説明

車両用装置

【課題】自動車を走行させることなく着氷に起因する不具合を効果的に防止できる車両用装置を提供する。
【解決手段】ナックルアーム12に対して懸架装置13を可動的に取り付ける。懸架装置13とナックルアーム12との少なくともいずれか一方に、着氷を溶解させることで着氷を制御する電熱線14の少なくとも一部を配置する。電熱線14によって着氷を溶解させ、自動車を走行させることなく着氷に起因する不具合を効果的に防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着氷を制御する車両用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、寒冷地で使用される車両、例えば自動車などにおいては、着氷に起因する各部の機能低下に対する対策が必須である。例えば、自動車の懸架装置(サスペンション)、すなわち、ボールジョイントにより被取付部としてのナックルアームとロアアームとを接続している構成の場合、外気に曝されるナックルアーム側などに着氷することがあり、このような着氷がボールジョイントのダストカバーのシール性を低下させないように、ダストカバーの外部に突起部を形成し、懸架装置のバウンド及びリバウンドの際に突起部によって氷を砕いて除去する構成が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−166129号公報(第3−4頁、図1−2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の車両用装置では、ダストカバーの突起部によって氷を砕く構成に過ぎないため、軽微な着氷には対応できるものの、例えば硬く着氷した場合には効果が充分でなく、また、ダストカバーの突起部に対向する位置の氷のみを砕くため、それ以外の位置に着氷した場合に対応できないという問題を有している。さらに、突起部は、自動車が走行して懸架装置がバウンド、あるいはリバウンドしなければ氷を砕くことができず、特にバウンドやリバウンドが小さい場合には、氷を充分に砕くことができないという問題もある
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、車両を走行させることなく着氷に起因する不具合を効果的に防止できる車両用装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の車両用装置は、被取付部と、この被取付部に対して可動的に取り付けられる本体部と、この本体部と前記被取付部との少なくともいずれか一方に少なくとも一部が設けられ、着氷の溶解と着氷の抑制との少なくともいずれか一方により着氷を制御する着氷制御部とを具備したものである。
【0006】
請求項2記載の車両用装置は、請求項1記載の車両用装置において、着氷制御部は、発熱して着氷を溶解させる発熱体を備えているものである。
【0007】
請求項3記載の車両用装置は、請求項2記載の車両用装置において、発熱体は、少なくとも一部が被取付部と本体部との少なくともいずれかの表面に設けられているものである。
【0008】
請求項4記載の車両用装置は、請求項2記載の車両用装置において、発熱体は、少なくとも一部が被取付部と本体部との少なくともいずれかの内部に埋め込まれているものである。
【0009】
請求項5記載の車両用装置は、請求項3または4記載の車両用装置において、発熱体は、電熱線であるものである。
【0010】
請求項6記載の車両用装置は、請求項3または4記載の車両用装置において、発熱体は、流体を内部に流通させる筒状体であるものである。
【0011】
請求項7記載の車両用装置は、請求項1ないし6いずれか一記載の車両用装置において、着氷制御部は、被取付部と本体部との少なくともいずれかの表面の少なくとも一部に塗布され着氷を抑制する表面処理材を備えているものである。
【0012】
請求項8記載の車両用装置は、請求項1ないし7いずれか一記載の車両用装置において、本体部は、ボールジョイントを備えた懸架装置であるものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の車両用装置によれば、着氷の溶解と着氷の抑制との少なくともいずれか一方により着氷を制御する着氷制御部の少なくとも一部を、車両の被取付部と本体部との少なくともいずれか一方に設けることにより、着氷制御部によって着氷を溶解させ、あるいは着氷を抑制して、車両を走行させることなく着氷に起因する不具合を効果的に防止できる。
【0014】
請求項2記載の車両用装置によれば、請求項1記載の車両用装置の効果に加えて、着氷制御部が発熱体を備えることにより、着氷を溶解させる構成を容易に形成できる。
【0015】
請求項3記載の車両用装置によれば、請求項2記載の車両用装置の効果に加えて、発熱体の少なくとも一部を、被取付部と本体部との少なくともいずれかの表面に設けることにより、発熱体の少なくとも一部を容易に設けることができる。
【0016】
請求項4記載の車両用装置によれば、請求項2記載の車両用装置の効果に加えて、発熱体の少なくとも一部を、被取付部と本体部との少なくともいずれかの内部に埋め込むことにより、発熱体の発熱効果を、被取付部と本体部との少なくともいずれかの内部から効果的に作用させることができる。
【0017】
請求項5記載の車両用装置によれば、請求項3または4記載の車両用装置の効果に加えて、発熱体を電熱線とすることにより、発熱体を容易に構成できる。
【0018】
請求項6記載の車両用装置によれば、請求項3または4記載の車両用装置の効果に加えて、発熱体を、流体を内部に流通させる筒状体とすることにより、発熱体を容易に構成できる。
【0019】
請求項7記載の車両用装置によれば、請求項1ないし6いずれか一記載の車両用装置の効果に加えて、着氷制御部が、被取付部と本体部との少なくともいずれかの表面の少なくとも一部に塗布された表面処理材を備えることにより、着氷を抑制する構成を容易に形成できる。
【0020】
請求項8記載の車両用装置によれば、請求項1ないし7いずれか一記載の車両用装置の効果に加えて、本体部がボールジョイントを備えた懸架装置であることにより、車両を走行させることなく着氷に起因する懸架装置の不具合を効果的に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施の形態の車両用装置の一部を示す縦断面図である。
【図2】同上車両用装置の一部を示す斜視図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態の車両用装置の一部を示す斜視図である。
【図4】本発明の第3の実施の形態の車両用装置の一部を示す縦断面図である。
【図5】本発明の第4の実施の形態の車両用装置の一部を示す縦断面図である。
【図6】本発明の第5の実施の形態の車両用装置の一部を示す斜視図である。
【図7】本発明の第6の実施の形態の車両用装置の一部を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の第1の実施の形態の構成を図1及び図2を参照して説明する。
【0023】
図1及び図2において、11は車両用装置であり、この車両用装置11は、例えば車両である自動車などに用いられるものである。さらに、この車両用装置11は、図示しない車輪である操舵輪(前輪)側の被取付部としてのナックルアーム12に可動的に取り付けられる本体部である懸架装置(サスペンション)13と、着氷制御部としての発熱体である電熱線14とを備えている。そして、懸架装置13は、継手装置としての自在継手であるボールジョイント15、このボールジョイント15と接続された接続体としてのアーム部であるロアアーム16、図示しない接続体としてのアーム部であるアッパアーム、及び、緩衝装置であるショックアブソーバ(ダンパ)などを有している。
【0024】
ナックルアーム12は、例えば剛性を有する金属により形成されており、図示しないハブを介して操舵輪と連結されているとともに、図示しないタイロッドを介して操舵装置と連結されている。
【0025】
ボールジョイント15は、ナックルアーム12に対してロアアーム16(懸架装置13)を可動的に接続する、いわゆるロアボールジョイントであり、軸受部であるソケット21と、このソケット21に一部が保持された接続部であるボールスタッド22と、ソケット21の内部に収容されたベアリングシートとしてのボールシート23と、ソケット21に取り付けられた防塵部材としてのダストカバー24とを備えている。
【0026】
ソケット21は、例えば剛性を有する金属により形成されており、円筒状の軸受部本体としてのソケット本体31と、このソケット本体31の外部から突出した取付部としてのブラケット部32と、ソケット本体31の端部を閉塞する閉塞部材としてのプラグ33とを一体的に有している。
【0027】
ソケット本体31は、ボールシート23が嵌着された内室35を内部に有し、一端部である上端部に、ボールスタッド22の一部が突出する一方の開口部である上部開口部36を有し、他端部である下端部に、プラグ33により閉塞される他方の開口部である下部開口部37を有している。また、このソケット本体31の上端側の外周には、ボールシート23を固定するためのカバー嵌着部38が全周に亘って凹設されている。
【0028】
ブラケット部32は、平板状に形成されており、ソケット本体31の外周から、ソケット本体31の軸方向に対して交差する方向へと突出しているとともに、先端側がソケット本体31の一端側である上側へと傾斜している。また、このブラケット部32の上側、すなわちナックルアーム12側に臨む主面32aには、電熱線14が取り付けられる着氷制御部固定部としての発熱体(電熱線)固定部である取付凸部41が形成されている。さらに、このブラケット部32の下側の平面状の主面32bには、固定部材としての複数のボルト43を介してロアアーム16の上部が固定されている。
【0029】
取付凸部41は、図2に示すように、ブラケット部32の幅方向に長手状のリブ状に複数形成されており、これら取付凸部41の間の部分が、これら取付凸部41よりも相対的に窪んだ着氷制御部固定部としての発熱体(電熱線)固定部である取付凹部45となっている。すなわち、ブラケット部32の上側の主面32aには、凹凸構造が形成されている。なお、このような凹凸構造は、ソケット21の成形の際に形成してもよいし、ソケット21を成形した後、切削などにより形成してもよい。
【0030】
プラグ33は、下部開口部37を閉塞してボールシート23及びボールスタッド22の一部を内室35に抜け止め保持するもので、周縁部が、ソケット本体31の下部開口部37の周縁部を中心軸側へとかしめ変形させたかしめ部47によりソケット本体31に固定されている。
【0031】
また、ボールスタッド22は、例えば剛性を有する金属により形成されており、球状のボール部51と、このボール部51から突出する軸状のスタッド部52とを有している。ボール部51は、ボールシート23とともに内室35内に収容され、このボールシート23により回動可能に保持されている。また、スタッド部52は、ソケット21の上部開口部36から上方へと突出している。さらに、このスタッド部52の先端側には、雄ねじ部52aが形成されている。そして、このスタッド部52は、先端側がナックルアーム12の下側の平面状の取付面12aに貫通形成された挿通孔12bに挿通され、ナックルアーム12の上側にて雄ねじ部52aにナット54が螺合されることで、ナックルアーム12に対して固定されている。
【0032】
ボールシート23は、例えば摺動性に優れた合成樹脂などにより円筒状に形成されており、プラグ33をソケット本体31にかしめ部47でかしめ固定することで内室35に保持されている。このボールシート23は、内部に球面状の摺動面56を備えているとともに、上端部に、この摺動面56と連続してソケット本体31の上部開口部36と同軸状に連通する一方のシート開口部である上部シート開口部57を備え、さらに、下端部に、摺動面56と連続してソケット本体31の下部開口部37と同軸状に連通する他方のシート開口部である下部シート開口部58を備えている。なお、ボールシート23は、1つの部材によって形成してもよいし、例えば互いに特性が異なる合成樹脂などにより形成された複数の部材を組み合わせて構成してもよい。
【0033】
ダストカバー24は、ダストシール、あるいはブーツなどとも呼ばれるもので、例えば軟質ゴム、あるいは軟質合成樹脂などにより扁平な(軸方向よりも径方向の寸法が大きい)円筒状に形成されている。また、このダストカバー24は、一端側である上端側の外周にフランジ状に突出するフランジ部61が一体に形成されており、このフランジ部61の上端側がナックルアーム12の取付面12a側に圧接されているとともに、このフランジ部61の内周側がボールスタッド22のスタッド部52の外周に圧接されて固定されている。さらに、このダストカバー24の他端側である下端側は、ソケット21のソケット本体31の上端側のカバー嵌着部38に固定されている。このため、ダストカバー24は、ソケット本体31とナックルアーム12の取付面12aとの間に亘って配置されており、ソケット本体31の上部開口部36及びボールスタッド22のスタッド部52の外側をそれぞれ覆っている。
【0034】
また、ロアアーム16は、例えば剛性を有する金属により形成されており、一端側がボルト43によってボールジョイント15のソケット21のブラケット部32に固定されているとともに、他端側が図示しない車体側と連結されている。
【0035】
そして、電熱線14は、例えばニクロム線などであり、自動車の車体側に配置された図示しないアクセサリ電源などの電源部から通電されて所定の温度に発熱するものである。この電熱線14は、両端側が電源部に接続され、これら両端間の中間部分が、ソケット21のブラケット部32の各取付凸部41間の各取付凹部45に沿ってジグザグ状に蛇行するように、すなわち一の取付凸部41の一側から、この一の取付凸部41に隣接する他の取付凸部41の他側へと順次連続するように取り付けられており、例えば耐熱性の接着剤などの固定手段によってブラケット部32に対して熱的に接続された状態で固定されている。すなわち、この電熱線14は、懸架装置13(のボールジョイント15(のソケット21)及びロアアーム16など)に対して熱的に接続された状態となっている。したがって、この電熱線14は、発熱により懸架装置13(のボールジョイント15(のソケット21)あるいはロアアーム16など)を加熱することで、これらに付着した氷Iを溶解させることが可能となっている。すなわち、この電熱線14の温度としては、懸架装置13のボールジョイント15あるいはロアアーム16などの着氷予想位置を、この位置に付着した氷Iを溶解可能な温度に加熱する温度であれば充分であり、高温にする必要がなく、耐熱性の接着剤程度で充分に固定できる。
【0036】
次に、上記第1の実施の形態の作用を説明する。
【0037】
寒冷地などにおいては、非動作状態(タイヤやエンジンなどが冷めた(常温)状態)の自動車の車両用装置11の懸架装置13などに氷Iが付着することがある。具体的には、ボールジョイント15のソケット21のブラケット部32の各主面32a,32b、あるいはロアアーム16などに着氷する。
【0038】
この状態で、電熱線14は、自動車の起動後、電源部から給電されると発熱し、懸架装置13の温度を徐々に上昇させる。なお、電源部から電熱線14への給電は、例えば自動車の起動直後に開始させてもよいし、運転者などの自動車の搭乗者が任意のタイミングで図示しないスイッチなどの操作手段を手動操作したときに開始させてもよいし、着氷予想位置への着氷を検出する着氷検出手段(着氷センサ)により着氷を検出したときに自動的に、あるいは操作手段の手動操作などにより開始させてもよい。いずれにしても、電熱線14は、自動車の走行とは独立して懸架装置13(のボールジョイント15あるいはロアアーム16など)を加熱する。
【0039】
そして、この懸架装置13の温度の上昇に伴い、氷Iが溶解除去される。この懸架装置13は、それぞれの部材間で伝熱されて全体に温度が上昇するため、電熱線14が配置されている箇所以外の箇所でも、この電熱線14からの距離が所定距離以内の範囲に位置していれば、氷Iが溶解除去可能となっている。なお、電源部から電熱線14への給電は、例えば給電の開始から予め設定された所定の一定時間後に自動的に遮断されるように構成してもよいし、また、自動車の搭乗者が操作手段を手動操作することで遮断されるように構成してもよいし、さらに、着氷検出手段が着氷を検出しなくなると自動的に、あるいは操作手段の手動操作などにより遮断されるように構成してもよい。
【0040】
上述したように、上記第1の実施の形態によれば、着氷の溶解により着氷を制御する電熱線14の一部を、自動車の懸架装置13に配置することにより、電熱線14によって着氷を溶解させ、自動車を走行させることなく着氷に起因する不具合、例えばナックルアーム12側とボールジョイント15のブラケット部32側(ロアアーム16側)との干渉、氷Iによる各部材の傷付き、あるいはボールジョイント15のダストカバー24の凍結破損などを効果的に防止できる。
【0041】
また、発熱体、具体的には電熱線14を用いることにより、着氷を溶解させる構成を容易に形成できる。特に、自動車の場合、一般的に例えば(リア)デフォッガ(窓部の霜取り用の電熱線)などを備えるため、この(リア)デフォッガなどと共通の電源部などを用いることで、電熱線14の専用の電源部などの構成を別途追加する必要がないとともに、電熱線14を配置した位置以外でも、電熱線14からの熱が伝われば着氷を溶解させることが可能となり、広い範囲の着氷に対応できる。
【0042】
さらに、電熱線14を懸架装置13の表面に配置、具体的には取付凸部41に沿って取付凹部45間にジグザグ状に係止する(凹凸構造に係止する)ことにより、電熱線14を容易に配置できるとともに、例えば着氷しない地域などで用いる自動車(車両)に対しては、電熱線14を配置しなければ上記懸架装置13をそのまま共用できるので、部品の共通化によるコスト削減が可能となる。
【0043】
しかも、電熱線14を懸架装置13に対してジグザグ状に配置することにより、電熱線14と懸架装置13との接触面積を相対的に増加させることができるので、電熱線14から懸架装置13に対して、より効率よく伝熱できる。
【0044】
そして、電熱線14を懸架装置13に用いることにより、着氷に起因する不具合を効果的に防止できる。
【0045】
なお、上記第1の実施の形態において、ブラケット部32の上側の主面32aに取付凸部41を突設せずに、取付凹部45のみを上側の主面32aに凹設する構成として、これら取付凹部45間を相対的に突出した取付凸部41とする凹凸構造であっても同様の作用効果を奏することができる。
【0046】
次に、第2の実施の形態を図3を参照して説明する。なお、上記第1の実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0047】
この第2の実施の形態は、上記第1の実施の形態の取付凸部41及び取付凹部45に代えて、着氷制御部係止部としての発熱体(電熱線)係止部である係止突起部65により形成した凹凸構造に電熱線14を係止固定したものである。
【0048】
すなわち、係止突起部65は、ボールジョイント15のソケット21のブラケット部32に幅方向の一側と他側とに交互に順次配置されており、これら係止突起部65間に電熱線14をジグザグ状に蛇行させて引っ掛けることにより、電熱線14の両端間の中間部分を懸架装置13に対して係止可能となっている。なお、電熱線14は、上記第1の実施の形態と同様に、耐熱性の接着剤などにより固定してもよい。
【0049】
そして、電熱線14を懸架装置13の表面に配置、具体的には係止突起部65間にジグザグ状に係止するなど、上記第1の実施の形態と同様の構成を有することにより、上記第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0050】
次に、第3の実施の形態を図4を参照して説明する。なお、上記各実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0051】
この第3の実施の形態は、上記第1の実施の形態の電熱線14が、例えばボールジョイント15のソケット21のブラケット部32に形成した埋込部としての取付孔部67に埋め込まれているものである。
【0052】
ここで、電熱線14は、ソケット21の成形の際に予め取付孔部67に埋め込んでもよいし、ソケット21の成形時に上側などの一部を予め開いた状態とした取付孔部67に取り付けた後、開いた部分を閉塞して埋め込んでもよい。
【0053】
そして、電熱線14の一部を、懸架装置13(のボールジョイント15のソケット21のブラケット部32)の内部に埋め込むことにより、電熱線14の発熱効果を、懸架装置13(のボールジョイント15のソケット21のブラケット部32)の内部から、特にブラケット部32の下側の主面32bに連結されたロアアーム16に対して、効果的に作用させることができる。
【0054】
なお、上記各実施の形態の電熱線14に代えて、図5に示す第4の実施の形態、図6に示す第5の実施の形態、及び、図7に示す第6の実施の形態のように、着氷制御部としての発熱体である筒状体69を用いても、同様の作用効果を奏することができる。これら筒状体69は、例えば高熱の液体、あるいは高熱の気体などの流体を内部に流通させることにより発熱するものであり、伝熱性に優れた例えば金属などの部材により長尺の筒状(円筒状)に形成され、懸架装置13(のボールジョイント15のソケット21のブラケット部32)に耐熱性の接着剤などの固定手段により固定されて熱的に接続されているものとする。なお、これら筒状体69は、懸架装置13(のボールジョイント15のソケット21のブラケット部32)と別体でもよいし、懸架装置13(のボールジョイント15のソケット21のブラケット部32)に一体形成されていてもよい。
【0055】
さらに、上記各実施の形態において、電熱線14、あるいは筒状体69は、例えばナックルアーム12側に取り付けてもよいし、懸架装置13側及びナックルアーム12側の双方にそれぞれ取り付けてもよい。
【0056】
そして、電熱線14、あるいは筒状体69は、寒冷地での着氷が予想される位置、例えば外部に露出する箇所などを加熱できれば、任意の位置に取り付けてもよく、これらの位置のうち任意の複数箇所に取り付けてもよい。
【0057】
また、電熱線14、あるいは筒状体69に代えて、ナックルアーム12、あるいは懸架装置13の少なくとも一部、特に外部に露出する箇所に着氷制御部としての表面処理材である着氷防止塗料を塗布して、この着氷防止塗料によりコーティングする構成としてもよい。また、この着氷防止塗料を電熱線14、あるいは筒状体69と組み合わせてもよい。
【0058】
さらに、車両用装置11は、寒冷地での着氷が予想される懸架装置13以外の任意の車両用装置の構成に用いることが可能である。すなわち、車両用装置11は、自動車を含む任意の車両の車両用装置として適用可能である。
【符号の説明】
【0059】
11 車両用装置
12 被取付部としてのナックルアーム
13 本体部である懸架装置
14 着氷制御部としての発熱体である電熱線
15 ボールジョイント
69 着氷制御部としての発熱体である筒状体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被取付部と、
この被取付部に対して可動的に取り付けられる本体部と、
この本体部と前記被取付部との少なくともいずれか一方に少なくとも一部が設けられ、着氷の溶解と着氷の抑制との少なくともいずれか一方により着氷を制御する着氷制御部と
を具備したことを特徴とする車両用装置。
【請求項2】
着氷制御部は、発熱して着氷を溶解させる発熱体を備えている
ことを特徴とする請求項1記載の車両用装置。
【請求項3】
発熱体は、少なくとも一部が被取付部と本体部との少なくともいずれかの表面に設けられている
ことを特徴とする請求項2記載の車両用装置。
【請求項4】
発熱体は、少なくとも一部が被取付部と本体部との少なくともいずれかの内部に埋め込まれている
ことを特徴とする請求項2記載の車両用装置。
【請求項5】
発熱体は、電熱線である
ことを特徴とする請求項3または4記載の車両用装置。
【請求項6】
発熱体は、流体を内部に流通させる筒状体である
ことを特徴とする請求項3または4記載の車両用装置。
【請求項7】
着氷制御部は、被取付部と本体部との少なくともいずれかの表面の少なくとも一部に塗布され着氷を抑制する表面処理材を備えている
ことを特徴とする請求項1ないし6いずれか一記載の車両用装置。
【請求項8】
本体部は、ボールジョイントを備えた懸架装置である
ことを特徴とする請求項1ないし7いずれか一記載の車両用装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−225080(P2011−225080A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−96135(P2010−96135)
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【出願人】(000198271)株式会社ソミック石川 (91)
【Fターム(参考)】