説明

車両用表示装置

【課題】 複数のスクリーンに画像を投射する車両用表示装置において、表示品位を向上させることが可能な車両用表示装置を提供する。
【解決手段】所定の画像を表示する表示デバイス110と、表示デバイス110に表示された前記画像を投射する投射光学系120と、投射光学系120から投射された前記画像が分割して投影される複数のスクリーン130、140と、を有する車両用表示装置100であって、表示デバイス110から各スクリーン130、140への各投射距離がそれぞれ略等しいことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のスクリーンに画像を投射する車両用表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、車速、エンジン回転数、水温、残燃料、走行距離や地図情報、誘導情報、車両周辺画像さらにはオーディオ情報等の車両に関する種々の情報(以下、車両情報とも言う)を車両のウインドシールドやコンバイナ等の投影部材に表示するようにしたいわゆるヘッドアップディスプレイ(HUD)を、インストルメントパネル内に設けられたメーターディスプレイと併設した車両用表示装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に開示される車両用表示装置は、1つの表示素子(表示デバイス)を有し、該表示素子の表示面における一方の表示エリア内の表示情報をメーターディスプレイを構成するスクリーンに投射し、他方の表示エリア内の表示情報をHUDを構成するウインドシールドあるいはその内側に設けられるコンバイナに導くように構成したものであり、コンパクトで安価な車両用表示装置を提供可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−196276号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、単に1つの表示デバイスの画像を分割して複数個所で表示する構成においては、表示される各画像の解像度に差異が生じたり、各画像の境界に輝度ムラが生じたり、各画像の歪みに差異が生じたりして表示品位の向上の点で更なる改善の余地があった。
【0006】
そこで、本発明は、上述した課題に着目してなされたものであり、複数のスクリーンに画像を投射する車両用表示装置において、表示品位を向上させることが可能な車両用表示装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前述の課題を解決するために、所定の画像を表示する表示デバイスと、前記表示デバイスに表示された前記画像を投射する投射光学系と、前記投射光学系から投射された前記画像が分割して投影される複数のスクリーンと、を有する車両用表示装置であって、前記表示デバイスから前記各スクリーンまでの各投射距離がそれぞれ略等しいことを特徴とする。
【0008】
また、前記各スクリーンの少なくとも1つが平面状でないことを特徴とする。
【0009】
また、前記画像は、前記各スクリーンに対応した各表示領域の間に非表示領域を有することを特徴とする。
【0010】
また、所定の画像データを前記表示デバイスに出力する表示制御手段を備え、
前記表示デバイスは、前記画像データに基づいて前記画像を表示し、
前記表示制御手段は、前記画像データの前記各スクリーンでの表示歪みを補正する画像データ補正部を備えてなることを特徴とする。
【0011】
また、前記各スクリーンとして、ステアリングホイールの内側から視認されるように配置された第1のスクリーンと、前記ステアリングホイールの外側から視認されるように配置された第2のスクリーンと、前記画像を透過してウインドシールドあるいはこのウインドシールドの内側に配設された投影部材に導く第3のスクリーンと、の少なくとも2つを備えてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数のスクリーンに画像を投射する車両用表示装置において、表示品位を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態である車両用表示装置の概観を示す図。
【図2】同上車両用表示装置の電気的構成を示す図。
【図3】同上車両用表示装置における画像を示す図。
【図4】本発明の第2の実施形態である車両用表示装置の概観を示す図。
【図5】同上車両用表示装置の電気的構成を示す図。
【図6】同上車両用表示装置における画像を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を適用した実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0015】
図1及び図2を用いて第1の実施形態である車両用表示装置100の全体構成を説明する。図1は車両用表示装置100の概観を示す図である。図2は車両用表示装置100の電気的構成を示す図である。図1に示すように、車両用表示装置100は、車両のインパネP内部に配設され、後述する表示デバイス110が形成する後述する画像200を分割してインパネPに設けられる第1の開口部P1に配置される後述する第1のスクリーン130と第2の開口部P2から視認される第2のスクリーン140とにそれぞれ投影して第1、第2の表示像V1、V2をそれぞれ表示するものである。
【0016】
車両用表示装置100は、表示デバイス110と、投射光学系120と、第1のスクリーン130と、第2のスクリーン140と、第1の平面ミラー150と、第2の平面ミラー160と、表示制御手段170と、記憶手段180と、から主に構成される。
【0017】
表示デバイス110は、図示しない照明光学系からの光を受けて画像を形成し、この画像を表示光L1として投射光学系120に出射するものであり、例えばTFT液晶などの透過型表示デバイスや、LCOS(Liquid Crystal On Silicon)やDMD(Digital Mirror Device)などの反射型表示デバイスからなる。表示デバイス110は、表示制御手段170から出力される画像データに基づいて画像200を形成する。
【0018】
投射光学系120は、表示デバイス110から出射される表示光L1のうち画像200の後述する第1の表示領域201からの光を第1の平面ミラー150を介して第1のスクリーン130に向けて投射し、表示光L1のうち画像200の後述する第2の表示領域201からの光を第1の平面ミラー150及び第2の平面ミラー160を介して第2のスクリーン140に向けて投射するものであり、本実施形態においては、投射レンズ121と自由曲面ミラー122とから構成されている。
投射レンズ121は、表示デバイス110の画像200を拡大し、第1のスクリーン130及び第2のスクリーン140に結像させるものであり、ガラスや樹脂材料からなる1枚以上のレンズから構成される。
自由曲面ミラー122は、投射レンズ121との組み合わせによって表示デバイス110の画像200を拡大し、第1のスクリーン130及び第2のスクリーン140に結像させるものであり、樹脂材料からなる基材の表面にアルミニウム等の光反射性の高い金属膜を形成してなる。
【0019】
第1のスクリーン130は、投射光学系120からの表示光L1を透過して第1の表示像V1を表示する透過型のスクリーンであり、光透過性の樹脂材料からなる基材に外光の差し込みを防止するルーバー層、着色層、拡散層あるいはハードコート層などを形成してなる。第1のスクリーン130は、インパネPに設けられる第1の開口部P1に配置されており、図示しないステアリングホイールの内側から運転者に視認される。なお、図中のSは前記ステアリングホイールの範囲(直径)を示すものである。また、第1のスクリーン130は、インパネPの表面形状に応じて上下方向に傾斜し、また、上下左右方向に湾曲しており、平面状でない曲面状のスクリーンである。
【0020】
第2のスクリーン140は、投射光学系120からの表示光L1を反射して第2の表示像V2を表示する反射型の平面状スクリーンであり、光透過性の樹脂材料からなる基材に投影光の入射・反射の方向を定めるレンズ層、着色層、拡散層などを形成してなる。第2のスクリーン140は、インパネPに設けられる第2の開口部P2に対応する位置に配置され、第2の開口部P2を通して前記ステアリングホイールの外側(上方)から運転者に視認される。なお、第2の開口部P2には光透過性の樹脂材料からなる窓部P3が配設される。
【0021】
第1の平面ミラー150は、投射光学系120からの表示光L1を第1のスクリーン130の方向及び第2の平面ミラー160の方向に反射する平面ミラーであり、ガラス材料からなる基材の表面にアルミニウム等の光反射性の高い金属膜を形成してなる。
【0022】
第2の平面ミラー160は、投射光学系120からの表示光L1を第2のスクリーン140の方向に反射する平面ミラーであり、その構成は第1の平面ミラー150と同様である。
【0023】
図2に示すように、表示制御手段170は、CPU、ROM、RAM及び入出力インターフェイス等を備えたマイクロコンピュータから構成される。表示制御手段170は、車両に搭載される各種センサやECU(Electronic Control Unit)、またはナビゲーション装置などの車載機器から各種車両情報を取得し、この車両情報に基づいて記憶手段180から画像データを取得し、この画像データを表示デバイス110へ出力して表示デバイス110の表示制御処理をするものである。また、表示制御手段170は、所定の切換信号に応じて、記憶手段180からの前記画像データを補正する画像データ補正部171を有する。
【0024】
記憶手段180は、EPROMなどの不揮発性メモリからなり、表示デバイス110にて表示する画像200を示す前記画像データを記憶する。
【0025】
以上の各部によって車両用表示装置100が構成されている。
車両用表示装置100は、表示デバイス110から第1、第2のスクリーン130、140への各投射距離Da、Dbがそれぞれ略等しくなるように各部が配置されている(Da≒Db)。なお、第1のスクリーン130への投射距離Daは投射レンズ121から自由曲面ミラー122の中心までの投射距離D1と自由曲面ミラー122の中心から第1の平面ミラー150までの投射距離D2と第1の平面ミラー150から第1のスクリーン130の中心までの投射距離D3との合計であり(Da=D1+D2+D3)、第2のスクリーン140への投射距離Dbは投射距離D1と投射距離D2と第1の平面ミラー150から第2の平面ミラー160までの投射距離D4と第2の平面ミラー150から第2のスクリーン140までの投射距離D5との合計である(Db=D1+D2+D4+D5)。すなわち、本実施形態においては、投射距離D3と、投射距離D4と投射距離D5との合計(D4+D5)と、が略等しくなる(D3≒D4+D5)ように第1のスクリーン130、第2のスクリーン140、第1の平面ミラー150及び第2の平面ミラー160をそれぞれ配置することで上述の条件を満たすことができる。なお、各投射距離Da、Dbは各表示像V1、V2の解像度の違いが運転者に視認されない程度に近似させれば良い。
かかる構成によれば、第1、第2のスクリーン130、140に表示される第1、第2の表示像V1、V2の表示の繊細さ(解像度)を同等とすることができ、表示品位を向上させることができる。
【0026】
次に、表示制御手段170による前記画像データ及びその補正について説明する。図3は前記画像データに基づいて形成された画像200を示す図であり、図3(a)は補正前の前記画像データに基づく画像200を、図3(b)は補正後の前記画像データに基づく画像200をそれぞれ示している。
画像200は、図3(a)に示すように、第1のスクリーン130に対応し第1の表示像V1を構成する画像が描画される第1の表示領域201と、第2のスクリーン140に対応し第2の表示像V2を構成する画像が描画される第2の表示領域202と、第1の表示領域201と第2の表示領域202との間に設けられ、何ら画像が描画されない(黒表示となる)非表示領域203と、によって構成されている。第1の表示領域201と第2の表示領域202との間に非表示領域203を設けることによって、第1のスクリーン130に向かう光と第2のスクリーン140に向かう光との境目で生じる輝度ムラが視認されなくなり、表示品位を向上させることができる。
【0027】
本実施形態においては、平面状でない第1のスクリーン130の表示面の湾曲や傾斜によって第1の表示像V1に表示歪みが生じる。補正後の前記画像データに基づく画像200は、図3(b)に示すように、この第1のスクリーン130における表示歪みを抑制するべく、画像データ補正部171によって第1の表示領域201を予め表示歪みとは逆に歪められたものである。この補正による前記画像データの歪み量は第1のスクリーン130の配置、形状に応じて規定値に定められていてもよいし、スイッチ等で数段階に調整可能としてもよい。補正後の画像200において、第1の表示領域201は略台形状となり、左右の辺が湾曲している。また、第1の表示領域201の左右側方に非表示領域203が形成されている。このように、前記画像データの第1のスクリーン130での表示歪みを補正することによって、第1のスクリーン130の配置や形状に自由度を持たせるとともに表示品位を向上させることができる。なお、第2のスクリーン140に表示歪みが生じる場合には、前記画像データに第2の表示領域202を表示歪みの逆に歪ませる補正がなされる。
【0028】
次に、図4から図6を用いて本発明の第2の実施形態について説明する。
【0029】
図4及び図5を用いて第2の実施形態である車両用表示装置300の全体構成を説明する。図4は車両用表示装置300の概観を示す図である。図5は車両用表示装置300の電気的構成を示す図である。図4に示すように、車両用表示装置300は、車両のインパネP内部に配設され、後述する表示デバイス310が形成する後述する画像400を分割してインパネPに設けられる第1の開口部P11に配置される後述する第1のスクリーン330と第2の開口部P12から視認される第2のスクリーン340とウインドシールドWを介して第3の開口部P13から視認される第3のスクリーン350とにそれぞれ投影して第1、第2、第3の表示像V11、V12、V13をそれぞれ表示するものである。
【0030】
車両用表示装置300は、表示デバイス310と、投射光学系320と、第1のスクリーン330と、第2のスクリーン340と、第3のスクリーン350と、第1の平面ミラー360と、第2の平面ミラー370と、表示制御手段380と、記憶手段390と、から主に構成される。
【0031】
表示デバイス310は、図示しない照明光学系からの光を受けて画像を形成し、この画像を表示光L11として投射光学系320に出射するものであり、例えばTFT液晶などの透過型表示デバイスや、LCOS(Liquid Crystal On Silicon)やDMD(Digital Mirror Device)などの反射型表示デバイスからなる。表示デバイス310は、表示制御手段380から出力される画像データに基づいて画像400を形成する。
【0032】
投射光学系320は、表示デバイス310から出射される表示光L11のうち画像400の後述する第1の表示領域401からの光を第1の平面ミラー360を介して第1のスクリーン330に向けて投射し、表示光L11のうち画像400の後述する第2の表示領域402からの光を第2のスクリーン340に向けて投射し、表示光L11のうち画像400の後述する第3の表示領域403からの光を第3のスクリーン350に向けて投射するものであり、本実施形態においては、投射レンズ321と自由曲面ミラー322とから構成されている。
投射レンズ321は、表示デバイス310の画像400を拡大し、第1のスクリーン330、第2のスクリーン340及び第3のスクリーン350に結像させるものであり、ガラスや樹脂材料からなる1枚以上のレンズから構成される。
自由曲面ミラー322は、投射レンズ321との組み合わせによって表示デバイス310の画像400を拡大し、第1のスクリーン330、第2のスクリーン340及び第3のスクリーン350に結像させるものであり、樹脂材料からなる基材の表面にアルミニウム等の光反射性の高い金属膜を形成してなる。
【0033】
第1のスクリーン330は、投射光学系320からの表示光L11を透過して第1の表示像V11を表示する透過型のスクリーンであり、光透過性の樹脂材料からなる基材に外光の差し込みを防止するルーバー層、着色層、拡散層あるいはハードコート層などを形成してなる。第1のスクリーン330は、インパネPに設けられる第1の開口部P11に配置されており、図示しないステアリングホイールの内側から運転者に視認される。なお、図中のSは前記ステアリングホイールの範囲(直径)を示すものである。また、第1のスクリーン330は、インパネPの表面形状に応じて上下方向に傾斜し、また、上下左右方向に湾曲しており、平面状でない曲面状のスクリーンである。
【0034】
第2のスクリーン340は、投射光学系320からの表示光L11を反射して第2の表示像V12を表示する反射型の平面状スクリーンであり、光透過性の樹脂材料からなる基材に投影光の入射・反射の方向を定めるレンズ層、着色層、拡散層などを形成してなる。第2のスクリーン340は、インパネPに設けられる第2の開口部P12に対応する位置に配置され、第2の開口部P12を通して前記ステアリングホイールの外側(上方)から運転者に視認される。なお、第2の開口部P12には光透過性の樹脂材料からなる窓部P14が配設される。
【0035】
第3のスクリーン350は、投射光学系320からの表示光L11を透過して第3の表示像V13を表示する透過型の平面状スクリーンであり、光透過性の樹脂材料からなる基材に外光の差し込みを防止するルーバー層、着色層、拡散層あるいはハードコート層などを形成してなる。第3のスクリーン350は第2のスクリーン340と同一の垂線上に位置するように第2のスクリーン340の下方に配置される。第3のスクリーン350は、ウインドシールドW及び第二の平面ミラー370を介し、インパネPに設けられる第三の開口部P13を通して運転者に視認される。すなわち、第3のスクリーン350を透過した第三の表示像V13を示す表示光L11は、さらに第2の平面ミラー370を介してウインドシールドWに導かれ、ウインドシールドWを反射した表示光L11が運転者の目に投影されて仮想光路L12上に第三の表示像V13が虚像表示される。なお、第3の開口部P13には光透過性の樹脂材料からなる窓部P15が配設される。また、ウインドシールドWの内側に表示光L11を良好に反射させる専用のコンバイナ(投影部材)を配設し、このコンバイナに表示光L11を投射してもよい。
【0036】
第1の平面ミラー360は、投射光学系320からの表示光L11を第1のスクリーン330の方向に反射する平面ミラーであり、ガラス材料からなる基材の表面にアルミニウム等の光反射性の高い金属膜を形成してなる。
【0037】
第2の平面ミラー370は、第三のスクリーン350からの表示光L11をウインドシールドWの方向に反射する平面ミラーであり、その構成は第1の平面ミラー150と同様である。
【0038】
図5に示すように、表示制御手段380は、CPU,ROM,RAM及び入出力インターフェイス等を備えたマイクロコンピュータから構成される。表示制御手段380は、車両に搭載される各種センサやECU(Electronic Control Unit)、またはナビゲーション装置などの車載機器から各種車両情報を取得し、この車両情報に基づいて記憶手段390から画像データを取得し、前記画像データを表示デバイス310へ出力して表示デバイス310の表示制御処理をするものである。また、表示制御手段380は、所定の切換信号に応じて、記憶手段390からの前記画像データを補正する画像データ補正部381を有する。
【0039】
記憶手段390は、EPROMなどの不揮発性メモリからなり、表示デバイス310にて表示する画像400を示す前記画像データを記憶する。
【0040】
以上の各部によって車両用表示装置300が構成されている。
車両用表示装置300は、表示デバイス310から第1、第2、第3のスクリーン330、340、350への各投射距離Dc、Dd、Deがそれぞれ略等しくなるように各部が配置されている(Dc≒Dd≒De)。なお、第1のスクリーン330への投射距離Dcは投射レンズ321から自由曲面ミラー322の中心までの投射距離D11と自由曲面ミラー322の中心から第1の平面ミラー360までの投射距離D12と第1の平面ミラー360から第1のスクリーン330の中心までの投射距離D13との合計であり(Dc=D11+D12+D13)、第2のスクリーン340への投射距離Ddは投射距離D11と自由曲面ミラー322の中心から第2、第3のスクリーン340、350までの投射距離D14との合計であり(Dd=D11+D14)、第3のスクリーン350への投射距離Deは投射距離D11と自由曲面ミラー322の中心から第2、第3のスクリーン340、350までの投射距離D14との合計である(De=D11+D14)。すなわち、本実施形態においては、投射距離D12と投射距離D13(D12+D13)との合計と、投射距離D14と、が略等しくなる(D12+D13≒D14)ように第1のスクリーン330、第2のスクリーン340、第3のスクリーン350及び第1の平面ミラー360をそれぞれ配置することで上述の条件を満たすことができる。なお、各投射距離Dc、Dd、Deは各表示像V11、V12、V13の解像度の違いが運転者に視認されない程度に近似させればよい。
かかる構成によれば、第1、第2、第3のスクリーン330、340、350に表示される第1、第2、第3の表示像V11、V12、V13の表示の繊細さ(解像度)を同等とすることができ、表示品位を向上させることができる。
【0041】
次に、表示制御手段380による前記画像データ及びその補正について説明する。図6は前記画像データに基づいて形成された画像400を示す図であり、図6(a)は補正前の前記画像データに基づく画像400を、図6(b)は補正後の前記画像データに基づく画像400をそれぞれ示している。
画像400は、図6(a)に示すように、画像400の下部領域であり第1のスクリーン330に対応し第1の表示像V11を構成する画像が描画される第1の表示領域401と、画像400の上部領域であり第2のスクリーン340に対応し第2の表示像V12を構成する画像が描画される第2の表示領域402と、画像400の中央部領域であり第3のスクリーン350に対応し第3の表示像V13を構成する画像が描画される第3の表示領域403と、第1の表示領域401と第3の表示領域403との間及び第2の表示領域402と第3の表示領域403との間にそれぞれ設けられ、何ら画像が描画されない(黒表示となる)非表示領域404と、によって構成されている。第1、第2、第3の表示領域401、402、403の各領域間に非表示領域404を設けることによって、第1のスクリーン330に向かう光と第2のスクリーン340に向かう光と第3のスクリーン350に向かう光との境目で生じる輝度ムラが視認されなくなり、表示品位を向上させることができる。
【0042】
本実施形態においては、平面状でない第1のスクリーン330の表示面の湾曲や傾斜によって第1の表示像V11に表示歪みが生じる。補正後の前記画像データに基づく画像400は、図6(b)に示すように、この第1のスクリーン330における表示歪みを抑制するべく、画像データ補正部381によって第1の表示領域401を予め表示歪みとは逆に歪められたものである。この補正による前記画像データの歪み量は第1のスクリーン330の配置、形状に応じて規定値に定められていてもよいし、スイッチ等で数段階に調整可能としてもよい。補正後の画像400において、第1の表示領域401は略台形状となり、左右の辺が湾曲している。また、第1の表示領域401の左右側方に非表示領域404が形成されている。このように、前記画像データの第1のスクリーン330での表示歪みを補正することによって、第1のスクリーン330の配置や形状に自由度を持たせるとともに表示品位を向上させることができる。なお、第2、第3のスクリーン340、350に表示歪みが生じる場合には、前記画像データに第2、第3の表示領域402、403を表示歪みの逆に歪ませる補正がなされる。
【0043】
また、車両用表示装置300は、表示デバイス310に形成される画像400を分割して投射されるスクリーンとして、前記ステアリングホイールの内側から視認されるように配置された第1のスクリーン330と、前記ステアリングホイールの外側(特に上方)から視認されるように配置された第2のスクリーン340と、画像400を透過してウインドシールドWあるいはこのウインドシールドWの内側に配設された前記コンバイナに導く第3のスクリーン340と、を備えるものである。かかる構成により、前記ステアリングホイール内側で視認されるインストルメントパネル、前記ステアリングホイールの上方で視認されるオーバーダッシュボードディスプレイ、及びウインドシールドW上で表示像(虚像)を視認するヘッドアップディスプレイの運転者の視点移動距離の異なる上下方向3段階の表示部に各種車両情報を表示することができ、情報の重要度や緊急度に応じて最適な表示部に情報を表示することが可能であり、表示の視認性や運転の安全性を向上させることができる。
【0044】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能であることは言うまでもない。例えば本発明における複数のスクリーンは4個所以上に配置されるものであってもよく、平面状でないスクリーンが複数備えられるものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、車両用表示装置に関し、複数のスクリーンに画像を投射する車両用表示装置に好適である。
【符号の説明】
【0046】
100、300 車両用表示装置
110、310 表示デバイス
120、320 投射光学系
121、321 投射レンズ
122、322 自由曲面ミラー
130、330 第1のスクリーン
140、340 第2のスクリーン
150、360 第1の平面ミラー
160、370 第2の平面ミラー
170、380 表示制御手段
171、381 画像データ補正部
180、390 記憶手段
200、400 画像
201、401 第1の表示領域
202、402 第2の表示領域
203、404 非表示領域
350 第3のスクリーン
403 第3の表示領域


【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の画像を表示する表示デバイスと、前記表示デバイスに表示された前記画像を投射する投射光学系と、前記投射光学系から投射された前記画像が分割して投影される複数のスクリーンと、を有する車両用表示装置であって、
前記表示デバイスから前記各スクリーンへの各投射距離がそれぞれ略等しいことを特徴とする車両用表示装置。
【請求項2】
前記各スクリーンの少なくとも1つが平面状でないことを特徴とする請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項3】
前記画像は、前記各スクリーンに対応した各表示領域の間に非表示領域を有することを特徴とする請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項4】
所定の画像データを前記表示デバイスに出力する表示制御手段を備え、
前記表示デバイスは、前記画像データに基づいて前記画像を表示し、
前記表示制御手段は、前記画像データの前記各スクリーンでの表示歪みを補正する画像データ補正部を備えてなることを特徴とする請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項5】
前記各スクリーンとして、ステアリングホイールの内側から視認されるように配置された第1のスクリーンと、前記ステアリングホイールの外側から視認されるように配置された第2のスクリーンと、前記画像を透過してウインドシールドあるいはこのウインドシールドの内側に配設された投影部材に導く第3のスクリーンと、の少なくとも2つを備えてなることを特徴とする請求項1に記載の車両用表示装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−111999(P2013−111999A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256964(P2011−256964)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000231512)日本精機株式会社 (1,561)
【Fターム(参考)】