説明

車両用表示システムおよび表示制御方法

【課題】ドライバーの誤操作によって表示が切り替わるといった煩わしさを低減する。
【解決手段】入力装置10は、第1の判定値以上の操作力でキートップ14が操作されたことを検出した場合に、接触検出信号を表示制御装置に出力する第1のスイッチ12と、それ以上の操作力でキートップ14が操作されたことを検出した場合に、操作検出信号を表示制御装置に出力する第2のスイッチ13と、を有している。そして、表示制御装置は、接触検出信号が入力された後所定の移行時間が経過したことを条件に、操作検出信号に応じてキートップ14の操作に対応した表示制御を行っており、この移行時間を運転環境に応じて可変的に設定している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に乗車する乗員に各種情報を表示するための車両用表示システムおよび表示制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば特許文献1に示すように、運転負荷が変化する場合であっても効率的な操作メニューに対する操作を実現させる表示制御装置が開示されている。この表示制御装置では、入力装置が車両に乗車するドライバーにより操作されると、操作入力判断部によりドライバーの操作能力を判定し、表示メニュー作成部により操作メニューを表示制御する。この場合、表示メニュー作成部は、走行状況判断部14にて判断された運転負荷に応じて第1メニュー情報を用いた操作メニュー表示処理から、第1メニュー情報に対して階層数を制限した第2メニュー情報を用いた操作メニュー表示処理に移行するタイミングをドライバーの操作能力に基づいて決定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−251756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示された手法では、単にドライバーの操作能力により、操作メニュー表示処理の移行タイミングを調整するものであるが、例えば、ドライバーが誤操作してしまったというような場合において、当該操作に応じて表示が切り替り煩わしさを感じる虞がある。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ドライバーの誤操作によって表示が切り替わるといった煩わしさを低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決するために、本発明は、入力手段がドライバーによる操作に応じて所定の信号を出力し、入力手段からの信号に基づいて、車両用表示装置を制御する。ここで、入力手段は、ドライバーにより操作可能な操作子が第1の判定値以上の操作力で操作されたことを検出した場合に、接触検出信号を出力し、これよりも大きい操作力で前記操作子が操作されたことを検出した場合に、操作検出信号を出力する。この場合、接触検出信号が入力された後所定の移行時間が経過したことを条件に、操作検出信号に応じて操作子の操作に対応した表示制御を行っており、この移行時間は運転環境に応じて可変的に設定される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、操作子に誤操作がなされるような運転シーンであっても、運転環境に応じて移行時間が適切に設定されることとなる。これにより、誤操作により車両用表示装置の表示が切り替わるといった事態を抑制することができるので、煩わしさを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】車両用表示システムの全体構成を模式的に示す説明図
【図2】入力装置10の構成を模式的に示す説明図
【図3】入力装置10の動作を示す説明図
【図4】表示制御装置30の構成を機能的に示すブロック図
【図5】表示内容作成部38による表示形態を説明する説明図
【図6】シーン判別の処理手順を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本発明の実施形態にかかる車両用表示システムの全体構成を模式的に示す説明図である。この車両用表示システムは、入力装置10と、図4を参照して後述する表示制御装置30と、表示装置40とで構成されており、車両に乗車する乗員に各種情報を表示するためのシステムである。
【0010】
入力装置10は、ステアリングホイール1に配置されており、本実施形態では、外側のリング2と中央部のボス3とを連結する左右のスポーク部にそれぞれ配設されている。この入力装置10は、ステアリングホイール1を操作する乗員(ドライバー)によって操作され、当該ドライバーによる操作に応じた所定の信号を表示制御装置30に出力する。また、かかる信号は、必要に応じてオーディオ、テレビ、ナビゲーションシステム、カメラなどの車載機器に出力される。ドライバーは、この入力装置10を通じて、操作を希望する車載機器の選択や、その選択された車載機器の操作を行うことができる。
【0011】
図2は入力装置10の構成を模式的に示す説明図であり、同図(a)は入力装置10を示す正面図であり、同図(b)は(a)に示す入力装置10のAA断面を示す断面図である。入力装置10は、回路基板11と、第1および第2のスイッチ12,13と、キートップ(操作子)14とを主体に構成されている。
【0012】
回路基板11は、第1および第2のスイッチ12,13を実装する基板であり、表示制御装置30と電気的に接続されている。
【0013】
第1のスイッチ12は、キートップ14が操作されたこと検出するスイッチ(第1の検出手段)であり、例えば、接点タイプのスイッチや、メンブレンスイッチなどを用いることができる。第1のスイッチ12は、ドライバーによるキートップ14の操作を検出するために、所定の円周上に離散的に配置されており、本実施形態では、上下左右に対応した4箇所に90度ピッチで配置されている。個々の第1のスイッチ12は、後述する第1の接点切替部18aにより接点がオンされることにより、接触検出信号を表示制御装置30に出力する。なお、表示制御装置30は、個々の第1のスイッチ12から出力される接触検出信号について、どの位置に該当するスイッチから出力されたか接触検出信号であるかを認識することができる。
【0014】
一方、第2のスイッチ13は、キートップ14が操作されたことを検出するスイッチ(第2の検出手段)であり、第1のスイッチ12と同様、接点タイプのスイッチや、メンブレンスイッチなどを用いることができる。第2のスイッチ13は、ドライバーによるキートップ14の操作を検出するために、所定の円周上に離散的に配置されており、第1のスイッチ12と同様、上下左右に対応した4箇所に90度ピッチで配置されている。個々の第2のスイッチ13は、後述する第2の接点切替部18bにより接点がオンされることにより、操作検出信号を表示制御装置30に出力する。なお、表示制御装置30は、個々の第2のスイッチ13から出力される操作検出信号について、どの位置に該当するスイッチから出力されたか操作検出信号であるかを認識することができる。
【0015】
第1のスイッチ12と第2のスイッチ13とは、後述するキートップ支点16を中心として共有する、径の異なる2つの円周上にそれぞれ配置される。具体的には、第1のスイッチ12は、所定径の第1の円周上に配置され、第2のスイッチ13は、この第1の円よ
りも径が大きい第2の円周上に配置されている。
【0016】
ここで、第1のスイッチ12と第2のスイッチ13とは、キートップ14が操作されたことをそれぞれ検出するものであるが、両者は、キートップ14が操作され際の操作力による検出感度が相違している。具体的には、第1のスイッチ12は、第1の判定値以上の操作力でキートップ14が操作された際に、これを検出し、接触検出信号を出力する。一方で、第2のスイッチ13は、第1の判定値よりも大きい第2の判定値以上の操作力でキートップ14が操作された際に、これを検出し、操作検出信号を出力する。
【0017】
すなわち、第1のスイッチ12は、ドライバーがキートップ14を操作した際には、第2のスイッチ13よりも先行してこれを検出することが可能となる。これにより、接触検出信号は、操作検出信号が出力されるよりも前に出力される。換言すれば、第1および第2のスイッチ12,13は、キートップ14が操作されたことを、第2のスイッチ13による検出タイミングよりも先行したタイミングで第1のスイッチ12が検出するという点において相違する。
【0018】
このような構成において、操作検出信号は、キートップ14の操作として具体的な制御に供するための信号として機能としおり、また、接触検出信号は、キートップ14の操作を事前に検出する信号として機能する。なお、キートップ14を操作して車載機器を操作するために、第2のスイッチ13から出力される信号はエンコード手段によってエンコードを行い、当該車載機器へ送信してもよい。
【0019】
キートップ14は、キートップ本体15と、キートップ支点16と、フランジ部18とを主体に構成される。本実施形態にかかる入力装置10は、このキートップ14の操作を通じて、代表的な操作位置である上下左右に対応する4種類の入力操作を受け付けることができる。
【0020】
キートップ本体15は、下面側が開口された円筒形状を有しており、このキートップ本体15における上面側の表面は、ドライバーが指を用いて押圧操作するためのキートップ操作面15aとして機能しており、スポーク部の表面に露出されている。円状のキートップ操作面15aにおいて、操作位置である上下左右の各位置には、触覚ガイド部17がそれぞれ配置されている。この触覚ガイド部17は、キートップ操作面15aの表面に形成された突起で構成されており、キートップ14の操作位置を視覚的に認識させる効果を有している。
【0021】
キートップ支点16は、回路基板11の所定位置に起立しており、キートップ本体15の中心軸に位置してキートップ本体15を支持している。このキートップ支点16は、キートップ本体15と一体的に形成されている。キートップ支点16は回路基板11における起立位置を中心に全方位に傾倒可能に構成されており、これにより、キートップ支点16を中心としてキートップ本体15およびフランジ部18が傾倒することを可能としている。このキートップ支点16は、通常、中立位置を保持するようにばね等の付勢手段(図示せず)により付勢されている。
【0022】
フランジ部18は、キートップ本体15の下側周縁を径方向の外側に張り出して形成されている。フランジ部18の下面には、第1のスイッチ12のそれぞれと位置的に対応して、下方に延在する第1の接点切替部18aが形成されている。この第1の接点切替部18aは、キートップ14の操作にともない第1のスイッチ12と機械的に接触することにより、当該第1のスイッチ12の接点をオンに切り替えることができる。同様に、フランジ部18の下面には、第2のスイッチ13のそれぞれと位置的に対応して、下方に延在する第2の接点切替部18bがそれぞれ形成されている。この第2の接点切替部18bは、
キートップ14の操作にともない第2のスイッチ13と機械的に接触することにより、当該第2のスイッチ13の接点をオンに切り替えることができる。
【0023】
図3は、入力装置10の動作を示す説明図である。同図において、(a)はドライバーによりキートップ14の操作がなされてない状態を示し、(b),(c)はドライバーによりキートップ14の操作がなされている状態を示している。
【0024】
同図(a)に示すように、ドライバーがキートップ14を操作していない場合、キートップ支点16は付勢手段の作用により中立位置を保持するため、キートップ本体15およびフランジ部18もこれに付随して中立位置を保持する。この中立位置において、フランジ部18は、回路基板11に対して平行となっている。この場合、フランジ部18の第1の接点切替部18aは第1のスイッチ12から所定量だけ離間した状態となり、第2の接点切替部18も第2のスイッチ13から所定量だけ離間した状態となっている。
【0025】
同図(b)は、キートップ操作面15aの所定箇所(例えば図中「矢印」で示す触覚ガイド部17に相当する箇所)をドライバーが所定の操作力(操作力≧第1の判定値)で押圧した状態を示す。この場合、キートップ本体15がキートップ支点16を中心として傾倒し、これとともにフランジ部18も傾倒する。この押圧操作にともない、第1次的に、第1の接点切替部18aが第1のスイッチ12と機械的に接触する。この場合、第1のスイッチ12は、接触検出信号を出力する。一方、第2の接点切替部18bは、第2のスイッチ13から未だに離間した状態となっており、第2のスイッチ13に接触することない。
【0026】
同図(c)は、同図(b)の状態から、当該状態の操作力よりも大きな操作力(操作力≧第2の判定値>第1の判定値)で押圧を継続した状態を示す。この場合、キートップ本体15がさらに傾倒し、これとともにフランジ部18もさらに傾倒する。これにより、第1の接点切替部18aが第1のスイッチ12と機械的に接触した状態を継続したまま、第2次的に、第1の接点切替部18aが第1のスイッチ12と機械的に接触する。この場合、第1のスイッチ12は、接触検出信号を出力し、第2のスイッチ13は、操作検出信号を出力する。
【0027】
そして、キートップ本体15への押圧が解放されると、キートップ支点16に作用する付勢力に従って、キートップ本体15およびフランジ部18が中立位置へと復帰する。なお、第1および第2のスイッチ12,13は、第1および第2の接点切替部18a,18bが接触を解除した段階で、接点がオフへと切り替わり、接触検出信号および操作検出信号の出力を終了する。
【0028】
このように、本実施形態では、第1のスイッチ12は、キートップ14に所定の操作力が加わった時に、接触検出信号を表示制御装置30へ出力する。この接触検出信号は、第2のスイッチ13による操作検出信号の出力タイミングよりも前のタイミングで出力される。そこで、第1の接点切替部18aと第1のスイッチ12との接触が、第2の接点切替部18bと第2のスイッチ13との接触よりも小さな操作力でなされるように、第1および第2のスイッチ12,13と、第1および第2の接点切替部18a,18bとの双方の関係が適切に設定されている。
【0029】
表示制御装置30は、表示装置40を制御する表示制御手段である。この表示制御装置30は、入力装置10の操作をガイドするために、当該操作位置と対応した項目を表示内容として表示装置40に表示したり、入力装置10からの信号に基づいて、ドライバーの操作に対応した表示制御を行ったりする。具体的には、表示制御装置30は、入力装置10からの接触検出信号および操作検出信号に基づいて、表示装置40に表示させる表示内
容と、その表示タイミングとを決定し、この決定に基づいて表示装置40へ表示指示を行う。
【0030】
図4は、表示制御装置30の構成を機能的に示すブロック図である。ここで、前述した入力装置10は、これを機能的に捉えた場合、入力部20と、接触検出部21とで構成される。入力部20は、ドライバーの操作に応じた操作検出信号を出力する機能を担っており、具体的には、上述した複数の第2のスイッチ13で構成されている。また、接触検出部21は、操作検出信号を出力する前提として接触検出信号を出力する機能を担っており、具体的には、上述した複数の第1のスイッチ12で構成されている。
【0031】
表示制御装置30としては、CPU、ROM、RAM、I/Oインターフェースを主体に構成されたマイクロコンピュータを用いることができる。この表示制御装置30は、これを機能的に捉えた場合、自車位置検出部31と、道路情報格納部32と、道路情報取得部33と、シーン判別部34と、車両情報取得部35と、入力間隔判定部36と、表示タイミング決定部37と、表示内容作成部38とを有している。
【0032】
自車位置検出部31は、自車両の位置(自車位置)と、自車両の進行方向とを検出する。たとえば、自車位置検出部31は、地磁気センサ、ジャイロといった各種センサ、GPS受信機などから出力される情報に基づいて、自律航法を用いて演算を行う。自車位置検出部31は、自車両が走行中においてもリアルタイムに自車位置と進行方向とを随時更新することができる(例えば5Hz毎に情報を更新)。
【0033】
道路情報格納部32は、道路形状を点(ノード、補完点)および線(リンク)で表したベクトルデータの集合体と、緯度経度ごとに特有の情報として記憶されている地点情報とで構成される道路情報を格納している。各点およびリンクには、道路の属性データが付加されている。点には、属性データとして、緯度、経度、道路曲率情報が付加され、リンクには、属性データとして、道路種別(国道、市道、高速道路、駐車区画等)、道路幅が付加されている。地点情報は、緯度経度といった位置情報と、道路曲率、推奨速度、路面μ、駐車区画等を含む情報内容と、情報内容を示すアイコンとから構成される。
【0034】
道路情報取得部33は、自車位置検出部31によって検出された自車両の位置および進行方向に基づいて、道路情報格納部32に格納されている道路情報とマップマッチング処理を行う。そして、道路情報取得部33は、マッチングされたリンク上の位置を起点とする一定距離内(例えば前方100m)の道路形状(以下「周辺道路情報」という)と、その一定距離内の道路の周辺に存在する地点情報(以下「周辺地点情報」という)とを取得する。
【0035】
なお、道路情報格納部32は、表示制御装置30が独自に保有する必要はなく、車両にナビゲーションシステムが車載機器として搭載されている場合には、当該ナビゲーションシステムが保有する道路情報を利用してもよいし、携帯電話や無線LAN等の通信手段を用いて遠隔地にあるサーバーが保有する道路情報を取得して利用する形態であってもよい。また、道路情報取得部33は、自車位置検出部31および道路情報格納部32を利用して、周辺道路情報および周辺地点情報を独自に検索するのみならず、車両にナビゲーションシステムが車載機器として搭載されている場合には、これと協同することで、当該ナビゲーションシステムが検索した情報を取得する構成であってもよい。
【0036】
シーン判別部34は、ドライバーによる入力装置10(具体的には、キートップ14)への誤接触が高いシーンを判別し、この判別結果に応じて、後述する「表示遅延」を決定する。シーンの判別を行うにあたり、シーン判別部34は、道路情報取得部33によって取得された周辺情報(具体的には、周辺道路情報および周辺地点情報)と、後述する車両
情報取得部35によって取得された車両情報とを利用する。
【0037】
車両情報取得部35は、車両情報、すなわち、車両に関する情報を取得する。車両情報としては、例えばアクセルペダルの踏込量に応じた指示値、ステアリングの舵角、横加速度、車速、車間距離、ウインカー操作の有無などの情報が挙げられる。車両情報は、車載LANを通じて取得することができが、対象部位にセンサー等を個別的に設置して、これらを通じて情報を取得してもよい。
【0038】
入力間隔判定部36は、入力部20から操作検出信号が入力されると、当該信号の入力時間を記憶する。そして、入力間隔判定部36は、予め保存されている前回入力された時間を参照し、その時間間隔が所定時間(例えば500msec)以下か否かを判断する。この判断により肯定判定された場合(時間間隔≦所定時間)、入力間隔判定部36は、制御フラグを、操作間隔が短いことを表す「1」にセットする。一方、当該判断により否定判定された場合(時間間隔>所定時間)、入力間隔判定部36は、制御フラグを「0」にセットする。
【0039】
表示タイミング決定部37は、シーン判別部34の判別結果と、入力間隔判定部36において設定される制御フラグとに基づいて、入力部20からの操作検出信号に対応した表示内容を表示装置40に表示する表示タイミングを決定する。
【0040】
表示内容作成部38は、入力部20からの操作検出信号および接触検出部21からの接触検出信号の入力に基づいて、表示装置40で表示する表示内容を作成する。例えば、表示内容作成部38は、ドライバーに車載機器を選択させるに際して、各車載機器に対応した項目からなる表示内容を表示装置40に表示して、車載機器の選択を促す。図5に示すように、キートップ14の操作位置と対応して4つの項目を表示内容として表示しているケースを想定する。この場合、表示内容作成部38は、ドライバーによってキートップ操作面15aにおける上部が押圧操作された場合には、これと位置的に対応する項目を強調表示(反転表示などを含む視覚的に差別可能な効果を生じる表示)した表示内容を作成するといった如くである。
【0041】
表示装置40は、インストルメントパネル、例えば、スピードメータといったメーター類を含む計器盤(アッパーメータ)の一部に配設されており、液晶ディスプレイや有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイなどで構成される表示部41を備えている。この表示装置40は、表示制御装置30からの表示指示、または、車載機器からの表示指示に応じて、所定の情報を表示部41に表示する。なお、表示装置40としては、前述の構成のみならず、センタークラスター部に配置してもよいし、映像をフロントガラスなどに映し出すヘッドアップディスプレイ等であってもよい。
【0042】
以下、本実施形態にかかる表示制御装置30の動作を説明する。この動作は、シーン判別、表示タイミングの決定、表示内容の作成の3つのプロセスから構成される。
【0043】
図6は、シーン判別の処理手順を示すフローチャートである。同図に示すフローチャートは、所定の周期(例えば10msec)で呼びだされ、表示制御装置30によって実行される。
【0044】
まず、ステップ10(S10)において、自車位置検出部31は、自車両の位置(現在位置)と、自車両の進行方向とを検出する。例えば、自車両の位置は、緯度および経度で表され、自車両の進行方位は、自車両の進行方位が北方向の場合を0度として、時計回りの角度で表される。
【0045】
ステップ11(S11)において、道路情報取得部33は、現在位置および進行方向と、道路情報格納部32に格納されている道路情報とに基づいて、周辺情報を取得する。この周辺情報は、周辺道路情報および周辺地点情報が該当する。
【0046】
ステップ12(S12)において、車両情報取得部35は、車両情報を取得する。
【0047】
ステップ13(S13)において、シーン判別部34は、ステップ11において取得した周辺道路情報を参照し、自車両の分岐点の手前か否か、すなわち、所定距離以内に分岐点が存在するか否かを判断する。このステップ13において肯定判定された場合、すなわち、分岐点が存在する場合には、後述するステップ17(S17)に進む。一方、ステップ13において否定判定された場合、すなわち、分岐点が存在しない場合には、ステップ14(S14)に進む。
【0048】
ステップ14において、シーン判別部34は、ステップ11において取得した周辺道路情報を参照し、自車両がカーブの手前か否か、すなわち、所定距離以内に所定曲率以上のカーブが存在するか否かを判断する。このステップ14において肯定判定された場合、すなわち、カーブが存在する場合には、ステップ17に進む。一方、ステップ14において否定判定された場合、すなわち、カーブが存在しない場合には、ステップ15(S15)に進む。
【0049】
ステップ15において、シーン判別部34は、ステップ12において取得した車両情報に基づいて、ステアリングの舵角が所定範囲内(例えば80°〜100°)であるか否かを判断する。このステップ15において肯定判定された場合、すなわち、舵角が所定範囲内である場合には、ステップ17に進む。一方、ステップ15において否定判定された場合、すなわち、舵角が所定範囲内でない場合には、ステップ16(S16)に進む。
【0050】
ステップ16において、シーン判別部34は、ステップ12において取得した車両情報に基づいて、ウインカーが操作されているか否かを判断する。このステップ16において肯定判定された場合、すなわち、ウインカーが操作されている場合には、ステップ17に進む。一方、ステップ16において否定判定された場合、すなわち、ウインカーが操作されていない場合には、ステップ18(S18)に進む。
【0051】
ステップ17において、シーン判別部34は、前述の各ステップの判断結果を踏まえ、現在の走行シーンは、ドライバーによる入力装置10(具体的には、キートップ14)への誤接触が高いシーンであると判断する。そして、シーン判別部34は、「表示遅延」を「中程度」に設定し、この旨を表示タイミング決定部37に出力する。ここで、「表示遅延」とは、接触検出信号が入力してから所定期間は、その後に操作検出信号が入力されたとしても、当該操作検出信号に対応した表示を行なわず、当該期間経過した後に、入力される操作検出信号に対応した表示を行うための当該期間を設定するパラメータである。本実施形態において、「表示遅延」には、「中程度」と「小程度」との2つの要素があり、「中程度」は「小程度」と比較して、前述の期間が長くなるように設定されている。例えば、「中程度」としては500msec、「小程度」としては200msecを用いることができる。
【0052】
ステップ18において、シーン判別部34は、前述の各ステップの判断結果を踏まえ、現在の走行シーンは、ドライバーによる入力装置10(具体的には、キートップ14)への誤接触が高いシーンでないと判断する。そして、シーン判別部34は、「表示遅延」を「小程度」に設定し、この旨を表示タイミング決定部37に出力する。
【0053】
次に、表示タイミング決定の処理手順について説明する。表示タイミング決定部37は
、シーン判別部34により設定される表示遅延と、入力間隔判定部36において設定される制御フラグとに基づいて、表示タイミングを決定し、これを表示内容作成部38に指示する。具体的には、表示遅延が中程度であった場合、表示タイミング決定部37は、表示内容作成部38へ中程度の表示遅延を指示する。一方、表示遅延が小程度であった場合、表示タイミング決定部37は、表示内容作成部38へ小程度の表示遅延を指示する。これに対して、入力間隔判定部36における制御フラグが「1」にセットされている場合、表示タイミング決定部37は、表示内容作成部38へ所定時間表示切替を実施しないよう指示する。
【0054】
つぎに、表示内容作成の処理手順について説明する。表示内容作成部38は、接触検出部21の検出結果(接触検出信号)と、表示タイミング決定部37の指示とに基づいて、表示部41への表示指示を行う。具体的には、表示内容作成部38は、表示遅延が中程度と指示された場合、接触検出信号の入力後、中程度の時間(例えば500msec)が経過した後に、操作検出信号に応じた表示を表示部41へ行う。一方、表示内容作成部38は、表示遅延が小程度と指示された場合、接触検出信号の入力後、小程度の時間(例えば200msec)が経過した後に、操作検出信号に応じた表示を表示部41へ行う。これに対して、表示内容作成部38は、所定時間表示切替を実施しないと指示された場合、接触検出信号の入力の有無に関わらず、所定時間(例えば500msec)表示内容を変更しない。
【0055】
このように本実施形態によれば、入力装置10は、ドライバーにより操作可能なキートップ14と、第1の判定値以上の操作力でキートップ14が操作されたことを検出した場合に、接触検出信号を表示制御装置30に出力する第1のスイッチ12と、第1の判定値よりも大きい第2の判定値以上の操作力でキートップ14が操作されたことを検出した場合に、操作検出信号を表示制御装置30に出力する第2のスイッチ13と、を有している。
【0056】
この場合、表示制御装置30は、接触検出信号が入力された後所定の移行時間が経過したことを条件に、操作検出信号に応じてキートップ14の操作に対応した表示制御を行っており、この移行時間を運転環境に応じて可変的に設定している。
【0057】
かかる構成によれば、キートップに誤操作がなされるような運転シーンであっても、運転環境に応じて移行時間が適切に設定されることとなる。これにより、誤操作により表示部41の表示が切り替わるといった事態を抑制することができるので、煩わしさを低減することができる。
【0058】
また、本実施形態において、表示制御装置30は、前述の運転環境として車両の状態を示す車両情報を取得する車両情報取得部(車両情報取得手段)35をさらに有する。ここで、表示制御装置30は、車両情報であるステアリングの舵角に応じて、移行時間を切り替えている。
【0059】
かかる構成によれば、操舵中の運転環境においてに、操作意図なくキートップ14に触れてしまったような場合であっても、表示切替を抑制することができる。これは、ステアリングホイール1によって遮蔽されることのない、アッパーメータやセンタークラスター部に配設される表示装置40、あるいは、ヘッドアップディスプレイを利用する表示装置40において特に効果を奏する。
【0060】
また、本実施形態において、表示制御装置30は、運転環境として道路情報を取得する道路情報取得部(道路情報取得手段)33をさらに有する。ここで、表示制御装置30は、道路情報である自車両前方の道路形状に応じて、移行時間を切り替えている。
【0061】
かかる構成によれば、ドライバーにとって運転負荷の高い、分岐、合流などの運転環境において、操作意図なくタッチスイッチに触れたときの画面切替を抑制することが出来る。
【0062】
また、本実施形態において、表示制御装置30は、運転環境として、キートップ14の操作頻度に相当する操作検出信号の入力間隔を判定する入力間隔判定部(入力間隔判定手段)36をさらに有する。ここで、表示制御装置30は、操作検出信号の入力間隔に応じて、移行時間を切り替えている。
【0063】
かかる構成によれば、操作者が連続してキートップ14を操作する運転環境において、第1のスイッチ12のオンオフ変化に応じた画面切替を抑制することができる。
【0064】
以上、本発明の実施形態にかかる車両表示システムについて説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、その発明の範囲内において種々の変形が可能であることはいうまでもない。また、本発明は、かかるシステム構成のみならず、上述した表示制御方法もその発明の一部として機能する。
【符号の説明】
【0065】
1 ステアリングホイール
2 リング
3 ボス
10 入力装置
11 回路基板
12 第1のスイッチ
13 第2のスイッチ
14 キートップ
15 キートップ本体
15a キートップ操作面
16 キートップ支点
17 触覚ガイド部
18 フランジ部
18a 第1の接点切替部
18b 第2の接点切替部
20 入力部
21 接触検出部
30 表示制御装置
31 自車位置検出部
32 道路情報格納部
33 道路情報取得部
34 シーン判別部
35 車両情報取得部
36 入力間隔判定部
37 表示タイミング決定部
38 表示内容作成部
40 表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングホイールに配置されており、ドライバーによる操作に応じて所定の信号を出力する入力手段と、
前記入力手段からの信号に基づいて、前記車両用表示装置を制御する表示制御手段と、を有し、
前記入力手段は、
ドライバーにより操作可能な操作子と、
第1の判定値以上の操作力で前記操作子が操作されたことを検出した場合に、接触検出信号を前記表示制御手段に出力する第1の検出手段と、
前記第1の判定値よりも大きい第2の判定値以上の操作力で前記操作子が操作されたことを検出した場合に、操作検出信号を前記表示制御手段に出力する第2の検出手段と、を有し、
前記表示制御手段は、
前記接触検出信号が入力された後所定の移行時間が経過したことを条件に、前記操作検出信号に応じて前記操作子の操作に対応した表示制御を行っており、当該移行時間を運転環境に応じて可変的に設定することを特徴とする車両用表示システム。
【請求項2】
前記運転環境として車両の状態を示す車両情報を取得する車両情報取得手段をさらに有し、
前記表示制御手段は、前記車両情報であるステアリングの舵角に応じて、前記移行時間を切り替えることを特徴とする請求項1に記載された車両用表示システム。
【請求項3】
前記運転環境として道路情報を取得する道路情報取得手段をさらに有し、
前記表示制御手段は、前記道路情報である自車両前方の道路形状に応じて、前記移行時間を切り替えることを特徴とする請求項1または2に記載された車両用表示システム。
【請求項4】
前記運転環境として、前記操作子の操作頻度に相当する前記操作検出信号の入力間隔を判定する入力間隔判定手段をさらに有し、
前記表示制御手段は、前記操作検出信号の入力間隔に応じて、前記移行時間を切り替えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載された車両用表示システム。
【請求項5】
ステアリングホイールに配置された入力手段が、ドライバーによる操作に応じて所定の信号を出力する第1のステップと、
前記入力手段からの信号に基づいて、車両用表示装置を制御する第2のステップと、を有し、
前記第1のステップは、
ドライバーにより操作可能な操作子が第1の判定値以上の操作力で操作されたことを検出した場合に、接触検出信号を出力するステップと、
前記第1の判定値よりも大きい第2の判定値以上の操作力で前記操作子が操作されたことを検出した場合に、操作検出信号を出力するステップと、を有し、
前記第2のステップは、
前記接触検出信号が入力された後所定の移行時間が経過したことを条件に、前記操作検出信号に応じて前記操作子の操作に対応した表示制御を行うステップと、
前記移行時間を運転環境に応じて可変的に設定するステップとを有することを特徴とする表示制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−153323(P2012−153323A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16265(P2011−16265)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】