説明

車両用表示装置

【課題】 指針式計器の視認性を低下させることなく、前記指針式計器が表現する車両情報とは異なる車両情報を効果的に車両利用者に伝えることができる車両用表示装置を提供する。
【解決手段】 車両情報に応じて回動して指示位置を変える指針11aとこの指針11aの指示対象となる指標部11bとを備えた指針式計器表示部11と、指針11aの回動範囲内において指針11a及び指標部11bが示す車両情報(車速)と異なる車両情報を画像にて表示する警報表示画像13と、指針式計器表示部11と警報表示画像13とが所望の車両情報を表示するように制御するとともに、指針11aの指示位置に応じて警報表示画像13を表示変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用表示装置に関し、画像によって車両情報を表示する表示パネルを用いた車両用表示装置に好適である。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の車室内に設けられた車両用表示装置において、運転席に着座した車両利用者(運転者)がステアリングホイールを介して複数の表示器の表示を視認できるように、運転席前方のインストルメントパネル内に配置されているコンビネーションメータがある。このコンビネーションメータにあっては、車両の走行速度、エンジンの単位時間当たりの回転数、燃料タンクの燃料の残量、エンジンの冷却水の温度などを示す複数の表示エリアを有して構成している。これらの各表示エリアは、車両利用者が一目で車両状態を理解できるように、同一ケースに効率よく配置している。
【0003】
また、近年では車両利用者が運転に際して求める情報の増加や多様化に伴って、車両用表示装置に組み込む表示器の数も増加する傾向にある。しかしながら、組み込める表示エリアにも限界があることから、より多くの情報を表示可能にするために、様々な表示装置の提案がなされていた。
【0004】
例えば、液晶表示パネルや有機ELパネルなどによる画像表示によって車両情報を表示し、画面切り換えすることによって、多種の車両情報を選択的に表示することが、特許文献1に開示されている。
【0005】
また、特許文献2に開示されるように、車両情報に応じて回動する指針画像と、指針の指示対象となる指標部画像とによって計測値を表現する指針式計器の画像表示を行うことが提案されており、多種の車両情報を表示するため、例えば、指針の先端画像を残して、指針軸と指針の基部の前面に重ねて他の車両情報を表示させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−107363号公報
【特許文献2】特開2009−137486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述した車両用表示装置は、指針画像の一部を隠蔽して、指針画像と異なる車両情報を表示することから、指針画像が先端部のみしか表示されず、指針画像により表示される車両情報の視認性を低めてしまう問題があった。
【0008】
そこで本発明の目的は、上述した課題に着目してなされ、指針式計器の視認性を低下させることなく、前記指針式計器が表現する車両情報とは異なる車両情報を効果的に車両利用者に伝えることができる車両用表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の車両用表示装置は、車両情報に応じて回動して指示位置を変える指針とこの指針の指示対象となる指標部とを備えた指針式計器表示部と、前記指針の回動範囲内において前記指針及び前記指標部が示す車両情報と異なる車両情報を画像にて表示する情報表示部と、前記指針式計器表示部と、前記情報表示部とが所望の車両情報を表示するように制御するとともに、前記指針の指示位置に応じて前記情報表示部を表示変化させるように描画処理する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
また、前記制御手段は、前記画像について、前記指針の回動範囲内に重なる表示位置で、かつ前記指針と重ならない表示位置に移動させるように描画処理して前記情報表示部を制御することを特徴とする。
【0011】
また、前記指針式計器表示部、及び前記情報表示部は、関連する車両情報を表示することを特徴とする。
【0012】
また、前記制御手段は、前記画像を囲む表示枠をずらしながら複数枚重ねて表示するように描画処理して前記情報表示部を制御してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、画像によって車両情報を表示する表示パネルを用いた車両用表示装置に関し、指針式計器の視認性を低下させることなく、前記指針式計器が表現する車両情報とは異なる車両情報を効果的に車両利用者に伝えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態における車両用計器の表示例を示す図。
【図2】同上実施の形態における回路構成を示すブロック図。
【図3】同上実施の形態の別表示例を示す図。
【図4】同上実施の形態の別表示例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態として、本発明の車両用表示装置が車速計を含む車両用計器に適用した例をあげて、添付図面を用いて説明する。
【0016】
この場合、車両用計器は、運転席に対向配置されて画像表示可能な表示パネルを用いており、図1は、本発明の車両用計器の画面表示例を示す。また、表示パネル1は、図2に示すような回路構成によって駆動される。
【0017】
表示パネル1は、TFT型の液晶表示パネルと図示しないバックライトとを有する周知のものが適用でき、画面全体が車両情報の表示領域として用いられる。なお、プラズマディスプレイやELディスプレイ等の自発光型の表示デバイスで構成することもできる。
【0018】
表示パネル1は、制御手段2による駆動制御によって、所望の表示画像を出力するように構成しており、通常、指針式計器表示部11と、デジタル表示部12とを表示出力し、所定の条件下において警報表示画像(情報表示部)13を表示できるようにしている。
【0019】
指針式計器表示部11は、この場合、車速を示し、制御手段2による駆動制御によって指示位置を変える指針11aと指針11aの指示対象となる目盛りや数値などの指標部11bとを表示するようにしている。車両利用者は、指針11aと指標部11bとの位置関係を対比判読することによって、計測値を読み取ることができる。また、車両利用者は、指針11aの傾きやその変化によって、車速や車速の変化具合を認識することもでき、視認性の良好な表示となる。
【0020】
デジタル表示部12は、制御手段2による駆動制御によって、指針式計器11による車両情報(この場合、車速)以外の車両情報を表示し、残燃料量、走行燃費、積算走行距離、外気温度などを画面切り換えして表示出力できる。また、デジタル表示部12は、指針式計器表示部11の表示領域外を使用して、方向指示や変速機位置、前照灯などのインジケータを表示することもできる。
【0021】
警報表示画像13は、制御手段2による駆動制御によって、所定の条件下において、警報を表示出力し、この場合、制動装置の異常を示す警報表示を出力する画像を例にあげる。図1中、警報表示画像13は、警報内容を囲む表示枠13aを設けて指針式計器表示部11の指針11aの回動領域に重なるように、表示パネル1の上部に表示している。また、指針11aが指示している指標部11b以外の車速の対比判読に使用していない指標部に重ねて表示している。したがって、車両利用者は、他の表示の視認性を低めることなく、できるだけ大きな画像にて視認性の良い警報表示画像13を表示することができる。なお、警告表示画像13の表示枠13a内に重なった指標部11bは、コントラストを調整して透過表示しているようにみせることもできる。
【0022】
また、この場合、制動装置の異常を示す警報は、車速に応じて危険度が高まるため、車速と関連性の高い表示であり、警報表示画像13が、指針式計器表示部11の指針11aの回動領域に重なるように表示されることによって、制動装置の異常を示す表示(警報表示画像13)と車速状態を表示する表示(指針式計器表示部11)とを関連づけて表示できるだけでなく、車両利用者にとって、注視するべき表示箇所が狭くて済むため、視認性良く効果的な表示となる。
【0023】
制御手段2は、表示パネル1の表示面と反対側に設けられる図示しない回路基板に実装されるマイクロコンピュータ21と、描画処理回路22とを設けている。
【0024】
マイクロコンピュータ21は、通信ケーブルを介して車両情報を入力し、これに基づく各種プログラムを用いた演算によって、計測値や車両状態を識別し、これに応じた表示パネル1による表示出力を行うための制御信号を描画処理回路22に出力する。また、マイクロコンピュータ21は、表示パネル1の図示しないバックライトを点灯/消灯、輝度調整など制御する制御信号も発している。
【0025】
描画処理回路22は、グラフィックコントローラを適用でき、予め記憶媒体に格納されたフォントデータや画像データ等の描画用データを用いて、マイクロコンピュータ21からの制御信号に基づく選択、加工、合成などの処理を行って、表示パネル1を駆動するための駆動信号を生成して、表示パネル1を駆動する。
【0026】
図3は、図1に示す表示が遷移し、制動装置の異常を示す警報表示をしたのにも関わらず、車速が増した場合の表示例である。表示パネル1の表示画像において、指針11aの回動に伴って、警報表示画像13が指針11aとこの指針11aが指示している指標部11bに重ならないように、表示位置を上部から下部へ移動している。これにより、指針式計器表示部11の視認性を低下させることなく、警報表示部13の表示領域を確保することができるため、効果的な表示となる。
【0027】
また、比較的大きな画像領域を有する警報表示部13が移動することで、大きな表示変化によって車両利用者に視認を促す効果も期待できる。また、警報表示画像13は、指針式計器表示部11の指針11aの回動領域に重なったまま表示位置を移動することによって、前述同様に、視認性良く効果的な表示となる。
【0028】
図4は、複数種類の警報状態や報知すべき状態が発生した際の表示例であり、前述と同様に、指針11aと指針11aが指示中の指標部11bを避けるようにして移動する警報表示画像13を表示するとともに、表示枠13aを複数枚ずらして重ねたように表示するように描画処理がなされて、複数種類の警報が発生していることを車両利用者へ認識させることができる。また、この場合、表示パネル1は、各表示枠13aの端部に警報種類の総数と、表示番号を示す識別部13bを表示させており、警報状態にある警報表示画像13がいくつあり、どの表示枠13aが表示されているのかを認識し易い表示となる。
【0029】
なお、複数種類の表示枠を図4のように重ねて示す場合には、図示しないスイッチによって、最前面に表示される警報内容を切り換えることができ、この際、優先度順に重ね表示することや、表示枠13aの各表示色を変えることで、より識別性を高めることができる。また、表示枠13aを点滅表示することによって、強調した表示を行うことができる。また、前述スイッチによる表示切り換えを行った場合には、所定時間操作がない場合に、より表示優先度の高い警報を表示させるように自動で画面切り換えすることも考えられる。
【0030】
斯かる車両用表示装置は、車両情報に応じて回動して指示位置を変える指針11aとこの指針11aの指示対象となる指標部11bとを備えた指針式計器表示部11と、指針11aの回動範囲内において指針11a及び指標部11bが示す車両情報(車速)と異なる車両情報を画像にて表示する警報表示画像13と、指針式計器表示部11と警報表示画像13とが所望の車両情報を表示するように制御するとともに、指針11aの指示位置に応じて警報表示画像13を表示変化させる。
【0031】
したがって、指針式計器の視認性を低下させることなく、前記指針式計器が表現する車両情報とは異なる車両情報を効果的に車両利用者に伝えることができる車両用表示装置となる。
【0032】
なお、本発明の車両用表示装置を上述した実施の形態の構成にて例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の構成においても、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の改良、並びに設計の変更が可能なことは勿論である。例えば、警報表示画像13の表示位置を上部から下部へ移動する例を挙げて示したが、指針11aを避けるようにして、拡大や縮小表示させることによって、指針式計器表示部11の視認性を低下させない範囲で、より大きな警報表示画像13を表示するように制御することもでき、警報内容を効果的に知らせることが期待できる。
【0033】
また、上述警報内容として車速に関連する制動装置の異常を示す表示を例に挙げて説明したが、車速値を表示条件の一つとして設定された車両情報であってもよく、例えば、車両ドアを開いたまま走行した際の警報や、シートベルトを使用しないで走行した場合の警報、サイドブレーキを作動させたままで走行した場合の警報などであっても、車速と警報内容との関連性が高いため、これを重ねて表示することで、上述と同様の効果を得ることができる。
【0034】
また、指針式計器表示部11について画像にて表示する例を挙げたが、制御手段の制御信号によって作動するモータを駆動源として回動する指針を設けて、上述した実施の形態に置き換えてもよく、この場合、指標部は、表示パネルにて画像表示することが好適である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、例えば、自動車やオートバイ、あるいは農業機械や建設機械を備えた移動体に搭載される車両用表示装置として適用できる。
【符号の説明】
【0036】
1 表示パネル
11 指針式計器表示部
11a 指針
11b 指標部
13 警報表示部
13a 表示枠
13b 識別部
2 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両情報に応じて回動して指示位置を変える指針とこの指針の指示対象となる指標部とを備えた指針式計器表示部と、
前記指針の回動範囲内において前記指針及び前記指標部が示す車両情報と異なる車両情報を画像にて表示する情報表示部と、
前記指針式計器表示部と、前記情報表示部とが所望の車両情報を表示するように制御するとともに、前記指針の指示位置に応じて前記情報表示部を表示変化させるように描画処理する制御手段と、
を備えたことを特徴とする車両用表示装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記画像について、前記指針の回動範囲内に重なる表示位置で、かつ前記指針と重ならない表示位置に移動させるように描画処理して前記情報表示部を制御することを特徴とする請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項3】
前記指針式計器表示部、及び前記情報表示部は、関連する車両情報を表示することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用表示装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記画像を囲む表示枠をずらしながら複数枚重ねて表示するように描画処理して前記情報表示部を制御してなることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の車両用表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−228973(P2012−228973A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99050(P2011−99050)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000231512)日本精機株式会社 (1,561)
【Fターム(参考)】