説明

車両用誘導電動機

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、車両用誘導電動機の軽量化に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図3は例えば雑誌鉄道ファン1988年3月号P98に示された従来の車両用誘導電動機を示す断面図であり、図4はその固定子を示す斜視図、図5は回転子を示す斜視図である。図において、1はフレーム、2は薄板を積層した固定子鉄心、3はこの固定子鉄心2を押さえる鉄心押さえ板で、固定子鉄心2は鉄心押さえ板3とともにフレーム1に圧入もしくは焼嵌めにて装着されている。4は固定子鉄心2に挿入された固定子コイル、5は薄板を積層した回転子鉄心、6は回転子鉄心5に埋め込まれた導体棒、7は回転子軸、8及び9は軸受、10は軸受8を介して回転子軸7に着脱可能に装着された軸受箱、11は軸受箱10をフレーム1に固定するためのボルト、12は軸受9を介して回転子軸7に着脱可能に装着されたカートリッジ、13はカートリッジ12をフレーム1に固定するためのボルト、14はフレーム1に溶接にて取り付けられた台車への取付腕を示す。
【0003】次に動作について説明する。固定子コイル4に3相交流電流を通電すると、回転子に回転磁界が発生し、電磁誘導により回転子導体棒6に誘導電流が流れ、この回転磁界と誘導電流の相互作用により回転子が回転するようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来の車両用誘導電動機は以上のように構成されているので、フレーム1には回転磁界を発生させるための固定子鉄心2、固定子コイル4等の重量物を圧入もしくは焼嵌めにて装着しなければならず、そのために厚板の鉄板を円筒形に丸めた強固な一体物で製作するのが一般的であり、また台車への取付腕14等が必要なため、重量的にもかなり重いものとなっており、軽量化が難しいという問題点があった。
【0005】この発明は上記のような問題点を解消するためになされたものであり、フレームの軽量化を図ることにより装置全体を軽量化することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】この発明に係る車両用誘導電動機は、固定子を支持するフレームを左右分割の円筒形のアルミフレームとし、これらのアルミフレームと接合される鉄心押さえ板、軸受箱、カートリッジ各々との接合面の少なくともいずれか一方に渦巻状などのすべり止め用溝を設けたものである。
【0007】
【作用】この発明におけるアルミフレームは、鉄部材との接合面に渦巻状などの溝が設けられているので、熱膨張係数の違いにより接合面に発生する相対的なすべりを防止することができる。
【0008】
【実施例】以下、この発明の一実施例を図について説明する。図1は本発明の誘導電動機を示す断面図であり、図において、2〜13は従来装置と同一部品を示しており、20及び21は左右両側の円筒形アルミフレームで、22はこれら円筒形アルミフレーム20及び21の端面に設けられた渦巻状の溝、23および24は上記円筒形アルミフレーム20、21を固定子の鉄心押さえ板3に取り付けるためのボルトである。図2は渦巻状の溝22を設けた片側の円筒形アルミフレーム20の断面図を示す。
【0009】次に作用について説明する。上記のように構成された車両用誘導電動機では、フレームの大半をアルミ材にて構成しているので、従来の誘導電動機のように一体形の鉄材のフレームと比較すると、かなりの軽量化が可能となる。
【0010】一方、アルミの熱膨張率は23×10-6/degと鉄材の13×10-6/degに対して約2倍となっているため、同一温度下での寸法変化が大きく異なることになる。アルミフレーム20、21はボルト23、24にて固定子の鉄心押さえ板3に固定されているが、固定子コイル4の温度上昇が鉄心を介してアルミフレーム20、21に伝導されるため、アルミフレーム20、21と鉄心押さえ板3の接合面に熱膨張率の違いによるすべりが生じる事になり、ボルト23、24にはせん断力が発生する。アルミフレーム20と軸受箱10の接合面及びアルミフレーム21とカートリッジ12の接合面にも回転子部の温度上昇に伴い同様な現象が生じるが、アルミフレーム20、21側に渦巻状の溝22を設け、ボルトの締付力によって、渦巻状の溝を、接合する相手面にくい込ますことにより、接合面の摩擦係数を大幅に増大することができ、温度上昇に伴うアルミと鉄材の接合面に生じるすべりを防止することが可能となり、アルミフレーム20、21による軽量化を実現することができるのである。
【0011】なお上記実施例では、アルミフレームに設ける溝を渦巻状としているが、同心円で径の異なる複数の溝でもよい。又、アルミフレーム側に溝を設けているが、アルミフレームと接合する相手面に溝を設けてもよく、さらにその両方に溝を設け、互いにかみ合わせても同様の効果を奏する。
【0012】又、上記実施例では、アルミフレームに設けた溝を、接合する相手面にくい込ますのに、ボルトを使用しているが、プレス等で押し付ける方法をとれば、ボルト付近のみでなく、全周にわたって深く溝がくい込むことになり、効果は増大する。
【0013】
【発明の効果】以上のようにこの発明によれば、固定子を支持するアルミフレームの鉄材との接合面に渦巻状などの溝を設けたので、熱膨張率の違いによるすべりを防止することが可能となり、又アルミフレームを使用することによって装置全体の軽量化を図ることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例による車両用誘導電動機を示す断面図である。
【図2】アルミフレームを示す断面図である。
【図3】従来の車両用誘導電動機を示す斜視図である。
【図4】車両用誘導電動機の固定子を示す斜視図である。
【図5】車両用誘導電動機の回転子を示す斜視図である。
【符号の説明】
2 固定子鉄心
3 鉄心押さえ板
7 回転子軸
10 軸受箱
12 カートリッジ
20 アルミフレーム
21 アルミフレーム
22 渦巻状の溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】 固定子鉄心及び鉄心押さえ板がフレームに装着されるとともに、上記フレームが軸受箱及びカートリッジを介して回転子軸に取り付けられた誘導電動機において、鉄心押さえ板と軸受箱及びカートリッジの間にそれぞれアルミフレームを挿入するとともに、上記アルミフレーム及びその嵌合相手面である上記鉄心押さえ板、軸受箱、カートリッジの双方又はどちらか一方にすべり止めの溝を設けたことを特徴とする車両用誘導電動機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【特許番号】第2736289号
【登録日】平成10年(1998)1月9日
【発行日】平成10年(1998)4月2日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−25276
【出願日】平成3年(1991)1月25日
【公開番号】特開平4−248343
【公開日】平成4年(1992)9月3日
【審査請求日】平成7年(1995)7月14日
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【参考文献】
【文献】特開 昭59−144818(JP,A)
【文献】特開 平3−3626(JP,A)
【文献】特開 昭60−197134(JP,A)
【文献】実開 昭64−6761(JP,U)
【文献】実開 昭59−15240(JP,U)
【文献】実開 昭58−80765(JP,U)
【文献】実公 昭44−13214(JP,Y1)