説明

車両用通信システム

【課題】顧客が複数台の携帯端末を所持する場合や携帯端末を買替えた場合における不具合を未然に防止し、利便性を確保する。
【解決手段】店舗側サーバ6は、車両2の乗員が所持する携帯端末5に対して、車両識別番号及び携帯端末識別番号の要求信号を送信し、携帯端末5は、車両識別番号及び携帯端末識別番号のデータを返信する。店舗側サーバ6は、車両識別番号及び携帯端末識別番号から、顧客データベース7の顧客情報の検索を行い、登録された顧客である場合には優待処理を行う。携帯端末5がメニューのデータを受信すると、ユーザは、携帯端末5を操作して発注を行う。顧客データベース7の顧客情報は、複数の携帯端末識別番号及び複数の車両識別番号を関連付けて記憶することが可能となっており、店舗側サーバ6は、少なくともいずれか1つが顧客情報のデータと一致した場合に、当該顧客であると判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載通信機又は車両の乗員が所持する携帯端末と、店舗側通信機との間で通信を行うことにより、発注・受注の処理を可能とした車両用通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばハンバーガ店等においては、ユーザが車両に乗ったままで注文し商品を受け取ることができるいわゆるドライブスルーを設置する店舗が多くなってきている。例えば特許文献1では、ユーザが、携帯電話機を利用して、車両内で注文や料金決済を行なえるようにしたシステムが考えられている。
【0003】
このシステムでは、店舗サーバと車両に乗車するユーザの携帯端末との間で近距離無線通信を行い、その通信に基づいて、店舗サーバが、入場確認処理、商品メニューの提供、注文の受付、代金の精算、商品の受け渡し、退場確認処理などを順に実行するようになっている。このとき、ユーザ識別情報及び注文履歴情報がデータベースに記憶されており、店舗サーバは、ユーザの携帯端末から送信されるユーザ識別情報に基づいて、前記データベースを検索し、該当する顧客のニーズに応じて商品メニューを補正して提供するといった優待サービスを行うようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−342598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の技術では、携帯端末毎に履歴情報がデータベース化される構成なので、例えば複数台の携帯端末を所持しているユーザにとっては、使用した携帯端末毎に別々の履歴情報が存在してしまい、利便性が低下して、十分な優待サービスが得られなくなる虞がある。また、ユーザが、携帯端末を買い替えて識別情報が新しくなった場合には、過去の履歴情報が無効になってしまうことになる。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、顧客データベースに登録されている顧客に対して顧客情報に応じた優待サービスを提供することが可能な車両用通信システムにあって、顧客が複数台の携帯端末を所持する場合や携帯端末を買い替えた場合における不具合を未然に防止し、利便性を確保することができる車両用通信システムを提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の車両用通信システムは、車載通信機又は車両の乗員が所持する携帯端末と、店舗側通信機との間で通信を行うことにより、発注・受注の処理を可能とすると共に、顧客データベースに登録された顧客に対して顧客情報に応じたサービスを提供することが可能としたものであって、前記顧客データベースの各顧客情報には、当該顧客の車両識別番号のデータと、1又は複数の携帯端末識別番号のデータとが関連付けて記憶されており、事業者の店舗側サーバは、検索処理時に、車両側から送信された車両識別番号又は携帯端末識別番号のデータの少なくともいずれか1つが、前記顧客情報のデータと一致した場合に、当該顧客であると判断するところに特徴を有する(請求項1の発明)。
【0008】
上記構成によれば、顧客データベースにおいて、1つの顧客情報に関して、車両識別番号のデータと、1又は複数の携帯端末識別番号のデータとが登録されている。通信時に、車両側からは、車両識別番号及び携帯端末識別番号のデータが送信されるのであるが、事業者の店舗側サーバは、車両識別番号又は携帯端末識別番号のデータの少なくともいずれか1つが、顧客情報のデータと一致した場合に当該顧客であると判断する。
【0009】
従って、送信した携帯端末識別番号のデータが、複数台所持している携帯端末のうちの1つや、新規に入手した携帯端末のものであって、未だ登録がされていないものであった場合でも、車両識別番号に関して顧客情報のデータと一致すれば、当該顧客であると判断され、優待サービスの提供を受けることができる。また、登録されている識別番号を備えた携帯端末を所持したユーザが、例えばレンタカー等の、顧客として登録されていない車両に乗車している場合でも、優待サービスを受けることが可能となる。
【0010】
本発明においては、前記店舗側サーバによる検索処理時に、携帯端末識別番号のみが一致した、つまり車両識別番号が一致しなかった場合に、新規の車両識別番号を、当該顧客情報に登録するかどうかを、車両の乗員が選択指定できるように構成することができる(請求項2の発明)。これによれば、顧客データベースに登録されている顧客が、車両を買い換えたような場合に、顧客情報を継続的に維持したままで、新規の車両識別番号を登録することができる。レンタカーや友人の車両を一時的に借りている場合など、登録が不要と判断したときには、登録しないことをユーザが選択できることは勿論である。
【0011】
本発明においては、前記店舗側サーバによる検索処理時に、車両識別番号のデータのみが一致した、つまり携帯端末識別番号が一致しなかった場合には、新規の携帯端末識別番号を、当該顧客情報に登録するかどうかを、車両の乗員が選択指定できるように構成することができる(請求項3の発明)。これによれば、乗員が新たな携帯端末を入手した、或いは、今まで乗車していた乗員とは別の乗員が携帯端末を持って乗車しているような場合には、顧客情報を継続的に維持したままで、新規の携帯端末識別番号を登録つまり追加することができる。登録が不要と判断したときには、登録しないことをユーザが選択できることは勿論である。
【0012】
また、前記店舗側サーバによる検索処理時に、車両識別番号のデータのみが一致した、つまり携帯端末識別番号が一致しなかった場合には、新規な顧客情報を作成して登録するかどうかを、車両の乗員が選択指定することができるように構成することもできる(請求項4の発明)。これによれば、例えば車両の使用者が変わったような場合に、新規な顧客情報を作成して登録することができる。新規な顧客情報の作成が不要と判断した場合には、登録しないことをユーザが選択できることは勿論である。
【0013】
更に、本発明においては、車両側に、当該車両の乗員の所持する1以上の携帯端末識別番号のデータを記憶する記憶手段を設けると共に、店舗側通信機との間で通信を行う際に、車載通信機から、車両識別番号のデータと、前記記憶手段に記憶された携帯端末識別番号のデータとの双方を送信する構成とすることができる(請求項5の発明)。これによれば、通信時において、乗員が携帯端末を所持していなくとも、車載通信機により、予め記憶手段に記憶されている携帯端末識別番号のデータを、車両識別番号のデータと共に送信することで、優待サービスを受けることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施例を示すもので、車両用通信システムの構成を概略的に示す図
【図2】車両側の電気的構成を概略的に示すブロック図
【図3】店舗側の電気的構成を概略的に示すブロック図
【図4】顧客情報のデータ構成を模式的に示す図
【図5】店舗側サーバが実行する発注・受注の処理手順を示すフローチャート
【図6】携帯端末側が実行する発注・受注の処理手順を示すフローチャート
【図7】本発明の第2の実施例を示す図1相当図
【図8】本発明の第3の実施例を示す図3相当図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を、例えばハンバーガ店のドライブスルーにおける発注・受注の処理(商品の売買)を行う場合に適用した第1の実施例について、図1ないし図6を参照しながら説明する。図1は、本実施例に係る車両用通信システム1の全体構成を概略的に示している。この車両用通信システム1は、自動車等の車両2と、事業者の店舗(ハンバーガ店)3との間で、通信を行うことにより、車両2内のユーザ(乗員)が、乗車したままで商品(ハンバーガ等)の発注・受注を行って購入できるシステムである。
【0016】
前記車両2は、車載情報処理装置4を備えると共に、その乗員(ユーザ)は、携帯電話機やスマートフォン等の携帯端末5を所持している。このとき、乗員の一人が、複数台の携帯端末5を所持している場合もあり、また、複数の乗員が乗車している場合には、車両2内に複数の携帯端末5が存在する場合もある。これに対し、事業者の店舗3には、店舗側サーバ6が設けられている。また、この店舗側サーバ6には、顧客データベース7が接続されている。本実施例では、車両2側の乗員の所持するいずれか1台の携帯端末5と、店舗3に設けられた後述する店舗側通信機との間で、発注・受注のための通信を行うようになっている。
【0017】
図2は、前記車両2における、前記車載情報処理装置4を中心にした、車両用通信システム1に関連する部分の電気的構成をより詳細に示している。車載情報処理装置4は、コンピュータ等を含んで構成され、車両2における通信関連処理の制御・管理を行う。この車載情報処理装置4には、車載入力装置8、車載出力装置9、車両識別番号取得部10が接続されていると共に、車載通信機としての近距離無線通信装置11、並びに、車室内無線通信装置12が接続されている。
【0018】
前記車載入力装置8は、ユーザ(乗員)が各種の入力指示を行うもので、メータ部やステアリングホイールに設けられる操作装置、運転席側部に設けられる操作デバイス等が用いられる。或いは、ナビゲーション装置用の操作装置(表示ユニットのタッチパネルや各種メカスイッチ)を兼用させることもできる。前記車載出力装置9は、表示装置を含んで構成され、この場合も、ナビゲーション装置用のディスプレイ(表示ユニット)を用いることができる。前記車両識別番号取得部10は、後述する通信時において、自車両の識別番号を取得するものである。
【0019】
前記近距離無線通信装置11は、外部との間で近距離(狭域)での無線通信を行うもので、例えば無線LANやDSRC通信が採用される。この場合、近距離無線通信装置11により、店舗3側に設けられる通信エリアにおいて後述する店舗側の近距離無線装置との間での通信が可能とされている。前記車室内無線通信装置12は、車内に持込まれた前記携帯端末5との間での通信接続を確立するものであり、例えば無線LANやブルートゥース等が採用される。この場合、車室内無線通信装置12により、携帯端末5に対して車両識別番号のデータを送信したり、或いは、携帯端末5から該携帯端末5の識別番号のデータを受信したりするようになっている。
【0020】
これに対し、図示はしないが、前記店舗3においては、敷地内(建物の外側)に、入口から出口までの車両2の通路を有しており、入口近傍に注文位置が設けられていると共に、出口近傍に乗員が車両2の窓を開けて商品を受取ることができる商品受取口が設けられている。また、前記通路が通信エリアとなっており、進入した車両2側(携帯端末5)と、店舗3側とが通信を行って商品の発注・受注がなされる。受注が行なわれると、店舗3内で商品の用意(調理等)がなされ、前記商品受取口において商品が引渡されると共に、決済が行なわれる。この決済には、クレジットカードを用いた決済、電子マネー、現金など様々な方法を採用することができる。
【0021】
図3は、店舗3側における、前記店舗側サーバ6を中心とした、車両用通信システム1に関連する部分の電気的構成をより詳細に示している。前記店舗側サーバ6は、コンピュータを主体として構成され、全体の制御・管理を行う。この店舗側サーバ6には、前記データベース7が接続されていると共に、入退場検出器13、データ入出力装置14、画像出力装置15、スピーカ16、マイク17が接続され、更に、店舗側通信機としての、近距離無線装置18及び携帯通信回線19が接続されている。
【0022】
前記入退場検出器13は、前記通路(通信エリア)に対する車両2の入場、退場を検出するためのものである。前記データ入出力装置14は、店舗3側のオペレータが、データの入出力操作(例えば初回の顧客登録等)を行うためのものである。前記画像出力装置15には、受注情報などの必要な画像が表示されるようになっている。また、スピーカ16及びマイク17は、店舗3側のオペレータと、車両2側の乗員とが必要な対話を行うためのものであり、このとき、図示はしないが、前記通路の注文位置においても車両2の乗員が利用するマイク及びスピーカが設けられている。
【0023】
前記近距離無線装置18は、店舗3側と外部との間で近距離(狭域)での無線通信を行うもので、例えば無線LANやDSRC通信が採用される。この場合、前記通信エリアにおいて、車両2に設けられた近距離無線通信装置11との間での通信が可能とされている。前記携帯通信回線19は、前記通信エリアにおいて、車両2内の携帯端末5との間で通信を行うためのもので、例えば無線LANが採用される。
【0024】
さて、後の作用説明(フローチャート説明)でも述べるように、本実施例の車両用通信システム1では、前記店舗側サーバ6は、入退場検出器13により車両2の入場を検出すると、車両2側(携帯端末5)に対して、車両識別番号及び携帯端末識別番号のデータ要求信号を送信する。車両2の乗員の所持しているいずれか1つの携帯端末5は、データ要求信号を受信すると、車載情報処理装置4から車室内無線通信装置12を介して車両識別番号のデータを受取り、自らの有している携帯端末識別番号のデータと共に店舗側サーバ6(携帯通信回線19)に対して返信する。
【0025】
前記店舗側サーバ6は、携帯端末5から車両識別番号及び携帯端末識別番号のデータを受信すると、顧客データベース7の顧客情報の検索を行い、登録された顧客である場合には、当該顧客の過去の注文履歴情報に応じた商品メニューのデータを、当該携帯端末5に向けて送信したりする等の優待処理を行う。優待処理としては、他にも、値段を安くしたり、ポイントを付与したり、景品を付加したりする等が可能である。登録されていない新規な客ついては、一般のメニューデータが送信される。
【0026】
車両2側の携帯端末5では、メニューのデータを受信すると、そのメニュー情報を携帯端末5のディスプレイに表示する。車両2の乗員(ユーザ)は、携帯端末5の操作キーを操作することにより、メニューを選択して発注を行う。発注のデータが店舗側サーバ6に送信されて受注されると、店舗3内で商品が用意され、ユーザは、商品受取口にて商品を受取ると共に決済を行う。この後、店舗側サーバ6は、顧客データベース7の顧客情報の注文履歴情報を更新(追加)する。尚、新規な顧客の場合には、ユーザの要望により、顧客情報を新たに作成(新規に顧客データベース7に登録)できることは勿論である。
【0027】
ここで、図4は、顧客データベース7に記憶されている1つの顧客情報のデータ構成を模式的(概念的)に示している。即ち、本実施例では、顧客情報は、顧客名及びID、携帯端末識別番号、車両識別番号、注文履歴情報等のデータが記憶されるのであるが、ここでは、複数の携帯端末識別番号及び複数の車両識別番号を関連付けて記憶することが可能となっている。つまり、1台の車両2について複数台の携帯端末5を対応させて1つの顧客情報として記憶することができ、また、1つの顧客に複数台の車両2を対応させて1つの顧客情報として記憶することもできる。
【0028】
前記店舗側サーバ6は、上記した顧客検索を行う際に、車両2側から送信された車両識別番号又は携帯端末識別番号のデータの少なくともいずれか1つが、前記顧客情報のデータと一致した場合に、当該顧客であると判断し、顧客情報に基づいた優待処理(嗜好に合ったメニューデータの送信等)を実行するようになっている。また、本実施例では、前記店舗側サーバ6による検索処理時に、携帯端末識別番号のみが一致した場合には、新規の車両識別番号を、当該顧客情報に登録するかどうかを、車両2の乗員が選択指定することが可能に構成されている。
【0029】
そして、特に本実施例では、前記店舗側サーバ6による検索処理時に、車両識別番号のデータのみが一致した場合には、新規の携帯端末識別番号を、当該顧客情報に登録するかどうかを、車両2の乗員が選択指定することが可能に構成されている。さらに、前記店舗側サーバ6による検索処理時に、車両識別番号のデータのみが一致した場合には、新規な顧客情報を作成して登録するかどうかを、車両2の乗員が選択指定することが可能に構成されている。
【0030】
次に、上記のように構成された車両用通信システム1の動作について、図5及び図6も参照して述べる。図5のフローチャートは、店舗3側と車両2側の携帯端末5との通信によって商品の発注・受注を行う際の、店舗側サーバ6の実行する処理手順を示し、図6のフローチャートは、携帯端末5と店舗3側との通信によって商品の発注・受注を行う際の、携帯端末5の実行する処理手順を示している。
【0031】
まず、店舗側サーバ6の実行する処理手順を示す図5において、ステップS1では、入退場検出器13の検出信号に基づき、通路(通信エリア)に対して車両2(近距離無線通信装置11又は携帯端末5)が進入したかどうかが判断される。通信エリア内への車両2の進入が検出されると(ステップS1にてYes)、ステップS2にて、車両2側に対し、車両識別番号及び携帯端末識別番号のデータを送信することを求める要求信号が送信される。
【0032】
次のステップS3にて、車両2側の携帯端末5(又は近距離無線通信装置11)から車両識別番号及び携帯端末識別番号のデータを受信すると、ステップS4にて、顧客データベース7の検索が行なわれ、送信された携帯端末識別番号が、顧客情報として登録されているかどうかが判断される。登録されていると判断された場合には(ステップS4にてYes)、ステップS5にて、送信された車両識別番号が、その顧客情報に登録されている車両識別番号と一致するかどうかが判断される。
【0033】
車両識別番号についても登録されたものと一致、つまり車両識別番号及び携帯端末識別番号の双方が顧客情報のデータと一致した場合には(ステップS5にてYes)、ステップS6にて、該当する顧客情報の注文履歴情報に基づいて、例えば当該顧客の嗜好に応じたメニューが抽出され、そのデータが携帯端末5に対し送信される。この後、ステップS7では、ユーザ側(携帯端末5)からの送信により注文の受付(受注)がなされる。また、ステップS8にて、顧客データベース7の顧客情報の注文履歴情報の更新(蓄積)がなされ、処理が終了する。
【0034】
一方、携帯端末識別番号が登録されているものの、車両識別番号が顧客情報のデータと一致しなかった場合には(ステップS5にてNo)、ステップS9にて、その車両識別番号をその顧客情報に登録するかどうかをユーザに選択(確認)させるための選択用データが携帯端末5に対し送信され、ユーザに選択、回答させる。ステップS10では、ユーザの携帯端末5から、車両識別番号を登録する旨の返信があったかどうかが判断される。登録の要求があった場合には(ステップS10にてYes)、ステップS11にて、新規に車両識別番号を追加登録する処理が実行された上で、ステップS12にて、顧客情報の注文履歴情報に基づいたメニューのデータが携帯端末5に対し送信される。登録の要求がなかった場合には(ステップS10にてNo)、そのままステップS12に進み、その後、ステップS7にて受注処理が行われる。
【0035】
また、上記ステップS4にて、送信された携帯端末識別番号が、登録されていなかった場合には(ステップS4にてNo)、次のステップS13にて、送信された車両識別番号が登録されているかどうかが判断される。車両識別番号のみが登録されたものと一致した場合には(ステップS13にてYes)、ステップS14にて、現在通信しているユーザが、その登録済みの顧客と同一かどうかをユーザに確認させるための確認用データが携帯端末5に対し送信され、ユーザに選択、回答させる。
【0036】
ステップS15では、ユーザの携帯端末5から、登録済み顧客と同一である旨の返信(回答)があったかどうかが判断される。同一でない旨の回答があった場合には(ステップS15にてNo)、後述のステップS20に進む。現在通信しているユーザが登録済み顧客と同一であった場合には(ステップS15にてYes)、ステップS16にて、現在通信している携帯端末5の携帯端末識別番号をその顧客情報に登録するかどうかをユーザに選択(確認)させるための選択用データが当該携帯端末5に対し送信され、ユーザに選択、回答させる。
【0037】
ステップS17では、ユーザの携帯端末5から、携帯端末識別番号を登録する旨の返信があったかどうかが判断される。登録の要求があった場合には(ステップS17にてYes)、ステップS18にて、新規に携帯端末識別番号を追加登録する処理が実行された上で、ステップS19にて、顧客情報の注文履歴情報に基づいたメニューのデータが携帯端末5に対し送信される。登録の要求がなかった場合には(ステップS17にてNo)、そのままステップS19に進み、その後、ステップS7にて受注処理が行われる。
【0038】
さらに、上記ステップS13にて、車両識別番号についても登録されたものと一致しなかった場合には(ステップS13にてNo)、ステップS20にて、新規に顧客として登録するかどうかの確認のための選択用データが携帯端末5に対し送信され、ユーザに選択、回答させる。ステップS21にて、ユーザの携帯端末5から新規顧客登録の要求があったかどうかが判断され、登録の要求があった場合には(ステップS21にてYes)、ステップS22にて、ユーザに対し登録内容の入力要求のデータを送信し、その後、ステップS23にて、入力された内容の登録処理を行う。この後、ステップS7にて受注処理が行われる。また、顧客登録の要求がなかった場合には(ステップS21にてNo)、ステップS24にて、一般メニューによる受注処理が行なわれ、そのまま終了する。
【0039】
これに対し、携帯端末5側の実行する処理手順を示す図6において、ステップS31では、車両識別番号及び携帯端末識別番号のデータ送信要求信号(図5のステップS2)を受信したかどうかが判断される。データ送信要求信号を受信した場合には(ステップS31にてYes)、ステップS32にて、車載情報処理装置4から受取った車両識別番号、及び、自らの携帯端末5の識別番号のデータを、店舗側サーバ6(携帯通信回線19)に向けて送信する。
【0040】
次のステップS33では、新規顧客登録確認の選択用データ(図5のステップS20)を受信したかどうかが判断される。新規顧客登録確認の選択用データを受信した場合には(ステップS33にてYes)、ステップS34にて、ユーザは、キー操作により新規に顧客登録を行う(要望する)かどうかの選択を行い、回答データを店舗3側に送信する。「登録する」を選択した場合には(ステップS34にてYes)、店舗側サーバ6から登録内容入力要求のデータが送信されるので(図5のステップS22)、ステップS35にてそのデータを受信し、ステップS36にて必要な入力操作を行い、店舗側サーバ6に返信する。
【0041】
この後、店舗側サーバ6からメニューデータ等が送信されるので、ステップS37にて、メニューの表示画面への表示確認を行い、ステップS38にて、注文(発注)の操作を行い、処理を終了する。尚、上記ステップS34にて、新規顧客の登録を行わない旨の選択を行った場合には(ステップS34にてNo)、そのままステップS37に進む。
【0042】
一方、上記ステップS33にて新規顧客登録確認の選択用データを受信しなかった場合には(ステップS33にてNo)、ステップS39にて、登録済み顧客と同一ユーザかどうかの確認用データ(図5のステップS14)を受信したかどうかが判断される。確認用データを受信した場合には(ステップS39にてYes)、ステップS40にて、ユーザは、キー操作により同一ユーザかどうかの選択を行うのであるが、同一ユーザである旨の回答を行なった場合には(ステップS40にてYes)、ステップS41に進む。これに対し、同一ユーザでない旨の回答を行なった場合には(ステップS40にてNo)、上記したステップS34に進み、ステップS34からの処理を実行する。
【0043】
ステップS41では、携帯端末登録確認の選択用データ(図5のステップS16)を受信したかどうかが判断される。携帯端末登録確認の選択用データを受信した場合には(ステップS41にてYes)、ステップS42にて、ユーザは、キー操作により携帯端末識別番号の登録を行うかどうかの選択、回答を行い、ステップS43に進む。上記ステップS41にて携帯端末登録確認の選択用データを受信しなかった場合には(ステップS41にてNo)、そのままステップS43に進む。
【0044】
ステップS43では、車両登録確認の選択用データ(図5のステップS9)を受信したかどうかが判断される。車両登録確認の選択用データを受信した場合には(ステップS43にてYes)、ステップS44にて、ユーザは、キー操作により車両識別番号の登録を行うかどうかの選択、回答を行い、ステップS37に進む。上記ステップS43にて車両登録確認の選択用データを受信しなかった場合には(ステップS43にてNo)、そのままステップS37に進む。
【0045】
このように本実施例の車両用通信システム1では、顧客データベース7において、1つの顧客情報に関して、複数の車両識別番号のデータの登録が可能であり、また、複数の携帯端末識別番号のデータの登録が可能とされている。そして、店舗側サーバ6は、車両識別番号又は携帯端末識別番号のデータの少なくともいずれか1つが、顧客情報のデータと一致した場合に当該顧客であると判断する。
【0046】
従って、送信した携帯端末識別番号のデータが、車両2の乗員が複数台所持している携帯端末5のうちの1つであったり、新規に入手した携帯端末5のものであって、未だ登録がされていないものであったりした場合でも、車両識別番号に関して顧客情報のデータと一致すれば、当該顧客であると判断され、優待サービスの提供を受けることができる。また、登録されている識別番号を備えた携帯端末5を所持したユーザが、例えばレンタカー等の顧客として登録されていない車両2に乗車している場合でも、優待サービスを受けることが可能となる。さらには、例えば一人のユーザが、複数台の車両2を使用することがある場合にも、対応することが可能となる。
【0047】
この結果、本実施例の車両用通信システム1によれば、顧客データベースに登録されている顧客に対して顧客情報に応じた優待サービスを提供することが可能なシステムにあって、顧客が複数台の携帯端末5を所持する場合や携帯端末5を買い替えた場合における不具合を未然に防止し、利便性を確保することができるという優れた効果を得ることができる。
【0048】
特に本実施例では、顧客データベースに登録されている顧客が、車両2を買い換えたような場合に、顧客情報を継続的に維持したままで、新規の車両識別番号を登録することができる。レンタカーや友人の車両を一時的に借りている場合など、車両2の登録が不要と判断したときには、登録しないことをユーザが選択できることは勿論である。
【0049】
また、車両2の乗員が新たな携帯端末5を入手した、或いは、今まで乗車していた乗員とは別の乗員が携帯端末5を持って乗車しているような場合には、顧客情報を継続的に維持したままで、新規の携帯端末識別番号を登録つまり追加することができる。更には、例えば車両2の使用者が変わったような場合に、新規な顧客情報を作成して登録することができる。新規な携帯端末識別番号の登録や、新規な顧客情報の作成が不要と判断した場合には、登録しないことをユーザが選択できることは勿論である。
【0050】
図7は、本発明の第2の実施例を示すもので、車両用通信システム21の概略構成を示している。この第2の実施例に係る車両用通信システム21が、上記第1の実施例の車両用通信システム1と異なるところは、車両2側において、車載通信機としての近距離無線通信装置11を用いて、店舗3側(近距離無線装置18)との間で通信を行うように構成した点にある。尚、上記第1の実施例と同一部分については、新たな図示を省略し、同一符号を付して説明する。
【0051】
この場合、上記第1の実施例と同様に、車両2内において乗員が所持する携帯端末5と、車室内無線通信装置12との間で通信接続が確立され、車載情報処理装置4は、いずれか1台の携帯端末5から携帯端末識別番号のデータを取得することができるようになっている。この第2の実施例では、車両2の近距離無線通信装置11と、店舗3に設けられた近距離無線装置18との間で、発注・受注のための通信を行うようになっており、このとき、近距離無線通信装置11から、車両識別番号及び携帯端末識別番号のデータが送信されるようになっている。
【0052】
また、車両2の乗員が注文を行う場合には、車載出力装置9(ディスプレイ)にメニュー等が表示され、乗員は、車載入力装置8を操作して発注などを行うことができる。従って、この第2の実施例によっても、上記第1の実施例と同様の作用・効果を得ることができる。
【0053】
尚、上記第2の実施例では、携帯端末5から携帯端末識別番号のデータを取得するようにしたが、本発明においては、車両2側に、当該車両2の乗員の所持する1以上の携帯端末5の携帯端末識別番号のデータを記憶する記憶手段を設け、店舗3側との間で通信を行う際に、近距離無線通信装置11から、車両識別番号のデータと前記記憶手段に記憶された携帯端末識別番号のデータとの双方を送信することができる。これによれば、通信時において、乗員が携帯端末5を所持していなくとも、予め記憶手段に記憶されている携帯端末識別番号のデータを、車両識別番号のデータと共に送信することで、優待サービスを受けることが可能となる。
【0054】
図8は、本発明の第3の実施例を示しており、店舗側における電気的構成を示している。ここでは、事業者は、店舗3だけでなく、複数の店舗3′、3″、‥(チェーン店)を経営しており、これら複数の店舗3、3′、3″、‥に関して、共通の1つの顧客データベース22を有している。この顧客データベース22は、各店舗3、3′、3″、‥に設けられた店舗側サーバ6に接続され、アクセスが可能とされている。
【0055】
前記顧客データベース22には、全店舗3、3′、3″、‥に関しての顧客情報が記憶されている。各顧客情報は、顧客名及びID、携帯端末識別番号、車両識別番号、注文履歴情報等のデータが記憶されるのであるが、ここでは、やはり複数の携帯端末識別番号及び複数の車両識別番号を関連付けて記憶することが可能となっている。従って、この第3の実施形態によっても、上記第1の実施例と同様の作用・効果を得ることができる。
【0056】
尚、上記各実施例では、本発明の車両用通信システムを、ハンバーガ店のドライブスルーに適用するようにしたが、その他にも、商品やサービスを提供する店舗として、ガソリンスタンド、カー用品ショップ、調剤薬局等、各種の店舗に適用することができる。その他、車両や店舗側におけるハードウエア構成や、車載通信機や店舗側通信機といった通信手段の通信規格等についても、様々な変形が可能であるなど、本発明は要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得るものである。
【符号の説明】
【0057】
図面中、1、21は車両用通信システム、2は車両、3は店舗、4は車載情報処理装置、5は携帯端末、6は店舗側サーバ、7,22は顧客データベース、11は近距離無線通信装置(車載通信機)、12は車室内無線通信装置、18は近距離無線装置(店舗側通信機)、19は携帯通信回路(店舗側通信機)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
商品やサービスを提供する事業者の店舗に設けられた車両が進入可能な通信エリアにおいて、車両に搭載された車載通信機又は当該車両の乗員が所持する携帯端末と、店舗側通信機との間で通信を行うことにより、前記乗員が乗車したままで、商品やサービスの発注・受注の処理を可能とした車両用通信システムにおいて、
前記事業者側には、登録された顧客に関する顧客情報が記憶された顧客データベースと、前記店舗側通信機を制御すると共に前記顧客データベースの管理が可能な店舗側サーバとが設けられ、
前記店舗側サーバは、前記車両側から車両識別番号及び携帯端末識別番号のデータが送信されることに基づいて、前記顧客データベースの検索処理を行い、登録された顧客である場合には、当該顧客情報に応じた優待処理を行うように構成されていると共に、
前記顧客データベースの各顧客情報には、当該顧客の車両識別番号のデータと、1又は複数の携帯端末識別番号のデータとが関連付けて記憶されており、
前記店舗側サーバは、前記検索処理時に、前記車両側から送信された車両識別番号又は携帯端末識別番号のデータの少なくともいずれか1つが、前記顧客情報のデータと一致した場合に、当該顧客であると判断することを特徴とする車両用通信システム。
【請求項2】
前記店舗側サーバによる検索処理時に、携帯端末識別番号のみが一致した場合には、新規の車両識別番号を、当該顧客情報に登録するかどうかを、車両の乗員が選択指定することが可能に構成されていることを特徴とする請求項1記載の車両用通信システム。
【請求項3】
前記店舗側サーバによる検索処理時に、車両識別番号のデータのみが一致した場合には、新規の携帯端末識別番号を、当該顧客情報に登録するかどうかを、車両の乗員が選択指定することが可能に構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の車両用通信システム。
【請求項4】
前記店舗側サーバによる検索処理時に、車両識別番号のデータのみが一致した場合には、新規な顧客情報を作成して登録するかどうかを、車両の乗員が選択指定することが可能に構成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の車両用通信システム。
【請求項5】
前記車両側には、当該車両の乗員の所持する1以上の携帯端末識別番号のデータを記憶する記憶手段が設けられており、
前記店舗側通信機との間で通信を行う際に、前記車載通信機から、車両識別番号のデータと、前記記憶手段に記憶された携帯端末識別番号のデータとの双方が送信されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の車両用通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−50784(P2013−50784A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187340(P2011−187340)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】