説明

車両用車椅子格納装置

【課題】本発明は、車両の屋根上に格納した車椅子を上から押さえて固定する機構の耐久性を向上させることを目的とする。
【解決手段】本発明に係る車両用車椅子格納装置は、固定架台12と、可動架台15と、車椅子支持部と、回動機構と、吊り手段とを備る車両用車椅子格納装置であって、可動架台15に上下回動可能な状態で連結されており、待機位置から車椅子の押さえ位置まで下方向に回動することで、車椅子支持部に乗せられた車椅子を上方から押さえる車椅子固定部材51と、車椅子固定部材51を待機位置に保持する第1弾性部材57と、可動架台15と固定架台12との間に設けられており、その可動架台15が格納位置まで移動するときの力を利用して車椅子固定部材51を第1弾性部材57の弾性力に抗して車椅子の押さえ位置まで下方に回動させる固定部材回動機構60とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車椅子の吊り手段を利用して前記車椅子を上限位置まで上昇させて縦向きに配置された車椅子支持部で受け、前記車椅子支持部を水平な車椅子支持位置まで回動させながら車椅子を前記車椅子支持部に乗せた後、その車椅子支持部及び車椅子を屋根上の格納位置まで移動させる車両用車椅子格納装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記車両用車椅子格納装置に関する技術が特許文献1に開示されている。この車両用車椅子格納装置では、一般的に、車椅子を車椅子支持部に乗せた後、ゴム紐等を利用して前記車椅子を上から押さえ、車椅子支持部に固定する。これにより、車椅子の種類によって車椅子折り畳み幅にばらつきがある場合でも、各種の車椅子を良好に車椅子支持部に固定できる。
【0003】
【特許文献1】特開2000−237238号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ゴム紐等を利用して前記車椅子を上から押さえる構成では、前記ゴム紐等の耐久性が低いため、定期交換が必要でコスト高となる。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、車両の屋根上に格納した車椅子を上から押さえて固定する機構の耐久性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題は、各請求項の発明によって解決される。
請求項1の発明は、車両の屋根上に設置された固定架台と、その固定架台に重なる格納位置と車両の乗降口の上方で屋根から横方向に張り出す状態となる使用位置との間で、前記固定架台上を移動可能に構成された可動架台と、車椅子を支持可能に構成されて、前記可動架台に上下回動可能な状態で装着されている車椅子支持部と、前記可動架台が使用位置にあるときに、前記車椅子支持部を前記可動架台に沿う車椅子支持位置と前記可動架台に対して垂直な車椅子受け位置との間で上下回動させる回動機構と、車椅子を吊り上げ、吊り下げ可能に構成された吊り手段とを備え、前記吊り手段により車椅子を上限位置まで上昇させてその車椅子を前記車椅子受け位置にある前記車椅子支持部で受け、前記回動機構により前記車椅子支持部を車椅子支持位置まで上回動させながら前記車椅子支持部に前記車椅子を乗せた後、前記可動架台を格納位置まで移動させて前記車椅子を車両の屋根上に格納する車両用車椅子格納装置であって、前記可動架台に上下回動可能な状態で連結されており、待機位置から前記車椅子の押さえ位置まで下方向に回動することで、前記車椅子支持位置にある前記車椅子支持部に乗せられた車椅子を上方から押さえる車椅子固定部材と、前記車椅子固定部材を前記待機位置に保持する第1弾性部材と、前記可動架台と前記固定架台との間に設けられており、その可動架台が格納位置まで移動するときの力を利用して前記車椅子固定部材を前記第1弾性部材の弾性力に抗して前記車椅子の押さえ位置まで下方に回動させる固定部材回動機構とを有することを特徴とする。
【0007】
本発明によると、固定部材回動機構は、可動架台が固定架台に対して格納位置まで移動するときの力を利用して、車椅子固定部材を第1弾性部材の弾性力に抗して車椅子の押さえ位置まで下方に回動させる。これにより、可動架台の車椅子支持部に乗せられた車椅子が車椅子固定部材によって上から押さえられて固定される。
上記構成により、車椅子固定部材、固定部材回動機構を強度の高い材料、例えば、金属等で製作できるようになり、車椅子固定部材、固定部材回動機構の耐久性向上を図ることができる。
【0008】
請求項2の発明によると、固定部材回動機構は、第2弾性部材を介して車椅子固定部材を下方に回動させる構成であり、前記車椅子固定部材は、前記第2弾性部材の弾性力に基づく力で前記車椅子を押さえることを特徴とする。
このため、車椅子の種類によって車椅子折り畳み幅にばらつきがある場合でも、各種の車椅子をほぼ一定の力で良好に押さえることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、車両の屋根上に格納した車椅子を押さえて固定する機構の耐久性向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
[実施形態1]
以下、図1から図10に基づいて本発明の実施形態1に係る車両用車椅子格納装置について説明する。図1、図2は本実施形態に係る車両用車椅子格納装置の車椅子固定部材及び固定部材回動機構を表す斜視図、及び側面図であり、図3から図6は車両用車椅子格納装置の固定架台、可動架台等を表す斜視図、平面図、側面図である。また、図7、図8は車両用車椅子格納装置の全体模式図、図9、図10は車椅子支持部を表す斜視図である。
なお、図に示す前後左右及び上下は自動車の前後左右及び上下に対応している。
【0011】
<車両用車椅子格納装置10の概要について>
車両用車椅子格納装置10は、運転者が車椅子Kから自動車1の運転席に乗り移った後、その車椅子Kを自動車1の屋根上に格納するための装置である。
車両用車椅子格納装置10は、図7に示すように、自動車1の屋根上に設置された固定架台12と、固定架台12上を格納位置と使用位置との間で水平スライド可能に構成された可動架台15と、可動架台15を覆うハウジングHと、上下回動可能な状態で可動架台15に装着されて車椅子Kを支持する車椅子支持部20と、同じく可動架台15に設置されてその車椅子支持部20の上下回動、及び車椅子Kの吊り上げ、吊り下げに使用される吊り装置30とを備えている。さらに、可動架台15には、車椅子支持部20に支持された車椅子Kを格納位置で固定する車椅子固定機構50等が設けられている。
【0012】
<固定架台12について>
自動車1の屋根上には、図3、図5に示すように、固定架台12を支持する前後一対のルーフラック11が車幅方向に延びるように設置されている。ルーフラック11は角筒状に形成された梁材であり、その左右両端が、図2等に示すように、固定部材11sにより自動車1のルーフサイドレール1eに連結されている。
固定架台12は、図5に示すように、前梁部121、後梁部122、左梁部123及び右梁部124により角形に組まれた外枠と、その外枠の前梁部121と後梁部122との間に渡された左中梁部12fと右中梁部12rとから構成されている。また、前梁部121と平行に前側のガイドレール12z(図4(B)参照)、後梁部122と平行に後側のガイドレール(図示省略)が設けられている。なお、図3、図5では、ガイドレール12zは省略されている。
そして、固定架台12の左中梁部12fと右中梁部12rとが、それぞれ連結部材13によって前後二箇所で前後のルーフラック11に連結されている。これにより、固定架台12は前記ルーフラック11を介して自動車1の屋根上に固定される。
【0013】
連結部材13は、図6(A)(B)に示すように、略正方形の上部ブラケット131と、下部ブラケット135と、両ブラケットを四隅で連結するボルト&ナット137と、スペーサ136とから構成されている。上部ブラケット131の中央位置には、左中梁部12fあるいは右中梁部12rを収納できる略U字形の直線溝131uが形成されており、下部ブラケット135の中央位置には、ルーフラック11を収納できる略U字形の直線溝135uが形成されている。そして、両ブラケット131,135は、互いの直線溝131u,135uが直交するように上下から合わせられた状態で、ボルト&ナット137により相互に連結される。
上記した連結部材13により、例えば、固定架台12の左中梁部12fとルーフラック11とを連結するには、以下の手順による。先ず、図6(A)に示すように、下部ブラケット135の直線溝135uにルーフラック11が収納されるように、下部ブラケット135がルーフラック11に下方から装着される。また、上部ブラケット131の直線溝131uに左中梁部12fが収納されるように、固定架台12の左中梁部12fに上方から上部ブラケット131が装着される。さらに、ルーフラック11と固定架台12の左中梁部12fとの間にスペーサ136が挟まれる。この状態で、上部ブラケット131と下部ブラケット135とがボルト&ナット137により相互に連結されることで、固定架台12の左中梁部12fとルーフラック11とが接続される。なお、固定架台12の右中梁部12rとルーフラック11との連結手順も上記と同様である。
また、前記ボルト&ナット137を緩めることで、ルーフラック11に対して固定架台12の左中梁部12f、右中梁部12rを前後に位置調整することが可能になる。
固定架台12は、図8(A)(B)に示すように、車両用車椅子格納装置10を自動車1の前寄りの位置に設置できるように、その自動車1の屋根上に固定される。これにより、自動車1のバックドア等と車両用車椅子格納装置10との干渉を防止できる。さらに、後記するように、可動架台15を屋根から右方向に張り出す使用位置まで移動させた状態で右乗降口の上を庇状に覆うことができる。これにより、例えば、雨の降り込みを防止できるようになる。
【0014】
<可動架台15について>
可動架台15は、図5に示すように、固定架台12より小型に形成された角形の枠状部材であり、固定架台12に重なる格納位置(左スライド限界位置)と自動車1の右乗降口の上方で屋根から右方向に張り出す状態となる使用位置(右スライド限界位置)との間で水平移動可能に構成されている。
可動架台15は、前梁部151、後梁部152、左梁部153及び右梁部154により角形に組まれた外枠と、その外枠の前梁部151と後梁部152との間に渡された複数本の縦梁部15sとから構成されている。そして、可動架台15の右半分が開口部15hとなっている。また、可動架台15には、後記するように、可動架台15上に搭載された車椅子K、及びその他の部材を覆えるように構成されたハウジングHが装着されている。
可動架台15の前梁部151には、その前側面に、図1、図4(B)(C)に示すように、固定架台12に設置された駆動機構40の支持ローラ41が嵌め込まれる断面略C字形のガイド溝151mが前梁部151の長手方向に形成されている。さらに、前梁部151の前側面には、ガイド溝151mの上部前側にラック42を収納するラック溝151rが前記ガイド溝151mと平行に形成されている。そして、前記ラック溝151rにラック42がラック歯42wを下向きにした状態で収納固定されている。
また、前梁部151の前側面下部には、図4(B)(C)に示すように、固定架台12のガイドレール12zに沿って転動する車輪151xが長手方向に所定間隔で取り付けられている。
可動架台15の後梁部152には、その後側面に前梁部151と等しい構成のガイド溝とラック溝とが設けられている。そして、前記ラック溝にラック42が固定されているとともに、後梁部152の後側面下部に前記車輪が装着されている。
【0015】
<駆動機構40について>
駆動機構40は、固定架台12に対して可動架台15を格納位置(左スライド限界位置)と使用位置(右スライド限界位置)との間で水平移動させるための機構であり、二台(前後)一組で使用される。前後の駆動機構40は、図4(A)、図5に示すように、それぞれ固定架台12の前梁部121の右端部、後梁部122の右端部で、可動架台15を前後方向から挟むように設置されている。なお、前後の駆動機構40は等しい構成のため、代表して前側の駆動機構40について説明する。
駆動機構40は、図4(A)(B)に示すように、左右方向に長い断面略U字形のケース40cを備えている。そして、前記ケース40cには、その上部右端と上部左端とに、前後方向に延びる軸部41jが渡されており、前記ケース40cから後方に突出した軸部41jの先端に前記可動架台15のガイド溝151mに嵌め込まれる支持ローラ41が回転自在に装着されている。また、ケース40cには、図4(C)に示すように、可動架台15のラック42と噛合するピニオン44を回転させるモータ及び減速機45(以下、モータ45という)が収納されている。
上記構成により、駆動機構40のモータ45が起動されることで、ラック42とピニオン44との噛合作用により、可動架台15は固定架台12に対して左右方向にスライドするようになる。
【0016】
<車椅子支持部20について>
可動架台15には、開口部15h(図5参照)の左端を構成する縦梁部15sに、図2、図7に示すように、車椅子支持部20が軸受21を介して上下回動可能な状態で連結されている。そして、車椅子支持部20が後記するように可動架台15の位置まで上方に回動することにより(図2参照)、その可動架台15の開口部15hが塞がれる。なお、図3〜図5では、車椅子支持部20は省略されている。
車椅子支持部20は、図9(A)に示すように、角形の固定枠22と、その固定枠22の内側に嵌め込まれ、上下スライド可能に構成された角形の可動枠24と、前記固定枠22の上端部から右上方向に張り出し、先端に車椅子Kの吊り支点26cを備える吊り架台26とから構成されている。そして、固定枠22の上部が前後二箇所で軸受21を介して可動架台15の縦梁部15sに連結されている。
可動枠24は、図9(A)に示すように、前後の縦スライド機構27を介して固定枠22に連結されている。縦スライド機構27は、図9(B)に示すように、固定枠22の下部内側に取り付けられた板状部27bと、可動枠24の外側に縦方向に取り付けられたレール部27eとから構成されている。レール部27eは、横断面略C字形に形成されて、その内側に開口が狭められた溝27mが形成されている。そして、レール部27eの溝27mに固定枠22の板状部27bが摺動可能な状態で収納されている。これにより、可動枠24は固定枠22に対して上下スライド可能な状態で連結される。
【0017】
可動枠24には、後記する吊り装置30に吊り上げられた車椅子Kが下方から当接する位置に車椅子拘束バー24xが設けられている。車椅子拘束バー24xは、車椅子Kが下方から当接することでその車椅子Kを可動枠24に対して一定の位置関係に保持できるように構成されている。そして、車椅子Kが車椅子拘束バー24xに当接している状態で、その車椅子Kが吊り装置30により吊り上げられることで、可動枠24は車椅子拘束バー24xの働きで車椅子Kと共に固定枠22に対して上方にスライドするようになる。
また、可動枠24の上端部には、吊り架台26とほぼ等しい角度で形成されたプロテクタアーム24aが取り付けられており、そのプロテクタアーム24aの先端に吊り装置30のベルト36が通されるベルト挿通部24zが形成されている。このため、吊り装置30が車椅子Kを吊っていない状態であっても、ベルト36が巻き取られてそのベルト36先端のフック38がプロテクタアーム24aのベルト挿通部24zに掛かると、可動枠24が吊り装置30の働きで固定枠22に対して上方にスライドできるようになる。
【0018】
<吊り装置30について>
可動架台15には、図7に示すように、吊り装置30が設置されている。
吊り装置30は、車椅子K、及び車椅子支持部20の可動枠24の吊り上げ、吊り下げを行うとともに、その車椅子K、可動枠24が上限位置まで到達した状態で、車椅子支持部20を水平位置まで上方に回動させる装置である。
吊り装置30は、図7に示すように、車椅子Kを吊るためのベルト36と、ベルト36を巻き取るためのドラム32と、ドラム32を巻き取り、繰り出し方向に回転させるモータ部(図示省略)とを備えており、ドラム32、前記モータ部が可動架台15の左端部に設置されている。ベルト36は、車椅子支持部20の吊り架台26の先端に形成された吊り支点26cを介して吊り下げられており、車椅子支持部20の可動枠24に設けられたプロテクタアーム24aのベルト挿通部24zに通されている。そして、前記ベルト36の先端に車椅子Kの被吊り具Khに掛けられるフック38が設けられている。
【0019】
このため、図7に示す状態で、吊り装置30により車椅子Kが吊り上げられると、車椅子Kは吊り上げ過程で折り畳まれ、車椅子支持部20の可動枠24の車椅子拘束バー24xに下方から当接する。これにより、車椅子Kが可動枠24に対して一定の位置関係に保持される。そして、引き続き車椅子Kが吊り上げられることで、可動枠24が車椅子Kと共に上昇し、可動枠24は車椅子支持部20の固定枠22に対して上方にスライドする。そして、可動枠24のプロテクタアーム24aが吊り架台26の位置まで到達した状態で、可動枠24が固定枠22と等しい高さ位置に保持される。この位置が車椅子Kと可動枠24の上限位置であり、この状態から吊り装置30のベルト36が巻き取られると、車椅子支持部20の吊り架台26の吊り支点26cがドラム32側に引っ張られる。これによって、車椅子支持部20が軸受21を中心にして上方に回動し、その車椅子支持部20の可動枠24、固定枠22によって車椅子Kが掬い上げられる。そして、図2に示すように、車椅子支持部20が水平になる位置(車椅子支持位置)までベルト36が巻き取られた段階で吊り装置30のモータ部が停止する。
【0020】
また、車椅子支持部20が水平になる位置(車椅子支持位置)から吊り装置30がベルト36を繰り出す方向に動作すると、車椅子支持部20が自重で下方に回動する。そして、車椅子支持部20が可動架台15に対して垂直な位置(車椅子受け位置)まで回動すると、前記ベルト36の繰り出しに伴って車椅子K及び可動枠24が自重で下降する。このとき、可動枠24は縦スライド機構27の働きで固定枠22に対して下方にスライドするため、横揺れ等が発生せず、車椅子K、可動枠24が自動車1のボディと干渉することがない。そして、図7に示すように、可動枠24が固定枠22に対する下限位置まで下降した後は、車椅子Kが単独で下降し、その車椅子Kが可動枠24の車椅子拘束バー24xから離れるようになる。このとき、車椅子Kは可動枠24に沿って下降するため、車椅子Kが自動車1のボディと干渉することはない。
即ち、車椅子支持部20の固定枠22の軸受21と吊り装置30とが、本発明において車椅子支持部20を上下回動させる回動機構に相当する。また、吊り装置30が本発明における吊り手段に相当する。
【0021】
<車椅子固定機構50について>
車椅子固定機構50は、図2に示すように、水平位置(車椅子支持位置)にある車椅子支持部20に乗せられた車椅子Kを上方から押さえる機構である。
車椅子固定機構50は、図1に示すように、可動架台15の先端上面(右端上面)に取り付けられる車椅子固定部材51と、その車椅子固定部材51を上下回動可能に支持する前後の軸受部52と、車椅子固定部材51を上限の待機位置に保持する第1バネ57とから構成されている。
車椅子固定部材51は、前後一対のアーム53と、両アーム53の先端をつなぐ押さえバー54とにより、下方が開放するコ字形に組み立てられている。そして、車椅子固定部材51を構成する前後のアーム53の基端部が、それぞれ固定軸53jを介して可動架台15の先端上面(右端上面)に設けられた前後の軸受部52に回転自在に支持されている。前後の軸受部52は、それぞれ前梁部151と後梁部152の上面で、軸心が前梁部151、後梁部152の幅方向に延びるように位置決めされている。このため、車椅子固定部材51は、前後のアーム53が前梁部151、後梁部152の上面に接する位置から前後の軸受部52を中心にして上方に回動できるようになる。
また、前後のアーム52には、車椅子固定部材51を上限の待機位置に保持するための第1バネ57の一端が連結されており、その第1バネ57の他端が可動架台15を覆うハウジングHの内壁面に連結されている(図2参照)。即ち、車椅子固定部材51に外力が加わっていない状態では、車椅子固定部材51は第1バネ57のバネ力で上限の待機位置に保持されている。
車椅子固定部材51は、後記する固定部材回動機構60の働きで待機位置から第1バネ57のバネ力に抗して下方に回動することにより、車椅子支持部20に乗せられた車椅子Kを上方から押さえることができるように構成されている。
即ち、第1バネ57が本発明の第1弾性部材に相当する。
【0022】
<固定部材回動機構60について>
固定部材回動機構60は、可動架台15が固定架台12に対して格納位置方向(左方向)にスライドするときの力を利用して、待機位置にある車椅子固定部材51を第1バネ57のバネ力に抗して車椅子押さえ位置まで下方に回動させるための機構である。固定部材回動機構60は、図1に示すように、可動架台15側のレバー63と、第2コイルバネ64と、固定架台12側のガイド板66等から構成されている。
レバー63は、車椅子固定機構50の軸受部52の固定軸53jを中心に回動可能なように、そのレバー63の基端部が前記固定軸53jに連結されている。レバー63は、アーム53よりも短い帯板状部材であり、先端側面にローラ63rが装着されている。そして、レバー63とアーム53とが第2コイルバネ64によって回動方向において連結されている。さらに、第2コイルバネ64のバネ定数は前記第1バネ57のバネ定数よりも十分に大きな値に設定されている。このため、レバー63が下方向に回動すると、第2コイルバネ64を介してアーム53が下方に引っ張られ、前記アーム53が第1バネ57に抗して下方に回動するようになる。
【0023】
固定部材回動機構60を構成するガイド板66は、図1に示すように、前記固定架台12の駆動機構40に固定された支持平板65の上側面に形成されている。ガイド板66は、可動架台15が格納位置(左スライド限界位置)までスライドする際にレバー63のローラ63rをガイドすることで、前記レバー63を下方に回動させるための部材である。また、ガイド板を支える支持平板65は、可動架台15のスライド方向に沿って延びる縦壁状の平板であり、その支持平板65の下端縁が駆動機構40のケース40cに固定されている。ガイド板66には、そのガイド板66の下面側にレバー63のローラ63rが当接して転動する転動面66fが形成されている。そして、前記転動面66fは支持平板65の右端位置で最も高く、左端位置に近づくにつれて徐々に低くなるように形成されている。
上記構成により、可動架台15が固定架台12に対して格納位置側(左方向)にスライドすると、格納位置(左スライド限界位置)の近傍で可動架台15側のレバー63のローラ63rが固定架台12側のガイド板66の転動面66fに当接する。そして、この状態からさらに可動架台15が左方向にスライドすると、レバー63のローラ63rがガイド板66の転動面66fに沿って転動することでローラ63rが押し下げられ、レバー63が下方向に回動する。これにより、車椅子固定部材51のアーム53が第2コイルバネ64を介してレバー63に引っ張られ、車椅子固定部材51が第1バネ57に抗して下方に回動する。そして、可動架台15が格納位置(左スライド限界位置)まで到達した段階で前後の駆動機構40が停止する。これにより、レバー63は下回動限界位置に保持され、車椅子固定部材51はレバー63に引っ張られて下限位置(車椅子の押さえ位置)まで回動し、その位置に保持される。即ち、車椅子支持部20によって掬い上げられた車椅子Kは、格納位置で車椅子固定部材51により、第2コイルバネ64のバネ力に等しい力で押さえられ、車椅子支持部20上に固定される。
即ち、第2コイルバネ64が本発明の第2弾性部材に相当する。
【0024】
<本実施形態に係る車両用車椅子格納装置の動作について>
本実施形態に係る車両用車椅子格納装置の動作について説明する。
図7に示すように、車椅子Kの被吊り具Khにベルト36のフック38が掛けられて、吊り装置30が駆動されると、ベルト36が巻き取られて車椅子Kが吊り上げられる。車椅子Kは吊り上げ過程で折り畳まれ、車椅子支持部20の可動枠24の車椅子拘束バー24xに下方から当接する。これにより、可動枠24が車椅子Kと共に上昇し、可動枠24は車椅子支持部20の固定枠22に対して上方にスライドする。そして、可動枠24のプロテクタアーム24aが吊り架台26の位置まで到達した状態で、可動枠24が固定枠22と等しい高さ位置(上限位置)に保持される。この状態からさらにベルト36が巻き取られると、車椅子支持部20が上方に回動し、車椅子Kがその車椅子支持部20よって掬い上げられる。そして、図2に示すように、車椅子支持部20が水平になる位置(車椅子支持位置)で吊り装置30が停止する。
次に、前後の駆動機構40が駆動されることで、可動架台15が固定架台12に対して左方向(使用位置から格納位置方向)にスライドする。そして、可動架台15が格納位置の近傍まで左スライドすると、その可動架台15側に設けられたレバー63のローラ63rが固定架台12側に設けられたガイド板66の転動面66fに当接する。そして、この状態からさらに可動架台15が左スライドすると、レバー63のローラ63rがガイド板66の転動面66fに沿って転動することでローラ63rが押し下げられ、レバー63が下方向に回動する。これにより、車椅子固定部材51のアーム53が第2コイルバネ64を介してレバー63に引っ張られ、車椅子固定部材51が第1バネ57に抗して下方に回動する。そして、可動架台15が格納位置(左スライド限界位置)まで到達した段階で前後の駆動機構40が停止すると、レバー63は下回動限界位置に保持され、車椅子固定部材51はレバー63に引っ張られて下限位置(車椅子の押さえ位置)に保持される。即ち、車椅子支持部20によって掬い上げられた車椅子Kは、格納位置で車椅子固定部材51により、第2コイルバネ64のバネ力に等しい力で押さえられ、車椅子支持部20上に固定される。
【0025】
また、格納位置にある車椅子Kを自動車1の屋根から降ろす場合には、先ず、前後の駆動機構40が駆動されることで、可動架台15が固定架台12に対して右方向(格納位置から使用位置方向)にスライドする。これにより、レバー63のローラ63rがガイド板66の転動面66fに沿って上方に移動可能となる。即ち、第1バネ57のバネ力により車椅子固定部材51のアーム53、第2コイルバネ64及びレバー63が上方に引っ張られ、レバー63のローラ63rはガイド板66の転動面66fに当接した状態で上方に移動するようになる。そして、レバー63のローラ63rがガイド板66の転動面66fの右端位置に到達した段階で、車椅子固定部材51は上限の待機位置まで到達する。そして、レバー63のローラ63rがガイド板66の転動面66fから離れた後も、車椅子固定部材51は第1バネ57のバネ力により待機位置に保持される。このようにして、可動架台15が使用位置まで右スライドすると、前後の駆動機構40が停止する。
次に、吊り装置30がベルト36を繰り出す方向に動作して、車椅子支持部20が自重で下方に回動する。そして、車椅子支持部20が可動架台15に対して垂直な位置(車椅子受け位置)まで回動すると、前記ベルト36の繰り出しに伴って車椅子K及び可動枠24が自重で下降する。そして、図7に示すように、可動枠24が固定枠22に対する下限位置まで下降した後は、車椅子Kが単独で下降し、その車椅子Kが可動枠24の車椅子拘束バー24xから離れるようになる。
【0026】
<本実施形態に係る車両用車椅子格納装置10の長所について>
本実施形態に係る車両用車椅子格納装置10によると、固定部材回動機構60は、可動架台15が固定架台12に対して格納位置まで移動するときの力を利用して、車椅子固定部材51を第1バネ57のバネ力に抗して車椅子Kの押さえ位置まで下方に回動させる。これにより、可動架台15の車椅子支持部20に乗せられた車椅子Kが車椅子固定部材51によって上から押さえられて固定される。
上記構成により、車椅子固定部材51、固定部材回動機構60を強度の高い材料、例えば、金属等で製作できるようになり、車椅子固定部材51、固定部材回動機構60の耐久性向上を図ることができる。
また、固定部材回動機構60は、第2コイルバネ64を介して車椅子固定部材51を下方に回動させる構成であり、車椅子固定部材51は、第2コイルバネ64の弾性力に基づく力で車椅子Kを押さえる。このため、車椅子Kの種類によって車椅子折り畳み幅にばらつきがある場合でも、各種の車椅子Kをほぼ一定の力で良好に押さえることができる。
【0027】
<車両用車椅子格納装置10の変更例>
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。
例えば、本実施形態では、車椅子固定部材51を一対のアーム53と一本の押さえバー54とからコ字形に構成する例を示したが、押さえバー54を複数本とすることも可能である。
また、本実施形態では、レバー63のローラ63rをガイド板66に沿わせることで、レバー63を下方に回動させ、そのレバー63、第2コイルバネ64により車椅子固定部材51を下方に回動させる例を示した。しかし、車椅子固定部材51のアーム53にローラ63rを装着し、ガイド板66に沿わせることで、直接的にアーム53を下方に回動させるようにし、前記一対のアーム53間に渡された押さえバー54をバネ材等で形成することも可能である。
また、本実施形態では、図9に示すように、固定枠22に対して可動枠24を車椅子Kと共に吊り上げ、吊り下げ可能な車椅子支持部20について例示した。しかし、図10(A)(B)に示すように、固定枠22に対し可動枠24を上下スライド可能に連結し、その連結部分に弾性体29を介在させることで、手動で可動枠24を上限位置まで持ち上げたり、下限位置まで引き下げるようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態1に係る車両用車椅子格納装置の車椅子固定部材及び固定部材回動機構を表す斜視図である。
【図2】前記車両用車椅子格納装置の車椅子固定部材及び固定部材回動機構を表す側面図である。
【図3】前記車両用車椅子格納装置の固定架台、可動架台等を表す斜視図である。
【図4】前記車両用車椅子格納装置の固定架台、可動架台等を表す側面図(A図)、A図のB-B矢視断面図(B図)及びA図のC-C矢視断面図(C図)である。
【図5】前記車両用車椅子格納装置の固定架台、可動架台等を表す平面図である。
【図6】ルーフラックに対する固定架台の取り付け構造を表す斜視図(A図)、及び側面図(B図)である。
【図7】車両用車椅子格納装置の全体模式図である。
【図8】車両用車椅子格納装置の全体平面図(A図)、及び全体側面図(B図)である。
【図9】車両用車椅子格納装置の車椅子支持部を表す斜視図(A図)及び縦スライド機構の斜視図(B図)である。
【図10】変更例に係る車椅子支持部を表す斜視図(A図)及びA図のB部拡大図(B図)である。
【符号の説明】
【0029】
K・・・・車椅子
1・・・・自動車
12・・・固定架台
15・・・可動架台
20・・・車椅子支持部
21・・・軸受(回動機構)
30・・・吊り装置(吊り手段、回動機構)
51・・・車椅子固定部材
57・・・第1バネ(第1弾性部材)
60・・・固定部材回動機構
64・・・第2コイルバネ(第2弾性部材)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の屋根上に設置された固定架台と、その固定架台に重なる格納位置と車両の乗降口の上方で屋根から横方向に張り出す状態となる使用位置との間で、前記固定架台上を移動可能に構成された可動架台と、車椅子を支持可能に構成されて、前記可動架台に上下回動可能な状態で装着されている車椅子支持部と、前記可動架台が使用位置にあるときに、前記車椅子支持部を前記可動架台に沿う車椅子支持位置と前記可動架台に対して垂直な車椅子受け位置との間で上下回動させる回動機構と、車椅子を吊り上げ、吊り下げ可能に構成された吊り手段とを備え、前記吊り手段により車椅子を上限位置まで上昇させてその車椅子を前記車椅子受け位置にある前記車椅子支持部で受け、前記回動機構により前記車椅子支持部を車椅子支持位置まで上回動させながら前記車椅子支持部に前記車椅子を乗せた後、前記可動架台を格納位置まで移動させて前記車椅子を車両の屋根上に格納する車両用車椅子格納装置であって、
前記可動架台に上下回動可能な状態で連結されており、待機位置から前記車椅子の押さえ位置まで下方向に回動することで、前記車椅子支持位置にある前記車椅子支持部に乗せられた車椅子を上方から押さえる車椅子固定部材と、
前記車椅子固定部材を前記待機位置に保持する第1弾性部材と、
前記可動架台と前記固定架台との間に設けられており、その可動架台が格納位置まで移動するときの力を利用して前記車椅子固定部材を前記第1弾性部材の弾性力に抗して前記車椅子の押さえ位置まで下方に回動させる固定部材回動機構と、
を有することを特徴とする車両用車椅子格納装置。
【請求項2】
請求項1に記載された車両用車椅子格納装置であって、
前記固定部材回動機構は、第2弾性部材を介して前記車椅子固定部材を下方に回動させる構成であり、
前記車椅子固定部材は、前記第2弾性部材の弾性力に基づく力で前記車椅子を押さえることを特徴とする車両用車椅子格納装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2009−78679(P2009−78679A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−249151(P2007−249151)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【Fターム(参考)】