説明

車両用表示装置及び車両用表示システム

【課題】ヘッドアップディスプレイを搭載した車両において、車両上の警告等の特別な表示が現れた場合に、表示システムの動作を理解していない運転者に対して状況の把握に役立つ誘導を行う。
【解決手段】可視情報を表示する表示デバイス11と前記表示デバイスに表示される可視情報を含む光を所定の投影面に導く光投影部を備え前記可視情報を虚像として表示するHUD装置10であって、前記光投影部の投影によって前記虚像が表示される第1の表示領域と、所定の条件下で前記表示デバイスに表示される特定情報の内容と関連性を有する詳細情報が表示される第2の表示領域との間で少なくとも両者の位置を関係付ける誘導灯13と、前記表示デバイスに前記特定情報が表示される時に、誘導灯13を表示状態に制御するHUD制御部12とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可視情報を表示する表示部と、前記表示部に表示される可視情報を含む光を所定の投影面に導く光投影部を備え、前記可視情報を虚像として表示する車両用表示装置及び車両用表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用の表示装置に関しては、例えば情報量は少ないが緊急度の高い情報をすばやく運転者に認識させるために、視認性の良いヘッドアップディスプレイ(HUD)装置が用いられる場合がある。
【0003】
車両用のヘッドアップディスプレイは、表示装置本体内の表示部上に表示される可視情報を含む光像を車両のウインドシールド(フロントガラス)上に導いてその面に投影するものである。運転者は、通常の運転姿勢で前方を見る時に、ウインドシールドを透かして見える前方の風景や自車の車体の一部分と共に、ヘッドアップディスプレイによって投影された可視情報を視認することができる。運転者が視認する可視情報は、ウインドシールドの面よりも前方の、例えば視点から数m程度の距離の位置に虚像として結像されるので、運転者は運転中に目の焦点調節を行うことで前方の風景と共にヘッドアップディスプレイの表示内容を認識できる。
【0004】
このようなヘッドアップディスプレイ装置は、一般的に車両のインストルメントパネル内部に装置本体が配置される。そして、この装置本体内部の表示部上に表示される可視情報の光を、拡大系ミラー等の反射部材を含む光路を経由して、ウインドシールド、コンバイナ等の投射エリアに向けて投射し、運転者の視点位置から見て所定距離の位置に虚像を結像させる。
【0005】
車両用のヘッドアップディスプレイ装置に関連する従来技術が、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1においては、異常が検出された場合に、1カ所の異常と複数箇所の同時異常とを区別できる状態でマスターウォーニングを表示する技術を開示している。すなわち、ヘッドアップディスプレイ等が表示する内容は情報量が少ないので、少なくとも1つの異常が発生した場合にそれをヘッドアップディスプレイ等でマスターウォーニングとして表示するのが一般的である。これに対し、特許文献1では1つの異常発生を検出した時にはマスターウォーニングを点灯し、複数の異常発生を同時に検出した時にはマスターウォーニングを点滅表示して区別できるようにしている。
【0006】
上記と同様の従来技術が特許文献2にも開示されている。特許文献2においては、上記マスターウォーニングに相当する統一表示部における表示状態を、表示状態になった個別表示部の数が単数か複数かに応じて切り替えることを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−185883号公報
【特許文献2】特開平3−276836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ヘッドアップディスプレイを備えた車両の場合には、車両上の何らかの異常検出に対して、ヘッドアップディスプレイの表示を用いて、例えば感嘆符「!」のような単純な記号の表示により警告を発することが想定される。これにより、運転者は何らかの異常が発生していることを瞬時に把握することができる。
【0009】
また、一般的な車両はインストルメントパネルの箇所に、例えばスピードメータ、タコメータ、水温計、燃料計や、多数の警告灯を含む計器ユニットを搭載しているし、更に様々な文字列や図形や画像などを必要に応じて表示可能なモニタ表示器を搭載している車両も多く存在する。
【0010】
従って、ヘッドアップディスプレイに警告が表示された場合には、その警告に関する具体的な内容を、運転者はインストルメントパネル上の計器ユニットの表示や、前記モニタ表示器の表示内容を参照することにより把握することが可能である。
【0011】
しかしながら、全ての運転者が上記のように現在の状況をすぐに把握できるわけではない。例えば、運転者が初心者である場合や、高齢者である場合や、説明書の内容を読まない人である場合や、新しい車両を購入した直後である場合などを想定すると、車両に装備されている各種表示装置の機能や動作をほとんど理解していない場合も多いと考えられる。すなわち、仮に、車両上で何らかの異常が検出され、その結果としてヘッドアップディスプレイの表示に「!」のような警告が表示された場合に、その警告が何を意味しているのかについて運転者が全く気にしていなければ、現在の状況を把握するための動作、つまり計器板の表示や、前記モニタ表示器の表示内容を参照することは行わない。
【0012】
また、ヘッドアップディスプレイ上の「!」のような警告に対して、何らかの異常があることに運転者が気が付いたとしても、計器ユニット上にも様々な箇所に様々な計器や警告灯が存在するし、計器ユニット以外の箇所にもモニタ表示器等の別の表示器が存在する場合が多いので、特別にその車両の運転に慣れた運転者でない限り、「!」の警告に対して、どの箇所の表示を見れば良いのかをすぐには判断できない。
【0013】
上記のような理由により、視認性の良いヘッドアップディスプレイを搭載した車両であるにもかかわらず、緊急性の高い異常が発生した場合に、異常発生の内容を運転者がすぐに把握することができず、重大な車両故障の発生に繋がったり、交通事故を誘発する可能性も考えられる。
【0014】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ヘッドアップディスプレイを搭載した車両において、車両上の警告等の特別な表示が現れた場合に、表示システムの動作を理解していない運転者に対して、状況の把握に役立つ誘導を行うことが可能な車両用表示装置及び車両用表示システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前述した目的を達成するために、本発明に係る車両用表示装置は、下記(1)〜(3)を特徴としている。
(1) 可視情報を表示する表示部と、前記表示部に表示される可視情報を含む光を所定の投影面に導く光投影部を備え、前記可視情報を虚像として表示する車両用表示装置であって、
前記光投影部の投影によって前記虚像が表示される第1の表示領域と、所定の条件下で前記表示部に表示される特定情報の内容と関連性を有する詳細情報が表示される第2の表示領域との間で、少なくとも両者の位置を関係付ける誘導表示部と、
前記表示部に前記特定情報が表示される時に、前記誘導表示部を表示状態に制御する誘導表示制御部と
を備えること。
(2) 上記(1)に記載の車両用表示装置であって、
前記誘導表示部は、前記誘導表示制御部で点灯及び消灯の制御が可能な少なくとも1つの誘導用発光素子を含むこと。
(3) 上記(2)に記載の車両用表示装置であって、
前記誘導表示部は、前記誘導表示制御部で点灯及び消灯の制御が可能な複数の誘導用発光素子を含み、
前記誘導表示制御部は、前記複数の誘導用発光素子の点灯及び消灯を個別に制御して、前記第1の表示領域から前記第2の表示領域に向かう方向の流れの状態を表示すること。
【0016】
上記(1)の構成の車両用表示装置によれば、前記表示部に前記特定情報が表示される時に、前記誘導表示部が表示状態になる。従って、運転者は虚像として表示された前記特定情報が表示されている時に、同時に前記誘導表示部の表示も視認できる。また、前記誘導表示部は前記第1の表示領域と第2の表示領域との間に配置されているので、運転者は前記誘導表示部の近傍に存在する前記第2の表示領域にも注目する。つまり、運転者の注意を詳細情報が表示されている前記第2の表示領域に誘導できる。
また、上記(2)の構成の車両用表示装置によれば、発光素子の点灯や点滅などの表示により誘導するので、前記誘導表示部が運転者に視認されやすい。従って、より効果的に運転者を前記第2の表示領域に誘導できる。
また、上記(3)の構成の車両用表示装置によれば、誘導表示を前記第1の表示領域から前記第2の表示領域に向かう方向の光の流れとして表現できる。従って、一般的な運転者は、直感的に前記第2の表示領域を見れば良いと理解することになり、効果的な誘導が可能になる。
【0017】
前述した目的を達成するために、本発明に係る車両用表示システムは、下記(4)〜(5)を特徴としている。
(4) 第1の可視情報を表示する表示部と、前記表示部に表示される第1の可視情報を含む光を所定の投影面に導く光投影部を備え、前記第1の可視情報を虚像として表示する第1の車両用表示装置と、
前記第1の車両用表示装置よりも多くの情報を第2の可視情報として表示する第2の車両用表示装置と、
を含む車両用表示システムであって、
前記第1の車両用表示装置の光投影部の投影によって前記虚像が表示される第1の表示領域と、所定の条件下で前記第1の表示領域に表示される特定情報の内容と関連性を有する詳細情報が表示される前記第2の車両用表示装置上の第2の表示領域との間で、少なくとも両者の位置を関係付ける誘導表示部を、前記第1の車両用表示装置上、前記第2の車両用表示装置上、及びそれらの間の空間の少なくとも一カ所に備え、
前記第1の車両用表示装置の表示部に前記特定情報が表示される時に、前記誘導表示部を表示状態に制御する誘導表示制御部と
を備えること。
(5) 上記(4)に記載の車両用表示システムであって、
前記誘導表示部は、前記第1の車両用表示装置上に配置された少なくとも1つの誘導用発光素子を含む第1の誘導表示部と、前記第2の車両用表示装置上に配置された少なくとも1つの誘導用発光素子を含む第2の誘導表示部とを備え、
前記誘導表示制御部は、前記第1の誘導表示部の誘導用発光素子および前記第2の誘導表示部の誘導用発光素子の点灯及び消灯を個別に制御して、前記第1の表示領域から前記第2の表示領域に向かう方向の流れの状態を表示すること。
【0018】
上記(4)の構成の車両用表示システムによれば、前記第1の車両用表示装置の表示部に前記特定情報が表示される時に、前記誘導表示部を表示状態にできる。前記誘導表示部は、前記第1の表示領域と第2の表示領域との間に配置されているので、前記第1の表示領域の表示と第2の表示領域の表示とが関連付けされていることが分かるように運転者を誘導することができる。
また、上記(5)の構成の車両用表示システムによれば、誘導表示を前記第1の表示領域から前記第2の表示領域に向かう方向の光の流れとして表現できる。従って、一般的な運転者は、直感的に、現在の状況を把握するためには前記第2の表示領域を見れば良いと理解することになり、効果的な誘導が可能になる。
【0019】
また、前述した目的を達成するために、本発明に係る車両用表示装置は、下記(6)〜(8)を特徴としている。
(6) 車両上で詳細情報を第1の可視情報として表示する車両用表示装置であって、
前記第1の可視情報が表示される第1の表示領域と、前記詳細情報と関連を有し前記詳細情報よりも限定された情報が虚像の第2の可視情報として表示される第2の表示領域との間に配置され、前記第1の表示領域と第2の表示領域との少なくとも位置を関係付ける誘導表示部と、
前記第2の表示領域に予め定めた特定情報が表示される時に、前記誘導表示部を表示状態に制御する誘導表示制御部と
を備えること。
(7) 上記(6)に記載の車両用表示装置であって、
前記誘導表示部は、前記誘導表示制御部で点灯及び消灯の制御が可能な複数の誘導用発光素子を含み、
前記誘導表示制御部は、前記複数の誘導用発光素子の点灯及び消灯を個別に制御して、前記第2の表示領域から前記第1の表示領域に向かう方向の流れの状態を表示すること。
(8) 上記(6)に記載の車両用表示装置であって、
前記車両のウインドシールドから車室内側にずれた位置に配置された光反射板をさらに備え、
前記詳細情報を前記光反射板に投射して第1の虚像として表示すると共に、前記誘導表示部の表示状態を前記光反射板に投射して前記第1の虚像からずれた位置に第2の虚像として表示すること。
【0020】
上記(6)の構成の車両用表示装置によれば、前記第2の表示領域に予め定めた特定情報が表示される時に、前記誘導表示部を表示状態にできる。すなわち、所定のヘッドアップディスプレイ等の表示機能により前記第2の表示領域に警告等の限られた情報が表示される時に、前記誘導表示部を表示することにより、詳細な情報が表示される前記第1の表示領域に運転者を誘導できる。
また、上記(7)の構成の車両用表示装置によれば、誘導表示を前記第2の表示領域から前記第1の表示領域に向かう方向の光の流れとして表現できる。従って、一般的な運転者は、直感的に、現在の状況を把握するためには前記第1の表示領域を見れば良いと理解することになり、効果的な誘導が可能になる。
また、上記(8)の構成の車両用表示装置によれば、運転者の視点位置から十分に離れた位置に虚像として前記詳細情報および誘導表示を表示できる。従って、前記第1の表示領域の表示内容が表示される位置と前記第2の表示領域の表示内容が表示される位置との距離が近くなり、視認性が改善される。
【発明の効果】
【0021】
本発明の車両用表示装置及び車両用表示システムによれば、ヘッドアップディスプレイを搭載した車両において、車両上の警告等の特別な表示が現れた場合に、表示システムの動作を理解していない運転者に対して、状況の把握に役立つ誘導を行うことができる。すなわち、誘導表示部の表示により、警告等の表示位置から詳細情報の表示位置に運転者を導くように誘導できる。
【0022】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】車両用表示システムの電装系の構成例を示すブロック図である。
【図2】図1のHUD装置の基本的な構造及び光路を表す車両の側方から見た縦断面図である。
【図3】図1のHUD装置を搭載した車両の車室内からウインドシールド側を見た状態を表す斜視図である。
【図4】図1のHUD装置を搭載した車両の車室内からウインドシールド側を見た状態を表す正面図である。
【図5】図4の一部分を拡大して表す拡大正面図である。
【図6】図1のHUD装置の外形および上方から内部を透視して見た構造を表す平面図である。
【図7】図1のHUD装置の外形および透視して見た内部構造を表す斜視図である。
【図8】3種類の誘導灯の各々の構造を表す縦断面図である。
【図9】4種類の誘導灯の各々の形状及び面の位置を表す斜視図である。
【図10】図5に示した箇所と同等の部分に関する変形例を表す正面図である。
【図11】図10に示した変形例で利用可能な4種類の誘導灯の各々の形状及び面の位置を表す斜視図である。
【図12】図10に示した変形例で利用可能な2種類の誘導灯の各々の構造を表す正面図である。
【図13】図1のHUD装置の動作の概要を表すフローチャートである。
【図14】図1の計器ユニットの動作の概要を表すフローチャートである。
【図15】図5に示した箇所に表示される誘導表示の状態遷移を表す正面図である。
【図16】変形例のHUD装置を搭載した車両の車室内からウインドシールド側を見た状態を表す正面図である。
【図17】図16の構成例で用いるHUD装置を上方から見た内部構造を表す平面図である。
【図18】図16に示したモニタ表示器および誘導灯を配置状態を表す斜視図である。
【図19】図18の変形例を表す斜視図である。
【図20】図16の構成例において表示される各虚像および誘導灯の位置関係を表す平面図である。
【図21】図16に示した構成の変形例を表す正面図である。
【図22】図21に示した構成例で用いる虚像表示装置の構成例を示す斜視図である。
【図23】図22に示した虚像表示装置の構成を表す縦断面図である。
【図24】図22の虚像表示装置の変形例(1)を表す斜視図である。
【図25】図22の虚像表示装置の変形例(2)を表す斜視図である。
【図26】図22の虚像表示装置における表示と誘導灯の表示との位置関係を表す平面図である。
【図27】図24の虚像表示装置における表示と誘導灯の表示との位置関係を表す平面図である。
【図28】図25の虚像表示装置における表示と誘導灯の表示との位置関係を表す平面図である。
【図29】図23に示した構成の変形例を表す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の車両用表示装置及び車両用表示システムに関する具体的な実施の形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0025】
車両用表示システムの電装系の構成例が図1に示されている。図1に示すように、この車両用表示システムは、車両用表示装置であるHUD(ヘッドアップディスプレイ)装置10と計器ユニット20とで構成されている。
【0026】
後述するように、HUD装置10はこれを搭載した車両のウインドシールド(フロントガラス)に向けて光の像を投射し、ウインドシールドの前方位置に結像される虚像として運転者の視点から見えるように例えば車速のような情報を表示する。計器ユニット20は、スピードメータやタコメータのような様々な計器や警報表示部などを一体化した装置であり、運転者から見やすいように車両のインストルメントパネルに配置される。
【0027】
図1に示すように、HUD装置10は表示デバイス11、HUD制御部12、誘導灯13、ドライバ14、通信部15を備えている。HUD制御部12は、マイクロコンピュータで構成されており、HUD装置10の全体の動作を制御する。
【0028】
表示デバイス11は、数桁の文字や記号などを可視情報として表示可能な装置である。例えば、透過型液晶表示器と照明用のバックライトとを組み合わせて表示デバイス11を構成できる。勿論、他の種類の表示器を用いることもできる。
【0029】
誘導灯13は、1列に並べた4個の発光ダイオードで構成されている。誘導灯13の表示は、後述するように特別な誘導を行うために用いる。ドライバ14は、誘導灯13の各発光ダイオードの通電を個別にオンオフ制御するために備わっている。通信部15は、HUD装置10と計器ユニット20との間でデータ通信を行うために備わっている。
【0030】
表示デバイス11は、表示した可視情報を含む光を図1に示す投射光のように所定方向に向けて投射する。この投射光の光路の近傍に誘導灯13が配置されている。この投射光は所定の光学系を経由してウインドシールド上に投射される。
【0031】
図1に示すように、計器ユニット20は計器板制御部21、信号入力部22、通信部23、ドライバ24、誘導灯25、文字情報表示部26、ドライバ27、スピードメータ駆動部28、タコメータ駆動部29、水温計駆動部30、燃料計駆動部31、各種警報表示部32を備えている。
【0032】
計器板制御部21は、マイクロコンピュータで構成されている。このマイクロコンピュータは予め組み込まれているプログラムを実行し、計器ユニット20の全体の動作を制御する。
【0033】
信号入力部22は、表示対象の車両各部の状態を表す各種信号を入力する。例えば、車速の算出に利用できる車速パルス信号や、エンジン回転数を表す信号や、冷却水の温度を表す信号や、燃料の残量を表す信号などが信号入力部22を介して計器板制御部21に入力される。
【0034】
通信部23は、計器ユニット20の計器板制御部21とHUD装置10との間でデータ通信を行うための機能を有している。
【0035】
誘導灯25及び文字情報表示部26はドライバ24を介して計器板制御部21に接続されている。誘導灯25は、1列に並べた3個の発光ダイオードで構成されている。誘導灯25の表示は、後述するように特別な誘導を行うために用いる。
【0036】
文字情報表示部26は、各種警報などに関する詳細な文字情報を表示することが可能な表示器である。文字情報表示部26は、例えば液晶表示器により構成できる。文字情報表示部26が表示可能な情報の量は、HUD装置10の表示デバイス11よりも十分に多くなっている。
【0037】
スピードメータ駆動部28、タコメータ駆動部29、水温計駆動部30、燃料計駆動部31および各種警報表示部32は、ドライバ27を介して計器板制御部21に接続されている。
【0038】
スピードメータ駆動部28は、計測して得られた最新の車速と一致する値を指示するように、図示しないスピードメータの指針を駆動する。タコメータ駆動部29は、計測して得られた最新のエンジン回転数と一致する値を指示するように、図示しないタコメータの指針を駆動する。同様に、水温計駆動部30は、図示しない水温計の指針を駆動し、燃料計駆動部31は、図示しない水温計の指針を駆動する。各種警報表示部32は、各種の異常の発生に対して個別に警告するために、それぞれの異常に対応付けられた多数の警告灯を備えている。
【0039】
次に、上述の車両用表示システムの物理的な構造や動作について説明する。図1に示したHUD装置10の基本的な構造及び光路が図2に示されている。図2においては、車両の側方から見た縦断面が示されている。また、図1のHUD装置10を搭載した車両の車室内からウインドシールド側を見た状態が図3及び図4に示されている。図3においては助手席側から斜め前方、すなわち運転席の前方側を見た状態が示されており、図4においては運転者の通常の視点位置の近傍から前方を見た状態が示されている。また、図4の主要部分を拡大した状態が図5に示してある。
【0040】
また、図1のHUD装置10の外形および内部構造が図6及び図7に示されている。図6においてはHUD装置10の上方から内部を透視して見た構造が示されており、図7においては斜め方向からHUD装置10を透視して見た内部構造が示されている。
【0041】
図2に示すように、HUD装置10の本体は、車両のインパネ(インストルメントパネル)51の内側に収容されている。HUDケース17の内部に備わっている表示デバイス11によって所定の可視情報、例えば「60km/h」のような車速表示情報や、「!」のような警告表示情報が表示される。
【0042】
この可視情報は、表示デバイス11自体の発光により、あるいは所定のバックライトの照明光によって、表示デバイス11の前方に向かう投射光として表示デバイス11から出射される。この投射光は、拡大ミラー16で反射されて上方に向かい、インパネ51上の開口部に設けた開口ベゼル52の箇所で、透明カバー18を透過してウインドシールド(フロントガラス)53の面に投射される。
【0043】
なお、本実施の形態では、理解を容易にするためにHUD装置10の構造を必要最小限の構成要素だけに限定し単純化して表してある。現実的には、投射光の光路中に複数のミラーを配置したり、更に構造を複雑にする場合もある。
【0044】
ウインドシールド53上には様々な像が映り込む。すなわち、HUD装置10の表示デバイス11に表示された可視情報を含む光の投射により得られる表示像R1や、ウインドシールドに映り込んだ開口ベゼルR2や、ウインドシールドに映り込んだインパネR3などが視点EPの位置で見る運転者によって視認される。
【0045】
表示像R1、開口ベゼルR2、インパネR3はいずれも光の反射によりその位置には実在しない虚像として表示される。表示像R1が結像される位置は、HUD装置10内部の光学系の焦点距離や各部のレイアウトにより決定され、例えば視点EPから2m程度の距離の位置にすることが現実的である。
【0046】
開口ベゼル52は、図3に示すようにインパネ51の上部の開口の周辺部を覆うように配置されている。太陽光等の外光が開口ベゼル52の箇所に入射して反射し、この反射光によりウインドシールド53に映り込んだ開口ベゼルR2(虚像)が形成される。
【0047】
HUD装置10からの投射光は、インパネ51の開口部にある開口ベゼル52の内側の領域を通過してウインドシールド53の面に入射するので、視点EPから見える表示像R1(虚像)は、図4に示すように開口ベゼルR2(虚像)の内側の領域に現れる。
【0048】
図4に示すように、開口ベゼル52よりも手前(運転者側)のインパネ51の前面に前述の計器ユニット20の各種表示要素、すなわちスピードメータやタコメータなどの計器や、文字情報表示部26が配置されている。なお、計器ユニット20と運転者との間にはステアリングホイール54が配置されているが、運転者はステアリングホイール54の内側の空間(開口部)を通して計器ユニット20の表示内容を見ることができる。
【0049】
ここで、車両に何らかの異常が発生し、それに対する警告をHUD装置10によって表示像R1(虚像)の中央付近に表示し、同時に発生した異常に関する詳細な説明を文字情報表示部26上に表示する場合を想定する。その場合、表示像R1(虚像)の警告は運転者によって直ちに視認されるので運転者は何らかの異常が発生したことに気づくが、文字情報表示部26の表示を見ないと具体的な異常の内容を把握できない。しかし、表示システムの動作を熟知している一部の運転者を除き、表示像R1(虚像)の警告に関する詳細な情報が表示されていることに気が付かない場合があるし、詳細な情報が表示される文字情報表示部26の位置を把握していない可能性も高い。
【0050】
そこで、例えば図4に示した仮想の誘導ライン55のように、表示像R1(虚像)の警告が表示される位置と、詳細情報が表示される文字情報表示部26の位置とを結ぶ線に沿って、文字情報表示部26側に運転者の注意が向くように自動的に誘導する。
【0051】
具体的には、図5に示すように、表示像R1(虚像)の近傍に誘導灯の表示R4(虚像)を表示し、更に計器ユニット20の文字情報表示部26の近傍に配置した誘導灯25を表示(点灯)して誘導する。誘導灯の表示R4(虚像)及び誘導灯25は、図4に示した仮想の誘導ライン55に沿って、表示像R1(虚像)の位置と文字情報表示部26の位置との間に配置されている。
【0052】
計器ユニット20上の誘導灯25は、図5に示すように、仮想の誘導ライン55に沿って1列に並べた3個の発光ダイオードにより構成されており、点灯状態が運転者の視点から良く見えるように計器ユニット20上に配置されている。
【0053】
表示像R1(虚像)の近傍に表示される誘導灯の表示R4(虚像)は、HUD装置10に備わった前述の誘導灯13の発光状態が、HUD装置10の投射光と共にウインドシールド53に映り込んで形成される虚像である。
【0054】
誘導灯13の4個の発光ダイオードは、図6に示すように、HUDケース17の中央部に矢印X方向に向かって1列に並んで配置されている。なお、矢印X方向は車両の前後方向と一致する。図7に示すように、HUDケース17は上側のアッパーケース17Uと下側のロアケース17Lとを組み合わせて構成してあり、誘導灯13の4個の発光ダイオードを含む誘導灯ユニット19が、アッパーケース17Uに装着されている。また、4個の各発光ダイオードは、発光面がアッパーケース17Uの内壁面に露出するように配置されている。
【0055】
従って、誘導灯13を点灯すると、これらの発光による虚像が、図5に示す誘導灯の表示R4(虚像)としてウインドシールド53に映り込む。また、投射光などによってHUDケース17の内部が照明されるため、HUDケース17の内壁面からの反射光もウインドシールド53に映り込み、図5に示す映り込んだケース内壁角ラインR5(虚像)などが現れる。
【0056】
誘導灯13については、様々な構成が考えられる。3種類の誘導灯13A、13B、13Cの構成が図8に示してある。また、4種類の誘導灯13D、13E、13F、13Gの各々の形状が図9に示してある。
【0057】
図8に示した誘導灯13Aにおいては、回路基板132上に発光ダイオード131を搭載し、発光ダイオード131の発光面の前面にレンズ133を配置し、これらをケース134で囲んで一体化してある。また、HUDケース17の内壁面17aの開口部に誘導灯13Aを配置してある。
【0058】
図8に示した誘導灯13Bにおいては、誘導灯13Aのレンズ133の代わりに拡散板135を設けてある。また、図8に示した誘導灯13Cにおいては、レンズ133や拡散板135が不要なモールドタイプ(砲弾型)の発光ダイオード131Bを採用している。
【0059】
また、図9に示した誘導灯13D、13Fは、その発光面(表面)がHUDケース17の内壁面17aと同一面になるように配置してあり、誘導灯13E、13Gはその発光面を含む先端部がHUDケース17の内壁面17aから少し突出し立体的な形状をなしている。また、誘導灯13D、13Eは発光部の面形状が円形であり、誘導灯13F、13Gは発光部の面形状が矩形(正方形)になっている。
【0060】
なお、計器ユニット20上の誘導灯25についても、上述の誘導灯13A、13B、13C、13D、13E、13F、13Gと同等の構成にすることができる。
また、図9に示した誘導灯13D、13E、13F、13Gについては、複数の発光ダイオードを間隔をおいて1列に配置してあるが、連続的に配置することもできる。複数の発光ダイオードを連続的に並べて配置した誘導灯の構成例が図11及び図12に示されている。
【0061】
図11に示した誘導灯13Iは、図12に示すように、回路基板132B上に5個の発光ダイオード131をほぼ連続的に1列に並べて配置してある。また、隣接する発光ダイオード131同士の間には遮光用の仕切り壁136が設けてあり、各発光ダイオード131の発光面の前面側に拡散板135Bが設けてある。従って、誘導灯13Iは図11に示すように、各発光ダイオード131の位置に対応する多数の発光部が連続的に並ぶように構成される。互いに隣接する発光部はそれぞれ仕切り壁136で区切られているので、隣接する領域に光が漏れることはなく、発光部毎に独立した表示を行うことができる。また、拡散板135Bが設けてあるので、各発光部の照度むらをなくすことができる。誘導灯13Iは図11に示すようにその発光面を含む先端部がHUDケース17の内壁面17aから少し突出し立体的な形状をなしている。しかし、図11に示す誘導灯13Hのようにその発光面(表面)がHUDケース17の内壁面17aと同一面になるように配置することもできる。
【0062】
図11に示した誘導灯13Kは、図12に示すように、回路基板132B上に5個の発光ダイオード131をほぼ連続的に1列に並べて配置してある。また、各発光ダイオード131の発光面の前面側に拡散板135Bが設けてある。誘導灯13Kの最前部及び最後部に遮光壁137が設けてある。従って、誘導灯13Kは図11に示すように、各発光ダイオード131の位置に対応する多数の発光部が連続的に並ぶように構成される。但し、誘導灯13Iのような仕切り壁136がなく、互いに隣接する発光部の光の影響を受けるので、隣接する発光部の境界付近では、照度に緩やかな変化(グラデーション)が現れる。誘導灯13Kは図11に示すようにその発光面を含む先端部がHUDケース17の内壁面17aから少し突出し立体的な形状をなしている。しかし、図11に示す誘導灯13Jのようにその発光面(表面)がHUDケース17の内壁面17aと同一面になるように配置することもできる。
【0063】
なお、計器ユニット20上の誘導灯25についても、上述の誘導灯13H、13I、13J、13Kと同等の構成にすることができる。
【0064】
図11に示した誘導灯13H、13I、13J、13Kのいずれかの構成の誘導灯13および誘導灯25Bを採用した車両用表示システムに関する図5に示した箇所と同等の部位の外観が図10に示されている。図10に示すように、誘導灯13H、13I、13J、13Kの構造を採用した場合にも、図5の場合と同様に、映り込んだ誘導灯の表示R4B及び誘導灯25Bの表示により、表示像R1(虚像)の位置から文字情報表示部26の位置に向けて、運転者を誘導することができる。
【0065】
図1に示したHUD装置10及び計器ユニット20の動作の概要が、それぞれ図13及び図14に示されている。図13に示す動作はHUD制御部12の制御によって行われ、図14に示す動作は計器板制御部21の制御によって行われる。
【0066】
まず図13に示すHUD装置10の動作について説明する。HUD装置10の電源が投入されると、HUD制御部12はステップS11で各部の処理化を行う。すなわち、HUD制御部12内部の初期化を行うと共に、誘導灯13については全ての発光ダイオードを消灯に制御し、表示デバイス11の表示も消去する。
【0067】
ステップS12では、HUD制御部12は通信部15を介して計器ユニット20との間でデータ通信を行い、HUD装置10が表示すべき最新の情報を取得する。例えば、現在の車速の情報や、特定の異常発生の有無を表す情報などをHUD制御部12が取得する。
【0068】
ステップS13では、HUD制御部12は、ステップS12で受信した最新の情報に基づき、「特定の異常」が発生しているか否かを識別する。「特定の異常」とは、この例では発生した異常に関する詳細情報が文字情報表示部26上に表示されるように予め決定された異常を意味する。異常が発生してなければステップS14に進み、異常の発生を検出した場合はステップS16に進む。
【0069】
ステップS14では、HUD制御部12はステップS12で取得した最新の車速の情報を表示デバイス11に出力してこれを表示する。表示デバイス11が表示した内容は、前述の投射光としてウインドシールド53の面に投射され、図5に示す表示像R1(虚像)として表示される。
【0070】
ステップS15では、HUD制御部12は誘導灯13の全ての発光ダイオードを消灯状態に制御する。
【0071】
ステップS16では、HUD制御部12はステップS12で取得した情報に基づいて特定の異常の発生を把握しているので、この異常発生を運転者に知らせるために警告表示として感嘆符「!」の文字情報を表示デバイス11に出力してこれを表示する。表示デバイス11が表示した内容は、前述の投射光としてウインドシールド53の面に投射され、図5に示す表示像R1(虚像)として表示される。
【0072】
ステップS17では、HUD制御部12は誘導灯13を表示制御し、これにより運転者を誘導する。
【0073】
図5に示した各部位に表示される誘導表示の状態遷移が図15に示されている。誘導表示を行う場合には、最初に図15に示す状態C1になり、順次に状態C2、C3、C4、C5、C6、C7、C1、C2、・・・に遷移する。
【0074】
図13のステップS17の処理により、図15の各状態C1、C2、C3、C4のHUD装置10側の誘導表示が行われる。状態C5、C6、C7についてはHUD装置10側の誘導表示は変化しない。図15に示す状態C1の誘導灯の表示R4a(虚像)においては、誘導灯13に含まれる最も奥側の1個の発光ダイオードのみが点灯しているのでこのように見える。また、状態C2の誘導灯の表示R4bにおいては誘導灯13に含まれる奥側の2個の発光ダイオードが点灯し、状態C3の誘導灯の表示R4cにおいては誘導灯13に含まれる奥側の3個の発光ダイオードが点灯し、状態C4の誘導灯の表示R4dにおいては、誘導灯13に含まれる4個全ての発光ダイオードが点灯しているのでこのように見える。つまり、誘導灯13の虚像表示R4a、R4b、R4c、R4dは、光の像が上方から下方に向かって、つまり警告表示が表示されている表示像R1の位置から詳細情報が表示されている文字情報表示部26に向かう方向に流れるような状況を表現する。従って、このような光の移動によって運転者の意識は文字情報表示部26側に誘導される。
【0075】
次に図14に示す計器ユニット20の動作について説明する。計器ユニット20の電源が投入されると、計器板制御部21はステップS21で各部の処理化を行う。すなわち、計器板制御部21内部の初期化を行うと共に、誘導灯25については全ての発光ダイオードを消灯に制御する。また、スピードメータ駆動部28、タコメータ駆動部29、水温計駆動部30、燃料計駆動部31、各種警報表示部32を制御して各部の表示内容を初期状態に戻す。
【0076】
ステップS22では、計器板制御部21は各種の信号を信号入力部22から入力し、表示対象の各種情報(車速、エンジン回転数、冷却水温、燃料残量等)を最新の情報に更新する。
【0077】
ステップS23では、計器板制御部21は最新の車速の情報を通信部23を介してHUD装置10に送信する。
【0078】
ステップS24では、計器板制御部21はステップS22で更新した最新の各種情報のそれぞれを予め定めた閾値等と比較して、異常発生の有無を識別する。そして、特定の異常発生を検出した場合にはステップS26に進み、検出しない場合はステップS25に進む。
【0079】
ステップS25では、計器板制御部21は誘導灯25に含まれる全ての発光ダイオードを消灯状態に制御する。
【0080】
ステップS26では、計器板制御部21は特定の異常が発生したことを表す警告情報を通信部23を介してHUD装置10に通知する。
【0081】
ステップS27では、計器板制御部21は誘導灯25を表示制御し、これにより運転者を誘導する。
【0082】
図14のステップS27の処理により、図15の各状態C5、C6、C7の計器ユニット20側の誘導表示が行われる。状態C1、C2、C3、C4については計器ユニット20側の誘導灯25は消灯状態になる。図15に示す状態C5においては誘導灯25に含まれる最も上の発光ダイオード25aのみが点灯し、状態C6においては誘導灯25に含まれる上側の2つの発光ダイオード25a、25bが点灯し、状態C7においては誘導灯25に含まれる上側の3つの全ての発光ダイオード25a、25b、25cが点灯する。
【0083】
つまり、上述のHUD装置10側の誘導と同様に、誘導灯25の各発光ダイオード25a、25b、25cの発光により、光の像が上方から下方に向かって、つまり警告表示が表示されている表示像R1の位置から詳細情報が表示されている文字情報表示部26に向かう方向に流れるような状況を表現する。従って、このような光の移動によって運転者の意識は文字情報表示部26側に誘導される。
【0084】
図14のステップS28では、計器板制御部21はステップS24で検出した異常の発生に関する詳細情報を文字情報表示部26に出力し表示する。例えば、車両の冷却水の温度が異常に高くなった場合には、「水温が異常です、エンジンを停止して下さい」のような詳細情報を表示することが想定される。
【0085】
ステップS29では、計器板制御部21は通常の表示制御を行う。すなわち、ステップS22で更新した最新の各種情報をスピードメータ駆動部28、タコメータ駆動部29、水温計駆動部30、燃料計駆動部31、各種警報表示部32に出力して計器ユニット20上の各計器及び警報表示部の表示内容を最新の状態に更新する。
【0086】
なお、上述の構成例においてはHUD装置10側の誘導灯の表示R4と、計器ユニット20側の誘導灯25の表示の両方を用いて運転者の誘導を行っているが、いずれか一方を表示するだけでも十分な誘導効果が得られる。
【0087】
上述の車両用表示装置及び車両用表示システムに関する更なる変形例について、以下に説明する。変形例のHUD装置を搭載した車両の車室内からウインドシールド側を見た状態が図16に示されている。図16の構成例では、車両のインパネ51の車幅方向の中央付近(計器ユニット20よりも左寄りの位置)にモニタ表示器61が配置されている。
【0088】
このモニタ表示器61は、例えばカーナビゲーション用の地図や、車両の周辺部を撮影して得られる画像や、車両各部の状態を表す図形や文字などの様々な情報を二次元画面上に表示する機能を備えた表示装置である。また、前述の実施形態と同様にHUD装置によって表示される表示像R1(虚像)として、特定の異常発生を表す警告表示「!」が表示される時に、該当する異常と関連のある詳細情報を表示する機能をモニタ表示器61が搭載している。
【0089】
従って、図16の構成例では、仮想の誘導ライン55Bとして示すように、表示像R1(虚像)の位置からモニタ表示器61の設置位置まで運転者を誘導する必要がある。そのため、図18に示すようにモニタ表示器61の右上端部からその右方に向かって直線的に延びる細長い形状の誘導灯62がモニタ表示器61と一体に設けてある。誘導灯62は、1列に並んだ4個の発光ダイオードを備えている。図18に示すように、モニタ表示器61はインパネ51a(メータフード)の前面に配置してある。
【0090】
また、誘導灯62の代わりに図19に示すような誘導灯62Bを設けても良い。図19に示す誘導灯62Bは、誘導灯62と同様に4個の発光ダイオードを備えているが、これらの発光ダイオードは仮想の誘導ライン55Bと同様に少し湾曲した形状に沿って配置されている。
【0091】
図示しないが、モニタ表示器61の内部には、図1に示した計器板制御部21の機能と似た表示機能を実現する表示制御部が備わっている。この表示制御部は、計器板制御部21の動作と同様に、特定の異常発生を検出した時に、誘導灯62の4つの発光ダイオードの表示制御を行って運転者を誘導する。また、同時にモニタ表示器61の画面上には、発生した異常に関する詳細情報を表示する。
【0092】
図16の構成例で用いるHUD装置10Bを上方から見た内部構造が図17に示されている。図16のHUD装置10Bは、前述のHUD装置10と同様に、表示デバイス11、誘導灯13X、拡大ミラー16、透明カバー18を備えている。但し、誘導灯13Xに含まれる4個の発光ダイオードは、図16に示す仮想の誘導ライン55Bの形状と合うように、所定の曲線に沿って配置されている。従って、図16に示すように、誘導灯の表示R4C(虚像)は、表示像R1(虚像)の幅方向中央下端付近から、仮想の誘導ライン55Bに沿って斜め下方向に向かって運転者を誘導する。
【0093】
図16の構成例において表示される各虚像および誘導灯を上方から見た位置関係が図20に示されている。特定の異常が発生した時には、図20に示すように誘導灯の表示R4C(虚像)が表示像R1(虚像)の近傍に現れ、更にモニタ表示器61の近傍で誘導灯62が表示される。従って、運転者は表示像R1(虚像)の内容として警告表示「!」を視認した直後に、その近傍に表示される誘導灯の表示R4C(虚像)および誘導灯62の表示に誘導されてモニタ表示器61に表示される詳細情報にたどり着くことになる。
【0094】
図16に示した構成の変形例が図21に示されている。また、図21に示した構成例で用いる虚像表示装置71の構成例が図22に示されており、この虚像表示装置71の側方から見た縦断面の構造が図23に示されている。更に、図22の虚像表示装置71の変形例が図24および図25にそれぞれ示されている。
【0095】
図21に示した構成例においては、前述のモニタ表示器61の右隣の位置に更に虚像表示装置71が設けてある。また、図16に示した誘導灯62に相当する誘導灯62Aが図21では虚像表示装置71と一体に構成されている。
【0096】
図22に示すように、虚像表示装置71は箱形の虚像表示装置本体72とその上側に配置された反射板(コンバイナ)73とを備えている。虚像表示装置本体72のケース74の内部には、図23に示すように表示デバイス75および誘導灯62Aが設けてある。ケース74の上面にある開口部は、透明カバー76で覆われている。誘導灯62Aは、図22に示すように1列に並んだ4個の発光ダイオードLEDを備えている。また、表示デバイス75の出射光と誘導灯62Aの出射光とを分離するために、透明カバー76上に仕切り壁77が設けてある。
【0097】
図23に示すように、表示デバイス75の表示により得られる出射光は、反射板73の表面に入射し、反射して運転者の視点EPに向かう。従って、反射板73よりも前方(図23中の右側)の位置に虚像の表示R21が形成される。つまり、表示デバイス75に表示された内容が虚像の表示R21として表示される。同様に、誘導灯62Aの各発光ダイオードの点灯により得られる光は、反射板73の表面に入射し、反射して運転者の視点EPに向かう。従って、虚像の誘導灯の表示R22が、前記表示R21に近い位置に形成される。
【0098】
図示しないが、虚像表示装置71の内部には、図1に示した計器板制御部21の機能と似た表示機能を実現する表示制御部が備わっている。この表示制御部は、計器板制御部21の動作と同様に、特定の異常発生を検出した時に、誘導灯62Aの4つの発光ダイオードの表示制御を行って運転者を誘導する。また、同時に表示デバイス75の画面上には、発生した異常に関する詳細情報を表示する。
【0099】
従って、運転者は図21に示すような位置に表示される表示像R1(虚像)の内容として警告表示「!」を視認した直後に、その近傍に表示される誘導灯の表示R4C(虚像)および誘導灯の表示R22に誘導されて虚像の表示R21として表示される表示デバイス75の表示内容(詳細情報)にたどり着くことになる。
【0100】
図24に示した変形例および図25に示した変形例においては、誘導灯62B、62Cの発光ダイオードの並び方やケース74内の位置が図22、図23と少し異なっている。図22、図24、図25に示した虚像表示装置71を用いた場合に形成される表示R21及び誘導灯の表示R22を上方から見た位置関係がそれぞれ図26、図27、図28に示されている。
【0101】
図22の虚像表示装置71の場合には、誘導灯62Aの4個の発光ダイオードLEDが矢印Y方向に直線的に並んで配置されているので、図26に示すように、表示R21と誘導灯の表示R22はほぼ同じ軸上に直線的に形成される。一方、図24の虚像表示装置71Bの場合には、誘導灯62Bの4個の発光ダイオードLEDが矢印Yの方向に対して曲がるように並んで配置されているので、図27に示すように、誘導灯の表示R22Bは表示R21の軸に対して向きが異なる仮想の誘導ライン81に沿って形成される。同様に、図25の虚像表示装置71Cの場合には、誘導灯62Cの4個の発光ダイオードLEDが矢印Yの方向に対して曲がるように並んで配置されているので、図28に示すように、誘導灯の表示R22Cは表示R21の軸に対して向きが異なる仮想の誘導ライン82に沿って形成される。
【0102】
図23に示した虚像表示装置71の構成の変形例が図29に示されている。図29に示す虚像表示装置71Dにおいては、誘導灯62Dが虚像表示装置本体72Dの外側に配置してある。すなわち、反射板(コンバイナ)73よりも前方にあるインパネあるいは特別な誘導灯用構造体の表面近傍に誘導灯62Dが埋め込んである。誘導灯62Dの表示は、反射板(コンバイナ)73を透過し虚像ではなく実体として運転者に視認される。誘導灯62Dを配置する位置は、図29に示すように虚像の表示R21が形成される位置の近傍に定めてある。
【0103】
なお、上述の実施の形態ではHUD装置10の表示位置から詳細情報が表示される文字情報表示部26やモニタ表示器61に向けて誘導する場合を想定しているが、逆方向に誘導しても良い。例えば、文字情報表示部26に何らかの情報を表示した場合にその関連情報をHUD装置10で表示する時には逆方向に誘導することが想定される。
【0104】
また、上述の実施の形態では誘導灯13や誘導灯25の表示を用いて誘導する際に、点灯する発光素子の数を1個、2個、3個と順番に増やすように制御しているが、異なる表示制御を行っても良い。例えば、常に1個の発光素子だけを点灯し、点灯する発光素子の位置を上から下に向かって順番に切り替えるように制御する場合もある。
【0105】
なお、上述の実施の形態では詳細情報の表示位置が1カ所に集中している場合を想定している。しかし、例えば図4に示す文字情報表示部26と、図21に示すモニタ表示器61および虚像表示装置71の全てが同じ車両上に搭載される可能性もある。そして、例えば発生した異常の種類に応じて、詳細情報が文字情報表示部26、モニタ表示器61および虚像表示装置71のいずれか1つに選択的に表示される場合もある。そのような状況においては、表示像R1(虚像)の位置から文字情報表示部26に誘導するための第1の誘導灯と、モニタ表示器61に誘導するための第2の誘導灯と、虚像表示装置71に誘導するための第3の誘導灯とをそれぞれ設け、発生した以上の種類に応じてこれらの複数の誘導灯を選択的に表示して誘導を行うことが想定される。また、その場合には、複数の誘導灯を互いに異なる色で表示することも考えられる。
【0106】
以上のように、本発明の車両用表示装置及び車両用表示システムは、ヘッドアップディスプレイ装置を備える車両に搭載して使用することが想定される。本発明の車両用表示装置及び車両用表示システムを搭載することにより、例えば「!」のような警告表示がヘッドアップディスプレイの表示に現れた場合に、システムの動作を理解していない初心者等の運転者であっても、詳細情報が表示されている部位に運転者を自動的に誘導することができる。これにより、運転者が警告の表示を無視して車両の走行を続けるのを防止することができ、車両に重大な故障が生じるのを未然に防ぐことができる。
【符号の説明】
【0107】
10,10B HUD装置
11 表示デバイス
12 HUD制御部
13,13A,13B,13C,13D,13E,13F,13G 誘導灯
13H,13I,13J,13K 誘導灯
14 ドライバ
15 通信部
16 拡大ミラー
17 HUDケース
17L ロアケース
17U アッパーケース
18 透明カバー
19 誘導灯ユニット
20 計器ユニット
21 計器板制御部
22 信号入力部
23 通信部
24,27 ドライバ
25 誘導灯
26 文字情報表示部
28 スピードメータ駆動部
29 タコメータ駆動部
30 水温計駆動部
31 燃料計駆動部
32 各種警報表示部
51 インパネ(インストルメントパネル)
52 開口ベゼル
53 ウインドシールド
54 ステアリングホイール
55,55B 仮想の誘導ライン
61 モニタ表示器
62,62B,62C,62D 誘導灯
71 虚像表示装置
72,72B,72C,72D 虚像表示装置本体
73 反射板(コンバイナ)
74 ケース
75 表示デバイス
76 透明カバー
EP 視点
R1 表示像
R2 ウインドシールドに映り込んだ開口ベゼル
R3 ウインドシールドに映り込んだインパネ
R4,R4B,R4C 映り込んだ誘導灯の表示
R5 映り込んだケース内壁角ライン
R21 表示
R22 誘導灯の表示
131,131B 発光ダイオード
132,132B 回路基板
133 レンズ
134 ケース
135,135B 拡散板
136 仕切り壁
137 遮光壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視情報を表示する表示部と、前記表示部に表示される可視情報を含む光を所定の投影面に導く光投影部を備え、前記可視情報を虚像として表示する車両用表示装置であって、
前記光投影部の投影によって前記虚像が表示される第1の表示領域と、所定の条件下で前記表示部に表示される特定情報の内容と関連性を有する詳細情報が表示される第2の表示領域との間で、少なくとも両者の位置を関係付ける誘導表示部と、
前記表示部に前記特定情報が表示される時に、前記誘導表示部を表示状態に制御する誘導表示制御部と
を備えることを特徴とする車両用表示装置。
【請求項2】
前記誘導表示部は、前記誘導表示制御部で点灯及び消灯の制御が可能な少なくとも1つの誘導用発光素子を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項3】
前記誘導表示部は、前記誘導表示制御部で点灯及び消灯の制御が可能な複数の誘導用発光素子を含み、
前記誘導表示制御部は、前記複数の誘導用発光素子の点灯及び消灯を個別に制御して、前記第1の表示領域から前記第2の表示領域に向かう方向の流れの状態を表示する
ことを特徴とする請求項2に記載の車両用表示装置。
【請求項4】
第1の可視情報を表示する表示部と、前記表示部に表示される第1の可視情報を含む光を所定の投影面に導く光投影部を備え、前記第1の可視情報を虚像として表示する第1の車両用表示装置と、
前記第1の車両用表示装置よりも多くの情報を第2の可視情報として表示する第2の車両用表示装置と、
を含む車両用表示システムであって、
前記第1の車両用表示装置の光投影部の投影によって前記虚像が表示される第1の表示領域と、所定の条件下で前記第1の表示領域に表示される特定情報の内容と関連性を有する詳細情報が表示される前記第2の車両用表示装置上の第2の表示領域との間で、少なくとも両者の位置を関係付ける誘導表示部を、前記第1の車両用表示装置上、前記第2の車両用表示装置上、及びそれらの間の空間の少なくとも一カ所に備え、
前記第1の車両用表示装置の表示部に前記特定情報が表示される時に、前記誘導表示部を表示状態に制御する誘導表示制御部と
を備えることを特徴とする車両用表示システム。
【請求項5】
前記誘導表示部は、前記第1の車両用表示装置上に配置された少なくとも1つの誘導用発光素子を含む第1の誘導表示部と、前記第2の車両用表示装置上に配置された少なくとも1つの誘導用発光素子を含む第2の誘導表示部とを備え、
前記誘導表示制御部は、前記第1の誘導表示部の誘導用発光素子および前記第2の誘導表示部の誘導用発光素子の点灯及び消灯を個別に制御して、前記第1の表示領域から前記第2の表示領域に向かう方向の流れの状態を表示する
ことを特徴とする請求項4に記載の車両用表示システム。
【請求項6】
車両上で詳細情報を第1の可視情報として表示する車両用表示装置であって、
前記第1の可視情報が表示される第1の表示領域と、前記詳細情報と関連を有し前記詳細情報よりも限定された情報が虚像の第2の可視情報として表示される第2の表示領域との間に配置され、前記第1の表示領域と第2の表示領域との少なくとも位置を関係付ける誘導表示部と、
前記第2の表示領域に予め定めた特定情報が表示される時に、前記誘導表示部を表示状態に制御する誘導表示制御部と
を備えることを特徴とする車両用表示装置。
【請求項7】
前記誘導表示部は、前記誘導表示制御部で点灯及び消灯の制御が可能な複数の誘導用発光素子を含み、
前記誘導表示制御部は、前記複数の誘導用発光素子の点灯及び消灯を個別に制御して、前記第2の表示領域から前記第1の表示領域に向かう方向の流れの状態を表示する
ことを特徴とする請求項6に記載の車両用表示装置。
【請求項8】
前記車両のウインドシールドから車室内側にずれた位置に配置された光反射板をさらに備え、
前記詳細情報を前記光反射板に投射して第1の虚像として表示すると共に、前記誘導表示部の表示状態を前記光反射板に投射して前記第1の虚像からずれた位置に第2の虚像として表示する
ことを特徴とする請求項6に記載の車両用表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2012−56335(P2012−56335A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−198296(P2010−198296)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】