説明

車両用表示装置の防水構造

【課題】 防水部材が容易に着脱可能な車両用表示装置の防水構造を提供する。
【解決手段】 車両情報を表示する液晶表示パネル1と、液晶表示パネル1による表示を視認可能に液晶表示パネル1を収納するケース2と、このケース2に収納され、配線32と接続されるとともに液晶表示パネル1を駆動する電子部品を実装する回路基板3と、配線32を挿通するケース2の開口22bとその周囲部分を覆うグロメット4と、を備え、ケース2は、車体側に接続された金属フレームBに固定保持されるとともに、開口22bの周囲部分において、ケース2と金属フレームBとの間にグロメット4を挟む構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両情報を表示する車両用表示装置の防水構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用表示装置にあっては、例えば、ケースの内部に指針による指示を行う速度計や燃料計や温度計などの各種の表示器を収納固定するとともに、各表示器を駆動するための回路基板を収納固定している。また、場合によっては液晶表示装置からなる表示器をケース内に収納固定するとともに、この液晶表示器を駆動するための回路基板をケース内に収納固定している。
【0003】
また、前記回路基板からケースの外部側へと電気的に引き回し形成するために、回路基板に接続した配線コードなどを介してケースに設けた開口を通じてケースの内部側から外部側へと引き出し形成している。この際、例えば、特許文献1などに記載されているように、配線部材とケースの開口部との間の防水性を保つために弾性部材からなるグロメットに前記配線部材をそれぞれ挿通して水密に保つように構成している。
【0004】
また、上述した特許文献1のように、配線を挿通したグロメットをケースに組み付ける場合、ケースの内部側からケースの開口部を通じて外部側へと引き出し案内する際に、グロメットをケースの開口部に嵌め込んで固定保持するものに対して、専用の金属抑え部材を用いてグロメットを挟み込む構造とするものが特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−334982号公報
【特許文献2】特開2011−21959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2の車両用表示装置にあっては、防水構造を確保でき、かつ車体に組み付けられた状態で振動などによってもグロメットが外れることのない構造であるが、専用の金属抑え部材が必要であるといった問題があった。この専用の金属抑え部材によれば、車両用表示装置が車体に組み付けられるまでに、車両用表示装置の検査や試験などのため回路基板を臨むためにグロメットを着脱する場合に、わざわざ金属抑え部材も着脱する必要があった。また、この際、金属抑え部材の取り付け状態など繁雑な確認作業も必要であった。
【0007】
そこで本発明の目的は、上述した課題に着目してなされ、防水部材が容易に着脱可能な車両用表示装置の防水構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の車両用表示装置の防水構造は、車両情報を表示する表示手段と、前記表示手段による表示を視認可能に前記表示手段を収納するケースと、このケースに収納され、前記配線と接続されるとともに前記表示手段を駆動する電子部品を実装する回路基板と、前記配線を挿通する前記ケースの開口とその周囲部分を覆う防水部材と、を備え、前記ケースは、車体側に接続されたフレーム部材に固定保持されるとともに、前記開口の周囲部分において、前記ケースと前記フレーム部材との間に前記防水部材を挟むことを特徴とする。
【0009】
また、前記防水部材は、前記ケースと前記フレーム部材とで挟まれる箇所において、前記ケースの形状に対応した凹凸形状部分を形成してなることを特徴とする。
【0010】
また、前記防水部材は、少なくとも前記ケースと前記フレーム部材とで挟まれる箇所が弾性部材にて形成されてなることを特徴とする。
【0011】
また、前記防水部材を弾性変形させた状態で、前記ケースと前記フレーム部材とを固定保持する固定部材を前記開口の周囲の近傍に備えてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、車両情報を表示する車両用表示装置の防水構造に関し、防水部材が容易に着脱可能な車両用表示装置の防水構造を提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態である表示モニタを示す断面図。
【図2】同上の表示モニタの組み付け状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を添付した図面に基づいて説明する。
【0015】
図1は、建設機械車両に搭載される表示モニタ(車両用表示装置)Aを示す断面図である。表示モニタAは、建設機械車両の雨水等かかりやすい箇所に設置され、液晶表示パネル(表示手段)1と、ケース2と、回路基板3と、グロメット(防水部材)4と、ビス(固定部材)5と、を備えている。
【0016】
液晶表示パネル1は、建設機械車両の利用者が視認可能なように運転席の近くに設けられ、残りのエネルギー容量(残燃料量)や車両の走行速度、各機構の状態を示すインジケータ、警報内容などの車両情報を画像表示するものである。また、液晶表示パネル1は、回路基板3と接続されて駆動信号を得るとともに、この回路基板3に実装されたバックライト11によって、透過照明されて表示できる。
【0017】
なお、この場合、液晶表示パネル1の表示領域以外を覆い隠すための見返しパネル12や、液晶表示パネル1とバックライト11との間に、光拡散シートなどの光学部材13を介在させて、照明むらを低減させて液晶表示パネル1の視認性を高めている。
【0018】
この場合、液晶表示パネル1は、薄膜トランジスタを用いて駆動制御され、詳述しない車両利用者の操作や、車両の状態に応じて画面切換えして、所望の表示を出力することができる。
【0019】
ケース2は、表示側ケース21と、背面側ケース22とで構成され、液晶表示パネル1や回路基板3を保持するとともに収納する。
【0020】
表示側ケース21は、液晶表示パネル1の表示出力を透過する窓部21aと、背面側ケース22と接続するための固定部(取り付け用穴)21bとを有しており、この場合、窓部21aとなる透明な合成樹脂材をインサート成型して遮光な固定部21bとともに形成されてなる。
【0021】
背面側ケース22は、遮光(有色)な合成樹脂材を用いて形成され、液晶表示パネル1や回路基板3を図示しないビスやフックなどで固定保持することができる。また、背面側ケース22がこの固定保持した状態にて、液晶表示パネル1側から前記表示側パネル21で覆い塞ぐようにして、表示側パネル21を組み付けることができる。
【0022】
この場合、背面側ケース22は、側面側における表示側ケース21との当接箇所に防水パッキン22aを一周に渡って介在させるとともに、固定部21bにビス締めされて、表示側ケース21と水密に接続している。なお、背面側ケース22の背面側には、後述する回路基板3のコネクタを臨む開口22bやグロメット4を嵌める突壁22cと、突壁22cの同心円状に設けられる凹状の溝部22dとが設けられている。
【0023】
回路基板3は、スペーサ31によって液晶表示パネル1と所定間隔離れた位置で、背面側ケース22に保持され、ガラスエポキシ樹脂を用いた基板に銅箔パターンからなる回路配線が印刷形成された硬質プリント配線板からなる。
【0024】
また、回路基板3は、図示しない配線を介して液晶表示パネル1と接続し、車両情報を入力し所定プログラムによって演算するためのインターフェース回路やマイクロコンピュータ(演算手段)や、液晶表示パネル1を駆動制御するための駆動回路、液晶表示パネル1を透過照明するためのバックライト11、外部からの信号(車両情報)を入力したり、車両からの電源を供給するなどの複数の配線(被膜導線コード)32を接続するためのコネクタ33などの電子部品を実装している。なお、コネクタ33は、背面側ケース22の開口22bに対応した位置に設けられる。
【0025】
グロメット4は、合成ゴムからなる弾性材からなり、筒状の突壁22cの外径よりも若干小さな内径を有する嵌合筒部41と、この嵌合筒部41の一端側に背面側ケース22の開口22bよりも径大に延びるフランジ部42と、他端側に設けられる配線32を囲む嵌合筒部41よりも径小な蛇腹状の箇所を有する径小筒部43と、嵌合筒部41と径小筒部43とを傾斜状(円錐状)に接続する連結部44とが設けられる。なお、グロメットは、合成ゴムではなく、弾性を有する樹脂材料を適用することもできる。
【0026】
また、フランジ部42には、背面側ケース22の溝部22dの形状に対応する凸状の凸部42aが設けられている。また、グロメット4は、嵌合筒部41の開口部と径小筒部43の開口部との両端以外が塞がっており、回路基板3に実装されたコネクタ33に対応するコネクタ33aと図示しない複数のコネクト端子に接続される配線32とを覆うものである。また、図2に示す、組み付け状態にあっては、嵌合筒部41の一端開口部は、突壁22cによって塞がれ、径小筒部43の他端開口部は、配線32や図示しない防水テープなどによって隙間無く設けられる。
【0027】
ビス5は、図1に示す状態から一対のコネクタ33,33aが接続され、嵌合筒部41が突壁22cに嵌め込まれ、フランジ部42の凸部42aが背面側ケース22の溝部22dに入れ込まれた状態にて、表示モニタAを車両に組み付けるための取り付け具である。ビス5は、表示モニタAを車体に接続された平板状の金属フレーム(フレーム部材)Bとともに、背面ケース22に設けられる固定部(取り付け用穴)22eに螺合されて、図2に示すように、金属フレームB上に表示モニタAが組み付けられる。
【0028】
なお、金属フレームBには、予め嵌合筒部41よりも径大で、フランジ部42よりも径小な切り欠き部(孔)B1と、上述したビス5と同様な固定部材の挿通用の穴B2が複数用意されている。この場合、金属フレームBがフランジ部42に対して一周に渡って当たるように切り欠き部B1が設けられる。また、穴B2やこれに対応する固定部22eは、開口22bを囲むように3つ以上設けられ、少なくとも一つは、フランジ部42の近傍(フランジ部42から5cm以内)箇所に設けられるため、ビス5によってフランジ部42を強く圧縮して変形できる。また、溝部22dには、金属フレームBとケース2とに挟まれて弾性変形し、金属フレームBとケース2とが接する面方向に膨らむ体積分を考慮したスペースが用意されている。
【0029】
従って、ビス5によって表示モニタAが車体に組み付けられることによって、切り欠き部B1の周囲が抑え部分としてフランジ部42を圧縮して弾性変形する程度に押し圧した状態で固定保持でき、更なる水密な構造を得ることができる。また、グロメット4のフランジ部42がケース2と金属フレームBとによって挟まれることや、更に、溝部22dに入り込んだ凸部42cによって、グロメット4が抜けにくい構造となるため、車体の強い振動や、配線の押し出しなどが多少生じても防水構造を確保できる。なお、表示モニタAが車体から外された状態にあっては、グロメット4のケース2との前記嵌め込みを解除するだけで、容易にコネクタの脱着作業を行うことができる。
【0030】
斯かる車両用表示装置(表示モニタ)の防水構造にあっては、車両情報を表示する液晶表示パネル1と、液晶表示パネル1による表示を視認可能に液晶表示パネル1を収納するケース2と、このケース2に収納され、配線32と接続されるとともに液晶表示パネル1を駆動する電子部品を実装する回路基板3と、配線32を挿通するケース2の開口22bとその周囲部分を覆うグロメット4と、を備え、ケース2は、車体側に接続された金属フレームBに固定保持されるとともに、開口22bの周囲部分において、ケース2と金属フレームBとの間にグロメット4を挟む構成である。
【0031】
従って、専用の金属抑え部材や、接着剤等の部材を必要とすることなく、車両用表示装置が車体に組み付けられるまで、車両用表示装置の検査や試験などのためにグロメットや内在するコネクタの着脱作業が容易であるだけでなく、車体に組み付けられた状態にあっては、外れにくく、また水密を確保した防水構造となる。
【0032】
また、グロメット4は、ケース2と金属フレームBとで挟まれる箇所において、ケース2の形状に対応した凹凸形状部分(凸部42c)を形成してなる。また、グロメット4は、少なくともケース2と金属フレームBとで挟まれる箇所が弾性部材にて形成されてなる。また、グロメット4を弾性変形させた状態で、ケース2と金属フレームBとを固定保持するビス5を開口22bの周囲の近傍に備えてなる。
【0033】
従って、車両用表示装置が車体に組み付けられた状態にあっては、グロメット4とケース2との間の水密を確保しつつ、グロメット4が抜け外れてしまうことを防止できる。
【0034】
本発明の車両用表示装置の防水構造を上述した実施の形態の構成にて例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の構成においても、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の改良、並びに表示の変更が可能なことは勿論である。例えば、固定部材としてビス5を例にあげて説明したが、フックなどの係止構造によるものであってもよいし、係止部分とビス止め部分を併用するものであっても、上述した実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、車両に搭載して各種車両情報を表示する車両用表示装置に関して、例えば、自動車やオートバイ、あるいは農業機械や建設機械を備えた移動体に搭載される表示装置の防水構造として適用でき、特に、建設機械などの特殊車輌や水上バイク,スノーモービル,船舶、あるいはオートバイなどの水面を移動する移動体の計器や雨滴に晒される環境で使用される計器の防水構造として好適である。
【符号の説明】
【0036】
1 液晶表示パネル(表示手段)
2 ケース
22b 開口
22c 突壁
22d 溝部
3 回路基板
32 配線
4 グロメット(防水部材)
42 フランジ部
42a 凸部
5 ビス(固定部材)
A 表示パネル(車両用表示装置)
B 金属フレーム(フレーム部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両情報を表示する表示手段と、
前記表示手段による表示を視認可能に前記表示手段を収納するケースと、
このケースの外部と接続するための配線と、
前記ケースに収納され、前記配線と接続されるとともに前記表示手段を駆動する電子部品を実装する回路基板と、
前記配線を挿通する前記ケースの開口とその周囲部分を覆う防水部材と、を備え、
前記ケースは、車体側に接続されたフレーム部材に固定保持されるとともに、
前記開口の周囲部分において、前記ケースと前記フレーム部材との間に前記防水部材を挟むことを特徴とする車両用表示装置の防水構造。
【請求項2】
前記防水部材は、前記ケースと前記フレーム部材とで挟まれる箇所において、前記ケースの形状に対応した凹凸形状部分を形成してなることを特徴とする請求項1に記載の車両用表示装置の防水構造。
【請求項3】
前記防水部材は、少なくとも前記ケースと前記フレーム部材とで挟まれる箇所が弾性部材にて形成されてなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用表示装置の防水構造。
【請求項4】
前記防水部材を弾性変形させた状態で、前記ケースと前記フレーム部材とを固定保持する固定部材を前記開口の周囲の近傍に備えてなることを特徴とする請求項3に記載の車両用表示装置の防水構造。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−32043(P2013−32043A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167878(P2011−167878)
【出願日】平成23年7月31日(2011.7.31)
【出願人】(000231512)日本精機株式会社 (1,561)