説明

車両用表示装置

【課題】表示部への直接的な入力を可能とすると共に、運転時の疲労軽減を可能とする車両用表示装置を提供する。
【解決手段】複数の情報を表示可能とする表示部と、運転者の手元に設けられ、複数の情報のうち、運転者が所望する情報を選択入力可能とする入力部と、入力部からの入力に応じて、表示部における情報の表示状態を制御する制御部と、を備える車両用表示装置において、表示部は、入力部からの情報の選択入力に加えて、表示面への直接的な指操作によっても情報の選択入力が可能となっていると共に、車両の前後方向に移動可能となっており、制御部は、車両の走行状態、運転者の要求、および運転者による情報の選択入力状態の少なくとも1つに応じて、表示部を運転者の手元側、あるいはフロントウインドウ側へ移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばカーナビゲーションシステムの情報表示等に用いて好適な車両用表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の表示装置として、例えば、特許文献1に示されるものが知られている。特許文献1における表示装置は、カーナビゲーションシステムに適用されており、地図情報を表示するディスプレイを備えている。そして、ディスプレイに表示される地図データの拡大、縮小、あるいはスクロール等の操作が入力デバイスによって行われるようになっている。入力デバイスとしては、ユーザの手元に配置されるジョイスティク、あるいはディスプレイと一体となったタッチパネル等が用いられるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−286593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のディスプレイの設定位置は、明確には記載されていないが、ディスプレイ一体式のタッチパネルを用いた場合の入力要領を想定すれば、ディスプレイは運転者の手元に設定されるものと解することができる。この場合、運転者は、タッチパネル上で自身の指をすべらすように移動させながら、所望のスイッチ選択部を押付けることで操作ができるので、ジョイステックの場合に比べて、ディスプレイを直接触れることによる直感的な操作が可能となる。
【0005】
しかしながら、車両走行中においては、運転者は走行時遠方を見て運転するのが常であり、上記のようにディスプレイが運転者の手元にあると、遠方と手元とで視線の切り替えをする必要が生じ、運転者の目の疲労が大きくなる。よって、走行時の疲労低減のためには、ディスプレイは運転者の遠方に設定されることが好ましいが、この場合では、ディスプレイに対して手が届きにくくなるので、タッチパネルへの入力が困難となる。
【0006】
本発明の目的は、上記問題に鑑み、表示部への入力を容易とすると共に、運転時の疲労軽減を可能とする車両用表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するために、以下の技術的手段を採用する。
【0008】
請求項1に記載の発明では、複数の情報を表示可能とする表示部と、
運転者の手元に設けられ、複数の情報のうち、運転者が所望する情報を選択入力可能とする入力部と、
入力部からの入力に応じて、表示部における情報の表示状態を制御する制御部と、を備える車両用表示装置において、
表示部は、入力部からの情報の選択入力に加えて、表示面への直接的な指操作によっても情報の選択入力が可能となっていると共に、車両の前後方向に移動可能となっており、
制御部は、車両の走行状態、運転者の要求、および運転者による情報の選択入力状態の少なくとも1つに応じて、表示部を運転者の手元側、あるいはフロントウインドウ側へ移動させることを特徴としている。
【0009】
この発明によれば、表示部は入力部に加えて表示面への直接的な指操作によっても情報の選択入力が可能となっているので、表示部を運転者の手元側に移動させたときに、運転者の指による直接的、且つ直感的な入力を容易に行うことができる。また、表示部をフロントウインドウ側へ移動させると、運転時において、前方の景色と表示部とを重ねて見る事が可能となり、運転者は視線の切替えが不要となるので、目の疲労を低減することができる。尚、表示部をフロントウインドウ側へ移動させたときは、入力部を用いて運転者は情報を選択入力することが可能である。
【0010】
請求項2に記載の発明では、制御部は、車両が停車中で、運転者からの第1要求があると、表示部を運転者の手元側へ移動させることを特徴としている。
【0011】
この発明によれば、停車中に運転者の第1要求に応じて表示部を運転者の手元側へ移動させるので、運転操作を行っていないときに、運転者は指による表示部への直接的な入力を容易に行うことが可能となり、情報の選択入力を安全に且つ確実に行うことができる。
【0012】
請求項3に記載の発明では、制御部は、車両が停車中で、運転者による情報の選択入力が開始された後、選択入力が無操作となる無操作時間が予め定めた所定時間以上経過すると、表示部をフロントウインドウ側へ移動させることを特徴としている。
【0013】
この発明によれば、運転者による情報の選択入力が開始された後、選択入力が無操作となる無操作時間が予め定めた所定時間以上経過すると、運転者による選択入力は一旦終了したものと捉えることができるので、車両が停車中であっても、表示部をフロントウインドウ側へ移動させることで、走行時に備えた表示部の位置設定が可能となる。つまり、走行に移行した際にすぐに、前方の景色と表示部とを重ねて見る事が可能となる。
【0014】
請求項4に記載の発明では、制御部は、車両が走行中で、運転者からの第2要求があると、表示部をフロントウインドウ側へ移動させることを特徴としている。
【0015】
この発明によれば、運転者の第2要求によって、走行中に表示部をフロントウインドウ側へ移動させることができる。よって、運転者は、運転時において前方の景色と表示部とを重ねて見る事が可能となり、視線の切替えが不要となるので、目の疲労を低減することができる。
【0016】
請求項5に記載の発明では、制御部は、車両が停車中で、運転者からの第2要求があると、表示部をフロントウインドウ側へ移動させることを特徴としている。
【0017】
この発明によれば、停車中であっても運転者の第2要求によって、表示部をフロントウインドウ側へ移動させるので、走行時に備えた表示部の位置設定が可能となる。つまり、走行に移行した際にすぐに、前方の景色と表示部とを重ねて見る事が可能となる。
【0018】
請求項6に記載の発明では、制御部は、運転者の指操作による情報の選択入力を車両の停車中のみに許可することを特徴としている。
【0019】
この発明によれば、車両の停車中のみに運転者の指操作による情報の選択入力を許可するので、運転者は、指操作による情報の選択入力を停車中に行うことになり、走行中は運転に集中することができ、安全運転を行うことができる。
【0020】
請求項7に記載の発明では、制御部は、車両の走行中においては、運転者の指操作による情報の選択入力の受付けを禁止することを特徴としている。
【0021】
この発明によれば、車両の走行中においては、運転者の指操作によるによる情報の選択入力の受付けを禁止するので、運転者は、走行中は運転に集中することができ、安全運転を行うことができる。
【0022】
請求項8に記載の発明では、制御部は、情報の選択入力の受付けを禁止したとき、禁止するまでの入力内容を記憶保持し、次回の選択入力の許可時に保持した記憶内容を継続して受付けることを特徴としている。
【0023】
この発明によれば、情報の選択入力の途中までの内容が記憶されるので、次回、運転者が情報の選択入力をするときに、初めからやり直す必要がなくなる。
【0024】
請求項9に記載の発明では、制御部は、表示部を運転者の手元側、あるいはフロントウインドウ側へ移動させる際に、予め設定された複数位置から運転手によって選択された位置、前回までに設定された実績位置を基にして得られる学習設定位置、あるいは運転者のその時の好みによって設定される設定位置のいずれかに設定可能とすることを特徴としている。
【0025】
この発明によれば、運転者の要望する位置に表示部を容易に移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】車室内におけるナビゲーションシステムの設定位置を示す説明図である。
【図2】ナビゲーションシステムの全体構成を示す概略図である。
【図3】ディスプレイの外観を示す斜視図である。
【図4】駆動部を示す概略図である。
【図5】図4中のV−V部を示す断面図である。
【図6】ディスプレイを駆動するための機構と動力との関係を示す図である。
【図7】第1実施形態において制御部が行う制御内容を示すフローチャートである。
【図8】第2実施形態において制御部が行う制御内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0028】
(第1実施形態)
本発明の車両用表示装置に係る第1実施形態について図1〜図7を用いて説明する。本実施形態の車両用表示装置は、車両用のナビゲーションシステム(以下、ナビシステム)100に適用したものである。図1は車室内におけるナビシステム100の設定位置を示す説明図、図2はナビシステム100の全体構成を示す概略図、図3はディスプレイ110の外観を示す斜視図、図4は駆動部120を示す概略図、図5は図4中のV−V部を示す断面図、図6はディスプレイ110を駆動するための機構と動力との関係を示す図、図7は制御部141が行う制御内容を示すフローチャートである。
【0029】
ナビシステム100は、ディスプレイ110に、地図、地図上における自車の現在位置、進行方向、更には所望の目的地に対する案内情報等を表示する経路誘導システムであり、図1、図2に示すように、ディスプレイ110、駆動部120、マルチスイッチ130、および本体部140等を備えている。ディスプレイ110、マルチスイッチ130、および本体部140は、図2に示すように、例えば、通信手段によって互いに接続されている。ナビシステム100は、上記経路誘導に係る機能に加えて、例えば、オーディオ機能、およびテレビ機能等を備えている。
【0030】
ディスプレイ110は、複数の情報を表示画面111に表示可能とする表示部であり、運転者の前方に配置されている。ディスプレイ110は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等を用いて構成することができる。ディスプレイ110における表示情報は、例えば、上記経路誘導に係る地図情報、自車位置情報、目的地位置情報、音声、文字表示による案内情報等、オーディオ機能を用いたときの音楽情報、およびテレビ機能を用いた時の映像情報等である。表示画面111には、各情報に対応する種々の情報項目(ボタン)等が表示され、運転者は、情報項目のいずれかを選択し、選択したものをそれぞれ決定していくことで、所望の情報画面に順次移行させて、必要な情報を見ることができるようになっている。
【0031】
本実施形態では、ディスプレイ110において、上記の情報項目を選択するには、後述するマルチスイッチ130による入力が可能となっているが、これに加えて、運転者が表示画面111に指で直接触れることで、入力可能となっている。つまり、ディスプレイ110は、表示画面111に一体的に形成されたタッチパネルを備えたものとなっており、運転者は、表示画面111に表示される情報項目を指先で触れることで情報項目の選択状態を形成し、またその情報項目を指で押付けることで決定状態を形成すると共に、所望の情報が得られる画面に移行することができるようになっている。
【0032】
そして、ディスプレイ110は、駆動部120によって、運転者の手元位置と、車両10のフロントウインドウ20側との間で、前後方向に移動可能となっている。運転者の手元位置とは、例えば、インストルメントパネル30の中央部上方位置(図1参照)である。また、フロントウインドウ20側とは、フロントウインドウ20の下側近傍位置(図1参照)である。更に、ディスプレイ110は、駆動部120によって、表示画面111が運転席側あるいは助手席側を向くように左右方向に回動可能となっている。
【0033】
駆動部120は、図3、図4に示すように、ディスプレイ110を前後方向に移動させると共に、表示画面111に沿う上下方向の中心軸線を想定したときに、この中心軸線に対してディスプレイ110を回動させる駆動手段となっている。駆動部120は、主にモータ121、シャフト部122、ピニオンギヤ122a、ラック123、スライダー124等を備えている。
【0034】
図4に示すように、モータ121は、駆動部120における駆動源であり、自身のシャフト先端にモータギヤ121aが設けられている。モータ121のシャフトは車両10の左右方向を向くように配置されている。
【0035】
シャフト部122は、モータ121のシャフトと平行に配置されており、図4中の左側端部から順に、ピニオンギヤ122a、減速ギヤ122b、円板部122c、ベベルギヤ122d、ベベルギヤ122e、およびピニオンギヤ122aが設けられている。ピニオンギヤ122a、減速ギヤ122b、円板部122c、およびベベルギヤ122dは、シャフト部122に固定されており、シャフト部122と共に回転可能となっている。ピニオンギヤ122aの先端部外周には、図5に示すように、円弧状に面取りされた面取り部122a1が形成されている。また、ベベルギヤ122eは、その軸線方向(図4中の紙面に垂直な方向)が維持された状態で、シャフト部122と共に前後方向(図4中の「前後移動」矢印方向)に移動可能となっている。そして、モータギヤ121aと減速ギヤ122bとが噛み合っている。また、シャフト部122が図4中の右方向に移動されるとベベルギヤ122dとベベルギヤ122eとが噛み合うようになっている。
【0036】
ラック123は、車両の前後方向に2本のレールのように配置され、車両側に固定されている。ラック123は、インストルメントパネル30の手前側からフロントウインドウ20側に向けて延びており、ラック123にはピニオンギヤ122aが噛み合うようになっている。ラック123の長手方向に直交する幅方向における両角部には、図5に示すように、円弧状に面取りされた面取り部123aが形成されている。
【0037】
スライダー124は、シャフト部122を左右方向に移動させる移動機構である。スライダー124は、シャフト部122と共に前後方向への移動が可能となっており、更に、左右方向への移動も可能となっている。スライダー124は、細長のブロック状を成して、長手方向の一端側が、円板部122cの回転作動を阻害させない状態で円板部122cに係合している。スライダー124の長手方向の中間部には永久磁石124aが固定されている。また、スライダー124は、プリロードバネ124bによって、通常は、図4中の左側に付勢されて、シャフト部122が左側に移動された状態となるようになっている。このとき、ベベルギヤ122dとベベルギヤ122eは互いに噛み合わない状態となる。更に、永久磁石124aと対向する位置(図4中の右側)には、電磁石124cが設けられており、この電磁石への通電がなされると、磁力の発生に伴い、プリロードバネ124bの付勢力に抗して永久磁石124aが電磁石124cに吸着されるようになっている。よって、電磁石124cが作動されたときは、スライダー124が右側に移動され、これに伴って、シャフト部122が右側に移動され、ベベルギヤ122dとベベルギヤ122eとが互いに噛み合った状態となる。尚、このとき、ピニオンギヤ122aとラック123との噛み合いは解除される。
【0038】
上記駆動部120に対して、ディスプレイ110は、例えば、ベベルギヤ122eに固定されている。ディスプレイ110の表示画面111に沿う上下方向の中心軸線を想定したとき、上下方向の中心軸線はベベルギヤ122eの回転軸線に一致するように配置されている。
【0039】
駆動部120における機構と動力との関係は、図6に示すようになっている。つまり、モータ121が回転駆動されると、モータギヤ121a、および減速ギヤ122bによってシャフト部122、およびピニオンギヤ122aが回転し、回転方向に応じてピニオンギヤ122aがラック123の上を転がるように前方向あるいは後方向に移動する。よって、ディスプレイ110は、ベベルギヤ122eと共に、前後方向に移動可能となる。
【0040】
また、電磁石124cに通電すると、スライダー124が右方向に移動され、これに伴って、円板部122cを介してシャフト部122が右側に移動され、ベベルギヤ122dとベベルギヤ122eとが噛み合い、ピニオンギヤ122aとラック123との噛み合いは解除される。これは、駆動部120による前後方向駆動から回動駆動への切り替えとなる。
【0041】
上記のようにベベルギヤ122dとベベルギヤ122eとが噛み合い、ピイにオンギヤ122aとラック123との噛み合いが解除された状態でモータ121を作動させると、ベベルギヤ122eが回転され、ディスプレイ110は、回動されることになる。
【0042】
本体部140は、ナビゲーションシステムによる経路誘導機能に加えて、オーディオ機能、テレビ機能等を発揮する際のディスプレイ1110へ必要とされる情報の表示状態を制御する制御部141を備えており、運転者による表示画面111への指操作、あるいはマルチスイッチ130による操作に基づいて、運転者から要求される情報表示の切り替えを行うようになっている。また、例えば、インストルメントパネル30の運転者近傍には、運転者の要求によって、ディスプレイ110の位置を運転者の手元側にするか、フロントウインドウ20側(以下、遠方側)にするかを切替える移動スイッチ142が設けられており、移動スイッチ142から出力された信号は、本体部140の制御部141に入力されるようになっている。
【0043】
尚、遠方側には、庇部150(図3)が設けられており、ディスプレイ110が遠方側に移動されたときには、ディスプレイ110は、庇部150の内部に納まるようになっており、太陽光が表示部111に入り込まないようにして、運転者への太陽光の反射を防止するようになっている。
【0044】
次に、上記のように構成されるナビシステム100の作動について、図7のフローチャートを用いて説明する。尚、図7中の「DP」という表示は、「ディスプレイ110」の意味である。
【0045】
運転者がイグニッションスイッチ、あるいはスタートスイッチをオンにして、車両10を作動状態とすると、制御部141は、まず、ステップS100で、車両10が停車中か否かを判定する。制御部141は、例えば、パーキングブレーキの信号、車速信号、あるいは自車位置信号等を用いて、車両10が停車中であるか否を判定する。具体的には、パーキングブレーキの信号がオンのとき、あるいは車速信号がゼロのとき、あるいは自車位置信号に動きがない場合に、車両10が停車中であると判定する。
【0046】
ステップS100で、車両10が停車中であると判定すると、制御部141は、ステップS110で、移動スイッチ142がオンされたか否かを判定する。具体的には、移動スイッチ142のオンによって、運転手から入力された要求が、ディスプレイ110を手元側に移動する要求であるか否かを判定する。このディスプレイ110を手元側に移動する要求は、本発明の第1要求に対応する。
【0047】
ステップS110で、移動スイッチ142によりディスプレイ110を手元側に移動する要求であると判定すると、制御部141は、ステップS120で、駆動部120を作動させて、ディスプレイ110を運転者の手元側に移動させる。つまり、電磁石124cへは通電されない状態として、プリロードバネ124bによって、スライダー124が図4中の左側に付勢された状態として、ピニオンギヤ122aとラック123とが噛み合わせ状態となるようにする。このとき、ピニオンギヤ122aとラック123には、それぞれ面取り部122a1、123aが形成されているので、滑らかな噛み合いが実現される。そして、モータ121を回転作動させて、ピニオンギヤ122aをラック123に対して手元側に回転するようにすることで、ディスプレイ110が手元側に移動されることになる。
【0048】
尚、運転者から、ディスプレイ110の左右方向の画面の向きの調整要求があると、制御部141は、電磁石124cへの通電を行い、電磁石124cの磁力によってスライダー124を図4中の右側に移動させる。そして、ベベルギヤ122dとベベルギヤ122eとを噛み合わせて、モータ121を回転作動させることで、ディスプレイ110を所望の向きに回動させる。
【0049】
そして、ステップS130では、制御部141は、メニュー操作を受け付ける。つまり、運転者の表示画面111上での指操作によって選択、および決定された情報項目を受け付け、それに対応する表示画面111上での情報の表示内容を制御していく。尚、この場合では車両10は、まだ停車中であるので、制御部141は、マルチスイッチ130によって、選択、および決定された情報項目も受け付けすることができるようになっている。
【0050】
ここで、ステップS140で、制御部141は、運転者による情報項目の選択、決定の入力操作が開始された後、入力状態が無操作となる無操作時間が、予め定めた所定時間以上経過したか否かを判定する。制御部141は、ステップS140で、無操作時間が、所定時間以上経過したと判定すると、ステップS150で、ディスプレイ110を遠方側へ移動させる。
【0051】
これは、停車中において、運転者による入力操作がない場合であると、指操作によるディスプレイ110からの直接的な入力はこれ以上なされないものと判断して、ディスプレイ110を走行中に見やすい位置となる遠方側へ早々に移動させるのである。遠方側へ移動されたディスプレイ110に対しては、指操作による情報項目の選択および決定は困難となるが、運転者の手元のマルチスイッチ130による入力は可能である。
【0052】
ディスプレイ110を遠方側に移動させるにあたっては、制御部141は、電磁石124cへは通電されない状態として、プリロードバネ124bによって、スライダー124が図4中の左側に付勢された状態として、ピニオンギヤ122aとラック123とが噛み合わせ状態となるようにする。そして、モータ121を回転作動させて、ピニオンギヤ122aをラック123に対して遠方側に回転するようにすることで、ディスプレイ110が遠方側に移動されることになる。
【0053】
尚、運転者から、ディスプレイ110の左右方向の画面の向きの調整要求があると、制御部141は、電磁石124cへの通電を行い、電磁石124cの磁力によってスライダー124を図4中の右側に移動させる。そして、ベベルギヤ122dとベベルギヤ122eとを噛み合わせて、モータ121を回転作動させることで、ディスプレイ110を所望の向きに回動させる。
【0054】
一方、ステップS140で、否と判定、即ち、無操作時間は、所定時間以上経過していないと判定すると、制御部141は、ステップS160で、再び、車両10が停車中か否かを判定する。ここでまだ停車中であると判定すると、更にステップS170で、制御部141は、移動スイッチ142がオンされたか否かを判定する。具体的には、移動スイッチ142のオンによって、運転手から入力された要求が、ディスプレイ110を遠方側に移動する要求であるか否かを判定する。このディスプレイ110を遠方側に移動する要求は、本発明の第2要求に対応する。
【0055】
制御部141は、ステップS170で、移動スイッチ142によってディスプレイ110を遠方側に移動する要求であると判定すると、上記で説明したステップS150に移行して、ディスプレイ110を遠方側へ移動させる。尚、ステップS170で、否の判定をすると、ステップS130に戻る。
【0056】
更に、ステップS160で、否と判定、つまり車両10は走行状態に移行したと判定すると、ステップS180で、制御部141は、メニュー操作を禁止する。つまり、運転者の指操作による情報項目の選択および決定の入力操作を禁止する。これは、運転者が走行中に表示画面111上で指操作を行うことは、車両運転上、危険を伴うと思われるため、指操作による入力を禁止するものである。
【0057】
そして、ステップS190で、制御部141は、車両10が停車中であるか否かを判定し、停車中であれば、ステップS130に移行し、運転者による情報項目の選択、決定の入力操作を受け付けるようにする。ステップS190で、車両10が停車中でない、つまり走行状態にあると判定する間は、ステップS180を繰返し、運転者の指操作による情報項目の選択および決定の入力操作を禁止する。
【0058】
以上のように、本実施形態では、ディスプレイ110は、マルチスイッチ130からの情報項目の選択入力に加えて、表示画面111への直接的な指操作によっても情報項目の選択入力が可能となるようにしており、且つ、車両10の前後方向に移動可能としている。そして、制御部141は、車両10の走行状態、運転者の要求、および運転者による情報項目の選択入力状態等に応じて、ディスプレイ110を運転者の手元側、あるいは遠方側へ移動させるようにしている。
【0059】
これにより、ディスプレイ110を運転者の手元側に移動させたときに、運転者の指による直接的、且つ直感的な入力を容易に行うことができる。また、ディスプレイ110を遠方側へ移動させると、運転時において、前方の景色とディスプレイ110とを重ねて見る事が可能となり、運転者は視線の切替えが不要となるので、目の疲労を低減することができる。尚、ディスプレイ110を遠方側へ移動させたときは、マルチスイッチ130を用いて運転者は情報を選択入力することが可能である。
【0060】
また、制御部141は、車両10が停車中で、運転者からの手元側への移動要求があると、ディスプレイ110を運転者の手元側へ移動させるようにしている(ステップS110、S120)。これにより、運転操作を行っていないときに、運転者は指によるディスプレイ110への直接的、且つ直感的な入力を容易に行うことが可能となり、情報項目の選択入力を安全に且つ確実に行うことができる。
【0061】
また、制御部141は、車両10が停車中で、運転者による情報項目の選択入力が開始された後、無操作時間が所定時間以上経過すると、ディスプレイ110を遠方側へ移動させるようにしている(ステップS140、S150)。これにより、運転者による情報項目の選択入力が開始された後、無操作時間が所定時間以上経過すると、運転者による選択入力は一旦終了したものと捉えることができるので、車両10が停車中であっても、ディスプレイ110を遠方側へ移動させることで、走行時に備えたディスプレイ110の位置設定が可能となる。つまり、走行に移行した際にすぐに、前方の景色とディスプレイ110とを重ねて見る事が可能となる。
【0062】
また、制御部141は、車両10が停車中で、運転者からの遠方側への移動要求があると、ディスプレイ110を遠方側へ移動させるようにしている(ステップS160、S170)。これにより、停車中から走行時に備えたディスプレイ110の位置設定が可能となる。つまり、走行に移行した際にすぐに、前方の景色とディスプレイ110とを重ねて見る事が可能となる。
【0063】
また、制御部141は、運転者の指操作による情報項目の選択入力を車両10の停車中のみに許可するようにしている(ステップS100、S190、S130)。これにより、運転者は、指操作による情報の選択入力を停車中に行うことになり、走行中は運転に集中することができ、安全運転を行うことができる。
【0064】
また、制御部141は、車両10の走行中においては、運転者の指操作による情報項目の選択入力の受付けを禁止するようにしている(ステップS160、S180)。これにより、運転者は、走行中は運転に集中することができ、安全運転を行うことができる。
【0065】
(第2実施形態)
第2実施形態について、図8を用いて説明する。第2実施形態は、上記第1実施形態に対して、基本となる構成内容は同一としつつも、ディスプレイ110の移動先位置の微調整機能を追加すると共に、ディスプレイ110の移動制御に係る内容を変更したものとしている。
【0066】
第2実施形態のナビシステム100では、ディスプレイ110の移動先位置の微調整が可能となっている。この移動先位置の微調整は、マルチスイッチ130にて対応できるようになっている。例えば、運転者は、手元側、あるいは遠方側におけるディスプレイ110の位置を、マルチスイッチ130の操作によって自分の好みの位置に設定することができるようになっている。あるいは、運転者が代わったときのことを想定して、複数の移動先位置を予め設定しておき、そのときの運転者は、複数水準の移動先位置から最適なものを選択できるようになっている。あるいは、制御部141は、前回までのディスプレイ110の移動先位置を記憶しており、前回までの移動先位置をもとに次回の移動先位置を制御(移動先位置の学習制御)することが可能となっている。
【0067】
そして、制御部141は、図8に示す制御フローチャートに基づいて、ディスプレイ110の移動制御を実施する。
【0068】
運転者がイグニッションスイッチ、あるいはスタートスイッチをオンにして、車両10を作動状態とすると、制御部141は、まず、ステップS200で、移動スイッチ142がオンされたか否かを判定する。ここでは、移動スイッチ142がオンされた場合は、ディスプレイ110を運転者の手元側に移動させることを要求するものとなっている。このディスプレイ110を手元側に移動する要求は、本発明の第1要求に対応する。
【0069】
ステップS200で、移動スイッチ142がオンされていると判定すると、制御部141は、ステップS210で、車両10が停車中か否かを判定する。
【0070】
ステップS210で、車両10が停車中であると判定すると、制御部141は、ステップS220で、駆動部120を作動させて、ディスプレイ110を運転者の手元側に移動させる。
【0071】
そして、ステップS230で、制御部141は、前回(後述するステップS270)操作中段設定の保存があるか否かを判定して、保存があると判定すると、ステップS240で、前回操作を中断したときの画面を表示する。あるいは、ステップS230で前回操作中断操作の保存がないと判定すると、ステップS245で、移動スイッチ142がオンされたとき(ステップS200)に表示されていた画面を表示する。
【0072】
次に、ステップS250で、制御部141は、運転者による情報項目の選択、決定の入力操作が開始された後、入力状態が無操作となる無操作時間が、予め定めた所定時間以上経過したか否かを判定する。ステップS250で、無操作時間が、所定時間以上経過したと判定すると、ステップS260で、制御部141は、メニュー操作を禁止する。つまり、運転者の指操作による情報項目の選択および決定の入力操作を禁止する。これは、運転者が走行中に表示画面111上で指操作を行うことは、車両運転上、危険を伴うと思われるため、指操作による入力を禁止するものである。
【0073】
そして、制御部141は、ステップS270で、上記ステップS260に伴う中断画面と設定状態を一旦保存し、ステップS280で、ディスプレイ110を運転者の遠方側に移動させることを音声、あるいは表示画面111上における文字によって運転者に通知し、ステップS290で、ディスプレイ110を運転者の遠方側に移動させる。そして、ステップS300で、制御部141は、ディスプレイ110に予め定めたデフォルト画面(現在位置表示の地図、テレビ画面、またはスタート時の画面等)を表示する。
【0074】
一方、ステップS250で、否と判定、即ち、無操作時間は、所定時間以上経過していないと判定すると、制御部141は、ステップS252で、再び、車両10が停車中か否かを判定し、車両10が停車中でない(走行状態にある)と判定すると、ステップS260に移行する。
【0075】
更に、ステップS252で、車両10が停車中であると判定すると、制御部141は、ステップS254で、移動スイッチ142がオフ状態であるか否かを判定し、オフ状態であると判定すると、運転者はディスプレイ110を手元側に移動させることを要求していないことになり、ステップS280、S290に移行し、ディスプレイ110を運転者の遠方側に移動する。また、ステップS254で、否と判定するとステップS250に移行する。
【0076】
尚、ステップS210で、否と判定、即ち、車両10が停車中でない(走行状態にある)と判定すると、ステップS310で、動作不許可、つまり運転者による入力を禁止し、それを音声、あるいは表示画面111の文字によって運転者に通知する。そして、ステップS300に移行する。
【0077】
以上のように、本実施形態では、上記第1実施形態と同様に、ディスプレイ110は、マルチスイッチ130からの情報項目の選択入力に加えて、表示画面111への直接的な指操作によっても情報項目の選択入力が可能となるようにしており、且つ、車両10の前後方向に移動可能としている。そして、制御部141は、車両10の走行状態、運転者の要求、および運転者による情報項目の選択入力状態等に応じて、ディスプレイ110を運転者の手元側、あるいは遠方側へ移動させるようにしている。
【0078】
これにより、ディスプレイ110を運転者の手元側に移動させたときに、運転者の指による直接的、且つ直感的な入力を容易に行うことができる。また、ディスプレイ110を遠方側へ移動させると、運転時において、前方の景色とディスプレイ110とを重ねて見る事が可能となり、運転者は視線の切替えが不要となるので、目の疲労を低減することができる。尚、ディスプレイ110を遠方側へ移動させたときは、マルチスイッチ130を用いて運転者は情報を選択入力することが可能である。
【0079】
また、制御部141は、車両10が走行中であることを判定して、ディスプレイ110を運転者の遠方側へ移動させるようにしている(ステップS252、S260〜S290)。これにより、運転者の運転中の目の疲労を確実に低減することができる。
【0080】
また、制御部141は、情報項目の選択入力の受付けを禁止したとき、禁止するまでの入力内容を記憶保持し、次回の選択入力の許可時に保持した記憶内容を継続して受付けるようにしている(ステップS260、S270、S240)。これにより、次回、運転者が情報項目の選択入力をするときに、初めからやり直す必要がなくなる。
【0081】
また、制御部141は、ディスプレイ110を運転者の手元側、あるいは遠方側へ移動させる際に、予め設定された複数位置から運転手によって選択された位置、前回までに設定された実績位置を基にして得られる学習設定位置、あるいは運転者のその時の好みによって設定される設定位置のいずれかに設定可能としている。これにより、運転者の要望する位置に表示部を容易に移動させることができる。
【符号の説明】
【0082】
10 車両
20 フロントウインドウ
100 車両用表示装置(ナビゲーションシステム)
110 ディスプレイ(表示部)
130 マルチスイッチ(入力部)
140 本体部
141 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の情報を表示可能とする表示部と、
運転者の手元に設けられ、前記複数の情報のうち、前記運転者が所望する情報を選択入力可能とする入力部と、
前記入力部からの入力に応じて、前記表示部における前記情報の表示状態を制御する制御部と、を備える車両用表示装置において、
前記表示部は、前記入力部からの前記情報の選択入力に加えて、表示面への直接的な指操作によっても前記情報の選択入力が可能となっていると共に、車両の前後方向に移動可能となっており、
前記制御部は、前記車両の走行状態、前記運転者の要求、および前記運転者による前記情報の選択入力状態の少なくとも1つに応じて、前記表示部を前記運転者の手元側、あるいはフロントウインドウ側へ移動させることを特徴とする車両用表示装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記車両が停車中で、前記運転者からの第1要求があると、前記表示部を前記運転者の手元側へ移動させることを特徴とする請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記車両が停車中で、前記運転者による前記情報の選択入力が開始された後、前記選択入力が無操作となる無操作時間が予め定めた所定時間以上経過すると、前記表示部を前記フロントウインドウ側へ移動させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用表示装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記車両が走行中で、前記運転者からの第2要求があると、前記表示部を前記フロントウインドウ側へ移動させることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の車両用表示装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記車両が停車中で、前記運転者からの第2要求があると、前記表示部を前記フロントウインドウ側へ移動させることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の車両用表示装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記運転者の前記指操作による前記情報の選択入力を前記車両の停車中のみに許可することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1つに記載の車両用表示装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記車両の走行中においては、前記運転者の指操作による前記情報の選択入力の受付けを禁止することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1つに記載の車両用表示装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記情報の選択入力の受付けを禁止したとき、禁止するまでの入力内容を記憶保持し、次回の選択入力の許可時に保持した前記記憶内容を継続して受付けることを特徴とする請求項7に記載の車両用表示装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記表示部を前記運転者の手元側、あるいはフロントウインドウ側へ移動させる際に、予め設定された複数位置から前記運転手によって選択された位置、前回までに設定された実績位置を基にして得られる学習設定位置、あるいは前記運転者のその時の好みによって設定される設定位置のいずれかに設定可能とすることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか1つに記載の車両用表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−97001(P2013−97001A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236420(P2011−236420)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】