側に設けられることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、複数の前記呼吸孔は、前記チャンバ本体の下面側で且つ該チャンバ本体の車両後方側に設けられているので、チャンバ本体内部に溜まった水を車外へ排出しやすい。例えば、チャンバ部材がバンパレインフォースメントの前面で上方に配設され、チャンバ部材の下方に衝撃を吸収するためのアブソーバが配設される構成において、チャンバ本体の下面側で且つチャンバ本体の車両後方側に設けられた呼吸孔から排出された水は、アブソーバとバンパレインフォースメントとの隙間を介してバンパ外へ容易に排出される。
【0017】
請求項6に記載の発明は、前記チャンバ部材の下方に前記衝突の際の衝撃を吸収するためのアブソーバが配設され、前記アブソーバの後端面の少なくとも一部には、前記呼吸孔との緩衝を避けると共に導通路を確保するための逃げ部が凹設されることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、アブソーバと呼吸孔とが物理的に緩衝して導通路が閉塞されることを抑制することができるため、チャンバ本体内部に溜まった水を確実に排出できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施形態の車両用衝突検知装置を平面視にて示す全体構成図である。
【図2】図1に示す車両用衝突検知装置のA−A線断面図である。
【図3】実施形態のチャンバ部材及びバンパレインフォースメントを示す正面図である。
【図4】実施形態のチャンバ部材の呼吸孔(管状部)周辺を正面視にて示す断面図である。
【図5】実施形態のチャンバ部材における呼吸孔の加工工程を示す説明図であり、(a)はブロー成形直後の管状部を示す断面図であり、(b)は管状部の下端部切断後を示す断面図である。
【図6】チャンバ部材内に溜まった水の呼吸孔からの排出を説明する図であり、(a)は比較例を示す模式断面図、(b)は実施形態を示す模式断面図である。
【図7】第一変形例におけるチャンバ部材の呼吸孔周辺を正面視にて示す断面図である。
【図8】第二変形例のチャンバ部材を示す正面図である。
【図9】第三変形例のチャンバ部材を示す正面図である。
【図10】第四変形例のチャンバ部材を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の車両用衝突検知装置を具体化した一実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の実施形態である車両用衝突検知装置1を平面視にて示す全体構成図である。図2は、車両用衝突検知装置1を横から見た要部断面図(図1のA−A線断面)である。図3は、チャンバ部材7及びバンパレインフォースメント4を示す正面図である。図4は、呼吸孔721a(管状部721)周辺を正面視にて示す断面図である。図5(a)はブロー成形直後の管状部721の断面図(図4の点線Bで囲む領域)であり、同図(b)は管状部721の下端部切断後の断面図である。
【0021】
車両用衝突検知装置1は、図1に示すように、車両のバンパ2内に配設されたバンパカバー3と、チャンバ部材7と、圧力センサ8と、歩行者保護装置ECU10を主体として構成される。
【0022】
バンパ2は、図1、図2に示すように、バンパカバー3、バンパレインフォースメント4、サイドメンバ5、アブソーバ6及びチャンバ部材7を主体として構成されている。尚、図2は、バンパカバー3とバンパレインフォースメント4とアブソーバ6とチャンバ部材7と圧力センサ8とをそれぞれ断面で示している。
【0023】
バンパカバー3は、車両前端にて車幅方向(左右方向)に延び、バンパレインフォースメント4、アブソーバ6及びチャンバ部材7を覆うように車体に取り付けられる樹脂(例えば、ポリプロピレン)製カバー部材である。
【0024】
バンパレインフォースメント4は、バンパカバー3内に配設される金属製の構造部材で車幅方向に亘って配設されるものであって、図2に示すように、内部中央に梁が設けられた日の字状断面を有する中空部材である。バンパレインフォースメント4の前方側に、チャンバ部材7と、アブソーバ6とが配設される。また、バンパレインフォースメント4は、図3に示すように、車両を牽引するために用いる固縛フック又は牽引フック(図示せず)を取り付けるための取り付け部41を車両に対して左側にのみ有する。ここでは取り付け部41が車両に対して左側のみとした例を示したが、車両によっては右側または中央部に有する構成であってもよい。また、バンパレインフォースメント4は、アブソーバ6を固定するボス(図示せず)の取り付けのために2組のボス取り付け部42、44とボス取り付け部43、45とを有する。1組目のボス取り付け部42、44はバンパレインフォースメント4の車両に対して左側に、2組目のボス取り付け部43、45は車両に対して右側に位置する。1組目のボス取り付け部42と2組目のボス取り付け部43とはバンパレインフォースメント4の車両上下方向に対してほぼ中央に位置する。そして、1組目のボス取り付け部44と2組目のボス取り付け部45とは、ボス取り付け部42、43よりも下方であって車幅方向のやや中心寄りに位置する。つまり、2組のボス取り付け部42、44とボス取り付け部43、45とは、車幅方向に間隔を隔ててほぼ左右対称に配設されている。
【0025】
サイドメンバ5は、車両の左右側面近傍に位置して車両前後方向に延びる一対の金属製部材であり、サイドメンバ5の前端にバンパレインフォースメント4が取り付けられる。
【0026】
アブソーバ6は、衝撃吸収作用を有する発泡樹脂製部材であり、バンパカバー3内でバンパレインフォースメント4の前面4aで下方に取り付けられる。尚、アブソーバ6の上方には、チャンバ部材7が配設される。そして、アブソーバ6の後端面の一部には、図2に示すように、バンパレインフォースメント4の前面4aとの間に隙間を隔てる逃げ部6aが形成されている。後述するチャンバ部材7の呼吸孔721a〜723aがその隙間の上方に位置することで、アブソーバ6との物理的緩衝を避けると共に、導通路を確保している。これによって、アブソーバ6と呼吸孔721a〜723aとが物理的に緩衝して導通路が閉塞されることを抑制することができるため、チャンバ本体71内部に溜まった水を確実に排出できる。
【0027】
チャンバ部材7は、バンパレインフォースメント4の前面4aの前方であってアブソーバ6の上方に配設される。チャンバ部材7は、ポリエチレンなどの軟質性樹脂からなる車幅方向に延びる略箱状の中空部材であり、断面の厚さが数ミリの壁面で囲まれたチャンバ空間7aが形成され、大気が充填されている。
【0028】
より詳細には、チャンバ部材7は、チャンバ本体71と、呼吸孔721a〜723aを有する管状部721〜723と、延設部73とを備えている。
【0029】
チャンバ本体71は、図3に示したように、チャンバ部材7の大部分を占め、下面側から上面71e側までの高さLがほぼ一定となる形状を有している。つまり、圧力センサ8によって衝突時に検出される圧力が車幅方向にわたってほぼ一定となる。
【0030】
チャンバ本体71は、車両に対して左端から右端へ順に、左端の端部71d、外側傾斜部71c、内側傾斜部71b、中央に位置する中央部71a、内側傾斜部71br、外側傾斜部71cr及びチャンバ本体71の右端に位置する端部71drがそれぞれ連接して形成され、チャンバ空間7aを共有している。
【0031】
端部71dは、外側傾斜部71cと連接してチャンバ本体71の車両に対して左端に位置し、中央部71aの下面部よりも車両の上下方向に対して端部71dの下面部が高く位置している。同様に、端部71drは、外側傾斜部71crと連接してチャンバ本体71の車両に対して右端に位置し、中央部71aの下面部よりも車両の上下方向に対して端部71drの下面部が高く位置している。端部71dと端部71drとの車両の上下方向に対する高さはほぼ同一である。
【0032】
外側傾斜部71cは、一方が端部71dと連接して低く他方が内側傾斜部71bと連接して高く傾斜している。また、内側傾斜部71bは、一方が外側傾斜部71cと連接して高く他方が中央部71aと連接して低く傾斜している。外側傾斜部71crは、一方が端部71drと連接して低く他方が内側傾斜部71brと連接して高く傾斜している。また、内側傾斜部71brは、一方が外側傾斜部71crと連接して高く他方が中央部71aと連接して低く傾斜している。つまり、チャンバ本体71は、下面部の高さ位置が異なる領域で構成され、中央部71aが、チャンバ本体71の複数の領域のうち高さ位置が最も低い領域である。
【0033】
内側傾斜部71bと外側傾斜部71cとが構成する部分は、バンパレインフォースメント4の取り付け部41及びボス取り付け部42を上側に回避するように山なり形状に構成されている。同様に、内側傾斜部71brと外側傾斜部71crとが構成する部分は、ボス取り付け部43を上側に回避するように構成されている。すなわち、チャンバ本体71は、バンパレインフォースメント4の取り付け部41、ボス取り付け部42、43を回避するように、チャンバ本体71の左右両側が山なり形状をしている。つまり、チャンバ本体71は、内側傾斜部71bが中央部71aへ(内側傾斜部71brが中央部71aへ)傾斜し、外側傾斜部71cが端部71dへ(外側傾斜部71crが端部71drへ)傾斜している。取り付け部41は、チャンバ本体71によって前方側が塞がれていないので、バンパ前方側から固縛フック等を必要な時に取り付けることができる。また、ボス取り付け部42、43は、チャンバ本体71によって前方側が塞がれていないので、ボス取り付け部44、45と共に、ボスを取り付けることによりアブソーバ6をバンパレインフォースメント4に固定させることができる。
【0034】
管状部721〜723は、チャンバ本体71の下面部から下方へ突出形成されている。すなわち、管状部721はチャンバ本体71の中央部71aの下面側から、管状部722は端部71dの下面側から、管状部723は端部71drの下面側からそれぞれ下方へ突出形成される。3つの管状部721〜723の長さは全て同一である。そして、3つの管状部721〜723は、図2に示したように、チャンバ本体71の車両前後方向の後方側であって、バンパレインフォースメント4の前面4a寄りに形成される。
【0035】
また、管状部721の下端に呼吸孔721aが、管状部722の下端に呼吸孔722aが、管状部723の下端に呼吸孔723aがそれぞれ開口している。各呼吸孔721a〜723aは、直径が約4mmの円形状の孔である。このように、呼吸孔721a〜723aは、チャンバ本体71の中央に位置する中央部71a、そして、端部71d、71drに左右対称に一定の間隔を隔てて形成されている。そして、チャンバ本体71の中央部71aの呼吸孔721aは、車幅方向の両側の呼吸孔722a、723aよりも高低差hだけ、車両の上下方向に対して下方へ低く位置している。低い位置に形成された呼吸孔721aと高い位置に形成された呼吸孔722a、723aとの高低差hは約8mmであり、それよりも高低差があってもよい。
【0036】
次に、チャンバ部材7の製造方法について説明する。図4に示すように、呼吸孔721aは、管状部721の下端に開口して形成され、チャンバ空間7a内の大気と外部の大気とが、呼吸孔721を通して流通する。尚、管状部722、723についても同様であるので、図面を省略する。
【0037】
チャンバ部材7は、例えば1組の金型を型合わせして型締めし、金型内に溶けた軟質製樹脂を流し込みブロー成形によって形成される。チャンバ部材7は、チャンバ本体71、3つの管状部721〜723及び延設部73が同じ樹脂材料によって一体的に形成される。ブロー成形後、金型から取り出したチャンバ部材7は、図5(a)に示すように、管状部721がチャンバ本体71の中央部71aの下面側から下方に突出形成される(管状部722は端部71d、管状部723は端部71drに形成される)。このときの管状部721の先端は塞がっている。その後、同図(b)に示すように、それぞれの管状部721〜723の下端部を径方向に切断することにより開口した呼吸孔721a〜723aが形成される。呼吸孔721a〜723aが形成されることにより、チャンバ空間7a内の大気と外部の大気とが流通することができ、そして、チャンバ本体71内に浸入した場合に水を排出することができる。
【0038】
ここで、チャンバ本体71内に溜まった水の呼吸孔からの排出について、図6を参照しつつ説明する。同図(a)は比較例を示すチャンバ本体71’の模式断面図である。比較例のチャンバ本体71’は、高さ位置が同一の呼吸孔721a’〜723a’を備えている。一方、同図(b)は実施形態を示すチャンバ本体71の模式断面図である。上述したように、実施形態のチャンバ本体71では、呼吸孔721aの高さ位置が、他の呼吸孔722a、723aの高さ位置よりも低くなっている。
【0039】
比較例のチャンバ本体71’下面側には、水を排出するための複数の呼吸孔721a’〜723a’が配設されている。そして、比較例のチャンバ本体71’は、呼吸孔721a’〜723a’から水面までの高低差H1まで水が注水されている。高低差が同じ場合、水の排出と同時に空気が容器内に入らなければ水は排出されない。水の排出量は、√(2gH)(トリチェリの定理)から、A*C*√(2gH)で求められる(Aは排出する孔の断面積、Cは流量係数、gは重力加速度、Hは高低差である。)。ここで、C、gは一定と考えられ、呼吸孔の幅つまり断面積Aが各呼吸孔において同じであれば、水の排出量は、高低差に比例することになる。よって、呼吸孔721a’〜723a’は、同じ排出量で水を排出することになる。
【0040】
同様に、チャンバ本体71下面側には、水を排出するための3つの呼吸孔721a〜723aが配設されている。そして、3つの呼吸孔721a〜723aの中で、中央に設けられた呼吸孔721aは、他2つの呼吸孔722a、723aよりも水深が深くなっている。
【0041】
つまり、チャンバ本体71は、中央の呼吸孔721aから水面までの高低差H2と、呼吸孔722a、723aから水面までの高低差H1とでは、高低差H2の方が高低差H1よりも大きくなっている。尚、呼吸孔721a〜723aの幅は同一とする。比較例のチャンバ本体71’の場合で説明したように、水の排出量は、高低差に比例することになるので、中央の呼吸孔721aの水の排出量が多く、迅速に水を排出することができる。よって、比較例のチャンバ本体71’よりも実施形態のチャンバ本体71の呼吸孔のほうが水の排出量が多く迅速に水を排出することが理解できる。
【0042】
延設部73は、チャンバ本体71の車幅方向に対してほぼ中央で、チャンバ本体71の上面側から、車両後方側へ延設されて形成され、バンパレインフォースメント4の上面に位置するように設けられる。延設部73は、チャンバ本体71の一部分を形成しており、チャンバ空間7aを共有している。延設部73の上面側に、圧力センサ8を固定するためのブラケット9がインサート成形され、このブラケット9を介して圧力センサ8が取り付けられる。尚、ブラケット9は、孔が穿孔されており、この孔を通して圧力センサ8がチャンバ空間7a内の圧力を検出する。
【0043】
圧力センサ8は、気体圧力を検出可能なセンサ装置であり、圧力を検出するための圧力導入管81と圧力センサ8の本体とで構成され、圧力センサ8の本体には圧力検出用のセンサ素子が設けられる。圧力センサ8は、チャンバ空間7a内の圧力を検出する。そして、圧力センサ8は、圧力値を出力し信号線10aを介して歩行者保護装置ECU10へ信号を送信する。
【0044】
歩行者保護装置ECU10は、図1に示したように、信号線10aにより圧力センサ8と接続され、車両本体に配置されている。歩行者保護装置ECU10は、図示しない歩行者保護装置(たとえば公知の歩行者保護用のエアバッグやフード跳ね上げ装置など)の起動制御を行うための電子制御装置であり、圧力センサ8から出力される信号が信号線10aを介して入力されるように構成される。歩行者保護装置ECU10は、車両のバンパ2に歩行者等が衝突したか否かを判別し、歩行者保護装置を作動させる処理を実行する。
【0045】
次に、本実施形態の車両用衝突検知装置1による衝突の検知について説明する。この車両のバンパ2に歩行者が衝突すると、歩行者の衝突した部位がバンパカバー3を介してチャンバ部材7のチャンバ本体71を押圧し、押圧された部分が変形し潰れる。チャンバ本体71が変形し潰れることにより、チャンバ本体71のチャンバ空間7a内の圧力が変化する。次に、圧力センサ8がチャンバ空間7a内の圧力を検出し、歩行者保護装置ECU10へ圧力信号が送信される。そして、歩行者保護装置ECU10は、圧力センサ8からの信号に基づいて歩行者が衝突したか否かを判別する処理を実行することになる。
【0046】
以上詳述したことから明らかなように、本実施形態によれば、チャンバ部材7は、チャンバ本体71の下面側に開口する3つの呼吸孔721a〜723aを備えているので、チャンバ本体71内部が外部の大気と連通し、標高の変化による大気圧変動の影響を受けることなく、バンパ2への衝突に伴うチャンバ部材7内の圧力変化を正確に検出することができる。
【0047】
そして、3つの呼吸孔721a〜723aのうち、呼吸孔721aが他の呼吸孔722a、723aよりも低い高さ位置にて形成されることにより、チャンバ本体71内部に呼吸孔を介して水が浸入した場合には、その溜まった水が呼吸孔721a〜723aを介して迅速に外部へ排出される。すなわち、各呼吸孔の高さ位置が同一である構成とした場合、各呼吸孔の排出量も同一となるため、水抜けと同時に同一の孔から大気の侵入が無ければ水を排出することができない。これに対し、本発明の構成では、少なくとも1つの呼吸孔721aが、他の呼吸孔722a、723aよりも低い高さ位置にて開口することによって、他の呼吸孔722a、723aよりも排出量が大きくなる。このため、呼吸孔による排出量の違いが水排出のきっかけを形成し、チャンバ部材7内部に溜まった水が外部へ迅速に排出される。
【0048】
また、チャンバ本体71は、管状部721〜723がチャンバ本体71の下面部から下方へ突出形成され、管状部721の下端に呼吸孔721aが、管状部722の下端に呼吸孔722aが、管状部723の下端に呼吸孔723aが開口しているので、チャンバ本体71内部に加工粉が入ることなく、呼吸孔を容易に形成することができる。例えば、チャンバ部材7のブロー成形によって、まず先端が塞がった管状部を形成し、管状部の先端を径方向に切断して開口することによって、チャンバ本体71内部に加工粉が入ることなく、呼吸孔721a〜723aを容易に形成することができる。
【0049】
チャンバ本体71は、下面部の高さ位置が異なる領域から構成され、呼吸孔721aが、高さ位置が最も低い領域である中央部71aの下面側の管状部721の下端に開口するので、チャンバ部材7内部に溜まった水が最も低い領域に集まりやすく、チャンバ部材7内部に溜まった水が外部へ迅速に排出される。
【0050】
更に、呼吸孔721a〜723aは、チャンバ本体71の下面側で且つ該チャンバ本体の車両後方側に設けられているので、チャンバ本体71内部に溜まった水を車外へ排出しやすい。
【0051】
そして、チャンバ部材7の下方に配設されたアブソーバ6の後端面の一部には、バンパレインフォースメント4の前面4aとの間に隙間を隔てる逃げ部6aが凹設されているので、アブソーバ6と呼吸孔721a〜723aとが物理的に緩衝して導通路が閉塞されることを抑制することができるため、チャンバ本体71内部に溜まった水を確実に排出できる。
【0052】
次に、実施形態の第一変形例について、図7を参照しつつ説明する。図7は本変形例における車両用衝突検知装置1のチャンバ部材7の呼吸孔721a周辺を正面視にて示す断面図である。尚、延設部73、圧力センサ8及びバンパレインフォースメント4等は省略したものである。そして、上述した実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、それらについての詳細な説明を省略し、主に実施形態と異なる点について説明する(以下の変形例においても同様)。
【0053】
上記実施形態では、チャンバ部材7はチャンバ本体71の下面部に管状部721〜723を備える構成としたが、本変形例では、チャンバ本体71に管状部を形成しない構成とした。その他構成については、上記実施形態と同様である。本変形例では、図7に示すように、チャンバ本体71の中央部71aの下面側に管状部721を形成せずに、中央部71aの下面側の下端に開口した呼吸孔721aを設けている。管状部721の無い呼吸孔721aは、チャンバ部材7のブロー成形後、ドリル等の穿孔用器具を用いて、チャンバ本体71の中央部71aの下面側の外側から穿孔させて開口させる。尚、呼吸孔の開口後、ドリル等の穿孔用器具を使用することにより生じた加工粉がチャンバ本体71内部に入ることがあるので、加工粉を取り除く必要がある。他の呼吸孔722a、723aについても管状部722、723を形成しない点で同様である。
【0054】
このように、チャンバ本体71に管状部を形成しない場合でも、図3に示したように、中央部71aの下面部の高さ位置は、端部71dの下面部及び端部71drの下面部よりも低く位置しているので、中央部71aの呼吸孔721aが他の呼吸孔722a、723aよりも低い高さ位置にある。そして、呼吸孔721aは、呼吸孔722a、723aよりも高低差hだけ低い高さ位置に形成されることになる。そのため、呼吸孔721aが、他の呼吸孔722a、723aよりも低い高さ位置にて開口することによって、他の呼吸孔722a、723aよりも排出量が大きくなり、呼吸孔による排出量の違いが水排出のきっかけを形成し、チャンバ部材7内部に溜まった水が外部へ迅速に排出される。
【0055】
更に、チャンバ本体71の複数の領域のうち高さ位置が最も低い領域である中央部71aの下面側に呼吸孔721aが開口することにより、チャンバ部材7内部に溜まった水が最も低い領域に集まりやすく、チャンバ部材7内部に溜まった水が外部へ迅速に排出される。
【0056】
次に、実施形態の第二変形例について、図8を参照しつつ説明する。図8は本変形例における車両用衝突検知装置1のチャンバ部材7を正面から見た正面図である。上記実施形態の3つの呼吸孔721a〜723aは、中央部71aの呼吸孔721aが端部71d、71drの呼吸孔722a、723aよりも低い高さ位置であり、呼吸孔722a、723aが呼吸孔721aよりも高い位置に形成される構成とした。これに対して、本変形例では、図8に示すように、チャンバ本体71の端部71d、71drの下面部が、中央部71aの下面部よりも低い高さ位置にて形成されている。より詳細に説明すれば、チャンバ本体71は、車両に対して左端から右端へ順に、左端の端部71d、内側傾斜部71b、中央部71a、内側傾斜部71br及び右端の端部71drがそれぞれ連接して形成され、チャンバ空間7aを共有している。
【0057】
そして、内側傾斜部71bは、一方が端部71dと連接して低く他方が中央部71aと連接して高く傾斜している。内側傾斜部71brは、一方が端部71drと連接して低く他方が中央部71aと連接して高く傾斜している。すなわち、中央部71aの下面部は、端部71d、71drの下面部よりも高い位置に形成されている。つまり、端部71d、71drはチャンバ本体71の複数の領域のうち高さ位置が最も低い領域である。よって、端部71d、71drの呼吸孔722a、723aは、中央部71aの呼吸孔721aよりも低い高さ位置にて形成されている。そして、呼吸孔722a、723aは、呼吸孔721aよりも高低差hだけ低い高さ位置に形成されている。尚、管状部721〜723の長さは同一である。
【0058】
本変形例によれば、3つの呼吸孔721a〜723aのうち、呼吸孔722a、723aが呼吸孔721aよりも低い高さ位置にて形成されることにより、上記実施形態と同様の効果を有し、チャンバ本体71内に浸入して溜まった水を迅速に外部へ排出することができる。
【0059】
次に、実施形態の第三、四変形例について、図9、図10を参照しつつ説明する。図9は第三変形例におけるチャンバ部材7の正面図である。図10は第四変形例におけるチャンバ部材7の正面図である。上記の実施形態及び第二変形例では、3つの管状部721〜723の長さを同一として、それぞれの呼吸孔721a〜723aの高さ位置は、チャンバ本体71の中央部71a、端部71d、71drの下面部の高さ位置により決定した。
【0060】
これに対して、第三、四変形例では、チャンバ部材7は長さの異なる管状部を備え、少なくとも1つの呼吸孔は、3つの管状部721〜723のうち最も長い管状部の下端に開口する構成とした。中央部71a、端部71d、71drの下面部の高さ位置は、ほぼ同一である。
【0061】
すなわち、第三変形例では、図9に示すように、3つの管状部721〜723のうち中央部71aの管状部721が、他の管状部722、723より長く形成されている。管状部721の下端に呼吸孔721aが、管状部722の下端に呼吸孔722aが、管状部723の下端に呼吸孔723aがそれぞれ開口している。そして、呼吸孔721aは、他の呼吸孔722a、723aよりも高低差hだけ低い高さ位置に形成される。
【0062】
また、第四変形例では、図10に示すように、3つの管状部721〜723のうち端部71dの管状部722と端部71drの管状部723とが、中央部71aの管状部721より長く形成されている。管状部722の下端に呼吸孔722aが、管状部723の下端に呼吸孔723aが、管状部721の下端に呼吸孔721aがそれぞれ開口している。そして、呼吸孔722a、723aは、呼吸孔721aよりも高低差hだけ低い高さ位置に形成される。
【0063】
第三、四変形例によれば、3つの呼吸孔721a〜723aのうち少なくとも1つが、他の呼吸孔よりも低い高さ位置にて形成されることにより、チャンバ本体71内に浸入して溜まった水を迅速に外部へ排出することができる。更に、管状部721〜723の下端の切断位置を任意に決定し、呼吸孔721a〜723aの高さ位置を簡単に調整することができる。
【0064】
本発明は上述した実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を施すことが可能であることは云うまでもない。例えば、上述の実施形態や変形例の呼吸孔の数を3つとしたが、限定するものではなくチャンバ部材7の大きさや形状により、変更してもよい。また、アブソーバ6の配置や形状に合わせて、呼吸孔をチャンバ本体71の車両前後方向の前側や中央に位置するように形成してもよい。また、チャンバ本体71は、管状部の下端に開口した呼吸孔と管状部の無い呼吸孔とを組み合わせて構成してもよい。
【符号の説明】
【0065】
1:車両用衝突検知装置 2:バンパ 3:バンパカバー
4:バンパレインフォースメント 4a:バンパレインフォースメント前面 5:サイドメンバ 6:アブソーバ
7:チャンバ部材 7a:チャンバ空間 71:チャンバ本体 71a:中央部 71b、71br:内側傾斜部 71c、71cr:外側傾斜部 71d、71dr:端部
721a〜723a:呼吸孔 721〜723:管状部
71’:比較例のチャンバ本体 721a’〜723a’:比較例の呼吸孔
8:圧力センサ 10:歩行者保護装置ECU 10a:信号線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のバンパ内でバンパレインフォースメントの前面に配設されチャンバ空間を内部に形成してなるチャンバ本体を有するチャンバ部材と、前記チャンバ空間内の圧力を検出する圧力センサとを備え、前記圧力センサの検出結果に基づいて前記車両バンパへの衝突を検知するように構成された車両用衝突検知装置において、
前記チャンバ部材は、前記チャンバ本体の下面側に開口する複数の呼吸孔を備え、
複数の前記呼吸孔のうち少なくとも1つが、他の前記呼吸孔よりも低い高さ位置にて開口することを特徴とする車両用衝突検知装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つの呼吸孔は、前記チャンバ本体の下面部から下方へ突出形成された管状部の下端に開口することを特徴とする請求項1に記載の車両用衝突検知装置。
【請求項3】
前記チャンバ部材は、長さの異なる複数の前記管状部を備え、
前記少なくとも1つの呼吸孔は、複数の前記管状部のうち最も長い管状部の下端に開口することを特徴とする請求項2に記載の車両用衝突検知装置。
【請求項4】
前記チャンバ本体は、下面部の高さ位置が異なる複数の領域から構成され、
前記少なくとも1つの呼吸孔は、前記複数の領域のうち高さ位置が最も低い領域の下面側に開口することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の車両用衝突検知装置。
【請求項5】
複数の前記呼吸孔は、前記チャンバ本体の下面側で且つ該チャンバ本体の車両後方側に設けられることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の車両用衝突検知装置。
【請求項6】
前記チャンバ部材の下方に前記衝突の際の衝撃を吸収するためのアブソーバが配設され、前記アブソーバの後端面の少なくとも一部には、前記呼吸孔との緩衝を避けると共に導通路を確保するための逃げ部が凹設されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の車両用衝突検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−96758(P2012−96758A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−248544(P2010−248544)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)