説明

車両用表示装置

【課題】 電源供給が停止した際に、放電回路を用いることによって、異常な車両情報の表示を防止できる車両用表示装置を提供する。
【解決手段】 車両情報を表示する表示手段1と、この表示手段1に駆動信号を与える駆動回路2と、この駆動回路2を制御することによって表示手段1に所望の表示を促す制御手段3と、車載バッテリBの電源を利用して制御手段3の駆動電圧を生成する電源回路4と、表示手段1のバイアス回路平滑用に駆動回路2に接続されたコンデンサ5と、駆動回路2に接続されてコンデンサ5の電荷を放電可能に設けられる放電回路6と、を備え、駆動回路2は、制御手段3からのリセット信号に基づいて駆動回路2をリセットさせるリセット回路21と、前記駆動信号を生成するため電源回路4からの駆動電圧を昇圧する昇圧回路22と、を設けてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用表示装置に関して、特に、表示パネルを用いて表示する車両用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用表示装置として、例えば、特許文献1に開示される車両用計器があり、速度計からなる指針式表示部と、走行距離や車外温度などの各種情報を表示するための液晶や有機ELを用いた表示パネル部とが設けられる複合計器がある。
【0003】
また、これら計器に搭載される液晶表示装置は、一般に、中間に液晶を充填した一対の透明基板の所定の部分に、選択的に電界を与えて特定の図形や文字等の情報を表示する液晶表示パネルが内蔵された液晶表示装置が、コンピュータや携帯電話等の表示装置として多く用いられており、このような液晶表示装置は、液晶表示パネルを駆動するためのパネル駆動用ICチップを有している。
【0004】
また、このパネル駆動用ICチップには、低消費電力化等の要求により、バイアス電圧発生回路が組み込まれており、このような液晶表示パネル駆動用ICチップを有する液晶表示装置は、バイアス電圧発生回路によって発生したバイアスで電圧をバイアス回路平滑用コンデンサに保持するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−76294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記液晶表示装置においては、前記バイアス回路平滑用コンデンサに保持されたバイアス電圧の電荷が、前記液晶表示装置の電源がオフにされたときに液晶表示パネルの方に流れてしまうおそれがあり、これにより、液晶表示パネルの表示の一部が異常表示してしまう可能性があり問題であった。
【0007】
特に、車両用表示装置にあっては、車載バッテリの劣化や、電装品の負荷状態によって、所定の電源電圧が得られないケースが想定されるため、様々な電源状態においても、異常な車両情報の表示を避ける必要があり、改善の余地があった。
【0008】
そこで本発明の目的とするところは、上述した課題に着目してなされたものであって、電源供給が停止した際に、放電回路を用いることによって、異常な車両情報の表示を防止できる車両用表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の車両用表示装置は、車両情報を表示する表示手段と、この表示手段に駆動信号を与える駆動回路と、この駆動回路を制御することによって前記表示手段に所望の表示を促す制御手段と、車載バッテリの電源を利用して前記制御手段の駆動電圧を生成する電源回路と、前記表示手段のバイアス回路平滑用に前記駆動回路に接続されたコンデンサと、前記駆動回路に接続されて前記コンデンサの電荷を放電可能に設けられる放電回路と、を備え、前記駆動回路は、前記制御手段からのリセット信号に基づいて前記駆動回路をリセットさせるリセット回路と、前記駆動信号を生成するため電源電圧を昇圧する昇圧回路と、を設けてなり、前記電源回路から前記制御手段への駆動電圧が途絶えた場合に、前記リセット回路を用いて前記駆動回路をリセットするとともに、前記放電回路を用いて前記コンデンサの電荷を放電することを特徴とする車両用表示装置。
【0010】
また、前記電源回路は、前記車載バッテリからの電源を車両の起動スイッチを介して入力することを特徴とする。
【0011】
また、前記制御手段からの制御信号に基づいて、前記電源回路が生成した駆動電圧を前記駆動回路へ供給するか否かを切り換えるスイッチ手段を備えてなることを特徴とする。
【0012】
また、前記リセット回路と前記制御手段との間の配線において、一端が接地されたプルダウン抵抗素子からなるリセット部が接続されてなることを特徴とする。
【0013】
また、前記放電回路は、前記昇圧回路への電源供給を行う配線に分岐し、一端が接地されたプルダウン抵抗素子からなる放電部を設けてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、車両情報を画面にて表示する表示パネルを備えた車両用表示装置に関し、電源供給が停止した際に、放電回路を用いることによって、異常な車両情報の表示を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態の回路構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態として車両用計器に適用したものを例に挙げて添付図面を用いて説明する。
【0017】
図1は、発明に係る車両用計器の電気的な構成を示す図であり、表示手段1と、駆動回路2と、制御手段3と、電源回路4と、コンデンサ5と、放電回路6とが車両用計器の筐体内に設けた回路基板に実装されている。
【0018】
表示手段1は、例えば、車両運転中の利用者に対して、時々刻々と変化する各種情報を表示するための表示パネルを適用でき、液晶、あるいは有機ELを用いた表示パネルが好適である。この場合、表示手段1は、駆動ドライバを設けたTFT型の液晶表示パネルを用いてなり、制御手段3や駆動回路2の制御や駆動に基づいて、車両に関する各種情報、例えば、車両の走行速度や、残燃料量や燃費、積算走行距離、ギアポジションなどのインジケータ、警報などの車両情報を所望の画像にて表示出力するように構成される。
【0019】
また、表示手段1は、制御手段3による演算、または、車両用計器以外の制御回路による演算処理によって算出された計測値などを駆動回路2による駆動信号を用いて表示することができ、車両のインストルメントパネルにおいて、車両利用者が車両情報の表示を視認できるように設けられる。この場合、表示手段1は、図示しないバックライトとなる発光ダイオードを実装した回路基板や配線を介して駆動回路2と接続される。
【0020】
また、表示手段1は、画面切り換えによって、例えば、車両のドア開閉状態、時刻、車両周辺映像(バックモニタなど)、テレビジョン放送受像、無線通信による文字情報などの表示用途として使用することも考えられる。
【0021】
駆動回路2は、制御手段3から発せられる制御信号に基づいて、表示手段1を駆動するための駆動信号を生成して出力するもので、液晶表示パネル用に駆動ドライバICを適用できる。また、駆動回路2は、制御手段3からのリセット信号に基づいて駆動回路2をリセットさせるリセット回路21と、駆動信号を生成するため電源電圧を昇圧する昇圧回路22と、を設けている。
【0022】
また、リセット回路21と制御手段3との間の配線において、一端が接地されたプルダウン抵抗素子からなるリセット部21aが接続されており、リセット回路21は、制御手段3からのリセット信号があった場合、もしくは何も信号が無い場合には、駆動回路2のリセット処理がなされるように作用する。従って、制御手段3が作動しない場合には、リセット部21aの接地によって駆動回路2をリセットさせるようにしている。なお、この場合、リセット回路21への入力が0Vの信号の時には、リセット信号として認識してリセット処理がなされ、それ以外の電圧(例えば、5V)を入力した時には、通常の作動状態を維持するように設計されている。
【0023】
また、昇圧回路22は、車載バッテリBからの電源供給を用いて制御手段3からの制御によって生成された昇圧用電源を入力し、コンデンサ5を用いて昇圧し、表示手段1の表示に必要な電圧を生成する。
【0024】
制御手段3は、駆動回路2と信号線を介して接続されるマイクロコンピュータを適用でき、電源回路4からの電力を駆動源として、車両に搭載された各種センサからの情報を通信ケーブルを介して入力し、これら車両側からの車両情報や所定プログラムに基づいて演算処理する。また、制御手段3は、この演算処理によって表示手段1を制御するための制御信号を生成し駆動回路2へ出力するように構成される。
【0025】
なお、制御手段3は、車両情報を表示手段1に表示させるため制御信号を生成し出力するための表示処理の他に、スイッチ回路7を介して駆動回路2への電源供給を切り換えるスイッチ処理や、駆動回路2のリセット処理などを行うための各プログラムや演算結果を格納する記憶部を備えている。
【0026】
電源回路4は、車載バッテリBの電源を利用して制御手段3や駆動回路2の駆動電圧を生成するものである。この場合、電源回路4は、車載バッテリB側には、イグニッションスイッチからなる車両の起動スイッチSや電力フューズFを介して電源電圧(例えば、8〜14V)を入力し、所望の電圧(例えば、5V)に変換して出力する。また、電源回路4は、駆動回路2とスイッチ回路7を介して接続されている。
【0027】
コンデンサ5は、表示手段1のバイアス回路平滑用に駆動回路2の昇圧回路22に接続されており、昇圧回路22によって発生したバイアス電圧を保持するために用いられる。
【0028】
放電回路6は、昇圧回路22への電源供給を行う配線に分岐し、一端が接地されたプルダウン抵抗素子からなる放電部を設けている。放電回路6は、駆動回路2がリセットした場合に、昇圧回路22によって昇圧されて保持されたコンデンサ5の電荷を、表示手段1側へ流さずに、前記接地側へ流すことができるため、前記電荷による表示手段1への表示影響を防止することができる。
【0029】
スイッチ回路7は、トランジスタなどを適用でき、制御手段3による信号に基づいて電源回路4からの電源供給が駆動回路2へ供給されるか否かを切り換えることができ、この場合、通常時において、制御手段3が作動してから、駆動回路2へ電源供給がなされ、制御手段3が停止する前に駆動回路2への電源供給を止めるようにしている。
【0030】
斯かる車両用計器は、車両情報を表示する表示手段1と、この表示手段1に駆動信号を与える駆動回路2と、この駆動回路2を制御することによって表示手段1に所望の表示を促す制御手段3と、車載バッテリBの電源を利用して制御手段3の駆動電圧を生成する電源回路4と、表示手段1のバイアス回路平滑用に駆動回路2に接続されたコンデンサ5と、駆動回路2に接続されてコンデンサ5の電荷を放電可能に設けられる放電回路6と、を備え、駆動回路2は、制御手段3からのリセット信号に基づいて駆動回路2をリセットさせるリセット回路21と、前記駆動信号を生成するため電源回路4からの駆動電圧を昇圧する昇圧回路22と、を設けてなり、電源回路4から制御手段3への駆動電圧が途絶えた場合に、リセット回路21を用いて駆動回路2をリセットするとともに、放電回路6を用いてコンデンサ5の電荷を放電する。
【0031】
したがって、例えば、車載バッテリBを外した場合や、劣化によって所定電圧が供給できなくなった場合など、不意に電源がオフになったときに、コンデンサ5に保持されたバイアス電圧の電荷を放電させることができる。この放電をリセット部21aが作用するリセット信号に基づいて動作させることによって、コンデンサ5のバイアス電圧の電荷を表示手段1側へ流さずに放電できる。従って、表示手段1による異常な表示を防止することができる。
【0032】
なお、本発明の車両用表示装置を上述した実施の形態の構成にて例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の構成においても、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の改良、並びに設計の変更が可能なことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、例えば、自動車やオートバイ、あるいは農業機械や建設機械を備えた移動体に搭載される車両用表示装置として適用できる。
【符号の説明】
【0034】
1 表示手段
2 駆動回路
21 リセット回路
22 昇圧回路
3 制御手段
4 電源回路
5 コンデンサ
6 放電回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両情報を表示する表示手段と、
この表示手段に駆動信号を与える駆動回路と、
この駆動回路を制御することによって前記表示手段に所望の表示を促す制御手段と、
車載バッテリの電源を利用して前記制御手段の駆動電圧を生成する電源回路と、
前記表示手段のバイアス回路平滑用に前記駆動回路に接続されたコンデンサと、
前記駆動回路に接続されて前記コンデンサの電荷を放電可能に設けられる放電回路と、を備え、
前記駆動回路は、前記制御手段からのリセット信号に基づいて前記駆動回路をリセットさせるリセット回路と、前記駆動信号を生成するため電源電圧を昇圧する昇圧回路と、を設けてなり、
前記電源回路から前記制御手段への駆動電圧が途絶えた場合に、前記リセット回路を用いて前記駆動回路をリセットするとともに、前記放電回路を用いて前記コンデンサの電荷を放電することを特徴とする車両用表示装置。
【請求項2】
前記電源回路は、前記車載バッテリからの電源を車両の起動スイッチを介して入力することを特徴とする請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項3】
前記制御手段からの制御信号に基づいて、前記電源回路が生成した駆動電圧を前記駆動回路へ供給するか否かを切り換えるスイッチ手段を備えてなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用表示装置。
【請求項4】
前記リセット回路と前記制御手段との間の配線において、一端が接地されたプルダウン抵抗素子からなるリセット部が接続されてなることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の車両用表示装置。
【請求項5】
前記放電回路は、前記昇圧回路への電源供給を行う配線に分岐し、一端が接地されたプルダウン抵抗素子からなる放電部を設けてなることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の車両用表示装置。

【図1】
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【公開番号】特開2012−240631(P2012−240631A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115596(P2011−115596)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(000231512)日本精機株式会社 (1,561)