説明

車両用表示装置

【課題】 信頼性の高い充電終了時間を表示できる車両用表示装置を提供する。
【解決手段】 バッテリを出力源としてモータを駆動することで動力を得る電気自動車の各種情報を表示する液晶表示パネル1と、車両情報を入力してこの車両情報に基づく表示出力を行うように液晶表示パネル1を制御する制御手段4とを備えた車両用表示装置であって、制御手段4は、前記バッテリの充電中において、所定時間毎に複数回入力して得られるバッテリ残容量情報に基づいて、予め設定された前記バッテリの所定容量まで充電されるための充電終了時間を算出し、この充電終了時間を液晶表示パネル1に出力させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリを出力源としてモータを駆動することで動力を得るとともに、外部電源から車載バッテリへ充電するため充電設備と接続可能な電気自動車に搭載される車両用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気自動車には電動モータのみを駆動源とする車両や、駆動源として電動モータとエンジンなどの内燃機関とを有するハイブリッド駆動車とがある。何れのタイプの電気自動車においても、電動モータに電力を供給するために蓄電デバイスとしての車載バッテリを有しており、バッテリの残存容量が低下した場合には、バッテリを充電することになる。
【0003】
特に、電動モータのみを駆動源とする電気自動車やプラグインハイブリッド駆動車にあっては、専用の急速充電スタンドを含む充電用施設(以下、充電設備と記す)において短時間でバッテリの満充電を実現するための急速充電器の開発が進められているが、現実的には、ガソリンスタンドで短時間に燃料を満タンにする作業時間に比べて、充電に要する時間は長い。このため、車両利用者は、充電している間、待機することになる。
【0004】
また、充電設備として、専用の急速充電スタンドだけでなく、例えば、特許文献1に示すように、家庭用電源から効率よく充電するものも開示されている。
【0005】
上述電気自動車においては、車載バッテリを充電設備から充電する時に、車載バッテリの残存容量(蓄電容量)や充電終了時間等の充電情報を車両利用者に知らせる必要があり、例えば、特許文献2には、車載バッテリの充電状態を車両の後部に設けられたハイマウントストップランプに表示するようにしたバッテリ充電状態表示装置が開示されている。
【0006】
また、例えば、特許文献3に示すように、携帯端末などの機器に充電終了予定時刻を表示させることによって、車両利用における利便性を高めるものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−219733号公報
【特許文献2】特開2000−102104号公報
【特許文献3】特開2010−149553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述車載バッテリ充電時の充電状態を表示させる場合において、特に、充電終了時間にあっては、例えば、急速充電スタンドや家庭用電源など充電設備の仕様によって、必要な充電時間が異なってしまうため、充電終了時間を予測することが困難であった。
【0009】
また、充電する温度環境や車載バッテリの劣化状態などの条件に応じて、充電時間が異なってしまうため、充電終了時間の予測は更に困難であり、信頼性がより高い情報表示が望まれていた。
【0010】
そこで本発明の目的とするところは、上述した課題に着目してなされたものであって、信頼性の高い充電終了時間を表示できる車両用表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の車両表示装置は、バッテリを出力源としてモータを駆動することで動力を得る電気自動車の各種情報を表示する表示パネルと、車両情報を入力してこの車両情報に基づく表示出力を行うように前記表示パネルを制御する制御手段とを備えた車両用表示装置であって、前記制御手段は、前記バッテリの充電中において、所定時間毎に複数回入力して得られるバッテリ残容量情報に基づいて、予め設定された前記バッテリの所定容量まで充電されるための充電終了時間を算出し、この充電終了時間を前記表示パネルに出力させることを特徴とする。
【0012】
また、前記制御手段は、通常走行時に前記各種情報として、前記電気自動車の積算走行距離を前記表示パネルに表示させ、前記バッテリの充電中においては、前記積算走行距離の表示を切り換えて、前記充電終了時間を前記表示パネルに表示させることを特徴とする。
【0013】
また、前記制御手段は、複数のバッテリ残容量情報の変化量と、変化に要した時間とに基づいて、前記所定容量まで充電されるための時間を前記充電終了時間として算出することを特徴とする。
【0014】
また、前記制御手段は、前記バッテリが満充電されるまでの時刻を前記充電終了時間として前記表示パネルに表示させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、バッテリを出力源としてモータを駆動することで動力を得るとともに、外部電源から車載バッテリへ充電するため充電設備と接続可能な電気自動車に搭載される車両用表示装置に関し、信頼性の高い充電終了時間を表示できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態の構成を示すブロック図。
【図2】同上実施の形態における表示パネルの表示例を示す図。
【図3】同上実施の形態における充電時間と蓄電割合の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明が電気自動車の車載計器として適用された実施の形態について添付図面を用いて説明する。なお、以下実施例の電気自動車は、家庭用電源の100Vコンセントや200Vコンセント、あるいは専用の急速充電用電源などの設備とケーブルを用いて接続可能に設けられる。
【0018】
図1は、本発明に係る構成を示すブロック図であり、車載計器Aは、液晶表示パネル(表示パネル)1と、バックライト2と、入力手段3と、制御手段4とを備えている。これらの構成は、回路基板や配線等を介して電気的に接続されており、合成樹脂などのケースに保持され、車両利用者が運転中に確認しやすいように車両前方のインストルメントパネルに設けられる。
【0019】
液晶表示パネル1は、制御手段4からの制御信号に基づいて、透過/不透過を切り換えて表示像を形成することによって、通常走行時などにおいて、図示しないが、車両速度や走行距離、残容量、警報など所望の車両情報を表示する出力手段である。また、液晶表示パネル1は、偏光膜と透明電極とを備えた一対の透光性基板間に液晶を封入した液晶表示素子や駆動ドライバを設けており、その表示面が視認できるように車両利用者に対向する位置や角度にて設けられる。この場合、図2に示すように、液晶表示パネル1は、7セグメント構成を複数用いて数値表示可能な数値表示部1aと、単位または表示項目を示す文字表示部1bとが予め区画形成されており、複数種類の表示項目を切り換えて表示することができる。
【0020】
また、液晶表示パネル1は、後述する充電モード時に、制御手段4からの制御信号に基づいて、充電の残り時間や満充電に対する蓄電容量の割合などを含む充電情報とを表示できる。これら情報によってバッテリ充電中であることや充電作業の進捗具合を確認することができる。
【0021】
バックライト2は、発光ダイオードなどの光源を適用でき、液晶表示パネル1の表示面の反対側に設けられる。この場合、バックライト2は、前記回路基板上に設けられるLEDチップ素子を適用でき、制御手段4からの制御信号に応じて、出力輝度を変更できるように回路構成されている。なお、バックライト2は、ライトガイドを用いたエッジライト方式であってもよい。また、液晶表示パネル1の背面側に拡散板などを介在させて、バックライト2からの照明光を斑無く液晶表示パネル1面に照射することもできる。
【0022】
入力手段3は、車載計器の積算走行距離や区間走行距離などを切替え表示するためのトリップスイッチ、または液晶表示パネル1を含む車載計器の照明輝度を設定するための調光スイッチを適用できる。また、入力手段3は、車両利用者の押圧操作に応じた操作信号を制御手段4へ出力する。
【0023】
制御手段4は、所定プログラムや各種データの格納、演算時の記憶領域などに用いる図示しないROMやRAM等の記憶部と、前記所定プログラムに従って演算処理するためのCPUと、入出力インターフェース等を設けたマイクロコンピュータを適用でき、入力手段3からの操作信号や、車両の各種センサに基づく車両情報を専用の通信ケーブル(多重通信ライン)を介して入力し、これらの信号に応じて液晶表示パネル1やバックライト2を制御するための制御信号を生成し出力する。この場合、前記通信ケーブルを介して、バッテリ制御ユニットBや、メインスイッチユニットC、他のECUなどと通信可能に設けられる。
【0024】
制御手段4は、別途車載されるメインスイッチユニットCのメインスイッチ(起動スイッチ)がオンされることによって車載計器が起動し、車両速度などの車両情報を液晶表示パネル1に表示させる通常モードと、メインスイッチがオフされることによって車載計器の通常表示出力を停止させ省電力動作させる停止モードと、電源プラグの接続によってバッテリ充電可能状態にある場合に充電状態を液晶表示パネル1に表示出力させる充電モードとを用意してある。
【0025】
なお、制御手段4は、車外の充電設備(この場合、急速充電設備または家庭用電源)Dがバッテリ制御ユニットBと接続することによって、充電モードに切り換え、車載バッテリに関する情報をバッテリ制御ユニットBから、バッテリ情報として入力できるように構成されている。この場合、制御手段4は、前記通信ケーブルを介して、残容量(例えば、40%)の情報を入力し、この情報に基づいて液晶表示パネル1に後述する充電終了時間を含む充電情報として表示出力させることができる。
【0026】
制御手段4は、充電情報として、満充電あるいは予め設定された割合(例えば、満充電の90%)を所定容量として、この所定容量に達するまでに必要な残り充電時間(第2の予想時間)を充電終了時間として予測し、表示出力する。この場合、制御手段4は、図3に示すように、複数回のバッテリ情報を入力し、バッテリ残容量情報の変化量4aと、この変化に要した時間4bとに基づいて、所定容量4cまで充電されるための時間を充電終了時間4dとして算出する。
【0027】
なお、制御手段4は、この充電終了時間4dの予測演算に関し、図3のように、単純に直線的な延長線が所定容量4cに達するまでの時間を算出してもよいし、3回以上のバッテリ残容量情報や、あるいは、バッテリの充電特性に基づく曲線的な延長線が所定容量に達するまでの時間を算出することによって、より正確な充電終了時間を算出することができる。
【0028】
また、制御手段4は、充電終了時間として、所定容量に達する残り時間を表示する例を示したが、所定容量に達する時刻を表示させることもできる。また、充電中、所定時間毎に前述充電終了時間を予測演算することによって、充電における環境(温度など)や車載電装品の負荷状態が変化した場合であっても、より正確な充電終了時間を算出することができる。
【0029】
なお、制御手段4は、液晶表示パネル1の別領域や、別の表示器を用いて、満充電に対する蓄電容量の割合を示すバーグラフなどを表示することもでき、充電作業の進捗具合などを確認できる。また、制御手段4は、入力手段3からの操作信号に基づいて、液晶表示パネル1の表示画面を切り換えることによって、充電開始からの経過時間(今回の充電時間)、充電済みバッテリ容量、過去の車両情報(単位電力あたりの走行距離)から予測される走行可能距離などの充電参考情報を選択して表示させることもできる。これらの充電参考情報は、車両利用者の車両の利用計画に応じた充電方法を選択するための目安になる。
【0030】
斯かる車両用表示装置は、バッテリを出力源としてモータを駆動することで動力を得る電気自動車の各種情報を表示する液晶表示パネル1と、車両情報を入力してこの車両情報に基づく表示出力を行うように液晶表示パネル1を制御する制御手段4とを備えた車両用表示装置であって、制御手段4は、前記バッテリの充電中において、所定時間毎に複数回入力して得られるバッテリ残容量情報に基づいて、予め設定された前記バッテリの所定容量まで充電されるための充電終了時間を算出し、この充電終了時間を液晶表示パネル1に出力させる。
【0031】
したがって、バッテリ充電時の充電状態、特に、充電終了時間の表示において、例えば、急速充電スタンドや家庭用電源など充電設備Dの仕様によって、充電時間が異なってしまう場合であっても、実際の充電結果に応じて、正確な充電終了時間を算出することができる。また、充電する温度環境や車載バッテリの劣化状態などの条件に関係なく、充電終了時間を予測することができ、信頼性の高い充電終了時間を表示できる。
【0032】
また、制御手段4は、通常走行時に前記各種情報として、前記電気自動車の積算走行距離を液晶表示パネル1に表示させ、前記バッテリの充電中においては、前記積算走行距離の表示を切り換えて、前記充電終了時間を液晶表示パネル1に表示させることによって、表示デバイスを兼用できるとともに、信頼性の高い充電終了時間を切り換えて表示することが可能となる。
【0033】
また、制御手段4は、複数のバッテリ残容量情報の変化量と、変化に要した時間とに基づいて、前記所定容量まで充電されるための時間を前記充電終了時間として算出することによって、充電環境等が異なる場合であっても、これに影響されることなく信頼性の高い充電終了時間を算出できる。
【0034】
また、制御手段4は、前記バッテリが満充電されるまでの時刻を前記充電終了時間として液晶表示パネル1に表示させることによって、車両利用者にとって単純でわかりやすいシステムになる。
【0035】
なお、本発明の車両用表示装置を上述した実施の形態の構成にて例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の構成においても、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の改良、並びに設計の変更が可能なことは勿論である。
【0036】
例えば、表示パネルとして、液晶表示パネル1とバックライト2とによって、表示を行うものを例に挙げて説明したが、有機EL素子や蛍光表示管など他の表示デバイスを用いた表示手段であってもよく、上述した実施の形態と同様の効果を得ることができる。また、入力手段3は、車載計器Aに設けられるものであっても、その他のインストルメントパネル上、またはステアリングに設けられるものであってもよく、専用の配線または上述した通信ケーブルなどを介して操作信号を制御手段4が受信できるものであれば代替でき、上述した実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明に係る車両用表示装置は、例えば、自動車やオートバイなどの移動体用の計器として適用でき、特に電気自動車や電動バイクなどバッテリ充電を必要とする車両に搭載される表示装置として好適である。
【符号の説明】
【0038】
1 液晶表示パネル(表示パネル)
2 バックライト
3 入力手段
4 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリを出力源としてモータを駆動することで動力を得る電気自動車の各種情報を表示する表示パネルと、
車両情報を入力してこの車両情報に基づく表示出力を行うように前記表示パネルを制御する制御手段とを備えた車両用表示装置であって、
前記制御手段は、前記バッテリの充電中において、所定時間毎に複数回入力して得られるバッテリ残容量情報に基づいて、予め設定された前記バッテリの所定容量まで充電されるための充電終了時間を算出し、この充電終了時間を前記表示パネルに出力させることを特徴とする車両用表示装置。
【請求項2】
前記制御手段は、通常走行時に前記各種情報として、前記電気自動車の積算走行距離を前記表示パネルに表示させ、前記バッテリの充電中においては、前記積算走行距離の表示を切り換えて、前記充電終了時間を前記表示パネルに表示させることを特徴とする請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項3】
前記制御手段は、複数のバッテリ残容量情報の変化量と、変化に要した時間とに基づいて、前記所定容量まで充電されるための時間を前記充電終了時間として算出することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用表示装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記バッテリが満充電されるまでの時刻を前記充電終了時間として前記表示パネルに表示させることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の車両用表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−182962(P2012−182962A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45964(P2011−45964)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(000231512)日本精機株式会社 (1,561)
【Fターム(参考)】